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interview with Ital - ele-king


Various Artists
The Silk Road

melting bot / 100% Silk

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 「最初にジャックありき、ジャックにはグルーヴありき......」、1987年にシカゴのチャック・ロバーツがこう喋ってから25年経った。「それは"私"の家(ハウス)から"私たち"の家(ハウス)となった......ハウス・ミュージックはこうして生まれた」と。
 ハウスはそれから、紆余曲折を経て、今日も生きている。9月に発売予定のジ・XXのセカンド・アルバムでは、4つ打ちのキックドラムの入ったハウス・ミュージックをやっている。インディ・ロックにおいて、ハウスは今日的なモードとなっているが、この流れをうながしたのがロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉(いま世界でもっともヒップなレーベル)であることは周知の通り。おそらくは同レーベル傘下の〈100%シルク〉の第一弾、アイタルの「アイタルズ・テーマ」、そして〈ノット・ノット・ファン〉から出たLAヴァンパイアズの「ストリートワイズ」がそのはじまりの合図だった。アマンダ・ブラウンの勘が働いたにせよ、アイタルを名乗るダニエル・マーティン・マコミックは「ストリートワイズ」にも参加しているので、彼が引き金を弾いたとも言える。
 
 この新世代のハウスは、音楽的には彼らの前史――ドローン、サイケデリック,フリー・フォーク、ローファイ、エクスペリメンタル、ダブなど――の流れを引いている点でも充分に面白いが、ほかにもいくつかのレイヤーにおいて変化をうながしている。ひとつには、彼らはレコード店泣かせである。現状では〈100%シルク〉はクラブ・ミュージックでありながらインディ・ロックのコーナーに置かれている。90年代からおよそ20年続いてきた区分けは無効になりつつあり、シーンは再編成のまっただなかにある。また、彼らは「CD」を作らず、12インチのレコード盤(さもなければカセット)でリリースしている。よって、この最先端のユース・カルチャーの多くが日本のCDショップには置かれない......という残念な状況をフォローすべく、〈プラネット・ミュー〉の日本盤をリリースしているインパートメントが世界初の〈100%シルク〉のコンピレーションCDをアマンダ・ブラウン監修のもとリリースした。このインタヴューは、その発売記念というわけである。


誰かに媚びることなく、クレイジーな音を一生作っていくほうがどう考えたって生き生きしてられるってわかってる。わかりやすくてなんかのジャンルにハマるものを絞り出すより、自分が向かうべき音に集中してくしかない。

ワシントンDCでブラック・アイズ(Black Eyes)というハードコア・バンドのギターをやっていたあなたが、どうしてロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉と出会ったのでしょうか?

アイタル:ブラック・アイズが解散したあと西海岸に移って、そこでデーモン(Damon = Magic Touch)に会ったんだ。そうしてミ・アミ(Mi Ami)を組むことになった。そして1年後くらいに、ヤコブ(Jacob)が加わって少しずつツアーをしはじめた。
 2008年にブリット(Britt = ノット・ノット・ファン主宰)がポカホーンテッドとサンフランシスコでライヴをやるからって誘ってくれたんだけど、そのショーは結局1週間前にオーガナイズ側が動きはじめるというスケジュールだったもんで、結局失敗に終わった。いまでも、彼らとは連絡は取り合っているけど。自分らの 〈クオータースティック〉/ 〈タッチ・アンド・ゴー〉が経営的になりゆかなくなったとき、ブリットが〈ノット・ノット・ファン〉からミ・アミのレコードを出したいと言っていて、もし何かあるんだったらどの名義でもいいからと強い希望があった。ずっと自分の単独のプロジェクトをセックス・ワーカーという名義でやってみたいとは思ってはいたものの、まだ実際音を作ってなかったんだよね。
 そのときはツアー中だったんだけど、ただ自分の心は決まっていたから彼らに電話して「はい、ソロでやります。家に戻ったらテープを送るので」って伝えた。7週間半もかかったツアーから戻った次の日、練習部屋にいって曲をレコーディングしはじめ、数時間で「ザ・レイバー・オブ・ラヴ」の3曲のうちの1曲ができ上がって。その次の日、また別の曲を、そのまた別の曲をレコーディングして、あのレコードが完成したというわけだよ。

あなたのバックボーンであるパンクについて話してもらえますか?

アイタル:パンクはいつだって自分の生きる姿勢であり武器であり、そしてこれからもそうだよ。テクニックや機材やそういった何でもに対して遠慮なんてせず「なにクソ」っていう感じだったりとか、感情剥き出しのヒリヒリした痛みと、それが相まったものを引っ張りだして、飛びこんで、もうやっちまえ、みたいな感じ。
 たぶん自分がパンクだけを特別に聴いていた時期って14、15歳くらいのときのたったの9ヶ月間くらいだし、そのシーンで細分化されたサブジャンルをあれやこれ延々と語ってるような黒パーカーを着たハードコア野郎とかでもないし。常套句っぽく聞こえるかもしれないけどさ、たとえば「マイルス・デイヴィスがパンクだった」というかね。誰かに媚びることなく、クレイジーな音を一生作っていくほうがどう考えたって生き生きしてられるってわかってる。わかりやすくして、なんかのジャンルにハマる音を絞り出すより、自分が向かうべき音に集中してくしかない。メタルコア、ジャズ、なんでも一緒で。
 あとさ、パンクにはまっていたとき、いままでに感じたこと無いくらいの解放感を感じてたと言わざるを得ないね。自由だよ! 1回そこまで自由になると、自分に正直になることを忘れて「おーディスコも好きだよ」とか何とか言ってしまったり、ほかのことでもそうだけど、そういう落とし穴がある。

あなたからみて〈ノット・ノット・ファン〉や〈100%シルク〉の魅力とは?

アイタル:彼らが素晴らしいのはどっかミステリアスで影があるセクシーさを持つレコードをリリースしているところかな。それなのに同時に手が届きやすさもある。明確なサウンドのイメージはないけど、確実に強いヴァイブレーションがある。彼らはそんなにたくさんプレスしないし、あれやこれやと大きくクロスオーヴァーしたリリースもない。だからいつも新しいアーティストの発掘のセンスがあって、激しく嫉妬を覚えるよ。先見性もあるしね。彼らのリリースするレコードは、先が見えなくて守りに入ってるレーベルと違って、とてもフレッシュな雰囲気があって、楽しいよ。それに、リリースの多くはかなり良い感じだしね。

セックス・ワーカーを名乗った理由は何ですか?

