「MAN ON MAN」と一致するもの

Luke Slater × Burial - ele-king

 昨年のコード9との共同ミックスCD『Fabriclive 100』ではなぜかルーク・スレイターが2曲もとりあげられていたけれど、なるほど、きっとほんとうに好きなのだろう、先日ヴァイナルと配信でリリースされたばかりのスレイターの“Love”のリミックス盤にもまた、ベリアル本人によるリミックスがフィーチャーされている。原曲は1997年のスレイターのセカンド・アルバム『Freek Funk』に収録されていたミニマルなダンス・トラックで、ベリアルは大胆にクラックル・ノイズと幽霊的な音声を導入、じつに彼らしいサウンドへと生まれ変わらせている(ちなみに、ベリアルがリミックスを手がけるのは2017年のゴールディと Mønic 以来2年ぶり)。なお、同盤には他にマルセル・デットマンやサイレント・サーヴァントらのリミックスも収録されており、デジタル版にはスクーバも参加。これは必聴よね。

Artist: Luke Slater
Title: Love Remixes
Label: Mote-Evolver
No.: MOTELP05
Release: 17 May 2019

www.mote-evolver.com

Tracklisting:
A1. Love (Burial Remix)
A2. Love (Lucy Remix)
B1. Love (The 7th Plain Collage Remix)
C1. Love (Planetary Assault Systems Low Blow Remix)
D1. Love (Marcel Dettmann City Remix)
D2. Love (Silent Servant Remix)
Digital Bonus: Love (Marcel Dettmann Black Glove Remix)
Digital Bonus: Love (Scuba Bagleys Remix)

Technique / Jet Set / Amazon / Spotify

Vampire Weekend - ele-king

 前作『Modern Vampires of the City』から6年もの時を経て届けられたヴァンパイア・ウィークエンドの新作『Father of the Bride』を繰り返し聞きながら、ぼくは複雑な気持ちになっていた。なんだかノれない。いや、正確にいうと、今年1月にリリースされた最初のシングル、“Harmony Hall”と“2021”を聴いたときからそうだった。次のシングルである“Sunflower”と“Big Blue”、そして“This Life”と“Unbearably White”を聞き、ますますその思いは深まっていった。これらの楽曲からは、ある種の音楽的な保守性を感じていた。鮮烈な2008年の『Vampire Weekend』とそれに続く2010年の『Contra』、そして悩ましげな2013年の『Modern Vampires』をそれぞれ初めて聴いたときの驚き、“A-Punk”や“White Sky”、“Step”や“Ya Hey”の力強さは、そこにはなかったと言っていい。6年前に沈鬱な面持ちでニューヨーク・シティを眺めていた吸血鬼たちの姿は消え、代わりに見えてきたのは、陽光が降り注ぐLAでにっこりと笑ってわが子を抱えたエズラ・クーニグの姿だった。そう、クーニグ自身が語るように、「人生は進む」。後ろに進んだら大変だからだ。

 “Harmony Hall”のシンコペーションするピアノやクワイア、コンガの響きからはローリング・ストーンズの“無情の世界(You Can't Always Get What You Want)”を、あるいはそれを意識的になぞったプライマル・スクリームの“Loaded”や“Come Together”を思い出した。そして、スティーヴ・レイシーとの“Sunflower”や“This Life”のギターの音色(『Father of the Bride』はギターのアルバムでもある)からは、一貫してバンドの音楽にインスピレーションを与え続けきたアフリカのポップ・ミュージックにおけるそれを想起した。つまりそこから聞こえてくるのは、驚きや鮮やかさというよりは、ある種の安心感をともなった既視感、既聴感。ぼくは『Father of the Bride』を聞いて、西アフリカのザイールを代表するギター・ヒーロー、フランコのCDを引っ張り出してみたり、持っていなかった彼の作品をいくつか買い足したりした。それから、大陸南部にあたるジンバブエの、トーマス・マプフーモのミニマルで陶酔的だが同時に戦闘的なチムレンガに思いを馳せたり、キューバ音楽からの影響が色濃いギニアのベンベヤ・ジャズ・ナシオナルをランダムに聞いてみたりもした。そんなことをしながら、〈シラール・レコーズ〉のファウンダーであるイブラヒマ・シラの娘、ファンタ・シラが書いた記事「ヴァンパイア・ウィークエンドに父の遺産を聞いて」を興味深く読んだ。

 〈シラール・レコーズ(Syllart Records)〉は1981年に設立されたパリのアフリカ音楽レーベルで、セネガルのユッスー・ンドゥールやマリのサリフ・ケイタを西欧世界に送り出し、1980年代から1990年代の、いわゆるワールド・ミュージックという市場の確立、その興隆に一役買った(忘れられがちなことだが、北・西・中央アフリカに多くの領地を持っていたフランスは、ワールド・ミュージック市場の要地だった)。その設立者の娘、ファンタは姉から手渡されたヴァンパイア・ウィークエンドのファースト・アルバムを聞いたとき、そこに父が紹介した音楽からの影響を見て取って、誇らしい気持ちになったという。セネガルのンバラ、コンゴレーズ・ルンバやスークース、ズーク・マンディング、コール・アンド・レスポンス……。コロンビア大学の学生たちによる無邪気で知的なアフロポップ風のインディ・サウンドは、「文化の盗用」という以上に植民地主義的だったが、そこにもっとも自覚的になれるはずのシラ自身にとっても問題は複雑だった。彼女はヴァンパイア・ウィークエンドの音楽が好きだったし、大切なものにも感じていたからだ。だが同時に、批判をまぬがれえないともシラは考える。彼ら自身がつけたバンドの見事なコピー「アッパー・ウェスト・サイド・ソウェト」も、スークースやルンバから影響を受けている彼らの音楽にはふさわしいものでなく、ナイーヴだとすら彼女は感じる。どうしてコンゴのキンシャサじゃなくて、南アフリカのソウェトなのか? シラはそう問いかける。

 ここにあるのは、大陸のそこここで独自の文化と様式を持ち、発展している多様なアフリカ音楽の一面化やステレオタイプ化の問題だ。ビザの問題で自国外へのツアーが困難になっているアフリカの音楽家たちを思いながら、シラは「アフロポップ」、「アフロビーツ」、「トロピカル」、そして「ワールド・ミュージック」という曖昧なタームに疑問を投げかけている。彼女のテキストを意訳するならば、アフリカの音楽やミュージシャンたちには(自国でそうされているように)尊敬とともに適切な名が与えられることが必要だということだろう。「アフロポップ」や「ワールド・ミュージック」といった定義の定まらない、ふわっとした言葉をあてがうのではなく、ましてや西アフリカの音楽から影響を受けたニューヨークのバンドを「アッパー・ウェスト・サイド・ソウェト」と呼んでしまうのではなく。

 コンゴ民主共和国の複雑な歴史性とアイデンティティを反映したルンバ/スークースの影響下から離れたとき、バンドは新しい道筋を描き出すだろうとシラは結論づけている。しかしヴァンパイア・ウィークエンド=エズラ・クーニグは、『Modern Vampires』で一度手放したかのように思えた西アフリカの音楽の要素を『Father of the Bride』で自覚的に、再び呼び戻したかのように思える。もちろん、このアルバムを構成しているものはそれだけではないとはいえ、“Rich Man”ではシエラレオネのギタリスト、S.E.・ロジーの“Please Go Easy With Me”がサンプリングされており、先の“This Life”や“Flower Moon”はフランコのギターの音色や音楽を連想させる。クーニグはこのアルバムをインスパイアしたものとして、セガのテレビゲームや三宅一生、ガンダムのポスター、ノースフェイスのテント……といったものを挙げているが、そういったものを並べあげる前に、『Father of the Bride』を音楽的にインスパイアしたものをあきらかにするべきなのではないかと、ぼくは正直にいってそう思った。

 アメリカを憂いながらもクーニグが自身の人生と新たな生命、そして伴侶を祝福するこのアルバムを、だからといって聞く価値がないものだと切り捨てるつもりはない。特にクーニグの言葉には、これまで以上の鋭さや詩的な熱を感じさせるものがたしかにある。たとえば、「怒りは声を求め、声は歌を求める/やがて何も聞こえなくなるまで、歌い手たちはハーモニーを響かせる」(“Harmony Hall”)という詞はエコー・チェンバーの描写として見事だと思ったし、「ベイビー、憎しみは常に門の前で待ち構えている/朝出かけるときには鍵をかけたはずだったけれど」(“This Life”)というラインからは、ヘイトを外部にあるものとして一面的に遠ざけるのではなく、内在し、逃れえない感情として向き合う姿を感じさせる。

 吸血鬼たちのビルドゥングスロマンとしても聞くことができる三部作を経て、ひとつのフェーズを終え、役割をまっとうしたヴァンパイア・ウィークエンドというバンドは、『Father of the Bride』で新しい展開を見せている。クーニグがカニエ・ウェストのレコーディングに参加した経験を念頭に、一曲ごとに複数のミュージシャンを関わらせた制作手法やソングライティングは、これまでにない試みだろう。きっと、ここがバンドの新たな始点になる。ピッチフォークのマイク・パウエルはこのアルバムをボブ・ディランの『セルフ・ポートレイト』や『新しい夜明け』にたとえているけれど、そのアナロジーをじぶんなりに言い換えれば、『血の轍』や、あの苛烈な『欲望』とローリング・サンダー・レヴューはこのあとにやってくるということ。ぼくはヴァンパイア・ウィークエンドの音楽にもう一度驚かせてもらえると、そう信じている。

grooveman Spot - ele-king

 仙台を拠点に活動するDJ/プロデューサー、grooveman Spot によるビート・アルバム『Resynthesis』シリーズの第三弾である本作。ここ1年だけでも向井太一や iri といった人気シンガーや、ラッパーである ZORN のプロデュース、あるいは THE BLUE HEARTS のリミックス・アルバムなど、grooveman Spot はその幅広い音楽性を武器に様々なプロジェクトを手がけている。そして、ソロ・アーティストとしては、2014年にリリースされた『Supernatural』まで通算6枚のソロ・アルバムをリリースし、ヒップホップやR&Bだけでなく、ブギー、ファンク、ハウス、テクノ、アフリカなど、様々なダンス・ミュージックのスタイルをミックスさせ、自らのスタイルを作り上げてきた。その一方で、これまで『Resynthesis (Red)』(2016年)、『Resynthesis (Green)』(2018年)とリリースを重ねてきた、この『Resynthesis』シリーズに関しては、彼のルーツであるヒップホップに軸が置かれており、ソロ・アルバムとはまた別のカラーを持った、良い意味で非常に尖った作品になっている。

