「UR」と一致するもの

interview with The Orb - ele-king


The Orb Featuring Lee Scrach Perry present
The Orbserver In The Star House

COOKING VINYL/ビート

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 「if you're thirsty, drink some water(喉が乾いたら水を飲みな)」...... 何をそんなに当たり前のことを。いや、しかしこれは金言、75年以上の人生から来るアドヴァイス(人生訓)なのだ。そろそろ酒の量を減らそう。
 アンビエント・ハウスの巨匠、ブラック・アーク伝説の偉人との共同作業は、これまでのジ・オーブのカタログのなかでもとりわけ気を引く1枚となる。なにせアレックス・パターソンとトーマス・フェルマン、そしてリー・ペリー、この3人のコラボレーションなのだ。我々はいま、新しい惑星(star house)からの新しい電波をキャッチするところなのである。
 おかしくて、神聖で、心地よい電波だ。ジ・オーブ(アレックス・パターソン、トーマス・フェルマン)というレゲエ好きで知られるエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーは、ペリーの酔狂なラップを迎え、彼らのダブワイズを展開している。それは瞑想的というよりも、ダンサブルで、ちょっとファンキーだ。"ポリスとコソ泥"というレゲエ・クラシックのカヴァーも披露しているが、これがまた良い。そして、"リトル・フラッフィ・クラウド"のリフを使った"ゴールデン・クラウド"はなお良い。
 
 コンゴスとサン・アロウとのコラボ作は、暑いこの季節、最初に聴いたとき以上に、あのだらしなさが愛おしくなってきている。ジャマイカのウサイン・ボルト選手とは真逆の、速くない音楽である。チルアウト......、そう、いまやこれは音楽のなしうる大きな役割のひとつとなった。ゆえにダブワイズは新たな空想的なタペストリーを広げているのだろう。
 『ジ・オブザーヴァー・イン・ザ・スター・ハウス』もそうだ。肩の力が抜けて、世界に必要な笑いを取り戻し、そしてちょっと楽になる。

ずっと逆立ちをしてるんだよ。75歳の老人が、逆立ちだぜ? 若かったり、身体すごく鍛えてたり、健康食品ばかり食べてたりとかだったら普通だけど、75歳のジャマイカンが逆立ちだなんて、本当に感動的だよ! 心から感動したね!

いままであなたはいろいろなミュージシャンと共同作業をしてきましたが、あなたにとって今回のアルバムはどのような意味があるものなのか話してもらえますか?

アレックス:これまでの作業と今回の違いは、歌詞の内容だね。ある賢い男が、もっと落ち着いて、もっと水を飲んで、酒は飲むなと世界に語ってるんだ。今回はヴォーカルの内容に繋がりがあるから、それをぶつ切りにして繋げるようなエディットができなかった。いままで俺たちは作品全体に同じヴォーカリストを使ったアルバムを作ったことがないんだ。アルバム全体にここまでヴォーカルが入ったことも、ひとりのヴォーカリストとのコラボだけで一枚のアルバムを作ったこともない。それが今回のアルバムだよ。

あなたはデビュー時からレゲエに関する知識が豊富なことで有名なプロデューサーでしたよね。音楽的にもダブからの影響を取り入れ、〈ワウ! ミスター・モド〉からもビム・シャーマンを出してました。"ブルー・ルーム"ではマッド・プロフェッサーをリミキサーに起用し、「ハイル・セラシエとマーカス・ガーヴェイの会話」を作ったり、レゲエはあなたのずっと身近な音楽でした。そういうあなたが、リー・ペリーの音楽(1)、アート(2)、人間性(3)、メッセージ性(4)についてどう考えているのか教えてください。

アレックス:とにかく、彼はパイオニア。彼がダブ・ミュージックのアイディアのパイオニアだった頃に、俺は彼の音楽にハマったんだ。70年代半ばだな。ある意味、ダブはそれよりもっと前から存在してたわけだけど、彼はダブの世界の中心のひとりだと思う。彼には、独特の効果があるからね。ヴォーカルがより多くて、ディレイやリヴァーブも多い。リー・スクラッチ・ペリーは、そのサウンドの草分け的存在さ。彼の音楽を好きにならないわけがないよな。

アートは?

アレックス:超エクスペリメンタルだと思う。彼の作品には、たくさんの二重の意味が含まれているんだ。

人間性はどうでしょう?

アレックス:彼は本当に優しくて、ジェントルマンなんだ。彼の頭のなかにはつねに課題がある。だからこそ、我々が引きつけられるあの魅惑的な作品を作ることができているんだ。彼の頭のなかはいつも純粋。いつも新しいことに心をオープンにしている。それが、彼が常に素晴らしい作品を作ることができる理由なんだ。

最後にメッセージ性についてお願いします。

アレックス:宗教的だと思う。彼のメッセージは、彼の魂から来てるからね。彼の魂、心、頭から。彼の信じるものが反映されているんだ。

リー・ペリーの作品でもっとも好きなアルバムを3枚挙げてください。

アレックス:スーパー・エイプ』と、ザ・コンゴスの『ハート・オブ・ザ・コンゴス』、あとは......『Lee Perry The Upsetter Meets Scientist - At The Blackheart Studio』その3つだよ。

好きな理由を聞いてもいいですか?

アレックス:まず『スーパー・エイプ』を選んだのは、俺はカヴァーーが好きだから。あのアルバムのおかげで、ダブの魅力を知ったしね。ザ・コンゴスのは、彼の作品のなかでもベスト・チューンのひとつだと思う。リズミカルで楽しくて、クールなんだ。で、最後の『Lee Perry The Upsetter Meets Scientist - At The Blackheart Studio』は、理由を言う必要はないよな? 誰が聴いても絶対に気に入る作品だろ?

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"リトル・フラッフィ・クラウズ"と"似ている"雰囲気を持たせたかったからさ。"同じ"じゃなくてね。だから、まったく同じサンプルじゃなくて、同じ音楽の違う部分を使うことにした。


The Orb Featuring Lee Scrach Perry present
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我々がリー・ペリーから学ぶことがあるとしたら何だと思いますか? 

アレックス:この質問は、リー・ペリーにするべきだよ。俺じゃなくてね。でも、俺自身が学んだのは、彼を見てると、年の取り方を学ぶんだ。つねに何かを持続して、つねに変化していく。留まってはいけないんだ。
 彼が言ってたよ。レコードをリリースするだけじゃダメ。レコード自体は動かない。だから自分でレコードを流していかなければいけない。CDを流さなければならないんだ。人生も同じ。ひとつのことに足を取られてはいけない。音楽への愛も同じさ。もし人がいまでもセックス・ピストルズを聴いてるなら、俺からすれば、もっとしっかり生きろって言いたいね。セックス・ピストルよりも、もっと多くの音楽がこの世には溢れてるんだから。もちろんセックス・ピストルズは好きだし、素晴らしいバンドってこともわかってる。でも、彼らはただ1枚アルバムを出しただけなんだ。
 これは例えばの話であって、決して彼らを批判してるわけじゃない。でもとにかく、動けってこと。つねに進まないと。川の流れのようにね。川も流れが止まれば、汚れていくだけだろ? 音楽も同じさ。音楽も流れを意識しないといけなんだ。変化させていかなきゃ、ただ退屈しておわってしまう。彼を見てると、本当にそう思うよ。彼は75や76歳になっても、つねに新しいことを試し続けて、新しいアイディアを求め続けてる。本当に感銘を受けるよ。音楽面に関しては、ちょっと違うかもしれないけど、ヴォーカルと音楽のバランスを学んだね。ここまでヴォーカルを取り入れた作品は初めてだったから。

2004年のメキシコのフェスティヴァルで出会ったのが今回のコラボレーションのきっかけだったそうですが、具体的にはどのように進んだのですか?

アレックス:これもよく聞かれる質問なんだけど、どこからがストーリーのはじまりかは正確にはわからないんだよな。彼に初めて会ったのは、2001年だったし。フィンランドの音楽フェスティヴァルで会った。そのあと2003年にもロンドンで会ってるし、そのあともどこかで会ったし。その次が2004年のメキシコかな。
 それがきっかけになった理由は、クルーの規模も断然大きくて、本当に楽しかったから。1週間くらいそこにいたから、これまで以上のもっとお互いを知ることができた。で、2年半くらい前にマネージャーと話してて、リー・スクラッチ・ペリーみたいな誰かと一緒に何かやるべきだってことになった。だから彼に連絡をとってみて、一緒に音楽を作ってくれるか訊いてみようってことになったんだ。そしたらオーケーが出たってわけさ。1曲くらい一緒に作れればと思ってたのが、結果的にアルバムを作るまでに発展したんだ。最高だよ。

ということは、先に提案したのはあなたのほうということですよね?

アレックス:ああ。彼からオファーはこなかったね(笑)!

リー・ペリーと一緒に仕事をしてみて、あらためて感銘を受けたことがあれば教えてください。

アレックス:なんどもあったさ! 例えば、彼、ずっと逆立ちをしてるんだよ。75歳の老人が、逆立ちだぜ? 若かったり、身体すごく鍛えてたり、健康食品ばかり食べてたりとかだったら普通だけど、75歳のジャマイカンが逆立ちだなんて、本当に感動的だよ! 心から感動したね! ワーオ! って感じ。彼の身体のなかには、すべての平和が漂ってるんだ。彼が愛するすべてのものとコンタクトをとってる。動物でも、鳥でも。そういう姿をみてるのは、ただただ素晴らしかったよ。

一緒にスタジオに入ってやったんですか? 

アレックス:そうだよ。彼と一緒にスタジオに入って、彼がヴォーカルを担当した。彼ヴォーカルを録ったあと、で、俺たちが音楽だけをリミックスしたんだ。リミックスをしたときは、彼と一緒じゃなかったけどね。彼はスイスの家にいたけど、俺たちが作業してたスタジオはベルリンだったから。

すべては新しく録音したトラックなんでしょうか?

アレックス:すべての曲がリー・スクラッチ・ペリーをフィーチャーしていて、新しいトラックだよ。なにせ彼と会ってからできた曲のほうが多いんだからね。最初はアルバムさえ作る予定じゃなかったんだから。数曲だけ録ろうと思ってたんだけど、彼がスタジオに入ってヴォーカルをやると、彼のおかげで少しヴァーカッションのアイディアを思いついたりもした。スタジオの外で歌いながら木の破片を叩いたりね。

"ポリスとコソ泥"のカヴァーも新しいんですよね?

アレックス:そうさ。あれはカヴァーだけど、まったく新しい作品。とくにベースラインは全然違う。ヘヴィーなベースラインが鳴り響いてるんだ。

実質、どのくらいの時間がかかったんでしょうか?

アレックス:全部を合わせると8ヶ月くらいだったと思う。

それは計画通りの時間だったんですか?

