ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Sherelle - With A Vengeance | シュレル
  2. 別冊ele-king VINYL GOES AROUND presents RECORD――レコード復権の時代に
  3. Actress - Grey Interiors / Actress - Tranzkript 1 | アクトレス
  4. Columns R.I.P. Max Romeo 追悼マックス・ロミオ
  5. あたらしい散歩──専門家の目で東京を歩く
  6. interview with Nate Chinen 21世紀のジャズから広がる鮮やかな物語の数々 | 『変わりゆくものを奏でる』著者ネイト・チネン、インタヴュー(前編)
  7. Twine - New Old Horse | トゥワイン
  8. Seefeel - Quique (Redux) | シーフィール
  9. Shinichiro Watanabe ──渡辺信一郎監督最新作『LAZARUS ラザロ』いよいよ4月6日より放送開始
  10. Shintaro Sakamoto ——すでにご存じかと思いますが、大根仁監督による坂本慎太郎のライヴ映像がNetflixにて配信されます
  11. Jefre Cantu-Ledesma - Gift Songs | ジェフリー・キャントゥ=レデスマ
  12. interview with Black Country, New Road ブラック・カントリー・ニュー・ロード、3枚目の挑戦
  13. Black Country, New Road - Forever Howlong | ブラック・カントリー、ニュー・ロード
  14. Jane Remover ──ハイパーポップの外側を目指して邁進する彼女の最新作『Revengeseekerz』をチェックしよう | ジェーン・リムーヴァー
  15. Soundwalk Collective & Patti Smith ──「MODE 2025」はパティ・スミスとサウンドウォーク・コレクティヴのコラボレーション
  16. Cosey Fanni Tutti ——世界はコージーを待っている
  17. Conrad Pack - Commandments | コンラッド・パック
  18. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  19. 三田 格
  20. 「土」の本

Home >  Reviews >  Album Reviews > Pixies- Indie Cindy

Pixies

Rock

Pixies

Indie Cindy

Pixies Music / ホステス

Tower HMV Amazon iTunes

黒田隆憲、天野龍太郎、久保正樹   May 02,2014 UP
123

結成から29年、再結成から10年。90年代以降のインディ・ロックに多大なる影響を及ぼしたバンド、ピクシーズの新譜がリリースされた。「本当に新譜が出るとは……!」という往年のファンから、「オルタナ」がオルタナティヴではなくなってしまった時代に聴きはじめた若いリスナーまで、もちろんその反応は一様ではない。しかし、どの聴き方にも真実がある。合評スタイルで多角的にアプローチしてみよう。

マイブラもブラーもローゼズも未踏、“正真正銘の最新アルバム” 黒田隆憲

 マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやブラー、それからストーン・ローゼズと、いわゆる“90年代レジェンド・バンド”の再結成(再始動)がここ数年は大きな話題となったが、その先駆けとなったのがピクシーズであったことは周知の事実である。2004年に彼らがオリジナル・メンバーで再び集まり、精力的にライヴをおこない、たとえばセックス・ピストルズのような従来の再結成バンドとはまったくちがう“現役っぷり”を見せつけたのは、ロック・シーンにおいてエポックメイキングな出来事だったと思う。ただ、再結成した彼らが新曲(およびニュー・アルバム)を作り上げてくれるかどうか? というのはまた別の話で、正直なところずっと懐疑的だった。ドキュメンタリー映画『ラウド・クァイエット・ラウド』を観るかぎり、ブラック・フランシスとキム・ディールの間の溝はもはや埋めようのない状態だったし、「この調子じゃスタジオに入って新作のレコーディングなんて夢のまた夢だな」と個人的には思っていた。おそれていたとおり2013年にキムはバンドを脱退。「もはや、バンド存続すら絶望的かも」と半ば覚悟していただけに、まるで吹っ切れたかのようにニューEPを次々と発表、ついには最新アルバムをリリースという、昨今の怒濤の展開には呆気に取られるばかりだ。「狐につままれたような気分」というのはまさにこのこと。マイブラもブラーもローゼズも、未だ成し遂げていない“正真正銘の最新アルバム”を、そこからもっとも遠いと思っていたピクシーズが最初に作り上げてしまったのだから(先だってのマイブラ最新作は、過去のマテリアルをケヴィン・シールズがひとりでまとめ上げたようなものなので、彼らは次が勝負だろう)。

 キムを除くオリジナル・メンバー、フランシス(ギター&ヴォーカル)、ジョーイ・サンチャゴ(ギター)、デヴィッド・ラヴァリング(ドラム)の3人と、サポート・ベーシストにはザ・フォールの元メンバーで、PJハーヴェイとの仕事でも知られるサイモン“ディンゴ”アーチャーがスタジオ入り。バッキング・ヴォーカルは今回ジェレミー・ダブスで、新ベーシストとして最近加入した美女パズ・レンチャンティンの出番はまだのようだ(レコード・ストア・デイの限定アナログ盤には、彼女が参加した“ウイメン・オブ・ウォー”がボーナス・トラックとして収録されている)。

 セカンド・アルバム『ドリトル』以来の朋友ギル・ノートンをプロデューサーに迎えたこともあり、サウンド・プロダクションはまったく申し分なし。感触としては『ボサノヴァ』の延長線上と言えるだろうか。楽曲も、“アイ・ブリード(I Bleed)”を彷彿とさせるような“グリーンズ・アンド・ブルーズ”、“ボーン・マシーン”のトーキング・ヴォーカルを引き継ぐ“インディ・シンディ”、“セシリア・アン”のスリリングな疾走感を連想する“スネイクス”など、過去曲に引けを取らぬクオリティのものが並ぶ(とにかく“メロディ指向”で、フランシスも丸くなったなーと感慨深いことしきりだ)。ジョーイ・サンチャゴの変態ギター、デイヴィッド・ラヴァリングのソリッドでタイトなドラムも健在だし、「ファンが聴きたかったピクシーズ」としての要件は十二分に満たしており、これを引っさげての〈サマソニ'14〉はいまから楽しみである。
ただ、新たな驚きというか、新機軸と呼べる要素はあまり感じられなかったのも事実。あくまでも本作はウォーミングアップなのだろう。GREAT3の『愛の関係』のように、ピクシーズも復帰第2弾で完全復活を高らかに宣言してくれるであろうと心から期待している。

黒田隆憲

»NEXT 天野龍太郎

■過去の名盤を聴いてみよう。
代表作レヴューはこちらから!

・『カム・オン・ピルグリム』(1987年)
・『ドリトル』(1989年)
・『トゥロンプ・ル・モンド』(1991年)
・『サーファー・ローザ』(1988年)
・『ボサノヴァ』(1990年)
・『ピクシーズ・アット・ザ・BBC』(1998年)

黒田隆憲、天野龍太郎、久保正樹