 これまでの『Resynthesis』シリーズと同様に、今回の『Resynthesis (Purple)』で表現しているサウンドは、個人的には90年代後半から2000年代にかけてのアンダーグラウンド・ヒップホップがときおり思い出される。しかも、それはどちらかと言えば、あの当時のアンダーグラウンド・ヒップホップの中でも亜流と言われるような、ダークでノイジーなヒップホップの中にエレクトロニカやブレイクビーツといった要素がミックスされたようなサウンドであり、日本で言えば、INDOPEPSYCHICS(インドープサイキックス)がやっていたようなことにも近い感触だ。ただ、それはこのアルバムにノスタルジーを感じているからというわけではなく、むしろその逆で、2000年以降の様々なスタイルのヒップホップを内包した上での、1歩も2歩も先を行く、未来のサウンドが本作には詰まっている。ちなみに“Pegasus”という曲に関しては、明らかにJ・ディラへのオマージュとして作られているのだが、もし、J・ディラがいまも生きていたら、あの名盤『Donuts』の続編として、こんなアルバムを作ったのでは?とも、勝手な想像さえも膨らんでしまう。

 もともと、grooveman Spot 自身がダンサー出身ということもあるだろうが、この『Resynthesis』シリーズはヒップホップ・ダンサーにも人気が高い。サンプリングだけでなく、おそらくヴィンテージのシンセサイザーなども駆使して、直感的でありながらも、実に複雑に絡んでいくエッジの効きまくったビートに、ダンスという表現方法が見事にピッタリとハマるのは納得できる。ただ、ないものねだりであるが、このスタイルのビートだけで構築された、ラッパーやシンガーをフィーチャーした作品も、個人的には聴いてみたいとも思ったりもする。ジャジスポさん、いかがでしょうか?

釣心会例会 - ele-king

 これはよだれだらだらの組み合わせです。食品まつり a.k.a foodman が地元・名古屋にて続けているパーティ《釣心会例会》がなんと渋谷 WWWβ で開催、しかもシカゴのフットワークの巨星 RP Boo を招きます。名古屋からはツチヤチカら、Free Babyronia、東京からは脳BRAIN も参加するとのことで、なんとも贅沢な一夜になりそうです。6月15日はβに集合~。

食品まつり a.k.a foodman が名古屋にて主宰するロングラン・パーティ「釣心会例会」が最新アルバムを引っさげ再来日のシカゴの魔人 RP Boo と地元から 6eyes のフロントマンでもあるツチヤチカら、〈AUN Mute〉のFree Babyronia、東京からコラージュDJ 脳BRAIN を迎え WWWβ にて再始動。

- 食品まつり a.k.a foodman a.k.a 樋口爆炎 より

2004年から名古屋にて不定期開催している私主催のパーティー「釣心会例会」を渋谷WWWβにてスタートする運びとなりました。名古屋で開催時は地元の友人と一緒にクラブや路上、人の家、山の中など場所/ジャンルを変えながら開催してきましたが、今回15年の歴史の中で初めて県外での開催になります。

1発目はシカゴからジューク/フットワークのオリジネーターの一人であり3年ぶりの来日となるRP BOO師匠をお迎えして、「都会的な土着感」をテーマにしたパーティーを行いたいと思います。

国内のゲストとして名古屋からはレジェンド的ポストロックバンド6eyesのフロントマンであり、呂布カルマさんとのコラボも話題のツチヤチカらさんのソロプロジェクトと、名古屋拠点のレーベル〈AUN Mute〉を主催し、CampanellaさんやNero Imaiさんなどのビート提供もしつつビート・ミュージックをベースにしたノイズ/エクスペリメンタルなスタイルのライブが凄まじいFree Babyroniaさん。東京からはコラージュ、アバンギャルド的なスタイルでDJの概念を超えたパフォーマンスで話題の脳BRAINさんをお呼びました。

名古屋でやってた時の雰囲気そのままにお届けしたいと思っておりますので、肩の力を抜いてフラっとお越し下さいませ♨

釣心会例会
2019/06/15 sat at WWWβ
OPEN / START 24:00
ADV ¥1,800@RA | DOOR ¥2,500 | U23 ¥1,500

RP Boo [Planet Mu / Chicago]
Free Babyronia [AUN Mute / Nagoya]
ツチヤチカら [6eyes / Nagoya]
食品まつり a.k.a foodman [Nagoya]
脳BRAIN

※You must be 20 or over with Photo ID to enter.

RP Boo [Planet Mu / from Chicago]

本名ケヴィン・スペース。シカゴの西部で生まれ、80年代に南部へと移住し、 多くのジューク/フットワークのパイオニアと同じようにシカゴ・ハウス/ジュークの伝説的なダンス一派 House -O-Matics の洗礼を受け、〈Dance Mania〉から数多くのクラシックスを生み出したゲットー・ハウスのパイオニア Dj Deeon、Dj Milton からDjを、Dj Slugo からはプロデュースを学び、それまであった Roland のドラム・サウンドの全てにアクセス、またパンチインを可能にした、現在も使い続ける Roland R-70 をメインの機材にしながらトラックを作り始め、1997年に作られた“Baby Come On”はフットワークと呼ばれるスタイルを固めた最初のトラックであり、その後1999年に作られたゴジラのテーマをチョップしたゴジラ・トラックとして知られる“11-47-99”はシーンのアンセムとなり、数多くのフットワークのトラックに共通する無秩序にシンコペートするリズム・パターンは RP Boo のトラックに起因すると言われる。地元では秘蔵っ子 Jlin も所属するクルー D'Dynamic を主宰し、〈Planet Mu〉よりリリースのフットワーク・コンピレーション『Bangs & Works Vol.1』(2010)、『Bangs & Works Vol.2』(2011)に収録され、2013年にデビュー・アルバム『Legacy』、2015年にセカンド・フル『Fingers, Bank Pads & Shoe Prints』を同レーベルより発表。2016年には初期のクラシックスを収録した「Classics Vol. 1」や新録「The Ultimate」を発表。フットワークの肝である3連を基調とした簡素なドラム・マシーンのレイヤーとシンコペーションによる複雑かつ大胆なリズムワークに、コラージュにも近いアプローチでラップのような自身のヴォイスとサンプリングを催眠的にすり込ませ、テクノにも似たドライでミニマルな唯一無二の驚異的なグルーヴを披露。古代から発掘されたフューチャー・クラシックスとも称され、先鋭的な電子音楽やアヴァンギャルドとしてもシーンを超えて崇められるフットワークの神的存在。2018年に最新アルバム『I'll Tell You What!」を〈Planet Mu〉より発表。

https://soundcloud.com/rp_boo

Foodman [Nagoya]

名古屋出身のトラックメイカー/絵描き。シカゴ発のダンス・ミュージック、ジューク/フットワークを独自に解釈した音楽でNYの〈Orange Milk〉よりデビュー。常識に囚われない独自性溢れる音楽性が注目を集め、七尾旅人、真部脩一(ex相対性理論)、中原昌也などとのコラボレーションのほか、Unsound、Boiler Room、Low End Theory 出演、Diplo 主宰の〈Mad Decent〉からのリリース、英国の人気ラジオ局NTSで番組を持つなど国内外で活躍。2016年に〈Orange Milk〉からリリースしたアルバム『Ez Minzoku』は Pitchfork や FACT、日本の MUSIC MAGAZINE 誌などで年間ベスト入りを果たした。2018年9月に〈Sun Ark / Drag City〉からLP『ARU OTOKONO DENSETSU』、さらに11月にはNYの〈Palto Flats〉からEP「Moriyama」を立て続けにリリース。2019年3月には再び〈Mad Decent〉からEP「ODOODO」をリリースした。

https://soundcloud.com/shokuhin-maturi

Free Babyronia [AUN Mute / Nagoya]

ペルー、リマ出身、日本在住。2005年頃より楽曲制作を開始。名古屋を拠点にライブ活動を行い、様々な名義で創作活動を行う。2012年にレコード・レーベル〈AUN Mute〉を設立。Campanella、Nero Imai などラッパーへのトラック提供や、Red Bull Music Academy Bass Camp への参加、イギリスの大型フェス Bloc が主宰したドキュメンタリー・フィルムに楽曲を提供、未来科学館で行われたインスタレーション「INSIDE」のサウンドを担当するなど活動は多岐に渡る。2018年には RCSLUM の MIX CD 部門、ROYALTY CLUB から「MUSIC OF ROYALTY SELECT」をリリース。同年にフルアルバム「PARADE」を〈AUN Mute〉よりリリースする。

https://soundcloud.com/yukiorodriguez

ツチヤチカら [6eyes / Nagoya]

ロック・バンド 6eyes のフロントマンとして活動。2018年10月半ば突如、ツチヤチカら名義で自身の iPhone 内のアプリ GarageBand で制作したオリジナル曲を SoundCloud にアップし始める。100曲アップロードを目標とし作られた Big Beat for 201x という名のプレイリストには様々なジャンルの曲が約半年で65曲がアップされるというハイスピードなペースで更新され続けている。ツチヤチカら曰く「現代にポケットに入ってる iPhone の GarageBand で曲を作るということは文字通り、60's の若者達がエレキ・ギターを手に取りガレージでバンドを組んで衝動に任せて演奏していたのと同じ事なんだ。」

https://soundcloud.com/chikara-tsuchiya

脳BRAIN

東京都在住。78年生まれ。10代後半から現代音楽、実験音楽の音盤収集と同時にカセットMTRにて宅録を始める。1st『Cock Sucking Freaks』、2nd『L.S.D BREAKS』、初のミックスもの『WHITEEYES』を2019年初頭にリリース。各タイトルのCD-R版をロスアプソン、ディスクユニオンにて販売中。幡ヶ谷フォレストリミット『K/A/T/O MASSACRE』『ideala』を中心にDJを行なう。

https://acidamanner.bandcamp.com/track/--2

Emily A. Sprague - ele-king

 覚えていますか? フロリストのあのいまにも壊れそうな、だがそれでいてどこか生命の力強さのようなものを喚起させる音楽を。同バンドでなんともはかないヴォーカルを響かせていたのがエミリー・スプレーグである。彼女はフロリストの活動を続けるかたわらアンビエント作品の制作も進めていて、すでに『Water Memory』『Mount Vision』という2作をカセットで発表しているのだけれど、即完したというそれら2作がなんとテイラー・デュプリーの手によってリマスタリングを施され、〈RVNG〉によって復刻されるというのだから落ち着かない。日本盤ボーナストラックには工藤キキも参加しているらしい。詳細は下記よりチェック。

大注目のアンビエント・アーティスト、Emily A. Sprague が自主カセット・リリースし即完したアンビエント作品2作がリマスター&ボーナス・トラック追加してリリース!
シンセサイザーを駆使してアンビエント~ニューエイジを横断する夢幻/無限の桃源郷サウンドスケイプ!
日本盤のみオリジナルのアートワークを使用した独自紙ジャケット、ボーナス・ディスク付き2枚組仕様!

