「S」と一致するもの

Terrence Parker - ele-king

 テレンス・パーカーと言えば、デトロイトでもっとも最初にハウスをプレイした先駆者だが、日本のファンにはDJノブとの交流でも知られている。昨年は〈プラネットE〉から久しぶりのアルバムを発表し、相変わらずのクオリティの高さにデトロイト・ファンをうならせたこのベテランがまたしても来日する。今回の共演者は、日本の大ベテラン日の DJ EMMA。
 7月7日のデトロイトと東京のハウス・リジェンドの対決(?)、目撃しようじゃないか。

Terrence Parker Boiler Room Chicago DJ Set


■Terrence Parker
7/7 (SAT)@VENT

出演:Terrence Parker〈Intangible Records〉, Detroit
DJ EMMA
And more
時間:OPEN 23:00
料金:DOOR : \3,500 / ADVANCED TICKET:\2,500

VENT:https://vent-tokyo.net/schedule/terrence-parker/
Facebookイベントページ:https://www.facebook.com/events/2060397747553633/

interview with Jon Hopkins - ele-king

 この透明感はどこから来るのだろう。初めて『Small Craft On A Milk Sea』を聴いたとき、その音のあまりのクリアさに驚いた。ノイジーな展開をみせる曲でさえそうなのである。洗練、あるいはある種の雅と言ってもいい。それはたぶん、イーノひとりの力によるものではなかったのだろう。共作者としてクレジットされたレオ・エイブラハムズ、そして彼の古くからの友人であるジョン・ホプキンス。彼らの貢献は想像以上に大きかったのではないか――このたびリリースされたホプキンスの新作『Singularity』を聴いて、改めてそう思った。
 じっさい、海の向こうでの彼の評価はとても高い。たとえば昨年『ピッチフォーク』で企画された特集「The 50 Best IDM Albums of All Time」では、2013年の前作『Immunity』が37位に取り上げられている。その記事のなかで選ばれた2010年代以降のアルバムが2枚のみだったことを考えると、これは快挙と言っていい(ちなみにもう1枚はジェイリンのファースト)。同作はマーキュリー・プライズにもノミネイトされており、やはりそのどこまでも豊饒なる音響とテクスチャーが高く買われているのだろう。


Jon Hopkins
Singularity

Domino / ホステス

ElectronicTechnoAmbient

Amazon Tower HMV iTunes

 そのホプキンスにとって今回の新作はじつに5年ぶりのアルバムとなる。その間に彼が出会ったのはヨガと、そして瞑想だった。新作のサウンド・デザインにもその体験は大きな影響を与えており、アルバム後半のアンビエント寄りの曲群からはもちろんのこと、本人曰く「攻撃と美しさ」をミックスしたかったという“Emerald Rush”や、あるいは“Neon Pattern Drum”や“Everything Connected”といった機能的でトランシーな曲からも、ますます磨きのかかった透明さと精密さを聴き取ることができる。
 もしいまあなたが素朴に「美しいもの」に触れたいと思っているのなら、何よりもまずこのアルバムを手に取ることを強くお薦めしたい。(小林拓音)


揺るがない世界観と自分の素直な気持ちを表現することが音楽の大きな役割。音楽に限らず、アート全般の役割だと思うね。

いろんな国からの取材を受けていると思いますが、プロモーションはたいへんですか?

ジョン・ホプキンス(Jon Hopkins、以下JH):アルバムがリリースされてから1週間が経つけど、いまのところ、すごくエキサイティングだよ。イギリスではトップ10に入ったけど、ああいう音楽がトップ10に入ることなんてほとんどないしね。先週最初のショウをやったんだけど、心配だったヴィジュアルもうまくいって、すべてがいい感じだった。いまからはインタヴューよりもライヴ・ショウが多くなる。あとはラジオだね。移動も多くなるし、忙しくなるよ。

前作『Immunity』が2013年ですから5年ぶりになりますよね。この間、ライヴや映画の仕事で忙しくしながら、今回の新作の準備も着々と進めていたと思います。あなたにとってこの5年間はどんな意味のある5年間でしたか?

JH:5年のうち、2、3年はツアーで忙しく、ツアーが長かったから、そのあとはちょっとオフをとった。その間はロンドンのバービカン・プロダクションの学校で教えて、そのあと2015年の終わりに今回のアルバムの制作をはじめたんだ。仕上がったのは2017年の10月。そして、いまやっとそれをリリースできてまたツアーがはじまるところ。

通訳:制作自体には2年間かかったんですね?

JH:そう。といっても、2年間まるまる制作していたわけではなくて、じっさいに制作に費やしたのは1年半くらい。制作しては休み、制作しては休み、といった感じだったね。

この5年間で、あなたのまわりの人びとや環境、あるいはUKや世界の状況など、世の中は変わったと思いますか? もし変わったとするなら、どのようなところに変化を感じますか?

JH:複雑で、どう言葉で表現したらいいかわからない。でも、その変化はすべて音に出ていると思う。サウンドのレイヤーや複雑さに自然とそれが反映しているんだよ。とくに制作をしていた2年間は波のように変化が起こっていたと思う。でも変化が起こるなか、音楽を作る上でたいせつなのは、ピュアな感情をそのまま表すことだと思うんだ。揺るがない世界観と自分の素直な気持ちを表現することが音楽の大きな役割。音楽に限らず、アート全般の役割だと思うね。それが人びとをハッピーにすると思うし、いい意味で影響するんじゃないかな。不安や恐れを振り払ってくれる。不安を抱えていても、音楽は自分のそばにいる味方、みたいな感じ(笑)。

通訳:あなたにとっていちばん大きな変化はなんでしたか?

JH:僕はカリフォルニアに住んでいたから、それ自体が人生の大きな変化だったね。住む場所が変わって、もっとヒッピーになったと思う(笑)。ヨガや瞑想をはじめたりさ(笑)。それは音楽にも深く影響していると思う。

通訳:いまもヨガは続いていますか(笑)?

JH:続いているよ。呼吸が重視されたヨガで、痩せはしないけど、精神的にすごくいいんだ。だから、身体のためには他のエクササイズもしてる。不眠症だったからはじめたんだ。おかげで治ったよ。人生でいちばん大切なのは、自分の脳内をコントロールできることだと思うね。それは学ばないと習得できないことだと思う。

人生でいちばん大切なのは、自分の脳内をコントロールできることだと思うね。それは学ばないと習得できないことだと思う。

作曲はどんなところからはじまるのですか? あなたの音楽には瞑想的な側面もあるし、アンビエントの要素もありますが、作曲は理論的にはじめるのか、それとも感覚的にはじめるのでしょうか?

JH:ほとんどは即興だね。音を即興で演奏してみて、そこから広がっていく。だから、感覚的だね。たとえば“Recovery”はピアノを弾いているうちにあのアルペジオが生まれた。あれはそのアルペジオをもとに東京にいたときも曲を書いたんだ。そこでも何も考えず、何が起こるかわからないまま音を出してみた。あの曲は、そのアルペジオをもとに曲が自分でできていった感じだね。曲によってはじまり方は違うけど、スタジオに入ると、スタジオの外で考えることはあまりない。スタジオのなかで即興で演奏して、そこから曲を作っていく流れがほとんどだよ。

先ほど少し出てきましたが、今回のアルバムの制作期間中に瞑想を経験されたそうですね。なぜ瞑想を必要としたのか、そして、じっさいに経験したことが音楽にどのようにフィードバックされたのか話していただけますか?

