「CE」と一致するもの

 70年代生まれの私たちにとって、女子小学生の遊びといえば、リカちゃん人形をはじめとする着せ替え人形が定番でした。しかし現代の女児たちは、着せ替え遊びにあまり関心がなさそうです。長女が4~5歳の頃に夫からリカちゃん人形を買い与えられたとき、高いドレスをねだられないようにあわてて古着をリメイクしてリアルクローズな人形服をこしらえ、今後のリクエストに応えるべく裁縫材料を購入したものです。しかし彼女がリカちゃんで遊んだのはほんの一時期。落書きされた哀れなリカちゃんは、ビニールケースの中に無造作に突っ込まれたままです。

「もう着せ替え人形では遊ばないの?」
「友だち誰も遊んでないしー。みんな『アイカツ!』とかゲームとかのほうが好きだしー」

 たしかに娯楽が山ほどある現代において、服を着せたり脱がせたりするだけの遊びは退屈にちがいありません。というか、自分自身もなんでそんな退屈な作業をしていたのか、よくわからなくなってきました。狭い家で地味なお下がりを着るしかなかった当時の庶民女児の一人として、リカちゃんになにがしかの夢を託していたのでしょうか。一方、リカちゃんのドレスとさして変わらない値段でひらひらワンピースを買ってもらえるファストファッション時代の現代女児は、わざわざ着せ替え人形で夢を見る必要はなさそうです。事実、リカちゃん人形の売上は、ピーク時に比べて半分以下に下がっていると聞きました(ITmediaニュース)。

 そんな我が家に、なぜかやってきたのが、「起業家バービー」と「大統領バービー」。


左が「起業家バービー」、右が「大統領バービー」

私が「仕事つらい……」と愚痴っていたら、夫が「起業すれば?」と誕生日プレゼントとして注文してくれたのです。

  「起業家バービー(Entrepreneur Barbie)」は、今年6月にマテル社から発売された、バービーがいろいろな職業に挑戦する「Barbie I Can Be…」シリーズの最新作。髪色と肌の色が異なる4種類のラインナップで、アクセサリー小物はスマホにタブレット端末、ブリーフケースと、「おうちサロン」レベルではなさそうな本格的なキャリアウーマン風です。

 「Barbie I Can Be…」シリーズではこのほか、コンピュータ・エンジニア、歯科医、獣医、パイロット、ライフガード、レーサー、サッカー選手、スキー選手、女子アナ、北極レスキュー隊などに扮したバービーが発売されています。「大統領バービー」(U.S.A. President Barbie)もその一つ。ガチャピンにひけをとらないチャレンジぶりですが、同シリーズに限らずバービーの職業人としての歴史は意外にも長く、1960年代の時点で宇宙飛行士、会社役員、地理教師に、1970年代にはダウンヒル・スキーヤー、外科医にもなっています。フェミニズムがカルト思想扱いされている日本に住んでいる身からすると、うらやましいほどのポリティカルコレクトネス。

 そんなバービーですが、本国ではときに厳しいバッシングにさらされてきたのも事実。いわく、バービーで遊んでいた少女ほど、自分の身体イメージに自信が持てず、小学生の頃からダイエットに励む傾向にある。人種偏見を助長する。ジェンダーに対する固定的なイメージを植え付ける。「ご心配なくお母さんお父さん。バービーで遊んでもあなたの娘さんは拒食症になったり人種差別をしたり生涯年収が減ったりはしませんよ」──そんな保護者へのメッセージが、起業家バービーには込められていそうです。起業家バービーの発売に合わせて、公式サイトで実在の女性起業家10名をフィーチャーするBarbie Celebrates Women Entrepreneurs特設ページを設けているのも、フェミニズムを標準装備している保護者へのアピールの一つなのでしょう。またバービーオフィシャルのTumblr「THE BARBIE PROJECT」でも、少女手作りのバービーハウスやお手製メキシコ民族風衣装などのクリエイティヴな遊びの数々が紹介され、娘の知的発達を阻害したくない親心をくすぐってくれます。

 ところが、今年3月にオレゴン州立大学の研究者らが発表した調査は、こうした試みに水を差すようなものでした。バービーで遊ぶ女の子は、男の子よりも将来の職業の選択肢を少なくとらえており、それは従来のバービーで遊ぶ子もお医者さんバービーで遊ぶ子も変わらなかったそうです。職業の選択肢の数が男の子と変わらなかった女の子は、『トイ・ストーリー』のミセス・ポテトヘッドで遊んでいたグループだけ。


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ジェンダーフリーを推進する
じゃがいも「ミセス・ポテトヘッド」

 女子がセクシーであるべしという価値観を内面化してしまうと、必然的に職業の選択肢が減ってしまうということなのでしょうか。ごつくなったり忙しすぎて髭が生えそうな仕事は避けたいでしょうし……。それでも、建前ではあってもコンピュータ・エンジニアが女の子の職業として提示される環境は、率直に言ってうらやましいなと感じています。私は子どもの頃プログラミングや数学が大好きでしたが、女の自分がそれらを活かした道に進めるなんて夢にも思いませんでした。ロールモデルの代わりに与えられたのは、「女がそんなことに興味を持っても何にもならないのに」という、やはり性別ゆえに大学進学を諦めざるをえなかった母親の複雑そうな顔だけ。大人になってみて、女向けとされる仕事は若さや容姿が必須でキャリアを積みづらい職も少なくないことを実感しました。このことが男女間の格差を生んでいる一因であるようにも思われます。ロールモデル、超重要。

 ともあれ、バービーを一目見た長女は、執拗にねだりはじめました。

「リカちゃんでぜんぜん遊んでないじゃない。バービーならいいの?」
「バービーは背が高くてかっこいいからいいの。化粧が濃いのはちょっとイヤだけど。リカちゃんは……かわいい系かな」
「ピンクはもう嫌いになったって言ってなかったっけ。この人たち、どピンクですけど」
「(パステル)ピンクは子どもっぽいもん。でもこのピンクはかっこいいと思う」

 そういえばバービーたちのチェリーピンク×黒の取り合わせ、長女の最近のファッションに似ています。黒ジャージ下にチェリーピンクのトップスという、私からすると不思議なコーディネートは、「強そう」という理由でお気に入りらしい。

 彼女は2体のバービーを両手に持ち、着せ替えはせず(そもそも着替えは付いていないのですが)それぞれの声をアテレコしてごっこ遊びをはじめました。完全に起業家と大統領になりきっています。すごい、ロールモデルになっている。私は子どもの頃、リカちゃんをロールモデルとしてとらえたことはありませんでした。正直、どんな人なのかすらよくわかっていなかったのです。しかしリカちゃんだって時代に合わせた展開をしているはず。調べてみると……


リカちゃん
おしゃべりスマートハウス
ゆったりさん

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 リカちゃんハウスがスマートハウスになっていました。そっち方面に進化していたのか。小物類も、洗濯乾燥機、ルンバ風のロボット掃除機、電動自動車と、最新家電事情を反映しています。しかしこれ、女児は喜ぶのでしょうか。電動自転車で双子の送り迎えもラクラク! 太陽光発電なら電気代もオトクだし、洗濯乾燥機とルンバがあれば夫が非協力的でもどうにかなるワ~って、それ家事育児と仕事を一人で担うお母さんの願望なのでは? よくよくスマートハウスの商品写真を見てみると、台所でお菓子作りをしているお母さん&リカちゃんに、ダイニング・テーブルで新聞を読んでいるお父さんと、家は最新型でもジェンダー観は昭和のままです。写真まんがでは、リカちゃんのドジっ子ぶりも昭和風。あらたにおともだちに加わったキャラの将来の夢は、「ヘアスタイリスト」「トップモデル」「アイドル」「トリマー」「へアメイクアップアーティスト」と、ファッション系で占められています。夢に何を選ぼうが自由とはいえ、偏りすぎというか、リアル女児の夢ももう少しばらけているように思います。これでは起業家リカちゃんや大統領リカちゃんはもちろん、SEリカちゃんも地方議員リカちゃんも生まれそうにありません。家電をきわめてカツマーリカちゃんになれば、意識高いバービー勢に対抗できるかもしれませんが……。

 とはいえ、かの小保方さんがなぜあの論文とあのノートであの地位まで上り詰めたのか、と考えたときに、6歳児ですら嫌がるパステルピンクを積極的に取り入れ、昭和のドジっ子のような実験ノートの取り方をし、理詰めではなくうるうるの瞳で訴えるといった「リカちゃん好きの女児のまま大人になった感」が、大きく介在しているであろうことを思わずにはいられないのです。エライおじさんたちの判断力を奪うほどのピュアな女児力(プリンセス細胞!)。科学の世界だから問題になっただけで、文化系業界や実業界ならあのまま成功し続けただろう、とも感じます。日本の女の子が好きな道で成功するには、リカちゃんをロールモデルにするのが結果正解なのかも。そんなことをぐるぐる考えていたら、ごっこ遊び継続中の娘からこんな声が。

