「P」と一致するもの

Lucrecia Dalt & Aaron Dilloway - ele-king

ノイズを無視するとかえって邪魔になる。耳を澄ますと、その魅力がわかる。 
 ——ジョン・ケージ『サイレンス』(柿沼敏江 訳)


 アーロン・ディロウェイなるアーティストは、今日日のノイズ好きにとってはほとんどカリスマのひとりなのだが、ふだんはノイズを聴かないリスナーのなかにもファンは多くいる。昔から過剰に多作なノイズ界において、ディロウェイのアルバムはたびたび広く注目され、海外のメディアでも積極的に紹介されている。『モダンな道化師(Modern Jester)』(2012)や『ダジャレ名簿(The Gag File)』(2017)といった代表作の題名からも匂うように、そこには「狂気」とともに「笑い」が含まれていることがその理由のひとつであろうと、ぼくはにらんでいる。『ダジャレ名簿』のアルバム・スリーヴは腹話術で使う人形のバストショットだったが、見方によってはある種気味の悪さがあり、別の見方によっては滑稽でもあり、さらにまた別の見方では可愛くもある。こうしたアンビヴァレンスは、ディロウェイ作品の魅力であり、彼のノイズの本質を代弁していると言えるだろう。

 ミシガン州デトロイト郊外の町ブライトンで生まれ育ったディロウェイにとってのもっとも初期の影響は、少年時代に出会ったバットホール・サーファーズだ。子供だったこともありバンド名からしてゲラゲラ笑ったそうだが(but holeにはケツの穴、いやな奴などといった意味がある)、これがパンクってもんだと教えられた彼にとって、あとから聴いたセックス・ピストルズは、ただただ凡庸なロックにしか聴こえなかった。
 ディロウェイの影響でもうひとつ大きかったのは、キャバレー・ヴォルテールの『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』だ。テープ・コラージュ(高尚に言えばミュジーク・コンクレート)という、彼の創作におけるもっとも主軸となる手法を彼はこのアルバムによって知った。で、それをもって、1998年にミシガン州デトロイト郊外の町アナーバー(デストロイ・オール・モンスターズの故郷)にて、インダストリアル・ノイズ・バンド、ウルフ・アイズを結成、ディロウェイ自身のレーベル〈Hanson〉からデビューする。とは言うものの、ディロウェイは、ウルフ・アイズがゼロ年代半ばに大手インディの〈サブ・ポップ〉からアルバムを出すくらいにまでになってしまうと、プロモーションなどが面倒でバンドを去る。以来彼は、コラボ作こそ多くあれど、基本的にはソロ・アーティストとして活動を続けている。
 ディロウェイはかつて、イギリスのFACTマグの依頼でDJミックスを作成したことがある。選曲はすべてビートルズやらストーンズやらボウイやらといった超有名どころの、ただしコピー・バンドの演奏を集め、エディットし、そこに不快で奇妙なノイズをミックスしたものだった。安倍晋三ではないが自分たちサークルの正統性を振りかざし、その外部を批判ばかりしている人たちを舐めきっているかのようなノイズ、いかにもディロウェイらしいキッチュなものへの愛情、いかがわしさへの関心は、有名ロック・バンドのライヴ映像の海賊版VHSへの偏愛にも言える。いささかアイロニカルとはいえ、ディロウェイの創作にはメタな視点があり、彼の諧謔性はキャプテン・ビーフハートやザ・レジデンツにも通じている。奇怪なその音響、サウンドプロダクションに関して言えば、AFXの牧歌的ではない側面が(も)好きなリスナーにも推薦したい。
 
 コミカルで、よく見ると不気味なスリーヴアートをあしらったディロウェイの新作は、〈Rvng Intl.〉からの作品で知られる、現在はベルリン在住の電子音楽家、ルクレシア・ダルトとの共作『ルーシー&アーロン』、これがじつに良かった。考えてみれば、男女のデュオという点では前回レヴューしたマリサ&ウィリアムと同じで、ふたりの個性が合流することでマジックが生まれているという点もまた同じ、音楽性は著しく違っているけれどね。なにしろこちらはディロウェイのバカバカしいテープ・ループ、不快なミニマリズム、ダルトの妖しい声と幻想的なシンセサイザーによるシュールで魅惑的なガラクタというか呪文というか。しかもユーモアと恐怖が交錯する『ルーシー&アーロン』には、曲によってはグルーヴもあり、所々ぼくにはファンキーに聴こえたりもする。ひとつの感情に凝り固まらない、安易にディストピアでもない、こうした毒の入った笑える音楽は、自分の正気を保つためにもいま必要なのだ。
 現在はオハイオ州オバーリンで暮らしているディロウェイは、ダルトとは数年前のツアー中に知り合っている。お互いを賞賛し合っているふたりはアルバムを作ることを決め、その多くはNYで録音されている。残りの作業はそれぞれの自宅、ベルリンとオバーリンで終えたそうだ。なお、ディロウェイはこの10月末、ジョン・ケージの作品を蒐集し、整理し、広める非営利団体「ジョン・ケージ・トラスト」からの招待を受けてケージの12台のレコーダーを使用したテープ音楽作品「Rozart mix」をディロウェイなりの解釈で演奏することになっている。また、キム・ゴードンとビル・ネイスによるプロジェクト、Body/Headにディロウェイが参加した作品『Body/ Dilloway/Head』も直にリリースされる。
 
 

Abstract Mindstate - ele-king

 今夏に Kanye West が立ち上げたレーベル、〈YZY SND〉(=Yeezy Sound)の第一弾アーティストとして登場した、Olskool Ice-Gre と E.P. da Hellcat という男女デュオによるヒップホップ・グループ、Abstract Mindstate。実は2001年に 1st アルバム『We Paid Let Us In!』でデビューしており、さらに何枚かのシングルやミックステープを発表するものの、2000年代半ばにはすでにグループとしての活動を停止していた。知る人ぞ知るというよりも、実際はシカゴ以外ではほぼ無名の存在の彼らだが、『We Paid Let Us In!』にもプロデューサーとして参加していた Kanye West の提案により、約15年ぶりに本作『Dreams Still Inspire』にて復活することとなった。

 プロデュースも Kanye West が全曲手がけているのだが、ほぼ同じタイミングでリリースされた Kanye West の最新作『Donda』とのサウンド面での違いにまずは驚かされる。サンプリングを軸としたノスタルジックなプロダクションは2000年代半ばにリリースされた Kanye West の最初の2作『The College Dropout』、『Late Registration』を彷彿させるものだが、過去に作られた楽曲を引っ張り出してきたわけではなく、全て Kanye West が新たに制作したビートが使用されているという。アルバム・タイトルからも伝わってくるように、Olskool Ice-Gre と E.P. da Hellcat のスタイルはストレートなコンシャス・ラップで、イントロ的な一曲目 “Salutations” から長いブランクを経て復活した自らの状況をポジティヴに捉えたリリックが展開されている。例えるならば Kanye West もプロデューサーとして参加していた『Be』の頃の Common とも非常に近い匂いというか、40代以上のヒップホップ・リスナーであればあの時代のシカゴ・ヒップホップの空気感を思い出す人も少なくないだろう。

 ある意味、いまのヒップホップのトレンドとは全く逆行している作品でもあるわけで、アメリカでの評価は高くないというか、一部ではむしろ酷評すらされており、Spotify での再生回数も『Donda』の1000分の1以下だ。筆者自身も古臭さを感じないわけではないが、このアルバムにはどうしても惹かれてしまっている部分があるのは否めない。“I Feel Good” のようにシンプルに鳴り響くドラム・サウンドと2MCの安定感あるラップの組み合わせは純粋に格好良いし、先行シングルともなった “A Wise Tale” の多少説教臭いような内容のリリックも、声ネタを巧みに用いた Kanye West ならではのセンスの効いたトラックによって、良い意味でポップに仕上がっている。

