「CE」と一致するもの

弓J (S) - ele-king

音攻めパーティ「S」@KOARAを不定期開催でオーガナイズ。次回は12/30に年末SP。
奇数月第3火曜「SUPER DRY!」@KOARA、偶数月第1水曜「Radical Simplicity」@bar Jamにレギュラー参加。
その他、都内各所にて活動中。

twitter | S blog

S chart


1
Dense & Pika - Bad Ink - Dense & Pika

2
Frak - 888 - Kontra Musik

3
Rhadoo - Cum oare(intoarcese) - Understand

4
Adam Beyer & Alan Fitzpatrick - Tor - Drumcode

5
Tommy Four Seven - Sevals(Terence Fixmer Mental Drive Remix) - Create Learn Realize

6
Sutekh - Ubu Rex - Orac

7
Jacob Korn - It(Original Mix) - Mild Pitch

8
Planetary Assault Systems - Gt(P.A.S Drone Sector Remix) - Mote Evolver

9
Roger Gerressen - Inked Jester - Wolfskull Limited

10
Alex Cortex - Emergence - Pomelo

 「解析」「立式」につづき、相対性理論による自主企画ライヴ「位相」の第2弾の開催が発表された。前回と同様に真部脩一と西浦謙助は不参加となる模様だが、「位相Ⅱ」となる今回は、ゲストにサーストン・ムーアを迎えるスペシャルな企画となっている。両者のステージ上でのコラボレーションをぜひとも期待したいところだ。ソニック・ユースを率いてUSインディ・シーンの30年を表からも裏からも眺めつくし、大きな尊敬を受けながらもつねに妥協のない姿勢で一線を走りつづけてきたサーストンをまじえることで、アート・リンゼイ、マシュー・ハーバート、ザ・ヴァセリンズなど破格の共演を果たしてきた相対性理論の歴史にあらたな1ページが加わるようだ。
 現在のところ、相対性理論は新曲も用意しているとのことで、あらたな展開から目が離せない。


左:相対性理論、右:サーストン・ムーア

2012年11月5日(月)
相対性理論 presents 「位相II」

出演:相対性理論、Thurston Moore
会場:ZEPP TOKYO
OPEN 18:30 / START 19:30
TICKET:全自由 前売り¥5,250 taxin(3歳以上有料 D別)

◯オフィシャルweb先行予約
2012年9月14日(金)13:00 ~ 9月24日(月)23:00
特典:やくしまるえつこイラストチケット
先行予約受付URL(PC・mobile共通)
https://l-tike.com/webrironlive/

当選落選確認/入金受付日程
9/26(水)15:00~9/27(木)23:00

◯チケット一般発売日 2012年9月30日
チケットぴあ 
LAWSON TICKET 
e+  https://eplus.jp
ディスクユニオン  
高円寺DUM-DUM OFFICE 03-6304-9255

Chart JET SET 2012.09.18 - ele-king

Shop Chart


1

Pacific Horizons - Club Meds / Fata Morgana (Pacific Wizard Foundation)
International Feelと並びニュー・バレアリック・シーンのトップ・レーベルとして成長を続けるセルフ・レーベル"Pacific Wizard Foundation"からファン待望の新作第6弾が到着!!

2

Mungolian Jetset - Mungodelics (Calentito)
奇才、Mungolian Jetsetの強力2ndアルバムが到着!独特のサイケデリックな感覚と抜群のメロディー・センスが光る全9曲を収録。格が違います。

3

Xx - Coexist - Deluxe Edition (Young Turks)
世界的大ヒットとなり、10年代のUkインディの流れを決定付けた1st.から早くも3年。さらに深化を遂げた見事な第2作が完成しました!!

4

Les sins - Fetch / Taken (Jiaolong)
天才、Toro Y Moiが別名義で展開するシンセ・ダンス・プロジェクトのセカンド・シングル!!

5

Hot Chip - How Do You Do? (Domino)
最新アルバム『In Our Heads』収録曲を、Joe Goddard、Todd Terje、Mickey Moonlightらがリミックスした12インチ2枚組!!

6

Holy Other - Held (Tri Angle)
スクリューの手法と最新鋭Ukベースを交配させたUs名門Tri Angleからの『With U』で時代を塗り替えてみせたUkの超新星Holy Other。遂に待望の1st.アルバムを完成です!!

7

Joe - Mb / Studio Power On (Hemlock)
ジャズ断片を継ぎ接ぎしたような孤高のUkベース"Claptrap"でシーンに衝撃を与えたJoe、やはり壮絶な才能でした...。ライヒ x Swindle x Four Tetな!?ぶっちぎりの2トラックスを完成です!!

8

Being Borings - Esprit (Crue-l)
全てのダンス・ミュージック・ラヴァーに捧げる、音楽が創り出す、アートの最高峰というのに相応しい10曲を収録した、瀧見憲司と神田朋樹によるBeing Boringsのデビュー・アルバム。

9

Poldoore / Blue In Green - Shrooms / Masquerade-Night Watch (Cold Busted)
Dj Vitamin Dが主宰するコロラドはデンバーのインディー・レーベル=Cold Bustedから、夏の終わりにマッチするダブルサイダーがリリースされました! 限定プレス、ダウンロード・カード付。

10

Prince Fatty - Versus The Drunken Gambler (Mr Bongo)
Hollie Cookが歌うダンクラ"And The Beat Goes On"カヴァーがキラー!Ukレゲエ・シーンの重要人物Prince Fattyの待望となる新作!!今回もクロスオーバーな支持を得そうな会心の仕上がりです!!