アイタル:理由はいっぱいあるよ。2003年に初めてバンド・セットでツアーをして、2005年以降久しぶりに2008年にしたツアーのときに、オーディエンスと激しく身体を通して共鳴したいっていう、いままで吐き出していなかった感情があふれ出してきて困惑したんだ。そして同じとき、売春婦として働いている心的外傷後ストレス障害患者(PTSD)を癒すためのアートセラピーのことを知って。空虚なまなざし、憔悴しきった帰還兵のようなうなだれた様子でバスタブのなかにいるどこか東欧の国の売春婦が映っている写真だったんだけど、その1枚の写真から目をそらすことができなかった。本当にすべてをシャット・アウトしてその写真を無心に、ただ眺めたんだよね。
 身体的な嫌悪についてよく考えていて、その表現を自身のなかや他人に見つけたように、精神にあるむき出しの神経に直接触るような、そんなプロジェクトをはじめたいと思ったし、自身にある嫌悪に対する奇妙なアート・セラビーのようなものであり、いっぽうでそれがどう外界にある人の性や自己嫌悪に伝わるか、またコミュニティや社会のなかでどう演じられるか、そういった個人的な心の空間を作りたかったんだ。それがきっかけだよ。そこからはこのプロジェクト自体ひとり歩きしてった。

バンドをやっていた頃からエレクトロニック・ミュージックには興味があったんですか?

アイタル:いつも音楽の周期について興味はあるよ。そうだね、エレクトロニック・ミュージックに入りはじめたのは2000~2001年、高校生だったときかな。ちょうどその時代はパブリック・エネミー、DJ シャドウ、ビューク、クラフトワーク、エイフェックス・ツイン、ボーズ・オブ・カナダなんかをすごく聴いて、そっから2002年あたりに〈トミー・ボーイ〉が自分のなかで来てて、そっからディスコ、ハウス/テクノとじょじょに流れていった。2005~2006年がもっともエレクトロニック・ミュージックに熱を上げていたかな。デーモンと僕の大きな共通項でもあったしね、ミ・アミを結成するのも無理ないでしょ。もともとライヴでエレクトロニックっぽいことをやろうとしてて、それが幸運なことにみんながあんまり聴いたことないっていうものだった。

打ち込みはどうやって学んだのでしょうか?

アイタル:ハードウェアを使ってライヴをして来たからそこからかな。でも実際はPCで、あんまイケてないプログラミングのAudacityって音楽編集ソフトを使ってトラックは作ってる。2006年からハマりはじめたんだけど、その頃はサンフランシスコに住んでいて、彼女と「電子音を作りたいね」という気持ちになって、でも、まったく何もわかってなくて。そしたら友だちがこのフリーソフトのことを教えてくれた。で、実際わからないながら使ってみたわけ。ミニマル・テクノをドラムマシン/キーボード/MIDIなしでどうやって作るかとか、必要最小限の音から組み立てていこうとしていたんだけど、それが楽しかったんだよね。

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彼女と「電子音を作りたいね」という気持ちになって、ミニマル・テクノをドラムマシン/キーボード/MIDIなしでどうやって作るかとか、必要最小限の音から組み立てていこうとしていたんだけど、それが楽しかったんだよね。

「ザ・レイバー・オブ・ラヴ」というタイトルに込められた意味は何でしょう? ポルノ文化へのあなたの関心の高さを示すものなのでしょうか?

アイタル:それにはたぶん2面性、いや3面性があって。タイトルになっている「愛の奴隷」って意味は地位とかお金のためじゃなく愛のためにならすごく努力して何かをするってことっていうのはわかると思うんだけど、そういう意味で言うと、人生や音楽って大きな次元では「愛の奴隷」なんじゃないかな。自分や世界を理解するための旅とかそういう感じ、っていったら良いのかな。
 でもいっぽうで「愛」って骨が折れるし、破滅的だったり、重かったりする面がある。ちょうど自分の精神を壊すほどの関係を切ったばかりなんだけど、その人へ向かっていた愛と、それを愛そうとしていた葛藤にぶち当たってしまった。
 最後に、もちろん売春についての意味ももつよね。金銭と引き換えにもっとも親しげな筋書きが展開されるある意味「劇場」のようでいて、時に危険を伴う仕事であるし。

セックス・ワーカーとして実験的なサウンドを手がけていたあなたがダンス・ミュージックにはどのような経緯でアプローチしたのですか?

アイタル:そういうプロセスじゃない気がするんだよね。インスピレーションにそって音を作っているだけだし。アイタルの音はあまりにもぶっ飛んでて踊れないとか、ブラック・アイズの音は実験的だったのに、アイタルは実験的な要素が薄いとかぼやく人もいたけど。すべての曲、すべてのレコード、すべてのライヴは旅みたいなものであって、自分はどっかに連れてってくれる音楽に身を任せるだけ。ときどきそれはポップになり、ときどきそれはノイジーであり。でもそれがリアルであり続ける限りどんなスタイルでも良いと思う。

LAヴァンパイアズとの共作「ストリートワイズ」はどのようにおこなわれたんですか?

アイタル:アマンダは一緒にコラボレーションしたがってたんだ。彼女は使って欲しいと思うループを送ってくれて。それを使った曲を作って、彼女に送り返した。それから彼女がヴォーカルを乗せてって流れで。すぐにでき上がったよ。はい、でき上がりって感じで。

ハイヴ・マインド(Hive Mind)』の最初の"Doesn't Matter"ではレディ・ガガの"ボーン・ディス・ウェイ"を使ってましたね。曲の最後にはガガの声が壊れた機械のなかで消えていくようなユニークな展開で、コズミック・ディスコのパンク・ヴァージョンのように思いましたよ。

アイタル:そのとおりだと思う!

スーサイドからの影響について話してください。

アイタル:そうだね、もちろんその辺のレコードは傑作だし、すごいよね。とくにスーサイドが放つあの特有の恐怖感とか切迫した雰囲気やセンスに何か反応してしまうっていうか。ひりっとする痛みと、どっか覚めながら尖った感じって、前はよくわからなかったんだけど、いまは本当に素晴らしくてリアルだと感じるようになった。

また、"Israel"のミキシングを聴いていると、ケニー・ディクソン・ジュニアとセオ・パリッシュからの影響を感じるんですけど。

アイタル:実際彼らのことは大好きなんだけど、あのトラックを作るにあたってはセオ・パリッシュと中期のリカルド・ヴィラロボス(とくに「Acho EP」)がインスピレーションになった。とくにひとつひとつの音を正確に、ちょっと奇妙で、身体的な表現って感じにする方法を編み出すこととか。自分がここ6~7年ずっと囚われていることで、よりリアルな情景をどう体感させるか、熱帯をどう表現するかとかさ。"Israel"はまさにそれだね。
 でも、はっきり言っておくと、オマーエスとかセオ・パリッシとかムーディーマンとか誰であっても、スタイルをコピーすることには100%興味が無い。デトロイト・テクノとハウスはこの世のなかで自分の好きな音楽だけど、どっちかというともっとその音楽と音楽で対話したいっていうか。何か鍵になるアイディアをきっかけにして、デトロイトからのセンスを感じる音を自分で作るっていう感じでさ。


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ハウスやミニマルで踊るのが好きだからかなー。なんか、ダブステップの多くはかなりマッチョだし、すごい"イギリス"だし。良いとは思うよ、でも自分のモードとは違うし、僕はアメリカ人だしね。


ダブステップよりもハウス・ミュージックやミニマルに惹かれる理由を教えてください。

アイタル:ハウスやミニマルで踊るのが好きだからかなー。なんか、ダブステップの多くはかなりマッチョだし、すごい"イギリス"だし。良いとは思うよ、でも自分のモードとは違うし、僕はアメリカ人だしね。

あなたにとって〈プラネット・ミュー〉とはどんなレーベルですか?