Mitski、Frankie Cosmos、Hatchie なども輩出してきた、〈Double Double Whammy〉から作品をリリースしている、ブルックリンのローファイ・フォーク/ポップ・バンド、Florist のフロントマン、でヴォーカル、ギター、シンセサイザーなどをマルチに担当する Emily Sprague。2017年から2018年にかけて彼女がバンド活動の合間を縫って録音し、自主リリースしていたアンビエント作品2作『Water Memory』『Mount Vision』が、彼女の才能に着目したNYの最先鋭レーベル〈RVNG〉よりリマスター、ボーナス・トラックを追加してフィジカル化。

エミリーのサウンドは全ての繋がりに関係しており、地上の活動に人との触れ合いを導く神秘的な力に生き生きとした中心的形を与えている。
音と詩を通して、エミリーは水晶の透明性の束の間の瞬間に焦点を合わせ、複雑な意味作りのために拡張された人生について瞑想する。このビジョンは間違いなく美しく、やさしく、そして深い。
この2つの作品は海と山というタイトルからも分かるように対をなす鏡のような構造を持ち、書かれた詩によって補完される2つの章として機能している。

『Water Memory』はエミリーによる初めてのロングフォームのインストゥルメンタル・アンビエント・ミュージックで、マサチューセッツとニューヨークの間でユーロラック・モジュラー・シンセサイザー(Monome、Mannequins、Mutable Instruments、ALM Bust Circuits、4ms、Xaoc、Verbos Electronics)、Teenage Engineering OP1、および Valhalla VST Reverb を使用し、1年間の自己と音の探求によって生まれた。
古代の格言集のように展開する。時々遊び心があり、幻想的でさえあるが、常にきらびやかでリアルだ。タイトルのように、意味は水性であり – 決して固すぎず、あくまで実態がある。
対照的に、『Mount Vision』はカリフォルニア北部でもっと短い期間で録音された。シンセサイザーを駆使し、ディープに配された拡張トーンのコンポジションが天空へと漂っていくようなサウンド。ニューエイジ調のシンセ・ドローン、センシティティヴなピアノ、ミニマル・アンビエントが3編に渡って構成されている。

この惑星におけるエミリーの使命は、人間の最も深い知識と知的な性質との間の接続を容易にする、または明るくすることであろう。そして、『Water Memory』、『Mount Vision』は、この共有経路に沿った最も確かに記念碑的作品である。

今回のリリースにあたりリマスターは Taylor Deupree が担当。日本盤には追加ボーナス・トラックに加え、エミリーがそれぞれの作品に書いたポエムを Anthony Naples によるレーベル〈Incienso〉からも作品をリリースしているNY在住の日本人アーティスト/ライター、工藤キキが日本語で朗読したタイトル・トラックの日本語バージョンも収録。

Artist: Emily A. Sprague
Title: Water Memory / Mount Vision (Special Japanese Edition)
Cat#: ARTPL-116
Format: 2CD

※解説:佐々木敦(HEADZ)
※オリジナルのアートワークを使用した独自紙ジャケット
※ボーナス・ディスク付き2枚組仕様

Release Date: 2019.06.07
Price (CD): 2,300 yen +税

TRACKLIST:
01. Water Memory Poem
02. A Lake
03. Water Memory 1
04. Water Memory 2
05. Dock
06. Your Pond
07. Mount Vision Poem
08. Synth 1
09. Piano 1
10. Synth 2
11. Huckleberry
12. Synth 3
13. Piano 2 (Mount Vision)
14. Outdoor (Bonus)

BONUS DISC FOR JAPAN:
01. Water Memory Poem (Japanese – Kiki Kudo)
02. Blessings
03. Mount Vision Poem (Japanese – Kiki Kudo)
04. Untitled

■ Emily A. Sprague

幼少期に母の教えでピアノを始める。11歳の頃からギター・レッスンを受け始めたものの、一旦やめてしまうが、14歳の時に再びギターを弾き始め、本格的にソング・ライティングに興味を持つ。その後バンド Florist を結成し、2013年に6曲入りEP「We Have Been This Way Forever」でデビュー。もう1枚の自主制作EPを経て、〈Double Double Whammy〉と契約し、2015年にリリースしたEP「Holdly」で Stereogum の「50 Best New Bands Of 2015」に選出される。2016年に『The Birds Outside Sang』、2017年に『If Blue Could Be Happiness』の2作のアルバムを発表し、インディ・ミュージック・リスナーから多くの支持を受ける。その活動と並行し、Emily はモジュラー・シンセサイザーを用いたアンビエント・ミュージックの制作を開始しセルフ・リリースした『Water Memory』、『Mount Vision』が高い評価を得ている。

interview with Ralf Hütter(Kraftwerk) - ele-king

 発電所(kfarftwerk)がない世界に戻ることは、ジブリの映画でもない限り想像が難しい。音楽においてもそうだ。クラフトワーク(発電所)はなかったと、いまから音楽を作ろうとしている人間のなかで、そう言えるひとはあまり多くはないだろう。
 テクノロジーの問題はたしかにある。終末論的にそれはかねがね題材にされてきている。が、しかし、クラフトワークはテクノロジーに対して基本的にニュートラルな立場でいる。もちろん、その中立から降りることは、たとえば“レディオアクティヴィティ”のような曲をいま演る場合は起こりうる。クラフトワークはつまり、原子力“発電所”に対する反対の立場をはっきりさせているし、そうした政治的な声明を恐れることもない。
 とはいえクラフトワークがテクノロジーそのものを批判することはそうそうないし、かといって『コンピューター・ワールド』がコンピュータ礼賛のアルバムであるはずもない。ただあのアルバムは、エレクトロニクスの応用が音楽を更新させるという意味において明らかに未来的だったし、いま現在のクラフトワークの基盤となっていると言ってもいいだろう。今回の来日ライヴ(4/16~4/19まで東京、22日大阪)においても、“ナンバーズ”の非の打ちどころがないエレクトロニック・グルーヴはショーの1曲目だったし、座席で座って聴くには酷ともいえる、それは’あまりにも躍動するダンス・ビート・ミュージックだった。

 1946年生まれのラルフ・ヒュッターは、いうまでもなくクラフトワークの中枢である。ヒュッターより1歳下のフローリアン・シュナイダーと1968年に出会ったことで、やがて音楽を電子化するプロジェクトの胎動がはじまった。1970年にそれがクラフトワークとなったときには、しかしまだ試行錯誤の状態、いわゆる“初期段階”だった。1973年までのあいだに残した最初の3枚のアルバムはある時期から公には封印され、いっぽうでジュリアン・コープのようにその3枚こそが名作であるという極端な意見も後を絶たないが、しかしながら、シュトックハウゼン風の電子音楽やフルクサスからの影響の名残もあるこの“初期段階”が完璧にクラフトワーク史から切り離されていないことは、セカンド・アルバムの1曲目が彼らのスタジオ名=クリング・クラングになっていることからもうかがい知れる。
 だが、いま存在するクラフトワークは1974年の『アウトバーン』以降のそれである。『コンピューター・ワールド』以降の、強力なエレクトロニック・ダンス・ビートを有するプロジェクトであり、さらにまた、たったいま存在するクラフトワークは、ヒュッターをはじめ、へニング・シュミット、フリッツ・ヒルバート、そして映像を操るファルク・グリーフェンハーゲンの4人によるオーディオ・ヴィジュアル・プロジェクトとしてのそれである。

 4月18日の午後、渋谷のBunkamuraオーチャードホールの小さな楽屋には、ラルフ・ヒュッターが取材のために佇んでいた。海外の記事を見るにつけ、気むずかしく、ときに取っつきづらいという、エレクトロニック・ミュージックの世界においてはなかば神のごとく尊敬されているこのドイツ人はなんともリラックスしているようだった。風評とは違って、質問者の緊張感を煽るような仕草はない。もちろん、宇宙から帰還した宇宙飛行士のようでもなかった。黒いポロシャツ姿のヒュッターは、ぼくたちに与えられた30分のあいだ丁寧に答えてくれたと思う。取材にはクラフトワークのライヴを1981年の初来日以来、日本およびUKのおいても何度も観ている赤塚りえ子さんに同行してもらった。ぼくはゆっくり録音機のボタンを押した。

みなさんが知っているように、私たちは1968年の世代です。なので、こうしたムーヴメントは私たち歴史の一部のようなものです。アートは社会にインパクトを与えるものです。芸術の自由やクリエイティヴィティがいまの社会にはもっと必要だと思います。

ドイツ語の通訳を手配できませんでした。申し訳ないです。とはいえ彼女は良い通訳なので。

ラルフ:なにも問題ないよ。私はフランス語も喋るし、ヨーロッパに行くときはイタリア語やロシア語も使います。日本語は喋れないけど……。デュッセルドルフにはとても大きな日本人コミュニティがあります。たくさんの日本の企業も入ってきてるし、デュッセルドルフから日本まで直行便も出てるんです。私も今回それに乗ってきました。とてもレアなんですよ。普段はフランクフルトからしか直行便が出てないんです。
 大昔に日本人の友だちに“Pocket Calculator”を“電卓”へと訳してもらいました。なので、私は日本語は喋れないけど日本語で唄います。

通訳:喋りはできないけど、日本語と触れてきたということですね?

ラルフ:そうです。わりと最近では、私の友だちの坂本龍一が“レディオアクティヴィティ”の歌詞の一部を訳してくれました。ですから、いまでは“レディオアクティヴィティ”も日本語で歌ってます。

ラルフ:今夜のライヴは見にきますか?

ぼくたちは明日行きます。ちなみに彼女は、6年目の赤坂Blitzも、1981年の来日ライヴも観ているんですよ。

赤塚:81年の『コンピューター・ワールド』ツアーのライヴですね。

ラルフ:81年! 私たちが初めて日本に来たときですよね? たしか。

赤塚:ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールのライヴも観にいきました(笑)。

ラルフ:去年のですか? いや、2年前か。

赤塚:2年前です。

ラルフ:あのロンドンでのライヴの後には、デュッセルドルフでやりましたよ。

そろそろはじめましょうか。

ラルフ:そうですね。

渋谷の街は歩かれましたか? 来年のオリンピックを控え、東京がいまものすごいスピードで再開発されているのがおわかりだと思いますが、どのような印象を持たれましたか?