JH:瞑想は、はじめて3年くらいになる。瞑想をはじめてから、サウンドがもっとオープンになったんだ。そして、もっとポジティヴになったと思う。だから、このアルバムでは、前回以上に喜びが表現されていると思うよ。

通訳:瞑想はどれくらいやっているんですか?

JH:1日に2回、20分ずつ。時間がないときは1日1回。

通訳:けっこうしっかりやってますね!

JH:瞑想は、僕にとってやらないといけないからやっていることではないんだよね。やりたいからやっていることなんだ。すごく気分が良くなるから瞑想をする。課題ではないんだよね。

前作もそうでしたが、今回もアルバムの曲順は重要ですよね? アルバムは物語であり、そしてそこにはあなたの考えが潜んでいるようですが、それを教えていただけますか? それは人生についての考えですか?

JH:もちろん、曲順はいつだって重要。曲を作っている時点で順番を考えているほど、作品の流れは僕にとってたいせつなんだ。抽象的だから、その物語や考えを言葉で説明するのは難しい。込められているものは、すべて言葉では表現できない。だから、リスナーがそれぞれにストーリーを感じ取ってほしいんだ。

“Everything Connected”のような曲もその成果のひとつでしょうか? 曲名にも深い意味があるように思いますし、曲調もトランシーですよね。

JH:その曲は、セレブレイションを音にした作品なんだ。生きていることの祝福。人生は素晴らしいものだということに気づく美しい瞬間を表現したかった。このトラックを作るのは、すごく楽しかったよ。音ができていくままに自由に作業を進めていったんだ。この曲もそうだし、今回のアルバム全体が新しく、アグレッシヴで、奇妙で、長くて……話せばきりがないけど、新しいことをたくさん試みているんだ。アルバム全体が革新的だし、長い物語、旅のような仕上がりになっていると思う。

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「singularity」という言葉は、僕にとっては一体感(連帯感)と飾り気のないことを意味する。そして、少しだけ宇宙創世のビッグ・バンも連想される。すべてが何かに向かって成長していくようなイメージかな。

各曲のタイトルは詩人であるリック・ホランドとの共作となっています。前作でも彼の力を借りたそうですが、今回曲名を決める際に、あらかじめテーマのようなものはあったのでしょうか?

JH:テーマがあったというよりは、僕とリックの会話から生まれたアイディアを使って曲のタイトルを決めていったんだ。もちろん、彼が書いていた美しい詩からインスピレイションを受けたものもあるけれど、メインのインスピレイションはふたりの会話だった。テーマはあまり考えない。しばらくアイディアとして出てきた言葉を使って言葉を操ってみて、曲にフィットするタイトルを考えることがほとんどだね。たとえば“Emerald Rush”は、曲を書いているときにキラキラした緑色のカラーがイメージできていて、それを表現できる言葉は何かを考えていた。だから思いついた言葉を組み合わせていろいろ候補を考えて、あの言葉にたどり着いたんだ。

“Emerald Rush”はヒットしていますね。幻想的というか、サイケデリックとも言える響きを有していますが、この曲の狙いはなんでしょうか?

JH:それは自分でもわからないんだ(笑)。自分の直感に従って曲を書いていってでき上がったトラックだからね。とにかく、魅力的で美しい作品を作りたかった。攻撃と美しさのミクスチャーというか。目をつぶって、自分自身でも説明ができない自分の意識に導かれるがままに音を作っていった感じ。そしてあるとき、仕上げようと思って音をまとめた。だから、すごく長いプロセスだったんだ。これは、逆にシンプルにすることが大変だった曲だね。仕上げるために、思いついていたアイディアをけっこう却下しなければいけなかった。前回のアルバムとはまったく違うサウンドを作りたかったから、それが必要だったんだ。


その“Emerald Rush”にはドラムのプログラミングでクラークが参加していますが、彼はどのような経緯で参加することになったのですか?

JH:彼は仲の良い友人のひとりで、自分が知るなかでもベスト・プロデューサーのひとりだから、彼にオファーすることにしたんだ。彼は、あのトラックにさらなるパワーをもたらしてくれたと思う。

続く“Neon Pattern Drum”ではティム・イグザイルが Reaktor のパッチを作っています。彼は前作にも参加していましたが、彼とはどのように出会ったのですか?

JH:彼とは同じ事務所なんだ。その関係でベルリンで出会って、一緒にショウをやって、友だちになった。それからずっと友人なんだよ。

本作のアートワークの夜明けの写真は何を表しているのでしょう?

JH:あのアートワークは存在しない場所なんだけど、あのランドスケープがすごく気に入ったんだ。自分が持っているアルバムのイメージと一致したから、あのアートワークを使わせてもらうことにした。行きたくても絶対に行けない場所、というアイディアに魅力を感じたんだよね。なにせ、存在しない場所だから(笑)。

アルバム・タイトルを『Singularity』にしたのはなぜですか? 「singularity」は人工知能などテクノロジーの分野で使われる言葉であると同時に、哲学でも使われる言葉です。あなたはこの言葉から何を思い浮かべますか?

JH:アルバム・タイトルはシングルからとっているんだけど、じつは、そのタイトルのアイディアは長いことずっと頭のなかで眠っていたものなんだ。12年くらいかな。それ以上かもしれない。2005年だったと思うから、もうなんでそのアイディアを思いついたのかまでは覚えていないけど(笑)。でもとにかくそのアイディアがずっと好きで、でもそのタイトルの曲を作る準備ができていなかった。だから寝かせておいて、いつか曲を作るときにそのタイトルを使おうと思っていたんだ。「singularity」という言葉は、僕にとっては一体感(連帯感)と飾り気のないことを意味する。そして、少しだけ宇宙創世のビッグ・バンも連想される。すべてが何かに向かって成長していくようなイメージかな。“Singularity”という曲も、ひとつの音符からどんどん広がってひとつの曲が完成している。それがしっくりきたんだ。


今回のアルバムを聴いて瞑想に興味を持ってくれる人がいれば、そして瞑想を学ぶきっかけになってくれれば、彼らは自分以外の人間との接し方を学ぶだろうし、自分のなかの幸福が増していくと思う。

その“Singularity”にはギターであなたの古くからの友人であるレオ・アブラハムが参加しています。8~9年ほど前にあなたは彼とブライアン・イーノの3人でアルバム『Small Craft On A Milk Sea』や映画『The Lovely Bones』のサウンドトラックを作ったり、ナタリー・インブルーリアをプロデュースしたりしていました。そのため、個人的にはその3人でひとつのチームのような印象を抱いているのですが、ご自身ではどう思っていますか?

JH:どうだろう(笑)。最近はあまりその3人では作業していないから、僕にはあまりそのような感覚はないかな(笑)。2009年と2010年はけっこうコラボしたけど、最近はブライアンとは会えてもいないからね。レオは毎回アルバムに参加してくれるけど、彼はほんとうに天才なんだ。僕にとってはいちばんのギタリスト。彼は、いつも僕だけでは作り出せない彼のテクスチャーを作品にもたらしてくれる。感謝しているよ。

2年前のイーノのアルバム『The Ship』に収録されたヴェルヴェット・アンダーグラウンド“I'm Set Free”のカヴァーもそのチームによるものでした。録音自体は同じ頃だと思うのですが、あの曲を録音することになったはなぜだったのでしょう?