 いよいよ来週末の土曜日(祝日・秋分の日)9/22の開催が迫ってきました!!! 日本科学未来館、GALLERY360°、原美術館、新潟・ビュー福島潟、YCCヨコハマ創造都市センターといった独自の雰囲気と圧倒的な存在感をもった環境で、近年精力的に公演を行っている稀代の音楽家マエストロ、ヤン富田が、恵比寿へ移転して8周年を迎えるリキッドルームで、満を持して初となる大型ライヴハウスでのコンサートを行います。最高音響といわれるあのリキッドルームの空間で果たしてどんな体験ができるのか? そのパフォーマンスのひとつひとつが新作ともいえる、その体験はきっと忘れられない夜に、そして皆さんの今後の音楽生活への新たな道しるべとなることでしょう。
 最先端の前衛音楽から誰もが口ずさめるポップ・ソングまでを包括する音楽家にして、日本初のスティール・ドラム奏者、日本で最初のヒップホップのプロデューサー、また自身の音楽の研究機関、オーディオ・サイエンス・ラボラトリーを主宰し、さまざまな角度と視点で、全方位の音楽と科学の研究をおこなっている世界でも稀な音楽家であり、音楽探検家であるヤン富田の現在と過去と未来を繋ぐであろう記念すべきこの日をお見逃し無く。世代を超えてひとりでも多くの人たちに、このまたとない機会を是非体験していただけたらと願っております。(コンピューマ)

 未体験の方は、まずはここからどうぞ! オーディオ・サイエンス・ラボラトリーからの予告編的なDr.Yann's Bionic Musicのお蔵出し映像の登場です!!!

https://www.liquidroom.net/schedule/20120922/11331/

未知なる知覚の扉を開け放つヤン富田。そのミラクルな刺激に溢れた至福の時。

 この20年余り、機会があればこの人の音楽に耳を傾けようとしてきた。電子音楽家、プロデューサー、スティール・ドラム奏者という肩書きだけでは収まりきらない音楽の探究者として、いまではヤン富田は私の中でひとつのジャンル、いや、深い森の奥へ誘うジャングルとなっている。
 最初に触れたのはWATER MELON GROUP だったと記憶するが、いとうせいこう『MESS/AGE』に衝撃を受け、1992年の初のソロ・アルバム『ミュージック・フォー・アストロ・エイジ』以降、他の音楽では決して得られないミラクルと刺激に夢中になった。主に20世紀後半のポップ・ミュージックを聴いて育ち、それがルーティンになりつつあった頃、ヤンさんの音楽はそれとは違う扉を開けてくれたのだと思う。まだどこかに聴いたことがない素晴らしい音楽があるのではないか。あるとしたら、それはどんな音楽なのか。そんな夢見がちな好奇心からヤンさんに近づいていった身ではあるが、はたして類を見ない面白さで未知なる知覚を刺激され、時に洒脱なユーモアに笑い、時に至福の音の洪水に涙した。主宰するオーディオ・サイエンス・ラボラトリーのテーマである「音楽による意識の拡大」が成されたかどうかは不明なれど、新しい音楽の楽しみ方と視座を注入されたのは間違いない。
 20世紀型の音楽産業が終焉を迎えつつあるいま、「悲観するのは簡単じゃん」というヤンさんの言葉に私は眩しいくらいの光を見る。ライヴという生命の輝く現場でその好運に授かりたいと思う。 (佐野郷子/ Do The Monkey)

▼ヤン富田
最先端の前衛音楽から誰もが口ずさめるポップ・ソングまでを包括する希代の音楽家。音楽業界を中心に絶大なるフリークス(熱烈な支持者)を国内外に有する。音楽の研究機関、オーディオ・サイエンス・ラボラトリー (A.S.L.) を主宰する。近年では、日本科学未来館/1F シンボルゾーン ( お台場)、原美術館/ 中庭( 品川)、潟博物館/ 展望ホール ( 新潟) 等、特別な空間に於いて「ヤン富田コンサート」が開催された。近作に2011年3月発表のアート作品集「YANN TOMITA A.S.L. SPACE AGENCY」( 写真集、エッセイ、ライブ・ドキュメンタリーCDx2 からなる書籍、宇宙服のパジャマ、T- シャツ、キャップ、トランク・ケース、以上 TOKYO CULTUART by BEAMS) がある。また2011年より A.S.L.主催にて「音楽による意識の拡大」をテーマとした研究発表会「アシッド・テスト」のシリーズを開講する。

▼公演概要
公演名:LIQUIDROOM 8TH ANNIVERSARY WITH AUDIO SCIENCE LABORATORY PRESENTS
YANN TOMITA CONCERT
出演:ヤン富田
日時:2012年9月22日(土曜日/秋分の日)
開場/開演:17:00 / 18:00 *17:30~The Sounds of Audio Science Lab.
会場:リキッドルーム

前売券(8月5日(日)発売) :5,000円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
当日券:6,000円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
* オールスタンディング/整理番号順のご入場になります。

前売券取り扱い:チケットぴあ[Pコード 176-227]、ローソンチケット[Lコード 74822]、イープラス、オトノマド、BEAMS RECORDS、bonjour records Daikanyama、DISK UNION(新宿本館/新宿クラブミュージックショップ/渋谷クラブミュージックショップ/渋谷中古センター/高田馬場店/池袋店/お茶の水駅前店/下北沢店/吉祥寺店/町田店/横浜関内店/横浜西口店/津田沼店/千葉店/柏店/北浦和店/中野店/立川店)、GALLERY 360°、JET SET、Lighthouse Records、LOS APSON?、TOWER RECORDS SHIBUYA(1F)、windbell、リキッドルーム
問い合わせ先:リキッドルーム 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

Holy Other - ele-king

自己憐憫さえも愛らしい砂糖菓子へ 文:三田 格

E王 Holy Other
Held

Tri Angle

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 キリスト教社会におけるホーリー=聖なる存在は、唯一神というぐらいで、アザー=もうひとつの存在はありえない......し、他の多くを示唆するような修飾表現もないということは多神教をイメージさせるものでもないし......。タイトル曲とともにシングル・カットが予定されている「ラヴ・サム1」のように暗く、激しい感情が渦巻いている曲を聴いていると、安直に思い浮かぶのは、ツァラトゥストラが開祖だとされるゾロアスター教のような善悪二元論の悪(=好戦的なダエーワ)のことで、仮定の上に立って話を進めていくと、ゾロアスター教というのはイラン高原の北東部を起源とする宗教であり、イスラム教に蹴散らされてきた過去もあったりするため、背後からそれを狙い撃ちしているような不穏さを嗅ぎ取ることもできなくはない。実際、彼(女?)のデビュー・シングル『ウイ・オーヴァー(=全員、終了)』は明らかにイラン高原をヴィジュアルに使用していて(スコットランドのような標高ではない)、その佇まいはノイズのレコードにも等しい。曲も何かマントラを唱えているようだし(カップリングは『ウィズ・U』に採録された「ユア・ラヴ」)。