ラルフ:ドイツではみんながオリンピックに対して反対しました。立候補として上がったときにドイツ国民が反対したんです。オリンピック自体が古すぎる文化だからです。

通訳:投票をしたってことですか?

ラルフ:はい、投票が行われました。次のオリンピックじゃなくて、もっと先のオリンピックだったと思います。そもそもオリンピックというのは、19世紀のものなんですよ。

通訳:ほとんどの国民が反対したんですか?

ラルフ:そうです。バカなことにお金を使いすぎだと思います。そうですね、だから、あ、でもハチ公は見ましたよ(笑)。

通訳:ハチは変わってないですもんね(笑)。

ラルフ:そうです(笑)。

ブレグジットや黄色いベスト運動など、ヨーロッパはいま政治的に揺れ動いていますが、こうした状況がクラフトワークに影響を与えることはありますか?

ラルフ:みなさんが知っているように、私たちは1968年の世代です。なので、こうした(政治的)ムーヴメントは最初から私たち歴史の一部のようなものです。アートは社会に衝動を与えるものです。芸術の自由やクリエイティヴィティがいまの社会にもっとも必要なものだと思います。

通訳:こういう運動や問題があなたに刺激を与えるってことなんですね?

ラルフ:ちょっとコーヒー飲んでもいいですか? まだ時差ボケがあって……夜中に3時間ほど目がさめるんです。そのあとは普通に寝れるので大丈夫なんですけどね。生活リズムが変わっただけです。

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私たちの音楽は最初から先見の明がありました。流行を意識して作ったわけでありません。それは時代を超越したなにかです。クリング・クラング・スタジオそのものがコンセプトでした。

21世紀に入って2枚のライヴ・アルバム(2005年の『ミニマム・マキシマム』と2018年の『3-D The Catalogue』)を出しましたが、いまのあなたは新しい曲を作ることより、昔の曲をどのように更新することができるのかということに関心があるのでしょうか?

ラルフ:私たちの音楽は最初から先見の明がありました。流行を意識して作ったわけでなかったんです。それは時代を超越したなにかでした。クリング・クラング・スタジオそのものがコンセプトでした。マルチメディアがクラフトワークのコンセプトであり、すべてのコンポジション(作曲)がコンセプト・コンポジション(概念の作曲)みたいなものです。変えたり、足したり、即興したり、再プログラムもできます。マンマシーンがそこでいろんな心理的かつ物理的な部分で稼働します。クラフトワークは私、そして当時のパートナーだったフローリアン・シュナイダーがエレクトロ・アコースティックをコンセプトにはじめました。そのときのコンセプトを元に、ほかのアーティトやミュージシャンやテクニシャンと一緒に制作をするようになりました。マンマシーンは段階を踏んだり、変わり続けたりしています。いまの時代に関連性があるからこそ“レディオアクティヴィティ”も再プログラムしたんです。1975年のテーマが現代のテーマとしても存在していますよね。

通訳:常に成長したり、変わり続けているってことですか?

ラルフ:はい。ツール・ド・フランスの2003年の100回目記念のタイミングでアルバム『ツール・ド・フランス・サウンドトラック』をリリースしましたが、去年はオープニングを飾らせてもらいました。いわばスポーツ・オーケストラと私たちが興味を持っているアートとを融合させたような試みでした。「科学」、「アート」、「社会」、これらは分けて使うべき言葉ではないと思います。私たちは同じ世界で生きていて、アーティストは音楽に止まらず、社会的創造性に関与しています。音楽が文献や映画と関連性があるからこそ、私たちはアニメーションやCGを使うんです。私はクラフトワークで使うヴィジュアルにとても興味があります。それは言語のようなものだと考えています。言葉で伝えることもありますが、イメージや音楽でしか伝えられないものもあると思います。つまり総合芸術ですね、いまもっとも興味があるものは。

もともとパーカッションが2人いましたが、1980年代以降のクラフトワークは、1970年代よりもリズムに重きがおかれていますよね。実際、ディスコやクラブでもヒットしていました。いま現在のテクノロジーにおいて、電子化されたリズムにはまだまだ開拓の余地があるとお考えでしょうか?

ラルフ:70年代にパーカションが2人いたのは、当時もマシーンをある程度使っていて、しかしまだ不安定であって、リズムを安定させないといけなかったからです。1990年代からはコンピュータやシークエンスを導入したので、いまはもう2人は必要ないんです。いまは境界線のないプログラムされたリズムやアニメーテッド・リズムがあり、人間のメカニカル・スキルも高いです。70年代はメンタル・プログラミングをする方法を探していたんですけど、まだ存在していませんでした。知ってると思いますけど、昔のコンピュータはめちゃくちゃ大きかったんですよ。90年代からはラップトップが普及して、そこから専門業界でしか使えなかったツールが私たちも使えるようになったんです。お陰様で音楽の方向性が大きく変わりましたよね。

通訳:探し求めていたリズムを見つけることができたってことですか?

ラルフ:そうです、そうです。1976年に使っていたひとつのアナログ・シーケンスがあったんですけど、すごく大きなノブが付いていて、じつに不安定でした。いちどパリでのライヴ中にパリ内の大きな工場が次々と閉まっていて、エレクトロ・システムにショックが起きてしまい、私のアナログ・システムが全部消えてしまい、テンポもめちゃくちゃになってしまったことがありました。いまはすべてがパソコンのデータにあり、安全に機能しています。

赤塚:数年前に〈クラフトワーク 3D CONCERTS 12345678〉の日本ツアーを拝見しました。2016年はロンドンで3Dコンサートを拝見させていただきました。今回のライヴは3Dというカタチのコンサートの集大成なのでしょうか?

ラルフ:いや、まだまだ発展しますよ。すべてがライヴですから。赤坂で披露したパフォーマンスは2012年にニューヨークのMOMAではじまったものでした。「Ktaftwerk catalogue」としてのライヴです。6枚のアルバムたちに捧げる形を6時間かけて披露しようと考えたんですよ。しかしひと晩ではとても無理があったので、ひと晩で1枚のアルバムを演奏することにしました。とはいえ、『レディオアクティヴィティ』はヴァイナルで40分しかないレコードだったので、さすがにそれは短かすぎるということで、他の作品からの曲を混ぜてやりましたけどね。
 この形のライヴはホッケンハイムやLAのディズニー・ミュージアム・コンサートホール、ニュージーランドやベルリン美術館、シドニー・オペラハウス、そして赤坂Blitzでやりました。ミュージアム・カタログが終わった後はまたコンサートホールやフェス、ツール・ド・フランスでもやるようになりました。サラウンドサウンド・スピーカーを設置できるところではサラウンドサウンドを使って、同時にまた3Dヴィジュアルも使いました。
 今回はいろんなアルバムからいろんな曲を持ってきて、混ぜて2時間のライヴをやっています。いまのところ2回しかやっていないんですけどね。最後にやったのがベルリンのオリンピック・スタジアムでした。オリンピックには反対しますが、ライヴのために会場は使っています(笑)。

ライヴをやっていくなかで、曲に込められた意味は、それが作曲された当時から変わることはあるのでしょうか? たとえば、“レディオアクティヴィティ”はあの曲が作られた1975年のときとは違った、よりシリアスな問題提起になっていると思いますし、“ロボット”という曲が作られた1978年は、AIがいまのように普及し、“ロボット”が身近に感じられるようになる今日よりも、ずいぶん前の時代でした。

ラルフ:気持ちは確実に違います。“ロボット”の歌詞は1977年~78年に書きました。あの歌詞では、ロボットは私たちが求めることをなんでもやってくれると歌っています。しかしこの場合のロボットという表現はマシーンの暗喩ではなく、クラフトワークにはロボットのような資質があるという意味を込めています。ロボットはチェコ語で「労働」、「働く」という意味です。それが語源です。この曲は労働について歌っていて、ゆえに少しブラックユーモアも込められています。
 私たちは踊るメカニックです。クラブに行けば人はロボット・ダンスを踊っていますよね。ある種の社会学的素質みたいなもの説明しているような感じです。前回の赤坂ライヴではロボットを披露していませんでしたが、今回はしっかりプログラムして持ってきていますし、今夜から披露できます。昨日は不備があって使えなかったんです。税関でチェックされてるときに壊されてしまったんです。しかしなんとか再プログラムができたので、今夜はしっかり見れますよ。
 曲に込められた意味がよりリアルになることもあります。(その主題は)時間と人間と関わりがありますから。ときに成長をしたり、ときに減少したりもします。ヨーロッパや日本、韓国、来月行く予定の香港など、行く国によって曲のテーマがよりリアルになることもあります。
 質問の後半ってなんでしたっけ?

“レディオアクティヴィティ”もそうですよね?

ラルフ:そもそも“レディオアクティヴィティ”はコンビネーションについての曲でした。エレクトロニック・ミュージックとラジオとの関連性はとても重要です。エレクトロニック・ミュージック自体がラジオ局やラジオのツールから生まれてきたものですからね。昔はフランスやドイツで深夜ラジオから流れるエレクトロニック装置の音を聞いていたんですよ。
 放射能は、ドイツと日本にとってよく議論されるテーマですよね。何年か前に東京で行われた(坂本龍一主宰の)〈No Nukes〉に出演しました。そのとき坂本龍一が私の歌詞を少し日本語に訳してくれたんです。いまでも訳してもらったまま歌っています。私たちの音楽はオープンでシンフォニックなコンセプトがありますから。おかげさまで、“レディオアクティヴィティ”には「日本の放射能」という日本語の歌詞が入りました。私は日本語は喋れませんが、音声的に歌えるように龍一が訳してくれたんです。だからいまは歌えています。
 私たちの音楽は時代とともに変わります。印刷をすればモノが完成するという出版物とは違います。(曲は)生きているし、時間とともに働きます。私たちはアートの世界から来たんです。人生のなかのハプニングがアートになり、60年代後期の出来事から生まれています。映像やヴィジュアルや言語とともに作り上げているんです。
 そうだ、あなたがたにあとでロボット見せましょうか?

一同:ぜひ!

