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interview with Phoenix

interview with Phoenix

──フェニックス、来日記念インタヴュー

久保 憲司    通訳:網田有紀子  写真:KAZUMICHI KOKEI   Jan 31,2014 UP

 たぶん、これを読んでいる人はビートルズ以前のフランスの音楽、シャンソンが世界の人びとを魅了した音楽だったということを知らないだろう。
 エディッド・ピアフはビヨンセのように誰からも愛され、ジャック・ブレルはフランク・シナトラのような偉大なシンガーだった。
 ビートルズの初めてのフランス公演は、シルヴィ・ヴァルタンの前座としてだった。この公演中にビートルズは自分たちの曲がアメリカで初のナンバー・ワンになったことを告げられた。それは、エンターテインメントの世界の音楽がロックへと変わった瞬間であり、ロックの本質を本当に理解しているアメリカ、イギリスだけが世界の音楽を牛耳っていくはじまりだった。
 アメリカ、イギリス以外の国の音楽が世界の隅に追いやられていったのは、それらの国のエンターテインメント界が旧来のままだったことがいちばんの理由だと思うが、ミッシェル・ポルナレフのようなロック世代の大スターも出てきはしたが、しかし、それまでは世界の音楽をリードしていたフランスの音楽が他の国のチャートに顔を出さなくなったのは不思議で仕方がなかった。ジャズの終わりを看取った国、アフリカン・ミュージックを発信してきた国にしてはフランスの音楽の低落ぶりは不思議で、だから、フレンチ・ハウス、テクノが世界的に評価されたとき、さすが、フランスだと思った。フランス音楽の低迷は言葉の問題だったのかと思っていたら、ついにフェニックスがグラミー賞をとり世界的に認められた。なぜ、フェニックスが世界的に認められたのか、訊いてみた。今月行われた来日公演の楽屋にて、答えてくれたのはギターのローラン・ブランコウィッツとベースのデック・ダーシーだ。

僕たちはいいプレイヤーじゃない、でもいいリスナーだと思っている。僕たちが目指しているのはアメリカのゴールデン・エラと呼ばれた時代の音楽だ。75年とか、MIDIが使われる前の音楽だ。(ローラン・ブランコウィッツ)

グラミー賞をとったことは驚きましたか?

ローラン:僕らはどんな賞ももらったことがなかったから、驚いたよ。初めてもらった賞が、権威ある賞だったから、嬉しかった。でも、長いこと賞ももらわずにやってきたけど、それはそれでよかったよ。

デック:新しい経験で、いままで感じたことない感覚だったね。

ローラン:いい経験だったと思う。

なぜ、グラミー賞をとれたと思いますか?

ローラン:なぜ? 成功はいろいろなものの積み重ねだよね。いろんなひとたちがいいね、と言ってくれるようになって、成功をしたんだと思う。

僕がなぜこんな質問をしたかというと、昔のフランスの音楽って、普通に世界レベルの音楽だったじゃないですか。それがビートルズ以降、ただの地域の音楽になってしまったと思うのです。そんななかであなたたちは久々に世界に認められたフランスのアーティストだと思うのですが、それはなぜかなということを訊きたかったのです。

デック:いい質問だね。

ローラン:ミッシェル・ポルナレフは日本でもポピュラーだったの?

はい、ビートルズより人気がありましたよ。

ローラン、デック:へー。

僕の両親の時代ですけどね。

ローラン:(ふたりでフランス語で相談しながら)なぜ、そんなことになってしまったかはまったくわからないんだけどね。僕らふたりの見解だとフランスの音楽産業のせいだと思う。フランスの音楽業界は間違った道を歩いてしまったんだ。これがフランスの音楽業界が衰退した理由の一つだと思う。僕らの世代は旧来の音楽産業とは関係ないところでやっている。だから僕らは成功したと思う。僕らの世代は自分たちのベッドルームでレコードを作っている。だからそういう古いフランスのシステムの影響を全く受けずにすんだ。

それは僕も同じことを考えていて、びっくりしました。

ローラン:フランスの音楽シーンの復活にはテクノジーの進歩もとっても重要だ。僕たちはテクノジーで古いシステムから解放され、自由を手にしたんだ。

なるほど、だから、フランスのシーンはまずハウスやテクノから成功していったのですね。フレンチ・ハウスやテクノの人たちとの共通点を感じますか?

ローラン:そうだね。音楽がぜんぜん違っても、ほとんど同じ機材を使っているよね。サンプラーなど。そして、何より同じような古いレコード(音楽)を愛している。ハウスの人たちも、ヒップホップの人たちも、当時の最高のギター、ドラム・サウンドを一日中聴いている。僕らもそうだ。そして、それらからまったく新しい音楽を作ろうとしている。それがいまのカルチャーだ。これが共通点だよね。僕らはもっとソングライティングに力を入れているというのが違う部分かな。そうしようとしているんじゃなく、僕らはそういうのが好きというくらいなんだけどね。これがフェニックスだね。

おー、僕はフェニックスというのは、70年代のアメリカン・ロック、映画『ヴァージン・スーサイド』に使われたような当時のアメリカの郊外のキッズが聴きそうなスウィートなアメリカン・ロックを、現代のヨーロッパの若者たちに置き換えたようなサウンドを目指しているのかと思っていました。

ローラン:僕たちはいいプレイヤーじゃない、でもいいリスナーだと思っている。僕たちが目指しているのはアメリカのゴールデン・エラと呼ばれた時代の音楽だ。75年とか、MIDIが使われる前の音楽だ。

産業ロックになる前の音楽ですね。

ローラン:アメリカのいろんなジャンルの音楽の天才が集まって、素晴らしい機材とたくさんのお金を使って作っていたような時代の音楽を、ベッドルームで、正確に言うと、狭い地下室で、安い機材で、サウンド・エンジニアの知識もなく、スティーリー・ダンのような音楽を作ろうとしていたんだ。

うわっ、スティーリー・ダンですか、感動しました。前作『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』が商業的に成功したので、『バンクラプト!』はスティーリー・ダンのようなお金をかけた制作もできたと思うのですが、前作と変わらない感じがしますね。

デック:たしかに同じようなプロダクションだね。でも、僕たちがやっていることは新しい音楽を作ること、同じようなプロダクションでも、やり方はとってもランダムだね。

ローラン:僕らはみんなを驚かせたいんだ。リスナーに誰か違う音楽を聴いているような感覚を与えたいと思っている。今回は、ランダムにやりながらそれをどういうふうに完成させるかというプロセスを理解できたね。

取材:久保憲司(2014年1月31日)

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Profile

久保 憲司久保 憲司 /Kenji Kubo
1981年に単身渡英し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。『ロッキング・オン』など、国内外の音楽誌を中心にロック・フォトグラファー、ロック・ジャーナリストとして精力的に活動中。また、海外から有名DJを数多く招聘するなど、日本のクラブ・ミュージック・シーンの基礎を築くことにも貢献。著書『ダンス・ドラッグ・ロックンロール ~誰も知らなかった音楽史~』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール ~"写真で見る"もうひとつの音楽史』、『ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム』等々。

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