「Re」と一致するもの

Lambrini Girls - ele-king

 ランブリーニ・ガールズという、遊び心と反抗心、快楽とアイロニー、および現代英語圏の若者言葉のセンスが込められた名前(洗練されていない、大衆的で安物アルコールを飲んでいる少女たちといったニュアンスで、いかにも英国風のウィットがある)を名乗るブライトンのパンク・バンドのデビュー・アルバムが英国で話題になっている。最近の流れでいえばニュー・オーリンズのスペシャル・インタレスト、あるいはメルボルンのアミル・アンド・ザ・スニッファーズなんかのパーティのりにも似ている。怒っているが、楽しんでもいるのだ。この享楽性は、世のなかが暗くなると、とかく禁欲的になりがちな日本にはちょうどいいかもしれない。

 とくに目新しいトピックはないものの、ポジティヴなメッセージがアルバムを通底し、「えー、それ言っちゃうの」みたいな言い方や現代の若者スラングが多そうなので、歌詞がわかるとより楽しめるのだろうけれど、バンド(中心はヴォーカル兼ギターのフィービー・ラニーとベーシストのリリー・マシエラ)の気迫およびユーモアはサウンドだけでもじゅうぶんに伝わってくる。とにかくむちゃくちゃ威勢がいい。ライオット・ガールの影響を受けていることは言われなくてもわかるけれど、この、エクレクティックではない一本調子のサウンドがいまは新鮮に聴こえるから不思議だ。

 そしてアルバムを聴きながら、どういうわけかぼくはここで、1990年代の英国にオアシスというバンドがいたことを思い出した。彼らがすごかったことのひとつに、自分たちの主要な影響源をビートルズとピンク・フロイドの『ザ・ウォール』であると堂々と言ったことがある。あの当時の英国インディ・ロック・バンドは、プライマル・スクリームがいい例だが、音楽に詳しかった。ジョン・ライドンが音楽マニアでレゲエやクラウトロックの知識を持っていたように、ジョニー・マーには60年代ポップスの知識があった。トニー・ウィルソンいわく「なぜマンチェスターから良いバンドが出てくるのか知りたければ、彼らのレコード棚を見ればいい」
 この流れにオアシスというのは、いま考えると一周回って面白い。男らしさというか潔さというか、オアシスはポスト・パンクからのひとつの流れ、頭でっかちでナードなところを遮断した。彼らはビートルズの青盤/赤盤しか知らなかったという説もあって、実際にはストーン・ローゼズやセックス・ピストルズの影響も受けているからそれはさすがに都市伝説だろうが、それにしてもベタだ。そして、わずかそれだけの影響であれだけ良い曲を作れたのだから、やはり突出した才能があったのだろう。

 デジタル時代の英国のインディ・ロック・バンドたちは、じつに広く、20世紀の若者にはあり得なかったほど、いろんな過去の音楽をよくご存じだ。マニアックな音楽からメインストリームの音楽、ジャンルを問わず英米以外の音楽も分け隔てなくフラットに聴いている。もう、オアシスのようなバンドが出てくる可能性はだいぶ低いが、こんな状況だから、ぼくは一本調子のサウンドで押し切るバンドに対して奇妙な関心を抱くようになってしまったのである。(*)

 ずいぶんと話が脱線してしまったが、ランブリーニ・ガールズの『Who Let the Dogs Out(こいつらを連れてきたのは誰だ)』は、ひょっとしたら、オアシスのような男性的な男性バンドをおちょくってもいるようにも思われる。が、しかし日本人のぼくは、ここに同じような英国風「やったれ」感を感じてしまう。偏見かもしれないけれど、ぼくはその英国風「やったれ」感が好きなのだ。まあ、だからといって、それをサッカー場やパブなんかでビールを片手に壁を作る労働者階級の男たちを連想させるオアシス的世界のZ世代ヴァージョンとはさすがに言いません。まったくあの感じではない! スリーフォード・モッズのようにここには「泣き」はないし、ウィット重視で、爽快なまでに一本調子のサウンドで走り抜いている。とはいえ、曲のヴァリエーションのなかにエレクトロニックな要素も入っていて、ひょっとしたらこの先ダンス・ミュージックよりの展開を見せるかもしれない。現時点でもアゲアゲで、スピーディーで、パーティな感じ全開だし。

 まあ、なんにしてもトランプ政権が世界に与える文化的影響を思えば、このぐらいの先制パンチは必要だろうと、しかしねぇ……「抗議し、デモをやって、労働組合を結成しろ」とか「グレート・ブリテイン、マジにそう?」とか、「ケイト・モスが私の人生を台無しにした、クソ、炭水化物を食べさせろ」くらいならまだしも、「デカチン・エネルギー、デカチン・エネルギー、ねえ、私から離れてくれる?」「 上司が私をファックしたがっていることを無視して笑おう」──男らしさを罵倒し、富裕層に牙をむくランブリーニ・ガールズだが、たまに出てくるその下品な表現がSNSに散見される罵詈雑言とどこが違うのかぼくの英語力では判別つかない。過去に男性ロッカーが同じようなことをやってきてはいるが、しかしスラヴォイ・ジジェクが言うところの「猥褻なものが公の場に浸透」している現在。「礼儀正しさ」や「誠実さ」が却下され、勝利に酔った下品な笑いがこだまするこんにちにおける口汚い抵抗に、このおいぼれは一抹の危うさを覚えている。それでもいまは、パンク好きのひとりとして、この音楽にほとばしっているエネルギーに一票入れたいと思う。

(*)ちなみに、オアシス以前にパンク以降の若いバンドがその影響源として「ビートルズ」の名前を大々的に出したバンドはおそらくいない(テレヴィジョン・パーソナリティーズがアルバム名で使っているくらいじゃないかな)。みんなビートルズの偉大さは知っているけど、大き過ぎてそれを影響として言うのはちょっと違うかなと思っていたのだろう。


【2月4日追記】
2月1日、ロンドン中心部では「極右を止めろ(STOP THE FAR RIGHT)」デモに約5,000人が集まった。これは、同日おこなわれた「トミー・ロビンソン」(極右活動家)を支持するデモ(こともあろうか、ザ・クラッシュの“ロンドン・コーリング”が演奏されたらしい)に反対するためであり、LGBTおよび人種差別、そしてファシズムへの反対集会だった。ランブリーニ・ガールズは、この集会でスピーチした。

パソコン音楽クラブ - ele-king

 大成功を収めた〈Boiler Room Tokyo〉の誇張されきった世界観については、別段良いとも悪いとも思わない。ただ、プラスの影響と懸念すべき点が表裏一体となって現行のクラブ・シーンに大きな刺激を与えているのは事実ではあると思う。そういうお客さんを毎週のように間近で観測しているし、それをきっかけにクラブに通いはじめたユースが徐々に別の分岐点に立ちはじめているような気配もする。でも、とりあえずは、語るべき言葉がスッと出てこないおとぎ話のようなクラブ像についてより、今昔どちらから生まれた物事にも等しくまっすぐ愛情を注ぐような、地に足のついた作品の話をしようと思う。

 パソコン音楽クラブは、かつては空想を抱えて逃避する先であり、いまは社会インフラそのものとなった(そして耐用年数を迎えはじめ荒れ果てている)インターネットから出発し、今年で結成10年を迎える電子音楽ユニット。彼らが昨年夏にリリースした5thアルバム『Love Flutter』は、結成当初から掲げてきた「DTMの新時代が到来する!」というポップなキャッチフレーズの残り香はそのままに、よりディープに身体性へと訴えかけるような気概を感じさせる、ダンス・ミュージックへ真正面から挑戦した意欲作だった。ただ、より硬質なサウンドを追い求める一方で、本作においても引き続きユニットの根底にあるポップ・センスは存分に発揮されてもいる。コロナ禍の真っ只中にリリースされたアンビエンスを感じさせる3rdアルバム『See-Voice』にて徹底的に内面と向き合った際にも薄皮一枚でポップス「でも」あることは保っていたし、終息直後のタイミングでリリースされた4thアルバム『FINE LINE』では一転して切なさすら感じさせる全力のポップ・センスを発揮していた。

 しかしながら、本作『Love Flutter』は上述したようなポップさを残しつつも、決して全面には押し出さず装飾として機能させることを徹底した仕上がりになっていることが特徴的だ。それはおそらく、パソコン音楽クラブが長きにわたる活動のなかで宅録的な音像の持つ繊細な温かみから、サウンドシステムで鳴らされることに耐えうる強固な音像へと接近していったこと、そしてなによりメンバー両名が30代を迎えて「大人になる」決意を固めたことが関係しているように思える。「キッチュなポップスから卒業」する必要はもちろん一切ないけれど、そこに終始するだけでは伝わるべきことも伝わらない、ということは、同年代の自分にも痛いほどわかる。だからこそ、強い共感をもって本作を聴き、いまの彼らのライヴを観て、DJセットにも積極的に組み込んでいる。これはある種、未来を見据えた決意表明のような作品でもあるのだろう。