 Abstract Mindstate を新レーベルの第一弾アーティストとして選んだのは、単なる Kanye West の気まぐれなのかもしれないが、いまなお革新的なヒップホップ・サウンドに取り組み続けている彼のルーツを改めて再確認するという意味でも、非常に興味深い作品だ。

interview with Jeff Mills + Rafael Leafar - ele-king

override:乗り越える、覆す、制御不能

「ぼくがやろうとしていることは、人に理解させることではない、人の注意を喚起させることだ」とジェフ・ミルズは言った。いまから26年前の取材でのことだ。「まったく違う観点からまったく違う思考をすること」
 これはUKの批評家コジュオ・エシュンが言うところの「ソニック・フィクション」の概念と重なっている。旧来の思考から解放され、音楽をもって世界をとらえ直すこと。で、これこそ、アフロ・フューチャリズムの思考法と言っていいだろう。ジェフ・ミルズの新作『オーヴァーライド・スウィッチ』は、彼がこの30年に渡って追求してきた未来的思考の最新型の成果だ(ジェフは2009年のWIREの取材のなかでこう言っている。「ずっと前から、黒人として、黒人の子供として、僕ははるか先を見なければならないんだってことは理解していた」と)。
 1967年のデトロイトの大暴動では、それを鎮圧するために派遣された軍に市民がさらに応戦するという、その夏の暴動においてもっとも熾烈なものとして記録されているが、まさにその真っ只中、市街から安全な場所へと避難するため彼の両親が子供たちを連れて行ったところがモントリオールの万博だった。彼の地に展示された未来主義とユートピア、そして宇宙旅行は、幼少期のジェフ・ミルズの記憶に深く刻まれたという。
 なるほど。暴動と未来主義、これはたしかに初期ジェフ・ミルズや初期URを語る上では有効かもしれない。執拗にハードで、そして当時としてはダンスの範疇を超えた速さと日常を超えた空間。スウィングよりもスリル。地球人よりも宇宙人。プログラムされた思考を超越すること。が、あくまで30年前の話だ。最新作の『オーヴァーライド・スウィッチ』にもジェフの未来主義は貫かれている。それはいまも実験的ではあるけれど、より優雅で円熟した音楽として録音されている。
 『オーヴァーライド・スウィッチ』は、ジェフ・ミルズがデトロイトのマルチ楽器奏者、おもにジャズ・シーンで活躍するラファエル・リーファーと一緒に制作した。昨年ブラック・ライヴズ・マターの高まりのなか発売された、詩人ジェシカ・ケア・ムーア擁するザ・ベネフィシアリーズのソウルフルな1枚、トニー・アレンのバンドでピアノを担当していたJean-Phi Daryとのザ・パラドックス名義による官能的なフュージョン作品——新作は、ジャズ・シリーズとでも呼べそうなこれら2枚と連続しているようだが、趣は異なっている。パーカッションと管楽器の数々をフィーチャーした本作はおおよそフリー・ジャズめいているし、異空間を描こうとするアンビエントめいたフィーリングもあり、もちろんテクノも残されている。この30年間追い求めているユートピアへの夢もある。まあ、ひとことで言うなら、ジェフ・ミルズ宇宙探索機に導かれたアフロ・フューチャリズムのアルバムということだろうか。
 ちなみにアルバムの担当楽器は以下の通り。

Jeff Mills : Keyboards, electronic drums and percussion
Rafael Leafar : Bass Flute, Bass Clarinet, Soprano & Tenor Sax, Soprano Sax, Double Soprano-Sopranino Saxes, Fender Rhodes, Wurlitzer, Moog Synth, Moog Sub 37, Yamaha CS, Oboe, Contra-Alto Clarinet

 パンデミック以降、ほとんどすべてのDJのギグが中止になってしまったなか、与えられた時間のほぼすべてを創作に費やしているひとりがジェフ・ミルズだ。彼はこの間、無料で読めるオンラインマガジン『The Escape Velocity』を創刊させ、未来主義にこだわったその誌面はすでに3号までが公開されている。彼の〈Axis〉レーベルからの作品数にいたっては、この2年ですでに50作以上を数えている。そのなかで、ジェフ・ミルズ自身のソロと彼が関わっている作品は10作以上(※)。さらにまた、今年は30周年を迎えたベルリンの名門中の名門〈トレゾア〉からは初期の名作の1枚『Waveform Transmission Vol.3』(常軌を逸した時代のミニマル・テクノの金字塔)がリイシューもされている。
 ほとんどワーカーホリックと言えるこのベテランのDJ/プロデューサーは、パンデミック以降ようやく動きはじめたヨーロッパのダンス・シーンのツアーから帰ってきたばかりだった。じつは昨年もジェフ・ミルズには別冊エレキングの「ブラック・パワー」号のためにzoomで取材させてもらっているので、今回は二年連続の取材となる。ジェフはいつものように温厚に、自らのうちに秘めている思考について話し、デトロイトからはラファエル・リーファーーが彼のジャズへの熱い思いを語ってくれた。

いまの世のなかは間違ったことがあまりにも多くて、解決の糸口を探す合理的なアプローチが必要だ。何事にもそれを超越できる、あるいは避けて通る方法があるという希望を提案したかった。

ヨーロッパでのDJはどうでしたか?  

ジェフ: みんなまたパーティに来ることができてハッピーな雰囲気だった。とはいえ、やっぱりいままでとはちょっと違う。他人と近づいて息がかかったりすることが自然と気になったりしてしまう。いままでは気にも留めていなかったことに注意を払うようになってしまった。でもお客さんはみんなマスクなしで、飲んで騒いでって感じだったけれどね。

とくにすごかったのはどこですか?

ジェフ:クラブではロンドンのファブリックかな。もっとも最近ではアムステルダムだったかな。屋内で1000人くらいの規模のイベントがあったんだけど、年齢層が低くて、みんなマスクしてなかったんだよね。

マイアミはどうなんですか?

ジェフ:マイアミではクラブはかなり前からオープンしているよ。だからパーティに行くことができるし、DJもプレイできる。僕は数ヶ月前にジョー・クラウゼルを観に行ったくらいしか出かけていないけれど、そのときもいろいろなところを触らないようにしようとか、人とあまり近づかないようにしようとか、感染しないように気をつけていたけど。

アメリカのコロナの状況はいま(10月9日)はどうなっているのでしょうか?

ジェフ:いま現在のことで言えば、感染者も死者も数は減ってきている。

日本と同じですね。

通訳:いやー、日本とはちょっと規模が違います。(10月9日発表ではフロリダ州の昨日の感染者は3141人。パンデミックがはじまってから300万人以上の感染者、56400人の死者を出していますから、日本とは比較にもならない。フロリダの人口は約2200万人。ちなみにアメリカのワクチン接種率は現在56%)

ラファエル・リーファーさんとは初めてなので、バイオ的なことを質問させてください。デトロイトでは多くのヒップホップとロックと、あと少しのテクノ‏/ハウスだと思いますが、ジャズというのはかなり少数派なのではないでしょうか? もちろんデトロイトには70年代のトライブ・レーベルがあったように、ジャズの伝統があることは知っていますが、あなたはどうしてジャズの道を選んだのか教えてください。

ラファエル:家族が音楽好きで、それがまずはいちばん大切なポイントだった。8人兄弟の家族で、つねに音楽に囲まれて育ったからね。ジャズ、ファンク、ロック、ソウル……両親は僕が本当に小さい頃からジャズを聴かせていてね、4〜5歳のときには父と一緒にトランペットを吹いたりしていたほどだ。そんな幼い頃からジャズに出会ったことは幸運だったと思っているよ。
デトロイトはいまでもジャズに関してもパワーハウスと呼べるけどね。外にいる人たちからは見えないかもしれないし、業界としての重要性はないかもしれないけれど、いつだってミュージシャンはデトロイトに存在していて、その影響力は変わっていない。ちなみに、1940年代はデトロイトに古くからあるスタジオのサウンドシステムを求めて多くのジャズ・ミュージシャンがレコード制作をしている。マイルス・ディヴィスやチャーリー・パーカーもそこでレコーディングしたことがある。経済的な理由からスタジオはニューヨークやカリフォルニアに移っていってしまったけれど、僕たちはまだここにいるんだ(笑)。ウェイン・ステイト大学、ミシガン州立大学、ミシガン大学など優秀なジャズ・プログラムのある学校も多いのもミュージシャンが集まってくる理由のひとつだね。

あなた個人はなぜジャズを選んだのですか?

