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Lee Scratch Perry

Lee Scratch Perry

Rise Again

Pヴァイン

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野田 努   May 16,2011 UP
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 朝起きて火を付けて、そして寝るまで煙を吸い続けるレゲエの妄想狂にとって70年代のリー・ペリーはハイル・セラシエであり王でありライオンであり、そして道化た予言者であり風変わりな哲学者だ。彼の黙示録的で気まぐれで、そしてディアスポリックなヴィジョンは、「具体的な矛盾の素晴らしい解決」として汎アフリカ主義と抵抗を結びつけた。西欧文明の抑圧のなかで磨かれた、ときに"故障したリズム"と形容される彼の感性が、ずば抜けてぶっ飛んだ『スーパー・エイプ』やおぞましくも瞑想的な『ハート・オブ・コンゴス』へと結実していることは周知の通りである。
 なかば原理主義的とも言える聖書の引用とマーカス・ガーヴィへの言及は、正気であることを嘲笑うかのように何度も何度も繰り返されているばかりか、ペリーは自らを「王」と呼び、「神」と呼び、あるいは「地球」、あるいは「認められし者」と呼ぶ。こうして彼の音楽は実に奇っ怪で、おおらかな啓蒙主義へと発展する。かくして......この30年ものあいだ、ルーツ・レゲエは奇妙な神話として世界のいたる場所で拡大した。

 『ライズ・アゲイン』は、信者たちが文句なく賞賛する彼の70年代のいわばルーツ・レゲエのスタイルを意識して録音されている。ベースにビル・ラズウェル、ドラムはスライ・ダンバー、そしてキーボードにはP・ファンカーのバーニー・ウォーレル。卓越した演奏力を持つ彼ら"70年代組"のリディムは、実際のペリーの70年代の乱雑さとは比べようがないほど、ストイックに引き締まっている。それはこの作品の品質を保証するには充分である。
 他にルーツ・ファンにはお馴染みのドクター・イスラエル、もっとも興味深いのはTV・オン・ザ・レイディオのヴォーカリスト、トゥンデ・アデビンペの参加だが、彼がこのアルバムに影響を及ぼしている感じでもない。このアルバムはただ、74歳のダブの創始者への愛情で溢れている。ペリーは、アルバムの冒頭からさっそく啓蒙をはじめる。「盗人なんかになるんじゃないよ/そして肉を食べるんじゃない/野菜を食べないとな」、そしてこう続ける。「俺は地球の主/俺はリー・スクラッチ・ペリー/74歳には見えないだろう」
 これだけ尊大な態度を繰り返しても、こうした彼の無邪気さはファンにとってはむしろ彼への愛情を掻き立てるのだ。"ライズ・アゲイン"や"アフリカン・レヴォリューション"で歌われるお馴染みの言葉(ハイル・セラシエにマーカス・ガーヴィ、エチオピア等々)は失笑を買いかねないが、それでも"アフリカン・レヴォリューション"のような彼の汎アフリカ主義がステージで演奏されれば拍手で迎えられるだろう。アルバムを通してペリーは霊媒師となって、死者を蘇らせようと奮闘し、そしてアフリカに呼びかけている。
 もっとも僕が感心したのは、いくつかの曲ではわりとしっかりペリーがメロディを歌っていることである。これはビル・ラズウェルのプロデュース力によるものだろう。ペリーの声の魅力もうまく録音され、『ライズ・アゲイン』(再び立ち上がる)というタイトルに相応しい力作となっている。
 クローザー・トラックは日本食を賞賛した曲だが、ペリーはこれまでも"食"をテーマにした曲を作っている。そう、"ロースト・フィッシュ、コーリー・ウィード&コーン・ブレッド"は、老境に達した芸術家にとって日本食となったのだ。

野田 努