アレックス:どうだろうね......最終的に、7ヶ月の間で、8、9回くらい、家(ロンドン)からベルリンに作業に行って、家に帰って、またベルリンに戻ってっていうのを繰り返した。7ヶ月は、自分たちのなかでは早いと思ってたよ。実際早かったかはわからないけど、とにかく早いなと自分たち自身は感じた。この前アルバムを書くことを決めたと思ったら、もうリリースされるわけだから、やっぱりあっと言う間だったな。しかも、たった2、3日で13曲も新しい曲を書いたわけだからね。
 1週間の予定だったリー・ペリーとのレコーディングで、火曜~土曜の5日でヴォーカルを録る予定だったんだけど、火曜、水曜で全部録り終わってしまった。だから急遽、木曜と金曜で新しい曲を書いて、それを土曜にレコーディングした。リー・ペリーと一緒だったのはその5日間だけで、あとは自分たちでミックスしたよ。

"ゴールデン・クラウド"で、あらためて"リトル・フラッフィ・クラウド"のリフ(スティーヴ・ライヒの曲のサンプル)を使ったのはどんな経緯だったんですか?

アレックス:たしかにまた使いはしたけど、ちゃんと聴けばわかると思うけど、あれは同じリフじゃないよ。同じサウンドであっても、同じスティーヴ・ライヒから書かれていても、ちょっと違うんだ。
 "カウンターポイント"(もとネタになっているスティーヴ・ライヒの曲)について知りたければ、ウィキペディアにいってくれ。また彼のサンプルを使ったのは、"リトル・フラッフィ・クラウズ"と"似ている"雰囲気を持たせたかったからさ。"同じ"じゃなくてね。だから、まったく同じサンプルじゃなくて、同じ音楽の違う部分を使うことにした。
 じゃないと、ただのカヴァー・ヴァージョンになってしまうだろ? 俺たちはカヴァーを作りたかったんじゃなくて、似たような名前と似たような雰囲気を持った、もうひとつの新しい曲を作りたかったわけだから。今回は彼の名前もちゃんとクレジットで公表してるし、彼に許可を得て使用してる。まったく問題ないよ。

"ゴールデン・クラウド"とは何かのメタファーですか?

アレックス:メタファーなんかではないさ。"ゴールデン・クラウド"は"ゴールデン・クラウド"。"リトル・フラッフィ・クラウズ"とは全然関係ないし......まず、アルバム全ての曲のタイトルは、その曲の内容がそれについてだからそのタイトルがつれてる。すべての曲がそうさ。"マン・イン・ザ・ムーン"は、その名の通り月にいる男の話だし、自分が書いた曲にタイトルをつけるときに、その歌詞の内容に関係したタイトルにするのはすごくシンプルで当たり前なことだと思わないか? 歌詞の内容に関しては、リー・スクラッチ・ペリーに聞いて欲しいね。

近年の作品のなかでは、サンプリングやブレイクビートを多用していませんか?

アレックス:これは答えられないね。使ってると言えば何を使ってるかって話になるわけだろ? そういうのは、自分たちが気づけばそれでいい話なんだ。だったらあ、「俺たちはサンプルなんて使わない」って言ったほうがマシなのかもね。いまの世のなか、アプリケーションがこれでもかってほどあるんだし、いろいろなサウンドが溢れてる。もう、サンプリングなんてする必要がないんだよ。「俺たちは、もうサンプリングする必要はない」、単純に、それが答えさ。
 いろいろな音楽から"影響"を受けることはあるかもしれない。でも、それをサンプリングする必要性はもうないわけだ。世界なかのたくさんのバンドが、どっちにしろ他のバンドのコピーをやってる。パイオニアのバンドでない限りはね。だから、パイオニアが作ったアルバムは、他より面白くなる。俺たちがどんなサウンドを作ってるかっていうのが重要なんだ。誰の作品を使ってるかなんて、意味のない質問だよ。
 このアルバムは、3人のパイオニアによって作られてるんだからね。アルバムをすでに聴いてくれたたくさんの人たちや、過去にリー・スクラッチ・ペリーを一緒に作業したことがある人たちでさえも、これは過去10年のなかのベスト・レコードだと言ってくれたよ。俺たちの作品をサンプルの固まりとしてじゃなく、俺たちの作品として聴いて欲しいね。

何度か繰り返して聴いて、とても楽天的な印象を持ったのですが、あなた自身はこのアルバムをどう思いますか?

アレックス:夏っぽく暑くて、温かい、デリシャスなアルバムかな。確実にウィンター・レコードではないね(笑)。ビーチで聴くべきアルバムだよ。熱気のあるバーとかでもいいかもね。すべての曲がフィットすると思うよ。誰も持ってないようなレコードを作ったつもりだから、俺たちオーブの昔の曲を聴いたことない人がたまたまこのアルバムのことを知って、気に入ってくれたら最高に嬉しいね。

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リーは端っこに座って、7インチのテレビでアフリカ映画を見てたんだ。で、俺が、「リー、その映画の意味わかってるのかい?」(言語がわからないから)って聞いたら、「全然! 何言ってるのか見当もつかないよ! でも最高に素晴らしい!」って言うんだよ(笑)。


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今回のアルバム作業を通して、あなたがいちばん嬉しかったことは何ですか?

アレックス:全部だよ。ある部分だけをピックアップして、差を付けることはできない。実質、このアルバムは1週間で作られてるからね。だからまあ、敢えて言うなら、このリー・スクラッチ・ペリーと一緒だった1週間かな。あの1週間は、パーフェクトな瞬間が何回もあったから。今回の作業は、巨大な喜びのジグソーパズルって感じだったよ。

"ポリスとコソ泥"をカヴァーはどうして生まれたのですか?

アレックス:リーと作品を作ることが決まっていたときに、ロンドンの暴動が起きたんだ。俺の家のすぐそばでね。それで、一緒にレコーディングするときにあの曲をやらないかとリーに頼んだ。そしたら彼からOKが出て、カヴァーを作ることになった。暴動の1ヶ月後にレコーディングしたんだよ。

それは面白い話ですね(笑)。今回、ベルリンのトーマス・フェルマン、トビアス・フレウンドのふたりはどんな役目をしていたのでしょうか?

アレックス:俺はジャム、トーマスはチーズ、トビアスはピーナッツバターとでも言っておこうか(笑)。肉はナシだな。俺がヴェジタリアンだから。リーもヴェジタリアンだし。で、ときにはサラダもあるっていう役割分担。
 リー・スクラッチ・ペリーはヴォーカルを担当してる。彼の声がトーマスと俺が作ったレコードから聴こえてくる。トビアスもヴォーカルを担当した。ヴォーカルを担当したというか、ヴォーカルを整えたといったほうがいいかな。彼はヴォーカルを汚れていない、純粋なままのサウンドに聴こえるようにしてくれた。あと、もうひとりトーマス(トム)がいるんだけど、Tom Thiel(トム・ティール)が俺たちのエンジニアだった。で、俺たちのトーマス(フェルマン)は音楽を作ったってところかな。

レコーディング中で何か面白いエピソードがあったら教えてください。

アレックス:ある日みんなでディナーを食べてるとき、そこがドイツのけっこう良い雰囲気のレストランで、ナイフとフォークがテーブルにセットしてあって、ジャズが流れてる感じだったんだけど、リーは端っこに座って、7インチのテレビでアフリカ映画を見てたんだ。で、俺が、「リー、その映画の意味わかってるのかい?」(言語がわからないから)って聞いたら、「全然! 何言ってるのか見当もつかないよ! でも最高に素晴らしい!」って言うんだよ(笑)。で、次の日はハリウッド映画を見てた(笑)。おかしいだろ(笑)?

リー・ペリーの歌っている歌詞で、とくに面白く感じたのはどれでしょう?

アレックス:「酒をいまより控えて、もっとたくさん水を飲め」、このメッセージかな。

ところで、オーブの新作は準備されているのですか?

アレックス:まだ完成はしてないんだけど、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラハウスのために曲を書いている。オペラを演出してて、オペラハウスで披露されるんだよ。ちなみに、リー・スクラッチ・ペリーはこれとは全然関係ないからね(笑)。彼のことだから、やろうと思えばオペラもできちゃうのかもしれないけど(笑)。

はははは、他に何かプロジェクトはありますか?

アレックス:あるよ。実は3つくらい抱えてるんだ。4つとも言えるかもしれないけど、まずは3つだな。ひとつはスクリーン。こないだ〈マリシャス・ダメージ〉からアルバムが出たんだ。それから、HFB(High Frequency Bandwidth)。このプロジェクトでは、京都のピクセルジャンクっていうテレビゲーム会社のために音楽を作ってる。2年前は、このゲームのサウンドトラック・ミュージックで英国アカデミー賞にノミネートされたんだよ。あれはクールだった。自分たちのレーベル、〈プロジェクター・ルーム・レコーズ〉から、ニュー・アルバムの『サイドトラックス』がiTunesでリリースされたばかり。
 あとは、ルートマスターズ。俺と女性アーティスト(ニナ・ウォルシュ)とカントリー・コンボを組んで、カントリー・ミュージックをやってる。こっちはまだアルバムは出てないんだけど、EPが出ている。俺たちは超オールド・スクールだから、ヴァイナルのみだけどね。
 それに、ティー(Tee)っていうプロジェクトもあるんだ。ミスター・ガウディと俺で、ダブっぽいサウンドを作ってる。ピュアなアンビエント・ミュージックで、ピュアなノー・ビートサウンド。あとは......毎週火曜日にはラジオ番組をやってる。8時~10時まで。そんな感じかな。

音楽以外で、いまのあなたが興味あることはなんでしょうか?

アレックス:ほとんどは音楽だけど、あるにはあるよ。サッカー。

いまでもプレイするんですか?

アレックス:いや、もうしないね。昔は学校とか会社でやってたけど。でもどちらかと言えば、バスケのほうがもっとプレイしてたな。若いときはバスケのほうが好きだったんだ。もっとスポーティーだったから。プレイするには最高のスポーツだよ。サッカーは、美しくて素敵なスポーツだと思う。頭を使うんだ。

いま日本では反原発が盛り上がっていますが、あなたの原発に関する考えを教えてください。

アレックス:こっちでは全然情報がないんだよな。食べ物に放射能が含まれてないといいけど......日本に行ったら、もっと状況がわかるだろうね。この野菜は食べない方がいいとか、大丈夫とか。毎回食事するごとにもやしを食べるといいってきいたけど? あと海藻。日本って、どちらもよく食べるんだよな? 元々体にいいし、放射能対策にもなるなんて素晴らしいよね。日本ではサイドディッシュによく出てくるって聞いたから、君たちは知らずに自分たちの身体を守ってるのかも。「My body is my temple」って言葉があるけど、まさにそうだね(笑)。素晴らしい哲学だよ。
 話がずれたけど......とにかく、俺はあまりよくわかってないから、言えるのは、もやしと海藻を食べろってことだね(笑)。原発は、やはり考えないとはいけないと思う。だって、また数年以内に大きな地震が起こるって言われてるんだろ? 太陽フレアも起こるって言われてるよな。それは日本だけじゃなくて俺たちの問題でもある。科学者がそういう情報をちゃんと流して、それを想定した行動をとっていくべきだと思うね。原発に反対することも間違ってないかもしれないけど、原発を無害にする方法も考えるべきかもね。

【LEE 'SCRATCH' PERRY】
生きる伝説=リー'スクラッチ'ペリーの来日公演決定!