ラファエル:僕は自分のことをジャズ・ミュージシャンと思っていない。それがデトロイトのユニークなところかもしれないね。ジャズはデトロイトのシーンのバックボーンとしてつねに存在しているけれど、音楽家として生き残っていくためにはジャズ以外のさまざまな音楽にも精通していなくてはならないんだ。ひとつのジャンルにこだわっているわけにはいかない。ニューヨークだったらジャズ一本でやっていけるかもしれないけど、デトロイトではそういうわけにはいかないんだ。

曲制作というのはストーリーテリングのようなものだ。アフロ・フューチャリズムが好きな人たちが、このアルバムに興味を持ってもらうにはどのようなしたらいいか、何か特別な方法があるかは考えた。

このプロジェクトは、もともとジェフの頭のなかにあったものなんですか? それとも、ラファエルさんと出会ったことで生まれたのでしょうか?

ジェフ:ラファエルと出会ってからだね。タイトルの『オーヴァーライド・スウィッチ』、何かを超越するというコンセプトは、レコーディングの最初のほうで、たぶん“Homage”を制作しているときに思いついた。制約できないもの、妥協できないもの、カテゴライズができないもの。すべてを超越して、リセットするようなものを共同制作したいと思ったんだ。普通に考えられる音楽、好きか嫌いかで判断される音楽はこのアルバムには当てはまらない。一緒に作業をはじめてますますこの考えに確信を得るようになった。ラファエルが僕のトラックに加えてくる音を聴いて、僕は次の作業に移る基礎を考えることができたし、彼と会話をすればするほど、どんどん組み上げられていった。そうしているうちに、このコラボレーションが単なる共同作業ではないとますます痛感していったね。ジャズとか、テクノ、エレクトロニック・ミュージックなどといった範疇を超えていったと思う。だから『オーヴァーライド・スウィッチ』というタイトルがコンセプトと合ってふさわしいと思った。

ラファエルさんはどのようにしてジェフと出会ったのですか?

ラファエル:URのマイク・バンクスを介してだね。サブマージのビルにあるスタジオを借りていた時期があって、そこでマイクと出会ったんだ。会話するようになって、僕がやっている音を聴いてもらったり、音楽全般の深い話をするなかで、あるときジェフの名前が出てきたことがあってね、ジェフの昔の曲を僕に聴かせてくれたんだ。で、ある日、マイクがジェフの最新作を持ってきて、「これに君の演奏を重ねてジェフに送ってみたらどうだろう?」と言った。それで僕は軽い気持ちでそれをやった。それをジェフが気に入ってくれたと。

ジェフは、The Beneficiaries、The Paradoxなど、ここのところコラボレーションが続いていますが、それは理由があるのですか?

ジェフ:とくにコラボレーションを探し求めているわけではないんだ。でも機会に恵まれたときは、二度とないチャンスかもしれないから積極的に取り組むようにしている。だいたいこういうことは、狙ってできるものじゃないからね。それに、他のミュージシャンと交わることは刺激的だし、同じヴィジョンや似たような考えを持ったアーティストと出会う幸運に巡り会えたら、何かを作ろうと思うのは当然のことだ。長いキャリアのなかでずっとひとりで制作し続けるほうが不自然だよ。

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音楽は人びとの心を自由にするものだということをつねに忘れてはいけない。そのプロセスにはさまざまなアプローチがある。『オーヴァーライド・スウィッチ』」はマインドをリセットして、何か目の前の障害に向かっていくというようなテーマだ。

いままでのジェフの作品とはリズムへのアプローチが違っていますよね。それはなぜですか? 今回のリズムのコンセプトについて教えてください。

ジェフ:ひとつは、トニー・アレンと共演して学んだことが今回のプロジェクトに反映されている。アコースティックのドラムスがエレクトリック・ドラムとマッチしたときに生まれる特別な感覚、アルバムにはそれがある。ストリングスやベース・ラインでも表現したいアイディアがあって、自分だけでスタジオで作業していたものもあった。とはいえ、ラファエルとは青写真があったわけではなかった。とくにディレクションもなしで、トラックをラファエルに送って、彼がどう感じるか、何をきっかけに次のレベルに進展させていくのかとても楽しみにしながら、制作は進行したんだよ。

お互いの音をなんども往復させたんですか?

ジェフ:だいたい2回往復だったかな。僕がトラックを送って、ラファエルがそれに音をかぶせて、それにさらに僕が音を足したりしてからミックスをして。エディットもだいぶした。音を省いたり、動かしたり。ポストプロダクションの作業はけっこうやったけど、ふたりのあいだのやり取りは2回だったと思う。

離れたところで音を加えながら、セッションしている空気感を出すのはなかなか難しいと思うのですが、その感じは出ていますよね。

ジェフ:そこはラッキーだった。ラファエルはスタジオを移動する最中で機材をいろいろと変えたりして、逆に音にヴァリエーションを持たせる結果になった。ラファエルはじつにたくさんのホーンのパーツを送ってきたから。多くの音源から選ぶことが可能だったし、送られてきた音を聞くだけで何時間もかかるような作業だった。そこから、どの音を残し、どの音を削るか、そしてどう楽曲を構築していくかを考えていった。パーカッションを加えたり、必要な要素を加えて、リズムやメロディをエディットした部分もあるけれど、大まかにはラファエルが演奏した段階で曲の構成は出来上がっていたと言っていい。空気感に関しては、最初からアルバムを制作する意図があったから、違和感のないように同じテクスチュアを持たせるように心がけた。もっとも、細かい計算をしたわけではなく、あくまでもフィーリングを大切にしたんだけどね。

ラファエルは出来上がった曲を聴いてどんな風に思いましたか?

ラファエル:すごく興奮したよ。ジェフがどういう風に自分の送ったホーンを料理するのかを楽しみにしていたから。じっさい、いまジェフが言ったように、ものすごい量のパーツを送ったからね。彫刻を作るような感じかな。ジェフが渡した素材を形づくって彫刻にしていくような。

出来上がった曲は想像していたようなものでしたか? それともまったく違った?

ラファエル:そうだな。想像と違ったというべきかな。最初に送られてきたのはドラムトラックのみだった。

2曲目の“Crashing”やそれに続く“Homage”、後半の“Soul Filters”にはサン・ラーやアフロ・フューチャリズムを感じたのですが、意識されました?

ジェフ:曲制作というのはストーリーテリングのようなものだ。その方法論はたくさんある。最初からはじめるものもあれば、話の途中からはじまるストーリーや終わりからはじまるものもある。そいう意味で自由に曲の構成を決めた。アフロ・フューチャリズムやフューチャリズムが好きな人たちが、このアルバムに興味を持ってもらうにはどのようにしたらいいか、何か特別な方法がないものかと思考したよ。圧倒的なホーンを中心に、その他のパーツの順序やアレンジを決めるのにかなり頭を使った。ラファエルはディープで重圧感のあるホーンをたくさん用意したから、それらを聴くというよりは体で感じるように集中して、たとえば重圧感が感じられるようなフリーケンシーを音のレアーの下の方に置いたりとか、ずいぶん工夫した。そうやることで、ストーリーがよりカラフルにヴィヴィッドになるからね。

サン・ラーの影響はありますか?