 とはいえ、フードを被ったままライヴをやり、いまだに実名を明かさないことに宗教的な背景が潜んでいるわけではないだろう。ネットを介したインタヴューはけっこう受けているようだし、〈トライ・アングル〉というレーベルそのものがいわば宗教コレクティヴと化している側面もあるだろうし(〈トライ・アングル〉のリリースにはKKKをイメージさせるものもあったりして、僕にはとうていわからないけれど、倉本諒によればそれは単にパロディとして使われているだけということもあるらしい。こういうセンスを正確に把握することはとても難しい)。

 いずれにしろホーリー・アザーというユニット名が正しくウィッチ・ハウスのイメージを踏襲するものであることは間違いない。『ヘルド(=開催)』で追求されている価値観は非キリスト教的なイメージに救いを求め、リヴァーブの深さや重いベースによって(仮想の)共同体意識を強くすること。それはつまり、『ジーザス・キャンプ』であらわになったキリスト教右翼がアメリカ人口の3分の1(=約8000万人)に達したといわれるゼロ年代前半のアメリカで否応もなく隆盛を誇ったドゥーム・メタルがここへきてモーション・シックネスメデリン・マーキーのような優しいドローンに変化したことと並行して起きた現象ともいえ、ドローンが継承されるのではなく、下部構造をダンス・ミュージックに置き換えたことでいわばドゥーム・ハウスとして成立したものがウィッチ・ハウスと呼ばれるようになったと解してもいいのではないだろうか。アレイスタ・クローリーの小説がイサドラ・ダンカンの描写から始まったように、希薄な身体性によって欺かれた世紀末の闇が再びダンス・カルチャーを侵食し出したのである(ガイ・リッチーが『シャーロック・ホームズ』をスチーム・パンクとして再生させたことも記号的には符号が合う)。

 そして、ドゥーム・メタルにはなかった徹底的な甘ったるさがホーリー・アザーのサウンドをエソテリックな秘境へと導いていく(ジェイムズ・ブレイクハウ・トゥ・ドレス・ウェルがレイディオヘッドなら、ホーリー・アザーやココ・ブライスはアラブ・ストラップだと言い換えてもいい)。捉えどころのないメランコリーのなかに、それを楽しむ甘美さが入り混じり、自己憐憫さえも愛らしい砂糖菓子へと変えていく。どこにもトゲらしきものはない。落ちていたのは1本の髪の毛。いくらでも自分のなかに逃げ込むことができる。人生には時としてこんな魔法が必要だろう。チルウェイヴというのがダフト・パンクとレイディヘッドの合体にしか思えなくなってきた昨今は、とくに(ああ、またしてもポップの魔法が解けていく......)。


文:三田 格

»Next 竹内 正太郎

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ゴーストリー・テクノの美しい結実 文:竹内 正太郎

E王 Holy Other
Held

Tri Angle

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 たとえば、世界の絶景やディズニーランドよりも、打ち捨てられた名もなき廃墟に、非日常としての美しさを見出すこと。人ごみそのものの賑やかさよりも、人の気配がごっそり失われた空間の沈黙にこそ、強く惹かれるような感性。そういったゴシック的な(ヨーロッパ的な)、ある種の怪奇趣味は、現在のアンダーグラウンド・ミュージックの世界において、(欧米の批評でよく使われる)「ゴーストリー(ghostly)」という傾向のなかにリヴァイヴァルしているのかもしれない。穿った見方をすれば、裏表なく、前向きで、典型的な余暇を楽しむ、互いに互いが「ふつうの人間」であることを牽制的に確認し合うような、Facebook型ヒューマニズムの裏側にしまい込まれてしまったものを、それらは召還しようとしているようでもある。当たり前の話、世間の表面において規制されたものは、より多義的に、より抽象的に、より地下的になって発展する。

 そう、〈トライ・アングル〉が送り出すホーリー・アザーのファースト・フルレンス、『ヘルド』は、廃墟に住む幽霊のための新たなるR&Bだ。重々しいベース・ドローン、空間を包むシンセ・アンビエンス、そこに割り込むグリッチ・ノイズ。ワン・フレーズのみ採取されたヴォーカル・サンプルは、ピッチを変えられ、エフェクトされ、短周期で何度もペーストされ、キックの轟きは現れては消え、消えては現れ、アブストラクトな高揚を効果的に援助している。言葉遊びのようで嫌になるが、ポスト・ダブステップというタームにあえて偏執するならば、ウィッチ・ハウスないしはゴシック・アンビエントの領域から登場したホーリー・アザーは、それをある種の臨界点と認めた上で、それでも『ジェイムス・ブレイク』(2011)以外の歌のあり方、あるいはビート・プロダクションとの共存の手段、その可能性を突き詰めているように思える......。

 鍵となるのは、やはりゴーストリーと形容するほかない、そのヴォーカル・プロダクションである。『ヘルド』は、『ジェイムス・ブレイク』を疑ってみることからはじまり、展開している。ここにはメロディを伴った人間の声が溢れているが、それが歌であることはほとんどない。歌は徹底的に断片化され、声は溢れてはただ消えていく。それでも、比較的ヴォイス・サンプルが強調されるアルバム後半部には、息をのむような美しさがある。電子ピアノがきいた"イン・ディファレンス"のダーク・トリップ、シューゲイズ的な感性でノイズとの戯れを見せる"パスト・テンション"のディープ・サイケ、そして表題曲"ヘルド"の後半、まったく別の曲へとミックスされていくような展開の先に、ピアノとキックが清らかな世界に強く脈打っている。スモークを焚いたベッドルームで、カーテンの隙間に射すひとすじの光が揺らめいて見るような......本当に美しい音楽だ。