「私ね、29歳で大統領って言ったけど……あれはウソなの」
「実は私も、社長じゃないの」

 虚言癖バービーになっていました。まあそうですよね。身の回りに女性社長も、女性大統領もいないもの。『OECDジェンダー白書――今こそ男女格差解消に向けた取り組みを!』によれば、日本は子育てをしながら働く女性の、男性との給与格差が先進国で最大(男性の39%)なのだそうです。残業ができないために出産前までの職種に戻ることが難しく、パートタイム派遣に就いている私も、格差を構成する母たちの一人。そんな日本の母たちの姿を見ている女児が、人形だけでアメリカンドリームを抱けるはずもなく。やっぱり自分が起業するしかない……のかも。

Arne Deforce & Mika Vainio - ele-king

 現在活動休止中というフィンランドのテクノイズ・ユニット、パン・ソニック。彼らはテクノというコンテクストに、ノイズ/ミュージックを導入した偉大な先駆者である。

 そのパン・ソニックの(元?)メンバー、ミカ・ヴァイニオとイルポ・ヴァイネサンが、ほぼ同時期にノイズ/ドローン・アルバムをリリースした。ミカ・ヴァイニオはチェロ奏者アルネ・デフォルスとのコラボレーション・アルバム『ヘーパイストス』、イルポ・ヴァイネサンはディルク・ドレッセルハウス(シュナイダーTM)とのユニット、エンジェルの新作『テラ・ヌル.』を発表したのだ(両者ともレーベルは〈エディションズ・メゴ〉)。
 もっともふたりがソロ・ワークでドローン/ノイズ的なサウンドを聴かせるのは以前からのこと。特にミカはパン・ソニック的なビートとは違う非反復的なリズムをソロ作品で展開してきたのだからとくに目新しいことではない。だが、この2作品を聴き比べていくことで、ふたりのアーティストの個性があらためて浮き彫りにもなる。
 それほどまでにこの2作品は対照的だ。まず、『ヘーパイストス』において、ミカ・ヴァイニオはアルネ・デフォルスとのふたりだけで音を生成している。対してイルポ・ヴァイネサンのエンジェルは、ディルク・ドレッセルハウスとのユニットであるが、複数の音楽家がゲスト参加をしており、彼らとの共闘によって録音されたものである。
 さらには、ミカはソロ・別名義・コラボレーションと旺盛なソロ活動を展開しているが、イルポは寡作だ。エンジェルとしても2011年『26000』以来、約3年ぶりの新作リリースというのも対照的ともいえよう。
 
 それぞれの作品を検討してみよう。まず、ミカ・ヴァイニオとアルネ・デフォルスのアルバムは、チェロと電子音の極めて物質的な交錯による音響作品だ。チェロ奏者アルネ・デフォルスはヤニス・クセナキスやモートン・フェルドマンの難曲も弾きこなし、フランスの現代音楽・古楽レーベル〈イーオン〉からアルバムもリリースしている名演奏家だ。もはや「出せない音はない」とまでいわれている人である。
 『ヘーパイストス』においても、アルネはミカの繰り出す強烈な電気ノイズに真っ向から対峙し、弦が芯から震えるような強烈な音響=ノイズを鳴らしている。それはチェロという楽器の極限への挑戦のようである。さらにその轟音の狭間に不意にチェロ特有の繊細な美音をたおやかに奏でもするのだ。
そしてミカの発する電気ノイズも、アルネが鳴らす弦のハードコア・サウンドに呼応するように、マテリアルな電気雑音を放出していく。まさに電気と弦の物質的恍惚。ちなみに「ヘーパイストス」とは炎と鍛冶の神ということだが、炎をアルネ、鍛冶をミカと置き換えることも可能かも知れない。
 また、本作に通低するリズムは、ミカのほかのソロと同じく非反復的な感覚が濃厚だ。二人の音はぶつかりあい、衝突し、そこから新たな音が生まれていく。その意味で、本作は、ここ数年のミカ・ヴァイニオ作品の中でも、もっともハードコアな音響作品といえよう。ミカは現代音楽と電子音響以降のノイズ・ミュージックの融合/交錯に成功している。

 では、イルポ・ヴァイネサンとディルク・ドレッセルハウスによるエンジェルはどうか。このユニットも基本的にはノイズ/ドローンな音響を聴かせてくれる。とはいえ、2002年のファースト・アルバム『エンジェル』(〈ビップーホップ〉)にもディルクのギターはフィーチャーされており、2006年の『イン・トランスメディアーレ』(2005年にクラブ・トランスメディアーレでの録音)でも、チェロ奏者・作曲家ヒルドゥル・グズナドッティルをコラボレーターに迎えていることからもわかるように、そもそもこのユニットは活動当初から電子・電気ノイズと生楽器の融合を目的として活動していたといえる。〈エディションズ・メゴ〉より2008年にリリースされた『カルムイク』でも、ヒルドゥル・グズナドッティルはアルバム全編を通して演奏し圧倒的な存在感を示している。前作『26000』(2011)にもヒルドゥルは参加しており、もはや準メンバーといっていいほどだ(ちなみにこの『26000』には、BJ・ニルセンがエレクトロニクス、オーレン・アンバーチがギターで参加!)。
 そして最新作『テラ・ヌル.』においては、ヒルドゥル・グズナドッティルに加え、ミカとの競演経験もあるアルゼンチン出身のベテラン・インプロヴァイザー、ルチオ・カペーチェがソプラノ・サックスやクラリネットなどで参加しているのだ。なんという豪華さ。

 そんな『テラ・ヌル.』は、ディルク・ドレッセルハウスのどこか寂しげなギターからはじまる。やがて電子ノイズが絡まり、4者は音楽/音響を行き来しながら、ノイズ/ドローンの洪水を生み出していく。彼らは本作を「ダーウィン的な進化のドローン」と語っているようだが、ある種の生命の進化のように、互いに呼応しながら生成と淘汰を繰り返し、ある必然性を持って音響が生まれているように思える。とても演奏的なドローンだと思った。

 端的にいって、同じように楽器を導入したドローン/ノイズ作品でも、ミカ(たち)の作品は、マテリアル/マシニックな音響であり、対してイルポ(たち)のサウンドは、より音楽的な反復を聴きとることができるのだ。いわば「演奏」を感じるのである。そう、ふたつに分裂したパン・ソニックは、ドローン/ノイズという共通項を持ちつつも、非反復と反復、音響と音楽、放出と演奏、テクスチャアルとコンセプチュアルという両極でサウンドを発生しているといえる。

 まるでプラスとマイナスのように対極/対照的な音を生み出すミカとイルポの現在。その音は、90年代から現在の音響シーンを貫く貴重な存在である。ゆえにわれわれパン・ソニック・マニアは、いまも彼らの動向から目が離せないのだ。

黒田大介 (kickin) - ele-king

WAH WAH(毎月第3金曜@The Room)、IN BUSINESS(不定期@UNIT)、kickin(毎月第1日曜@Club Cactus)でレギュラーDJやっております。
今回は、LIQUIDROOM 10周年「A Tribute to Larry Levan 2014」ニッキー・シアーノ来日に因んで<the GALLERY>がスタートした1972年にリリースされた曲を選びました。
https://www.liquidroom.net/schedule/20140720/19588/

In 1972 (2014.07.10)


1
Carleen & The Groovers - Can We Rap - CJB

2
Bobby Womack - Across 110th Street - UA

3
The Fabulous Mark III - Psycho - Twink

4
Miles Davis - On The Corner - Columbia

5
Fela Kuti & The Africa 70 - Shakara (Oloje) - EMI

6
Ernie & The Top Notes, Inc. - Dap Walk - Fordom

7
Patti Jo - Ain't No Love Lost - Scepter

8
The J.B.'s - Hot Pants Road - People

9
Alice Clark - Never Did I Stop Loving You - Mainstream

10
Al Green - How Can You Mend A Broken Heart - Hi

Alexis Taylor - ele-king

 いやあ、高い。イギリスのポンドがどんどん高くなってきている。たとえば、昨年から人気が急上昇している〈ザ・トリロジー・テープス〉の12インチ・シングルは、もはやLP1枚分の価格になってしまった。〈リーボック〉と〈パレス〉のコラボ・スニーカーの映像でも強靭なノイズを添えていたリゼット(Rezzet)の新作EPが発売されるようだが、レーベル直販だと送料込で3000円とな……。日本のレコード・ショップがある程度安く仕入れてくれればいいのだが、日本に入ってこないレコードだってある。こうなるとアマゾンの利用は避けられない……。なんて、こんな風にお困りの方は少なくないのでは? 他ならぬ本作『アウェイト・バーバリアンズ』もそうだ。7インチ付きの限定盤は結局、ずいぶんな高値で通販することになった。