 客演に参加したCwondo(No Buses)、柴田聡子tofubeats、MFS、Mei Takahashi(LAUSBUB)、Haruy、Le Makeupといったヴァラエティに富んだ面々が辣腕をふるったトラックでは、これまでのパソコン音楽クラブの辿った足跡と、その過程でひたすら研ぎ澄まされていった「J-POP/邦楽的なエッセンスを電子音楽に昇華する」という彼らの持ち味が両立しきっている。だから、これらをピックアップして一聴するだけでも、いままでのファンとこれからのリスナー双方を満足させる仕上がりであることは伝わるはずだ。

 ただ、本作『Love Flutter』の本懐は決してそこではない。制作において主に使用されたのは、いままでのパソコン音楽クラブのシグネチャー・サウンドであったローランド・SC-88Proに代表されるPCM音源モジュールではなく、ブックラやムーグのモジュラー・シンセサイザーであったという。モジュラー・シンセサイザーにはその性質上、使い手の想定外のサウンドが発生しうる。そうした偶発的に生じる揺らぎを、生の楽器の細かなチューニングの差異のように取り入れ、時には鍵盤を手弾きして、フィールド・レコーディング的なサンプリングも実践してみる、といったアプローチから、ダンサブル=身体的、といった短絡的な解釈にとどまらない「音楽的な身体性」を随所に散りばめることに成功している。それは、10年を通した活動のなかでパソコン音楽クラブが円熟期を迎えはじめていることの証左でもあるだろう。

 リファレンスとまではいかないものの、本作の制作過程でふたりがよく聴いていたのはオーヴァーモノフローティング・ポインツフレッド・アゲイン‥ボーズ・オブ・カナダといったアーティストだったという。そうした面々にも電子音的な「揺らぎ」という成分が作風を下支えする要素として共通しているし、そのようなサウンド・デザインに邦楽らしさを残しつつも漸近しているという点も興味深い。ごく個人的なハイライトは128BPMで徐々に視界が開けるような展開を見せるヒプノティックなハウス・トラックの “Fabric” で、アウトロのピアノがスッと消えてすぐにJ-POP的なスウィートな切なさを伴うメロディックなジャングル “Child Replay” (feat. 柴田聡子)へと繋がる展開の切り替わりも素晴らしい。ほかにも、客演陣が華やかさを発揮する楽曲の間にリヴァーブの効いたアンビエント・トラック “Observe” や、彼らには珍しく荒々しさも見え隠れするバウンシーなブレイクス・チューンの “Boredom”、プログレッシヴ・ハウスとトランス、UKベースの中間点を探る “Memory of the moment”、モジュラー・シンセシスのざらついた音像にフィールド・レコーディング的なサンプルが光るノンビートの “僥倖” といったインストが、インタールードとしてではなくポップスと並列的に散りばめられていることが、本作最大の魅力であり美点であるように思える。

 初期衝動的な楽しさのことは決して片時も忘れることなく、それでもその居心地の良さの外側に向かい、大局的な心情でこの先もずっと続いていく音楽家としての道を、ロールモデルを参照するのではなく、自分たちで引いていく気概とともに粛々と進んでいく。そんな決意を、肩の力を抜いたままに秘めているような作品なのかもしれないな、と本稿を書くことになったとき、改めて強く感じた。今後のライヴ・セットの指針になるようなものを作りたかった、といったことも昨年別の媒体で僕が実施したインタヴュー(https://avyss-magazine.com/2024/08/29/52983/)で彼らは明かしていて、ドラスティックな変化ではなくひとつずつ積み上げていくような、遠大な時間を要する進化と深化を目指そうとする姿勢も感じられる。アルバム・タイトルの「フラッター」とは、音響機器の回転ムラに起因する音の歪みといった意味から、ときめきやざわつきといった心の機微まで、広い意味が託されているとのこと。それはまさしく、パソコン音楽クラブが発足以来常に重要視してきた要素であるとも読み取れなくはない。

Lifted - ele-king

 アンドリュー・フィールド・ピカリング(マックス・D)とマット・パピッチ(コ・ラ)によるリフテッドの新作『Trellis』(Peak Oil)は、彼らの音楽的探求が成熟に達したことを示すアルバムだ。

 彼らは10年代を象徴する音楽の本質を理解し体現してきた。それを一言で表せば「楽園への/からの逃走」ではないかと私は考える。われわれは「楽園」を失った楽園」という言葉を「過去」や「未来」と置き換えてもいいだろう。
 膨大な情報がノイズのように蔓延し、感情や記憶が生成される間もなく泡となって消え去る時代。その中でノスタルジアや未来への希望は、生まれる前に消滅する運命にあった。それが10年代という時代の特徴だった。奇妙なニヒリズムが社会に蔓延し、人々の脳は数値的な評価や即時的な動員の思想に毒され、一瞬のデータに一喜一憂する。彼らの音楽は、このような時代背景と共にあった。
A
 リフテッドの音楽は、そのような「失われた過去と未来」を収集するかのように構築され、音を通して「心をどのように休めることができるのか」という問いを投げかけていた。彼らの作品は、いわばヴェイパーウェイヴ的なムードに寄り添いながらも、同時にその枠を少しだけ逸脱する個性を持っていた。
 その音楽には、電子音、テクノ、ジャズ、アンビエントといった要素が折り重なり、それらは形式ではなく、むしろ失われた記憶の断片のようなムードとして音楽全体に溶け込んでいた。それは陶酔というより、安息の音響であり、同時にそれは現代の技術で精巧に作られた過去のイミテーションのようであった。だからこそ私たちはそこに失われた未来を聴き取った。
 2015年に〈PAN〉からリリースされた『1』と、2019年にリリースされた『2』は、どちらも当時の音楽的潮流を反映した作品だった。現在、改めて聴き直してみると、ジャズの要素が想像以上に多く含まれていることに気付く。おそらく20世紀のムード音楽とジャズが密接な感性にあるからともいえる。いわば音全体は「フュージョン・アンビエント」とでも呼ぶべき心地よさに満ちており、その一方でその心地よさを一瞬で破壊するような意地悪な仕掛けも存在していた。この相反する要素の交錯こそが、極めて10年代的であり、ヴェイパーウェイヴ的と言えるかもしれない。
 2022年に〈Future〉からリリースされた『3』では、ジャズやフュージョン的な要素がより前面に押し出された。リリース当時はその変化に戸惑いを覚えたが、今になってみると、『3』が示した変化の意味がようやく腑に落ちる。
 本作『Trellis』も『3』までと同様にエレクトロニカとフュージョンの交錯のようなサウンドを構成している。いや、より生楽器が取り入れられているともいえよう。
 まず最初の1曲目“All Right”のギターとドラムのアンサンブルに驚かされた。まるで60年代末期のフリージャズを思わせる大胆な演奏なのだ。エレクトリック・ギターが加わり、どこかサイケデリックなムードを感じさせる。エレクトロニック・ミュージックの要素はほとんど姿を消しており、この音楽が本当にリフテッドの作品かと疑うほどの変化を遂げていた。ジャズとサイケデリック。それがこのアルバムの最大の特徴に思える。
 2曲目“Open Door”はミニマルなピアノを中心とするムーディーな曲だ。その音は深い残響に包まれている。1曲目“All Right”とは異なった音だが、同時にサイケデリックな浮遊感があり、アルバムはそのようなトーンで進行していく。
 アルバム中、実験的な成果が聴かれる曲は4曲目“Warmer Cooler”と6曲目“The Latecomer”だろう。“Warmer Cooler”では、どこかフラジャイルなシンセパッドと微細なノイズによってサウンドのテクスチャーが生成されていく曲だ。“The Latecomer”は、アトモスフィアなブラシ・パーカッションと不安定な電子音と管楽器のソロによるアンビエント・ジャズな曲である。7曲目はクリッキーなリズムが流れる曲だ。アルバム中、もっともエレクトロニカな曲だ。“The Latecomer”の不穏な感覚から、明るさを感じさせるトーンになっている。
 本アルバムは、ギタリストのダスティン・ウォンやドラマーのジェレミー・ハイマン、さらにはマルチインストゥルメンタリストのベンジャミン・ボールトらとともに録音された。また、モーショングラフィックスもピアノで参加している。2021年にメリーランド州のスタジオ「テンポハウス」で録音された。

 アルバム全体を通して、エレクトロニクスとアコースティックの要素が絶妙に絡み合い、聴き手に新たな感覚をもたらす波動を生み出している。しかし、それはかつてのように楽園への逃走を目指す音楽ではないように思える。失われた未来を追い求めるだけでは、最後には虚しさしか残らない。大切なのは「いまここ」で「音楽」をどう突き詰めるかということではないか。
 それは逃避でも、過去や未来への回帰でもない。10年代的なペシミズムはすでに過去のものだ。「いま、ここ」に音楽があることの証明すること。これがリフテッドの「現在地」であり、音楽を通して時代を超えて響く新たな「場所」を示している。