ジェフ: いや、サン・ラーよりはクラシック作曲家のグレゴリー(ジョルジュ)・リゲティの影響が大きい。彼の作品は次に何が起こるかわからない。突発的なものが次から次へと続いていく。ホーンを中心にそのような雰囲気で曲を作っていくのが面白いと今回は思った。“Sun King”がその良い例だ。長い楽曲で構成が定まらず流れに身をまかせるしかない。

ラファエル:ジェフが最初に言っていたことは同感だ。僕のリスペクトするアーティスト、ジョン・コルトレーンはかつて「私はときには曲の終わりから演奏をはじめる」と言ったことがある。コルトレーンの演奏は予想できないし、同じ曲でもまったく違って聞こえる。僕もそういったアプローチがつねに頭にある。
アフロ・フューチャリズムというのは、過去と未来に重点を置いて、過去の重圧、地球に根を張りつつも未来、宇宙との繋がりを考えるという思想だけれど、僕は未来を考えるには、いま現在も大切だと思っている。自分がソロ演奏するときにはいま、この瞬間を体現する必要がある。だから僕がアフロ・フューチャリズムを考える場合には過去からつながる現在を表現し、それが演奏中のインプロヴィゼーションになっていく。さまざまなホーンでいろいろな音を表現して。

アフロ・フューチャリズムとは、過去の思い出よりも未来の可能性にかける、というような意味合いもあると思います。このアルバムは、昨年盛り上がったBLMムーヴメント以降に制作されたアルバムなわけですが、そのようなサブジェクトが潜んでいるのでしょうか?

ジェフ:それは正しいと言える。つまり、いまの世のなかは間違ったことがあまりにも多いじゃないか。いま必要なのは、解決の糸口を探す合理的なアプローチなんだ。このアルバムで、いまあるものを超越できるということ、あるいは避けて通る方法はあるんだという希望を提案したかった。困難を乗り越えることができる精神状態を作れるよう自分に暗示をかけるみたいなもので、どんな苦しい状況にあっても進化への道筋は残されていると。誰が何をしようが、何を言おうが、振り回されない、前に進むための自信をつかむというか。それがこのアルバムの基本的な考えだ。こうした考えがフューチャリズムと同じとは言わないけれど、方法論として似たところもあると言えるんじゃないかな。違った考え方を啓蒙することで未来がより良くなるという、そういう思想。それは否定的な思想にもなりうるけれど、このアルバム『オーヴァーライド・スウィッチ』の場合はポジティヴな思考を主張している。僕らの音楽が少しでも人の役に立てればいいと思っているんだ。

ジョン・コルトレーンはかつて「私はときには曲の終わりから演奏をはじめる」と言ったことがある。コルトレーンの演奏は予想できないし、同じ曲でもまったく違って聞こえる。僕もそういったアプローチがつねに頭にある。

昨年世界中で盛り上がったBLM以降、何か状況の変化の兆しはありましたか? UKではDJネームを変えるような人たちもいたり(例:ジョーイ・ネグロ)、レーベル名を変えたりとか(例:ホワイティーズ)、変化がありますが。

ラファエル:BLMはあまりにも大きなテーマだな。そして黒人のなかにおいても、それをひとつのトライブと捉えていいのかという議論もある。世のなかにはさまざまの肌の色のさまざまな考えを持った美しい人たちがいて、僕がそれを代表して何かを言うことはできないと思っているし。でも、DJネームを変えるような些細なことはかえってムーヴメントの妨げになっていると思うよ。重要なのは、この400年のあいだ、黒人が何を成し遂げようとしてきたのかということで、まずはそのことを考えるべきなんだ。表層的な政治性は本当に必要な変革を達成するうえでは邪魔だと言える。

ジェフ:僕も同感だ。400年ものあいだ、黒人の生命はおもちゃのように扱われ、弾圧され続けて、ひどく破壊されてきた。BLMは400年に渡る制度的な拷問に対抗する闘いで、黒人家庭、黒人街、黒人教育などに対するすべての破壊と闘っている。これは、今後も継続していく戦いだ。BLMによって改善されたこともあるし、変化も起きた。一時的でないことを希望するよ。でもBLM以前より黒人の人生が良くなったと結論づけるのは難しいね。時間が教えてくれるだろうけれど、少なくともより多くの人の意識が高まったのは事実だ。そして結果を見る機会は再び訪れるだろうね。アメリカ国民がよりブラウン(非白人)になるにつれて、白人の恐怖感を見る機会は増えるかもしれない。白人はいままでよりいっそう内省的になるかもしれない。彼らはいままでには経験しなかった気持ち、かつてのように優遇されている状況ではないことをより意識するようになるかもしれない。それがBLMによる変化なのか、単なる偶然かはわからない。でも事実は変わらない。この国はかつてないスピードでブラウンが増え続けている。いまはこの変化に気づく最初の段階なのかもしれないね。アメリカはいつだって白人だけの国ではなかったし、黒人の人口比率は彼らが思っているほどに低くはない。もちろん黒人以外の非白人も増え続けているからね。

なるほど。それはそうと、ジェフはこのコロナ禍で『The Escape Velocity』というオンラインマガジンを創刊しました。今回の『オーヴァーライド・スウィッチ』もそうですが、何かから脱出したいというような気持ちがあるのでしょうか?

ジェフ:音楽は人びとの心を自由にするものだということをつねに忘れてはいけない。そのプロセスにはさまざまなアプローチがある。『オーヴァーライド・スウィッチ』はマインドをリセットして、何か目の前の障害に向かっていくというテーマだ。『The Escape Velocity』は瞬間、比率、A地点からB地点へ到達して自由になる過程をテーマにしている。ふたつのプロジェクトに類似性はあるけれど、どちらも結局は音楽が人を解放するという僕の基本概念に基づくものだ。無から何かをクリエイトすることはとてもパワフルなことだし、そこには自分の感情の延長が存在する。音楽を通して、言葉とは違う次元での会話が可能になる。

なるほど。最後にラファエルさん、最近のデトロイトの音楽コミュニテイはどんな感じしょうか?

ラファエル:若いミュージシャンがたくさんいるよ。デトロイトはいつだってミュージシャンの巣窟だ。素晴らしいジャズ、ゴスペル、ファンク、R&Bのミュージシャンなど多くの才能を輩出しているからね。デトロイトには、例えばロスアンジェルスとハリウッドのつながりのような、いわゆるプラットフォームがない。昔はモータウンがあったけれど。それに、ジェフもよく知っていると思うけれど、デトロイトの公立学校では音楽教育が廃止されてしまった。けれど、それでデトロイトの子供たちのクリエイティヴィティがなくなったわけではない。才能を止めることはできず、何かしら違う形で姿を現してくると思う。僕がデトロイトのシーンで素晴らしいと思うのは、すべてのジャンルがつながっていることだ。それがユニークなサウンドを生み出しているんだと思う。

ジェフ: 違うジャンルのミュージシャンの交流はあるの? ジャズとエレクトロニックとか、ヒップホップとか。

ラファエル:もちろん。とくに若い子たちのあいだでは。お互い何をしているかチェックしあっている。同時に才能ある者はデトロイトを出ていってしまい、他の都市のシーンを支えているという事実もある。ニューヨークに行けば、どんなジャンルでも必ずデトロイト出身のミュージシャンがいるよ。ロスにはたくさんのデトロイト出身のヒップホップ・プロデューサーがいる。例えばKarriem Riggins。ジャズとヒップホップをミックスした最初のプロデューサーのひとりだ。もちろんJ. Dillaも。ニューヨークにもデトロイト出身の偉大なジャズ・ミュージシャンが大勢いる。Gerald Cleaverとかね。

ジェフ:デトロイト・テクノとジャズのミュージシャンのあいだの交流は?

ラファエル:それはマイク・バンクスが長年やってることだよね。Shawn Jones、Jon Dixonといったアーティストはマイクが後押ししてきた。僕もそれに加担している。やらない理由がないだろう?