ラルフ:ただ、ときどきロボットを見た途端、私たちに興味をなくす人たちがいるんです(笑)。ただ興味をなくすんです。じつに興味深いリアクションですよね。

『MIX』のころから、ライヴやアートワークで自分たちをロボットに見立てていますよね。

ラルフ:マシーンへの感嘆なんですよ。だから私はクラフトワークがマシーンであるという風に歌詞を書いたんです。音楽の世界では人間とマシーンのあいだにインタラクションがあります。ミュージック・マシーンと表現していただいてもいいです。マンマシーンは人生のなかの人間である証明になる心理やシチュエーションを表現しています。マシーンとともに生きるという表現もあります。さっきも話したように昔はパワー障害で音が使えなくなったというのに、昨日はリハーサルで一瞬トラブルがあり、2秒ほど音が止まってしまいました。が、すぐに何もなかったかのように元どおりになったんです。

ロボットに関して、デトロイトのマイク・バンクスが英『WIRE』の取材で、とても面白いことを言っています。自分たちの影響がクラフトワークで良かったのは、ロボットには人種も年齢もないからだと。こうした解釈をどのように思いますか?

ラルフ:マイク・バンクスは仲の良いデトロイトの友だちです。90年代にイギリスで行われたテクノのフェスティヴァルで共演したんです。

赤塚:私もそこにいました!

※1997年のトライバル・ギャザリング:フェスの開催中にクラフトワークのライヴがはじまると、デトロイト・テクノのテントはリスペクトを込めて自らそのテントを閉めた。また、今回のライヴにおいても、クラフトワークが21世紀に発表している数少ない新曲のうちのひとつ、“Planet Of Vision”(“エキスポ2000”のURリミックスが元になっている)を演奏し、ドイツとデトロイトとのテクノ同盟を主張している。ちなみにその歌詞のサビはこうだ。「Detroit Germany We're so electric」

ラルフ:マイクがいう、人種を越えているという解釈は真実だと思います。彼は正しいことを言っています。音楽になんらかの価値があるとすれば、それは音楽がオープンであるところ、音楽を使って通信ができるところ、音楽に波があることや音楽というもののイメージが分離されておらず、劣化もしないところだと思います。
 ベルリンの壁がまだ建っていた頃、私たちは東ドイツでライヴをすることが許されていませんでした。でもラジオ波は壁を越えました。そして壁の向こうにいる人たち、ロシアやポーランドやチェコにいた人たちが私たちの音楽を聴いていたんです。1989年に壁が崩壊したその年に初めてベルリンでライヴができたんですけど、お客さんがみんな私たちの音楽を知っていました。壁は物理的にその場所に行くことを防ぐことはできても音楽を止めることはできませんでした。音楽とラジオ波はグローバルなんです。
 そうそう、もうひとつ言わなければならないのは、私たちはもちろん60年代のモータウンやソウル、ファンクなどのデトロイト・ミュージックにインスパイアされていたということです(笑)。

ここ数年のクリング・クラング・スタジオにおける……

ラルフ:あ、もうひとつ言い足してもいいですか? 私たちはホアン・アトキンスとも仲がいいんです。彼はクラフトワークのシーケンスにインスパイされてサイボトロンを結成したアーティストです。こうして、音楽が人を繋げたり、お互いにインスピレーションを与え合ったりできるきっかけにることは、素晴らしいことですよね。あ、ごめんなさい(笑)。

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私が自転車で大怪我を負ったというのはフェイクニュースです。別の年にいちど転んだことはありましたけど。そのときは3~4日病院で過ごしました。で、前にフェイク・ニュースを流されたので、そのときは病院で新しい脳をもらったというフェイク・ニュースを自ら流しました。

大丈夫です(笑)。ここ数年のクリング・クラング・スタジオにおける作業はどんなものがあるのでしょうか? ソフトウェアの開発やヴィジュアル・テクノロジーの開発などでしょうか?

ラルフ:ソーラー・エネルギーを導入しました。ソーラー・エネルギーを導入したり、新しい歌詞を作ったり、まだ秘密ですが新しいプロジェクトをはじめたりしています。新しいプロジェクトの話は完成するまで口外できません。
 あとは、昔のアーカイヴをアナログからデジタルフォーマットに移行するすることを楽しんでいます。2、3人くらいしかいない小さな会社なんです。ステージで見る4人がコミュニケーションを取りながら力を合わせて今回のツアーやミュージアム・ツアーを可能にしています。最近ルイビトンでも演奏したんですけど、オーナーはアートをとても支持している方でした。彼は、2日前に火災が起きてしまったノートル・ダム大聖堂に多額のお金を寄付したんです。人と人の触れ合いや対話から生まれる音楽、アート、ヴィジュアルアーツや言語のインスピレーションですよね。私は残念ながら日本語は喋りはできないけど、いろんな言語を使います。“電卓”は友だちに訳してもらってから何度も日本語で歌っているのでもう慣れていますが、坂本龍一に訳してもらった“レディオアクティヴィティ”はまだパソコンの画面を見て読みながらじゃないと歌えません。で、えーと、(クリング・クラング)スタジオではインタラクティヴ・ミュージックを3Dアニメーションと3Dイメージで作り上げるのに励んでいます。未来のためのコンセプト作りもやってます。

最後にぼくも自転車好きなので訊きたいのですが、かつて自転車で大怪我されたことがあると聞きましたが……

ラルフ:それはフェイクニュースです。

通訳:全部がフェイクなんですか? 怪我すらしていないってことですか?

ラルフ:そもそも、その話をしている人たちは、私と一緒にサイクリングしたことがありません。別の年にいちど転んだことはありましたけど。そのときは3~4日病院で過ごしました。で、前にフェイク・ニュースを流されたので、そのときは病院で新しい脳をもらったというフェイク・ニュースを自ら流しました。(一同笑)でもこの怪我は仕事や生活には何の影響も及ぼしていません。

通訳:軽傷だったって事ですか?

ラルフ:はい。アルバムにもツアーにも影響は出ませんでした。新しい脳を手に入れただけです(笑)。

で、あなたの自転車好きは有名ですが(公式サイトではサイクリング用グッズを売っている)、なにゆえにあなたはそこまで自転車を愛しているのでしょう?

ラルフ:サイクリング自体からはとてもインスピレーションをもらいます。はじめたのは70年代後期でした。スタジオの外でできることを探していたのがきっかけです。昔のスタジオというのは暗くて、密閉されてて、防音環境だったので、何年もスタジオにこもってばかりの生活を送っていときに、それはなんだか私が生きていく上では正しくない環境だと感じはじめたんです。私は外に出ようと思いました。しかし、歩いて散歩したりするのは、私にはペースが遅すぎたんです。私はスキーなど他のスポーツもやりますよ。
 で、そのときに私たちは気づいたんですよ。ちょうどオランダの近くに住んでいて、オランダではサイクリング文化が発達していました。フランスでの経験からツール・ド・フランスのことを知りました。もちろん、このサイクリングを始めたことがのちの「ツール・ド・フランス」に繋がっています。
 サイクリングを通して、音楽の延長線上みたいな感覚を見出したんです。自転車に乗るマン・マシーンのようなものですね。完璧なインディペンダントになれるんです。行きたいところに行けるし、精神的にも体力的にもリフレッシュができる。音楽に似ています。残念ながら日本は道路が逆(車両は左側通行)なので、私は日本ではサイクリングできません。しかしサイクリングは音楽を作る上でインスピレーションを与えてくれる素晴らしいものです。フランスやイタリアをサイクリングしたり、サイクリングを通じて世界のことを学んだりできるんですよ。サイクリング・イベントで会えるサイクリング仲間もできました。
 では、ロボットを見ましょうか?

 クラフトワークのライヴは、彼らの大衆主義の成果のひとつと言える。3Dメガネをしたオーディエンスは、ただひたすら純粋にショーを楽しむ。もちろん“レディオアクティヴィティ”のような例外はあるにせよ、基本的にぼくたちはエレクトロ・ポップの発明者のステージを2時間のあいだ無心に楽しむのだ。そしてそれは決してあなどることのできない素晴らしい体験だった。
 ヒット曲のオンパレードのライヴではあるが、たとえばかわいらしいポップ・ソングだと思っていた“電卓”が電子のうねりを有するファンクで再現されると座っている身体が不自由に感じてならない。そのように曲はアップデートされている。個人的にもっとも好きな曲のひとつ、“ツール・ド・フランス”は、レトロな映像をともなって展開する。そこには、デジタルに統率されているであろう現在のクラフトワークが、しかしアナログに対する愛着があることを示している。そしてもちろんクラフトワークがファンキーであることはライヴで充分に証明されている。ステージ衣装を見るだけでもおわかりになるだろう。

 ヒュッターが自ら言ったように、クラフトワークには「先見の明」があった。エレクトロ・ポップだけではない。ヒップホップ、ハウス、テクノ、あるいはそのミュータントたち、つまりダブステップやトラップにいたるまで、ほとんど多くのエレクトロニック・ダンス・ミュージックには1968年にふたりのドイツ人が始動させたコンセプトに借りがある。
 クラフトワークは古くならない。それはカンやヴェルヴェット・アンダーグラウンドが古くならないのと似ているのかもしれない。つまり、完璧にオリジナルで、ヒュッターが自ら説明するように、それは流行を気にして作ったものではない、ただ自分たちで発明したものだからだ。もしクラフトワークが古くなるとしたら、それは我々がロボットを笑えなくなったとき、人間たち自身が本物のロボットになったときだろう。

Yoshinori Hayashi & DJ Today - ele-king

 昨年ノルウェイの良心〈Smalltown Supersound〉からファースト・アルバム『Ambivalence』を発表し、最近どんどん評価を高めているDJの Yoshinori Hayashi。一昨日のマシュー・ハーバートの来日公演でも身体にずしんと響く最高なテクノ・セットを披露してくれた彼が、詳細不明の謎の DJ Today とともにWWWβにてレギュラー・パーティをスタートさせることが決定。その名も《BRAIN MOSS/ノウコケ》。記念すべき第1回となる6月8日の前売り券には、Yoshinori Hayashi の未発表音源CDRも付属するとのこと。売り切れてしまう前にチェック!