 昨年の夏はアバウト・グループで『ビトゥウィーン・ザ・ウォールズ』をリリースしたアレクシス・テイラーことアレ様。どうやらホット・チップとしての活動はまだしばらくないようだ。
 昨年のソロEP『ナイム・フロム・ザ・ハーフウェイ・ライン』のレヴューでもふれたが、デモ・テープ趣味というか、絵のアウトラインまで描いて色は塗らないアレ様のセンスが本作にももれなく反映されている。一部のストリングスを除いてすべてアレ様が楽器を演奏している、だけでなく、録音もプロデュースもアレ様自身の手による、まさに純然たるソロ作だ。全編にわたってビートはほとんどなく、ピアノの独走にちかい楽曲さえある。『ビトゥウィーン・ザ・ウォールズ』で垣間見られたフォーク趣味も、バンジョーの音色でより際立っている。キーボード/アコースティック・ギター/ドラムなど、ひじょうに簡素な伴奏にのせて、さながらボニー・プリンス・ビリーのように粛々と弾き語る。

 それにしても、相変わらずアレ様の音楽は親密的な空気をもっていて、ドアを閉めきったスタジオ=すなわちアレ様の音楽部屋で新作のデモ演奏をきいているかのようだ。その密室感=近さを息苦しいと感じたり、苦手におもう人もいるだろう。しかし、アレ様はそんなことは気にしていないのだ。彼は彼の制作意欲に基づいて音楽をつくっていくだけ。たとえピッチフォークでの点数が低かろうが、僕がまわりくどくレヴューを書いたところで、アレ様にはなんの意味もなさない。と、わざわざ書きたくなるほど、ひとりの男の完結した世界が、たしかな強度をもって本作には真空パックされている。ダンスフロアを裏切ってにわかにフォークに逃げた、というわけではないことは、そもそもホット・チップ自体が当初はフォークのスタイルではじまっていたことを考えれば納得のいくところだ。

 エルヴィスにディランにホイットニーにプリンス──ポップ・ミュージックの先人たちの名を歌うアレ様の姿からうかがえるのは、自分の趣味をあきらかにして誰かと共有したい欲求。「いつだって他人の音楽のことを考えているし、つねに音楽を聴いていることで、自らにインスピレーションを与えている」と語るほど、とても純粋にいち音楽ファンであり、そうした謙虚ながらノーブルな態度を表明することで、彼と音楽との関係性に……いや、彼とリスナーの間に、だろうか、ふかい喜びと同時に疑念が生まれる。つまり、アレ様がこれから先どれだけ音楽をつくっていったとしても、じつは彼はエルヴィスやディランやホイットニーやプリンスのただのファンでしかないのではないか、というアレ様ファンとしてのコンプレックスのような疑念だ。自らの才能をアピールしたりすることなく、参照先をいつでも語る謙虚さは、ファンに歴史を顧みることを促すという意味ではすばらしい。しかし歌詞になってでてくるとどうだろうか、ソロ作はいつもデモ・テープみたいだし……。なんておもってしまうのも事実。参照先を免罪符としているのでは、という疑念がなくもないのだ。もちろん、アレ様のことだからそんなつもりはないのだろうが。つまり、アレ様ファンは、彼を最高だと手放しでいえるような、完成されたアルバムをいまだに欲している。僕が最高だと言いたいのは、エルヴィスやディランやホイットニーやプリンスではなく、アレ様なのだから。
 本作を聴いていて、驚くような音の瞬間はないかもしれない。が、ひとりの人間を深追い/深読みして音楽を聴くのが趣味のひとには、ぜひ聴いてみてほしいアルバムだ。

■参照記事
Alexis Taylor: | Consequence of Sound:
https://consequenceofsound.net/2014/06/alexis-taylor-no-more-barriers/

She Talks Silence - ele-king

 東京のインディーズ・シーンなんて言うとじつに抽象的で窮屈な気持ちになってしまうが、そんな渦中においてそれっぽく飾られたぼやけた存在ではなく、主張せずとも目に焼きつけられるはっきりとした色彩をもち、くっきりとピントの合った独自の美学を貫くバンドが2組。ベッドルームから現れた甘い劇薬、山口美波と河合亜由美による女性デュオ、シー・トークス・サイレンスと、みんなよく知る多くのCM曲からアーティストのプロデュース/エンジニアも手掛けるというアナザー・サイドを持つ日陰のポップ職人、橋本竜樹によるソロ・プロジェクト、ナガルジュナ(Nag Ar Juna)の12インチが新進レーベル〈de.te.ri.o.ra.tion〉より同時にリリースされた。

 シー・トークス・サイレンス(以下:STS)の『When It Comes』は、昨年密かにカセットのみでリリースされ、すでに入手困難となっていた6曲入りミニ・アルバムの新装アナログ盤。アートワークも新たに最新型のSTSを堪能することができて耳寄りである(なによりヴィニールならではの音の厚みと艶が増していてうれしい!)。内容はというと、新曲とレア・トラック(コンピ提供曲やライヴ会場のみで販売していた曲)を集めたもので、これがすでに完成された彼女たちの美意識に従いつつも、いつになく多彩な陰影と色調をもった表情を見せてくれて鼓動が高鳴る。時に華やかに、時に危うげに。これまでは山口(ギター/ヴォーカル)による宅録プロジェクトという印象が強かったが(詳細は江森丈晃編・著『HOMEMADE MUSIC』で確認してほしい。そこには山口が初めてギターとMacを買ってから、わずか2年であれよあれよという間に1枚の7インチとアルバム『Noise & Novels』(2010)をリリースするまでの経過を記した制作日誌が抜粋されている)、サポートだった河合(ドラム/ベース)を正式メンバーに迎えたセカンド『Some Small Gifts』(2011)を経てリリースされた本作は——手の平を合わせて高らかにつき上げた2人のアートワークが象徴するように——デュオとしてのSTSの方向性(結束)がさらに固まり、ライヴでの演奏が重視されているのだろうか、楽曲の骨格もより美しく研ぎ澄まされたものとなっている。

 1曲め“Walk Away”から乾いたカッティング・ギターと吐息のようにそっと囁かれるヴォーカル、陰りのあるメロディとコーラスが疾走感を伴って転がる。これは名曲の予感。2曲め“Just Like War”は、機械仕掛けのリズムに這いずるようなベースが耽美な楽曲の輪郭を際立たせるダーク・ウェイヴな新機軸。自らディレクションを務めたMVでも見てとれるように、黒を基調とした映像に鮮烈な赤が差し込まれ——まるでブルース・ギルバートの『This Way』(1984)のアートワークよろしく——細く長く伸びた腕、むすんでひらいて、絡み合う手、そして「HOPE」と「ANGEL」の文字が交錯するさまには背徳感すら覚えてしまう。3曲め“There's No”は、インディ・ロックだけに留まらないSTSのもう一つの動機「怒り」が垣間見えるハードコア曲。彼女たちがライヴであぶらだこのカヴァーを披露しているのも頷ける。つづく4曲め“Holy Hands, Holy Voices”は、“Walk Away”同様にインディ・ロックのマナーに則ったSTSの代表曲だ。ハンマービートにぐしゃっと歪んだギターのコード・ストローク、その上にキーボードの淡いメロディが寄り添いメランコリックに駆け抜ける。そして、呪術的なリズムとヴォーカルが印象的な“Long Ways”を経て、マリンでデカダンスな6曲め“Rosie”が海風のように横切り、アルバムはエレガントに幕を閉じる。

 〈de.te.ri.o.ra.tion〉を主宰する橋本竜樹=ナガルジュナの『Doqu』は3曲入りの12インチEP。2010年にリリースされたファースト・アルバム『How Many Friends Can Die Happily?』が橋本によるエコーまみれの宅録ひとりポップだったのに対し(これがまた80年代後半に残されて、誰にも気づかれず忘却の彼方に消えてしまった奇跡のインディ・ポップ盤を発掘したような悦びを与えてくれる)、3年ぶりに登場したこのEPはライヴではお馴染みのバンド体制で録音された意欲作である。そして、バンドの面子がクセがあるようでないようでかなりあるというかめちゃくちゃある強者ぞろい。ドラムに須田洋次郎(ミツメ)、ベースにJUN(80KIDZ)、キーボードにYUJI ANDO(golf)、ギターにPUNPUN(ニュー・ハウス)を迎えたサウンドは、ソフトな質感をもちながらもじつに奥行きがあり、何度も聴き返してはその音の奥に触れたくなってしまう。