そうですよね。では、これからもデトロイトから面白い作品が出てくるのを期待しましょう。今日はありがとうございました。ところで、ジェフはDJのブッキングはこの先もけっこう入っているのですか?

ジェフ:じょじょに増えてきているよ。2022年はもうスケジュールがいっぱいになりつつある。いままではプロモーターも政府の要請がいろいろと変わって、なかなか前もってイベントを企画することができなかったけれど、状況が良くなってきて、ヴェニュー、アーティストなど事前にブッキングできるようになってきたので今後は元に戻っていくと思うよ。

(※)The Escape Velocityからのリリースが現在44作品(すべてジェフ以外のアーティスト)、Millsart名義のEvery Dogシリーズがvol.5~13 まで9作(すべてデジタルのみ2020年)、ソロ作品では『Clairvoyant』(アルバム)、「Think Again」 (Millsart名義)、Jeff Mills + Zanza21による「When The Time Is Right」。また、エレクトロニック・ジャズ系のリリースでは、ジェフ自身が関わったThe BeneficiariesとThe Paradoxをはじめ、Byron The Aquarius、Raffaele Attanasioといったアーティストの作品もリリースしている。

Marisa Anderson / William Tyler - ele-king

 ジョン・フェイヒィも影響を受けたというエリザベス・コットンを聴いて、マリサ・アンダーソンはギターにはいろんなチューニング法があることを知った。この、19世紀末生まれの黒人女性フォーク・ブルース歌手のオープンチューニングとその独特なフィンガーピッキング(左利きのコットンは親指でメロディを弾いて残りの指でベースを弾いた)による古典的名曲のひとつ、“Freight Train”でアンダーソンは練習を重ねた。ちなみにコットンの死から26年後の2013年には、アンダーソンはリスペクトを込めてコットンとのスプリット7インチ盤を出している。
 マリサ・アンダーソンの卓越したギター演奏の多くはゴスペルとブルース起源に集約されるかもしれない。が、それがすべてというわけではない。ブルース・ミュージシャンとは異なるオープンチューニングを発明したUKのデイヴィ・グレアムもまた彼女のヒーローのひとりだ。フォークからはじまった彼の音楽がやがてジャズやグローバル・ミュージック(アイルランド、アラブとインド)ともリンクしたように、1本のギター演奏によって描ける音世界はじつに広漠であることを彼女は知っている。初期作品こそブルースが色濃いものの、〈スリル・ジョッキー〉に移籍してからの2018年の『Cloud Corner』や昨年のジョン・ホワイト(ダーティ・スリーのドラマー)との共作ではもっと遠くを歩いているし、自由奔放なアンダーソンの音楽には、行ったことがないところを歩いているときに感じる景色が開けていくような感覚がある。ぼくは彼女の音楽のそんなところが好きなのだ。

 1970年サンフランシスコ生まれのマリサ・アンダーソンの生い立ちでぼくが興味深く思うのは、彼女が19歳のときに大陸横断平和行進に興味を持ったことだ。昨年の『Wire』の記事によれば、のちに彼女は、NYからスタートし、ラスベガス郊外のネバダ核実験場まで歩く行進に参加したという(いったい何ヶ月かかったのだろう)。そう考えるとアンダーソンがウィリアム・テイラー(1979年生まれ)との共作『失われた未来(Lost Futures)』における重要なインスピレーションとしてマーク・フィッシャーの名を挙げていることも充分にうなずける。
 失われた未来──フィッシャーは未来を描けず過去の郷愁に依存する現在をそのように呼んだわけだが、これは先進国全般に見られるひとつの傾向で、いわく「未来の不在は何か別のものに偽装される」。それは音楽商品に即して考えるとわかりやすい。すぐに結果が求められる新自由主義の社会では、新しいことへのチャレンジよりもかつて成功したものの模倣のほうが自然と(あるいは無意識のうちに)促される。とはいえ、欧米のインディ・シーンがそうした閉塞感を打破しようとする意欲を失っていないことは、昨今のUKの若手インディ・ロック・バンド(フォンテインズDCからブラック・ミディまで)を見ていてもわかることで、我々が住んでいる世界のことを伝えようとするマリサ・アンダーソンとウィリアム・テイラーとの共作もまたこの硬直した現在からの解放をもくろんでいるというわけだ。

 ふたりはともにギタリストで、ギター1本で自分のソロ作品の多くを作ってきた人たちではあるけれど、当たり前の話、その演奏表現においてはそれぞれの特徴がある。変則チューニングとフィンガーピッキングを活かし、よりフリーキーな演奏をするアンダーソン、アメリカーナを土台とし、ときにはアンビエントな領域にまで達するテイラー。曲のなかにおける互いの個性は、控えめながら各々の表情を出しているようだ。たとえば表題曲“失われた未来(Lost Futures)”の出だしはアンダーソンだろうし、途中から耳に入ってくるアルペジオはテイラーだろう。“生命と死者(Life And Casualty)”という曲は、美しくシンプルにはじまり、ジャズの即興演奏のように曲が崩れては戻っていく。それから、本作にはギター以外の弦楽器(シタール、ダルシマーなど)の演奏もミックスされている。ゆえに“天国についてのニュース”にはじまり、“水に憑かれて”で終わる『失われた未来』は、テーマこそ重いが、楽曲の音色は豊かで、総じてメロディックな作品になっている。メロディにはアメリカ文化の多様性があり、曲全体からは先述したように、景色が開かれていく感覚がある。それはすこぶる心地よい。

 なお、本作には、“雨に祈る(Pray For Rain)”と“水に憑かれて(Haunted By Water)”といった曲名があるが、これは昨年のポートランドにおける気候変動による山火事(煙で太陽が覆われたほど数日間にわたって延焼し、結果、ロサンジェルスと同じ面積が焼失した)が大いに関係していると察する。今年に入ってもオレゴン州では強烈な熱波と強風から来る大きな山火事が繰り返されている。本作における「失われた未来」には、環境破壊によって失われつつあるものへの言及も含まれているに違いない。

P-VINE & PRKS9 Presents The Nexxxt - ele-king

 レーベル〈Pヴァイン〉とメディア「PRKS9(パークスナイン)」がタッグを組んだ。両者の共同監修によるヒップホップのコンピレーション『The Nexxxt』が本日デジタル限定でリリースされている。タイトルどおり、ヒップホップの次世代を担うアーティストにフォーカスした内容で、〈Pヴァイン〉と「PRKS9」それぞれが選出した計9組が参加。ヒップホップの未来を担う新たな才能たちに注目だ。

P-VINEとメディアプラットフォーム、PRKS9が監修するネクストブレイカーにフォーカスしたコンピレーション『The
Nexxxt』がデジタル限定で本日リリース!

