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Death And Vanilla

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三田 格   Aug 09,2012 UP

 たしかにチルウェイヴには詳しくない。ちーとも知らない。必要があっても適当に書き飛ばしてきた。しかし、そのことを暴くために野田努は「3月」にリリースされた作品をいまさらのように持ち出してきた。半年近くも前にリリースされたアルバムだよ。ディスク・ユニオンには早くも中古盤が並んでいたデビュー作である。杜撰なのか、狡猾なのか。目的のためには手段を選ばない。そういうことであれば、僕も「3月」にリリ-スされたデビュー作から選ぶしかないではないか(なんで?)。スウェーデンから現れたイタロ・ディスコ・ヴァージョンのジェントル・ピープル。これがまた夏に合うんだな~。

 全曲試聴→http://soundcloud.com/kalligrammofon/sets/death-and-vanilla-st/

 わざとらしく不安を煽るようなオープニング。細野晴臣のようで細野晴臣ではないポップ・センスを張り巡らせ、チープでイミテイションな電子音が宙を舞う。どこまでも人工的で物悲しく彩られた曲の数々を聴いていると、野田努のやったことなどどうでもよくなってくる。必要なのは現実から目を逸らす想像力と人工着色料の見果てぬ夢。いかにも60年代っぽいエコー・サウンドが再現され、控えめな効果音にも心を奪われてしまう。ピーキング・ライツやトリ-アングル系へのアンサーとも言えなくはないだろうけれど、まー、言いたいやつには言わせておけという感じ(自分か)。"カル-デ-サック"はステレオラブがGSをカヴァーしているみたいだし、"ライブラリー・ゴブリン"は初期のピンク・フロイドをメランコリックに改造したというか。エンディングはどっしりと、そして、夢から覚めるように音楽も終わってしまう。えー、もう、終わり~。もっかい~。

『血と薔薇(Et mourir de plaisir)』という映画があったけれど、「死とヴァニラ」とは何のことだろう? わからない。教養がない。調べるヒマがない。テラノヴァを脱退したザビアー・ノーダシェアー(またノダだ!)が昨年、ソロでリリースしたデビュー作も「3月」に3枚組みでアナログ化された。これもイタロ・ディスコの波に乗った叙情派で、暑い夏にだらだらと聴くしかないユルユル・モード。催眠的なアルペジオを聴き続けていると、野田努のやったことなど......どんどんどうでもよくなってくる。ゆっくりと、ゆっくりと、曲の構成が移り変わり、宇宙を漂っているような気分からヘンな星まで流されてきて、あげくに血の気まで引いてくる。コズミックというのはトランスにダブをかませて、とにかく回転数を遅くしたものだと思えばいいだろうか。奇しくもマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンが拠点とする魔女狩りの街「トリノの尺度」と題されたアルバムはトリップ・ミュージックとしてはなかなかの出来である(303が標準装備され、後半の擦過音が実にカッコいい"フォー・ア・フィストフル・オブ・アシッド"では例によってあれの説明が挿入され、"ルナー・ローヴァー"は日本語で歌われている)。

全曲試聴→http://soundcloud.com/supersoulrecs/sets/...


 で、「3月」には何をしていたんだっけ?(コメント欄で募集は......していません)

三田 格