2012/10/5 (FRI) 渋谷 O-EAST
OPEN/START 18:00
前売 ¥6,000 (1drink 別途 ¥500)

出演:
LEE 'SCRATCH' PERRY
あらかじめ決められた恋人たちへ
PREPARATION SET
and more!!!

INFO: BEATINK 03-5768-1277 https://www.beatink.com/

【THE ORB JAPAN TOUR 2012】
10.19 FRI @ 大阪 CONPASS
INFORMATION: 06-6243-1666 (CONPASS) https://conpass.jp
10.20 SAT @ 東京 ELEVEN
INFORMATION: 03-5775-6206 (ELEVEN) https://go-to-eleven.com

Jon Convex - ele-king

 『アタック・ザ・ブロック』を制作したエドガー・ライトといえばデビュー作にあたる『ショーン・オブ・ザ・デッド』がいまだに金字塔的作品で、このところ強くなっていく一方だったゾンビを極端に弱い存在にしたことがひとつの勝因ではあったといえる。それを、さらに上回るというか、下回る弱さでゾンビを登場させたのがキューバ初のソンビ映画『フアン・オブ・ザ・デッド(邦題『ゾンビ革命』)』で、いくらなんでも弱すぎるというか、これではゾンビがどんどん増えていくのは不自然かも......と思うほどだった(おかげでキューバ音楽とのマッチングはよかったし、海底のシーンはかなりよかった)。また、アメリカとの関係はやはり複雑なんだなーと思う場面が多々あって、アメリカは圧倒的に強いということを示すためにゾンビの頭部がまとめて刈られていくシーンがあり、そのひとつが地面に転がった瞬間は奇妙な間も含めてなかなか印象に残る場面となった。ゾンビの首がちょっとかわいかったんですよね。

 頭部マニアなのか、インストラ:メンタルの抽象路線とはやや様変わりしつつ、ジョン・コンヴェックスのファースト・ソロにはまたしてもキャサリン・Wの頭部がデザイン的にシリーズで使われている。アルバム・タイトルは「アイドル」と読ませたいんでしょうか。前半が英語で後半はローマ字? とはいえ、キャサリーン・Wが低い声でボソボソと歌う感じは(なんとなく「エイジ・オブ・ラヴ」なんだけど)アイドルのイメージからは遠くかけ離れていて、ある種のSM的イメージを浮かび上がらせる。つーか、単純に混乱させられる。村上隆の作品を初めて見せられた欧米人の感覚はこうだったかも......しれない。

 先行シングル→https://soundcloud.com/surus/jon-convex-fade-convex

 抑制の効いたオープニングからアルバムは全体にスキューバやジミー・エドガーとは雰囲気の異なるストロング・スタイルのエレクトロやゴツゴツとしたテクノで占められ、ロスカと同じくケヴィン・サンダースン的なセンスを随所で感じてしまうと同時に、ソロの石野卓球にも近い資質を感じさせる(あるいは、その原型であるジョーイ・ベルトラム=ニュー・ビートとデトロイト・テクノの交点に彼は現れた)。拷問と快楽が紙一重で混在する極端なストイックぶりには、ルーシー以降のコールド・ミニマルや、16ビートを志向しないシンセ-ポップ・リヴァイヴァルがファクトリー・フロアー(やトレヴァー・ジャクスンのミックスCD『メタル・ダンス』)のようにビートを強化してインダストリアルな傾向(=ミニマル・ウェイヴ?)に突進しはじめたこととも共振性はあるだろう(むしろアンディ・ストットやマルセル・デットマンのような生真面目な快楽主義とは、どことなく相容れない?)。太鼓の乱れ打ちを思わせる「ディソレイション(孤独)」がとくにいい出来かな(また、同じインストラ:メンタルからアレックス・グリーンもボッディカ名義でジョイ・オービソンとナイス・コラボレイションを連発中で、ボッディカもエレクトロ主体ながらだいぶ奇妙な方向性を示しているし、すでに9曲はあるわけだから、このタッグのままでなんとかアルバムもやって欲しい限り)。

 唐突にダブステップを取り入れたクリスチャン・ヴォーゲルの14作目も結果的にはストロング・スタイルのエレクトロに聴こえる作品を完成。新機軸を取り入れているのに、なぜ『慣性の』というタイトルにしたのかはわからないけれど、スペインのバレエ団のために2枚のアルバム制作していたため(これがいい!)、いわゆるダンス・ミュージックのアルバムとしては5年ぶりとなった。もともと、アブストラクトな感性をあふれんばかりに携えてデビューしてきた人なので、どことなく90年代初頭に戻った感もあり、それが円熟味を増して完成度を高めたと聴くことも可能だろう(スーパー_コライダーも呑み込んで!)。『リスケイト137』で自らのルーツ(=チリ系)を全開にした時もちょっと感動があったけれど、ややこしいリズムの連打にはやはり心が和んでしまう。波をイメージしたらしきエンディングは意外にもガス(マイク・インク)を思わせるアンビエント・タッチ。

七尾旅人 - ele-king

新しい希望の歌文:桑田晋吾

七尾旅人
リトルメロディ

Felicity

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 このアルバムの音源が届いてから、毎日聴いた。十数回ほど通して聴いたあとに、思った。ここでもまた、この稀有な歌い手は、音楽によるファンタジーを呼び起こしている。いままでで、もっとも親しみやすいやりかたで。そして少し、複雑な方法をとって。

 はじめに聴こえるのは、砂嵐のようなノイズだ。ガイガー・カウンターを想起させる不穏な信号音。男が咳きこむ音。およそ20秒の混濁の後、輝く雨垂れのように美しいアコースティック・ギターが、そっと響きはじめる。そうして「圏内」に足を踏み入れた瞬間、この新しい音の旅は、はじまる。いま"きみのそばへ"行くために、乱れた現実のなかを、くぐりぬけていく――『リトルメロディ』は、そんな風にはじまる。
 少なくない反響を呼び起こした"圏内の歌"。この曲のなかでは、雨が降っている。目に見えない物質が含まれた水で濡れた世界を、ガット・ギターとピアノが小さく乱反射しながら描き出す。歌声は、ささやくような「小さな」声だ。雨樋のある屋根。どろんこで遊ぶ子ども。水辺にうつる月。おばあちゃんの話。そのような風景の記憶を持つ人に、この曲は語りかける。「離れられない 小さな町」。それは、例えば「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の20km圏内」の小さな町であると同時に、聴く人の心のなかにある、故郷のような、その人にとって大切なものがある「町」のことかもしれない。その「町」が不条理な力で汚されたとき、人は簡単にその特別な場所を、離れることができるだろうか。どこまでも優しくて綺麗なこの音の奥にあるのは、引き裂かれるような痛みの感覚だ。
 この曲をアルバムのはじめに持ってくることは、大きな決断だったはずだ。曲の美しさとは別の場所で「メッセージ性」が発生して、それによってはじかれてしまう人もいるかもしれないから。でも、この『リトルメロディ』と題された作品は、この曲を必要とした。あの日以来の現実に基づいた歌を響かせて――ある種の「重し」を聴き手の心にくくりつけてから――七尾旅人は、聴き手を飛翔させようとする。彼がずっと信じ続けてきた、「歌」という翼で。そして"my plant"で「圏内」をもういちどくぐりぬけ、歌は、湘南などの圏外の世界へ向かっていく。

 『リトルメロディ』は、七尾旅人の作品のなかで、もっとも抑制されたアルバムだと思う。サイケデリアも、奇抜さも、この世界では鳴りを潜めている。そしてそれが、これまでの七尾旅人の作品とは違った種類の、曲と聴き手の親和性の高さを生みだしている。"湘南が遠くなっていく"(森俊之編曲)"サーカスナイト"(Dorian共編曲)"七夕の人""Memory Lane""リトルメロディ"。耳に残るメロディがいくつも散りばめてある。普通のJポップ・歌謡曲として流れても違和感のない曲が並んでいる。爪弾かれるアコースティック・ギター、太田朱美が奏でる風のようなフルートが、夏をメランコリックに広げる"Everything is gone"。そして"Rollin' Rollin'"に続くヒット・ソングとなるだろう、甘く苦い"サーカスナイト"。まるでサザンオールスターズのような夏の物語"湘南が遠くなってゆく"。切ない感覚を残すメロウな3曲が続き、アルバムのハイライトを作る。"七夕の人"から"Chance☆"までの煌めきが、後半をファンタジックに染めあげる。そして、コスガツヨシを迎えてエモーショナルに響く"Memory Lane"。そこで聴こえる真っ直ぐで伸びやかな歌声も、七尾旅人の新しいステージを感じさせる。

 「おまじない」("アブラカダブラ")をかけること、かけようとすること。「おまじない」にかかること、かかろうとすること。それはいま、とても難しいことだろう。おそらくこの国の(戦後の)ファンタジーにおいて最大級の影響力を及ぼしてきたと言えるであろう宮崎駿も、東日本大震災の後、「いまはファンタジーを作るべきではない」と言った。
 震災によって非日常的な状態が日常に入り込んでしまった新しい現実の後、なお音楽による「ファンタジー」を呼び覚ますとはどういうことなのか。この『リトルメロディ』には、七尾旅人のひとつの答えが示されている。いま、ファンタジーという言葉を使うこと自体がとても難しい。書きながらそう思っているけれど、僕がここで考えているのは、このような意味でのファンタジーの力のことだ。

 「ダンスを踊ったり、音楽を聴いたりするときと同じように、物語を頭だけでなく、心と体と魂で読むならば、その物語はあなたの物語になる。そしてそれは、どんなメッセージよりもはるかに豊かなものを意味するだろう。それはあなたに美を提供するだろう。あなたに苦痛を経験させるだろう。自由を指し示すだろう」「彼ら(ファンタジーの紡ぎ手たち)が回復させようとしている感覚、取りもどそうとしている知識は、ほかの人たちがほかの種類の生活を送っているかもしれないどこかほかの場所が、どこであるにせよ、どこかにあるというものだ」(アーシュラ・K・ル=グウィン著・谷垣暁美訳『いまファンタジーにできること』河出書房新社)