 設立45周年を迎えたレーベル〈P-VINE〉と日本のHIPHOPを中心とするメディアプラットフォーム〈PRKS9〉(パークスナイン)が監修し、お届けするネクストブレイカーなヒップホップ系アクトにフォーカスしたデジタル限定のコンピレーション『The Nexxxt』が本日リリース!
 本作は、P-VINEとPRKS9がそれぞれの視点で「これからブレイクが期待される」アーティストをセレクションした全9曲。PRKS9サイドから嚩、p°niKaとの3人組のフィメール・クルー〈Dr. Anon〉に所属しながらソロとしてもSoundCloudを中心に活動している〈e5〉(エゴ)、7月にリリースしたデビューアルバム『@neverleafout』も話題なコインランドリー生活を送る〈vo僕〉(ボーボク)、名古屋出身のDJ/プロデューサー〈329〉とのジャンルを横断するhyperなコラボ曲を提供した東京出身のラッパー〈AOTO〉(アオト)、自身の留置所体験を記録したnote等で唯一無二な表明を続け、ファーストEP「PISS」のリリースで注目を集めたスカム・ミューズ〈Yoyou〉(ヨユウ)の4組が参加。P-VINEサイドからはS名義でkillaのBLAISEらと結成したクルー〈BSTA〉でも活動し、改名後に本格的なソロ活動をスタートさせた〈STILL I DIE〉(エス・ティル・アイ・ダイ)、15歳の頃からマイクを握り始めて地元福岡は天神親富孝通りを中心に活動し、所属するクルー〈WAVEMENT〉の活動でも注目を集めている〈Evil Zuum〉(イーヴィル・ズーム)、沖縄を拠点に活動し、2021年4月に公開された"HUSTLERz RESPECT"のミュージック・ビデオがすでに26万強の再生数を記録して各所で話題となっている〈UUUU〉(ユーフォー)、MASS-HOLE関連作品への参加でも知られ、全曲NAGMATICビートのEP「M.D.A.S.T ep」のリリースも話題な信州長野の〈MIYA DA STRAIGHT〉(ミヤ・ダ・ストレート)、東京・品川区出身のクルー〈Flat Line Classics〉としても活動し、昨年ソロEP「Get Busy」も発表したオーセンティックなラッパー〈BIG FAF〉(ビッグ・ファフ)の5組が参加。また、アートワークはSATOHの各作品、AOTOの"midrunner feat. Lingna"などでも知られるShun Mayamaが手掛けている。
 多様化していく「ヒップホップ」というジャンルを体現するかのように独自の手法/価値観で音楽をクリエイトしている全9組をピックアップした本コンピレーション。もし気になるアーティスト/楽曲に出会ったなら他のリリース作品も是非ディグって欲しい。

[作品情報]
タイトル: P-VINE & PRKS9 Presents The Nexxxt
レーベル:P-VINE, Inc.
配信開始日: 2021年10月14日(木)
仕様:デジタル
Stream/Download:
https://p-vine.lnk.to/BuzCrK

[TRACKLIST]
1. e5 / KUNOICHI (Prod by KidOcean)
2. vo僕 / The Black Dog (Prod by immortal)
3. Yoyou / Newtype (Prod by Efeewma)
4. AOTOx329 / 808 landing on water (Prod by 329)
5. S TILL I DIE / weakness (Prod by EPIK BEATS)
6. Evil Zuum / Do Better (Prod by QICKDUMP)
7. UUUU / Pusherman (Prod by MRK a.k.a DJ MORIKI)
8. MIYA DA STRAIGHT / yukiyama dojo (randy young savage remix) feat. Eftra, MAC ASS TIGER, BOMB WALKER (Prod by MASS-HOLE)
9. BIG FAF / We Can Do This (Prod by Sart)

【PRKS9】
PRKS9は2020年9月に始動した、国内HIPHOPの新たなハブチャンネル。若手のMVを公募し、PRKS9チャンネルから纏めて公開するMVを広めるためのサブミッション機能を持ちつつ、リリース等のニュース記事掲載、インタビューの実施、MVを始めとした映像制作も請け負う。主要アーティストの情報をカバーすることはもちろん、まだ音源数も少ない、これから来る有望アーティストをいち早く掘り起こすことでも定評がある。

HP:https://prks9.com
Twitter:https://twitter.com/parks_nine
IG: https://www.instagram.com/_prks9_/

地点×空間現代 - ele-king

 ただいまわが国は国会討論の真っ只中なわけですが、経済政策は切実な問題のひとつです。安倍政権時代を通して、日本の貧困率は先進国では中国、アメリカに次いで3番目に高いという、深刻な問題になってしまったのです。そんな時代の空気に合っているとしか思えないゴーリキーの『どん底』、あるいは、インターネット社会における引きこもりにも通じるドストエフスキーの『地下室の手記』などを京都を拠点に活動する劇団「地点」(https://chiten.org/)が音楽バンド「空間現代」とともに、吉祥寺シアターにて連続公演します。
 上演するのは上記の2作のほか、革命への思いと絶望が交錯するブレヒトの戯曲『ファッツァー』、太宰治の『グッド・バイ』も同時上映。どの作品もじつに興味深いです。
 期間は11月18日から12月9日まで。4作が順番に上映されます。『どん底』は11月18 日〜21日、『地下室の手記』は11月25日〜28日、『ファッツァー』は12月2日〜12月5日、『グッド・バイ』は12月9日〜13日。詳しくはホームページを参照してください。URL https://chiten.org

レパートリー連続上演 全公演共通
■会場
吉祥寺シアター
180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町 1-33-22 TEL. 0422-22-0911
■チケット発売日
2021 年 10 月 23 日(土)
■料金 (全席指定席)
一般 前売 3,800 円/当日 4,300 円
学生 前売 3,000 円/当日 3,500 円
4 演目セット券 前売のみ 13,000 円 *地点のみ取扱・枚数限定
■チケット取扱
https://teket.jp/events
*「地点」で検索
*クレジットカード及びコンビニ決済
▽武蔵野文化事業団
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/
TEL.0422-54-2011(9:00-20:00)
▽ローソンチケット
https://l-tike.com/chiten2021/
▽演劇最強論-ing (手数料無料、チケット代のみで購入可)
https://www.engekisaikyoron.net/
▽地点
https://chiten.org/
(4演目セット券のみ取扱・申し込み後に銀行振込が必要になります)
新型コロナウイルス感染症の拡大防止策についてご確認のうえ、ご来場ください。
■お問合せ 地点 075-888-5343 info@chiten.org


地点(ちてん)
演出家・三浦基が代表をつとめる。既存のテキストを独自の手法によって再構成・コラージュして上演 する。言葉の抑揚やリズムをずらし、意味から自由になることでかえって言葉そのものを剥き出しにす る手法は、しばしば音楽的と評される。2005 年、東京から京都へ移転。2013 年には本拠地・京都に 廃墟状態の元ライブハウスをリノベーションしたアトリエ「アンダースロー」を開場。レパートリーの 上演と新作の制作をコンスタントに行っている。2012 年にはロンドン・グローブ座からの依頼で初の シェイクスピア作品『コリオレイナス』の上演を成功させるなど、海外での評価も高い。2006 年、ミ ラー作『るつぼ』でカイロ国際舞台芸術祭ベストセノグラフィー賞受賞。2017 年、イプセン作『ヘッ ダ・ガブラー』で読売演劇大賞作品賞受賞。

空間現代(くうかんげんだい)
2006年結成。メンバーは野口順哉(gt/vo)、古谷野慶輔(ba)、山田英晶(dr)。編集・複製・反復・ エラー的な発想で制作された楽曲を、スリーピースバンドの形態で演奏。これによるねじれ、 負荷が 齎すユーモラスかつストイックなライブパフォーマンスを特徴とする。地点との共同制作にブレヒト作『ファッツァー』(2013年)、マヤコフスキー作『ミステリヤ・ブッフ』(2015年)、シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』(2017年)。2016年、京都・錦林車庫前にライブハウス「外」をオープン。2018年11月3日に空間現代×坂本龍一『ZURERU』をリリース。2019年5月、最新アルバム『Palm』をリリース。2019年度、京都市芸術文化特別奨励者。

Black Country, New Road - ele-king

 2021年はUKのインディ・ロック/ポスト・パンク新世代たちの活躍が目覚しい。ロンドンの7人組、ブラック・カントリー、ニュー・ロードもムーヴメントの中心の一組だ。今年2月5日に鮮やかなデビュー・アルバム『For the first time』を送り出している彼らだが、そのほぼ1年後にあたる2022年2月4日、早くもセカンド・アルバムをリリースする。総力をあげて制作したそうで、これまでのスタイルを大胆に更新した作品になっているとのこと。まだ4ヶ月ほど先ですが、楽しみに待っていましょう。

Black Country, New Road
全英チャート初登場4位を記録、2021年の年間ベスト筆頭として満点レビューを多数獲得した衝撃的デビュー作発売から1年、早くもセカンド・アルバム『Ants From Up There』を2022年2月4日にリリース決定!
ファンの間ですでにライブ・アンセムとして知られる傑作シングル「Chaos Space Marine」が先行曲として解禁!