 「芸術の進歩に対して大きな貢献をしている、なんて全然思わないよ。本当にパーソナルなものをただ作ることの方が、よほど挑戦的なことなんだ。」――1年前のインタヴューとは言え、『ファクト』に対するこうした回答は、どこか危うくも思える。が、現在、多くのパーソナルな音楽表現が、活動名としてのソロ・ユニットとしてなされ、内容的にもヴィジュアル的にも高度に抽象化ないしアンダーグラウンド化せざるを得ない状況からは、彼が感じている(のであろう)現代特有の息苦しさを推察できるのも事実だ。もっと言うなら、インターネットの登場によって自由であることを支援されたはずの個人が、相互監視的にクラウド化されることをむしろ望んでいる、昨今の倒錯した情勢に対する彼なりの対抗措置のようですらある。それは筆者にとっても、これを読むあなたにとっても、他人事ではないはずである。BBCは、すでにこの音楽のなかにもヒット・ポテンシャルの片鱗を認め、「マイケル・ジャクソンを18bpmにスローダウンさせたような、もしくはR.Kellyを地獄に突き落としたような音に聴こえる」などとはやし立てているが、そうしたポテンシャルの有無を、本人は気にとめないだろう。ウィッチ・ハウスという、よく言えば最新のインディ・ダンス、悪く言えば細分化時代のフェティシズムとして登場した〈トライ・アングル〉のホープはいまや、UKアンダーグラウンドの冷え冷えとした態度を引き継いでいる。『ジェイムス・ブレイク』の歌がトラウマティズムの剥き出しの表出だったとすれば、『ヘルド』はむしろ暗黒の世界の不明瞭さを好んで迎え入れている。ジェームズ・ブレイク、ザ・ウィークンド、もしくはハウ・トゥ・ドレス・ウェルよりは、ローレル・ヘイローに近いとする意見もあるだろうか。2012年は本作を明確に記憶するだろう。ゴーストリー・テクノの美しい結実、それは暗黒との背徳的な戯れである。


文:竹内 正太郎

vol.39:ジュリア・ホルター in N.Y. - ele-king

 LAのジュリア・ホルターがNYでショーをおこなった。
 最初にショーの知らせを聞いたときは、シガーロスのオープニングとのことだったので、シガー・ロスとジュリア・ホルターなんて素敵な組み合わせとぬか喜びしたのだが、この日程はウエスト・コーストのみで、NYはハンドレッド・ウォーターズ、サイレント・ドレープ・ランナーズというバンドが対バンだった。その週には『ニューヨーカー・マガジン』が、今週のナイトライフ欄に「彼女の浮遊感漂う歌を」と素敵なドローイングを掲載した

 ショーの2、3日前には、新しいヴィデオ"Goddess Eyes"が公開されてる

 期待が高まる、レイバー・ディのロング・ウィークエンドの金曜日の夜、バワリー・ボールルームは、たくさんの人で溢れていた。ふだんよく行く、ショーのオーディエンスとは違い、パーク・スロープやクイーンズ、アッパー・イーストサイドなどに住んでいそうな、インテリで、読書が趣味のタイプが多いように感じる。男の子やゲイも多そうだ。

 ステージ部屋に行くと、オープニングのハンドレッド・ウォーターズがプレイ中。クラリネットやホーンを使って、低音ビート震えるようなヴォーカルが特徴のアート色の強いバンドで、最近スクリレックスのレーベル〈OWSLA〉と契約したばかり。ジュリア・ホルターとはツアーメイトだ。
 地下のバーで、〈RVNG INTL〉のマットに会う。ジュリアナ・バーウィックと一緒に来ていたので、彼女も掲載されている『エレキング・ブック』を渡す。
 ジュリアナ・バーウィックはブルックリン在住。音楽の印象と違い、とても気さくで親近感が沸いた。〈RVNG INTL〉のマットは、著者が以前コンタクトから出していたコンピレーションCDに参加してくれていて(vol.16 ノースイースト)、何度か会っていることも発覚。インディ・ミュージックの世界は狭いのだ。

 ジュリア・ホルターは、スパンコールのミニスカート(木星柄)、黒の外腕部分が広く開いたディテールの凝ったカットソーで登場、にっこりと笑って挨拶する。オープニングは"Our Sorrows"。
 彼女はとても美しい女性で、ステージに立つだけでも華がある。編成は、彼女がキーボードと歌。クラシカルなチェロ・プレイヤーとコーラスも務めるジャジーなドラマーのトリオ。バスドラの上にトライアングルがちょこんと乗っていた。

 彼女は、優しく語りかけるように、ときには恐ろしげに、そして一貫して夢のなかにいるような浮遊感を漂わせる。歌声には深みがあり、クリアで水滴が落ちるように張りがある。多重にリヴァーブをかけた歌は、決してランダムではなく、注意深く構造されている。エスケーピズムというよりは、もはや音楽治療と言えそうだ。
 それは彼女の表情を見ながらが聴いていると、さらに効果的だった。少しはにかんだ笑顔は、フェアリー・ファーナシスのエレノア嬢に似ていた。キーボードとチェロ、ドラムという構成は、厳かな神聖さを醸し出す。

 最新アルバム『Ekstasis』からの曲がほとんどで、アンコールは、カセットでリリースされた「ライヴ・レコーディングス」から"Sea called me Home"。「みんな口笛ふける?」と観客に聞いたこの曲は、その晩のハイライトだった。けだるい朝のポップ・ミュージックのようだったが、彼女の表情も生き生きしている。お客さんの反応も特別だった。

 今回のショーで新鮮だったのは、アヴァンギャルドとベッドルームポップ、クラシック音楽などがしっかり融合していることだ。しかも、カテゴライズしづらい彼女の音楽を見にきていたのが、勉学に励んでいる学生風だったり、身なりの良い老紳士だったり、音楽好きのゲイ男子だったり、いずれも、このショーでないとクロスしない層だったことだ。彼女の音楽のボーダレス性を感じた。
 LAという暖かいレイドバックな地域性がそれに影響しているのだとも思う。観客の表情は終始緩んでいた。日本人としては、もう少し歌詞がすんなり入ってくれば、別の楽しみ方もできたのだろうが、充分に満足のショーだった。



セットリストは以下:
Our Sorrows
Fur Felix
Marienbad
Gaston
This Is Ekstasis
Try to Make Yourself a Work of Art
Moni Mon Amie
Four Gardens
The Falling Age
In The Same Room
Goddess Eyes
アンコール:
Sea Called Me Home