アイタル:すごいと思う。時代を巻き込むのと切り離すことに対してとても長けているというか。彼らにトラックを送ったら彼らは何が良くて何が悪いかについて正直に答えてくれる。彼らの関わり方や助言に対して僕はサポートされているなっていう気になる。でも同時に、彼らは実際どうやったらいいだとか、彼らのテイストに合わすようなことは決してしないんだ。まったくの孤独から生まれる作品に客観的な意見をくれているような感じで、そういうのは、時折とても必要なことだよね。
 とにかく〈プラネット・ミュー〉はすごいレーベルだと思うよ。マイク・パラディナスはなんとも謙虚だし。マイクと一緒にレーベルをやっていて、何年も〈リフレックス〉や〈ワープ〉、〈ハイパーダブ〉にも関わっている、エイフェックスのルームメイトであるマーカスについては言うまでもなくだよね。彼らは音楽に真剣だし、オープンな見方をしているように見える。それにそんなに流行とかバカげたゲームを追っかけている人たちじゃないしね。

12インチ・シングルというフォーマットにはどのような魅力を感じますか?

アイタル:基本的に引き延ばされた空間に余白のあるトラックが好きなんだよね。いま新しいアルバムを作り終えたばかりなんだけど、ほとんどの曲は8 ~10分くらいで、1曲1曲個別に聴くと、スカスカの反復的なトラックができたぜ! て思ったんだけど、でも7曲すべてを順番にずっと聴いてみると、すぐ飽きてしまって、先に進むのが重苦しい感じになってしまった。だから曲が持つインパクトやキャラクターが際だっている箇所をぶっつり切って、もっと音の変化を早くしたんだ。
 このアルバムを作ったあとは12インチをもっとやりたくなったかも。なぜなら、DJがやりやすい音を作るのなら12インチの使い安さってすごい大事だと思うし、自分の音楽の繊細さにもっとマッチしていると思った。12インチを聴くときって全曲聴くときもあれば、ちょっとしか聴かないときもあれば、けどそんなに重要ではなくて、アルバムを作ったら全部聴いてくれって期待するけど、聴き手にゆだねて「どうぞ」って気分くらいでいいと思う。

なぜ、いま〈ノット・ノット・ファン〉や〈100% シルク〉はクラブ・ミュージックを面白がっているのでしょうか? 

アイタル:〈100%シルク〉はL.A.ローカルのクラブ・シーンより海外のハウス/テクノのシーンで盛り上がる実験的なサウンドへの興味を反映していると思う。たぶん、L.A.シーンみたいなものはもうどこにでもあると思うし、僕はそのシーンにはいないからなんとも言えないけど、〈100%シルク〉周辺にはクラブっぽい人もいるし、思い切ってクラブ・ミュージックに挑戦する人もいるし、いろいろだよ。デトロイトなんかと違って、DJばかりのコミュニティという感じではない。そういう町と比べたらベッドルーム・ミュージックを作るプロデューサー、DJや機材オタクとかがいっしょにいるような、広い間口のふわっとしたコミュニティだよ。

いま〈ノット・ノット・ファン〉周辺からはバレアリックな気分のダンス・ミュージックが聴こえてくるのは何故だと思いますか?

アイタル:それは正直なところアマンダの趣味だと思うんだよね。自分的にはサイケとかドローンとかそんなアルバムばっかり作ってた数年間だったから、ちょっと違うものを欲してたタイミングだった。

医療大麻ないしは合法化は音楽シーンに影響を与えていると思いますか?

アイタル:マリファナを吸いたいやつはそれが違法だからって理由だけで吸わないとはまったく思わない。個人的に言うと、ドラックとか中毒症状って自分の制作プロセスとはほとんど関係なくて、例えばライヴでビールとかその他のものを飲むのは好き、でもそれはとくに大したことじゃない。クリエイティヴィティを高めるためにマリファナに手を出しているやつはあんまり知らないな。少しはいるかも、吸って死刑になったとしても吸うようなやつらかな。

ロムニーとオバマのどちらを支持しますか?

アイタル:オバマかな。でもわかるでしょ。誰も飛び抜けてはないんだ。

〈ノット・ノット・ファン〉や〈100%シルク〉からアルバムのリリースの予定はありますか?

アイタル:秋に〈プラネット・ミュー〉から新譜が出るよ。とりあえずいまはそんな感じ。ミ・アミのレコードとマジック・タッチとのスプリット盤が〈100% シルク〉から出たばかりだから、彼らはまた違うアーティストとのリリースに集中したいんじゃないかな。

あなたは、人間はどのように成長すべきだと思いますか?

アイタル:人の成長をどれくらい信じているのか自分にはよくわからない。みんな自分に正直にいればいいと思う。自分がいったい何者か、何がほしいのか、何を恐れているか、何を愛すか、そういうすべてに関してまっすぐになること。ほんとに自分がまっすぐ、リアルでいられれば、自分のなかにある愛を見つけられる。それは本当に、強く、たくましいことなんだと思うよ。


※来日スケジュールの詳細はNEWSの欄を参照されたし。

Palais Schaumburg - ele-king

 7月7日は「おやじ殺し」と呼ばれていたらしい。後から知った。YMO、クラフトワーク、パレ・シャンブルグというラインナップもさることながら、前2者を幕張メッセで観た後、代官山ユニットまでの移動距離も「殺し」の構成要素には含まれていたらしい。幸いだったのは暴風雨の予報が当たらなかったことか。

 幕張で行われていたのはロッキン・オン主宰による「NO NUKES 2012」。1979年にスリーマイル島の原発事故を受けてマディスン・スクエア・ガーデンに20万人を集めたロック・コンサートからタイトルを借りたもので、収益はすべて「さようなら原発 一千万人署名市民の会」に寄付されるという。会場はギチギチではなく、顔見知りともなんなく遭えて、ケンゴから前の晩の首相官邸の様子を聞かせてもらう。なし崩し的に道路を占領してしまった前の週とは打って変わって警備は厳しくなり、地下鉄の駅から外に出られなかった人も多かったらしい。まー、予想できた事態ではあったけれど。https://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120707-00000301-alterna-soci