BRAIN MOSS/ノウコケ

世界へ躍進する奇才プロデューサー/DJ Yoshinori Hayashi が詳細不明な DJ Today を召喚し、明快オブスキュアなレギュラー・パーティー《BRAIN MOSS/ノウコケ》をWWWβにて始動。前売には Yoshinori Hayashi の未発表音源CDR「Low rec series vol.2」付、合わせてY.Hオリジナル・グッズ、私物レコードなども販売予定。

2015年の〈Going Good〉からの衝撃デビュー作「終端イーピー」、Sotofett のリミックスも収録したEP「The Forgetting Curve」〈JINN Records〉等のリリース等を経て、2017年には Boiler Room に出演、2018年には「Uncountable Set」〈Disco Halal〉、「Harley's Dub」〈Jheri Tracks〉、そしてクラブ・ミュージック・シーンの外からも絶賛された 1st Album 『AMVIBALENCE』と怒涛のリリースで存在感を見せつけた Yoshinori Hayashi が、謎のベールに包まれた DJ Today と共にWWWβにて、レギュラー・パーティー《BRAIN MOSS/ノウコケ》を始動する。初回となる今回はレジデント2名によるオープンラストのセットを披露します。

特典として Yoshinori Hayashi の未発表音源CDR「Low rec series vol.2」を前売チケット購入者にプレゼント。
更にY.Hブランドのオリジナル・グッズや彼らのレコード・コレクションが少量、会場にて販売予定。

BRAIN MOSS / ノウコケ
LINE UP:Yoshinori Hayashi / DJ Today
2019/6/8 sat at WWWβ
OPEN / START 23:00
ADV ¥1,500 @RA + WWW店頭 w/ Yoshinori Hayashi Unreleased Track CDR
DOOR ¥1,500
※ 前売チケットを購入した方にはエントランスにて Yoshinori Hayashi の未発表音源を収録したCDR「Low rec series vol.2」をお渡します。
※ 未成年者の入場不可・要顔写真付きID / You must be 20 or over with Photo ID to enter

詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/011100.php
前売:https://jp.residentadvisor.net/events/1256849

Yoshinori Hayashi (Smalltown Supersound / Going Good)

18歳より独学で音楽制作をスタートさせた林良憲は、2008年に作曲家/ピアニスト/プロデューサーの野澤美香に師事することで、その稀有な才能を花開かせた。2015年、衝撃のデビュー作「終端イーピー」は、探究心旺盛なフリークスのみならず世界中のリスナーを驚かせ、決してフロアライクとは言えない内容ながら Juno plus Best of2015 : Top 50 Singles に於いて6位に選出される。その後も世界中の様々なレーベルから、精力的なリリースを続けることで、彼の音楽は多くの人々を魅了してきた。2018年10月待望のデビュー・アルバム『AMBIVALENCE』をオスロの老舗レーベル〈Smalltown Supersound〉より発売。青山の MANIAC LOVE からスタートしたDJキャリアは15年に及び、House、Techno、Disco、Leftfield を転がるように横断し、時に危ういボーダーさえも往来するプレイ・スタイルは、古典的でありながら実験性に富び、独自のオブスキュアを形成することでダンスフロアに貢献。欧州ツアーや Music Festival への出演を重ね、世界的注目を浴びる今、更なる飛躍が期待されている。音楽的ロジックを最優先する彼の感性は今まさに渇望されている。

https://m.soundcloud.com/yoshinorihayashi13
https://www.facebook.com/yoshinori.hayashi13

DJ TODAY

プログレッシブな展開を構築するスタイルを信条とする。

https://soundcloud.com/s5tzlhappveu/heavy-mix

SCARS - ele-king

 これは朗報だ。リーダーの A-THUG を筆頭に、SEEDASTICKYBES、bay4k に MANNY に SAC に I-DeA にと、そうそうたる面子が名を連ねる川崎のヒップホップ・グループ、SCARS。現在の日本語ラップを考えるうえでも重要な彼らの2006年のファースト・アルバム、長らく入手困難だった『The Album』のリイシューが決定した。発売日は6月19日。一躍彼らの名を轟かすことになったクラシックを、この機会にぜひ。

A-THUG を中心に SEEDA、STICKY、BES、bay4k らが名を連ねる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARS! 廃盤状態で入手激困難だった2006年リリースの傑作ファースト・アルバム『THE ALBUM』がリイシュー決定!

リーダーである A-THUG を筆頭にSEEDA、STICKY、BES、bay4k、MANNY、SAC、I-DeA らが名を連ねた日本語ラップ・シーン最重要な伝説的グループ、SCARS。BLACK EYE PATCH とのコラボレーション等で A-THUG、SEEDA、STICKY、BES を中心にリユニオンを果たし、再びその名を目にすることが多くなった昨今……散発的に行われているライブでも披露されている名曲群を収録した2006年リリースの傑作にして超問題作なファースト・アルバム『THE ALBUM』がまさかのリイシュー決定!

ハスリング・ラップ最高峰のアルバムとしてシーンに大きな衝撃を与え、一躍 SCARS やメンバーの名前を広めた屈指の名盤ながら長きに渡って入手困難な状況が続いて界隈では高値でディールされていたブツ!

[アルバム情報]
アーティスト:SCARS(スカーズ)
タイトル:The Album(ジ・アルバム)
レーベル:SCARS ENT
品番:SCARS-001
発売日:2019年6月19日(水)

TRACK LIST:
1. In Dro (Lyrics by "A"THUG, bay4k, BES, SEEDA, STICKY)
2. Showtime For Life (Lyrics by "A"THUG, bay4k, BES, SEEDA)
3. 1 Step,2 Step (Lyrics by BES)
4. YOU ALREADY KNOW (Lyrics by STICKY)
5. Homie Homie Remix feat. SWANKY SWIPE (Lyrics by bay4k, BES, EISHIN, SEEDA)
6. SCARS (Lyrics by "A"THUG, bay4k, BES, SEEDA, STICKY)
7. Bring Da Shit (Lyric by bay4k)
8. ばっくれ (Lyrics by BES, SEEDA, STICKY)
9. あの街この街… feat. GANGSTA TAKA (Lyrics by MANNY, SEEDA, GANGSTA TAKA)
10. Love Life (Lyric by "A"THUG)
11. Junk Music (Lyrics by bay4k, SEEDA, STICKY)
12. 日付変更線 (Lyrics by BES, SEEDA, STICKY)
13. Outraw (Lyrics by "A"THUG, bay4k, SEEDA)

Main Source - ele-king

 カナダ・トロント出身のK・カットとサー・スクラッチによって結成され、その後、ニューヨーク出身のプロデューサー/ラッパーのラージ・プロフェッサーが加入するという形でグループができ上がったヒップホップ・グループ、メイン・ソースによる1stアルバム『Breaking Atoms』と、ラージ・プロフェッサー脱退後にリリースされた2ndアルバム『Fuck What You Think』が、日本国内盤として再リリースされた。
 ピート・ロックやDJプレミアと並び称される、90年代のヒップホップ・ゴールデンエイジ(=黄金時代)のサウンドを作ったプロデューサーのひとりであるラージ・プロフェッサーだが、彼にとってもデビュー作となった1991年リリースの『Breaking Atoms』はプロデューサーとしての彼の名前を知らしめただけではなく、それ以降のヒップホップの流れを決定づけた一枚と言っても過言ではない。ジェームス・ブラウンなどに代表されるファンクのサンプリングを主体としていたヒップホップのサウンドプロダクションは、90年前後のデ・ラ・ソウルやア・トライブ・コールド・クウェストらの登場によって、サンプリングソースの多様化が進み、音楽的な表現がより豊かなものとなっていく。80年代後半に数々のヒップホップ・クラシックに携わりながら、89年に銃で撃たれ亡くなった伝説的なエンジニア/プロデューサーであるポール・Cの手ほどきを受け、十代からサウンドプロダクションのテクニックを一から学んだというラージ・プロフェッサーは、バラエティ豊かなサンプリングネタを、さらに複雑に組み合わせることで、もうひとランク上の音作りを実現する。『Breaking Atoms』からの先行シングルでもある“Looking At the Front Door”や“Just Hangin' Out”はこのアルバムを代表する曲でもあり、彼のプロダクション・スキルが特に際立った作品とも言えるが、当時感じた新鮮な輝きは、いま聴いても全く色褪せることはない。さらに“Just Hangin' Out”のカップリング曲でもあるポッセカットの“Live At The Barbeque”は、あのナズが世の中に出た最初の曲としても知られ、この曲がきっかけとなって、あの『Illmatic』が生まれたわけだが、この曲も含め、全体に充満したあの時代のニューヨークの熱気もまた、このアルバムの大きな魅力である。
 前述のようにメイン・ソースのメイン・メンバーであったはずのラージ・プロフェッサーの脱退後、80年代半ばからニューヨークのヒップホップ・シーンで活躍していたラッパーのマイキー・Dが新たに加入し、制作された『Fuck What You Think』。実はこの作品は当初はシングルのみリリースされただけで、アルバムとしてはお蔵入りとなったという、曰く付きの作品だ(1994年リリース予定がお蔵入りになり、その4年後に晴れて正規リリース)。その先行シングルである“What You Need”やおそらく日本限定でのシングル・リリースであった“Diary Of A Hitman”などを当時耳にしたとき、1stアルバムとの音楽的な違いに驚かされたことを記憶しているが、今回改めてアルバムを通して聴いてみると、意外なほど実に耳にフィットする。1994年といえば、ウータン・クランなどの登場によってヒップホップがよりハードコアな方向に進んでいた時期でもあり、彼らのこの方向性はある意味、時代にマッチしていたわけで、さらに20年以上越しに聴いてみると、当時、メイン・ソースの作品という先入観を持って接していたときのあの違和感はあまり感じない。ドラムとサンプリングネタがタイトに突き刺してくる先行シングル曲の“What You Need”や“Diary Of A Hitman”はもちろんのこと、ラージ・プロフェッサーの影響も多少感じさせるタイトル・チューンや、“Looking At the Front Door”と同じイントロで始まるポッセカット“Set It Off”など聞きどころも実に多く、「ラージ・プロフェッサー不在」という理由だけでスルーするには実に惜しい作品だ。今回の再リリースを機会に、短い期間の中での激しい時代の移り変わりも感じながら、1st、2ndともに聴いていただきたい。

interview with Matthew Herbert - ele-king

 ぼくの知り合いにひとり、本人はきわめて政治的な人間だが、聴く音楽のいっさいは政治とは無関係なものを好むというひとがいる。彼を思うと、ノスタルジックなジャズやMORを好んでいる人間が必ずしも政治的に無関心で保守的であるなどということはないと断言できる。その彼はビッグ・バンド・ジャズが大好きだ。
 マシュー・ハーバートのアイデアは、そういう意味でも面白い。がなり立てるパンクやラップではなく、ノスタルジックなスウィング・ジャズとエレクトロニカとの混合。エレクトロニカも、基本、耳(とその刺激を解析する脳)を面白がらせる快楽的な音楽であり、政治的な作品は、たまにサム・キデルのようなひともいるにはいるが、それは少数派だ。
 快適さのなかにメッセージを忍び込ませるやり方がぼくは好きだ。
 マシュー・ハーバート・ビッグ・バンドは、かつてそれをやってきた。甘くノスタルジックな演奏を交えながら、グローバル資本主義経済を糾弾する2003年の『グッドバイ・スウィングタイム』のことだ。