 『ゲド戦記』の原作者のこの言葉は、七尾旅人の歌、『リトルメロディ』にも当てはまると僕は思う。『リトルメロディ』と同じように、『911fantasia』も、大きな力が作動した後に作られた。でもふたつの作品には、対極的といっていいほどの大きな違いがある。
 『911fantasia』では、「おじいちゃん」の「独り言」に、すでに死んだ子どもが相手をする。世界を覆ってきた「幻」について語る「おじいちゃん」も、じつは幻に捕えられていたという、ある意味でかなり怖い構造を持っている。幽霊や幻から目覚めようとする巨大な物語は、最後に「いつまで(幻のなかを)探してるの?/なんだかおかしいわ」と、「此処」にいる「歌」が応答することで終わる。その意味では、『911fantasia』は「ここにある歌」に立ち返ろうとする作品でもあった(そのための旅が、あまりにも大きすぎたのだが)。『911fantasia』に収められた一片の宝石"Airplane"は、「あの飛行機」に乗る女の子の視線を宿して創造された。七尾旅人の想像力が、高度何千メートルの、乗ることが不可能な飛行機のヴィジョンにまで羽ばたく。その飛行機は、この現実世界で起こった事実のなかの飛行機であり、しかし同時に「外の世界」の出来事のなかの飛行機でもあっただろう。でも"圏内の歌"、『リトルメロディ』は違う。七尾旅人は、現実の福島に赴いている。実際に七尾旅人や僕らの生きるこの国の「町」や人の歌物語だ。そこに、『リトルメロディ』の光の秘密があるように思う。

 この作品の最後の歌の最初の瞬間、もういちどノイズが訪れる(歌詞の通りに耳を澄ませてこの曲を聴くと、何か巨大なものが湧き上がってくる音、風になびくような微かな歓声など、繊細なサウンド・デザインによる音の景色が聴こえる。そしてまた、水晶のようなピアノの響きが)。この"リトルメロディ"に託された想いがどんなものなのか、ここで説明するまでもないだろう。七尾旅人が創った、新しい希望の歌。最後の瞬間に子どもが口ずさむ言葉が、余韻を残していく。
 大きな悲鳴のあとで、もういちど、心から「わぁ。(驚きに満ちた小さな悲鳴)」と歌うことができるように。『リトルメロディ』に、僕はそんな願いを感じる。素敵な作品だと思う。

 「朝に夕に仰ぐ星と同じく現実なのです。そして、翔びたいと願うものは誰でも、歌と引きかえに翔ぶことができるのです。/歌の力によって人が肉体を離れる瞬間に、唇は語ることをやめますが、歌はなおもつづき、人が翔びつづけるかぎり歌もつづくのです。もし今夜、わたしが肉体を離れるとすれば、皆さんにも覚えておいてほしいのです。歌は終わることなしと」(トマス・M・ディッシュ著・友枝康子訳『歌の翼に』国書刊行会)

文:桑田晋吾

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小さなメロディにおける両義性 文:橋元優歩

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 七尾旅人はこれからもフォークのスタイルをつづけていくのだろうか。『リトルメロディ』は美しいが、どこか不自由で息苦しい印象を受ける。筆者にはその理由の一端が彼のフォークにあるように思われる。かつてあれだけ多様な音楽性を乱反射させていた七尾がなぜこのスタイルへ向かったのか。

 そもそもの1作目から言葉が渦を巻いていたわけだから、それが言葉とギターというシンプルな形態に結びついていったのは必然だったかもしれない。デビュー作の歌詞カードを見れば瞭然であるように、はじめそれらの言葉はまったく整理されていなかったが、ひとつひとつがつよい磁石のように、まったくおびただしい音や形式を引きよせているのがわかった。「雨に撃たえば...!」などという表記は、荒唐無稽であるようでいて、物事とその名前や意味がくっつかないでぶらぶらと宙をただよっていたようなあの時期(99年の流行語には学級崩壊やだんご三兄弟があり、改正住民基本台帳法が成立してぶらぶらしたものは数字をつけて管理されようとしていた)の感性をすばらしく圧縮している。

 いま聴き直してみると、そうしたぐちゃぐちゃな表出がやがて現代詩のような体裁をそなえはじめるころに、フォークのスタイルが獲得されていったようにみえる(『ひきがたり・ものがたりVol.1 蜂雀』)。言葉の序列が整ったことがフォークを呼び寄せたのか、フォークへ行きついたことが言葉を整えさせたのかはわからないが、それは朗読や物語りを編むまでに研磨されて、やがて『911ファンタジア』へと結実していく。その意味で『911ファンタジア』はプログレッシヴなフォークというふうに言えるかもしれない。その後に発表されるのが前作『ビリオン・ヴォイシズ』である。

 これらの作品にあってそのスタイルは挑戦であり先鋭性そのものであった。フォークにおいて社会的なテーマ性が往々にして硬直してしまうという難点を、ただ切り離して四畳半フォークへとスライドさせてしまうのではなく、音楽自体を研磨することで踏み抜いてしまう......つまり食えないプロテスト・ソングではなくジューシーなプロテスト・ソングを組み上げていた。「プロテスト」という言葉自体が硬直しているため、そのように言ってしまうと作品のイメージをとてもせまく限定的にしてしまうが、甘い音に固い言葉をのせるなどというレベルをはるかに超え、七尾旅人という大きな創造性のなかに彼自身の社会的な問題意識をきわめて自然に組み込んでいた。"シャッター商店街のマイルスデイビス"などは『911ファンタジア』からの方法的な成果をふまえ、ファンタジーと社会批評とが卓抜なアイディアとパフォーマンスによって縫い合わされた曲だ。そこには「フォーク・シンガーって、いかになにもしないかだと思ってるから」とうそぶく余裕やユーモア、そしてフォーク・シンガーというものの本質的ないかがわしさへの憧れをみることができた。

 こうしたカーヴを描きながら、いま彼のフォークは直接性へと向かっているようにみえる。よりダイレクトに、より平易な表現で、手の届く範囲へ届けたいという思いが本作の背景にあったのではないか。フクシマに材をとった "圏内の歌"は、ここまでパッケージ化されることなく、あくまで肉声での表現にこだわって各地で歌われてきた。震災がひとつの引き金になったのかもしれないが、大胆で融通無碍な七尾のフォームは、小ささというあたらしい倫理へと変容しかけているようにみえる。それはもちろん、これまでの作風のひとつの進化として、ひとりの表現者としての誠実さや真摯さから生み出されたものであるはずだ。

 七尾の近年の活動、とくにライヴ活動には、なによりもつよくコミュニケーションが前提されている。彼のフォーク・スタイルはほとんどそのために選択されているようにさえ感じられた。歌は自己表現というよりは、そこにいる人々に向かって投げられる対話の端緒であり、そのフィードバックをえて再度投げられる。客をいじるのも、ツイッターを組み込むのも同じことであり、彼はそれをとても鮮やかな手つきでみせてくれる。「百人組手」などの取り組みや、ストリーミング配信、さまざまなミュージシャンとの録音やコラボレーションも同様である。七尾はそうして対話の端口をひらこうとするような取り組みを、もうずいぶんとあの黒と麦わらのいでたちでおこなってきた。それはさながら踊り念仏の聖人のようでもあり、各地へおもむき、自分のじかの声が届く範囲の人びとに、彼の信じる歌の力を届けてまわるという"圏内の歌"=小ささの倫理のスタンスは、すでに準備されていたのだとも言えるだろう。

 だが、それならばライヴ・アルバムの名盤を作ることもできたのではないか。スタジオ・アルバムというパッケージングにおいて、七尾の取り組みの価値がうまく取り出されているとは言えない。"エヴリシング・イズ・ゴーン"や"湘南が遠くなっていく""七夕の人"などは普遍的なラヴ・ソングとしての平明さをそなえ、また宛名のついた曲でもあるような直接性もにじませていて、七尾が想定する聴き手の射程がより小さく絞られたというようにもみえる。つまり、小ささの倫理にもとづき、生の声で伝えることのできるライヴやプライヴェートな演奏において引き立つ曲だというようにも思われる。"湘南が遠くなっていく"のシングル盤が湘南地区限定で販売されているのも同様の原理からであろう。だがアルバムのなかではやや一本調子である。さまざまなアーティストとの録音にはとても緊密な空気がある。だが"サーカス・ナイト"や"メモリー・レーン"は、"ローリン・ローリン"を超える一手を打てない。"アブラカダブラ"の微熱のようなサイケデリアや"ビジー・メン"のもつれるようなビートのアプローチも全面化されるわけではない。

 "リトルメロディ"ではこう歌われる。「そしてみつけたよ/小さなメロディ/何千光年の遠すぎる時間を/短い歌で超えよう」......小さなメロディの本質は、その小ささで思いもかけない距離を超えていけるものとして表現されている。歌というものがものを動かす途方もない力について、七尾のような稀有な歌い手には確信があるのだ。だがその「小ささ」とはかならずしも平易さという意味ではないはずだ。「リトルメロディ」によって、自身の大きさを規制してしまってはいけない。ギターと言葉だけで人びとを愉しませ、あるいは煙にまくことの、本質的なうさんくささをもういちど引き寄せてほしい。そのことで自身のフォークのもうひとつの倫理性を立ち上げてほしい。そのように思った。

文:橋元優歩

Death And Vanilla - ele-king

 たしかにチルウェイヴには詳しくない。ちーとも知らない。必要があっても適当に書き飛ばしてきた。しかし、そのことを暴くために野田努は「3月」にリリースされた作品をいまさらのように持ち出してきた。半年近くも前にリリースされたアルバムだよ。ディスク・ユニオンには早くも中古盤が並んでいたデビュー作である。杜撰なのか、狡猾なのか。目的のためには手段を選ばない。そういうことであれば、僕も「3月」にリリ-スされたデビュー作から選ぶしかないではないか(なんで?)。スウェーデンから現れたイタロ・ディスコ・ヴァージョンのジェントル・ピープル。これがまた夏に合うんだな~。

 全曲試聴→https://soundcloud.com/kalligrammofon/sets/death-and-vanilla-st/

 わざとらしく不安を煽るようなオープニング。細野晴臣のようで細野晴臣ではないポップ・センスを張り巡らせ、チープでイミテイションな電子音が宙を舞う。どこまでも人工的で物悲しく彩られた曲の数々を聴いていると、野田努のやったことなどどうでもよくなってくる。必要なのは現実から目を逸らす想像力と人工着色料の見果てぬ夢。いかにも60年代っぽいエコー・サウンドが再現され、控えめな効果音にも心を奪われてしまう。ピーキング・ライツやトリ-アングル系へのアンサーとも言えなくはないだろうけれど、まー、言いたいやつには言わせておけという感じ(自分か)。"カル-デ-サック"はステレオラブがGSをカヴァーしているみたいだし、"ライブラリー・ゴブリン"は初期のピンク・フロイドをメランコリックに改造したというか。エンディングはどっしりと、そして、夢から覚めるように音楽も終わってしまう。えー、もう、終わり~。もっかい~。

『血と薔薇(Et mourir de plaisir)』という映画があったけれど、「死とヴァニラ」とは何のことだろう? わからない。教養がない。調べるヒマがない。テラノヴァを脱退したザビアー・ノーダシェアー(またノダだ!)が昨年、ソロでリリースしたデビュー作も「3月」に3枚組みでアナログ化された。これもイタロ・ディスコの波に乗った叙情派で、暑い夏にだらだらと聴くしかないユルユル・モード。催眠的なアルペジオを聴き続けていると、野田努のやったことなど......どんどんどうでもよくなってくる。ゆっくりと、ゆっくりと、曲の構成が移り変わり、宇宙を漂っているような気分からヘンな星まで流されてきて、あげくに血の気まで引いてくる。コズミックというのはトランスにダブをかませて、とにかく回転数を遅くしたものだと思えばいいだろうか。奇しくもマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンが拠点とする魔女狩りの街「トリノの尺度」と題されたアルバムはトリップ・ミュージックとしてはなかなかの出来である(303が標準装備され、後半の擦過音が実にカッコいい"フォー・ア・フィストフル・オブ・アシッド"では例によってあれの説明が挿入され、"ルナー・ローヴァー"は日本語で歌われている)。

全曲試聴→https://soundcloud.com/supersoulrecs/sets/...