1月のジャズ - ele-king

Emile Londonien
Inwards

Naïve

 本誌ムック本の2023年のジャズ・ベスト・アルバムにも挙げたエミール・ロンドニアン。フランスのストラスブールを拠点とするトリオで、マテュー・ドラゴ(ドラムス)、ミドヴァことニルス・ボイニー(ピアノ)、セオ・トリッチ(ベース)という構成。2021年頃から作品エリリースを始め、2023年のファースト・アルバム『Legacy』ではホーン・セクションやシンガーも配し、ロバート・グラスパー的なジャズとヒップホップを融合したスタイルから、よりエレクトロニックでブロークンビーツなどにも接近したスタイルを見せた。同じトリオ形式のゴーゴー・ペンギンなどに比べてさらにクラブ・ミュージック的なアプローチが強く、またヴォーカル作品などでは極めてソウルフルな要素が際立っていた。『Legacy』にも参加したサックス奏者のレオン・ファルも同系のジャズとクラブ・サウンドが融合したアルバム『Stress Killer』をリリースするなど、現在のサウス・ロンドンに呼応するかのようなシーンをフランスで形成している。

 そして、この度『Legacy』に続くセカンド・アルバム『Inwards』がリリースされた。前作に続いてレオン・ファルのほか、ジョウィ・オミシル、ローラン・バルデンヌとフランス人サックス奏者がホーン・セクションを固めるほか、サウス・ロンドンからアシュリー・ヘンリーやシンガーのチェリス・アダムス・ヴァーネットもゲスト参加。アシュリーは昨年リリースしたアルバム『Who We Are』が同じレーベルなので、そうした関係もあって参加したのかもしれない。ブロークンビーツ調のダイナミックなジャズ・ファンクの “Catch The Light”、ダブの影響を感じさせる “Early Days” や “In Motion”、ドラムンベースのビートを取り入れたコズミックな “Inside”、ポエトリー・リーディングを配したディープな “Shades” など、前作以上にジャズとクラブ・ミュージックの融合が進んだ内容となっている。“Crossing Path” のようにホーン・セクションとエレピが絶妙のマッチングを見せるサウンドは、1970年代のハービー・ハンコックやロニー・リストン・スミスあたりのフュージョンを彷彿とさせるところもある。そして、アシュリー・ヘンリーが歌う “Another Galaxy” はR&B的な要素が強く、UKで比較するならジョー・アーモン・ジョーンズからブルー・ラブ・ビーツなどが思い浮かぶアルバムだ。


Ganavya
Daughter Of A Temple

Leiter

 ガナーヴィヤ・ドライスワミーはニューヨーク生まれ、南インドのタミル・ナードゥ州育ちのシンガー/ダブル・ベース奏者/作曲家。祖母がインドのカナルティック音楽の大家で、幼少期から宗教儀式を通じて音楽を学び、即興演奏家、学者、ダンサー、マルチ・インストゥルメンタリストとしての教育も受けてきた。アメリカに戻って大学では演劇や心理学の学位も取得し、民族音楽からコンテンポラリー・パフォーマンスなど芸術を多角的に学んだ。キューバ人ピアニストの名手アルフレッド・ロドリゲスのアルバム『Tocororo』(2012年)に参加して名前を知られるようになり、2018年にファースト・ソロ・アルバム『Aikyam: One』をリリース。エスペランサ・スプルディングの『Songwrights Apothecary Lab』(2021年)では、南インド音楽の専門家としてヴォーカルなどに携わり、同作がグラミー賞に輝くことにも貢献した。また、演劇や映画に関わる音楽活動も多く、ピーター・セラーズ監督の映画『This Body Is So Impermanent…』(2021年)にサントラの作曲で参加している。

 2023年にブラジル出身のギター/ベース奏者/作曲家のムニール・オッスンと共演作『Sister, Idea』を発表し、2024年春にはシャバカ・ハッチングスら南ロンドンのミュージシャンから、カルロス・ニーニョフローティング・ポインツまで参加した『Like The Sky I’ve Been To Quiet』を発表。より幅広いリスナーから注目を集めたガナーヴィヤが2024年末に発表したアルバムが『Daughter Of A Temple』である。ガナーヴィヤはヴォイス、ダブル・ベース、カリンバを担当し、エスペランサ・スポルディング、ヴィジェイ・アイヤー、シャバカ・ハッチングス、イマニュエル・ウィルキンス、ピーター・セラーズほか、音楽家やそうでない人も含め約30名の人たちが声、ダンス、写真などで参加する。なかには故人のウェイン・ショーターも含まれるが、生前の彼の声などをサンプリング素材で用いているようだ。アリス・コルトレーンの “Journey in Satchidananda”、“Ghana Nila”、“Om Supreme”、ジョン・コルトレーンの “A Love Supreme” を取り上げるなど、全編に渡ってアリス&ジョン・コルトレーンに対する敬意や愛情に包まれたアルバムである。シャバカ・ハッチングスをフィーチャーした “Prema Muditha” は、近年の彼が傾倒するアンビエントな世界が展開される。


Raffi Garabedian
The Crazy Dog

RG Music

 ラフィ・ガラベディアンはアメリカ西海岸のベイアリアを拠点とするサックス奏者/作曲家。ホルヘ・ロッシー、ベン・ストリート、デイナ・スティーヴンス、ジョニー・タルボットなどと共演し、ベイアリアの集団即興演奏集団のインセクト・ライフやフリー・ジャズ・グループのスティックラーフォニックでも活動するほか、最近ではクロノス・カルテットのサン・ラー・トリビュート・アルバムにも参加していた。ラフィの祖先は1915年にオスマン帝国でおこなわれたアルメニア人虐殺の生存者の末裔で、彼の祖父母はアメリカへ難民として逃れ、苦難の生活を続けていったのだが、そうした民族の悲しい歴史はラフィの家族へも代々伝えられてきて、このたびリリースした通算3枚目のソロ・アルバム『The Crazy Dog』は祖国アルメニアや彼の家族の歴史を題材としたものとなっている。

 トリオ編成のファースト・アルバム(2017年)、カルテット編成のセカンド・アルバム『Melodies In Silence』(2021年)に対し、『The Crazy Dog』はヴィブラフォン、クラリネット、トロンボーンなどを交えた7人編成の演奏で、より色彩豊かなアルバムになっている。特に重要な点は初めてヴォーカリストを加えた点で、2015年セロニアス・モンク国際ジャズ・ヴォーカル・コンペティションのセミファイナリストに選ばれたダニエル・ウェルツをフィーチャーしている。本作でのダニエルはジャズ・ヴォーカルというよりもヴォイスに近いもので、クラシックの声楽のような要素を感じさせる。ジャズにアルメニア民謡を取り入れたアーティストとしてはティグラン・ハマシアンが有名だが、音楽的に本作はことさらアルメニア的な要素を前面に出すのではなく、基本は西洋音楽としてのジャズの技法に則ったもの。ただ、変拍子のモーダルな “Escape To Erzurum” のメロディなどにはアルメニア民謡の影響も感じられ、ラフィの遺伝子のなかにあるものが顔を出す場面もある。この “Escape To Erzurum” はじめ、西洋音楽の技法である対位法をテーマとした “Contrapuntal Bewilderment”、ほとんどスキャットのみで綴る神秘的な “The American Question” など、ノーマ・ウィンストンやジェイ・クレイトンあたりを彷彿とさせるダニエル・ウェルツのヴォイス・パフォーマンスが印象的だ。


Rowan Oliver
Quickbeam

Soundweight

 1990年代末から2000年代にかけて活動したゴールドフラップは、ポーティスヘッドの再来と評されたこともある男女ペアのエレクトロニック・ユニットだったが、そのゴールドフラップのサウンドを7年間に渡って支えたドラマーがローワン・オリヴァー。プロデューサーでマルチ・ミュージシャンでもある彼は、ゴールドフラップ以外にもプラッド、ポール・オーケンフォールド、スペーサー、アドゥン・トゥ・エックス、マーラ・カーライル、マリリン・マンソン、マックス・デ・ヴァルデナーらの作品に参加し、〈ソウル・ジャズ〉〈ミュート〉〈ワープ〉〈フリーレンジ〉〈プッシーフット〉といったレーベルで仕事をするなど、長年に渡ってUKの音楽シーンで活動してきている。そんなローワン・オリヴァーが初のソロ・アルバム『Quickbeam』をリリースした。

 基本的にローワンが全ての楽器やプロダクションを担当しているが、一部楽器で兄弟のアーロやジェイコブが演奏し、ファンク・バンドのスピードメーターからサックス奏者のマット・マッケイも参加する。スリリングなストリングスを配した “Burning Boat” に代表されるように、1960年代から1970年代にかけてロータリー・コネクションやドロシー・アシュビーなどの作品プロデュースで活躍したリチャード・エヴァンスや、ヒップホップのサンプリング・ソースとして名高いデヴィッド・アクセルロッドなどの作品群を彷彿とさせる。基本的にはドラマーなので、“Wheeling”“Road Of Dreams” のように、ビート感覚に優れたドラムが軸となるジャズ・ファンク、ジャズ・ロック系の作品が中心となるわけだが、“Onwards & Upwards” におけるダークでミステリアスな感覚はトリップホップやダウンテンポなどを通過してきたUKのミュージシャンらしいと言える。