 『ザ・ステイト・ビトウィーン・アス』は、ブレグジットを契機に始動したプロジェクトである。2年以上を費やし、当初はEU離脱の日とされていた3月29日にきっちりリリースされた。『グッドバイ・スウィングタイム』と同様に、ノスタルジックなスウィング・ジャズとエレクトロニカ(+執拗なフィールド・レコーディング)との混合であり、しかし今作には、そうしたハーバート自身のクリシェを打ち砕く異質さがある。その異質さには、今作のより深い政治性が絡んでいる。自分が英国人であることを強く意識しながら作られた『ザ・ステイト・ビトウィーン・アス』からは、イギリスそしてヨーロッパなるものに直結するサウンド、響き、伝統が否応なしに聴こえてくる。そしておおよそ音楽は晴れやかではないが情熱的で、スリリングに展開する。ダークな曲、メロウな曲、ダンサブルな曲、ドローンからIDM、ジャズからアンビエント……と、まあ、ヴァラエティに富んだ内容で、いつものようにフィールド・レコーディングを活かし、音の細部にまで凝っている。多少重たいが、聴き応え充分の力作である。
 このアルバムを聴いたとき、ぼくにはわからない点がいくつかあったので、ぜひハーバートに取材をしたいと思っていた。なぜ、この作品のアートワークが「木」なのか、残留派であるハーバートは、では離脱派にはっきりとノーが言えるのか(残留派にも離脱派にもそれぞれ言い分がある)、アルバムから聞こえる動物たちの声は何なのか、アルバムにはハーバートのイギリス愛も混じっているのではないか、そもそも現代において左翼とは何なのか、などなど。すべての疑問に彼なりに答えてくれた。(※文末に来日情報あり)

僕はEU離脱に関して多くの嘘を撒き散らした何人かの政治家に対してすごく憤りを感じている。でも、「離脱」に投票した人たちに対しては、友情や協力の意志がある。僕は安定した、幸せな社会で暮らしたいんだ。

政治的であり、なおかつ作品としての魅力を高めようとするとき、そのバランスというのは難しいと思いますが、このアルバムはぎりぎりそれを成し遂げているし、あなたがこの作品に注いだ熱量がどれほどのものかわかる力作だと思いました。音楽的にも、ジャズ、クラシック、エレクトロニカ、ダンス・ミュージック、ミュージック・コンクレート、ドローンなどといったこれまであなたがやって来たことが集約された作品ですよね。すべてを投入して作ったというか、そんな印象を持ちました。

ハーバート:かなり苦労して完成した作品ではあった。何に苦労したかというと、当然音楽を作ることが大前提としてあるわけで、新聞記事を書くわけでも、ドキュメンタリー映画を作るわけでもない。音楽作品でありながら、イギリスにおける政治の現状を反映したものにしたかった。ただその現状というのが、もうめちゃくちゃで……(苦笑)。
つまり、何かについて曲を書いていると、その10分後には状況がまったく変わっている。だから書いていたものをやめて、新たな状況について今度は書きはじめる。で、その10分後にまた状況が一変する。そこの両立が非常に難しかった。それに加え、長いあいだ自分は誰に聞いてもらいたくてこの音楽を作っているのか、戸惑いもあった。いままさにEU離脱を含めた政治状況の渦中にいる人たちが対象なのか、それともヨーロッパにいる人たちに向けて我々の立場を説明したくて書いているのか、それとも20年後にこれを聞く人たちに向けて書いているのか。どういう視点で語るのか、なぜこれをいま伝えなきゃいけないのか、というのが制作中に何度も変わっていったんだよ。

イギリスのEU離脱をめぐる議論は、いまだどこに着地するのかわからない状況というか、カオスになっているようですね。とりあえず、3月29日に離脱することはなくなったわけで、その日をリリース日に決めていたあなたにとってこれは良かったのか悪かったのか、どうなんでしょうか?

ハーバート:すごく良かったと思っている。というのも、我々は国としてまだどんな形であろうとEUを離脱する準備がまったく整っていない。国は激しく分断されたままだ。僕が作る音楽は、僕にとっては大事なもので、参加してくれた人たちにとっても大事なものかもしれないけど、人の生死に関わる問題じゃない。でもEUは多くの人の生死に関わる重大な問題だ。だから僕としては、延期になったのは良いことなんだけど、依然としてどうなるのか先がまったく読めない。あり得ない状況だよ。3年ものあいだこの件について話し合ってきたにも関わらず、いまだにEU離脱とどう向き合うべきかわかっていない。まさにいまのイギリスの政治のどうしようも無さが浮き彫りになった形だと思う。

先頃は反ブレグジットのデモに100万人が集まったという報道がありましたが、100万人というのはすごい数ですね。おっしゃるようにいまはまったく先が読めない状況ではありますが、あなたが望んでいるのはいかなる決着なのでしょうか? 

ハーバート:まず何よりもEU離脱をやめるべきだと思っている。そもそも馬鹿げた考えだった。しかしながら、誰も自分たちの声に耳を傾けてくれない、と感じている人はこの国大勢いる。彼らはこの国の政治に対して長いあいだ失望していた。自分たちの意見は汲み取ってもらえない。生活も不安定で、職もない。満足な医療制度も得られず、自分たちが住むコミュニティーとの繋がりが感じられない。そういう人たちの多くが「離脱」に投票した。なぜなら「離脱すれば自分たちの生活が良くなるから」と言われたからだ。でも実際は、EU離脱が生活の向上をもたらしてくれることはない。むしろこの国をより貧しく、より孤立させるものだ。前向きなものでは決してない。
だから僕としては、もしEU離脱をやめるなら、そういう人たちに改善策を与えてあげなければいけないと思っている。「離脱」「残留」に分断されてしまった国民をどうにかしてまたひとつにまとめないといけない。そもそも「離脱」「残留」という分け方自体、人が創り上げたものでしかないから。そこに明確な線引きはもともとなかったはずなのに、分断の原因になってしまった。個人的に思う今後の最良の展開は、もういちど国民投票を行うことだ。そうすべきだと思っている。今度は、具体的な実施計画に対して投票するのだ。そうすることがもっとも賢明だと思う。政治家が決められないのであれば、国民が決めるべきだ。

今回のアルバム制作の発端は、ブレグジットに対する憤りだったと思いますが、おっしゃるようにEUに残留すればすべてが解決するような問題ではないように思いますし、じっさいアルバムのテーマはより大きなものへと発展していますよね? 

ハーバート:そうだね。アルバム制作をはじめた頃は、政府の動向を細かく追っていて、EU離脱問題とそれに纏わる政治状況だけに絞った作品を作ろうと思っていた。でも途中で、めちゃくちゃなアルバムだってことに気づいた。政府がめちゃくちゃだったからね。その動向ばかりに目を向けていたために全く意味のなさない、どうでもいいものになっていた。
だから途中で決めたんだ。我々にとって本当に重要な問題を取り上げようと。その最たるものが気候変動だ。実はEU離脱問題は、我々が直面する本当の危機的問題から我々の目を逸らすためのものでしかない。イギリスだけの問題ではない。他の国もそう。気候変動や経済格差こそが本来取り組まなければいけない問題だ。今EU離脱問題に費やしている予算は本来気候変動に使われなきゃいけないものなんだ。

先ほどイギリスが分断されているという話がありましたが、タイトルの『The State Between Us』も分断されてしまったイングランドを意味しているのでしょうか?

ハーバート:必ずしもそういう意味でつけたわけじゃない。もちろん、見た人が好きに解釈してくれればそれで良いと思っているよ。タイトルの元々の発想としては、政府(政治)が人と人のあいだに入ってきたらどうなるか、というものだ。例えば、僕は近所の人たちと共有した価値観もたくさん持っている。田舎に住んでいるからまわりは農家が多い。でも、彼らの多くが「離脱」に投票をした。だから僕にとってタイトルが意味していることは、政府が自分とお隣さんとの関係の障壁となったとしたらどうなのか、ということ。自分はどんな感情を抱けば良いのか、と。僕はEU離脱に関して多くの嘘を撒き散らした何人かの政治家に対してすごく憤りを感じている。でも、「離脱」に投票した人たちに対しては、友情や協力の意志がある。僕は安定した、幸せな社会で暮らしたいんだ。だからタイトルは、以前は何の問題もなかった社会に、政府や組織が介入することで問題が生じてしまったらどうなるか、ということを意味している。

こうやっていろいろ考えてみたんだけど、イギリスならではのもので特別な何かを見つけることができなかった。それはつまり、自分がどこで生まれたかなんて所詮地図上のある場所にたまたま生まれたってだけのことだからだ。この国の好きな部分もあるし、好きじゃない部分もある。それはスペインや他のどの場所に対しても言えることだったりする。そういう部分も含めて、アルバムはイギリスらしさとは何かを追求しようとした側面もある。

“You're Welcome Here”の“Here”とはイングランドのことだと思いますが、あなたは今作を作るためにブリテイン島を旅したそうですね。それはなぜですか? それは、もういちどあなた自身のアインディティティないしはイングランドという国のアインディティティを確認したいから?

ハーバート:“You're Welcome Here”の“Here”はイギリスのことだけではなく、音楽も意味している。例えば「このアルバムは君を歓迎するよ」「このアルバム、この音楽の世界にようこそ」とかね。
イギリスのアイデンティティに関心があったというのは、その通りだ。だから、自分では行けなかったから人にお願いしてアイルランドの国境を端から端まで歩いてもらった。それから「離脱」に大半の人が投票したグリムズビーという町にも行った。それから同じく「離脱」に投票した地元のケント州にも長く滞在した。各地に実際に足を運ぶことが大事だった。アルバムにはロンドンで録音された音源はとくに使っていない。ロンドンの合唱隊は参加してくれているけど、ロンドンで録った「音」は入っていない。
僕にとってイギリス人であることのアイデンティティはますますわからなくなってきている。子供の頃に聞かされた「イギリス人たるものはこうあるべき」という価値観にしても、大人になってみるとそうではなかったと思うことがほとんどだった。僕は1970年代に幼少期を過ごしたわけだけど、人種差別、男尊女卑がまかり通っていた時代だったし、男性に支配された社会だった。いまでも男性が社会を支配してはいるけど、少しずつ変化していると感じる。「イギリス人であるというのはどういうことか」というのをずっと考えていたんだけど、例えば「僕は田舎が凄く好きだ」「でもスイスやイタリアや日本にだって美しい田舎はある」と思った。じゃあ、「ユーモアのセンスがすごく気に入っている」と思ったけど、他の国にだってユーモアはある。「この国の音楽がすごく好きだ」と思っても、アメリカやアフリカの国だって良質の音楽を排出している。
こうやっていろいろ考えてみたんだけど、イギリスならではのもので特別な何かを見つけることができなかった。それはつまり、自分がどこで生まれたかなんて所詮地図上のある場所にたまたま生まれたってだけのことだからだ。この国の好きな部分もあるし、好きじゃない部分もある。それはスペインや他のどの場所に対しても言えることだったりする。そういう部分も含めて、アルバムはイギリスらしさとは何かを追求しようとした側面もある。

冒頭の鳥のさえずりが聞こえる場面ですが、場所はどこでしょうか? なぜそこからはじめたのですか? 