 異様なまでに郷愁を誘うタイトル曲“Doqu”。西に傾く太陽と、長い影を伸ばすハリボテのような郊外団地のビル群。そんなシルエットが目に浮かんで殺伐とした気持ちにさせられるが、時折の夢のように現実離れしたサイケデリックなサウンドが視界を薄明るく照らしてくれて救われる。そして、そこにのせられる、「壊れたのはぼくの遠いドク(毒)/辿ったのはぼくの遠いドク(毒)」なんて言葉が柔らかい光をねじ曲げ、ゆるやかに流れる時間は一見爽やかで美しくもありながら、妙な孤独感を残す。STSがディレクションを手掛けたMVも、牧歌的でモノクロームな世界に浸食されていてひどく詩的だ。つづく“Sasage”は、フルートの音色が切なく、「若さを捧げた/長い日々が終わる」といった言葉が冬枯れ感を残すネオアコ曲。そして、3曲め“Miscellany(1987, 1988 and 1993)”は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3枚めのように繊細で、ミニマル・ロック化する終盤に現れるけたたましいヴァイオリンがクールにスパークしてガヤガヤとした喧騒をきたす。

 これが東京の「いま」なのか? と問われると答えに窮するところもあるが(というかそんなことはどうでもいいな)、勃発的に現れるのではなく、出てくるべくして姿を現し、具体的にコミットするシーンを持たず、頑固に、冷静に、音楽への熱情と、気高く筋金入りのDIYスピリットを最大の武器に、独創的な魅力を放つ彼らの存在はどこにも類のないものだ(STSの初期の曲にはディス・ヒートやジョセフKのフレーズを引用した曲も!)。先日、テイ・トウワを中心とした事務所〈hug inc.〉にも仲間入りしたシー・トークス・サイレンス。そして、これから自身の活動のほかに〈de.te.ri.o.ra.tion〉のリリースも活発化していくというナガルジュナ。本作のリリースによって、彼らへの羨望の眼差しはさらに増殖し、蜜に群がる蜂のように集まってくることは間違いないだろう。
 しかし、注意も必要だ。砂糖菓子のように甘い誘惑をちらつかせつつも、噛めば痺れがじわりと口に広がる毒の入ったキャンディも用意されていてまったく油断ならない。すべての心に茨を持つ少年。そして筆者のようにかつては茨を持っていた(はずの)中年たちの動揺は、いつまでたっても止まらないのである。

DJ Kenji Hasegawa (gallery) - ele-king

※7/20のトリビュート・トゥ・ラリー・レヴァンに向けて、彼の偉業に敬意を表しつつ、東京のクラブ・レジェンド達から伝えられたラリー関連の楽曲の数々のなかから、特に自分が今好きな曲をチャートにしました。7/20はビッグ・セレブレーション!! 皆で集いましょう!

more info
https://www.liquidroom.net/schedule/20140720/19588/

Tribute To Larry Levan


1
Man Friday - Love Honey, Love Heartache (Victor's Tribute Mix) - Vinylmania

2
Man Friday - Winners (Dance Version) - Warner Bros.

3
NYC Peech Bpys - Real Love - King Street

4
Lora - Wax The Van (Jon's Dub) - Jump Street

5
Chaz Jankel - No.1 (Dub Mix) - A&M

6
Rafael Cameron - Boogie's Gonna Get Ya (Instrumental) - Salsoul

7
Grace Jones - My Jamaican Guy - Island

8
Erons - Land Of Hunger - Island

9
Chocolette - It's That East Street Beat - Atlantic

10
Loleatta Holloway - Strong Enough (Ultimate Mix) - Active Records

The Antlers - ele-king

 ゲイの同僚からジ・アントラーズの新譜CDを貸してもらった。
 彼は別の保育施設に転職することになった。職場で一番仲が良かった人間が去るのはやはり寂しい。
 「君は非ヨーロッパ圏から来た非ホワイトな外国人だし、僕はゲイだ。あるグループの英国人父兄には絶対に受け入れられない保育士なんだよ」
 と言った彼とは、おもむろに不快な視線をこちらに向ける保護者(この層は白人だけではない)だの、「You are yellow! Your skin is so yellow!」と4歳のお嬢さんに言われても耐えなければならない純商業的保育施設従業員の辛みだの、といった非常にアンクールな、頑なにはなりたくないけどやっぱマイノリティーだといろいろあるんだよね。みたいなことをランチ休憩に愚痴り合える仲だった。
 だから、そんな同僚がいなくなるのはとてもサッドだ。そんな心情にジ・アントラーズの新譜は妙にフィットした。なんでまた50歳にもなろうというばばあがこんなおセンチなものを聴いてるんだ。という気はするが、今年の夏は気分が下向きである。

 おセンチ・ロックというのは今世紀のUKポップ&ロックの人気ジャンルだ。代表的なバンドはコールドプレイやキーン。メロディアスで感傷的というのは英国には昔からあったジャンルだが、これらのバンドには例えばザ・スミスのような暗さの突き抜けはなかった。
 が、一方でUSのジ・アントラーズの『Hospice』を聴いた時には、お。と思った。『Burst Apart』を聴いた時は、グリズリー・ベアやん。と思った。で、5枚目にあたる『Familiars』では、“Palace”という曲の物寂しいブラス音が妙に沁みて日本の小学校の下校時間を思い出し、こりゃブライトンの浜辺でブルーグレーの空を見上げながらぼんやり聴く曲だな。と思っていると、The AntlersがYoutubeで公開した同曲のイメージ写真に、数年前に燃え落ちたブライトンの埠頭娯楽施設の写真が使われていた。
 なんでまたニューヨークのバンドがブライトンなのか。
 レヴューしてくれと呼ばれたような気がした。

               ********

 SAD、PAIN、BEAUTY。といった言葉がだいたい彼らのレヴューにはよく使われている。ヴォーカルのピーター・シルバーマンの声(楽曲によっては女声にしか聞こえない)が圧倒的に劇的で、儚げに震えたり、ひゃーーーと唐突にビロードのような高音で裏返ったりするので、THEATRICALやMOODYもよく使われる形容詞だ。まあ若いうちならこういうのもいいのだろうが、婆さんの年齢になってくるとアルバムを通じてエモーショナルな世界を展開されると「うへー。」となって普通は途中で止める。だから、「お。」とは思ったもののThe Antlersをまともに聴くことはなかったのだ。
 が、今回の『Familiars』はアルバムを通して何度でも聴ける。JAZZYになったからだろう。「夕暮れブラス」みたいなホーンの音がとても新鮮で、ひたすら床を這いつくばって悲しがっている感じではなく、それに飽きて起き上がり、ベランダから夏の空を見ている感じがある。
 陰気だったり、感傷的だったり、内省的だったりすることをサッドと呼ぶなら、近年のUSはサッド・ソング流行りだ。サン・キル・ムーン、ベック、ラナ・デル・レイ。セイント・ヴィンセントのアニーが「泣きながら歌ったら1テイクで済んだ曲がある」と言っているインタヴューを読んだが、いったいみんな何がそんなに悲しいのか。
 しかしサッド・ソングというものは、泣いている自分を幽体離脱したもうひとりの自分が外側から見ていなければエレガントには聞こえない。そういう意味では、『Familiars』は珍しくエレガントなサッド・ソングズ・アルバムと言えよう。いみじくも本作で一番素晴らしい楽曲のタイトルは“ドッペルゲンガー”という。

僕が鏡の後ろに閉じ込められている時、僕の声は聞こえる?
 僕の静かなる熱狂のせいで吠えてしまう僕の分身の声が?"Doppelgänger"

 US産のジ・アントラーズは、本アルバムでザ・スミスとシガー・ロスの間に位置するエレガントなバンドに成長した。そのエレガンスとは「醒め」や「客観性」という言葉でもいい。が、それは音楽やリリックスを作ることに対するある種の「硬質さ」でもあろう。

               *******

 さて、今月はモリッシーの新作アルバムが控えている。
 いよいよサッド・ソング界のキングの登場である。客観性と主観性のあいだにある境界線を縦横無尽に行き来するあのキングの新譜を期待して、わたしは寝ることにする。

interview with Ike Yard - ele-king

ダーク・アンビエントがもっとも盛んなのは、これといった特定の場所というよりも、おそらく僕たちの脳内だ。「ダークネスに対する大衆の欲望を甘く見るな」という台詞は、2012年のUKで話題になった。

 アイク・ヤードは、今日のゴシック/インダストリアル・リヴァイヴァルにおいて、人気レーベルの〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉あたりを中心に再評価されているベテラン、NYを拠点とするステュワート・アーガブライトのプロジェクトで、彼は他にもヒップホップ・プロジェクトのデスコメット・クルー、ダーク・アンビエント/インダストリアルのブラック・レイン、退廃的なシンセポップのドミナトリックス……などでの活動でも知られている。ちなみにデスコメット・クルーにはアフロ・フューチャリズムの先駆者、故ラメルジーも関わっていた。

 アイク・ヤードの復活はタイミングも良かった。ブリアルとコード9という、コンセプト的にも音響的にも今日のゴシック/インダストリアル・リヴァイヴァルないしはウィッチ・ハウスにもインスピレーションを与えたUKダブステップからの暗黒郷の使者が、『ピッチフォーク』がべた褒めしたお陰だろうか、ジャンルを越えた幅広いシーンで注目を集めた時期と重なった。世代的にも若い頃は(日本でいうサンリオ文庫世代)、J.G.バラードやフィリップ・K・ディック、ウィリアム・S・バロウズらの小説から影響を受けているアイク・ヤードにとって、時代は巡ってきたのである。