JH:それ、忘れてたよ(笑)。たしかにあのトラックで自分がプレイしたのは覚えているけど、流れは覚えていないな(笑)。たぶんブライアンがやりたがって、5分くらいジャムをしたのかも(笑)。自分がそのカヴァーに参加したことさえ忘れていたよ(笑)。

あなたはかつてコールドプレイをプロデュースしてもいます。あなたにとってナタリー・インブルーリアやコールドプレイのようなポップ・ミュージックはどのようなものなのでしょう? テクノやアンビエントなどのエレクトロニック・ミュージックと通ずる部分はありますか?

JH:コールドプレイに関しては、ブライアンが彼らを僕に紹介してきたんだ。それで意気投合して、彼らにもっとイクスペリメンタルなサウンドを提供した。クリス(・マーティン)のソングライティングにはいつも感心していたし、彼のスキルは素晴らしいと思っていたからね。エレクトロニック・ミュージシャンやイクスペリメンタル・ミュージックのミュージシャンは、スタジアム級の曲を作ることがいかに難しいかを理解している。だから、僕は彼をリスペクトしているんだ。すべてのジャンルに通ずる部分はあると思う。今回のニュー・アルバムでも、ポップの要素があることは聴き取れると思うよ。僕自身が、ディペッシュ・モードペット・ショップ・ボーイズ、伝統的な構成の曲を楽しんで聴いてきたから、それは影響として自分の音楽にも出てくるんだ。ヴォーカル・メロディは僕には書けないけどね。ブライアンは、そのジャンルの架け橋だと思う。テクノやアンビエントとポップ・ミュージックに限らず、質のいい音楽はすべて共有するものがあるんじゃないかな。やっぱり、良いサウンドと人を惹きつける、そしてひとつにするという点で音楽は繋がっていると思うね。

あなたはもともと王立音楽大学で学んでいましたが、クラシック音楽の道に進まなかったのはなぜでしょう?

JH:興味がなかったからさ(笑)。何百年も前に書かれたものをふたたび作ることにおもしろみを感じないんだ(笑)。学べたことは良かったとは思っているけど、影響を受けているとも感じないな。

あなたが自分の音楽をとおしてもっとも到達したいもの、もっとも表現したいものはなんですか?

JH:音楽で何ができるかをより意識していくことかな。「人びとをひとつにする」ということが、音楽にはできると思うんだ。あと、今回のアルバムを聴いて瞑想に興味を持ってくれる人がいれば、そして瞑想を学ぶきっかけになってくれれば、彼らは自分以外の人間との接し方を学ぶだろうし、自分のなかの幸福が増していくと思う。そして彼らに会ったまた他の人びとが、彼らからインスパイアされてそれを学んでくれたら嬉しい。音楽はそのきっかけになれると思うし、良いフィーリングを広げることに繋がると思うんだ。それが目標だね。

通訳:ありがとうございました。

JH:ありがとう。また日本に行けるのを楽しみにしているよ。

Idris Ackamoor & The Pyramids - ele-king

 アメリカのサン・ラーやスピリチュアル・ジャズは、昔から本国よりもイギリスやヨーロッパで評価されてきた。ジャイルス・ピーターソンなどジャズDJが多く、レア・グルーヴ・ムーヴメントを通じてそうした昔の音源の価値を知って、現代に伝承する文化が形成されてきたことが理由にあるだろう。シャバカ・ハッチングスがサン・ラー・アーケストラと共演したり、フォー・テットがそのサン・ラー楽団でドラマーだったスティーヴ・リードと共演するなど、過去と現在を繋ぐようなセッション、企画も多い。エマネイティヴによる『ザ・ライト・イヤーズ・オブ・ダークネス』(2015年)もそうしたアルバムのひとつで、2010年に亡くなったスティーヴ・リードを追悼し、その後設立された「スティーヴ・リード基金」への寄付を目的としたものだった。ここにはサン・ラー楽団の同僚でリードと数多く共演してきたアーメッド・アブドゥラーから、フォー・テット、ロケットナンバーナイン、ユナイテッド・ヴァイブレーションズ、カラクターなど新しい世代のアーティストが参加していたのだが、アーメッド・アブドゥラーと並ぶ伝説的なミュージシャンの参加もあった。それがアイドリス・アカムーアとピラミッズである。

 1950年生まれの黒人サックス奏者アイドリス・アカムーア率いるピラミッズは、1970年代に『ラリベラ』(1973年)、『キング・オブ・キングス』(1974年)、『バース/スピード/マージング』(1976年)というアルバムを自主制作で発表している。公民権運動家の母親を持つアカムーアは、オハイオ州に生まれてシカゴで育ち、大学時代の仲間と結成したバンドがピラミッズの原型である。アフロ・アメリカン系の彼らはヨーロッパへ演奏旅行に赴き、そこでピラミッズが結成され、オハイオに戻ってから『ラリベラ』を録音。『キング・オブ・キングス』発表後はカリフォルニアへ移住し、『バース/スピード/マージング』を録音している。アフリカ音楽に多大な影響を受けたジャズ・グループで、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのようなフリー・ジャズにサン・ラーのようなコズミック感覚を備えていた。多くのスピリチュアル・ジャズ・バンドがそうであったように、1970年代の彼らはジャズの表舞台では全く相手にされず、1990年代から2000年代になってDJたちによって再評価されるようになった。先の3枚のアルバムが復刻されたり、大阪の〈EMレコーズ〉によって『ミュージック・オブ・アイドリス・アカムーア 1971‐2004』(2006年)というアンソロジーも編纂されたが、そうした再評価の波を受けて『バース/スピード/マージング』発表後に解散していたピラミッズが復活する。2011年に35年ぶりとなる新作『アザーワールドリー』を発表し、その活躍によって2012年にジャイルス・ピーターソンが開催する「ワールドワイド・アワード」で表彰され、ドイツの〈ディスコB〉からも『ゼイ・プレイ・トゥ・メイク・ミュージック・ファイア!』というコンピがリリースされる。そして、前述の『ザ・ライト・イヤーズ・オブ・ダークネス』に参加した後も活動を継続し、カマシ・ワシントンの台頭などでアフリカ回帰色の強いスピリチュアル・ジャズが再び脚光を集める中、2016年に『ウィ・ビー・オール・アフリカンズ』を〈ストラット〉から発表した。ドイツ録音となる『ウィ・ビー・オール・アフリカンズ』では、同じく1970年代の伝説的スピリチュアル・ジャズ・バンドのワンネス・オブ・ジュジュのメンバーだったババトゥンデ・レアとも共演していたのだが、それから2年ぶりとなる新作が『アン・エンジェル・フェル』である。