12K Japan Tour 2012 - ele-king

 今年の春、グルーパーを迎えて文京区千駄木の「養源寺」でアンビエント/ドローンのイヴェントを開いたILLUHA(伊達伯欣+Corey Fuller)が、この秋、ふたたび最高のアンビエント・ミュージックを日本に紹介する......。
 クリスチャン・フェネスやアルヴァ・ノト以降のエクスペリメンタル/アンビエント・ミュージックのシーンにおける重要拠点のひとつ、ニューヨークの〈12K〉レーベルからそうそうたるメンツが来日する。レーベル主宰者のテイラー・デュプリー、フィールド・レコーディングや自作の楽器を操るマーカス・フィッシャー、坂本龍一とのコラボレーションでも知られるクリストファー・ウィリッツ、そしてロック・リスナーにはスローダイヴのメンバーとして知られる、サイモン・スコットなどなど。
 10月6日、長野県松本市からはじまる今回のツアーでは、京都「きんせ旅館」~六本木「Super Deluxe」と回って、最終日はまた「養源寺」。モスキート、サワコといった国際的に活躍するアーティストらがサポートして、青葉市子もテイラー・デュプリーと共演する。

 身体をリラックスして、高性能なサウンドシステムで体験するエクスペリメンタル/アンビエント/ミニマルは、本当に素晴らしいものです。こうした「平穏さ」や「静寂」を主題とする音楽は、その控えめさから、えてして軽く見られがちですが、爆音クラブとは正反対の迫力でもってしたたかに響きます。一流のアーティストたちが創造する「静寂」をこの機会にぜひ経験してください。音楽へのアプローチの多様性に驚、そして心地よい夢を見れることでしょう。詳しくはこちらを→https://www.kualauktable.com/event/12kJapan/12k2012.html

予約・詳細は
https://www.kualauktable.com/
にて。


10/6 長野 松本 hair salon 「群青」
Taylor Deupree+Marcus Fischer
Simon Scott、ILLUHA+Asuna
adv. 2500yen door 3000yen 学生2000円
(いずれも1ドリンク込み、限定50名)

10/7 京都 「きんせ旅館」
Taylor Deupree、Simon Scott、Marcus Fischer、ILLUHA
adv. 3000yen door 3500yen (限定60名)

10/10 六本木 Super Deluxe
Simon Scott、Christopher Willits、moskitoo、ILLUHA
adv. 3000yen door 3500yen

10/11 六本木 Super Deluxe
Taylor Deupree、Marcus Fischer、minamo、sawako
adv. 3000yen door 3500yen

10/13 文京区千駄木 「養源寺」
Taylor Deupree+青葉市子
Simon Scott+Marcus Fischer+伊達伯欣
Christopher Willits+Corey Fuller
sawako+青木隼人
adv. 3500yen door 4000yen(限定150名)



 さらにまた、ILLUHAは、「ヨガと音楽とマクロビ」なるドローン音楽のイヴェントをマンスリーで企画する。第一回目は、9月28日。「都会における都会に住むの人々のための企画として文京区にある静かなお寺、養源寺にて、瞑想をテーマとしたミニマル・ミュージックの生演奏のなか、ヨガをしてマクロビオティックに基づく食事をする」そうです。
 養源寺は、とても居心地の良いお寺です。興味がある人は試して間違いありませんよ!

9月29日(土) 文京区養源寺 「ヨガと音楽とマクロビと」
https://www.kualauktable.com/event/yoga01/yoga01.html

ヨガ(音楽の生演奏):90分2000円/回(食事別)各回限定25名(初心者歓迎!)
マクロビオティック:11:30~20:00
託児所:13時~20時 1500円/3時間 以降500円/時
ヨガマットレンタル:100円/枚 更衣室はあります。

第1回:14:00~15:30 Yoga:yoriko Music:Celer
第2回:16:00~17:30 Yoga:Yoriko Music:ChiheiHatakeyama

interview with Grizzly Bear - ele-king


Grizzly Bear
Shields

Warp Records/ビート

Amazon

 予兆はあったのかもしれない。前作『ヴェッカーティメスト』のオープニング・トラックの"サザン・ポイント"のドラム、あるいはダニエル・ロッセンのソロEPのギターの音に。だが......グリズリー・ベアとしては3年ぶりの『シールズ』は、バンドがまったく新しい領域へと足を踏み入れたことを何よりも音で宣言している。再生ボタンを押すと、8分の6拍子のなかで、リズムは複雑にビートを刻み、ざらついた質感のギターがアルペジオを鳴らし、シンセがうねり、それらすべてが吹き荒れたかと思えば、アコースティック・ギターが繊細に歌に寄り添う。呆気に取られていると、2曲目の"スピーク・イン・ラウンズ"でそれは確信に変わる。ドラムが疾走するアップテンポのフォーク・ロックを鮮やかに色づけるフルートの調べと、どこか甘美に響くコーラス。まったくもってスリリングな演奏、先の読めない展開、あらゆる楽器のエネルギッシュなぶつかり合い。その興奮と喜びを、「インディ・バンド」がこれほど高い次元で追及し達成していることに息を呑む。
 ヴァン・ダイク・パークスからビーチ・ボーイズ、ランディ・ニューマンらアメリカの作曲家たちの大いなる遺産を正しく受け継ぎつつ、自国のフォークへの深い理解を示し、現代音楽やジャズの素養もあり、ダーティ・プロジェクターズやスフィアン・スティーヴンスらコンテンポラリー・ポップの精鋭たちと共振する音楽集団。グリズリー・ベアと言えば、まるで隙のない優秀さに支えられ評価されてきたし、実際それはその通りなのだが、本作においては緻密なアレンジでその知性を研ぎ澄ましつつも、その前提を踏まえた上でこれまでは見せなかった荒々しさや情熱を惜しみなく楽曲に注いでいる。前作でときにティンパニのように響いていたドラムは、ここではより「ロック・バンド」的なそれとして叩かれ、エド・ドロストは声がかすれるほどエモーショナルに歌い上げることを恐れない。クレッシェンドとデクレッシェンド、ピアニシモからフォルテシモまで、自在に行き来する。いまだ眠っていた熊の野性が、ここでは遠慮なく呼び覚まされているようだ。