Ike Yard
Remixed [ボーナストラック4曲(DLコード)付き]

melting bot / Desire Records

IndustrialMinimalTechnoNoiseExperimental

Amazon iTunes

 先日リリースされた『Remixed』は、この1〜2年で、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から12インチとして発表されたリミックス・ヴァージョンを中心に収録したもので、リミキサー陣にはいま旬な人たちばかりがいる──テクノの側からも大々的に再評価されているレジス(Regis)、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉からはトロピック・オブ・キャンサー、〈トライアングル〉とヤング・エコーを往復するヴェッセル……、インダストリアル・ミニマルのパウェル、〈ヘッスル・オーディオ〉のバンドシェル、フレンチ・ダーク・エレクトロのアルノー・レボティーニ(ブラック・ストロボ)も参加。さらに日本盤では、コールド・ネーム、ジェシー・ルインズ、hanaliなど、日本人プロデューサーのリミックスがダウンロードできるカードが付いている。
 
 7月18日から3日間にわたって新潟県マウンテンパーク津南にて繰り広げられる野外フェスティヴァル「rural 2014」にて来日ライヴを披露するアイク・ヤードが話してくれた。

初めてレイム(Raime)を聴いて好きになったときに〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉に音源を送った。すぐに仲良くなって2010年にロンドンで会ったよ。実はまだいろいろリリースのプランがあって、いま進んでいるところだ。

80年代初頭のポストパンク時代に活動をしていたアイク・ヤードが、2010年『Nord』で復活した理由を教えてください。

ステュワート・アーガブライト:2010年の『Nord』は、2006年の再発『コレクション!1980-82 』からの自然な流れで、またやれるんじゃないかと思って再結成した。アイク・ヤードは2003年と2004年にあったデスコメット・クルーの再発と再結成に続いたカタチだ。
 両方に言えることだけど、再結成してどうなるかはまったくわからなかったし、再結成すること自体がまったく予想していなかった。幸運にもまた連絡を取り合ってこうやって作品を作れているし、やるたびにどんどん良くなっているよ。

『Nord』が出てからというもの、アイク・ヤード的なものへの共感はますます顕在化しています。昨今では、ディストピアをコンセプトにするエレクトロニック・ミュージックはさらに広がって、アイク・ヤードが本格的に再評価されました。

SA:そうだね。アイク・ヤードのサウンドは世代をまたいで広がり続けている。いま聴いてもユニークだし、グループとしての音の相互作用、サンプルなしの完全なライヴもできる。1982年には4つのシンセサイザーからひとつに絞った。再結成したときはコンピュータ、デジタルとアナログ機材を組み合わせた。『Nord』は再結成後の最初の1年をかけて作ったんだけど、ミックスでは日本での旅やヨーロッパで受けたインスピレーションが反映されている。

ブラック・レイン名義の作品も2年ほど前に〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から再発されました。

SA:初めてレイム(Raime)を聴いて好きになったときに〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉に音源を送った。すぐに仲良くなって2010年にロンドンで会ったよ。実はまだいろいろリリースのプランがあって、いま進んでいるところだ。

今回の『Remixed』は、〈Desire Records〉と〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉との共同リリースになっていますが、このアイデアも〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉からだったのでしょうか?

SA:レジス(Regis)のエディットが入っている最初のEP「Regis / Monoton Versions 」は〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉との共同リリースで、その後は〈Desire Records〉からだ。
 レジスとの作業は完璧でお互い上手く意見を出し合えた。スタジオを一晩借りて、そこにカール(・レジス)が来て、ずっと遊んでいるような感じだった。3枚のEPにあるリミックス・ヴァージョンを1枚にするのは、とても意味があったと思う。他のリミックスも良かった。新しい発見がたくさんあった。レジスが"Loss"をリマスターしたときは、新しいリミックスかと思うくらい、まったく違った響きがあったよ。
 2012年のブラック・レインでの初めてのヨーロッパ・ツアーは、スイスのルツェルンでレイム、ベルリンでダルハウス、ロンドンでの〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉のショーケースはレイム、レジス、プルーリエントのドム、ラッセル・ハスウェル、トーマス・コナー、ブラック・レインと勢揃いの最高のナイトだった。

ちなみに、2006年には、あなたは〈ソウル・ジャズ〉の『New York Noise Vol.3』の編集を担当していますよね。

SA:〈ソウル・ジャズ〉は素晴らしいレーベルだ。ニューヨーカーとしてあの仕事はとても意味があった。まずは欲しいトラックのリストを上げて、何曲かは難しかったから他を探したり、もっと面白くなうように工夫した。ボリス・ポリスバンドを探していたら、ブラック・レインのオリジナル・メンバーがいたホールの向かいに住んでいたことがわかったが、そのときはすでに亡くなっていた。あのコンピの選曲は、当時の幅広いニューヨーク・サウンドをリスナーに提示している。

UKのダブステップのDJ/プロデューサーのコード9は、かつて、「アイク・ヤードこそ最初のダブステップ・バンドだ」と言ってましたが、ご存じでしたか?

SA:もちろん。コード9はニューヨークの東南にある小さなクラブに彼のショーを見に行ったときにコンタクトをとった。そのときにいろいろやりとりしたんだが、彼の発言は、どこかで「アイク・ヤードは20年前にダブステップをやっていた」から「アイク・ヤードは最初のダブステップ・バンド」に変わっていた。『Öst』のEPの引用はそうなっている。自分としては、当時の4人のグループがダブステップ的なライヴをできたんじゃないかってことで彼の言葉を解釈してる。

コード9やブリアルを聴いた感想を教えてください。

SA:ふたつとも好きだ。とくにコード9 & スペース・エイプの最初のリリースが気に入っている。最初のブリアルに関しては、聴き逃すは難しいんじゃないかな。ものすごくバズっていたからね。

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レジスはタフだ。彼はまた上昇している。ニーチェが呼ぶ「超人」のように働いている。自分は、テクノと密接な関係にある。やっている音楽はミニマル・ミュージックでもある。

ダブステップ以降のアンダーグラウンドの動きと、あなたはどのようにして接触を持ったのですか?

SA:アイク・ヤードのリミックスが出たときに、シーンからフレッシュなサウンドとして受け取ってもらえたことが大きい。あと、ここ数年のインダストリアル・テクノ・リヴァイヴァルと偶然にも繋がった。僕たちのほかとは違った音、リズム、ビートが面白かったんだろう。

ヴェッセルも作品を出している〈トライアングル〉、ないしは〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉など、新世代のどんなところにあなたは共感を覚えますか?

SA:新しいリリースはチェックしている。いま誰が面白いのかもね。彼らは知っているし、彼らのやっていることをリスペクトしてる。エヴィアン・クライストを出している〈トライアングル〉のロビンから連絡が来て、レッドブル・アカデミーのスタジオでエヴィアンと1日中セッションしたこともある。
 〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉はブラック・レインの『Dark Pool』のリリース後にとても仲良くなった。パウェルはブラック・レインの最初のライヴで一緒になって友だちになった。トーマス・コナーとファクションもいた。〈RVNG Intl.〉のマットのリリース『FRKWYS』の第5弾にもコラボレーションで参加したよ。

『Remixed』のリミキサーの選定はあなたがやったのですか? 

SA:だいたいの部分は僕がやったね。リミックスのアイデアは〈Desire Records〉と企画して、好きなアーティストを並べて決めた。

リミキサーのメンツは、みな顔見知りなのですか?

SA:ほとんど会ったことがある。ない人はEメールでやりとりしている。日本のリミキサー陣はまだ話したことはない。あとイントラ・ムロスとレボティ二。ブラック・ストロボはとても好きだ。2003年のDJヘルの再発で、ドミナトリックス(Dominatrix)の「The Dominatrix Sleeps Tonight」では本当に良いリミックスをしてくれた。

レジスやパウェル、アルノー・レボティーニ(ブラック・ストロボ)のような……、クラブ・カルチャーから来ている音楽のどんなところが好きですか?