 『アン・エンジェル・フェル』の録音はロンドンで、アイドリス・アカムーアの共同プロデューサーにマルコム・カットが名を連ねている。マルコム・カットはサイケ・ジャズ・ファンク・バンドのヒーリオセントリックスのリーダーで、DJシャドウやマッドリブなどと共演してきたドラマー/プロデューサーだ。〈ストラット〉からは過去にエチオピアン・ジャズの巨星ムラートゥ・アスタトゥケ、ジャズと東洋音楽を結んだ鬼才ロイド・ミラーなどと共演したアルバムも出しており、本作でのプロデュースはそれらでの手腕を踏まえたものだろう。カットはレコーディング・エンジニアリングやミキシングも手掛け、そうした彼のスタジオ・ワーク手腕が生かされている。サン・ラーにインスパイアされたと思わしき“ランド・オブ・ラー”にそれは顕著で、キング・タビーばりの強烈なエフェクトがフィーチャーされたアフロ・ダブとなっている。表題曲の“アン・エンジェル・フェル”でもコズミックなエフェクトが多用されており、フリーフォームで神秘的な世界観はやはりサン・ラーに共通するものだ。また、この曲では女流ヴァイオリン奏者のサンディ・ポインデクスターのオーガニックなプレイも印象に残るのだが、彼女も以前サン・ラーのトリビュート・アルバムに参加してきた人である。そうして聴くと、“サンセッツ”には明らかにサン・ラーの“スペース・イズ・ザ・プレイス”を意識したところがあることがわかるだろう。そのほかアフロビートを咀嚼した“ティノーゲ”、ラテン~カリビアン風味の“パピルス”、ラスタファリズムやナイヤビンギと結び付いた“メッセージ・トゥ・ピープル”と、アフリカ音楽をルーツとする様々な広がりを見せた作品集となっている。カンやエンブリオのようなクラウトロック風の“ウォリアー・ダンス”にも、やはりアフリカ音楽の強靭なリズムがある。一方、ミズーリ州で白人警官に射殺された黒人青年のマイケル・ブラウンに捧げた“ソリロクィ(独り言)・フォー・マイケル・ブラウン”では、1970年代から一貫しておこなってきた黒人としてのアイデンティティを説く。この曲でのアイドリス・アカムーアのテナー・サックスはジョン・コルトレーンやファラオ・サンダース、サンディ・ポインデクスターのヴァイオリンはマイケル・ホワイトを想起させるもので、彼らふたりの演奏のコンビネーションがアルバムの大きな柱となっている。南ロンドンで言えばシャバカ・ハッチングスとかエズラ・コレクティヴの音楽にも、アイドリス・アカムーアとピラミッズの影響が強いなと改めて感じさせる作品だ。

interview with Theresa Wayman (TT) - ele-king


TT
LoveLaws

LoveLeaks / ホステス

Indie RockDowntempo

Amazon Tower HMV iTunes

 かのハリー・スタイルズが、昨年~今年のワールド・ツアーでオープニング・アクトに指名したのは、ケイシー・マスグレイヴスとリオン・ブリッジズ、それからウォーペイントだった。ガーディアン誌は以前、この1Dのメンバーによるプリンスと同名異曲のヒット曲“Sign of the Times”を紹介する際に、NYを代表する燻し銀のインディー・バンド、ザ・ウォークメンの名前を挙げていたものだが、彼が選んだ3組――現代カントリーの花形と、レトロ・ソウルの新星、独立独歩のLAガールズ・アート・バンドという並びには、英国の白人ポップ・スターから見た「いまのアメリカ」が反映されていた気がしてならない。

 ウォーペイントのヴォーカル/ギター、テレサ・ウェイマンによる初のソロ・アルバム『ラヴローズ』の制作は、バンドが2016年に発表したサード『ヘッズ・アップ』よりも早くからスタートしていた。彼女はみずから歌い、ギターを弾くばかりか、ベースやシンセ、ビートのプログラミングまで一手に担当。ポップで開放的だった『ヘッズ・アップ』に対し、『ラヴローズ』は繭に包み込まれるように、内向きでパーソナルな音像を描いている。シューゲイザーやトリップホップの要素も見え隠れするが、実際にはこのあとのインタヴューでも語られているように、ヒップホップの影響がとにかく大きかったらしい。

 共同プロデューサーとして、ケイシー・マスグレイヴスにも携わった実兄のイヴァン・ウェイマンと、ウォーペイント人脈とも縁の深いダン・キャリー(フランツ・フェルディナンドの3作目『トゥナイト』など)がクレジットされており、バンド仲間のジェニー・リーとステラ・モズガワ、古参リスナーには驚きのマニー・マークなど多彩なゲスト陣にも目を惹かれる。しかし一方で、密室的な『ラヴローズ』は「ひとり」を強く感じさせるアルバムだ。そんな本作のテーマは「愛」。他の記事によると、かつて交際していたジェイムス・ブレイクとの破局も(あくまでポジティヴな形で)反映されているそうだが、ウォーペイントとしてデビューしてから14年が経ち、37歳の母親となった彼女は、月が夜を照らし、孤独がやさしさをもたらすように、一面的ではない「愛」のかたちを歌っている。


自分がキュレーターだとしたら、楽曲はアートギャラリーね。私はギャラリーにさまざまな絵画を並べることで、一編のストーリーを作り上げていくの。

そもそも、どういう動機でソロ・アルバムを作ろうと思ったのでしょう?

テレサ・ウェイマン(Theresa Wayman、以下TW):自分自身をもっと探求してみたかったの。それに曲を書いたり、いろんな楽器を弾いたりすることで、いちミュージシャンとしても成長したかった。そう考えて取り組んでいくうちに、100%自分の音楽をやることの必然性を感じるようになったのよ。

昔からバンド活動と並行して、そういう個人としてのレコーディングもおこなっていたんですか?

TW:ええ。昔からPCを使って少し作ってたんだけど、2009年に入ってから本格的に制作するようになって。その頃はLogicのUltrabeatという安っぽいのを使ってたんだけど、2年後にGeistというソフトウェアと出会ったことで、曲作りの仕方が一変したの。LogicとGeistを組み合わせながらの制作は自分のワークフローとすごく合っていて、アイデアもどんどん湧くようになった。

今回のアルバム収録曲とは別に、まだ世に出ていないデモもたくさんありそうですね。

TW:何百とあるわ(笑)。

そういう自分の曲って、どういうモチベーションで作っているんですか?

TW:普段から音楽をよく聴いていて、そこから自分でも曲を作りたくなるの。それで、真っ白なキャンパスのうえにいろいろ描いていくうちに、最初に想定していたのと違う方向にどんどん進んでいったりして。そういうのが楽しくて仕方がないのよね。

へぇ。

TW:例えば、アルバムに“Mykki”という曲があるでしょ。これはミッキー・ブランコの“Wavvy”を聴いていたときに生まれた曲で、ワーキング・タイトルをそのまま採用したの。とはいっても、彼の音楽とはまったく雰囲気の違う曲になったんだけど、サビの部分で「make it feel」と歌ってるくだりが、なんとなく「Mykki」って聴こえる気もするのよね。

じゃあ、6曲目の“Dram”はラッパーのDRAMから?

TW:違う(笑)。これは「ドラマティック」からきているの。

話を伺いながら納得するところも多いですが、ギタリストによるソロ・アルバムだからといって、ギターを弾きまくる類の作品ではないですよね。音作りについてはどんなテーマを設けていたのでしょう?

TW:ただ感じるがままに、それぞれの曲に相応しいものを作っていった感じかな。出だしのパートにギターを入れるのがベストだと思ったら弾くし、他のサウンドを入れるべきだと思ったらた迷わずそうする。自分がキュレーターだとしたら、楽曲はアートギャラリーね。私はギャラリーにさまざまな絵画を並べることで、一編のストーリーを作り上げていくの。そもそも、私自身いろんなパーソナリティをもっていて、ギタリストであることがすべてではない。「この楽器じゃなきゃいけない」というこだわりは特にないのよね。

ウォーペイントの一員という立場を一旦離れて、ソロになったからできたことってなんだと思いますか?

TW:ベースが弾けることかな(笑)。あと、ドラムビートを自分で作ったりね。音楽を作るのは、自分がどういった人間であるのかを理解する手段でもあると思うの。今回は私自身のためにアルバムを制作したから、いつもより自分のなかに深く潜り込むことができたと思う。きっと私は、そういう探究心が強い人間なんでしょうね。

このアルバムは、エレクトロニック・ビートも聴きどころだと思います。ヒップホップやファンクの要素も感じましたが、どんなことを意識しながら打ち込んだのでしょう?