1stアルバム『For the first time』に対する称賛

バトルスとかサンダーキャットなどにも似た形で、熱狂的なブレイクを果たす予感がビリビリとする - rockin’on
現代のギター音楽における重要なマイルストーン - CLASH
独創的な曲作りと荒々しくもテクニカルな演奏でリスナーを引き込んでいく - Music Magazine
もし世界に救いが必要なら、それは彼らかもしれない - The FADER
名作 - Loud & Quiet 10点満点

ロンドンを拠点に活動する、アイザック・ウッド(ヴォーカル/ギター)、ルイス・エヴァンス(サックス)、メイ・カーショウ(キーボード)、チャーリー・ウェイン(ドラム)、ルーク・マーク(ギター)、タイラー・ハイド(ベース)、ジョージア・エラリー(ヴァイオリン)の7人から成るバンド、ブラック・カントリー・ニュー・ロード。2021年のベスト・アルバムの一つとして各方面から評価され、メディアからの満点レビューが続出、全英チャート初登場4位の快挙を達成した衝撃のデビュー作『For the first time』に続くセカンド・アルバム『Ants From Up There』を2022年2月4日にリリースすることが発表され、アルバムからの先行配信曲「Chaos Space Marine」が公開された。

https://bcnr.lnk.to/afut

本楽曲は既にライブではファンの間で人気の楽曲で、混沌としながらも整然とした楽曲についてフロントマンのアイザック・ウッドは次のように語っている。

これまで書いたなかでも最高の曲だ。
この曲には、アイデアがあれば誰のものであってもすべて投入した。
だから、この曲の制作は、本当に早かったし、ユニークなアプローチでもあったんだ──とにかく何もかも壁に投げつけて、それをすべてくっつけたままにしておく、という感じだった。
──アイザック・ウッド

本作は、バンドが総力をあげたアルバムで、これまであった様式を大胆に更新した作品でもあり、自然に完成した作品でもあり、巧みなバランスの仕上がりとなっている。デビュー作の『For the First Time』では、伝統音楽のクレズマーやポスト・ロック、そしてインディー・ロックを融合させていたが、その独自の製法を『Ants From Up There』では、さらに発展させ、伝統的なミニマリズムやインディー・フォークやポップ、そしてオルタナティブ・ロック、すでに彼ら独特のものとなっている多彩なサウンドを他に類を見ない形で結合させることに成功した。

アルバムのレコーディングは、バンドの長年のエンジニアであるセルジオ・マシェッコとともに、ワイト島のシャーレ・アビー・スタジオで夏に行われた。深いところに根ざしたバンドの信念を詰めこみ、それが結果としてあらわれたアルバムに対して、メンバー自身も大きな満足を感じているという。

ずっと興奮していた。
制作は本当に楽しかった。残りの人生で自分が手がけるもののなかでも、これが最高の出来事になるかもしれないと、認めているようなかんじ。それでいいと思っている。
──タイラー・ハイド

ブラック・カントリー・ニュー・ロードのライブ・パフォーマンスは、すでに音楽ファンから最高級の評価を得ており、英ガーディアン紙は「UKで最高のライブ・バンド」と評した。この秋には、43日間のUKおよびヨーロッパ・ツアー、そして年明けにはアメリカでのソールドアウト・ツアーが予定されている。

待望のセカンド・アルバム、『Ants From Up There』は2022年2月4日にCD、LP、カセットテープ、デジタルでリリース! 国内盤CDには歌詞対訳・解説が封入され、ボーナストラックが収録される。また輸入盤CDは通常盤に加え、ライブ音源が収録された2枚組デラックス盤CDもリリースされる。LPはブラック・ヴァイナルの通常盤、ブルーマーブル・ヴァイナルの限定輸入盤、日本でしか発売されないクリスタル・クリア・ヴァイナルに日本語帯が付いた日本限定盤、ライブ音源が収録された4枚組デラックスLPで発売される。なお、BIG LOVE RECORDSでは数量限定のサイン入りヴァイナルの発売も予定されている。

[商品情報]
label: Ninja Tune / BEAT RECORDS
artist: Black Country, New Road
title: Ants From Up There
release date: 2022.02.04 fri on sale

国内盤CD BRC685 ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/歌詞対訳・解説書封入


日本限定カラー盤2LP(帯付き/クリスタル・クリア・ローズ) / ZEN278JP
デラックス輸入盤2CD / ZENCD278X
輸入盤2LP(ブラック) / ZEN278
限定輸入盤2LP(ブルー・マーブル) / ZEN278X
デラックス輸入盤4LP(ブラック) / ZEN278BX
カセット / ZENCAS278

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12146

TRACKLISTING

[CD / BRC685]
01. Intro
02. Chaos Space Marine
03. Concorde
04. Bread Song
05. Good Will Hunting
06. Haldern
07. Mark’s Theme
08. The Place Where He Inserted the Blade
09. Snow Globes
10. Basketball Shoes
+ Bonus Track

[Deluxe CD / ZENCD278X]
Disc 1
01. Intro
02. Chaos Space Marine
03. Concorde
04. Bread Song
05. Good Will Hunting
06. Haldern
07. Mark’s Theme
08. The Place Where He Inserted the Blade
09. Snow Globes
10. Basketball Shoes

Disc 2
01. Mark’s Theme (Live from the Queen Elizabeth Hall)
02. Instrumental (Live from the Queen Elizabeth Hall)
03. Athens, France (Live from the Queen Elizabeth Hall)
04. Science Fair (Live from the Queen Elizabeth Hall)
05. Sunglasses (Live from the Queen Elizabeth Hall)
06. Track X (Live from the Queen Elizabeth Hall)
07. Opus (Live from the Queen Elizabeth Hall)
08. Bread Song (Live from the Queen Elizabeth Hall)
09. Basketball Shoes (Live from the Queen Elizabeth Hall)

[2LP Tracklist]
Side A
A1. Intro
A2. Chaos Space Marine
A3. Concorde
A4. Bread Song
Side B
B1. Good Will Hunting
B2. Haldern
B3. Mark’s Theme
Side C
C1. The Place Where He Inserted the Blade
C2. Snow Globes
Side D
D1. Basketball Shoes

[Deluxe 4LP]
Ants From Up There
Side A
A1. Intro
A2. Chaos Space Marine
A3. Concorde
A4. Bread Song
Side B
B1. Good Will Hunting
B2. Haldern
B3. Mark’s Theme
Side C
C1. The Place Where He Inserted the Blade
C2. Snow Globes
Side D
D1. Basketball Shoes

Live from the Queen Elizabeth Hall
Side A
A1. Mark’s Theme (Live from the Queen Elizabeth Hall)
A2. Instrumental (Live from the Queen Elizabeth Hall)
A3. Athens France (Live from the Queen Elizabeth Hall)
Side B
B1. Science Fair (Live from the Queen Elizabeth Hall)
B2. Sunglasses (Live from the Queen Elizabeth Hall)
Side C
C1. Track X (Live from the Queen Elizabeth Hall)
C2. Opus (Live from the Queen Elizabeth Hall)
C3. Bread Song (Live from the Queen Elizabeth Hall)
Side D
D1. Basketball Shoes (Live from the Queen Elizabeth Hall)

Jamael Dean - ele-king

 これまでEP「Black Space Tapes」やソロ・ピアノ作などのリリースを重ねてきた〈Stones Throw〉の新星ジャズ・ピアニストが、ついに正式なファースト・アルバム『Primordial Waters』をリリースする。ジャズ・サイドとヒップホップ・サイドに分かれた2枚組の大作になっている模様。ヨルバ族のディアスポラが主題とのことで、テーマの面でも興味深い。注目しましょう。

JAMAEL DEAN
Primordial Waters

Kamasi Washington、Thundercat、Miguel Atwood-Ferguson、Carlos Nino等とのコラボレーションやパフォーマンスを経て、ピアニストJamael Dean(ジャメル・ディーン)の正式なデビューアルバムが遂に完成!!
自身のグループによる演奏を収録したジャズサイドと、その演奏をサンプリングしたヒップホップ/ビート・サイドという、全20曲の注目作!!
Stones Throwとringsにより、日本限定盤MQA対応仕様の2CDでリリース!!