SA:時間があるときはできるだけ多くのアーティストを聴くようにしている。クラブの世界は、いま起きている新しいことがアーティストやDJのあいだで回転しているんだ。実際、同じように聴こえるものばかりだし、面白いと思えるモノはたいしてないんだが……。そう考えると、次々と押し寄せる流行の波のなかで生き抜いているレジスはタフだ。彼はまた上昇している。ニーチェが呼ぶ「超人」のように働いている。
 僕は、テクノと密接な関係にある。やっている音楽はミニマル・ミュージックでもある。他のアーティストを見つけるのも、コラボレーションするのも楽しい。新曲でヴォーカルを何曲か録って、アイク・ヤードのマイケルと僕とでザ・セイタン・クリエーチャーと“Sparkle"を共作した。そのときのサミュエル・ケリッジのリミックスはキラーだよ。〈Styles Upon Styles〉からリリースされている。音楽もビートもすごいと思ったから、JBLAのEPもリリースした。自分まわりの友だちと2012年にブリュッセルでジャムして作ったやつで(〈Desire Records〉から現在リリース)、〈L.I.E.S.〉のボス、ロン・モアリとスヴェンガリーゴーストとベーカーのリミックスもある! 最後に収録されているオルファン・スウォーズとのコラボでは、彼らが曲を作って僕が詞を書いた。クラブ・ミュージックと完全に呼べるものは、来年には発表できると思うよ。

とくに印象に残っているギグについて教えてください。

SA:6月にグローバル・ビーツ・フェスティヴァルで見たDrakha Brakha (ウクライナ語で「押す引く」)は良すぎるくらい良かった。キエフのアーティストで、エスノなヴォーカルやヴァイブレーション、オーガニックなサウンド、チェロ、パーカッションが入っている。彼らは自分たちの音楽を「エスノ・カオス」と呼んでいた。
 毎年夏に都市型のフリー・フェスティヴァルがあるが、自分にとってはとても良い経験だ。いつでも発見がある。レジス、ファクトリー・フロア、ヴェッセル、スヴェンガリーゴースト、シャドーラスト、ピート・スワンソン、ヴェロニカ・ヴァシカ……なんかとのクラブ・ナイトを僕もやりたい。

ダーク・アンビエント、インダストリアル・サウンドがもっとも盛り上がっている都市はどこでしょう?

SA:ダーク・アンビエントは、これまでにも多くの秀作がある。アイク・ヤードの4人目のメンバーでもあるフレッド(アイク・ヤードのリミックスEP第2弾でもレコンビナントとして参加)の曲は素晴らしく、『Strom Of Drone』というコンピレーションに収録されいたと思う。
 ドリフトしているドローンが好きだ。たとえば、アトム・ハートの、『Cool Memories』に収録されている曲、トーマス・コナーの『Gobi』と『Nunatak』、プルーリエント、シェイプド・ノイズ、クセナキス、大田高充の作品には深い味わいがある。
 ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』に触発されたブラック・レインの『Night City Tokyo』(1994)は、自分たちがイメージする浮遊した世界観をより正確に鮮明に描いていると思う。つまり、ダーク・アンビエントがもっとも盛んなのは、これといった特定の場所というよりも、おそらく僕たちの脳内だ。「ダークネスに対する大衆の欲望を甘く見るな」という台詞は、2012年のUKで話題になった。

東欧には行かれましたか? 

SA:おそらく東ヨーロッパは次のアルバムのタイミングで回るだろう。母親がウクライナのカルパティア人なんだ。コサックがあったところだ。で、僕の父親はドイツ人。母親方が石炭採鉱のファミリーで、ウェスト・ヴァージニアにいて、沿岸部に移り住んでいった。ウクライナ、キエフ、プラハ、ブタペスト、イスタンブールは是非行ってみたい。

日本流通盤には、コールド・ネーム、ジェシー・ルインズ、hanaliなど、日本人プロデューサーのリミックスがダウンロードできます。とくにあなたが気に入ったのは誰のリミックスですか?

SA:コールド・ネームしかまだ聴けてないけど、とても気にっている。

こう何10年もあなたがディストピア・コンセプトにこだわっている理由はなんでしょう?

SA:「ダーク」と考えらている事象を掘り下げるなら、あの頃はストリートが「ダーク」だったかもしれない。1978年のニューヨークは人種問題で荒れていた。その影響もあってダークだったと言えるけど、実際はそんなにダークではなかった。
 1981年にアイク・ヤードのメンバーに「もし電源が落ちて真っ暗になっても、僕たちはそこでも演奏し続ける方法を見つけよう」と伝えた。そのとき得た回答は、自分がロマンティックになることだった。
 自分たちには陰陽がある。暗闇の光を常に持っている。もっともダークだったストリートにおけるそのセンスは、やがて世渡り上手でいるための有効な手段となった。僕は、近未来のディストピアのなかで前向きに生きることを夢見ていなたわけではなかった。シド・ミードは、未来とは、1984年までの『時計仕掛けのオレンジ』、『ブレードランナー』、『エイリアン』、『ターミネーター』と同じように、世界をエンタテイメント化していると認識していた。
 ジョージ・ブッシュの政権に突入したとき、どのように彼がイラク戦争をはじめるか、その口実にアメリカの関心は高まった。彼の親父はサダム・フセインからの脅しを受けていた。が、当時のディストピアは、時代に反応したものではなかった。ヒストリー・チャンネルは『ザ・ダーク・エイジ』や『バーバリアンズ』といったシリーズをはじめたが、母親のウクライナと父親のドイツの血が入っている僕にとって、自分たちがバーバリアンであると信じていた。バーバリアンから来ているオリジナルのゴスに関して言えば、僕にドイツ人の血が流れているか定かではないけど、ドイツにいるときその何かを感じたことはある。自然環境、場所、そしてミステリーの狭間でね。
 2005年から2009年にかけてのディストピアについても言おう。ブラック・レインのベーシストのボーンズと再結成前のスワンズのノーマン・ウェストバーグは、ペイガニズム、アミニズム、ブーディカといったイングランド教、ドルイド教、その他クリスチャンにさせようとするすべての勢力に反した歌詞を根幹とした。新しい「ローマ」がどこで、それが誰であるかを見つけなければならない。そしてそれがいつ崩壊するのかも。

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1981年にアイク・ヤードのメンバーに「もしも電源が落ちて真っ暗になっても、僕たちはそこでも演奏し続ける方法を見つけよう」と伝えた。そのとき得た回答は、自分がロマンティックになることだった。

80年代初頭、あなたはニューヨークとベルリンを往復しましたが、あれから30年後の現在、ニューヨークとベルリンはどのように変わったのでしょうか?

SA:83年の春にベルリンに来たとき、デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノによる『ロウ』や『ヒーローズ』の匂いが漂っていた。その2枚は自分にとってとてつもない大きな作品だったから、ワクワクしていたものさ。
 アイク・ヤードのその当時の友だちはマラリア!で、彼女たちは78年に自分が組んだザ・フュータンツのメンバー、マーティン・フィッシャーの友だちでもあった。マラリア!とは、リエゾン・ダンジェルーズ (ベアテ・バルテルはマラリア!の古き友人)と一緒に79年にニューヨークに来たときに出会ったんだ。
 クロイツベルクではリエゾン・ダンジェルーズのクリスロ・ハースのスタジオで何週間か泊まったこともあったよ。まだ彼が使っていたオーバーハイムのシンセサイザーは自分のラックに残っている。
 当時のベルリンは、ブリクサとアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンが全盛期でね。初めて行ったときは幸運にも友だちがいろいろ案内してくれた。マラリア!のスーザン・クーンケがドレスデン・ストリートにあるスタジオで泊まらせてくれたり、ある日みんなで泳ぎに出かけようてなったときにイギー・ポップの彼女、エスターがすぐ上に住んでいることがわかったり……。78年から89年のナイト・クラビングは日記として出したいくらい良いストーリーがたくさんある。 そのときの古き良き西ベルリンは好きだった。いまのベルリンも好きだけどね。 83年以来、何回かニューヨークとベルリンを行き来してる。アイク・ヤードは8月25日にベルリンのコントートでライヴの予定があるよ。
 ニューヨークももちろん変わった。人生において80年代初期の「超」と言える文化的な爆発の一端は、いまでも人種問題に大きな跡を残してる。いまでも面白いやつらが来たり出たりしてるし、これまでもそうだった。女性はとくにすごい……まあ、これもいつだってそうか。音楽もどんどん目まぐるしく展開されて前に進む。
 〈L.I.E.S.〉をやっているロン・モアリは、近所のレコード屋によくいた。リチャード・ヘルとは向かいの14番地の道ばたで偶然会ったりする。
 しかし、ときが経つと、近所に誰がいるとか、状況がわからなくなってくるものだ。友だちも引っ越したり、家族を持ったりする。僕はイースト・ヴィレッジの北部にあるナイスなアパートに住んでいる。隔離されていて、とても静かだから仕事がしやすい。2012年のツアーではヨーロッパの20都市くらい回って、そのときはいろんな場所に住んだり、仕事もしてるが、ニューヨークがずっと僕の拠点だ。