TW:うまく言えないけど、Geistを通じて自分好みのサウンドを見つけたり、それらをPro Toolsで組み立てながら、ピッチを下げたり、フィルターをかけてファジーで温かみのある音にしていく感じかな。そうやってループを作ったら、そのバリエーションを構築していく。個人的には、ストレートなものよりもランダムな要素を入れていくほうが好き。

なるほど。

TW:私がヒップホップを好きな理由のひとつは、完璧なループさえ用意できたら、あとはそれを永遠に鳴らしているだけで曲が成立するところ。それって物凄くパワフルだと思う。あとはそうね……私の場合は、必要に応じて生ドラムも入れるようにしている。100%エレクトロニックではないかな。

いまの話にもあったように、BPMが全体的に緩やかですよね。

TW:そうね。ムードのある音楽が作りたかったし、聴き手に押し迫るようなものではない、ダウンテンポなアルバムにしたかった。でもグルーヴはあるはずだし、スロウだけど踊ることのできる音楽になっていると思う。だからこれは、夜向きのアルバムじゃないかな。

あと、歌声の使い方も興味深かったです。ウォーペイントにはあなたも含めて複数のヴォーカリストがいますけど、ここではコーラスで自分の声を重ねたり、普段と違うアプローチに取り組んでいますよね。

TW:それはハーモニーが大好きだから(笑)。ただ、声を重ねすぎるのもそんなに好きではないの。だから、(音を重ねない)一本のヴォーカルをよりよく聴かせようというのは意識したわ。そうすることで、サビで声を重ねたり、曲が進むにつれて和音を増やしたり――チョコレートケーキのように豊潤なハーモニーも活きると思うから。あと、ハーモニーのなかに低音が結構入っているはずだけど、そういう声の使い方がもたらすフィーリングも好きなの。

収録曲でいうと、“Love Leaks”のハーモニーはいいですよね。ゴスペルっぽさもあったりして。

TW:たしかに。5曲めの“Tutorial”にも、ゴスペルっぽい分厚いハーモニーが入っていると思う。


愛についてだったら、いくらでも曲が書けると思う。『ラヴローズ2』や『ラヴローズ3』だって作れるくらい(笑)。

ハーモニーという観点で、誰か好きなアーティストはいますか?

TW:いい質問ね。ヴィンス・ステイプルズの“Dopeman”かな。歌っている女の子の名前が思い出せないけど(筆者注:キロ・キッシュのこと)、ハーモニーの重ね方が素晴らしくて、あの曲には大いにインスパイアされたわ。あとはリアーナも……うーん、どうだろう(少し考え込む)。とにかく、ヒップホップのコーラスで好きなものはたくさんあるわ。

アルバムのゲストや制作陣のなかで、個人的にはマニー・マークの参加が気になったんですが、彼とはどのように知り合ったのでしょう?

TW:一緒にコラボしている友人を通じて知り合ったの。アルバムが完成目前のところでマークを紹介してくれて、2日間くらい一緒に音を出したりしているうちに意気投合してね。それで、彼の意見も知りたかったから、アルバムの音源を聴いてもらったら、「こうしたらどう?」って適切なアドバイスをしてくれたの。

前情報のせいもありますが、マークが参加している“Love Leaks”と“Tutorial”のメロウネスは、彼が鍵盤を弾いているビースティ・ボーイズのインスト曲とも重なる雰囲気がある気がします。

TW:どうだろう。さっき話したように、曲自体はほとんどでき上がっていて、彼はそこに少し音を加えてくれた感じだから。

一昨年、ウォーペイントの“New Song”をマイク・Dがリミックスしていたじゃないですか。だから、あなたがビースティの大ファンだとか、密接なコネクションがあったのかと予想していたんですが……。

TW:ううん、そうじゃないの(苦笑)。

そのあたりはさておき、ウォーペイントの『ヘッズ・アップ』では90年代のスタイルを意識していたそうですが、今回のアルバムもトリップホップなど、当時のある種の音楽と同じようなフィーリングを感じました。

TW:そこは全然意識してなかったつもりだけど、「トリップホップっぽい雰囲気だね」って感想にも納得できるの。ダークな曲調でビートがあるけど、かといってヒップホップではないし、やっぱり白人が作った音楽だなって。それに、もともとトリップホップの醸し出すムードは好きだったし、自分が若い頃にミュージシャンを志すきっかけをくれたのも、トリップホップのアーティストが多かったから。ようやくここにきて、自分でもそういう音楽が作れるようになったのかもね。

最初に「自分を掘り下げたかった」という話がありましたが、歌詞の面ではどういったことを伝えたかったのでしょう?

TW:テーマになっているのは、大きな意味での愛。実体験に基づくものもあれば、ファンタジーもあるし、束の間のロマンスや、失恋についても歌っている。ほかにも友情とか、自分を愛すること――いろんな種類の愛を歌っているけど、どの曲もすべて自分の人生経験から生まれている。私自身、母親でありながら、世界中をツアーで廻る生活をしていることに思うところもあってね。どこにも還る場所がないと感じることもあったけど、音楽こそが自分の居場所なんだなって、このアルバムを作りながら強く感じたの。

そうですよね。男女のロマンスのみに留まらない、広くて深い視点は歌詞からも伝わってきます。

TW:愛についてだったら、いくらでも曲が書けると思う。『ラヴローズ2』や『ラヴローズ3』だって作れるくらい(笑)。

愛(love)に法則(Law)があるとすれば、それはなんだと思いますか?

TW:人間関係における根本的な部分、もっとも根底にある法則こそが愛なんだと思う。お互いをリスペクトしたり、愛し合う気持ちがあってはじめて社会が成り立つわけで。でも、いまの時代は憎しみの感情が氾濫していて、バランスが取れなくなっている。

ええ。

TW:それに恋愛も含めて、人との付き合い方にはいろんな関係性があるわよね。ロマンチックなものに、友情とか家族との繋がりだってそう。それに、必ずしも上手くいく関係だけではないわけで。人との繋がりがうまく機能しなかったり、自分自身を大事にすることができなかったり、いろいろな事情で苦しむこともある。そういった話も含めて、私たちが生きていくうえで、愛はものすごく重要で大きな位置を占めている。それぐらい普遍的なテーマだと思うな。


jan and naomi - ele-king

 静かに尖っています……4月にリリースされたフル・アルバム『Fracture』がじわじわと話題のヤン&ナオミ。その収録曲“Forest”のMVが公開されているで、それをチェックしつつ、6月からのツアーの詳細も発表されているので、ライヴにも足を運んで欲しい。彼らへのインタヴューは近々ele-kingでも掲載されます!