Leaving - ele-king

 米カリフォルニア州・ロサンゼルスで発生した大規模な山火事による被害はいまも続いている。マッドリブにいたっては自宅が全焼し、自身の半生を費やして築き上げた膨大なレコード・コレクションと制作してきた音源のアーカイヴ、スタジオの機材、そのすべてを失ったという。もちろん、アーティストやDJ、音楽プロデューサーといった人々にかかわらず、数多くの市井の人々が同じく住居や家財の多くを失い、大量の行方不明者や死傷者を出している。まずは心からお悔やみ申し上げます。
 とくに火災の甚大な被害を受けたアルタデナ地区は、その歴史から黒人世帯の住まいとして、またアーティストや労働者階級の暮らす場所として長年繁栄してきた地であるが、LGBTQ+を積極的に受け入れてきたアルタデナ・コミュニティ教会が全焼、神智学協会の膨大なアーカイヴが建物ごと焼失、ダウンタウン地区の大半が焼失するなど壊滅的な状況にあるようだ。

 そんなアルタデナと縁深いマシューデイヴィッド率いるレーベル〈Leaving Records〉が、このたび火災被害の復興支援のためのチャリティ・コンピレーション・アルバム『Staying: Leaving Records Aid to Artists Impacted by the Los Angeles Wildfires』をBandCampにてリリース。収益の全額が被害を受けた個人に直接寄付されるとのこと。その半数がロサンゼルスのアーティストへ可能な限り公平に手作業で配分され、残りの50%は被災した黒人たちの離散家族およびコミュニティに同じく可能な限り公平に割り当てられるそうだ。
 
 「あらゆるジャンルのレコードを残す」というレーベルの精神性と共鳴するかのように、所縁あるアーティストが集い98曲入というヴォリュームになった本コンピレーションには、カマルやアンドレ3000、ジュリア・ホルターやララージといった面々が参加している。
作品の販売ページには、レーベルより以下のようなメッセージも記されている。

─Though we may not even know what “hope” constitutes yet, we know we’ve got it somewhere. We know it’s in solidarity, and we know it’s in the music.
(「希望」がなんなのかはまだわからないかもしれないが、わたしたちはどこかにそれを見出している。それは連帯と音楽のなかにある。)
─Emmett Shoemaker for Leaving Records, January 13, 2025, ~10:30pm

Artist: V.A
Title: Staying: Leaving Records Aid to Artists Impacted by the Los Angeles Wildfires
Label: Staying / Leaving Records
Format: LP / Casette / Digital
Release Date: 2025.01.17

Buy: Bandcamp
Leaving Records

Shuta Hasunuma - ele-king

 2023年のアルバム『unpeople』以降、立体音響パフォーマンスをつづけてきた蓮沼執太。それにつらなる新作EP「+1P EP」が2月14日にリリースされる。現在、同作より “one window (instrumental)” が公開中だ。

 なお蓮沼は今年公開されるアニメ映画『花緑青が明ける日』(日本画家、四宮義俊による長編アニメ監督デビュー作)の音楽を担当してもいる。合わせてチェックしておきたい。

Shuta Hasunuma
“+1P EP”

2025.02.14(fri) releases

1: Heaven
2: Pragma
3: one window (instrumental)
4: Pluralist

蓮沼執太の4曲収録のオリジナルEP『+1P EP』がリリース。国内外から高い評価を得た前作アルバム『unpeople』(2023)以降に行ってきた立体音響によるサウンド・パフォーマンス『unpeople + 1 people』の「+ 1 people」からネーミングをとったタイトルになっている。

1曲目には、2024年開催の草月プラザ・イサムノグチ石庭『天国』での公演『unpeople -初演-』で披露された Jatinder Singh Durhailay(ジャティンダー・シン・ドゥハレ)、Johanna Tagada Hoffbeck(ジョアンナ・タガダ・ホフベック)とその愛鳥 Lemon(レモン)による大崎清夏による詩のポエトリー・リーディング作品の『Heaven』。 クラブセットでパフォーマンスをしているリズムトラックの2曲目『Pragma』。2023年リリースされた「one window」のインストゥルメンタルバージョンの3曲目『one window (instrumental)』。そしてEPの最後を飾る4曲目は7分間の壮大な『Pluralist』。マスタリングはメトロポリス・スタジオのMatt Colton(マット・コルトン)が手がける。

アルバム『unpeople』同様に田中せりがアート・ディレクションを担当し、池谷陸による写真がアートワークに起用されている。音楽的方向性、そしてビジュアルワークからも前作『unpeople』の残り香が漂うような、蓮沼執太による音響世界が作られている意欲的な小曲集となっている。

蓮沼執太|Shuta Hasunuma
音楽家、アーティスト
1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織し国内外での音楽公演をはじめ、映画、テレビ、演劇、ダンス、ファッション、広告など様々なメディアでの音楽制作を行う。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンス、プロジェクトを制作する。
x : @shuta_hasunuma
Instagram : @shuta_hasunuma
YouTube : https://www.youtube.com/@ShutaHasunuma/
web: https://linktr.ee/shutahasunuma

Double Virgo - ele-king

 去年、24年の5月にバー・イタリアのライヴを見たあの日のことをいまだに思い出す。まるで時代がかった音楽ドキュメンタリー映画が目の前で展開されているかのような音と視覚の共演。ステージの上の照明はずっと明かりがついたまま。それは黄色と白が混じったスクリーンの光のようで、赤や青などカラフルな照明に切り変わることなどなかった。黒い横長のサングラスの男が右に、黒髪のカーリーヘアで眼鏡をかけた男が左に、そうしてドレスの女が真ん中で踊り続ける。フロントの3人のその姿はいつか見た映画の場面そのもので、やたらと奥行きがあるスクリーンのリアルな世界に自分が存在しているような気分になった。スクリーンのなかの、観客として僕らも映画のなかにいる。もしかしたら当時、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやテレヴィジョンのライヴの現場にいた人もこんな気持ちだったのかもしれない。そうしてそこで理解した、バー・イタリアはスタイルなのだと。スタイル、あるいは哲学と言ってもいいような、貫かれる美意識、だから何をしても様になる。もう少し言えば様になるようにアクションを起こしている。その選択にしびれ続けているのだ。

 そしてそれはそのままダブル・ヴァーゴの美意識でもある。バー・イタリアから中央の女性、ニーナ・クリスタンテを抜いた、サム・フェントンとジェズミ・タリック・フェフミのダブル・ヴァーゴ。不遜にそして彼ららしく『Greatest Hits』と名付けられたこれまでの曲を集めたコンピレーション・アルバム、というかほぼデモみたいなラフな感触のアルバムがまた素晴らしいのだ。90年代US風のスラッカーなギター・ロック、ちょっとメランコリックで、思いのほかポップな唄メロを持っていて、なんてことのないような曲なのにさりげないフックが繰り出され頭のなかで尾を引くように綺麗な線を残していく。フェントンひとりの弾き語りのようなアイデアの “Splashy” にもう一本のギターが所在なさ気に入ってきてフェフミの違う歌声とからむ。そうしてまたいつの間にかフェントンひとりに戻っていき、気まぐれに声が合わさりエンディングに向かって音が抜かれていく。シンプルな、たったこれだけのことなのに、頭のなかでこの曲が日常に消えていく名曲だって判断される。それは90年代USオルタナ風の曲 “hardcore hex” や “Bingentinking” にしても同様で、ここに至りこの魔法のフックは曲の良さもさることながらフェントンとフェフミの唄い継ぎによるものなのではないかという考えが頭に浮かんでくる。これ見よがしなところはいっさいない憂いを帯びた低体温のヴォーカル、気怠くぼそぼそと小さなメロディを唄う声が聞こえてくるかと思いきやふっと消え、いつの間にか同じような、しかし別のメランコリーな唄に変わっている。それはソファーに寝そべり、壁に寄りかかったふたりの間で気怠く交わされる映画のなかの会話のようで、なんとなくジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』の「わるい仲間」ヴァージョンみたいな光景が頭のなかに浮かんでくる。でもあそこまで長くはない。長くても3分半、大半は2分かそこらの短い時間の「長回し」で、だからこそ飽きることなくこれをアンニュイな時間としてそのまま受け取ることができるのだろう。こうした選択こそがまさにダブル・ヴァーゴのセンスだ。ギラついたものではない鈍い光がダウナーに進む時間のなかで放たれる。美しい倦怠、無為に消えていく時間、ダブル・ヴァーゴはポップ・ミュージックのフィールドのなかで自身の美学を素晴らしく示している。
 アンコールにシングル・ヒットした曲を演奏しなければならないことを思い出したみたいな “No smoking in the hallway” のような異彩を放つ曲もあるが(そのタイミングで演奏される曲がたいていそうであるのと同じようにこの曲もまた疾走感に溢れた素晴らしい曲だ)アルバムの全体の雰囲気はアンニュイで心地よい空気を味わわさせてくれるものだ。

 それにしてもフェントンとフェフミは多作だ。バー・イタリアとして23年に『Tracey Denim』『The Twits』という素晴らしいアルバムを2枚出したかと思えば、同じ年にダブル・ヴァーゴとして『hardrive heat seeking』と名付けた36の未発表曲を世に放つ。そしてここに『Greatest Hits』がある。夜中にひとり、小さな音でこのアルバムを聞いていると、なんだか将来、再発見されるであろうバンドの曲を先取りして聞いているみたいな気分になる。シーンや時代の流れというものから離れ、SNS上の存在をほとんど示さないミステリアスなバンドの、掘り出された音源。ヴィーガンのレーベル〈PLZ Make It Ruins〉からリリースされたEP「Eros In The Bunker」のようなパッケージングされたオリジナル・アルバムを出して欲しいという思いもあるのだが、いやしかしダブル・ヴァーゴはこれでいいという思いもある。時代の波にさらされた後のような、わずらわしさから離れたローファイでタイムレスな小品たちが放つ気怠さのなかにいつまでも浸っていたい。そうやってこの『Greatest Hits』は誰かのベッドルームのなかで特別になっていくのだ。