 幕張にはデモや首相官邸の前ほど緊張感はなく、僕らもだらだらと人の話や音楽に耳を傾ける。セット・チェンジの間には飯田哲也が再生エネルギーの可能性について語る映像がスクリーンに映し出されている。僕は送電線の自由化には反対なので、これはまったく聞く気がしない。門井くんが宮沢りえがいたというので、みんなでへーとかあーとか。YMOもクラフトワークも1曲目は"レイディオアクティヴィティ"だった(詳しくは朝日新聞に)。

 12時過ぎにユニットに到着、すでにシークレット扱いだったアンディ・ウェザオールが回している。パレ・シャンブルグの30周年というだけでなく、ユニットの8周年ということだからか、旧スタッフだったダブル・フェイマスの坂口修一郎も顔を見せている。彼はいま、毎月、鹿児島で脱原発イヴェントをオーガナイズし、昨日も駅前でUAのフリーライヴをやってきたという。原発が再稼動しないと仕事がないという地元の声も多いそうで、映画『シルクウッド』の話など。

 つーか、集中しようと思ってもウェザオールのDJが耳から抜けてしまう。砂原良徳はクラフトワークを蹴って、パレ・シャンブルグのステージを全部ヴィデオに収める許可をもらったと聞いた。だんだん落ち着かなくなってきて、僕もライヴの前に顔を見ておこうかなと思い、楽屋に行ってみると、ホルガー・ヒラーはかなり硬い表情。どうやら前日の大阪はあまり人が入らなかったらしい。これはマズいかなと思って、立ち去り際に「初来日も観に行きましたよ」と言うと、こっちが驚くほど表情が崩れ、とても柔和なムードに。初来日はちなみに萩尾望都さんと観に行ったので、2年前に萩尾さんに「覚えてます?」と訊いたら、ぜんぜん覚えてなかった(涙)。

 会場はすでに後方までぎっしり。DJカルチャーに興味がない人たちはこの時間を狙いすまして来たらしい。ステージに出てきたホルガー・ヒラーも最初から上機嫌で、ワーワー騒いでいるオーディエンスに「ドラッグでもやってるの?」とズレたジョークを飛ばし、1曲目の"キンダー・デル・トッド(子どもの死)"が終わると「ナイス・オーディエンス!」と、早くも満足そう。全体にオリジナルよりもテンポが遅く、ドラムが重いのか、単に腰が重いのか、狂ったように跳ねていたイメージはやや弱い。演奏もなんとか及第点というレヴェルで、30年間のブランクはありありだけど、ポップ・ミュージックにダダイズムを持ち込んだ発想はむしろそのまま新鮮に保たれていた印象も。
 もしくは演奏よりもいかにステージの上でふざけるかに力点が置かれていた感もあり、だんだん、左から面白おじさん(=トーマス・フェールマン)、不思議おじさん(=ホルガー・ヒラー)、トボケたおじさん(=ティモ・ブルンク)にしか見えなくなってくる。いつもクネクネしているフェールマンはさらにクネクネしまくって、あの顔がマジでタコの頭に見えてきた。ちなみに担当楽器はフェールマンがキーボードにトランペット、ヒラーがギター、シンセサイザー、タンバリン、ブルンクがベースで、ハートヴィッヒがドラムス。ホルガー・ヒラーの声はほんとにチャーミングだ。

 3曲目には、そして、なんと新曲を披露(サウンドクラウドにあがってるアレか?)。中盤には聴いたような聴かないような曲もいくつかあって、驚いたのは若い人の方が圧倒的に多いのに、アルバムには入ってない"テレフォン"で合唱は起きるわ(しかもドイツ語で)、コンピレイションにしか入っていない"アウシェンベッヒャー(灰皿)"にも強い反応が起こったり。ホルガー・ヒラーはいちいち「次は喜びについての歌です」とか「ハートブレイクについての歌です」と前振りがあってから曲に入るんだけど、"テレフォン"のときはフェールマンが携帯電話で話すポーズだけで、会場はわかった様子。ヒラーもそれ以上、説明はしなかった。デビュー・シングル「ローテ・リヒター(赤い点滅)」はタイトル通り、照明はすべて赤で統一され、"ハット・リーブン・ノッフ・ジヌ?(それでも人生は意味を持っている?)"ではかなりシリアスに、ひとりひとりに問いかけるように歌っていく。「次の曲はとても古い80年代の曲です」とヒラー。それを受けてブルンクが笑いながら何かを言ったのだけど、よく聞き取れなかった。流れからいって「さっきから、みんな80年代の曲だよ」と言ったのか? でも、パレ・シャンブルグの音楽性が確立される前の重いオルタナティヴな曲も演奏してくれた。初めからあのサウンドだったわけではなかったのである。

 おそらく誰もがあれはまだか? あれはまだか? と思いながら聴いていたに違いない。僕もクライマックスには持ってくるだろうと思っていたら、それは一回、引っ込んでから、まとめてアンコールでやってきた。アルバムの最初と最後を飾る"ヴィア・バウエン・アイネ・ノイエ・シュタット(我々は新しい都市を建設する)"と"マドンナ"である。1930年代にヒンデミットがアマチュア・オーケストラのために書いた曲に歌詞を書き足した前者は、オリジナル・ヴァージョンもヒラーとフェールマンによってレコーディングされ、パレ・シャンブルグのファースト・アルバムと同時期に〈アタ・タック〉からカセットでリリースされていた(それが06年にCD及びアナログで再発されたことが、もしかすると再結成に至る第一歩だったのかもしれない)。クラフトワークが70年代にロシア構成主義に立ち返ることで未来のサウンドを見出したように、この曲にもドイツの過去と未来が入り混じったような不思議な高揚感が宿っている。少し疲れたように見えたヒラーも再び生き生きと声を出していた。そして、"マドンナ"では悪乗りに近いパフォーマンスを見せて、すべては終わり。袖口に引き上げてきた彼らに並んでもらい、汗だくのメンバーを小原くんがびしっと撮影。ホルガー・ヒラーが「その写真、フェイスブックに使いたいから送ってね」という。

 間髪を入れず石野卓球のDJ。ほどなくしてフェールマンもサルーンで回しはじめる。掟ポルシェがいたので、しばらくニューウェイヴ談義。ほどなくして帰って寝て起きて寝ぼけたままピット・イン昼の部に向かう。迎え酒ならぬ秘宝感の迎えライヴを浴びていると、隣に座っていたのはチン↑ポムのライバル、スプツニ子だったので、初対面ながら女子アナ批判とか731部隊とかとりとめもなく話をしていたら、彼女が大学で専攻していたのは美術ではなく数学だったと聞いて、19時間前に聴いたクラフトワークの"ナンバーズ"が鮮やかによみがえってきた。1234567812345678......