“Forest” music video


ウェブサイト:https://janandnaomi.localinfo.jp/
ライブ情報: https://janandnaomi.tumblr.com/



■Fracture tour 2018
全公演チケット:前売り¥2,500 (税込・1Drink別・整理番号有り)
チケット発売 5/26(土)11時~
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■6/23(土) 札幌 PROVO
OPEN 19:00 / START 20:00 <チケット取り扱い>
PROVO電話予約:011-211-4821
メール予約:osso@provo.jp ※お名前・人数・連絡先をメールにてお送りください。
【問】PROVO 011-211-4821

■7/14(土) 福岡 UNION SODA
OPEN 18:00 / START 19:00 <チケット取り扱い>
チケットぴあ P-コード: 118-465
Live Pocket : https://t.livepocket.jp/e/4dw_4
メール予約 : info@herbay.co.jp
※お名前・人数・連絡先をメールにてお送りください。
【問】HERBAY 092-406-8466 / info@herbay.co.jp

■7/16(祝月) 京都 UrBANGUILD
OPEN 18:00 / START 19:00
guest : SOFT <チケット取り扱い>
UrBANGUILD HP予約:
https://www.urbanguild.net/ur_schedule/event/180716_fracturetour2018
【問】UrBANGUILD 075-212-1125

Orange Milk - ele-king

 これから我々はどこに行くのだろうか? ヴェイパーウェイヴ以降において、もっとも先鋭的なレーベル、〈Orange Milk〉が日本に来る! ん? サイバースペースを使ってではなくて……そのレーベル主宰のGiant ClawとSeth Grahamによる待望のジャパン・ツアーが開催される! ツアーに合わせ未発表音源を詰め込んだ日本限定のコンピや物販も会場にて販売されるようだ。ツアーは、東京、大阪などを含む全6公演が行われ、食品まつり a.k.a foodman、CVN、mus.hiba、koeosaeme、dok-s projectなどの国内アーティストも参加する。各公演のフルラインナップが発表されているのでチェック!

 オカルトじゃありませんよ。アニメーション界のレジェンドと、現代のミュージシャンとの世代を超えたコラボレーションを行う「チャネリング」シリーズです。坂本慎太郎が現在90歳のクリヨウジ(久里洋二)の貴重な実験アニメーション作品にあわせて自身のオリジナル曲をフルセットライヴで演奏する。キュレーターはDOMMUNEの宇川直宏。これは見逃せません!

■「GEORAMA2017-18 presents チャネリング・ウィズ・ミスター・クリヨウジ」
日時:2018年6月19日(火)18:30開場/19:30開演
会場:WWW X(東京・渋谷)
出演:クリヨウジ aka 久里洋二 x 坂本慎太郎
キュレーター 宇川直宏(DOMMUNE)
※クリヨウジ氏(90歳)の実験アニメーション作品を投影し、その映像に呼応しながら坂本慎太郎氏がフルセットライヴでオリジナル曲を演奏するという歴史的な試みです。

前売:5,500円/当日:6,000円(共に税込、ドリンク代別)
チケット:e+(イープラス)にて、5月26日(土)10:00より発売。
公演詳細:https://channeling-kuri.info

主催:ニューディアー/DOMMUNE
協力:zelone records
助成:アーツカウンシル東京(公共財団法人東京都歴史文化財団)

「チャネリング・ウィズ・ミスター・クリヨウジ」メインビジュアル(デザイン:宇川直宏)

■本企画キュレーター宇川直宏によるコメント

「戦後日本にアートアニメーションという新しい地平を切り開いた(久里洋二改め)クリヨウジは偉大だ!!!!!!! 氏は、生誕90歳の卒寿を迎えた今も日夜セル画に命を吹き込み、この世界を動かし続けている!!!!!!! NHK『みんなのうた』で"動く絵”を体感し(MTV開局の16年前に既に)NTV『11PM』で"動くポピュラーミュージック”を享受した僕らは、"クリヨウジ"と書いて”アニメーション"と読んでいる...そう、クリヨウジこそが日本アニメーション界の真の創世神なのだ!!!!!!!! そんな偉大なクリヨウジの実験アニメーション作品を投影し、その映像に呼応しながらあの坂本慎太郎がフルセットライヴを行う空前絶後の歴史的試みがこの度、実現する!!!!!!! 新奇な歌と演奏でお伽話を口承する坂本慎太郎は、空虚な現代日本における弁士であり、サイケデリックな吟遊詩人である!!!!!! クリヨウジと坂本慎太郎!!!!!! この二大巨星の邂逅は、米朝首脳会談よりも意義深い、ドラマティックな皆既日食だ!!!!! 太陽と月が重なって描かれるダイヤモンドリングのように神秘的な天体現象が、この日、立ち現れるに違いない!!!!!!!!」宇川直宏(DOMMUNE)

Mary Halvorson - ele-king

 なんだかよくわからない、が、なぜだか魅了されてしまう。メアリー・ハルヴォーソンが奏でる音楽はそのようにして聴き手の耳を掴まえていく。

 わからないとはいえいくつかの特徴を列挙してみることならできる。ゴツゴツと刻まれる乾いた弦の響き。流暢というよりはどこか無骨に辿られるフレーズ。あるいはエフェクト・ペダルを使用して急にピッチをあらぬ方向へと変化させ、メロディーやハーモニーがつんのめるような感覚に陥らせる奏法。むしろこれらの特徴は非常に強く表されていて、一聴して彼女が弾いているとわかるほどに個性的なサウンドだ。

 それだけではない。彼女が作る楽曲もまた特徴的なのである。どこかで聴いたことのあるメロディーが顔を覗かせたかと思えば、わたしたちの予想を斜め上方で裏切りながら、次から次へと奇妙な展開をみせていく。ポピュラー・ソングの断片がとてつもない想像力によって縫合されているかのようだ。楽曲のテーマというのは緊張から弛緩へと連なることで解決=快楽をもたらすものだが、ハルヴォーソンの場合はいつまでも経っても解決らしい解決が訪れることはなく、あるいはつねに緊張状態であり弛緩状態でもあり、だから聴き馴染みのある叙情的なハーモニーは琴線ではなくあくまでも鼓膜に揺さぶりをかけてくる。

 ポピュラー・ソングにはふつう喜びを表すメジャー・キーと悲しみを表すマイナー・キーがあるものの、ハルヴォーソンの音楽はこの二分法にまったくひっかかることがない、あるいはどちらにもひっかかりながら人間の複雑な感情を複雑なままに提示する。とにかくここには確立された固有の響きと固有の構造がある。だがそれらがなぜ魅力的に聴こえてくるのかはやはりわからない。聴けば聴くほどに謎は深まるばかりなのである。

 1980年に米国マサチューセッツ州ブルックラインで生まれたメアリー・ハルヴォーソンは、幼少期はヴァイオリンに親しみ、子供たちが集うクラシカルなオーケストラにも参加していたという。だが10代前半で出会ったジミ・ヘンドリクスの音楽に衝撃を受けてギタリストとしての道を歩むようになった。始まりはジャズではなかったものの、両親に勧められてイスラエル出身のジャズ・ギタリストのもとでギターを学び始め、ほどなくしてジャズの世界にのめり込んでいった。実は父親が大のジャズ・ファンだったらしく、家には聴ききれないほど大量のレコードがあったそうだ。

 高校卒業後はウェズリアン大学に進学しアンソニー・ブラクストンに師事する。ここでの体験が自らの音楽人生に決定的な影響を与えたことをハルヴォーソンは複数のメディアで公言している。ただし同時期にはギタリストのジョー・モリスによるプライベートなレッスンにも通っており、ブラクストン同様に大きな影響を受けたという。モリスの指導は非常にユニークなものだった。ハルヴォーソンが独自のギター・サウンドを獲得するために、スタイルの模倣には陥らないよう、モリスはギターではなくコントラバスを弾いて教えていたそうだ。ハルヴォーソンのあまりにも個性的なギター・サウンドとコンポジションは、ブラクストンとモリスというふたりの偉大なミュージシャンなくしては獲得しえなかったものであるに違いない。

 2002年にニューヨーク・ブルックリンへと拠点を移したハルヴォーソンは、04年に最初期のレコーディング作品をクレイトン・トーマス、中谷達也とのMAP名義でリリースする。当初はフルタイムで昼の仕事も兼ねていたというが精力的に音楽活動もおこない、アンソニー・ブラクストンをはじめトレヴァー・ダン、ウィーゼル・ウォルターら数多くのミュージシャンと共演。ドラマーのケヴィン・シェイと結成したアヴァン・ロック・デュオ「ピープル」やヴァイオリン奏者のジェシカ・パヴォーンとの継続的なデュオ活動ではメランコリックなヴォーカルも披露している。