最近のあなたにインスピレーションを与えた小説、映画などがあったら教えてください。

SA:以前も話したけど、僕のルーツは、J.G.バラード、P.K.ディック、ウィリアム・ギブソンだ。ワシントンDC郊外の高校に在籍していた多感な少年時代には、ウィリアム・バロウズの影響も大きかった。あとスタンリー・キューブリックだな。ドミナトリックスをやっていた頃の話だけど、1984年にワーナーにで会ったルビー・メリヤに「ソルジャー役で映画に出てみないか」と誘われたことがあった。フューチャリスティックな映画だったら良かったが、現代の戦争映画で自分が役を演じているという姿が想像つかなかった。が、しかし、その後、彼女は『フルメタル・ジャケット』のキャスティングをしていたってことがわかった(笑)。
 日本の映画では怪談モノが好きだし、黒澤明、今村昌平、若松孝二、鉄男、石井岳龍、森本晃司、大友克洋、アキラ、ネオ・トーキョー、川尻善昭『走る男』……なんかも好きだ。いまはK.W.ジーターとパオロ・バチガルピが気に入っている。
 ブラック・レインのアルバムでは、ふたつのサイエンス・フィクションが元になっていて、K.W.ジーター(P.K.ディックの弟子で、スター・トレックも含む多くの続編小説を生んだ作家)の『ブレード・ランナー2 :エッジ・オブ・ヒューマン』(1996)の小説。もうひとつはパオロ・バチガルピの『ザ・ウィンド・アップ・ガール』(2010)からのエミコの世界に出て来る新人類。
 いまちょうど著者のエヴァン・カルダー・ウィリアムスと、「今」を多次元のリアリティと様々な渦巻く陰謀を論じる新しい本と音楽のプロジェクトを書いている。
 もうひとつの本も進行中で、2000年頃から10年以上かけてロンドンのカルチャー・サイト、ディセンサスを取り入れてる。このスタイルの情報に基づいた書き方は、イニス・モード(意味を探さしたり、断定しないで大まかにスキャニングする)とジョン・ブラナー(『Stand On Zanzibar』、『Shockwave Rider』、『The Sheep Look Up』)に呼ばれている。ブラナーの『Stand On...』は、とくにウィリアム・ギブソンに影響を与えているようにも見えるね。

アイク・ヤードないしはあなた自身の今後の活動について話してください。

SA:早くアイク・ヤードの新しいEPを終わらせたい。新しい4曲はいまの自分たちを表している。そしてアルバムを終わらせること。『Nord』以降はメンバーが離ればなれで、みんな忙しいからなかなか進まなかった。
 次のアルバムは『Rejoy』と呼んでいる。日本の広告、日本語、英語を混ぜ合わせた言語で、アイク・ヤードにとっての新境地だ。ある楽曲では過去に作った歌詞も使われている。ケニーや僕のヴォーカルだけではなく、いろんなヴォーカルとも作業してる。アイク・ヤードのモードを変えてくれるかもしれない。
 また、新しいアルバムでは、ふたりの女性ヴォーカルがいる。日本のライヴの後、3人目ともレコーディングをする。そのなかのひとりは、エリカ・ベレという92年のブードゥー・プロジェクトで一緒になった人だ(日本ではヴィデオ・ドラッグ・シリーズの一部『ヴィデオ・ブードゥー』として知られている)。エリカは、昔はマドンナとも共演しているし、元々はダンサーだった。最初のリハーサルはマイケル・ギラ (スワンズ)と一緒でビックリしたね。
 新しいアルバムができた後は(EPは上手くいけば今年の終わりに〈Desire Records〉から、アルバムは来年以降)、「Night After Night」の再発にリミックスを付けて出そうかと思っている。ライヴ・アルバムもやりたい。
 あとは初期のブラック・レイン、ドミナトリックス、デスコメット・クルーのリリースも考えたい。サウンドトラックのコンピレーションも出るかもしれない。新しいテクノロジーを使いながら、新しいバンドも次のイヴェント、ホリゾンでやろうかとも思ってる。いまは何よりも日本でのライヴが楽しみだ。


※野外フェスティヴァル「rural 2014」にてアイク・ヤード、待望の初来日ライヴ! (レジスも同時出演!)

■rural 2014

7月19日(土)午前10時開場/正午開演
7月21日(月・祝日)正午終演/午後3時閉場 [2泊3日]
※7月18日(金)午後9時開場/午後10時開演 から前夜祭開催(入場料 2,000円 別途必要)

【会場】
マウンテンパーク津南(住所:新潟県津南町上郷上田甲1745-1)
https://www.manpaku.com/page_tour/index.html

【料金】
前売 3日通し券 12,000円
*販売期間:2014年5月16日(金)〜7月18日(金)
*オンライン販売:clubberia / Resident Advisor / disk union 及び rural website ( https://www.rural-jp.com/tickets/
*店頭販売:disk union(渋谷/新宿/下北沢/町田/吉祥寺/柏/千葉)/ テクニーク
*規定枚数に達しましたら当日券(15,000円)の販売はございません。

駐車料金(1台)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。

テント料金(1張)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。タープにもテント代金が必要になります。

前夜祭入場料(1人)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。前夜祭だけのご参加はできません。



【出演】
〈OPEN AIR STAGE〉
Abdulla Rashim(Prologue/Northern Electronics/ARR) [LIVE]
AOKI takamasa(Raster-Noton/op.disc) [LIVE]
Benjamin Fehr(catenaccio records) [DJ]
Black Rain(ブラッケスト・エヴァー・ブラック) [LIVE]
Claudio PRC(Prologue) [DJ]
DJ NOBU(Future Terror/Bitta) [DJ]
DJ Skirt(Horizontal Ground/Semantica) [DJ]
Gonno(WC/Merkur/International Feel) [DJ]
Hubble(Sleep is commercial/Archipel) [LIVE]
Ike Yard(Desire) [LIVE]
Plaster(Stroboscopic Artefacts/Touchin'Bass/Kvitnu) [LIVE&DJ]
Positive Centre (Our Circula Sound) [LIVE]
REGIS(Downwards/Jealous God) [LIVE]
Samuel Kerridge(Downwards/Horizontal Ground) [LIVE]
Shawn O'Sullivan(Avian/L.I.E.S/The Corner) [DJ]

〈INDOOR STAGE〉
Abdulla Rashim(Prologue/Northern Electronics/ARR) [DJ]
AIDA(Copernicus/Factory) [DJ]
Ametsub [DJ]
asyl cahier(LSI Dream/FOULE) [DJ]
BOB ROGUE(Wiggle Room/Real Grooves) [LIVE]
BRUNA(VETA/A1S) [DJ]
Chris SSG(mnml ssg) [DJ]
circus(FANG/torus) [DJ]
David Dicembre(RA Japan) [DJ]
DJ YAZI(Black Terror/Twin Peaks) [DJ]
ENA(7even/Samurai Horo) [DJ]
GATE(from Nagoya) [LIVE]
Haruka(Future Terror/Twin Peaks) [DJ]
Kakiuchi(invisible/tanze) [DJ]
KOBA(form.) [DJ]
KO UMEHARA(-kikyu-) [DJ]
Matsusaka Daisuke(off-Tone) [DJ]
Naoki(addictedloop/from Niigata) [DJ]
NEHAN(FANG) [DJ]
'NOV' [DJ]
OCCA(SYNC/from Sapporo) [DJ]
OZMZO aka Sammy [DJ]
Qmico(olso/FOULE) [DJ]
raudica [LIVE]
sali (Nocturne/FOULE) [DJ]
SECO aka hiro3254(addictedloop) [DJ]
shimano(manosu) [DJ]
TAKAHASHI(VETA) [DJ]
Tasoko(from Okinawa) [DJ]
Tatsuoki(Broad/FBWC) [DJ]
TEANT(m.o.p.h delight/illU PHOTO) [DJ]
Wata Igarashi(DRONE) [Live&DJ Hybrid set]

< PRE PARTY >
Hubble (Sleep is commercial/Archipel) [DJ]
Benjamin Fehr (catenaccio records) [DJ]
kohei (tresur) [DJ]
KO-JAX [DJ]
NAO (addictedloop) [DJ]
YOSHIKI (op.disc/HiBRiDa) [DJ]

〈ruralとは…?〉
2009年にはじまった「rural」は、アーティストを選び抜く審美眼と自由な雰囲気作りによって、コアな音楽好きの間で徐々に認知度を上げ、2011年&2012年には「クラベリア」にて2年連続でフェスTOP20にランクイン。これまでにBasic Channel / Rhythm & Sound の Mark Ernestusをはじめ、DJ Pete aka Substance、Cio D'Or、Hubble、Milton Bradley、Brando Lupi、NESS、RØDHÅD、Claudio PRC、Cezar、Dino Sabatini、Sleeparchive、TR-101、Vladislav Delayなどテクノ、ミニマル、ダブ界のアンダーグラウンドなアーティストを来日させ、毎年来場者から賞賛を集めている野外パーティです。小規模・少人数でイベントを開催させることで、そのアンダーグラウンド・ポリシーを守り続けています。
https://www.rural-jp.com