寺尾紗穂 - ele-king

物云えば 今も昔もさびしげに 見らるる人の 抱く火の鳥
与謝野晶子 - 歌集『火の鳥』より

 音楽はいまでも鳴っている。多くは、慰めや、励ましや、大量生産された(=大量廃棄される)希望を伴って。彼らが、音楽を通じて引き受けられると過信している痛みとは、いったい誰のものなのだろうか......。そこからすると、寺尾紗穂、6枚目のフルレンス『青い夜のさよなら』、その"私は知らない"が見せる剥き出しの無力感はどうだ。自分が何も知らない人間であることを、寺尾は認める。社会のこと、他人の命のこと、愛のこと、そして、自分のこと。それらを知らないと、寺尾は認める。それは、過去への謝罪であり、未来への誠実さであり、表現者としての勇気である。卑下などでは、ないと思う。衒いなく言って、私は胸を強く、強く打たれた。

 私は知らない
 きれいな未来を
 あるのは泥のように続いていく日々
"私は知らない"

 彼女はいわゆる社会派とか、3.11以降とか、そのような文脈でマイクの前に立っているつもりではないようである。『青い夜のさよなら』で新しい段階へ達したのは間違いないが、寺尾のうたは、筆者や、これを読んでいるあなたの身近にいてもなんら不思議ではない、ひとりの女性による表現である。ラヴァーズ・フォークの透き通るようなソング・ブック『愛の秘密』(2009)を聴けばわかるように、与謝野の言を借りて言うなら、恋に命をかけて生きる女性という立場も、自分の人生の一部として寺尾は隠さずに描いている。というより、それこそが彼女の作品の根幹をなしてきたとさえ言えるだろう。

 本作でも、ほとんどの曲では、「私」と、「あなた」と、そのほかさまざまな登場人物たちが、それぞれに日々をやり繰りしている。そこには労働があり、酒場の喧騒があり、季節があり、恋があり、別れがある。一見、それはどこの誰が歌ってもよさそうな、ごくありふれた生活者の物語である。だから、あえて矮小化して言うのなら、どこにでもいるひとりの女性が抱える暮らしのなかの思想として、原発への関心があり、社会への疑いがあり、さらにはその陰に隠されたものへの眼差しがある、それだけのことなのだ。したがって、本来の順序から言えば、"私は知らない"が全国紙のレヴェルで注目を集めるのは、おかしな話でもある。「普段、音楽をあまり聴かない」という言葉を真に受けるなら、彼女はいまの状況に違和感を覚えているかもしれない。しかし、この国のポピュラー音楽は、そのような「物云う」表現を、汚らわしい特殊さ/異物として商業的に排除し、文化的に淘汰してきたのだ。

 だが、社会を考えることは、特定の専門知を持った人間の特権ではない。強固に思える小さな日常、しかし少し目線を転じたところに、世界はいくらでも転がっている。それに気付ける人と、気付けない人、あるいは気付きたい人と、気付きたくない人がいる。だから、寺尾は堂々と直進する。自分の表現に足る質量を持ったありのままの言葉に向かって、背筋を伸ばし、ツカツカと――。彼女自身、自分がやっていることが特殊だとは考えていないからこそ、それを素手で掴むことができるのだと思う。やがて、"私は知らない"に至り、これまで積み重ねられた愛の叙情詩、その繊細で薄い膜を、現実の重みが破る。悲鳴が聞こえる。太陽が隠され、血が流される。平穏が奪われていく。そして、新たな言葉が生まれる。新しい、音楽がはじまる。そもそもは2010年に原発労働者を歌った"私は知らない"は、いま、「みんな」に照準を合わせたプロテスト・ソングとして、2012年に流れる仮初めの平穏を撃っている。

 ひとり憂いを抱きしめて
 青い夜を見つめる
 無口な星群れが
 西へと去りゆく
"道行"

 もう一度、考えたい。ひとりの人間が、一方では個人の人生を全うしつつ、一方ではみんな(社会)のことを考える、というのは、どういう試みなのだろう。自らの日常に一喜一憂する一方で、会ったことも話したこともない人の悲しみに胸を痛める、というのは、どのような行為なのだろう。邪推を含むかもしれないが、寺尾は、自分の子孫の立場で未来を生きてみることで、その想像力を「誰か」まで届かせているのではないだろうか。すまし顔の一般論や、積まれただけの知識、教養としてではなく、命の現場で感じる生活意識として、彼女には社会を糾弾する批評のこころがあり、その根源的な思想は子どもという存在に、そして広くは生命に、太く注がれているのだと思う。それは、文学と恋に生きた情熱の歌人であり、11人にも及ぶ子女の母でもあった与謝野晶子が、いわば「産むことができる性」として、社会や因習への批評的な視線を尖鋭化させていった軌跡とも、どこかシンクロして見える。

 音楽的にも、本作は目覚ましい発展を遂げている。弾き語りに近いミニマムな編成でも素晴らしいものを作れることは、すでに何枚かのアルバムで示しているが、この『青い夜のさよなら』は、そこから広がりを得て、新たな連帯への準備が整えられた作品でもある。オープニングの"道行"のみ、個人の弾き語りで、その後の曲にはキセルから七尾旅人まで、実に強力なアレンジャーが揃っているが、とくに、『ミディ文庫』で自分でも書いているように、エレクトロニック音楽からの人選は嘘のような偶然からはじまったもので、彼女の歌に新しい表情と、色とりどりの背景を与えている。一連の連帯における始まりの始まり、その最初のひとりとなった大森琢磨が手掛けた"追想"は、ピアノの弾き語りをベースに、空間全体が震えるような電子音の揺らぎが付されている。

 また、Crystalが童話の雰囲気を演出した"老いぼれロバの歌"は、労働を主題にした古典寓話のような含みある世界。前述した「恋に命をかけて生きる女性という立場」という表現が許されるのなら、雲がちぎれるように終わった出会いを歌った"風のように"は、その立場でなされた裸の表現である。そして『青い夜のさよなら』は、中盤の核となる"私は知らない"を経て、聞き流すことを拒むような大作を終盤に並べた。交通事故を契機に、ふたつの遠く離れた世界が衝突して邂逅するダースレイダーの詞に寺尾がメロディを付け、鴨田潤が様々な効果音を盛り込んだ"はねたハネタ"はある種の歌劇で、詩人・平田俊子のことばを借り、四月を「人さらい」と呼ぶ別れのうた"富士山"は、橋本和昌の手によって9分を超すクラシカルなアレンジに仕上げられた(本作屈指の1曲!)。

 このあとに聴く、ラストのコズミック・フォーク"時よ止まれ"、個人的な好みとしては、この曲をもっとも多く聴いている。どことなくジャックスの"時計をとめて"を連想させるそれは、本作のなかにあっては簡素な部類に入る(ほぼ)弾き語りでの演奏だが、どんどん流れていく季節のなか、どうしても叶わない願いを前に、寺尾は祈りさえ燃やしてしまうような情熱を歌っている。重なり合うふたりの声は素晴らしい親和性を見せているが、もしかしたら、寺尾が「星」と呼ぶものと、アレンジャーの七尾旅人が「ビリオン・ヴォイシズ」と呼んだものは、あるいは同じものなのかもしれない。七尾は、発光するようなバック・コーラスで青い夜に幾千もの星をばらまいている......。それは息を呑むほど美しいのだ。