 2008年には自身の名義による最初のアルバム『Dragon's Head』を〈Firehouse 12 Records〉から発表した。ベースのジョン・エイベア、ドラムスのチェス・スミスを従えたギター・トリオ編成を核としてハルヴォーソンの作曲作品を演奏するというコンセプトはその後も継続し発展していく。そこには師であるブラクストンの「より大きな編成のための作曲を」というアドヴァイスも影響していたようだ。10年から12年にかけてはトランペットのジョナサン・フィンレイソンとアルト・サックスのジョン・イラバゴンを加えたクインテット編成で2枚のアルバムをリリース。さらに13年にはテナー・サックスのイングリッド・ラウブロック、トロンボーンのジェイコブ・ガーチクを加えセプテットとして『Illusionary Sea』を出し、ここでリーダー作では初めて既存の楽曲のカヴァーもおこなった。16年にはペダル・スティール・ギターのスーザン・アルコーンを迎えオクテットとなり『Away With You』をリリース。その間に初のソロ・ギター作品でありジャズ・レジェンドから同世代まで様々なミュージシャンの楽曲のカヴァー集でもある『Meltframe』を完成させた。

 他にも数え切れないほどの録音があり、これまでに100枚を超すアルバムに参加してきている。だが一貫して言えることがひとつある。メアリー・ハルヴォーソンは確立された個性を身につけながらもつねに新しい音楽へと挑み続けているということだ。今回リリースされた『Code Girl』もまた個性的かつ新鮮な響きに溢れている。

 これまでソロを特異点としてトリオからオクテットまで共通したコンセプトのもとに〈Firehouse 12 Records〉からリーダー作を出し続けてきたことを踏まえると、メンバーを一新した本盤は方向性を大きく変えて新境地へと突き進んだものだとひとまずは言えるだろう。ベースのマイケル・フォルマネクとドラムスのトマ・フジワラはハルヴォーソンが2011年に結成したトリオ「Thumbscrew」のメンバーでもある。そこにトランペットのアンブローズ・アキンムシーレとヴォーカルのアミリタ・キダンビが加わった編成だ。そして本盤の特徴はハルヴォーソンがヴォーカリストとともに組んだ初のリーダー作であるという点にある。

 アミリタ・キダンビはこれまでダリウス・ジョーンズのア・カペラ・グループで活躍する一方で、ルイジ・ノーノやカールハインツ・シュトックハウゼンの声楽曲をこなすなど、クラシック音楽あるいは西洋現代音楽の分野でも才能を発揮してきたヴォーカリストである。ポピュラー・シンガーに比して器楽的に声を使用することに長けた声楽家としての技量が本盤では見事に発揮されている。歌は入っているものの通常のジャズ・ヴォーカル作品のように歌が主役としては聴こえない、それどころかまったく「歌もの」にさえ聴こえない。声がアンサンブルのなかにごく自然なかたちで溶け込んでいるのだ。それはどこかハルヴォーソンの歌声を彷彿させる物憂げなキダンビの声質にもよるのだろう。自らをあまり主張することのない声質と器楽的な声の使用法。ハルヴォーソンはおそらく歌声を特権的なものとして扱わずに他の楽器群と同等の地平で捉えながら、演奏全体がひとつのアンサンブルとして成立するように『Code Girl』を構想していたものと思われる。

 たとえば本盤ではキダンビを除いたインストゥルメンタル・トラックが2曲収録されている。“Off The Record”と“Thunderhead”だが、どちらも「歌声が欠如している」というふうに聴こえることがない。だからわざわざ他の楽曲と区別して「インストゥルメンタル」と呼ぶのも本当は正しくない。それほどこの2曲は他の楽曲と同じように、あるいは他の楽曲がこの2曲と同じようにアンサンブルとして成立している。

 極めつけはハルヴォーソンとキダンビのデュオ・トラック“Accurate Hit”だろう。ふつうギターとヴォーカルのデュオであればギターは歌声を彩る伴奏楽器になるわけだが、ここではコードのストロークとアルペジオに工夫が凝らされた、一小節ごとにサウンドのありようを変えていくハルヴォーソンのギターが前面に出てくる。もちろん歌声が反転してギターの伴奏を務めているわけではない。それは同じくデュオ・トラックである“Armory Beams”において、まるで鯨の鳴き声のようなアキンムシーレのトランペットの響きがギターと絡み合うように、声とギターが主従関係を結ばずに対話することで成り立つ音楽なのだ。いずれにしても本盤はジャズ・フォーマットに則りヴォーカル・アルバムとしての体裁を保ちつつ、メアリー・ハルヴォーソン色に染め上げられた奇妙にポップなコンポジションのなかで声をアンサンブルに溶け込ませた傑作であると言えるだろう。

 ちなみに『The Wire』のウェブ版では本盤を制作するにあたってハルヴォーソンがインスピレーションを受けたという楽曲のプレイリストが掲載されている。「種明かし」というよりも、こうした影響源がありながらこれまで述べてきたようなアンサンブルが編み上げられてしまう「離れ業」のほうに驚きを感じる。なぜ『Code Girl』のような傑作が生み出されたのか。やはりメアリー・ハルヴォーソンの音楽は謎めいている。

 ラジオを聴いていて、カマシ・ワシントンの新曲、“Fists of Fury”がかかると「おっ」となる。もう圧倒的に際立っている。6月22日に発売予定のアルバム、「天国と地球」という、じつに壮大なスケールの『Heaven and Earth』を楽しみにしている人は多いでしょう。
 今週の水曜日(30日)に発売される別冊エレキングのジャズ特集号では、カマシ・ワシントンの最新ロング・インタヴューがどこよりもいち早く読むことができます。カマシは記事のなかで、彼の音楽観からブルース・リーへのシンパシーまで、そして新作についてのコンセプトなどなど惜しみなく語っております。新作を聴く前の予習としても、ぜひ読んでいただければと思います。ところで、今日にスピリチュアル・ジャズ・ブームを巻き起こした張本人である、ロサンジェルスを拠点とするこのサックス奏者は、今回のアルバムをロンドンの〈ヤング・タークス〉からリリースします。ここにもまたいまの時代が見えます。つまり、UKにおけるジャズ(ではないジャズ)の再燃です。

 UKにおけるジャズ(ではないジャズ)は、いまもっとも勢いを感じるシーンです。アシッド・ジャズの時代を知る世代にとってはちょっとした驚きでしょう。ほとんど30年ぶりのUKジャズ熱ですから。本サイトでもコンピレーション・アルバム『We Out Here』松浦俊夫のソロ作品においてその断片をレポートしてきましたが、「ジャズ」をキーワードにしたそれらいろいろは、英国らしい雑種を良しとするものとして、どこかに中心があるわけではないのにリゾーム的にどんどん拡大しています。さまざまな人種のジャズの演奏家/DJ/ビートメイカー/シンガーたちは、お互い交錯し合って、さまざまなプロジェクトを組みながらいくつもの魅力的な作品を生んでいます。ちょっとしたムーヴメントです。
 特集では、しかし今日のUKジャズにおいてもっとも重要なアーティストであろう、シャバカ・ハッチングスのロング・インタヴューをフィーチャーしました。記事のなかでは彼のバイオ、彼の思想、彼の信念が語られています。
 ほかにもあります。新進気鋭のピアニスト、ジョー・アーモン・ジョンズ、ブロークン・ビーツをアップデートするカマール・ウィリアムス(ヘンリー・ウー)、昨年素晴らしいアルバムを発表したシンガーのザラ・マクファーレンのインタヴュー。また、小川充氏の全面協力のもと、シーンを知る上で押さえておきたいいくつかのトピックを挙げつつ、ディスクガイドとして80枚の主要作品を紹介しています。インプロヴィゼーションからアフロビート、ブロークン・ビーツからハウスまで、あらゆるものを飲み込みながらのこのシーン、いまもっとも熱いです。

