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グラミーのオルタネイティヴ・ロック部門のベスト・アルバム賞を獲り、完全にアメリカのマーケットに認められたフェニックス。すごいことです。日本のアーティストはいつこういうことができるのでしょう。頑張ってほしいと思います。
ビートルズ以前のフランスの音楽は世界的な音楽だったんですよね。ビートルズ以降もミッシェル・ポルナレフという世界的に成功したポップ・アーティストもいました。フェニックスのスイートな感じはミッシェル・ポルナレフを思い出します。ミッシェル・ポルナレフは日本でも大人気でした。パンク時代もプラスチック・ベルトランが突然大成功したりしてましたね。
ワールド・ミュージックもフランスのマルタン・メソニエがプロデュースして、世界でヒットする音楽にしたわけで、前作と今作のプロデューサーであるカシアスのフイリップ・ズダールも、マルタン・メソニエがよく使っていたスタジオの息子で、子どもの頃からマルタンを尊敬して、世界に通用する音楽を作りたい――「マルタンを尊敬し、自分もそうなることを夢見ていた」と言ってました。
フェニックスを聴いていると、ぼくはそういうフランスの歴史を感じます。
だから日本人がこれをやるというのはなかなか大変なことなんだろうなと思います。YMOはそういうことを考えて作られたバンドでしたが、グラミーまではとれなかったですもんね。
フェニックスやザ・ハイヴスなどの成功を見ていると、母国語じゃなくっても、英語で歌っていくべきなんだろうなと思います。昔、内田裕也さんとはっぴいえんどが、ロックを日本語で歌うべきかどうなのかで大激論になったことがあるのですが、僕はずっとはっぴいえんど派で、日本語で日本のロックを歌っていくべきだろうと思っていました。『ミュージックマガジン』での両者の対談を読んでいると、ロックは英語の音楽なんだから英語で歌えという裕也さんの意見は押しつけがましいと思っていたのですが、いまはフェニックスの成功を見ていると、たとえ海外でなかなか認められなくっても英語で歌っていくべきだったのじゃないかと思っています。
当時は裕也さんの意見に反発していた細野さんが後に世界マーケットを視野に入れたYMOを作ったのは、裕也さんの意見に最終的には賛同したのかなという気もします。
フェニックスの新作について話そうと思ったら、とんでもない方向に言ってしまいました。新作は大成功した前作をもっと進歩させたアルバムです。日本人の人がフェニックスを大好きなのは、彼らの「ロックなのにやさしい」という部分だと思うのですが、その部分は今作はちょっとなくなってしまっているのかもしれません。それはアメリカのマーケットを意識したのか、どうなのか僕にはわかりませんが、ぼくはその強くなった部分に新鮮さを感じますし、好きです。
でも、やっぱりフェニックスを聴いて思うのは、英語をしゃべらない国の人も頑張ればアメリカのマーケットで認められるんだ。すごいな、日本人も頑張れということです。
久保憲司