 ひとつだけ、注釈を挿すなら、『愛の秘密』(2009)までの作品や、彼女にとって大きな転機となったであろう、外国人労働者の人生を取り上げた"アジアの汗"(2010)にさえ、常に微笑みながら歌っているような独特の軽い調子、弾むような歌い回しがあったが、それは本作には、完全には引き継がれなかったし、本作のシリアスさは聴く人をある程度、選んでしまうかもしれない。だとしても、『青い夜のさよなら』には、望んで生まれたわけではない同時代への鋭い批評があり、望んで与えられたわけではない人生への戸惑いと喜びが満ちている。それを「役割」と呼んでしまえば、寺尾は頑なに拒絶するだろうが、彼女が内に抱く抵抗の意志、そしてそれと隣り合わせの怒りと途方もない無力感は、この国が眠らせたプロテスト・フォーク、あるいはそれに似た何かを起こしたのだろうか。青い夜、その寂しげなとばりを、火の鳥の声が刺すように響く――。

ベッドルーム・リスナーたちよ、外にも中はある。ダブやドローンやアンビエントをくぐって先鋭化をつづけるメディテーショナルなインディ・ミュージックを、いまもっともラディカルに追求するレーベルのひとつ〈100% Silk〉が日本を縦断! いまというときを記録すべく、あなたの目と耳はひとりの記者として彼らにひらかれていい。実際のところ数年後に彼らがどうなっているかなどわからない。だが事件性のあるイベントであることは間違いない。また、本誌『ele-king vol.6』でも登場願ったSapphire Slowsの存在は、若く名もない日本のアーティストたちを勇気づけるだろう。京都では〈Second Royal〉と、東京では〈Diskotopia〉と激突。各地のDJたちとの混淆も見逃せない。

詳細→https://www.inpartmaint.com/event_live_information/100silk.php

●07.13 (Fri) @ 大阪 | Osaka Clapper with OZ
LIVE: ITAL, Magic Touch, Sapphire Slows, Avec Avec, MADEGG

●07.14 (Sat) @ 京都 | Kyoto Metro with Second Royal
LIVE: ITAL, Mi Ami, Hotel Mexico DJ: Magic Touch
ACT: Magic Touch / HALFBY / Handsomeboy Technique / 田中亮太(club snoozer) /
Tomoh / 小野真 / 小山内信介
VJ: TR3

●07.15 (Sun) @ 名古屋 | Nagoya Live & Lounge Vio with Day In Day Out × picnic
LIVE: ITAL, Magic Touch, Mi Ami, Sapphire Slows
DJ: yusuke sadaoka (LC/OZ/FR) / Little P (WHITE/BLACK) / Y (Day In Day Out)
/ kinoko (picnic) / 2bn (PLAYON)

●07.20 (Fri) @ 仙台 | Sendai Club SHAFT with AFTER DARK
LIVE: ITAL, Magic Touch, Mi Ami, Sapphire Slows
DJ: kaaanji, APU, pruity, kenko, yoichi, K, ryuji

●07.21 (Sat) @ 東京 | Tokyo WWW with Diskotopia
LIVE: ITAL, Magic Touch, Mi Ami, Sapphire Slows,
DJ: A Taut Line, BD1982, Greeen Linez, Am Rhein, Mayu, CUZ ME PAIN



100% Silk ツアー / プロモーション / リリース情報
https://soundcloud.com/pdis_inpartmaint/sets/v-a-the-silk-road-1

100% Silk JAPAN Tour 2012 - ITAL, Magic Touch, Mi Ami, Sapphire Slows -
予告


IORI - ele-king

IORI - NEXUS
BITTA

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 太陽と海、そして米軍基地を内包し、本土とは異なる独自の歴史と文化が広がる沖縄は、その昔から独自のディスコ・カルチャーが育まれてきた地としても知られている。それは沖縄を代表するDJ、クリエイターであるTAKUJI a.k.a. GEETEKが作品で展開している「沖縄のバレアリック・フィール」と評される独特な折衷性からも意識させられることではあるし、DJ HIKARUやFRAN-KEYといったDJが移住したことで近年の沖縄シーンそのものもますますユニークなものになっているように感じられる。
 そんな2000年代後半の沖縄から、イギリスやドイツ発の作品リリースを通じて、急速にその名前が知られるようになったのがIORIだ。テクノやダブ、アンビエント、ドローンを溶かし込んだディープでストイックなトラックを繊細なタッチで空間的に鳴らすその作風は〈フューチャー・テラー〉を率いるDJ NOBUを虜にし、そのデビュー・アルバム『ネクサス』は彼が新たに立ち上げたレーベル、〈ビッタ〉の第1弾としてリリースされたばかり。そして、というか、やはりというか、沖縄の深海を思わせる音楽世界のさらに奥底には、彼がたどってきた驚くべき音楽遍歴が隠されていたのだった。

ニューヨーク滞在中に「ここで得たものを持ち帰って、沖縄でやりたい」っていう気持ちが芽生えて、帰国してからいままでずっと沖縄なんです。DJとしては、渡米前から火の玉ホールの第4火曜日に当時の沖縄で唯一のディープ・ハウス・パーティを8年間続けて......。

個人的に、IORIくんのことを知ったのは2008年にロンドンのサイト、ディープフリークエンシーではじまった不定期オンエアの番組「イオリ・ギャラクシー」がきっかけだったりするんですけど、最初はロンドン在住の方だと思っていたんです。

IORI:ははは。沖縄在住なんですけどね。でも、ロンドンやニューヨークとの絡みもあったりするから、わかりにくいといえば、わかりにくいですよね(笑)。

そのあたりのことを整理しつつ、お話をうかがいたいんですけど、沖縄に生まれ育ってたIORIくんがDJをはじめたのは2000年なんですね?

IORI:そうです。高校1年生のとき、那覇の国際通りにとある女の人がやってるアクセサリー・ショップがあって、学校帰りに友だちと買い物がてらたむろすようになって。そのお店にはターンテーブルやレコードが置いてあって、いつも面白い音楽がかかっていたので、その女の人といろいろ話すようになって、ハウスからアシュラみたいなジャーマン・ロックまで色々教えてもらったり、連れていってもらったパーティでいろんな沖縄のDJを紹介してもらったんです。

16歳で? それはかなりの早熟ですねー。

IORI:それで、雑誌『リミックス』の別冊で、ラリー(・レヴァン)が表紙の『ハウス・レジェンド』を貸してもらって、そのディスク・ガイドを参考に、レコードを集めるようになったんです。あと、僕には10歳上の姉がいるんですけど、音楽好きで、DJと付き合ったりしていたので、家にミックステープがたくさんあって、ヒップホップにハウスが混ざってるやつとか、フランキー・ナックルズのDJミックスとか、そういうテープから受けた影響も大きかったですし、そういう音楽体験があったからこそ、最初から特定のジャンルに限定せず音楽を聴くことができたんです。

当時の沖縄のクラブ・シーンはどういう状況だったんですか?