ERA - ele-king

 等身大の目線で都市の生活を歌うラッパー、ERA。その6枚目のアルバム『under the sun』が本日1月22日配信されている。客演には仙人掌、CENJU、anndy toy storeといったベテランから若手までが登場。現在、収録曲 “SWAY IN THE WIND feat. CENJU” のMVがERA自身の運営するHOW LOWのYouTubeチャンネルで公開中だ。リリースを記念してパーカーもWISDOM STOREおよびTRASMUNDOにて発売とのことなので、あわせてチェックしておきましょう。

アーティスト:ERA
タイトル:under the sun
フォーマット:CD / DIGITAL
配信リンク:https://ultravybe.lnk.to/under-the-sun
発売日:2025年1月22日

ERAの2年ぶりとなる6枚目となるアルバム。PAIN、希望、日常をテーマとした全11曲入りのアルバム。エモーショナルなリリックにERA独特のFLOWが乗る。今回はBAYAREA寄りの楽曲が多数収録されている。ERA特有のキャッチーさに華をそえているビートとERA独特のFLOWとの関係性となっていて楽しめる内容となっている。フューチャリングには仙人掌、CENJU、anndy toy storeとベテランや盟友、フレッシュな若手を起用している。アルバムの後半では苦しんでいる人達にたいしてのメッセージがある曲を収録するなど今ままでより幅が広がったERA節を展開している。是非色んな人に聞いて頂きたい。

収録曲 :
01. Favorite Food Prod. by 4thathr33
02. Summertime In The Hood feat. 仙人掌 Prod. by Cedar Law$ & kosy
03. Rooftop Prod. by Major Threat
04. In The Dream feat. anddy toy store Prod. by DJ HIGHSCHOOL
05. Name ERA Prod. by Vis The Kid
06. Swaying In The Wind feat. CENJU Prod. by K.E.M
07. Get Serious Prod. by DJ SCRATCH NICE
08. ケセラセラ Prod. by SIRCORE
09. My Life Prod. by TEMPO TUNES COLLECTION
10. 明日 Prod. by boi yanel
11. Turn The Page Prod. by MASS-HOLE

Mixed by I-DeA at FLS 6th Lab
Masters by HIroshi Shiota at SALT FIELD MASTERING
Artwork by ATER ( FUT / LPS )
Photo by Teppei Hori

PROFILE :
D.U.O TOKYOをリプレゼントするFRESHでORIGINALなTOKYO出身のMC。2011年にファーストアルバム「3 WORDS MY WORLD」をリリース。変わらずに変化していく街のHIP HOPでTOKYOからオリジナルカラーに世界を染めていく。アルバム「JEWELS」をリリース後、自らのレーベルHOW LOWを設立。「LIFE IS MOVIE」(2015)、「Culture Influences」(2018)の2枚のアルバムと EP 「Ground Music」(2020)シングル「Daily Tales」(2021)及び「Reachung」(2022) をリリース。リリースしたどのタイトルもクラッシックとして、生活の中で作用し合いながら輝き続けている。SEMINISHUKEIの作品はもちろん、BCDMG、BIM、Campanella、tofubeats、PUNPEE、仙人掌らとも楽曲をリリースしており、ERAの描く地平線は素晴らしく湾曲していてまっすぐにのびていく。エモーショナルなリリックは何かを掴むきっかけをいつだって感じさせてくれる。

The TIMERS『35周年祝賀記念品』に寄せて - ele-king

 清志郎さんは煙草を吸うときに必ず匂いを嗅いでから火をつけた。僕の周りでそんなことをする人は見たことがない。パッケージから煙草を取り出すと清志郎さんは横向きにして鼻の下にあてがい、ささッと短く左右に動かす。煙草の匂いが本当に好きなんだなと思って、ある時、清志郎さんがいつものように煙草を鼻の下に押し当てた瞬間、「必ず匂いを嗅ぐんですね」と言ったら「そんなこと言われたら、もうできなくなるじゃないか」と怒られてしまった。楽しみを奪われたという表情だった。煙草の匂いを嗅ぐのは無意識だったのかと僕はさらに驚いた。
 この正月に風邪をひき、外に出るのが億劫だったのでタイマーズの『35周年祝賀記念品』を宅配で取り寄せ、パラパラと歌詞カードを眺めていたら、「火をつけて この胸に お前の匂いを かぎたいぜ」という歌詞が目に入った(“タイマーズのテーマ” )。そうだった。レコーディング前は語尾が「ぜ」ではなく、「かぎたいよ」と歌っていたことも思い出す。「必ず匂いを嗅ぐんですね」と僕が清志郎さんに言ったのは『忌野清志郎画報 生卵』を編集していた90年代半ばで、“タイマーズのテーマ” がつくられたのはそれより7年も前。なんだよ、自分で「匂いをかぎたい」と歌ってるじゃないか。あの時、僕はなんで怒られたんだ?
 そう、それは本来、煙草でやる仕草ではないことを煙草にもしていると僕に指摘されて、煙草で済ませていたことに自分で自分に腹を立てたのだろう。同じことはビールでも繰り返された。自宅でビールを飲み、「なんだ、これでもよかったんだ」と清志郎さんは自嘲していた。2人の子どもが生まれ、明らかにライフ・スタイルを変化させ始めた清志郎さんがそこにはいた。いまから思えばセルフ・イメージを書き換えていた時期なのである。朝の4時に窓を開けて「ヤッホー!」と大声を出して、石井さんに「何やってんの!」と頭をはたかれたりしていたのは同じだったけれど。
 清志郎さんにはそれまで強迫観念があり、いつも芸術家のようにあらねばならないと考えていた。日常生活も例外ではなかった。凡人がやるようなことをやってしまうと「ダメかなあ?」と妙に照れていた。その頃はそんな清志郎さんを何度見たことか。それこそ7年前にタイマーズを始めた人と同一人物なのかと思うほど、その頃はほのぼのとしていた。そう、タイマーズの時はやはり、清志郎は人が違っていた。

「事務所の人間が現場に行くわけにはいかないから代わりに行ってくれないか」と坂田社長に僕は言われた。タイマーズがステージに立つ1週間ほど前で、「現場に行くわけにいかない」というのは事務所がタイマーズのやることに責任を負えないという意味だった。イベントの主催者に対して説明のしようがなく、実質的に「逃げる」という判断である。それは清志郎と事務所の関係がいったん白紙になったということを意味し、タイマーズというバンドが業界に足がかりさえ持てないのかと僕は心配になってしまった。僕はまだ音楽業界という場所に足を踏み入れたばかりで、ことの重大さを完全に理解できていなかった。
 硬い表情のまま坂田社長は続けた。「危ないと思ったら、メンバーをタクシーに乗せて逃がしてくれ」と。このひと言にはさすがに緊張した。タイマーズのライヴ・デビューは1988年8月2日の富士急ハイランドで行われた音楽フェスで、トッピこと三宅伸治率いるモージョー・クラブが出演するはずだった時間帯をタイマーズに譲ったものだった。モージョー・クラブが『社会復帰』でメジャー・デビューしたのはその翌年のことで、その時の観客はモージョー・クラブだろうがタイマーズだろうが、どっちにしてもよく知らないバンドだし、実際、それまで降っていた雨が止んで、まばらな拍手を受けてタイマーズの演奏が始まっても半数は無反応だった。
 残りの半数は、しかし、半狂乱ともいえる騒ぎになった。RCサクセション『カバーズ』の発売中止を知らせる広告が新聞に掲載されてからから41日後のことであり、覆面をしたゼリーの声が清志郎だとわかっただけでなく、ライヴの後半では観客の耳に “Love Me Tender” と “Summertime Blues” が立て続けに飛び込んできたのだから。“Love Me Tender” が人前で演奏されたのは2回目、“Summertime Blues” は初めてだった。清志郎がなんとかタイマーズをかたちにしようと企画書をばら撒き(そこには憂歌団がバックを務めると書かれていた)、闇雲にデモ・テープを録音し始めてもマネージャーすら決まらないという事態が続いていたなか、富士急ハイランドには原盤会社だけが駆けつけた。
 富士急ハイランドが公開リハーサルみたいなものだったとすれば4日後のヒロシマ平和コンサートが本番だった。この日も無告知で、タイマーズはサプライズの登場だったにもかかわらず、彼らがステージに姿を現すや客席から「キヨシロー!」という嬌声が飛ぶ。楽屋でも大部屋の片隅でコソコソと作業し、清志郎だということは意外とバレてなかったと思うのに、彼らは一体どうやって清志郎が出ることを知ったのだろう。そうした声援には一切応えず、タイマーズは長々ともったいぶったバンド紹介を続け、ようやく “タイマーズのテーマ” が始まったと思ったら30分にも満たないステージは濃密な余韻を残してすぐに終わった。ヒロシマ平和コンサートの趣旨を踏みにじるように「偽善者はうたうよ 世界の 平和を求め」と歌ったのもさることながら、 “Summertime Blues” の間奏で清志郎が「オレは放射能を浴びてな、死にたくねえーな。麻薬中毒で死にたいぜ!」と言い捨てたことがとにかく印象的だった。
 この日のライヴはNHKが衛星中継をしていて、後で聞いたところによるとステージが終わってからNHKとは少し揉めたらしい。とはいえ、メンバーをタクシーで逃がすというほどの混乱は起きなかった。ステージを観て驚いたのか、オフィシャル・ブックを編集していた後藤繁雄さんがタイマーズのコメントを取らせて欲しいと熱心に頼んできた。僕に権限があることではないので、そこは勘弁してもらったけれど、後藤さんと話をしている間に、なんとタイマーズはイギリスのBBCから取材を受けていたらしい。それがタイマーズの初インタビューになるとは!(2番目に公開されたインタビューは僕が「パチパチ・ロックンロール」に書いたもので、それは本人の了解を得た上で僕が創作したもの。間違って引用なんかしないでね)。また、後藤さんが編集した写真集『ヒロシマ1988★ドキュメント写真集 VISUAL-AID BOOK』(クロスロード刊)は後半がほとんどタイマーズのステージ写真で占められていた。