 で、「3月」には何をしていたんだっけ?(コメント欄で募集は......していません)

interview with Heiko Laux - ele-king

 ハイコ・ラウクスはジャーマン・テクノを体現するような人物だ。テクノ黎明期に多感な10代を過ごし、周囲の誰よりも早くシンセサイザーとドラムマシンで楽曲制作を開始。94年に地元ヘッセン州の小さな町でレーベル〈Kanzleramt〉を立ち上げた。それがスヴェン・フェイトの目に留まり、フランクフルトの伝説的クラブ、〈Omen〉のレジデントに抜擢される。99年にはテクノ・キャピタルとして勢いを増していたベルリンに拠点を移し、変わらぬ情熱と熟練のスキルで制作活動とDJ活動ともに精力的に続けている。

 数ヶ月前、宇川直宏氏に「今年もFREEDOMMUNE 0 <ZERO>やるから、いいテクノDJブッキングしてよ!」と言われて真っ先に思い浮かんだのが彼だった。実際に出演が決まり、〈eleven〉でのアフター・パーティと大阪〈Circus〉でもそのプレイを披露することになったハイコに、ベルリンで話を聞いた。テクノ・ファンならすでにお馴染みのベテラン・アーティストだが、3年ぶりの来日ツアーに先駆けて、これを読んでその素晴らしいプレイのイメージを膨らませて頂ければ幸いだ。


ドイツのテクノもデトロイトの影響を受けてはじまったようなものだからね。そのデトロイトの人たちはクラフトワークに影響を受けていたりするわけだけど。


初めまして。もうすぐFREEDOMMUNE 0 <ZERO>に出演のため来日されますが、私があなたをブッキングしたんですよ。その経緯から少し話させて下さい。実は、きっかけは今回共に出演するDVS1をEle-Kingのために昨年インタビューしたことだったんです。

ハイコ:へえ? どういうことかな?

彼が、90年代にあなたをミネアポリスに呼んだことがあって、その縁であなたに〈Tresor〉でDJする機会をもらったと言っていました。それが初めてベルリンでプレイした体験だったと。

ハイコ:ちょっと待って、いまもの凄い勢いで頭の中の記憶を呼び戻してるから... でもDVS1という人は知らないな。前は違う名前でやっていたのかな?

あれ? 覚えていないですか? それは意外ですね。ではその事実関係は日本で再会した際にDVS1本人と確認して頂きましょう。いずれにせよ、その話を聞いたのが昨年のちょうど同じ頃で、そのすぐ直後にあなたが〈Berghain〉に出演していたので、初めて聴きに行ったんです。

ハイコ:ああ(ニヤリ)、あの日あそこに居たのか。あれは......かなりいいセットだった。

めちゃくちゃ凄かったです(笑)。それで一発でヤラれてしまったんですよ。そのときに、「この人を日本にブッキングしよう」と思ったんです!

ハイコ:そうか、ありがとう。実はね、公にはしていないんだが、CLR Podcastに提供したミックスは、あの日のセットの中の2時間分なんだ。あそこのクラブは録音だの撮影だのに関してはとてもうるさいからね、ここだけの話だけど! うん、あれはかなりいいパーティだった。

2009年の〈WIRE〉に出演して以来、日本には行ってませんものね?

ハイコ:そうなんだよ、だからもの凄く楽しみにしている。そろそろ行きたいと思っていたところだよ。

それまでは、わりと定期的に来日してましたよね?

ハイコ:2000年か2001年くらいから、ほぼ1年おきには行っていたね。

これまでの来日体験はどうでしたか?

ハイコ:いい思い出しかないよ。日本は大好きだ。僕は食べるのが好きなんでね、食べたいものがあり過ぎて困るくらいだ(笑)。初めてスキヤキを食べたときなんて、発狂するかと思ったよ! ヤキニクとか、コウベビーフとか...... とにかく日本の食べ物のレヴェルの高さは凄い! もう6回くらい日本には行ってるけど、毎回驚きがあるね。

ちょっと音楽の話に戻しましょうか(笑)。実は私は90年代のテクノについてデトロイトのことはある程度知っているんですが、ドイツのことはほとんど知識がないので、ぜひその頃の話、そしてあなたがどのような体験をしてきたのか教えて頂きたいんです。

ハイコ:まあドイツのテクノもデトロイトの影響を受けてはじまったようなものだからね。そのデトロイトの人たちはクラフトワークに影響を受けていたりするわけだけど。

バイオグラフィーによれば、ファーリー・ジャックマスター・ファンクの「Love Can't Turn Around」に衝撃を受けて音楽をはじめたとのことですが?

ハイコ:そうだね、まああの曲は一例だけど、ああいうサウンド、いわゆるTR-909のドラムととてもシンプルなベースだけであれだけパンチのある曲は衝撃だった。ああいう音が部分的に使われている曲は聴いたことがあったけれど、シカゴハウスからはそれまで感じたことのない凝縮されたエネルギーを感じたんだ。「俺はこれをやりたい」と思ったんだよ。

それはラジオで聴いたんですか?

ハイコ:いや、クラブだよ。当時は兄がDJをしていたので、まわりの子たちよりも早くクラブに行くことが出来たし、家にそういうレコードがあった。シカゴ・ハウスやUKノアシッド・ハウスなどだね。それ以外はまだポップ・ミュージックしかなかったけれど、あの頃はポップ・ミュージックのシングルにもB面に風変わりなダブ・ミックスなどのインスト・ヴァージョンが入っていた。そういうシンプルなグルーヴの音楽を好んでいたね。特定のサウンドを上手く組み合わせれば、とても少ない音で凄い威力のある曲が出来上がるというところに魅了された。

かなり早い段階から自分の曲を制作することに興味を持っていたようですね?

ハイコ:ああ、もう10代半ばから。小さなバイクに乗れるようになった頃に、最初のキーボードを買いに行ったのを覚えているよ。14歳とかじゃないかな。

その歳ですでにクラブに行って、制作も始めていたんですね?

ハイコ:ああ、地元のバート・ナウハイムという小さな町から、兄の車に便乗してフランクフルトのクラブに出入りしていた。あの頃聴いたDJといえば、スナップ(Snap!)のプロデューサーのひとりだったミヒャエル・ミュンツィッヒなどだね。彼はいつも、ド派手な衣装で現れた。インディ・ジョーンズみたいな帽子を被ったり......毎週違う格好で(笑)。でも誰よりもクールな音楽をかけていた。彼はビートマッチ(曲のピッチを合わせる)だけでなく、ハーモニーをミックスしていたのが印象的だった。前の曲のブレイクのときに、例えばピアノのハーモニーが入っていたとしたら、次の曲のBPMの違うイントロのハーモニーと混ぜるんだ。そこから全然リズムが変わったり。それがとても新鮮だったね、「こういうことも出来るんだ」と思った。いまそういうやり方をする人は全然いない。でも僕は、いまでも選曲をするときにハーモニーで選んだりするよ。他に僕が体験したことと言えば、クラブ〈Omen〉の盛衰だけれど、それもバイオグラフィーに書いてあることだね。

当然、DJとしてスヴェン・フェイトからも大きな影響を受けていますよね?

ハイコ:完全に。スヴェンとの出会いは、僕のキャリアのターニング・ポイントになったから、特別な存在だね。あの頃は誰もが〈Omen〉でプレイすることを目標にしていた。だから僕も自分から「やらせて下さい」なんて野暮なことは聞かなかった。その代わり自分でレーベル(〈Kanzleramt〉)を始めて、曲を出すようになった。そしたら、96年にスヴェンがライヴをやらないかと誘ってくれたんだ。そしてライヴ出演したら、またやって欲しいと言われて、「実は僕はDJもやるんです」と言った。当時、金曜日がスヴェンの日で土曜日が外部のゲストDJがプレイしていた。その土曜日に何度かやったところ、「金曜日にお前の枠をやるから、好きな奴を呼んでパーティをやれ」と言われた。だからサージョンやニール・ランドストラムなどを呼んで一緒にやっていた。店が閉店するまで、それを続けたんだ。

ライヴもやっているんですね? それは知りませんでした。

ハイコ:実はそのときと、すぐ後に一度「POPKOMM」(かつては毎年開催されていたドイツ最大の音楽見本市)だけで、それ以来全然やっていないんだ。他のアーティストとコラボレーション、例えばテオ・シュルテと一緒にやっているオフショア・ファンクなどでは何度かやっているけど、ソロは全然やっていない。それも最後にやったのは2008年だ。その後はDJしかやっていないね。でも、今年のADE(Amsterdam Dance Event)で久々のライヴを披露する予定だよ。とても楽しみだけど、ライヴとなると途端にナーヴァスになる(笑)。

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僕はたしかにラップトップを使っているけど、間違いなくDJをしているからね、そこが違うんだと思う。僕はちゃんと曲を「触っている」。それが鍵なんだよ。こういうシステムを使うと、オートシンクも簡単に出来るけど、それをやってしまうとDJの醍醐味がなくなってしまう。

少し意外なのは、あなたがハウスから音楽の道に入ったということですね。テクノ一辺倒なのかと思っていたので。

ハイコ:というか、あの頃はテクノというものが存在していなかったんだよ。デトロイト・テクノもシカゴハウスの影響で出て来たものだからね。テクノへと加速していったのは90年代初頭のことだよ。

そういう流れのなかで、あなた自身もよりテクノに傾倒していったと?