IORI:当時、那覇のクラブといったら、アンダーグラウンドな曲がかかる火の玉ホールがメインで、自分もよく遊びに行ってたので、レコード買ったり、遊んでいるのも知ってた店のオーナーから「学校を卒業したら、DJやれば?」って。だから、2000年、19歳の時に火の玉ホールで初めてDJをやらせてもらったんです。でも、沖縄って、地域によって色が違うんですね。那覇と、そこからちょっと上にいった沖縄市コザでも音楽性が違うし、92年に来沖したフランソワ(・ケヴォーキアン)とラリーの「ハーモニー・ツアー」もパーティをやったのもコザだったんですね。

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本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。

そして、2000年にDJをはじめて、その3年後に早くもニューヨークへ渡ったんですよね。

IORI:そうですね。まず、17歳の時にデヴィッド(・マンキューソ)が初めて沖縄でプレイしたんですけど、そのパーティへ遊びに行ったら、自分が聴いてるレコードの音が格段に違う鳴りだったことに最初の1曲めからぶっ飛んだというか、それ以前の夜遊びでは味わったことのない、ものすごい衝撃を受けたんです。で、その2年後にまたデヴィッドが来たとき、そのパーティをスタッフとして手伝っていたので、いっしょにご飯を食べたとき、「ニューヨークに行きたいんです」って話をしたら、「いつでもおいで」って。だから、その翌年、まずは旅行でニューヨークに行ったんですけど、行く前に当時彼のマネージャーだったタケシさんっていう日本人を通じてメールで連絡したら、スムーズに2週間泊めてくれたんです。で、その翌年の2003年に今度は向こうの大学に行く勢いで、長期滞在するためにニューヨークへ行ったんですけど、その時、「家が見つかるまで泊まっていいよ」っていう話から「部屋が空いてるから、ここに住めばいいんじゃない?」ってことになったんです。

そうやって気軽に出かけていくIORIくんの行動力もスゴいですけど、IORIくんを「住んでいいよ」って気軽に受け入れるデヴィッドも懐の広さもまたなんともはや。そして、もちろん、彼といっしょに生活しながら、色んなことを教えてもらった、と。

IORI:そうですね。もちろん、音楽が好きで来たことはデヴィッドも知っていたので、彼がパーティをやるときに手伝うようになったり、いっしょに生活するなかで、いろんな部分で影響されましたよね。ただ、彼は自分の家に機材を全部置いているわけでもなければ、僕が彼といっしょに住むまで、オーディオもつながれていなかったし、普段は一日じゅうラジオを聴きながら、パソコンで世界中の人とやりとりをしている人でした。そんななか、特に印象に残っているのは、レコードのコンディションに対する神経質なくらいの気の使い方であったり、サウンドシステムに対するきめ細かさ。僕は彼と同じレコード、同じサウンドシステムを扱っているわけではないんですけど、彼から学んだそうした心構えで、自分なりに音楽と接しているつもりです。

デヴィッドのレコードの扱い方というのは?

IORI:そんなに手入れはしてないんですよ。ただ、彼はすごいレコード針を使っているので、レコードのスクラッチ・ノイズを異常に嫌っていて、ちょっとでもスクラッチ・ノイズがあったらダメって感じなんですよ。だから、盤面には絶対に指紋をつけないというところからはじまって、レコードのインナースリーヴをすぐに取り出せる状態にはせず、ほこりが入らないようにしておくとか。彼にならって、僕もそうしていますし、彼からレコードを教えてもらったことはないんですけど、レコード棚を端から端まで見させてもらったり、彼はパーティでかけるレコードのだいたいの順番をあらかじめ決めるので、その曲順を書いた紙を「はい」って渡されて、僕がレコードをその順番に並べて箱に詰めたり。

でも、ニューヨークでのロフト体験やデヴィッドとの共同生活もありつつ、そのまま滞在せず、1年後には沖縄に帰られたんですよね?

IORI:そうなんですよ。ニューヨーク滞在中に「ここで得たものを持ち帰って、沖縄でやりたい」っていう気持ちが芽生えて、帰国してからいままでずっと沖縄なんです。DJとしては、渡米前から火の玉ホールの第4火曜日に当時の沖縄で唯一のディープ・ハウス・パーティを8年間続けて、平日でもコンスタントに5、60人入るような状況だったんですけど、火の玉ホールの移転を機にそのパーティも終わって。2008年から「ギャラクシー」っていうパーティをはじめて、今は桜坂にある"g"っていう小さいバーでやってるんですけど、そのパーティも今年で4年目になるのかな。

そして、2008年にロンドンのサイト、ディープフリークエンシーでそのパーティ名とも通ずる「イオリ・ギャラクシー」というネット・ラジオをはじめることになるわけですけど、沖縄にいながらにして、どういう経緯で番組を持つことになったんですか?

IORI:ニューヨークのロフトのパーティで知り合ったフランス人がロンドンに住んでいて、彼を訪ねてロンドンへ遊びに行ったんですよ。

あ、こないだ来日したDJのセドリック・ウーですか?

IORI:そうそう。その時、すでにセドリックもディープフリークエンシーで自分の枠を持っていて、ロンドン滞在中にゲストでDJさせてもらったんですよ。そうしたら、サイトのスタッフが気に入ってくれて、その翌月からレギュラーでやることになったんです。それまでオンライン・ラジオがどんなものなのかも知らなければ、もちろん、やったこともなくて、そのサイトも日本に帰って初めて見たっていうくらいだったんですけど、2時間の番組用の音源データを送って、最初の2年は月イチ、今は不定期でやってますね。

セドリックは要するにデヴィッドがロフトでパーティする時のスタッフというか、ロンドンのロフト・ファミリーですよね。

IORI:そう。ディープフリークエンシーをやってる同じフランス人のギヨームもロフト・クルーですし、同じくロフト・ファミリーでいまはイギリスに住んでるDJコスモもディープフリークエンシーで番組を持ってるんです。

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晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。

IOR - NEXUS
BITTA

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なるほど。世界がつながるロフト・コネクションがあるんですね。ちなみにIORIくんが音楽制作をはじめたのはいつからなんですか?