 タイマーズはライヴ、とにかくライヴだった。毎回、何をやるかわからないし、「ロックとブルースと演歌とジャリタレ・ポップスをユーゴーした新しい日本の音楽」と企画書でぶち上げていた通り、スキッフルあり、演歌あり、フォーク・ロックありで、1回のステージのなかでも展開がまったく読めなかった。RCとの連続性でいうと“去年の今頃” や“あの子の悪い噂” が豊富なヴァリエーションに化けて周囲を取り囲み、上からも下からも襲ってきたという感じだろうか。横浜国立大学の学園祭では階段教室のようなつくりが災いして後方から前方に押し寄せてきた客の波に写真家のおおくぼひさこさんが押しつぶされて救急車で運ばれてしまい、コンサートの中止を訴える主催者の声を遮ってライヴを再開してしまうほどバンドの勢いが何よりも優先されていた。横浜国大ではその日の新聞の見出しを見て出番直前に “創価学会(住職誘拐)” をつくってしまうほど勢いがあり、客席もかなりの混乱に見舞われたけれど、続く泉谷しげる&ルーザーが堂々とステージを終えたのに対し、翌年行われた学園祭ツアーでは成城学園で同じようにタイマーズがパニックを引き起こし、トリのティアドロップスは中止になってしまった。
 とはいえ、清志郎のなかには言いたいことはライヴで訴えるしかないという背水の陣にも似た感情も僕はあったと思う。『カバーズ』のような作品を発売中止にしてしまうレコード産業に対して構造的な失望を覚え(清志郎の言い方では「音楽業界を見放した」となり、ライヴの録音自由化宣言へとながっていく)、自分が最後に立つ所はステージであり、最後はそこしかないという思いが強くなったと僕には感じられた(RCサクセションが80年代初頭にブレイクした際、清志郎は「レコードなんてチラシみたいなものだぜ」と発言していた)。具体的にそうした考えを本人から聞いたわけではないけれど、当時は「夜をぶっとばせ!」というラジオ番組で構成を担当させてもらっていたため、メディアが必ずしも自分の味方ではないと清志郎が考えざるを得ない感覚があることは充分に理解していたつもりである。
 それこそ同ラジオでスタジオ・ライヴの許可が下り、“アイ・シャル・ビー・リリースト” や “ヘルプ” といった曲をやれるとなった時、清志郎さんは過剰に喜んでいた。自分の番組なんだから「やれて当然」と思うのではなく、リアルタイムで自分の気持ちを表現できることが常に保証されていないと思っていなければ出てこない反応がその時は示されていた。地方と中央の関係やスポンサーの住所にも規定があるなど話はかなり込み入ってしまうので省くけれど、清志郎にとってはいわばFM大阪がFM東京の盾になってくれ、この時ばかりは自分の味方になってくれたという感じだったのだろう(その前の週にFM大阪からは “Love Me Tender” と “Summertime Blues” が放送禁止、FM東京からは『カバーズ』全曲が放送禁止という通達が来ていた。自分の番組で自分の新作が1曲もオン・エアできないのである。FM東京がネットし始めなければ少なくともFM大阪ではあれこれとオン・エアできたわけで、FM東京に対する反感はあの時から始まったと思う)。
 タイマーズのライヴが過熱していくのは、だから、当然のことで、それこそ「ソウル・バンドになってしまった」と一部で揶揄されていたRCサクセションとは対極のロックンロール・バンドであり、歌詞もあからさまに権力を題材にすることが増えていった。あるいは皮肉を前面に出すことで、 “ファンからの贈り物” や “キミかわいいね” といった初期の作風に戻ったともいえ、そのために曲に勢いがつけやすかったともいえる。ヒロシマ平和コンサートで演奏された “Summertime Blues” はとくにアコースティックとは思えない迫力で、88年の時点ではまだアコースティック・セットだったタイマーズがベース以外はエレクトリックに編成を変えた89年よりもインパクトではまさっていたと感じられた(NHKに録音が残っているはずだから「ヒロシマ平和コンサート」のライヴも『Rhapsody』のようなターニング・ポイントのライヴ盤として残すべきでは?)。

 レコード産業に対する失望だけでなく、タイマーズにはRCサクセションに対する失望も色濃く滲み出ていた。清志郎さんによると『カバーズ』が発売中止と聞かされても怒っていたのは自分だけで、タイマーズとして抗議の意を示したことは「本当はRCでやりたかった」ことだも話していた。発売中止を受けて行われたライヴの記録『コブラの悩み』のリハーサルでは、通しリハの前に清志郎さんが新たにつくってきたダスティ・スプリングフィールドの替え歌 “素晴らしすぎて” をみんなに聞かせるという一幕があった。曲が終わっても誰1人声を発さず、数秒の沈黙を受けて清志郎は投げ出すように「じゃ、やめよう」とあっさり曲を取り下げてしまった。ヒロシマ平和コンサートの3日ぐらい後のことで、タイマーズとして得た充実感とはあまりに対照的な空気がそこには流れていた。通しリハが進み、 “イマジン”を一度演奏しかけてストップし、「この曲は元気にやろう!」と清志郎がメンバーに注意を喚起したことが印象に残っている。
 RCサクセションとの距離感は、しかし、『カバーズ』の発売中止よりもずっと以前から広がっていた。東芝EMIの御殿場工場で『カバーズ』のアナログ盤がプレスされる直前にラッカー盤で試聴するという行程があり、その日が清志郎さんの誕生日と重なっていると知った僕は「アサヒグラフ」に「清志郎が富士山で誕生日を祝う」という企画を出して写真家の川上尚見さんと共にプレス工場に乗り込んだ。試聴室に入ってみると、そこには清志郎さんと、なぜか石井さんがいた。空いている椅子に僕たちは腰をかけ、手持ち無沙汰にラッカー盤の到着を待っていると、清志郎さんが沈黙を破って「あいつら、最終的にどんな音で鳴るのか、興味がないんだよ」とポツリと言った。僕はとくに疑問には思っていなかったのだけれど、他のメンバーが誰も来ない理由を説明しようとしたのだろう。その時、僕は清志郎さんと知り合ってまだ1年ちょっとしか経っていなかった頃で、RCサクセションの内部がどのようなパワー・バランスで成り立っているのかぜんぜんわかっていなかった。「ああ」とかなんとか生返事をして、頭のなかでは清志郎さん以外のメンバーは音質には興味がないということなのかなと考えたり。しかし、それから3年後にはRCサクセションが活動を停止していたことを思うと、あれは思ったよりも重いひと言だったのだなといま頃になって考え直している。
『コブラの悩み』が収録された夏の日比谷野音は異様な物々しさに包まれ、ライヴの空気もそれに引き摺られて緊張感が増していた。『カバーズ』からの6曲に加えて“言論の自由”や“セルフポートレート”といったプロテスト・ソング、放射能のことを最初に取り上げた“SHELTER OF LOVE”なども演奏されたけれど、全体に抗議調で押し通したわけではなく、『MARVY』から “コール・ミー” や『BLUE』から“よそ者” 、さらに “トランジスタ・ラジオ”、“ラプソディ” と、意外なほどヒット・パレード的な内容でもあった。“アイ・シャル・ビー・リリースト” は、スタジオ・ライヴで歌われた「西から東まで」ではなく「東の芝にも」に歌詞が変わり、“あきれて物も言えない” はいくらなんでもテンポが速過ぎた。ちなみに『コブラの悩み』というのはライヴ盤につけられたタイトルで、ライヴ当日は「SPECIAL FOR SUMMER NIGHT」というタイトルが付けられていた。