これまでもEPやソロ・ピアノ作で、ジャメル・ディーンはその才能の片鱗をうかがわせた。ラッパーのジャシーク、ビートメイカーのジーラとしても勢力的に音源を発表してきた。そして、待望のファースト・アルバムが届いた。自身のグループ、ジ・アフロノーツと録音されたジャズ・サイドと、その音源を使ったヒップホップ/ビート・サイドの二部構成で、ヨルバ・ディアスポラをテーマとした壮大な物語を完成させた。(原 雅明 ringsプロデューサー)

アーティスト : JAMAEL DEAN(ジャメル・ディーン)
タイトル : Primordial Waters (プライモーディアル・ウォーターズ)
発売日 : 2021/12/08
価格 : 3,000円+税
レーベル/品番 : rings / Stones Throw (RINC82)
フォーマット : 2CD (日本企画限定盤) MQA対応
バーコード : 4988044070684

*MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Official HP : https://www.ringstokyo.com/jamael-dean-3

Lawrence English - ele-king

 ここのところローレンス・イングリッシュのリリースが活発になっている。自身が主宰するエクスペリメンタル・ミュージック・レーベルの老舗〈Room40〉から鈴木昭男、デヴィッド・トゥープとの共演盤『Breathing Spirit Forms』、イングリッシュのソロ作品『A Mirror Holds The Sky』をリリースしたのだ。両作ともフィールド・レコーディングを主体とした音響作品である。環境音に深く没入するようにリスニングすることでリスナーの聴覚の遠近法が刷新されるような見事な音響作品だ。

 今回取り上げるのは、もうひとつのソロ作品『Observation of Breath』である。このアルバムは〈Room40〉からのリリースではない。シアヴァシュ・アミニ、カリ・マローン、FUJI||||||||||TA、ノーマン・ウェストバーグ、ミキ・ユイ、マッツ・アーランドソンなどのアルバムをリリースしてきたスイスの実験音楽レーベル〈Hallow Ground〉からのリリースである。意外に感じるかもしれないが、イングリッシュは同レーベルにおいてマスタリングを手がけてきたので唐突なことではない。
 音楽性は環境音主体の〈Room40〉からの『Breathing Spirit Forms』『A Mirror Holds The Sky』とは異なり、ローレンス・イングリッシュがこれまでリリースしてきた多くのアルバム、特に近年の『Wilderness Of Mirrors』(2014)、『Cruel Optimism』(2017)、『Lassitude』(2020)などで追及されてきたダークなトーンのドローン作品である。ちなみにこれらの作品で用いられたオルガンはブリスベンのミュージアムに収蔵されていた1889年製のオルガンという。

 『Observation of Breath』は、イングリッシュが追求してきた「ドローンという音楽」の達成ともいえるアルバムである。クラシック・オルガンの機能・性能を追求し、人間の呼吸のリズムに深く作用するようなドローン作品に仕上げているのだ。音の持続と循環が呼吸のように持続していると言うべきか。呼吸のように音が生成し、そして変化し、人の感覚の中で音は拡張されていくのだ。
 本作は、シャルルマーニュ・パレスタインの提唱する「マキシマル・ミュージック」に挑戦したドローン作品という。現代的な音響に視点を向ければ、カリ・マローンや FUJI||||||||||TA などのモダンにしてクラシカルなオルガン・ドローン作品の現代的系譜に連なるアルバムともいえよう。ここにあるのはミニマリズムを超えてマキシマリズムに至るドローンである。

 アルバムには全4曲が収録されている。1曲目と4曲目がそれぞれ10分と20分の長尺で、2曲目と3曲目がそれぞれ6分と2分40秒ほどのトラックだ。アルバムの曲は、オルガンの音が中心である。そのアブストラクトなサウンドを聴きこんでいくと、オルガンの音がまるで顕微鏡で拡大されたかのように拡張されていく。
 特にアルバムの最終曲である4曲目 “Observation Of Breath” は、20分に及ぶ長尺の楽曲で、アルバムを象徴するような曲といえよう。オルガンの音色が、柔らかくも霞んだ理想的な音色を生成し、没入的なドローン・リスニングへと誘ってくれる。もちろん1曲目 “A Torso” もアルバム特有のサウンドスケープを鳴らしているし、2分42秒の小曲である3曲目 “And A Twist” では二音の往復によってドローンから旋律へと変化する音楽の原型のようなサウンドを聴かせてくれる。まさにドローン作品の逸品である。

 それにしてもわれわれはなぜアンビエント/ドローンを聴くのか。メロディもリズムも希薄な音響作品になぜ深く魅了されてしまうのか。いろいろな意見があるだろうが、音へのフェティシズムを得る快楽と、心に安らぎと静謐さを与えるためではないか。一定のトーンの持続音の連鎖に耳を澄まし、その微細な変化に耳を澄ますこと。不安定な知覚の揺れを、持続する音によって調整・調律すること。心の平穏を得ること。
 しかしだからこそ、この『Observation of Breath』において各曲が唐突に、途切れるように終わるのはなぜなのかと考えてしまうのだ。ロマン主義的なサウンドを断ち切るような終わり、中断。音という現象の終わり。もしかすると現在のローレンス・イングリッシュは、ドローンを過度に精神的な安定剤のようにするのをどこかで避けたがっているのではないか。音の物質性を追求するマテリアリストのように。

 ロマンティシズムとマテリアリズム。彼にはこの二種の顔がある。これは00年代のローレンス・イングリッシュの頃からみられた傾向だ。例えばマテリアリストなサウンド・アーティストとしての側面は『it's Up to Us to Live』(2009)、ロマンティックやアンビエント・コンポーザーとしての側面は『A Color for Autumn』(2009)というように。しかし10年代から20年代にかけて、この二つが融合しはじめているように感じられるのである。自分はその傾向を非常に興味深く思っている。

 10月にリリースされるローレンス・イングリッシュとジェイミー・スチュワートとのユニット、ヘキサの新作アルバム『Material Interstices』は、そのタイトルからしてマテリアストとしての側面が存分に発揮されているアルバムではないか。
 そう、ローレンス・イングリッシュは、音の探求者であり、音のロマン主義者であり、現代的なドローンの実践者であり、音のマテリアリストでもある。そしてレーベル主宰者とし、さまざまなアーティストを繋ぐ存在でもある。
 彼の音の追求は、さながら人生のように出会いと出会いを重ねながら続いていくのだろう。

Porter Ricks / Thomas Köner - ele-king

 この夏、名作『Biokinetics』が25周年記念盤として再発売されたポーター・リックスだが、喜ばしいことに、長らく入手困難だったセカンド『Porter Ricks』も〈Mille Plateaux〉からリイシューされている。

Porter Ricks
Porter Ricks

Mille Plateaux
2021/9/10

https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/album/porter-ricks

 また、トーマス・ケナーのソロ作品の方も相次いで復刻されており、95年にユトレヒトの〈Barooni〉から出ていたドローン作品『Aubrite』と、97年作『Nuuk』もリイシューされている。こちらも入手困難だっただけに非常にありがたい。ダークで凍てつくドローンを思う存分浴びましょう。

Thomas Köner
Aubrite

Mille Plateaux
2021/9/10

https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/album/aubrite

Thomas Köner
Nuuk

Mille Plateaux
2021/7/16

https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/album/nuuk

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