ハイコ:そういうこと。だからテクノ・ブームがやって来る少し前に、すでにこういう音楽に脚を踏み入れていたのは、幸運だったと思う。周りがテクノに目覚めた頃には、すでにシンセサイザーやドラムマシンに親しんでいたからね。だからテクノが確立される前から、テクノをどうやって作るのかは分かっていた。ハウスを速くして、テクノのエネルギーを足せば良かったんだ。

そう考えると、あなたはドイツにおける第一世代のテクノ・アーティストと言えますね。

ハイコ:やはり僕よりも、スヴェン・フェイトやジェフ・ミルズやDJヘルの方が僕よりも先にやっていたけれどね。僕の出身の小さな町では輸入盤のレコードを売る店なんてなかったから、それほどたくさん聴けたわけではなかったし。アンダーグラウンドな音楽は、大都市に行かないとアクセスできなかった。僕がレコードを買っていた隣町の店なんて、半分が自転車屋で、店の半分がレコード・コーナーになっていたからね(笑)。レコードを売るだけでは、まだ商売にならなかったからだ。〈Omen〉の前身だった〈Vogue〉というクラブで、スヴェンを聴いたり、90年代に入ってからジェフ・ミルズやジョーイ・ベルトラムのプレイを聴いた。
 それでデトロイト・テクノに開眼して、「そうか、こんなことも出来るのか!」と思ったね。特に、ジェフ・ミルズを見たときは度肝を抜かれた。プレイしたレコードを次々と背後に投げ捨てながらプレイしていた(笑)。傷がつくとか、そういうことを気にせずにバンバン投げ捨ててたね......そういうクラブが身近にあって、本物のアーティストを間近で見て体験することが出来たのはとても幸運だったと思う。ジェフがヨーロッパで初めてやったのは〈Omen〉だったんじゃないかな。当時は、フランクフルトがドイツのダンス・キャピタルだったからね。ベルリンの壁が崩壊してからは、フランクフルトとベルリンのライヴァル関係がしばらく続いた。もちろん、その後ベルリンが勝つことになるわけだけども...... 90年代前半はほぼ同等のレヴェルだった。その競争意識が、音楽にもプラスに働いたと思う。

なるほど。そういう環境の中で、あなたのDJスタイルも築き上げられていったわけですね。あなたも当時のジェフのようにターンテーブル三台を操ることで知られていましたよね?

ハイコ:そうだね。かつては、三台使ってレコード1枚あたり2分くらいだけ使ってどんどんレイヤーしていくスタイルをやっていたけど、いま(のレコードで)同じことをやっても上手くいかない。ただテクニックを見せびらかすだけみたいになって、せわしなくて聴いている方は楽しめないと思うんだ。お客さんも世代交代しているからね。でも三台使ってプレイするのは楽しいから、またやろうと思っている。新しい使い方を考えているところだ。一時期は、なるべく展開や要素を削ってどこまでできるか、というプレイに挑戦していたんだけど、それも退屈になってしまって。だって、二台だけだと、あいだの5分間くらいやることがなくて(笑)。
 いまはSeratoを使ってプレイしているけど、Seratoが面白いのはレコードの好きな部分を好きなようにループできるところ。この機能を使うと、レコードとはかなり違ったことが出来る。また、Seratoの場合、曲の途中で停止しても、また好きな瞬間から狂いなく再生することができるから、曲の抜き差しが正確に、より自由に出来るようになった。レコードだと、ミュートできても曲の尺は変えられないから終わるまでに何とかしなければいけないというプレッシャーがある。でも、Seratoなら、好きなだけブレイクをホールドして、好きなタイミングで曲を戻すことが出来る。Seratoのおかげで、アレンジメントの幅が広がったと思うよ。
 いまはCDJ三台と、それぞれに効果音などを入れたUSBスティックも使ってさらに自由な組み合わせが出来るようにしている。だから単なるDJというよりは、サンプラーを取り入れているようなプレイだね。「遊び」の幅が広がった。今はブースで暇を持て余すこともなくなったよ(笑)。またDJすることが楽しくなっている。一時期は楽しめなくなっていたのも事実なんだけど、今は自分でも楽しめる新しいプレイの仕方を確立しつつある。

私は個人的にヴァイナルDJを好むことが多く、とくにテクノやハウスに関してはラップトップDJに感心することは滅多にないんですが、あなたのプレイは別格だと思いました。レコードでやっているようなライヴ感というか、臨場感がありましたし、長い経験を感じさせる確かなスキルがわかりました。

ハイコ:わかるよ、僕も同じだから。僕はたしかにラップトップを使っているけど、間違いなくDJをしているからね、そこが違うんだと思う。僕はちゃんと曲を「触っている」。それが鍵なんだよ。こういうシステムを使うと、オートシンク(自動的にピッチを合わせる機能)も簡単に出来るけど、それをやってしまうとDJの醍醐味がなくなってしまう。自分の手で合わせるからこそ、そこにエネルギーが生まれるんだ。ソフトウェアでプログラムされてしまっていると、そのエネルギーがない。完璧にシンクされた曲を次々と並べていくなんて、簡単過ぎるし何の面白味もない。やっている方もつまらない。その場の思いつきで新しいことを試していくことが面白いんだからさ。僕はフォーマットではなく音楽を重視するから、何を使ってプレイしているかはこだわらない。音源がCDでもラップトップでも別にいいと思う。それを使って何をするか、が問題なんだよ。いまはラップトップを使うのが面白いから、しばらく使ってみるつもりだ。

先ほどフランクフルトとベルリンがライヴァル関係にあって、いまはベルリンがその競争に勝ってテクノ・キャピタルになっているという話が出ましたが、その両方を見て来たあなたはベルリンの現状をどう受け止めていますか? ここ数年でテクノはさらにリヴァイヴァルした印象がありますけど?

ハイコ:とくに何とも思わないな(笑)。自分が幸運だとは思うけれどね。ごく自然なことだと思う。街やそのシーンの勢いというのは移り変わりがあり、より活気があるところに人が集まって来るのは自然なこと。テクノのシーンに関わりたいなら、ベルリンにはそういう仕事がたくさんあるし、その上観光客も大勢やってくる。ここにいればいろんな人に会えるし、活動の場を作っていける。レッド・ホット・チリ・ペッパーズからジョージ・クリントンまで、みんなやって来るから観ることが出来る。生活費も安いしね、これほど条件が整っていて、ニッチなアーティストにまで機会が与えられている街は他にない。これはテクノに限ったことではないし、他のジャンルも、演劇やアートに関しても同じだ。さらにベルリンはとてもリラックスしていて競争がない。周りを蹴落とそうとするような人はいない。そしてとてもリベラルだね。僕は99年にベルリンに移って来たけど、一度も後悔したことはないよ!

 

【来日出演情報】
8/11 FREEDOMMUNE 0 <ZERO> @ 幕張メッセ
8/17 AFTER FREEDOMMUNE +1<PLUS ONE> @ 東京eleven
8/18 CIRCUS SHOW CASE @ 大阪Circus

【リリース情報】
Jam & Spoon - Follow Me (Heiko Laux SloDub)
https://www.beatport.com/release/follow-me!-remixes-2012/924547
発売中

Sterac - Thera 1.0 (Newly Assembled by Heiko Laux) of "The Secret Life on Machines Remixes" on 100% Pure vinyl/digi with Ricardo Villalobos, Joris Voorn, Vince Watson, 2000 and One, Joel Mull, ...
2012年8月発売予定

Rocco Caine - Grouch (Heiko Laux & Diego Hostettlers 29 Mix) (12"/digi Drumcode)
近日発売予定

Heiko Laux & Diego Hostettler - Jack Up Girl (12"/digi on Christian Smith's Tronic TR89)
近日発売予定

Heiko Laux - Re-Televised Remixed (12"/digi on Thema Records NYC)
original and remixes by Lucy, Donor/Truss
近日発売予定

Heiko Laux & Luke - Bleek (on Sinister, 4-tracker V/A with P?r Grindvik, Jonas Kopp & Dustin Zahn)
2012年秋発売予定

Mark Broom & Mihalis Safras - Barabas (Heiko Laux Remix)
other remixers: Slam
近日発売予定

 ジョン・フルシアンテは昨日のアーティストではない。先日リリースされた5曲入りEP『レター・レファー』は、多くのファンを驚かせたはずである。しかしもしこの作品が往年のファンの手にしかわたっていないのならば、非常に残念な事態だ。フルシアンテはその外に出るためにあれほどの名声を浴びるバンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズを脱け、彼にただマイ・ギター・ヒーローたることを望む人々を振り切ったのだから......! 

 そこからはシンセが聴こえ、ドラムンベースが聴こえ、ラップがきこえてくる。ウータン・クラン率いるRZAをはじめとして、ほぼ全編をラップに縁どられながら、ボーズ・オブ・カナダなどを思わせるリリカルなエレクトロニカが彼の詩情を延長していき、やがてギターに接続される瞬間は、彼がただ異種配合によって新しいキャリアを構築しようとしたのではなく、自分なりに追いかけてきた音楽性の蓄積をきちんと表出しようとしていることがうかがわれる。
 
 そもそも前作『ザ・エンピリアン』の時期に、すでに彼はアシッド・ハウスやエレクトロニック・ミュージックにしか興味がないという旨の発言をしていたようだ。ブレイクコアの雄、あのヴェネチアン・スネアーズやクリス・マクドナルドとも新たなプロジェクトを立ち上げている。今作までには、デュラン・デュランやウィーヴ、ザ・ライクのメンバーも参加するLAのトライバルなアート・サイケ・プロジェクト、スワヒリ・ブロンドでギターを弾いたり、ガレージ・パンクではなくあくまで王道なロック・フォーマットのなかに繊細で物憂げな叙情や知性をひらめかせる女子バンド、ウォーペイントの作品を再アレンジしたりと、つねにチャンネルを現在のリアルなシーンに合わせてきた。

 さて9月12日にはアルバム本編である『PBXファニキュラー・インタグリオ・ゾーン』がリリースされ、そうしたフルシアンテの取り組みの全貌が明らかになる。ある意味では自分に求められている役割を裏切って制作したエレクトロニック・ミュージック作品であり、アルバムでこれまでのブルージーなギター・ナンバーが戻ってくることはない。おそるべき挑戦がつまったこの意欲作を楽しみに待とう。

ジョン・フルシアンテ - レター・レファー

ジョン・フルシアンテ - レター・レファー
発売中

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1. In Your Eyes
2. 909 Day
3. GLOWE
4. FM
5. In My Light

ジョン・フルシアンテ - レター・レファー

ジョン・フルシアンテ -
PBXファニキュラー・インタグリオ・ゾーン
2012.09.12発売
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1. Intro/Sabam
2. Hear Say
3. Bike
4. Ratiug
5. Guitar
6. Mistakes
7. Uprane
8. Sam
9. Sum
10. Ratiug(acapella version) -bonus track-
11. Walls and Doors -bonus track-

interview with Purity Ring - ele-king


Purity Ring - Shrines
4AD/ホステス

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 ピュリティ・リングは、いわゆるR&Bのシーンにとっては招かれざる客かもしれないが、その外にあってあたらしいR&Bをかたちづくる存在である。ウイークエンド、ナスカ・ラインズ、インク、アヴァ・ルナ、ファースト・パーソン・シューター......そのようなアーティストはいま次々と現れてきつつある。招かれざる客だというのは、たとえば〈4AD〉や〈ロー〉、〈レフス〉、〈メキシカン・サマー〉といったレーベルからリリースされているということだ。彼らはチルウェイヴや昨今のインディ・ダンス・ブームとつよく結びついた流れのなかから派生してきている。ジャケットからして「R&B」的ではないが、ジェイムス・ブレイクが鮮やかにシーンを縫い合わせたように、彼らもそれぞれR&Bとはべつの個性やルーツからそれへと接近し、思い思いの世界を構築している。