 野音が終わるとタイマーズのデモ・テープづくりが本格化し、あっという間に38曲を録音して19曲をトラック・ダウン(これをダビングしたテープがどこでどうやって高杉弾の手に渡ったのか、それをまたコピーしたものがセンター街の彼の店で飛ぶように売れたという)。 “原発賛成音頭” など何曲かは「夜をぶっとばせ!」でデモ・テープのままオン・エアもされ、年末には江戸屋レコードからのリリースが検討されていたものの、年が明けるとしばらくして『コブラの悩み』と同じく東芝EMIからリリースされることになった。最終的にロンドンでレコーディングするとか伊豆でレコーディングするとか、方針が何度も変わるなか、箱根合宿などを行ってアルバムの構想は徐々にまとまっていく。タイマーズの曲はカバーも多く(大喪の礼を揶揄した“カプリオーレ” はブラームスの曲に歌詞をつけたもの)、テーマ的にも『カバーズ』の流れをダイレクトに汲んだりもするなか、『カバーズ』で他人の曲をあれこれといじくったことで手癖から解放されたことも大きな成果だったと本人は語っていた。 “シークレット・エージェント・マン”から“不死身のタイマーズ”、や“争いの河”、 “悪い星の下に” から“Mama Please Come Back”、といった感じだろうか。ロックンロールやロカビリーが多いのは三宅伸治の影響だろう。『カバーズ』のアウトテイクに加山雄三の “君といつまでも”があり、 “ロックン仁義”のセリフ・パートなどはそこからの流れという感じもあった( “ロックン仁義”が演歌なのは「イカ天」やバンド・ブームを嫌っていた清志郎の皮肉が振り切れたということだと思う)。 “総理大臣、でスライを意識したあたりもRCサクセションにはなかった一面で、このような音楽性の広げ方はピーター、ポール&マリーやピンク・フロイドを柔軟に消化した『楽しい夕に』のヴァージョン・アップにも思えてくる。
 エレクトリックに編成を変え、メジャーからのレコード発売が前提となった89年のヒロシマ平和コンサートはゲリラ出演ではなく、初めから予定に組み込まれたことで早くも様式性を楽しむ態度が強くなっていたものの、周囲の期待はかつてなく増大していた。それこそイレギュラーが身上のタイマーズといえどもバンドが軌道に乗ると頭をもたげてくる予定調和との戦いが始まったのである。しかし、それをぶち破るようにファースト・シングル “デイ・ドリーム・ビリーバー” が発売された2日後、タイマーズはフジテレビ「ヒットスタジオR&N」で事件を起こす。清志郎がTVのゴールデン・タイムでクレージー・キャッツのような音楽コントの番組をやりたいと坂田社長に提案したことから始まったラジオ番組「夜をぶっとばせ!」は清志郎の思いとはだいぶかけ離れた内容になってしまったけれど、FM大阪だけで放送されていた時期はそれなりに自由にやっていた。視聴率がいいのでこれがFM東京にネットされることが決まり、実際に放送シフトが変わる1週間前に『カバーズ』の発売中止という巡り合わせになってしまい、スタッフから何からいろんなことがいっぺんに変わってしまった。FM大阪が “Love Me Tender” と “Summertime Blues” を放送禁止にすると言ってきたことだってどうかとは思うけれど、FM東京が『カバーズ』全曲放送禁止と通達してきたのはあまりにも過剰反応であり、『カバーズ』が世に出ないことに自分の番組まで加担するというのは清志郎にとってどれほどの屈辱だったことか。現場でも対応の仕方がよくわからなかったので初回の放送は2ヴァージョン制作されたり、スタジオを変えたり、バタバタしっぱなしで、その波をなんとか乗り越え、清志郎が次の放送でスタジオ・ライヴをやりたいと申し出てくれたことで一気に方向性が明確になった。その結果、清志郎と三宅伸治が行なったライヴがそのままタイマーズの雛形になっていく。三宅伸治は自分のバンドがデビューするタイミングだったのに、よくぞあれだけ頑張ったと思う。残りのメンバーを集めたのも、確か彼だったと思う。
 その後もFM東京は納品したテープにあれこれと文句をつけてくることが多く、FM東京からのクレームは清志郎に伝えたこともあったし、伝えなかったこともあったけれど、辟易としながらも僕らが態度を改めたことはなかった。むしろ新作を一切プロモーションできないのに番組を続けていく意味はあるのかという疑問を悪ふざけに転化しなければやっていられなかったところあった。FM東京の担当者は最終回の収録まで一回も現場に来なかった。「ヒットスタジオR&N」で “FM東京” が演奏された次の日には清志郎の家に召集がかかり、前日の録画をみんなで爆笑しながら鑑賞することになった。現場にマネージャーとして赴いていた片岡たまきは、彼女の夫であるロケットマツがアコーディオンでタイマーズの演奏に加わっていたのに “FM東京” をやるとは知らされていず、さすがにあとで夫婦喧嘩になったらしい。また、当時の荒井社長とたまきはFM東京の重役室に謝りに来いと命じられ、頭を下げに行ったものの、謝りながら耐えきれずに吹き出してしまったという(ここまでがFM東京事件という感じですwww)。ちなみに清志郎は最初、ジュリーをもじってジュレーと名乗っていて「それだったらゼリーの方がいい」と提言したのが片岡たまき。
「ヒットスタジオR&N」のライヴは短いので何度もリピートして観ているうちに石井さんが “FM東京” を歌い出す時、「クリちゃん、泡吹いてるよ」と言い出した(石井さんは清志郎のことを本名で“クリちゃん” と呼ぶ)。確かにゼリーの口元からは泡が噴き出してた。そう言われて清志郎も笑っていたけれど、そうなんだよ、けして清志郎はロックの化身だとか強靭な精神力の持ち主とかではなく、勇気を振り絞ってあれをやったのである。「イキがったりビビったりして」と “ドカドカうるさいR&Rバンド” で歌っていたように清志郎だって自分が持てる以上の力を出そうと必死だったのである。次の年に清志郎は “空がまた暗くなる”で 「おとなだろ 勇気をだせよ」と歌っていた。あれは当時のディレクターに向けた言葉なのかなと僕は思っていたけれど、案外、自分自身に言い聞かせていたことなのかも。

『35周年祝賀記念品』はオリジナル・アルバムのリマスターに、2006年版に追加収録されていたシングルのカップリング曲と2016年のスペシャル・エディションからDisc2の10曲を合わせたCD2、そして、未発表の9曲を収録したCD3の3枚組。 “FM東京” はともかくとしてライヴで繰り返された “明星即席ラーメン” や “Summertime Blues(天皇ヴァージョン)”などがもう一度聞きたかったけれど、 ライヴとはまた異なる世界観で作品を構築したのは清志郎の考えでもあるので、そこは致し方ないところでしょう。オリジナル・アルバムについてはここまで書いてきたことと重複してしまうので省略するとして、CD3について多少の補足。オリジナル・アルバムは東京でトラック・ダウンした19曲に加えてロンドンでレコーディングした23曲の計42曲から17曲を選んだもので、ロンドンに行ってからつくった“ブツ”は間に合わず、そのまま日の目を見なかった。タイマーズでもなかなかに物騒なイメージが広がる“ブツ”は三宅伸治がリード・ヴォーカルを取る曲で、スタジオ・テイクがようやくここに収録されることに(ライヴ・ヴァージョンは『不死身のタイマーズ』に収録)。僕はその頃、たまたまロンドンに1週間ほど遊びに行っていて、タイマーズが来ていると聞いてスタジオに顔を出してみたら、その日は“覚醒剤音頭”のオーヴァーダビングをやっていた。ブックレットにはクレジットがないけれど、その時、スタジオにいた女性たち全員でコーラスをつけたら面白いということになり、原盤会社の相沢社長、マネージャーのたまき、そしてライターの水越真紀が「ツイホー!」と叫び、普段はクールにしている相沢社長が「ツイホー!」と叫ぶ姿に一堂、笑いをこらえきれず、レコーディングが終わるとスタジオ内が爆笑だったことを思い出す(これもライヴ・ヴァージョンが『復活!! The Timers』と『不死身のタイマーズ』に収録)。ちなみに僕は東京で “デイ・ドリーム・ビリーバー” に手拍子で参加しています。後拍で二連打です。CD3には“デイ・ドリーム・ビリーバー” の「2024 MIX」も収録されています。“Mama Please Come Back”はタイマーズだけでなくRCのライヴでもやっていた曲で、スタジオ・テイクは初収録。ライヴよりも雰囲気がぐっと濃厚になり、音の回り方がユニークな仕上がり。この曲は独特のベース・ラインがカンの “Vitamin-C” とまったく同じで、ちょっとビビります。 “BAKANCE” はベースのボビーこと川上剛が在籍していたヒルビリー・バップスに清志郎が提供した曲で、GS風の青春ポップスをレザー・シャープスのライヴ・アルバム『HAPPY HEADS』に続いてタイマーズとしてもセルフ・カバー。あまりにも爽やかでたじろぐアレンジだけれど、これと較べてみると宮城宗典がちゃんと自分の曲にして歌っていたこともよくわかる。 “LONG TIME AGO” は89年のヒロシマ平和コンサートで演奏したライヴ・ヴァージョンを収録。急にここだけ生々しくなり、収録された意図が不明確になる(全体に誰がどういう基準で選曲したのか趣旨を説明してほしかった)。
 さらに最後は“君はLove Me Tender を聴いたか?”。『コブラの悩み』に最初の30秒だけ収録され、すぐに途切れていた曲で、『コブラの悩み』と同じ年のクリスマス武道館で行われたRCサクセションのライヴでも披露された曲。タイマーズ名義のアルバムに収録されるのはどうなんだろうと思うけれど、正式なリリースとなったことは素直に喜びたい(実際にはリズム・マシーンを使って清志郎が1人で録音した曲であり、最初に世に出たのは武道館の10日ほど前に放送された「夜をぶっとばせ!」。清志郎はリスナーにカセットを用意してと呼びかけた))。『カバーズ』に先駆けて発売中止となったシングル“Love Me Tender”は “Summertime Blues”と違って反原発の歌ではなく、反核の歌であり、発売中止となったことでかえって広く知れ渡った状況を批評的に扱った側面と、石井さんが購読していた赤旗に書かれていた「原子力発電所で、実は核兵器をつくっているのではないか」と疑う記事の内容を合体させて表裏一体とし、そうとでも考えなければ発売中止にするほどの意味が理解できないという、いわば自らの上に降りかかった状況をきちんと整理して筋道をつけた曲である。題材と向き合う時に必ずしも客観性を重視しないニュージャーナリズムのような視点が活きていて、事件の渦中にあって混乱しがちな立場にもかかわらず、冷静に問題意識を明確にしているのはさすが。清志郎本人が自慢するポイントとしては“Love Me Tender”と同じコード進行で異なるメロディをつけたことだそうです。 『35周年祝賀記念品』を聴いていて、『カバーズ』の発売中止とタイマーズの活動を通じて清志郎が本当に感じていたことは、 「こんな でたらめな街を さよならしたいよ」(“タイマーズのテーマ”)と、「レコード会社も新聞も雑誌もFMも バ~カ~み~た~い~」(“君はLove Me Tender を聴いたか?”)という部分だったんじゃないかと僕は改めて思った。『生卵』の編集をしていた頃、「竜平くんには自分がいる狭い世界ではなく、もっと広い世界で活躍してほしい」と言っていたことを思い出す。

