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Kanye West

GospelHip Hop

Kanye West

Jesus Is King

Getting Out Our Dreams II / Def Jam

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大前至 Dec 13,2019 UP

 様々なゴシップで世間を騒がせたり、あるいは精神的にも不安定な状態でありながら、昨年(2018年)には自らの8枚目となるアルバム『Ye』を含む、「Wyoming Sessions」と名付けられたシリーズ(Pusha T 『Daytona』、Kid Cudi 『Kids See Ghost』、Nas 『Nasir』、Teana Taylor 『K.T.S.E.』)をリリースするなど、プロデューサーとしても精力的に活動を続けていた Kanye West。そんな彼が、今年に入ってから、サンデー・サービス(日曜礼拝)と称したゴスペル・イベントをスタートし、コーチェラ・フェスティヴァルであったり、あるいは実際の教会などでも開催するなど、ファンの想像を超える活動を展開していく。本来であれば、様々なゲスト・アーティスト共にレコーディングを続けていたアルバム『Yandhi』がリリースされるはずであったが、サンデー・サービスを通して、しまいには「ラップは悪魔の音楽」「これからはゴスペルしか作らない」といった旨の発言を繰り広げ、その結果、9枚目のアルバムとしてリリースされたのが、ヒップホップとゴスペルを融合した今回のアルバム『Jesus Is King』というわけだ。

 もちろん、Kanye と宗教(キリスト教)との関わりは今に始まったわけではなく、誰もが思い浮かべるであろう、彼のデビュー・アルバム『The College Dropout』に収録された大ヒット曲“Jesus Walks”などはその代表と言えよう。『Yeezus』、『The Life OF Pablo』といったアルバムなども、そのタイトル自体がすでに宗教色が強かったりと、Kanye にとっては宗教はテーマとして常に存在していた。そもそもブラック・ミュージック自体、その成り立ちに宗教というものが深く関わっており、ソウルやファンクなどもゴスペルとは強く結びついているし、80年代からクリスチャン・ヒップホップというサブジャンルが存在するなど、ヒップホップと宗教は一部では強い関係にあった。とはいえ、これまでトランプ支持の表明など、様々な形で炎上を繰り返してきた Kanye がゴスペル・アルバムをリリースするなんて、彼のいつもの「奇行」のひとつと思う人がいるのも当然だ。まあ、筆者もこのアルバムを聞くまでは、そう思っていたのであるが、実際に聞いてみると、音楽作品としてトータルで判断する限り、十分に Kanye ならではの力作に仕上がっている。

 イントロ的な“Every Hour”ではクワイア(聖歌隊)がピアノをバックに高らかに歌い、このアルバム自体が彼が行なっているサンデー・サービスの延長上であることを伺わせる。Kanye 自らが司祭であるかのように先導し、クワイヤがコーラスを重ねる“Selah”はゴスペル・ヒップホップそのものでもあるが、リード・チューンである“Follow God”などは、トラック自体は非常にタイトで、昨年からの彼のサウンドの延長上にありながら、聖書なども引用しつつ、Kanye ならではの視点で父である神との関係をラップしている。つまり普通にヒップホップとして格好良い上で、宗教的なメッセージを彼ならではのスタイルで伝えており、まさにこれこそ「ラップは悪魔の音楽」と発言した彼が導き出した答えなのだろう。Ty Dolla $ign や久しぶりにふたり揃った Clipse をゲストに迎えるなど、ヒップホップ・ファンが喜ぶ仕掛けも入れつつ、ちゃんとエンターテイメントとして成立させながら Kanye が作り上げたゴスペル・アルバム。もちろん、批判の声を上げる信心深いキリスト教信者も当然いるだろうが、当然、そんなことは彼にとっては折り込み済みだろう。しかし、そんな Kanye 劇場のワン・シーンとして片付けるのは勿体無いくらい、非常に聞き応えあるアルバムであり、いろんなことを考えさせてくれる作品だ。

大前至

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