 グリズリー・ベアの音楽は、恐れずに前を向いているように聞こえる......アカデミズムとポップの範囲に囚われず、多彩な音楽を展開するその理想主義的な態度において。以下のインタヴューでエドは「リスナーひとりひとりの解釈に委ねたいから」と歌詞については沈黙を守っている。たしかにまずアンサンブルが雄弁な作品であり、そこでこそ言葉は鮮烈なイメージをはじめて発揮するように感じられる。が、ここではひとつだけ、情感豊かなサイケデリアが広がるラスト・トラック"サン・イン・ユア・アイズ"で美しく繰り返されるフレーズを挙げておきたい――「I'm never coming back.」

エネルギーに満ちたアルバムにするためにどうすればそれがより強調されたのはたしかだね。前のアルバムが洗練されたアルバムだったこともあって、今回は粗削りでも自分たちのいまのエネルギーを反映したアルバムにしたいと思っていたし。

新作『シールズ』、素晴らしいアルバムだと思います。より、バンドとしての結束が強固になった作品だと強く感じました。

エド・ドロスト:そうだね、一緒に曲を書いたりしたことでより絆は深くなった気がするね。それにアルバムを作るにあたっていろいろな試行錯誤があったしね。
 最初にテキサスでレコーディングを試みたんだけど、長いあいだみんな個々に活動していて、個人レベルで人間的にもミュージシャンとしてもそれぞれスキルアップして戻ってきたこともあって、まずお互いのバックグラウンドがどんなものなのかを改めて知る必要があったんだ。そしてお互いの成長ぶりがわかってからはどんどん作業がはかどって、曲も予想以上にたくさんできたんだ。

メンバーがそれぞれソロや別のプロジェクトをされていましたが、それらを経てグリズリー・ベアとして集まったときに、バンドのアイデンティティを再発見するようなことはありましたか? それはどのようなものだったのでしょう?

ED:バンド自体はつねに進化しているし、アルバムごとにつねにバンドとしての新しい発見を見つけることが出来ていると思ってる。もちろん今回も新しいアイデンティティを発見したと思うけど、それをカテゴライズすることはできないね。そこに行きつくまでに苦しんだりもがいたりしたけれど、新しいエネルギーと方向性を見出したかな。とっても長く曲がりくねった道のりだったし大変だったけれど、辿りついたときは全員が満足出来たし、最高傑作を生み出せたという自信にはつながったと思うよ。

今回はエドとダニエルが曲を持ちより、メンバー全員で作曲したとのことですが、そのプロセスを実際やってみて、これまでと大きく異なる体験でしたか?

ED:ダニエルが書いた曲を歌ったというより、一緒に共同で曲を作っていたんだ。作り方としてはダニエルがヴァースを作って僕がメロディやコーラスを乗せたり、その逆で僕がメロディを作ったものに彼がヴァースをつけたり、そんな感じでピンポン玉のように出来たものを打ち返しながら一緒に作品にしていったんだ。もちろんこれは初めて挑戦したやり方だよ。今までは歌ってるひとがそのメロディを作ってるって聞けばすぐわかるような感じだったけど、今回はこうしないとならないというルールみたいなものは何もなくて、とにかく自由にやってみたらこうなったんだ。

非常に緻密で洗練されたアレンジにもかかわらず、ライヴであなたたちを観るような野性味、パワーを非常に本作に感じました。少ないテイクで録音されたこととも関係しているのかと思いますが、そこにこだわったのはどうしてですか?

ED:長い充電期間を経て作ったこともあって、エネルギーに満ちたアルバムにするためにどうすればそれがより強調されたものになるかということを考えたのはたしかだね。前のアルバムがとても洗練されたアルバムだったこともあって、今回は無駄なことはせずもっと粗削りでも自分たちのいまのエネルギーを反映したアルバムにしたいと思っていたし。だからヴォーカルもコーラス・ワーク中心というよりもっとシンプルにありのままを録った部分もあるしね。だから前よりももっと生っぽい音にこだわってそのエネルギーを込めたものになっていると思うよ。

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たしかにクラシック的な構成は減らしたかな。もちろんいまだにピアノやストリングスを使ってはいるけど、よりシンプルにしようということを意識的に心がけた部分はあるかな。


Grizzly Bear
Shields

Warp Records/ビート

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前作までよりも、クラシック音楽的な構成が少し後退したように思います。とくに"イェット・アゲイン"や"ア・シンプル・アンサー"などは、よりシンプルにバンドの演奏が骨格になっているとわたしは感じるのですが、その辺りは意識的でしたか?

ED:たしかにクラシック的な構成は減らしたかな。もちろんいまだにピアノやストリングスを使ってはいるけど、よりシンプルにしようということを意識的に心がけた部分はあるかな。

現代音楽やジャズにも精通するあなたたちが、楽器は多くともあくまでバンド・スタイルであるのはどうしてですか? たとえばスフィアン・スティーヴンスのように、オーケストラを大々的に導入したいという欲望はないですか?

ED:たぶんオーケストラ的なアプローチは前のアルバムの時にやったと思うんだ。ただ今回はそれをやってしまうとちょっとやりすぎな感じと元々の良さを壊してしまうような気がして。
 過去にオーケストラと一緒にライヴをやったこともあって、それはそれで楽しかったし、新しい試みだったんだけど、そこで僕たちはバンドとして演奏するほうが好きなんだっていうことに気づいたんだ。とても楽しかったし、聞くには新鮮でいいと思う。でもバンドとして出すエネルギーには代えがたい感じがあったんだ。バンドで演奏すれば指揮者を気にして合わせる必要もないしね。
 なんとなくオーケストラが入ることでかしこまった感じになることで聴く人との距離を感じると思うんだ。音としてはとてもきれいだけど、オーディエンスと一体になるにはちょっと難しい面もあるなと感じたんだ。僕は個人的に音楽でリスナーと一体となって、歌詞は聴く人の解釈に委ねる、というのが理想なんだよね。

本作ではより歌がソウルフルに響いています。クレジットを見るとエドはヴォーカルとありますが、今回あなたは歌に専念したということですか? それはどうして?