 もうひとつの小特集は、NYのフリー・ミュージックのシーンにスポットを当ててみました。このきっかけを与えてくれたのは、もちろん女性インプロヴァイザーのメアリー・ハルヴァーソンです。こちらは細田成嗣氏の全面協力のもとで現在のNYのもっとも先走っているシーンを捉えることができました。
 自分たちで言うのもなんですが、かなり力の入った特集です。どうぞどうぞ、ご高覧ください~。

■ロング・インタヴュー
カマシ・ワシントン──地上と楽園、スピリチュアル・ジャズ曼荼羅

■特集:UKジャズの逆襲
・UKジャズ史──それはいかに根付き、発展したのか
・UKジャズ人脈図
・21世紀UKジャズ・ディスク・ガイド80枚

 INTERVIEW
 シャバカ・ハッチングス──ブラック・アトランティック大航海
 ザラ・マクファーレン──当世UK風ジャズ・シンガー、レゲエを歌う意味
 カマール・ウィリアムス──南ロンドン・ペッカム発、ジャズ・ファンク物語
 ジョー・アーモン・ジョンズ──期待のピアニスト、その若々しい混交とハーモニー

 COLUMNS
 トゥモローズ・ウォリアーズ──UKジャズの重要拠点
 トニー・アレンとジャズではないジャズ
 UKにおけるサン・ラー
 ジャズ・ロックの同心円
 新世代ソウル──キング・クルール以降のシンガーたち
 ブロークン・ビーツなる出発点
 デトロイトとUKジャズの関係
 グライムからハウス、ジャズへ
 電子音楽家としてのエヴァン・パーカー

■特集:変容するニューヨーク、ジャズの自由
・NYジャズ人脈図
・NYジャズ・キーワード(アンソニー・ブラックストンからウィリアム・パーカーまで)
・NYジャズ・ディスク・ガイド30枚
・対談:多田雅範×益子博之

Superorganism - ele-king

 サムシング・フォー・ユア・マーイン、といえば90年代テクノ・キッズにとってはスピーディーJの1991年の代表曲(2001年にはファンクストラングによってリミックスもされている)なので、元ネタのC’hantalの"The Realm"の同じフレーズをサンプリングどころかもっと大胆に引用して脱力ポップ・サウンドに仕立てた"Something For Your M.I.N.D."が掌の上の小さなスマートフォンから見知らぬプレイリストに乗って流れてきたときには、その強烈なインパクトに思わず動作が止まったものだ。
 スーパーオーガニズムは昨年のその時点でまだ謎の存在で、そこからこの曲はどうやらフランク・オーシャンやヴァンパイア・ウィークエンドのエズラが紹介したことがきっかけで人気に火が付いたらしいと判明し、ヴォーカルが17歳の日本人の女の子だという話題性も加わって世界と同時進行で日本でも徐々に注目されていく。
 今年2月の初来日公演はファースト・アルバム発売前にも関わらず、なんとソールドアウト。インターネットを介してじわじわと浸透していくスピードはいかにも現代的で、見ていて痛快だった。"Something For Your M.I.N.D."はいまやサッカーゲームの「FIFA18」のサウンドトラック曲として、ザ・XXやスロウダイヴ、ザ・ナショナルなどの大御所とともに使用されているほど。

 そもそもスーパーオーガニズムの構造自体が面白い。アメリカに在住していたヴォーカルのオロノが2015年の夏休みに帰省した際に、来日していたジ・エヴァーソンズのライヴを観に行ったことをきっかけに彼らとインターネット上で交流を深めていき、バンドのメンバーのうちの4人がコーラス兼ダンサーの3人を加えて新たに始めたプロジェクトのヴォーカルにオロノが大抜擢された、と何だか架空のプロフィールのようによくできた話。
 軽快なビートに親しみやすいメロディと超ダルそうな歌声を重ねた不思議な音はかつてのチボ・マットを彷彿させ、デーモン・アルバーンの新しいプロジェクトだと疑われたというのも納得できる。多国籍なメンバーで構成されたサンプリング多用のヒップホップ的な感覚はザ・ゴー!チームと似ているかもしれない。
 しかし実際の彼女たちの映像を覗いてみると、敢えて狙ったような荒っぽさやローファイ感は一切感じられないニュータイプのようで、メンバーのなかで誰よりも若くて小さいオロノは奇妙な仲間を引き連れた賢者のように勇ましく見えるし、まったく愛想を振りまかずに堂々としているところもステレオタイプな日本人のイメージを覆せと言わんばかりでカッコいい。
 現在8人のメンバーはイギリスのシェアハウスにて共同生活を行っているそうで、曲づくりは基本的にチャットグループの会話でアイディアを出し合い、ファイルを共有して制作されているのだとか。しかし現代のテクノロジーを駆使しながらも世の中の主流に異を唱える姿勢はしっかりと見せ、アーティスト写真にしか登場しないロバートがMVなどの映像制作を、ドラムのトゥーカンがミキシングを担当、ジャケットのイラストはオロノが手掛けるという徹底したDIYっぷり。

 ちょうど最近目にした文章の中にDIYについて書かれた興味深い一文があって、それによると、DIYには自分で人生をコントロールできると感じ、疎外感がなくなる利点があるという。何かを生み出すことでしくみがわかり、視点が変わり、世界が違って見えるということ。スーパーオーガニズムの音楽のなかでは目覚ましが鳴り、鳥が鳴き、水が流れ、子供たちが笑い、りんごをかじる音が聞こえ、ゲームの音や緊急地震速報やクラクションが鳴らされる。そこに無機質なドラムが歪んだギターと強度のあるモーグシンセが絡まってストレンジな音に膨れ上がると、上がりすぎた熱を下げるようなクールな歌声が聴いている者を気軽に出入りできる自由な空間へと導く。コーラス隊の奇妙なダンスも、シンセを操るエミリーの耳で揺れるイヤリングも、キラキラと光るフェイスペインティングも、どれもが音楽の一部として自信に満ち溢れ、存在感を放っている。それは新しい世界のように眩しくて、生き生きとして、未来のようでもあって。

俺とお前でこの世界を照らせるんじゃないかな
今夜はみんなスターなんだ
なんでだかは知らないけど

 そう歌う"Everybody Wants To Be Famous"だけは、アルバムに収録されている曲のなかで唯一、公開時のアートワークをオロノではなく日本人の高校生の伊勢健人が手掛けている。一昨年ザ・コレクターズの30周年記念シングル"愛ある世界"のジャケットのイラストを描いた彼もまた、元々オロノとネット上の友だちだったそう。ほらね、現代には国や性別や年齢や経歴が違う人たちと気軽に交流できる便利なツールがあって、その気になればひとつに集まって超個体(スーパーオーガニズム)に変身できるのだ。隣にいる嫌なやつはあんたの仲間じゃない。だから仲良くしようじゃないか、世界と。

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