ハーバート:あれはドイツにある森のなかで録ったんだ。そこには意図があって、今回のEU離脱問題はこの国とドイツとの関係が多分に関係していると思っている。第二次大戦後ずっとこの国はあの戦争と本当の意味できちんと向き合えてないと思う。ドイツの人たちの方が、あの戦争が自分たちの生活にどう影響をもたらしたかを受け入れている。でもこの国ではまだ神話化されている部分が大きい。というのは、勝利国だったために、内省する必要がなかったんだ。戦争に自分たちがどう関わったかということに対してね。だからとくにドイツに対する誤解は多い。それにアンジェラ・メルケルの方が、メイ首相よりもずっと優れたリーダーだ。彼女(メルケル)の考えにすべて賛同するわけではないけど、国家の首席としてはずっと優れている。そんなわけで、「ドイツの木」からアルバムをはじめるという発想が気に入ったんだ。

「木」と言えば、アートワークにも「木」をあしらいました。また、アルバムの冒頭の曲では木が切られているであろう音がチェーンソーの暴力的な響きとともに挿入されています。「木」は明らかにこのアルバムの象徴としなっていますが、それはなんの象徴なのでしょうか?

ハーバート:EU離脱問題を「木」に置き換えて考えたら面白いと思ったんだ。僕からすると我々は存続危機に直面している。つまり、気候変動によって我々が当たり前だと思っているものがこれからどんどん失われていく。我々人間が行いを改めなければ、人類を含む多くの生き物が絶滅するだろう。これこそが本当の危機だ。だから僕は、何人かの政治家の発言に耳を傾けるよりも、「木」に耳を傾けたいと思ってしまう。自然との向き合い方を考え直さないといけないと思っている。だからこの世界を違う視点から見てみるいい機会だと思った。

あの曲の途中で挿入される歌はなんですか?

ハーバート:曲は僕が作曲したもので、歌詞は16世紀の詩人のジョン・ダンの言葉を引用している。

ビッグバンドでやるのは 11年ぶりと久しぶりですが、今回のテーマをいつものようなエレクトロニカ・スタイルではなくビッグバンドでやりたかった理由はどういったところでしょうか?

ハーバート:ビッグ・バンドの大きな魅力は、ある一定の水準で音楽を奏でられる人だったら誰でもバンドに参加できる、ということだ。例えば、イタリアやスペインやドイツに行ってアルバムのレコーディングを行った際、見知らぬ演奏者の前に譜面を配布さればそれで済んだ。すぐにでも演奏をはじめられる。民主主義的な形態だと感じるね。さらにそこに合唱が入るわけで、アルバムに参加しているのはみんなプロの歌い手ではなくアマチュアの合唱隊だ。そうやって民主主義的な生き方を体現しようとしている。ただ政府を批判するだけでなく、その代替案を提示しているんだ。僕からすると、ビッグ・バンドと合唱隊はいい代替案だと思う。コミュニティーを生み、創造性を生み、協調性があって、経済活動でもあり、人種や性別も関係ない。有用なメタファーだったんだ。

参加した人たちの人数が、数百人とも千人とも言われていますが、CD盤面の記されている名前がそれですよね。これはすべて世界のいろいろな場所でのライヴの際に参加した人たちの名前なのでしょうか? そしてそうした人たちの名前を記したのにはどんな意味がありますか?

ハーバート:全員の貢献をきちんと示したかった。というのも、こうして君と話をしているのは僕だけど、実際は大勢の人がこの作品を支えている。コミュニティを表しているんだ。実はバンドの名前にも納得がいってない。僕の名前が前面に出てしまっているからね。でもSpotifyやApple musicといったサービスのなかで、聴き手にとって作品を見つけやすいというのも大事だった。まあ、せっかく参加してくれたのだから名前を記すのは礼儀でもあると思った。ライヴでも土地土地で新しい人たちに参加してもらった。例えばマドリッドに行ったときは、ステージ上に僕のバンド・メンバーはたったの3人だけで、残りの115人はそこで初めて会う人たちだった。ローマでもベルリンでも同じだ。日本で去年ライヴをやったときも、日本人のバンドと合唱隊に参加してもらった。ライヴの度に違うライナップだったんだ。

イギリスに対しては相反する思いを抱いているのはたしかだ。今回気付いたのは、ある国の国民として生きる上で鍵となるのは価値観なんだということ。どんな価値観を持っているか。だから僕にとって大事なのは……。僕がイギリスでもっとも誇りに思えるのはNHS(国民医療サービス)、それとBBCだ。

今作であなたがあらたにトライした音楽的な実験があるとしたら何でしょうか?

ハーバート:実験と言えるかわからないけど、さまざまな場所を録音した。NHSの病院でも録音したし、首相別邸のChequersの周りを自転車で回って録音もした。それからある人にイギリス海峡を泳いでもらったし、別の人に第二次大戦の戦闘機で飛んでもらった。他にもイタリアの第一次大戦の最前線だった古戦場を歩いてもらったし、アイルランドの国境の端から端までも歩いていろいろ録音してもらった。これ以外にもいろいろなフィールド・レコーディングを行ったよ、

動物の声をフィーチャーした“An A-Z Of Endangered Animals”を収録したのはなぜでしょうか?

ハーバート:僕にとってはこういったことこそが本当の問題だ。生態系の多様性の崩壊だ。野生動物や昆虫の数が激減している。非常に深刻だし悲しい問題だ。今回アルバムに音を収録した絶滅危惧種の動物たちは10年後、15年後にはその声を聞くことがもうできなくなっているかもしれないんだ。絶滅に瀕した動物たちによるコーラスだ。

まさかご自身でフィールドレコーディングされたわけじゃないですよね?

ハーバート:さすがにそこまではできなかった。そうするには費用がかかりすぎるからね。

最後シェリーの詩を歌った“Women Of England”で終わっていますが、あなたこの作品でイングランドを批判してもいますが、同時に愛してもいますよね? “Women Of England”を聴いてそう思ったのですが、いかがでしょうか?

ハーバート:イギリスに対しては相反する思いを抱いているのはたしかだ。今回気付いたのは、ある国の国民として生きる上で鍵となるのは価値観なんだということ。どんな価値観を持っているか。だから僕にとって大事なのは……。僕がイギリスでもっとも誇りに思えるのはNHS(国民医療サービス)、それとBBCだ。国民全員が少額を払うことで、多くの恩恵を得られる機関だ。そういうのは喜べる、前向きな積立だ。それ以上に、優しさ、平等、公正さといった価値観を現れでもある。でもそういう価値観がこの国ではいま脅威に晒されている。そこに僕は怒っている。いま右翼の多くの人は我々もアメリカを見習うべきだと思っている。でもいまのアメリカは非常に残酷で分断された国で、社会のお手本とするには最悪の国だ。

あなたが愛するイングランドというのは、ファンキーな“Fish And Chips”のような曲に表れていますよね? 

ハーバート:いや、あの曲はグリムスビーという街で録音したものなんだけど、グリムスビーはかつて漁業が盛んな街だったのに、その漁業が衰退してしまった。僕にとってこの曲はニューオーリンズの葬送曲のイメージで、漁業の死についての歌をパーティ調に奏でることで皮肉を込めているんだ。

4月に来日しますが、楽しみにしています。どんなプレイをするつもりでしょうか? 話せる範囲でお願いします。

ハーバート:そうだな。本当になんとも言えないんだけど、DJセットというのはつねに即興だと思っている。だからとりあえずいろんなジャンルからのいろんな音楽を持っていって、あとはそのときの感覚で作り上げていく。でも、まあ、基本はハウスとテクノで、そこに実験的なものや、新しいノイズなんかも盛り込んでいきたいとは思っている。まあ、基本はその場の即興だよ。

ブレグジットを遠目で見ながら、もしも左翼思想というものが世のなかで弱い人たちを助けるという思想だとしたら、はたしていま弱い人たちは誰なのかということを考えてしまうのですが、あなたの意見を聞かせてください。

ハーバート:そんな複雑な話じゃないと思っている。実際よりも事情は入り組んでいると我々に思わせるのも政治的罠のひとつなんだ。この国が抱えている大きな問題というのは、数年前に大きな経済危機があって、その際に経済を持続させるために政府が国民の税金を金融産業に投入した。保守党政府は、経済的にいちばん底辺にいる人たちに負担をさせたんだ。つまり障害者、生活保護を受けている人、貧しい人、子供、シングルマザー、女性。そういう人たちへの補助を減らすことで、銀行が引き起こした負債のツケを底辺の彼らが払う羽目になった。それこそがこの国の根本にある不正であり、EU問題もそれに対する反動だった。保守党が築いた社会構造に対する人びとの不満の表れだった。だから僕にとって弱い人たちというのは、他の人が起こした問題のツケを払わされている人たちだと思っている。


ハーバート来日情報!
Hostess Club Presents...Matthew Herbert DJ Tour 2019

HOSTESS CLUB ALL-NIGHTERのレジデントDJでもあったダンスミュージック / サンプリング界の鬼才マシュー・ハーバート、各地で豪華ゲストを迎えるDJツアーの開催が決定!

東京
2019年4月22日(月)代官山UNIT
with Yoshinori Hayashi and 食品まつり a.k.a foodman
Open / Start 19:00
Extra Sound System Provided by PIONEER DJ

北海道
2019年4月23日(火)札幌 Precious Hall
with Naohito Uchiyama and OGASHAKA
Open / Start 20:00

福岡
2019年4月24日(水)福岡Kieth Flack
with T.B. [otonoha / under bar]
Open / Start 20:00

京都
2019年4月25日(木)京都 CLUB METRO
with metome (Live Set)
Open / Start 20:00

Ticket:
東京公演 5,800円(税込)
札幌 / 福岡 / 京都公演 5,300円(税込)

https://ynos.tv/hostessclub/schedule/20190422.html

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