 コリン・ロディックとミーガン・ジェイムズによるこのカナダの男女デュオは、ホーリー・アザーやセーラムのようなダークなウィッチハウスを、ドリーミーなシンセ・ポップとして噛みくだき、R&Bやヒップホップのリズムでくびれのある音楽に仕上げた。ドーリーでエアリーなヴォーカルは、なみいるディーヴァとはイメージにおいてかけ離れるが、やっていることはそう変わらない。ポップスとしてイノヴェイティヴであり、リリース元の〈4AD〉とは音楽性から言ってもとてもフィットしている。
 
 もとはふたりともゴブル・ゴブルというエクスペリメンタルなエレクトロニック・バンドのメンバーだったようだ。いつしか単独での楽曲制作に目覚めたコリン・ロディックが本ユニットを始動させた。90年代のR&Bに大きな影響を受けたという彼はおもにトラック作りを、読書や物を書くのを好むというミーガン・ジェイムズは詞とヴォーカルを担当し、互いのアイディアは遠距離でやりとりされている。

 今回取材できたのはコリンひとりだったが、とてもおっとりとした人柄である。オンラインで公開された"アンガースド"1曲のために、彼らはまたたく間に大きな注目を浴びるようになったわけだが、そんなに突っ込んだ音楽リスナーというふうでもないらしく、のんびりと、正直に回答してくれた。たくさんの姉たちと少年時代に聴いた音楽が、しぜんと「にじみでてきた」という彼のトラックは、機材やソフトの機能をたのしみ、工夫することで生まれてきたもののようだ。こうした態度もとてもいまらしい。

自分自身もそういうD.I.Yな環境に身をおいていると思ってて、ミーガンなんかも服はほとんど手作りしちゃうんだ。僕の今日のこのズボンだってそうだよ! 基本的には独学なんだよ。ていうか、実際のところ自分でも何をどうしたらああなったのかよくわかってないんだよね。

フジロックが終了したところですが、どうでした? あなたがたはとても凝ったライヴをされるとうかがっています。

コリン:日本は初めてだったし、あんなに大勢の前でやれるなんてね! すくなくとも思ったよりぜんぜんたくさんのオーディエンスだったよ。とっても楽しかった。フェスティヴァル自体もいままで行ったなかでも最高にきれいな、すばらしいものだったし。

ステージに立たれたのはふたり? 機材とヴォーカルっていうセットですか。

コリン:そうだね。ミーガンが歌って、たまに太鼓もたたくんだけど、僕が使ってる楽器っていうのは手作りで、ランタン型のものがたくさんぶら下がってて、それを叩くことでシンセサイザーの音を再現するというものなんだけど......

名前はあります?

コリン:いや、ないんだ(笑)。

えー。電子楽器ってことになりますか。音階が出せるような?

コリン:そうだなあ......。いちおう楽器です。よりクリエイティヴになれる電子楽器ってところかな。音階は、出せるよ! ここに移し出したシンセの音はぜんぶ出せるんだ。

へえー。イクイップメントについてもうすこし教えてもらえます?

コリン:あとはMIDIコントローラーが置いてあって、パッドが付いてるやつだけど、それでミーガンが歌ってるのをその場でサンプリングして切り貼りしたり、ちょっと声の質を変えてみたり、分断させたり。それから、繭型の照明を20個くらい用意して、それを僕の楽器と連結させて音といっしょにライティングが変わるような、そういうものを作って工夫してみたんだ。見た目も演出するような感じでさ、ミーガンの声なんかにもあわせて変化していくんです。

ああ、それはすごい。シンセ好きなんですね。そういうアイディアとか技術はどこかで学んだものなんですか?

コリン:基本的には独学なんだよ。ていうか、実際のところ自分でも何をどうしたらああなったのかよくわかってないんだよね。けどこんなパフォーマンスをしたいっていうイメージがあって、そのためにどういう楽器があったらいいのかっていう必要から、なんとなく自分でできるなりに作っちゃったものだから、いまだにほんとに思い通りのことができない部分があるんだけどね。

すごくD.I.Y.なかたちですよね。なにか、あなたのまわりにそうした雰囲気の仲間やシーンがあったりするわけではないんでしょうか。

コリン:そうなんだよね。前のバンド(ゴブル・ゴブル)もそうだったんだけど、自分自身もそういうD.I.Yな環境に身をおいていると思ってて、ミーガンなんかも服はほとんど手作りしちゃうんだ。僕の今日のこのズボンだってそうだよ(※ステッチのかわいらしい、おちついた黄色のズボンでした)! ステージ衣装も彼女がやってくれてるし、それを含めて、僕たちのやってることはなんでもD.I.Y.だね。

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水といえばミーガンだよ。ミーガンはすごく水に惹かれるらしくて、とにかくなにかというと泳ぎに行くんだよね。どこに行っても、まず訊くのが「どこに行けば泳げる?」ってことなんだよ(笑)。

PVとかはかなり凝ったクオリティですよね。ブルーワーという方の監督で"ベリスピーク"のヴィデオなんかは、おふたりがアイディアなどを出しているんですか?

コリン:あれは、ミーガンと僕とがある程度のアイディアを提示して、それを何人かの監督からプレゼンしてもらって、選んだものなんだ。ブルーワーさんはいちばんこっちの言うことを変えてしまった人なんだよね。唯一のこされていたのが、もともとの僕らの案のなかのヴァイヴというか雰囲気だけって感じで、あとはまったくかけ離れたものにしてしまってあって。でもそこが逆にいいと思って、彼にきめたんだ。

あの暗くて模糊とした水底の造形もよかったですし、気味の悪いものがまとわりついてくる感じも、あなたがたの音楽を視覚的にうまく延長していたと思います。アーティスト写真にも水を用いたものがありますよね。こうしたあいまいな、水なんかの表象を好んで用いるのはなぜなんでしょう?

コリン:ほかにどこに水をつかってたっけ?

いや、このアー写とか......(アーティスト資料などに用いられている写真を示す)

コリン:あはは、ほんとだ! そのとおりだよ。......ええと、"ベリスピーク"はたぶん僕らの音楽のなかでもいちばんダークなもののひとつで、攻撃的な響きのものだったなと思う。その意味で、ああいう暗い水底の雰囲気はしっくりきていたかもしれないよね。なにかつかみどころのない暗さ。でも、水といえばミーガンだよ。ミーガンはすごく水に惹かれるらしくて、とにかくなにかというと泳ぎに行くんだよね。どこに行っても、まず訊くのが「どこに行けば泳げる?」ってことなんだよ(笑)。セイリングも好きだよね。とにかく水にとりつかれているらしい(笑)。

ははは、奇妙ですね! あなたはクラムス・カジノをフェイヴァリットに挙げておられたと思うんですが、クラムス・カジノにも少し似たような感覚があると思うんですね。スクリューとは言わないまでも、アッパーなテンションやテンポを生まないことにはなにか理由があるんですか?

コリン:ええと、先に言っておくと、クラムス・カジノはすごい人だと思うし、音楽も大好きなんだけど、でもじつはそう影響を受けたというほどにはよく知らないんだ。でも、たしかにそうだね。彼のほうが、抑えがきいているという意味ではずっと上だし、うまくやっているとは思うけど。僕らの音楽はときとして跳ね上がるし、わりと昂揚したりするって自分では思ってるんだ。こうして人と話していると、自分がこうしたいって思って作ったものとぜんぜんちがう印象を持たれていたりして、おもしろいものだよね。

あなたのダークでドリーミーなエレクトロニクスは、ウィッチハウスとか、もっとひろくヒプナゴジック・ポップと呼ばれるような現代的な流れをいくつも巻き込みながら、新しい世代のR&Bにも接近していると思います。こうした流れのひとつひとつは、わりと無意識に目指されたものなんですか? 意識的に追っているものはあるのでしょうか。

コリン:どうなんだろう、ちがうもの、あたらしいものをつくりたいという気持ちはつねにあるんだけどね。いまあるものの最後になって終わりたくない、って。でもなにかの流れを意識的にとらえて組み立てているかっていえば、それはなんとも言えないな。エレクトロニック系の音楽は、ドラムがあってベースがあって......っていう型にはまらないで、とても自由につくっていけるものだから、どんどん新しいことをやるのが大事だとは思ってる。機材が提供してくれるサウンドのパレットが無限にあるわけだから。でも異なったもの同士を組み合わせるっていうような部分は、たぶん無意識にやってるかな。とくに、アタマのふたつ、はじめて書いた曲のふたつなんかは、何にも考えないで作ったと思うよ。できちゃった、って感じの曲なんだ。あらためて聴いてみれば、ああ、これはここから来てたんだなっていう説明はつくと思うんだけどね。でもいまの僕にそのへんを分析することはできないかな。

大きな影響として90年代のR&Bについても言及されていますが、そのころって、まだすごく幼いですよね? リアルな記憶とかはあるんでしょうか?

コリン:ちょうど僕は90年生まれだよ。だから、99年は10歳だ。99年までが90年代だからね! 姉が4人いるんだけど、10歳くらいのころは、ラジオなんかをいちばん聴いてた時期で、姉たちといっしょに、ポップスからR&Bから、とにかくそのときはやっているものをガンガン耳にしてたんだ。僕自身はそんなに興味があったわけじゃなくて、いつもいっしょにいたから聴かされてたって感じだね。もうちょっと大きくなって自分で音楽を選ぶようになっていくと、メイン・ストリームから外れるものも聴くようになるんだけどね。でもいまこうして音楽をつくるようになってみると、あのラジオを聴いてたころの影響っていうのがどんどんにじみ出てくるものなんだなって思うよ。当時聴いていたときの、そのままのフィーリングがよみがえってくる感じがあるよ。

ああ、「にじみ出てくる」ねえ。なるほど。ところで、ピュリティ・リングを聴いて「踊れるグライムス」って評した人がいるんですけど、カナダからみたグライムスの活躍ていうのはどんなふうに見えているんでしょう? カナダのシーンに与えた影響はありますか。

コリン:えっ、本当~(笑)。僕は逆にグライムスのほうが踊れると思うなあ。

あははっ。

コリン:僕らのほうがスローだし、スペーシーで、すき間も多いし。リズムも一定だしね。クレアは友だちだよ。地元モントリオールの仲間だし、共通の友だちも多いんだ。彼女はやっぱり、その後カナダのアーティストが世界に出ていくきっかけになってくれたような人だなって思うよ。モントリオールの、僕らみたいな音楽をやっているアーティストたちが注目されたのも、彼女からはじまっている。けっこうそれはクールなことだよね。

シングルが〈ファット・ポッサム〉から出ていたりするのはどういうきっかけなんですか? ユース・ラグーンなんかもいますけど、どちらかというとガレージ・ロックなんかの印象のつよいレーベルですよね。

コリン:当時べつになんの契約もない状態だったから、自費でシングルでも出そうかって思ってたところに〈ファット・ポッサム〉から連絡があったんだ。だから渡りに船で契約したんだけど、たしかに僕らはあのレーベルのなかでは浮いてたよね。〈4AD〉のほうが合ってるって僕でも思うよ(笑)。でもあの段階では〈4AD〉なんてとても。彼らが僕らに気づいてくれるのは、そのずっとあとのことになるね。

ピュリティ・リングって名前はどんな意味でつけたんですか? ふたりでそう名乗るのは意味深にも思われますが。

コリン:いや......とくに意味はないんだ(笑)。でも響きはいいし、覚えやすいし、何年か前からバンドかなにかをやるならこの名前にしようって思ってたよ。ちょうどミーガンといっしょにやることになったから、じゃあそれを、って感じで。なんとなく、つくりたいと思う音楽の雰囲気にも合ってたしね。

あれれ、そうなんですか。じゃあ最後に、先に帰ってしまった相棒にひとことお願いします。

コリン:いやあ、とくにないよ、ノー・コメント(笑)。だけどおもしろいね。僕がいま話してたことがぜんぶ日本語になるわけだから、あとから見たって写真くらいしかわからないんだね、僕は。

JET SET - ele-king

Shop Chart


1

Onur Engin - Night Images (Glenview)
イスタンブールの大人気リエディターOnur Enginによる話題作が遂に入荷。お馴染みとなった"Glenview"からの本作は、先にリリースされたリエディット・アルバム『Music Under New York』からのリミックスEp!!