 RCサクセションのライヴが大阪であった際、メンバーとは別に清志郎さんだけを先に大阪に行かせ、「夜をぶっとばせ!」の収録を現地でやることになった。大阪に連れていくのは僕の役目になり、朝早く清志郎さんを起こしに行った。睡眠時間を確保する習慣がない清志郎さんはガン寝していてまったく起きる気配もなく、ただ僕はじりじりと玄関で待っていた。起きない……。起きない……。起きない……。起きない……。まだ鳩の森神社の近くにある狭い家に住んでいた頃で、ようやく目を覚ました清志郎が朝ごはんを食べている様子もなんとなく伝わってくる。この家に清志郎さんと2人でいた時、インターフォンが鳴って「ピザの配達です」とファンが押し入ろうとしたことがあった。そういうことはしょっちゅうあるらしい。玄関の前まで来たファンを清志郎さんは顔は出さずに「もうするんじゃないよ」とインターフォン越しに優しく諭していた。いまから思えばあまりにもアクセスしやすい家だった。朝ごはんを食べなければ絶対に外に出ない清志郎さんがようやく食べ終わり、タクシーに詰め込んで、なんとかオン・タイムで新幹線に乗せることができた。ガランとしたグリーン車にたった2人だけだった。「寝て行きますよね?」と清志郎さんに言うと「決めつけるなよ」とまた怒られてしまった。5分もしないうちに清志郎は寝ていた。
 2009年5月9日、清志郎さんが目を覚まさないと聞いた4万3000人のファンが青山墓地に清志郎さんを起こしに来た。大勢の人が清志郎さんの名前を呼んでいる。悲痛な声。か細い声。無骨な声。そうした声援に清志郎さんはまたしても応えない。今度こ清志郎は本当に目を覚まさなかった。会場の外にボビーこと川上剛がいた。「なかに入りたくなくて」と彼は言った。しばらくそこで昔話をした。どういうわけかガロン・ドランクの話で一番盛り上がってしまった。てっきり音楽を続けていると思っていた僕は川上剛がもう音楽はやめたと聞いて本当にショックだった。「無理ですよ」と言った彼の声はとても乾いていた。タイマーズなのに。タイマーズをやっていた人が音楽活動を続けられないのか。そんな国なのか。
 タイマーズ35周年、おめでとうございます。当分、あなた方の伝説を乗り越える才能は出て来ないことでしょう。


(川上剛の回想)


(パーこと杉山章二丸のお店案内)

ele-king presents HIP HOP 2024-25 - ele-king

ヒップホップ/ラップ・ミュージックの年刊専門誌が創刊!

たったいま、アメリカで起きていること、
これを読めば、USヒップホップの “現在” がわかる!!

現在のUSヒップホップのメインストリーム概観、乱立するサブジャンル解説、ヒップホップと大統領選、『ヒップホップ・ジェネレーション』の著者=ジェフ・チャンのインタヴュー、海外アーティストの来日ライヴ・レポート、そして、2024年ベスト・アルバム50を発表!!

Kendrick Lamar, MIKE, BossMan Dlow, Latto, Xaviersobased, Rapsody, Tyler, The Creator, Doechii, Common & Pete Rock, GloRilla, ScHoolboy Q and more...

菊判218×152/160ページ

目次

Intro (For the First Issue) 二木信

[巻頭対談]
歴史的ビーフからサウスの女性ラッパーの躍進、カントリーとの蜜月、ベテランの健闘まで
――2024年のアメリカのヒップホップでは何が起こっていたのか?(池城美菜子×渡辺志保)

[インタヴュー]
ミーガン・ザ・スタリオン、グロリラの元気と、タナハシ・コーツの勇気に出会えた年──押野素子
私の役割はコミュニティの歴史を伝えること──ジェフ・チャン(通訳:SRCFLP)
海外アーティスト来日ライヴ・レポート!──PoLoGod.×$hirutaro
ShotGunDandyが解説する2024年ベスト・パンチライン!

2024年ベスト・アルバム50
二木信、アボかど、池城美菜子、市川タツキ、イワタルウヤ、奧田翔 、小澤俊亮、小林雅明、島岡奈央、高久大輝、つやちゃん、野田努、長谷川町蔵、吉田雅史、渡辺志保

[コラム]
サブジャンルが乱立する2024年。シーンでは何が起きている?(アボかど)
あらゆる戦争が交差するストリートから生まれる音楽──bigsosとムスタファについて(磯部涼)
ラッパーほど信頼できる存在はいないだろ?──ヒップホップと大統領選(辰巳JUNK)
「USヒップホップ」の境界線をかく乱する──2024年のサウンドの冒険(つやちゃん)
2024年の怪物キメラへ──ビーフの裏側で誰が本当に殺されていたのか(緊那羅:Desi La/青木絵美訳)
アンビエント・ラップというオルタナティヴの発生現場(野田努)
私はアンチ・カーディ・Bじゃない──フィメール・ラップのいくつもの物語(島岡奈央)
50周年を迎えたヒップホップと「年齢」の壁(ネコ型)
ヒップホップ・メディアは「ほとんどがゴミ」なのか?──岐路に立たされるジャーナリズム(竹田ダニエル)
2024年のヒップホップ・カルチャーと社会──そして「政治」とは何か?(塚田桂子)
ラップの虚構性とキャンセル・カルチャー(小林雅明)
燃えつきることなく燃えつづける「反ポップ」のともしび──アンチポップ・コンソーティアムのふたりがそろって新作を出した年(小林拓音)

レコード店が選ぶ2024年のベスト10
ディスクユニオン/EBBTIDE RECORDS/HMV record shop 渋谷/Jazzy Sport Shimokitazawa/JET SET KYOTO/Manhattan Records/VINYL DEALER

BONUS TRACK まだまだあった! 2024年の見過ごせない注目作

[編集・監修者プロフィール]
二木信(ふたつぎ・しん)
1981年生。ライター。『素人の乱』(松本哉との共編著)、単著に『しくじるなよ、ルーディ』、企画・構成に漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』、編集協力に『ele-king vol.27 特集:日本ラップの現状レポート』、『文藝別冊 ケンドリック・ラマー』など。

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お詫びと訂正

このたびは弊社商品をご購入いただきまして誠にありがとうございます。
『ele-king presents HIP HOP 2024-25』に誤りがありました。
謹んで訂正いたしますとともに、お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

●36、39、52、55、94、97、114、117、130、133、136、149ページ ショルダー

誤 COLUNM
正 COLUMN

●101ページ 下段最終行

誤 ジャフ・チャン
正 ジェフ・チャン

●153ページ 右段チャート7番目

誤 BIGMUTHA
正 BbyMutha

●159ページ プロフィール記載漏れ

奧田翔(おくだ・しょう)
1989年3月2日生まれ。宮城県仙台市出身。2008年、大学入学を機に上京。入会したキックボクシング・ジムでかかっていたBGMをきっかけにヒップホップ/R&Bを聴き始める。主な仕事にケンドリック・ラマーらの国内盤ライナーノーツ、YouTubeチャンネル『HIPHOPで学ぶ英語』など。最近毎朝コールドシャワーを浴びている。

●159ページ 左段

誤 池城美奈子
正 池城美菜子

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