ED:うーん......僕が曲をたくさん書いていることもあって、曲や歌詞もやはりヴォーカルに重きを置いている部分はあるとたしかに思う。歌詞も前よりもストーリーを上手く書けるようにもなってそれを表現する必要が出てきているからね。正直昔よりも歌詞を書くことにエネルギーを使ってると思う。曲のクオリティと同じくらいのレベルの歌詞を書いていると思うんだ。だからこそその歌詞の世界を表現するためにも、歌に重点を置いているのはたしかだよ。

グリズリー・ベアの楽曲には、ビーチ・ボーイズが引き合いに出される甘いコーラス・ワークがありながらも、つねに憂いや陰影、不穏さのようなものがあります。それはどうしてだと思いますか?

ED:とくに憂いと不穏さをコーラスに反映しているつもりはないよ。とくにこのアルバムは前のアルバムに比べて憂いはないと思うしね。

"スリーピング・ユト"が、「この曲が1曲目だ」となった決め手はなんだったのでしょう?

ED:この曲をオープニングに持ってきたのはアルバムの最初はアップテンポで始まり、終わりは真逆の雰囲気で終わるという風にしたいと思ったからなんだ。アルバムを聴いて最初にエネルギーを感じてもらうことを考えてこの曲を1曲目に持ってきたというわけさ。

ラスト・トラックの"サン・イン・ユア・フェイス"のダイナミックなアレンジには圧倒されます。

ED:この曲はある晩僕がピアノで書いた曲なんだけど、曲を作りながら自分が歌うんだろうと思ってた。自分でコーラス・パートも作って、それをダンに聴かせたんだ。そしたら彼はとても気に入って、他のパートを付け加えていいって、その後クリスが来てホーンとかを加えてくれた。最初僕はこの曲はもっとバラード的になると思っていたけど、とても長く旅に出ているような曲に仕上がった。最後に僕がコーラスを曲の中に散らばせて、出来たときは誰もがこの曲こそがアルバムの最後を締めくくるにふさわしい曲だと思ったよ。本当に素晴らしい曲になったと思う。

音楽的な前進を目指しているという点で、内省的なテーマを経ながらも、グリズリー・ベアの音楽は前を向いているように思えます。自分たちの作っている音楽は、オプティミスティックなものだと思いますか?

ED:とくに自分たちの音楽がどの方向を目指してるという明確なテーマは持っていないけど、このアルバムについて言えば、誰でもみんな孤独を感じたり誰かと一緒にいたいと思ったり、さまざまなことを日常のなかから感じていると思うんだけど、その日常で起こり得るひとの感情を表現したという感じかな。このアルバムにはオプティミスティックな部分がちりばめられているとは思う。とてもダークなトーンのものからオプティミスティックな部分まであると思うけど、たしかにいままでのアルバムの中では一番そう思える作品かもしれないね。全曲とは言えないけどね。

フォークなどルーツ音楽への理解がありながらも、主にアレンジの面において徹底的にモダンであろうとするところに、グリズリー・ベアの理想主義的な側面を非常に感じます。実際のところ、バンドはポップ・ミュージックの領域を拡大、あるいは更新したいという思いはあるのでしょうか?

ED:とくに意図的にポップ・ミュージックの領域に行こうとしてるわけではないと思う。僕たちはフォークやクラシック・ロック、ジャズ、R&B、インディ・ロック、なんでも好きだと思うし、こういったすべての要素をとりいれたいと思っているんだ。だからいろんなスタイルの演奏や音がアルバムにはちりばめられていると思う。このアルバムはとくにジャズの影響が出ていると思うけどね。

タイトルの『シールズ』にこめられた意味はどのようなものですか?

ED:今回はアルバムのタイトルを決めるのにかなり苦労した。『シールズ』というタイトルは何通りもの解釈ができると思う。ひととひととの関連性や親近性、他人とどこまで関与していきたいのかということに対する防御、壁という意味もあるし、「Shield」は「何かから守る」という動詞としても使える。このアルバムを作っていた時、冬の寒い要素が身の周りにたくさん感じられたから、そういった意味合いもある。そのような場所にいたから、孤立や防御という概念があったんだ。で、『シールズ』はどこかの時点で挙がって、既にどんなアートワークにしたいかっていうイメージはあったから、この言葉が出た時にどういうわけかしっくりきたんだ。当然メンバー4人の意見はそれぞれ違うだろう。でもそれでいいと思った。聞き手がそれぞれ好きな意味を見出してくれればいいんじゃないかってね。何よりも言葉の響きが気に入ったんだ。

Frank Ocean - ele-king

 今年の米独立記念日、ネット上で話題になったのがフランク・オーシャンのカミングアウトだった。ヒップホップ、R&Bシーンに属するブラックのアーティストとしては異例のことである、と。しかしそれはカミングアウトというよりは、ごく個人的な愛の告白だった??「4年前の夏、俺たちは出会った。俺は19歳で、彼も同じ年だった。その夏を一緒に過ごし、翌年の夏も一緒だった。(略)彼のことを愛していると気づいたときは、もう悪性の腫瘍みたいになっていた。絶望的で、逃げ場がなく、感情を収める術もなかった。選択の余地も。俺にとって初恋で、人生そのものを変えてしまった」
 これを読んだとき僕は心から感動するとともに、どうにも苦い気持ちを抑えることができなかった。カミングアウトが同性愛者にとって社会的に課せられた通過儀礼であるとしても(もちろん強制されるものではないのだが)、その告白はあまりにも無防備に思えたからだ。彼が同性愛に寛容でない場所にいるならなおさらだ。そこではペット・ショップ・ボーイズの捩れた知性もマトモスのブラック・ユーモアも持ち合わせないままに、彼の創作の源となった「ありきたりの」失恋の物語が綴られていた。しかし当の本人が、それが社会的な意味において「ありきたり」ではないと理解しているからこそ、できるだけ率直でエモーショナルなままで個人的な体験をアルバムに添えることを決意したのだろうと思うほどに......彼の勇敢さは同時に痛ましく感じられたのだ。
 だが、アルバムのベストのひとつ、ジャジーなトラックに乗せて「sweet」と20回繰り返される"スウィート・ライフ"において、僕が覚えた苦さはすべて甘さに変換される。いや、曲は西海岸の豪奢な生活を幾らか皮肉をこめて歌ったものではあるのだが、そのシルキーな肌触りによってそこに溺れることをリスナーひとりひとりに許していく。あらゆる痛みを麻痺させるかように、フランク・オーシャンの歌声が耳から入って身体を撫でる。これは逃避そのものについてのアルバムである......とても切実な。しかし同時に、現実に立ち返ることへの欲望に引き裂かれてもいる。「それなのにいまさら世界を見たいんだ/ビーチがあるのに/なんで世界に目を向けるんだ」