2

Dj Dez A.k.a Andres - New World / Brain (Root Down)
AndresがDj Dez名義でブラックネス漂う7インチをリリース!洗練されたサンプリング・センスとスモーキーでファットな音の鳴りが光る傑作トラックを収録したダブル・サイダーです!

3

Det & Ari - Honved Hassle Ep (Editainment)
Tiger & Woods等の作品でお馴染みEditainmentが送り出す新生デュオDet & Ariによる最新作!

4

Nas - Life Is Good (Def Jam)
プロデュースにはSalaam RemiやNo I.d.が中心となって制作され、他にもBuckwild、Justice League、Swizz Beatz、Heavy D(!)という豪華布陣が集結!

5

Invisible - Rispah (Ninja Tune)
バンドに参加したのをきっかけにHerbertプロデュースでAccidentalからリリースを重ねてきた幼馴染トリオThe Invisivleが名門Ninja Tuneへと電撃移籍してぶっ放す待望の2nd.アルバム!!

6

Rimar - Closer (Bella Union)
『Higher Ground』が即完売したフロウティン・メロウ・ビーツ・クリエイター、Rimar。またまたUk/Bella Unionから限定ヴァイナル出ました

7

Time And Space Machine - Good Morning - Inc.Coyote Remix (Tirk)
90年代ニュー・ハウスシーンで一時代を築いたNuphonicのサブレーベルとして知られるTirkから、異才Richard NorrisによるプロジェクトTime & Space Machineによる最新作!

8

V.a. - Midnight Riot Volume 2 (Midnight Riot)
前作が予想以上の注目を集めたことで早くもレーベルとして独立したMidnight Riotから送り出すシリーズ第二弾!

9

Maylee Todd - Hieroglyphics Remixes Ep (Do Right! Music)
トロントのシンガーMaylee Toddによる話題傑作「Hieroglyphics」のリミックスEp!! Tall Black GuyとMakeoverによるリミックスをカップリングした12インチ!!

10

Dj Kentaro - Contrast (Ninja Tune)
5年振りにリリースされた2ndアルバムが待望の2lpにてリリース!Dj Krush、D-styles、Kid Koala等が参加です!

JAPONICA - ele-king

Shop Chart


1

Moody a.k.a. Moodymann - Why Do U Feel EP KDJ / US / 2012/8/1
推薦盤!<KDJ>42番!一連のMOODY名義での新作3トラックスEPが緊急リリース!瞬殺だったMO MOODY名義でのプロモ盤収録トラック"I GOT WERK"正規リリース、そして極上のソウルフルKDJハウス2トラックも!絶品でございます。

2

Idjut Boys - Cellar Door Smalltown Supersound / NOR / 2012/7/25
推薦盤!待望のLP入荷しました!ディスコ・ダブのパイオニアにして現行クラブ・シーンにおける最重要DJデュオIDJUT BOYS、約20年に及ぶキャリアの中で初となるオリジナル・フルアルバム!

3

DJ Dez a.k.a. Andres - New World / Brain Root Down / JPN / 2012/8/3
推薦盤!J DILLAの意思を継ぐデトロイトの至宝ANDRESによるDJ DEZ名義でのストレートなインスト・ヒップホップ7"!大阪のレコードショップ「ROOT DOWN RECORDS」レーベル第1弾。

4

Afro Latin Vintage Orchestra - Last Odyssey Ubiquity / US / 2012/7/23
推薦盤!フレンチ・アフロ・ファンク・バンドAFRO LATIN VINTAGE ORCHESTRAが名門<UBIQUITY>より待望のサード・アルバム!土着エッセンス薫る極上のラテン/アフロ/カリブ・ジャズファンク特上盤。

5

James Curd & Centrone - It's Hot Up In Hell EP G Swing / US / 2012/8/1
推薦盤!スウィング~ジャイヴな漆黒ジャズ・ハウス~ロービート!絶品です◎シカゴのベテランJAMES CURD主宰<GREENKEEPERS>傘下の<G-SWING>再始動後のリリース第6弾!

6

Derrick Harriott / Susdan Cadogan - Let It Whip / Juicy Fruit Ximeno / US / 2012/7/21
推薦盤!80'Sメロウ・ブギー/ソウルの絶品レア・レゲエ/ラヴァーズ・カヴァー!第1弾も最高すぎた、レゲエ・ジャーナリストDANNY HOLLOWAYによる再発専門レーベル<XIMENO>第2弾!

7

Cro-magnon - Riding The Storm (Idjut Boys Remixes) Jazzy Sport / JPN / 2012/7/25
推薦盤!IDJUT BOYSリミックス!今年一月に待望の復活を遂げたCRO-MAGNON、彼等のライブ定番にしてダンス・フロアを熱くする傑作"RIDING THE STORM"リミキシーズ12"!

8

The Rongetz Foundation - Gogo Soul feat. Gregory Porter Heavenly Sweetness / FRA / 2012/7/28
推薦盤!レーベル・イチオシの注目フレンチ・ビートメイカーGUTSリミックス収録!多国籍スピリチュアルジャズ・ユニット=THE RONGETZ FOUNDATION新作。feat. GREGORY PORTER!

9

Psychemagik - For Your Love Psychemagik / UK / 2012/8/1
ブラジリアン・クラシックJOYCE"ALDEIA DE OGUM"のダンス・グルーヴ・エディット!鉄板級のリリースが続くPSYCHEMAGIKオウン・エディット・ライン新作。夏を感じさせるグッド・エディット◎

10

Moodymann - Classics Vol.4 Unknown / UK / 2012/7/19
フリーDLアルバム「PICTURE THIS」収録トラック"PRAY 4 LOVE"がアンオフィシャルながらアナログ化!

 7/31火曜日の朝、突然やってきた知らせ。「オリヴィア・トレマ・コントロールのビル・ドスが逝去」
 アセンスのローカル新聞フラッグ・ポールのゲイブ・ヴォディッカがいち早くツイートすると、『ブルックリン・ヴィーガン』も「これが嘘であって欲しい」と祈りながら、アップデートをはじめた。
 そのツイートから数時間後、オリヴィア・トレマ・コントロールのオフィシャル・サイトが、「We are devastated by the loss of our brother Bill doss. We are at a loss for words.(僕達の兄弟分、ビル・ドスの逝去に打ちひしがれ、言葉を失っています)」とコメントを載せる。チャンクレットなど、他のサイトでも、どんどんアップデートがはじまり、真実として受け止めるしかなかった。

 私もその日は、何も手に付かなかったが、彼との思い出を少しでもシェア出来たらとここに書いて見る。

 オリヴィア・トレマ・コントロールを初めて知ったのは、私がLAにいた1996年のことだった。その頃、アップルズ・イン・ステレオの『ファン・トリック・ノイズメイカー』が日本のトラットリアからリリースされ、私も大好きで聴いていたので、彼らのショーに行った。そのときの対バンがミュージック・テープスとオリヴィア・トレマ・コントロールで、アップルズ・イン・ステレオを見に行ったにも関わらず、私はこのふたつの対バンにいままでにない感動を覚えた。これがきっかけで、日本ではまだ知られていない、こういった素敵なアメリカのインディ・バンドを紹介していこうとレコード・レーベルをはじめた。彼らとの出会いで、自分の進んで行く道を確認したのだ。

 彼らとたちまち友だちになった私は、彼らの住むアセンスに滞在することになる。いまでも1年にいちどは里帰りしている。

 私が住んでいたのは、ビルのバンド・メイトで、エレファント6の中心人物のウィルの家だった。そこでは毎日のようにオリヴィア・トレマ・コントロールの練習がおこなわれていた。ビルはリーダー的役割で、まわりに気を使い、心優しく、まだ英語もろくにしゃべれなかった私の面倒を見てくれた。オリヴィアにインタビューするときは彼が答えてくれた。初来日したときに、みんなで渋谷を散策したのが、つい最近のように思い出される。

 彼らは2010年再結成し、先月6月のノースサイド・フェスティヴァルでNYでプレイした。そのとき久々にビルと会って、これからのオリヴィアの活動などについて話した。「ヨーロッパは、すでに決まっているから、次は日本にも行きたいね。この(ノースサイド)次は、シカゴのピッチフォーク・フェスだから、来るなら言ってね。ゲストにいれるから」とウィンクされたのが、最後の会話になった。
 エレファント6に関する記事をまとめようと、彼用のインタヴューもすでに送り、会ったときに「インタヴュー返すの遅れてゴメン! ツアーから帰ったらすぐに返すよ」と言われたのに、返って来ないインタヴューになった。

 彼のお葬式は8/4(土曜日)アセンスの音楽会場である40ワットでおこなわれる。オリヴィアも良くプレイした馴染み深い場所だ。彼の家族は、地元の音楽家支援サイトに寄付ページ(nuci's place)を設けている。彼にお花、愛を贈りたい人は、こちらへ。 https://www.nuci.org/help/donate-online/

 ビルは、クリアな声でハーモニーを大事にする、素晴らしいシンガーだった。暫くはオリヴィア・トレマばかりを聴いてしまうんだろう。
https://m.pitchfork.com/features/afterword/8908-bill-doss/
(写真の下の文章の最後の"here"をクリックすると、ビルの素晴らしい作品集が聞ける)

 最初にアッタチした写真(01/02)は、1996年に彼らを始めてLAで見た時に撮った物。写真ケースに入れたら、くっついて離れずNYに移っても、ずっと私の部屋に飾られている。その他、アセンス時代の思い入れのある写真。書きかけのUS POP LIFE本を仕上げなければ。

 レスト・イン・ピース、ビル
 安らかにお眠り下さい。

 Rest in peace Bill Doss
 8/1/2012 Yoko Sawai

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