ポスト・ドリーム・ポップの時代 - ele-king

「LAビート・シーンの鬼っ子」──フライング・ロータスに見初められ、年若くして〈ロウ・エンド・セオリー〉のレギュラー・パフォーマーとなり、間髪を入れず名門〈アンチコン〉からデビュー・アルバム『セルリアン』を発表したビート・メイカー、バス。アンファン・テリブルを地で行く彼はしかし、デビュー作から5年ほどの時間を経て、そのほとばしるエネルギーとエモーションのままに当初のアーティスト・モデルを大きく更新した。いまのバスは、ビートメイカーと呼ぶにはあまりに逸脱的な要素をあふれさせた存在だ。そしてセカンド・アルバム『オブシディアン』(2013年)制作期間中に重く患った経験は、バスの音をセルリアンから漆黒へと変え、わがままに愛くるしく錯綜しながら天を駆け回っていたビートメイキングを地の底へと叩き落とした。
しかしプロデューサーとしての充実はとどまることがない。落ち着くことなくより多くを求め、より切実に歌われる楽曲の数々に、バスのセカンド・ステージ──黒の時代のはじまりを垣間見たのが『オブシディアン』。そしてこのたびリリースされる『オーシャン・デス』は、その続編にして補遺、完結編ともなるであろうEPだ。本作発売に際して、ここまでのバスの歩みをディスク・レヴューで振り返ってみよう。

Cerulean
Anticon / Tugboat (2010)

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野田努

 バス、つまり「風呂」ことウィル・ウィーセンフェルドは、このアルバムのリリース当時、初来日を果たしてDOMMUNEにも出演した。ピザかなにかのコメディ映画の番組が終わったあとの30分のライヴで、かなりバタバタのセット転換のあとだったが、彼は動揺することなく、サンプラーの前に立つと自分の世界に入り込んだ。そして、音にあわせて、操作のひとつひとつに激しく身体を上下させた。それはじつにエモいライヴ・パフォーマンスで、この男は風呂場の鏡の前でライヴの練習をしていたに違いないと思うほど、動きがいちいち決まっていた。目も耳も惹きつけられ、わずか数分で、会場は彼のものとなった。
 当時、バスの音は、フライング・ロータスとトロ・イ・モワとの溝を埋めるものだと評されていたが、いまあらためて聴くとそのどちらにも近くないことがわかる。手法的には英国のゴールド・パンダに似ているが、バスの音楽はメロディアスで、キャッチーで、歌があり、つまりポップスとして成立しているのだ。

Pop Music / False B-Sides
Tugboat (2011)

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橋元優歩

 2010年のデビュー作『セルリアン』リリース後の音源を中心としたコンピレーション。2011年をツアーにあてて活動していたウィルが、ライヴへ足を運んでくれたファンのためのエクスクルーシヴな音源集として構想し、そもそもは配信でのみリリースされていた作品である。
 その名のとおりBサイドらしいラフな描線の上には、怜悧なセルリアンではなく、暖色系の何色かが柔らかく浮かび上がっている。思春期らしい攻撃性を持ったあの天衣無縫のビートメイクは、ここでは気まぐれに、愛らしく、遊びつかれて眠るように、カジュアルな隙を生み出している。かつてとは体制が異なっているものの、〈アンチコン〉が狭義のヒップホップではなく、エモやうたものとの縁を深く持った、じつにUSインディ的な良質レーベルだということを思い出させる。
 構築性における隙とともに、アコースティックな音づかいやラフなプロダクションもバスならではのビート・コンプレックスに空間的な広がりを与えていると言えるだろう。「フォールス」のニュアンスがしかとはつかめないが、それはBサイドの逆説として結像するものかもしれない。「B」という名の本物──ウィル自身も愛さずにはいられない、バスの偽りなきもう片面に光を当ててみせるコンピレーションである。

Obsidian
Anticon / Tugboat (2013)

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竹内正太郎

 暗い日曜日に、礼拝堂でウィッチハウスを聴きながらルイ=フェルディナン・セリーヌを読むようなもの、とでも言えばいいのだろうか。暗いといえば暗い。が、本人はそれを望んでさえいるのだろう。『夜の果てへの旅』よろしく、「生命の実感を味わうための身を切るような悲しみ」を探し求めるセカイの遭難者、というわけだ。そう、前作『セルリアン』は、LAビート・シーンとの照応を見せつけた広義のチルウェイヴと呼ぶべき何かだったが、この『オブシディアン』からはヒップホップ臭さやチルウェイヴ的なある種の軽さは後退し、あのホーリーなコーラスはストリングスやピアノなどのエレガントな調べの中で生まれ変わっている。ザ・ポスタル・サーヴィスのロングセラー、『ギヴ・アップ』にウィッチハウスのシャワーを浴びせてインダストリアルな加工を施したような何か、と言ってもいいかもしれない。LAビート・シーンの先達がこの期待株に望んだ方向性ではなかったかもしれないが、“アイアンワークス”や“インコンパーチブル”といった曲に耳を傾ければ、メインのビートの他に微細な凝ったビート(本人いわく「石を投げたり、それが欠けたりする音」)が脈打っているのがわかるだろう。グリッチも随所で利いている。他方、“マイアズマ・スカイ”はいつかのホット・チップを思わせるダンス・ナンバー、“ノー・アイズ”はパッション・ピットを思わせるシンセ・ポップに仕上がっており、すでにローカルなシーン語りの一部にしてしまっては窮屈な領域に向かっているのでは。

Pixies - Indie Cindy

Baths - Ocean Death EP
Anticon / Tugboat (2014)

木津 毅

セカンド・フル『オブシディアン』収録の“アース・デス”に対応しているであろうタイトルを持った5曲入りEP。「きみの身体を僕の墓場に埋めて(“オーシャン・デス”)」……アルバムから変わらず、死のイメージが抜き差しならないリレーションシップへの欲求と重なっている。 …つづきを読む


OG from Militant B - ele-king

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。レゲエのバイブスを放つボムを連チャンラクラク投下。Militant Bの他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしてもその名を聞くことができる。

今回のランキングは、ジャマイカンが送るこれもレゲエなの??曲特集です。年代問わず彼等のノリでやっちまおうぜ感とか大好きです。しかもレベルが高い!少しでも気になるものがあったらYoutubeとかCDとかレコードとか何でもいいので聴いてみてください。気づけばあなたもレゲエの虜!踊らずにはいられない!

7/1(火)吉祥寺cheeky
7/9(水)新宿open
7/20(日)中野heavysick
7/26(土)那覇loveball
7/31(木)新宿
8/1(金)熊本boot
8/2(土)福岡dark room
8/3(日)大分
8/5(火)吉祥寺cheeky
8/30(金)中野heavysick

飛び出せJAMAICAN! 2014.6.30


1
Shaggy - Bad Man Don't Cry - Big Yard
大人の男になりたい意を込めて。みんな大好きDelfonics/La La Means~使いの1曲。現場でもよくかけるし、そのままソウルにいったりします

2
Demarco - About My Money - Bassrunner
イントロからぶっとばされるデマルコによるハスラー賛歌。サウンドは攻めまくりハイパーな感じで、Dub Stepとか好きな人にも聴いてもらいたい。カラーヴァイナル
だけど7インチなのでよし

3
Beres Hammond - If There Is a Song - City Beat
フェイバリットシンガーの1人、ベレスハモンド。レゲエの中にソウルスピリット!この曲は朝方のクラブでボム!はじける爽快さ!裏面のLove Delightも最高!

4
Cedric 'Im' Brooks - Silent Force - Water Lily
今回唯一アルバムからのオススメ曲。まずタイトルがカッコいい!イントロのベースライン、オリエンタルなムードから一転!かけると反応が多い曲。有名曲とか再発盤とか関係なく良い曲はイイ!

5
Tessanne Chynn - Anything's Possible - Chimney
Rising Sun riddimからテッサンチンのブランニュー。このリディムの中でダントツに良い歌声を聴かせてくれたレディ。人生イロイロ、恐れず進め!元気が出る1曲です

6
Stephen Marley feat.Jr Gong&Buju - The Trafic Jam - Tuff Gong
ビートボックスにアンサーリディム、そこに3人のDeejay!そりゃもうWicked!!権力に屈するな!Doug E Fresh とViciousのfreaksとかけたりします

7
Jackie Mittoo - Hot Tomato - Studio One
ミットゥー先生によるファンクナンバー。こういうのをサラッとかけてると大人の印象。自分のは再発盤なんだけど、赤緑のスタワンのレーベルがツボです

8
Marcia Griffiths - Electric Boogie - Mango
Marcia89年作。この曲は、「とりあえずよく分からないけどノってこうぜっ!」って時に聴くと楽しいです。Bunny Wailerも同じ曲歌ってます

9
Shaggy - Hope - Big Yard
外で聴いてアガりたい曲。アルバムHot Shotから12インチカット。このアルバムは色んなタイプのレゲエが入っててこちらも一聴の価値あり。シャギー、ランキング2回登場はダテじゃない!

10
Gregory Isaacs - Too Good To Be True - Music Works
グレゴリーが歌うMusic Works産R&Bです。こういう感じをクラブで聴けるとニンマリ。裏面にはサックスマンDean Fraserのバージョンが入っててそっちも良いです
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