Home > Interviews > interview with The Orb - 水を飲め!
The Orb Featuring Lee Scrach Perry present The Orbserver In The Star House COOKING VINYL/ビート |
「if you're thirsty, drink some water(喉が乾いたら水を飲みな)」...... 何をそんなに当たり前のことを。いや、しかしこれは金言、75年以上の人生から来るアドヴァイス(人生訓)なのだ。そろそろ酒の量を減らそう。
アンビエント・ハウスの巨匠、ブラック・アーク伝説の偉人との共同作業は、これまでのジ・オーブのカタログのなかでもとりわけ気を引く1枚となる。なにせアレックス・パターソンとトーマス・フェルマン、そしてリー・ペリー、この3人のコラボレーションなのだ。我々はいま、新しい惑星(star house)からの新しい電波をキャッチするところなのである。
おかしくて、神聖で、心地よい電波だ。ジ・オーブ(アレックス・パターソン、トーマス・フェルマン)というレゲエ好きで知られるエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーは、ペリーの酔狂なラップを迎え、彼らのダブワイズを展開している。それは瞑想的というよりも、ダンサブルで、ちょっとファンキーだ。"ポリスとコソ泥"というレゲエ・クラシックのカヴァーも披露しているが、これがまた良い。そして、"リトル・フラッフィ・クラウド"のリフを使った"ゴールデン・クラウド"はなお良い。
コンゴスとサン・アロウとのコラボ作は、暑いこの季節、最初に聴いたとき以上に、あのだらしなさが愛おしくなってきている。ジャマイカのウサイン・ボルト選手とは真逆の、速くない音楽である。チルアウト......、そう、いまやこれは音楽のなしうる大きな役割のひとつとなった。ゆえにダブワイズは新たな空想的なタペストリーを広げているのだろう。
『ジ・オブザーヴァー・イン・ザ・スター・ハウス』もそうだ。肩の力が抜けて、世界に必要な笑いを取り戻し、そしてちょっと楽になる。
ずっと逆立ちをしてるんだよ。75歳の老人が、逆立ちだぜ? 若かったり、身体すごく鍛えてたり、健康食品ばかり食べてたりとかだったら普通だけど、75歳のジャマイカンが逆立ちだなんて、本当に感動的だよ! 心から感動したね!
■いままであなたはいろいろなミュージシャンと共同作業をしてきましたが、あなたにとって今回のアルバムはどのような意味があるものなのか話してもらえますか?
アレックス:これまでの作業と今回の違いは、歌詞の内容だね。ある賢い男が、もっと落ち着いて、もっと水を飲んで、酒は飲むなと世界に語ってるんだ。今回はヴォーカルの内容に繋がりがあるから、それをぶつ切りにして繋げるようなエディットができなかった。いままで俺たちは作品全体に同じヴォーカリストを使ったアルバムを作ったことがないんだ。アルバム全体にここまでヴォーカルが入ったことも、ひとりのヴォーカリストとのコラボだけで一枚のアルバムを作ったこともない。それが今回のアルバムだよ。
■あなたはデビュー時からレゲエに関する知識が豊富なことで有名なプロデューサーでしたよね。音楽的にもダブからの影響を取り入れ、〈ワウ! ミスター・モド〉からもビム・シャーマンを出してました。"ブルー・ルーム"ではマッド・プロフェッサーをリミキサーに起用し、「ハイル・セラシエとマーカス・ガーヴェイの会話」を作ったり、レゲエはあなたのずっと身近な音楽でした。そういうあなたが、リー・ペリーの音楽(1)、アート(2)、人間性(3)、メッセージ性(4)についてどう考えているのか教えてください。
アレックス:とにかく、彼はパイオニア。彼がダブ・ミュージックのアイディアのパイオニアだった頃に、俺は彼の音楽にハマったんだ。70年代半ばだな。ある意味、ダブはそれよりもっと前から存在してたわけだけど、彼はダブの世界の中心のひとりだと思う。彼には、独特の効果があるからね。ヴォーカルがより多くて、ディレイやリヴァーブも多い。リー・スクラッチ・ペリーは、そのサウンドの草分け的存在さ。彼の音楽を好きにならないわけがないよな。
■アートは?
アレックス:超エクスペリメンタルだと思う。彼の作品には、たくさんの二重の意味が含まれているんだ。
■人間性はどうでしょう?
アレックス:彼は本当に優しくて、ジェントルマンなんだ。彼の頭のなかにはつねに課題がある。だからこそ、我々が引きつけられるあの魅惑的な作品を作ることができているんだ。彼の頭のなかはいつも純粋。いつも新しいことに心をオープンにしている。それが、彼が常に素晴らしい作品を作ることができる理由なんだ。
■最後にメッセージ性についてお願いします。
アレックス:宗教的だと思う。彼のメッセージは、彼の魂から来てるからね。彼の魂、心、頭から。彼の信じるものが反映されているんだ。
■リー・ペリーの作品でもっとも好きなアルバムを3枚挙げてください。
アレックス:『スーパー・エイプ』と、ザ・コンゴスの『ハート・オブ・ザ・コンゴス』、あとは......『Lee Perry The Upsetter Meets Scientist - At The Blackheart Studio』その3つだよ。
■好きな理由を聞いてもいいですか?
アレックス:まず『スーパー・エイプ』を選んだのは、俺はカヴァーーが好きだから。あのアルバムのおかげで、ダブの魅力を知ったしね。ザ・コンゴスのは、彼の作品のなかでもベスト・チューンのひとつだと思う。リズミカルで楽しくて、クールなんだ。で、最後の『Lee Perry The Upsetter Meets Scientist - At The Blackheart Studio』は、理由を言う必要はないよな? 誰が聴いても絶対に気に入る作品だろ?
取材:野田 努(2012年8月17日)