 『Nostalgia, Ultra』においてフランク・オーシャンの魅力とは、イーグルスの"ホテル・カリフォルニア"をそのまま引用しブラック・カルチャーの側から(浮かれる)西海岸の斜陽を仄めかすようなクレバーさにあったはずで、それはメジャー・デビュー作となるこのアルバムでもしっかりと生きている。シングル"シンキン・バウト・ユー"や"シエラレオネ"はスムースなヴォーカルを生かした得意のR&Bだが、"クラック・ロック"のようにほぼサイケデリック・ロックのようなトラックもあれば、"ロスト"のようにファンキーなループ・ナンバーもある。曲によってスタイルを変えるとともにオーシャンはフィクションとノンフィクションを行き来する。"バッド・レリジョン"のように「彼には愛してもらえないんだ」という直截的な失恋の歌と、男女の恋愛へと自分の切なさを置き換える曲を共存させているのは、これをあくまで創作物だとしたい彼の苦闘が見えるようだ。特筆すべきは9分を超える"ピラミッズ"で、ロウビット感が強調されたシンセ・ファンク(クラウド・ラップ周辺の成果を主張しているように聞こえる)でクレオパトラの逸話から男に搾られるストリッパーへと物語を飛躍させる。人称をぼかし、ジェンダーとセクシャリティを揺さぶり、音楽のジャンルをまたぎ、虚実入り乱れるラヴ・ソングを次々と繰り出していく。
 そういった利巧さに支えられたポップ・アルバムであるという意味では、これを「カミングアウト・アルバム」と呼んでしまうことは、感情的で愚かな行為なのかもしれない。だが、その知性を担保しながらも、時折覗かせる正直さ......セクシャル・マイノリティのアーティストとして表現するという覚悟がどうしようもなく心を打つのは確かだ。アメリカのジャーナリストが「同性愛的な歌詞がある」と指摘したのはアルバムのラスト・トラックと言える"フォレスト・ガンプ"だったそうだが、歌詞を読めばすぐにわかる。それは歌の相手が「ボーイ」だから、というだけではない。そこで描かれている恋心が、あまりに生々しい切なさを伴った、男が男に恋に落ちる様を的確に表現したものだったからだ......「君のことなら知ってるさ フォレスト/カブト虫さえ殺せないんだ/筋肉隆々ですごく強いのに ナーヴァスになってる/フォレスト フォレスト・ガンプ」。彼の勇気はたんに、自分が男を愛する男だと宣言したことだけではない。同性愛の「中身」の部分、マッチョに見える男の奥にある優しさを、どうしようもなく欲望する自分をさらけ出したということだ。

 ネット上でひとしきり話題になった後、かねてから同性婚の支持を表明していたジェイ・Z夫妻があらためてオーシャンを擁護し、またオッド・フューチャーの共同体としての新しさ(ブラック・カルチャーにおけるホモフォビアをパロディ化する知性があるということ)を証明したという点で、このアルバムは事実としてマイノリティの文化的状況を前に進めた。マーヴィン・ゲイの"レッツ・ゲット・イット・オン"のように、ソウルフルな愛の歌が社会を揺らしたのだ。
 けれども、それ以上に本作の感動は、"フォレスト・ガンプ"の胸を締め付けるような音楽そのものに宿っている。フランク・オーシャンは歌い手としてずば抜けているとは言えないかもしれないが、彼の想いの強さが曲を特別なものにしている。それにしても、「フォレスト・ガンプ」なんて一見保守的なモチーフを使っているのはどうしてだろう。衒いのないメロディ、素朴な言葉......「君のことは忘れない/この愛は 本物なんだ/ずっと忘れないよ」
 オーシャンはきっと、ここで自分の失恋の「ありきたり」さと俗っぽさに立ち返っている。スウィートなラヴ・ソングとポップスが、さまざまな境界を消していくパワーについて。だからこのアルバムは、あなたがマイノリティであってもそうでなくても、正直に愛を歌うことの根源的な感情を思い出せるだろう。「君のための歌さ/フォレスト フォレスト・ガンプ」......口笛が響く。フランク・オーシャンは、甘く甘く甘い人生の夢想に逃げ込み、初恋を葬り、そして「世界」に自分を打ち明けた。

Yoshi Horino (UNKNOWN season) - ele-king

2012年の夏の余韻に浸り秋を楽しんでおります。この季節感好きです。そんな中、割と最新のリリースの中から、我流どハウスを選ばせていただきました。全てインターネット上、もしくは毎月第4土曜日の頭バーで聴けると思います。
www.unknown-season.com
www.soundcloud.com/unknown-season
www.facebook.com/unknownseason
www.twitter.jp/unknown_season
毎月第4土曜日”The Saturday” at 頭バー www.zubar.jp


1
Ryoma Takemasa - Catalyst(Album) - UNKNOWN season

2
Shonky - Le Velour(Mr. Fingers Club Dub Remix) - Real Tone

3
Omid 16B - Melodica (Original Dub) - Alola Records

4
Tigerskin - 29 Hours EP - Dirt Crew Recordings

5
Steve Rachmad (aka Sterac) - Astronotes (Joris Voorn Remix) - 100% Pure

6
Michel Cleis - Amaranthus (Original Mix) - Pampa Records

7
Rhyze - Just How Sweet Is Your Love(Walker & Royce Touch) - Nurvus

8
System Of Survival - NEEDLE AND THREAD(Album) - Bpitch Control

9
Datakestra - Distance Remix Pt.2(Satoshi Fumi & Datakestra's End Of Summer Love Mix) - UNKNOWN season

10
V.A. - DESTINATION MAGAZINE meets UNKNONW season "A Day Of Rain - UNKNOWN perspective -" - UNKNOWN season
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