IORI:実は遅くて、本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。で、2008年にAbleton Liveっていうソフトを買って、そこからようやくですね。

でも、最初のシングル「ギャラクシーEP」がリリースされたのが2009年ですよね。作りはじめて1年くらいで作品リリース。しかもレーベルは、イギリスのレコード・ショップ、フォニカ主宰の〈フォニカ・ホワイト〉からっていうのも、これまたびっくりするような話ですよね。

IORI:そうなんですよ。音楽を作りはじめて、「これいいんじゃないか」って初めて思った曲をマイスペースにアップしたら、フォニカのスタッフがそれを聴いてくれてリリースにいたったという。で、その後の(ドイツのレーベル)〈プロローグ〉からのリリースもマイスペースがきっかけなんです。〈プロローグ〉もフォニカが出したいと言ってくれた曲をいいって言ってくれたんですけど、「もうフォニカからのリリースが決まってる」って答えたら、「じゃあ、デモ送って」って。

5月にリリースされたIORIくんのファースト・アルバム『ネクサス』に収録されている"ギャラクシー"の完成度の高さを思えば、そのエピソードも納得できるんですが、まさかマイスペースがきっかけとは驚きました。でも、お話をうかがってきたように、IORIくんのルーツはハウスやディスコ、ロフトだったりするはずなのに、その後のシングルやそれらトラックを収録した『ネクサス』を聴くと、テクノだったり、ドローン、アンビエントだったりするところが頭のなかでぱっとは結びつかないんですが。

IORI:でも、実はそういう音楽も昔から聴いていたんですよ。例えば、ベーシック・チャンネルだったり、アンビエントやマニエル・ゲッチングみたいなものまで、そういう陶酔して聴ける音楽も昔から大好きでしたし、ちょうど、"ギャラクシー"を作りはじめる前の2008年くらいから、テクノっておもしろいなって思うようになって、ベルグハインの存在を知ったのもその時期だし、自分が好きで買ってたレコードをチャートに挙げていたNOBUさんに気持ちが近づいていったのも全部同じ時期なんですよね。そして、「ギャラクシー」ってパーティにしてもいままでのソウルフルな部分ではなく、ストイックなテクノを主体とした内容を考えてはじめましたし、制作する音楽も自然とそういうものになっていって。

NOBUくんと実際に会ったのは?

IORI:沖縄のビー・グリーという箱と光さんがNOBUさんを招いてパーティをしたときなので、2年くらい前ですね。それ以前にも違う人が呼んで沖縄に来てるんですけど、その時のNOBUさんはまったく違うスタイルでディスコとかかけていたし、面識もなかったんですけど、2年前にいっしょにDJをやったり、話したりして意気投合して、去年、千葉のフューチャー・テラーにも呼んでもらったんですけど、フューチャー・テラーは......最高でしたね(笑)。うん、ひとつの遊びとして、ホントおもしろかった。僕はつねにおもしろい方向に向かっていきたいですから、自分のなかにはぜんぜん壁がないし、そういう壁を取っ払っていくのが僕たちの役目の一部でもあると思うので、そこは意識もしつつ、自然にやっていることだったりもしつつ。

そして、この3年でリリースしたのが17曲のオリジナルと2曲のリミックス。非常にハイペースで音楽制作に取り組まれていて、『ネクサス』はそのうちの7曲とオリジナル3曲をまとめた作品集になっています。

IORI:音楽制作は正解がない世界なので、いまも模索中というか、道のりは深いというか長いというか。そのなかでもがきながら作ったものを発表している感じですね。

沖縄という土地が音楽制作に与えている影響はご自分でどう思われます?

IORI:沖縄での音楽制作はいちばんフラットな気持ちで向かうことができるのかなって。それから沖縄での遊びは都会のそれとは全然違うので、ハングリーな気持ちも生まれるんだと思いますし、同時に沖縄ならではのレイドバック感もあるし。

これは個人の短絡的な意見ですけど、開放的な沖縄の環境を考えると、IORIくんのストイックでディープなトラックは異質なもののように感じるんですね。

IORI:それ、よく言われます(笑)。さすがに晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。でも、そうかと思えば、まだ発表してない曲のなかにゆるいものもたくさんありますし、太陽があう曲もあったりして。

それは聴いてみたいですね。

IORI:じつは、この『ネクサス』の沖縄っぽくないジャケット写真には秘密があって、これは曇りの日にモノクロで木の表面を表と裏から撮ったものなんですけど、その木というのはCDのトレイ下にレイアウトしてあるヤシの木なんですよ。音楽それ自体には沖縄っぽさを入れなくないとは思っていたんですけど、このアルバムは南からの一発っていうことでもあるので、こういうアート・ワークにしたんです。でも、実は今年、沖縄を出て、ベルリンに行こうと思っているんです。これまで作品をリリースしてきたのも全部ヨーロッパのレーベルですし、ここから先のさらなる挑戦をベルリンの地でしてみたいなって。

最後に余談になりますけど、IORIって名前はぱっと見て、性別がわからないじゃないですか。ディープフリークエンシーでIORIくんのことを知った自分は、「もしかすると、IORIっていうのは、イギリス人が使ってる日本語の名前なのかな」って思ったんですよ。で、そういえば、IORIって漢字で書くと「家」とか「小屋」を意味する「庵」じゃないですか。だから、もしかすると、これ、「ハウス」って意味なのかなとへんに深読みしてみたりして(笑)。

IORI:ははは。それは完全な深読みでしたね。あ、でも、あるとき、デヴィッドと話してて、「漢字って意味があるんだろ? お前の名前はどういう意味なんだ? 」って訊かれて、「ハウスだよ」って答えて、その場が盛り上がったなんてこともありましたね。僕の漢字は「伊織」なんですが(笑)。

Reptar - ele-king

 レプターはちっともクールではない。新しいところもない。それどころかほとんどの人にはヴァンパイア・ウィークエンドのパクリとしか聴こえないだろうし、『ガーディアン』のレヴューなどは「めちゃくちゃで何がしたいのかわからないし、全曲がどっかからの借り物で、無理して"変わり者感"を出したがっていて、吠えれば吠えるほど青くささが露呈するもはやただの中二」(意訳)ぐらいの言いようで目もあてられない。では実際のところどうかというとまあそのとおりというところもあって、ヴァンパイア・ウィークエンドの軽やかにひるがえる知性や、上品に抑制されたポップ・センス、典雅なビート感覚といったものが、ほぼすべて「ダンス・ロック」という言葉の粗雑さそのままに大味なディスコ化を施されたインディ・ポップへと矮小化されている。パッション・ピットと比較されるエレクトロニックなプロダクションは、チルウェイヴやここ最近のインディ・ダンスを通過した耳にはファットすぎてしんどいだろう。〈ラッキー・ナンバー〉自体、キースやセヴンティーン・エヴェーグリーンなど良質なバンドを抱えるものの、やはり一時代を隔してしまっている感がありふるさが否めない(もしかするとキースのつづきをUSインディのフィールドに夢みたのかもしれない)。満身創痍で、おまけに『ピッチフォーク』でも得点3.0と逆選がかけられている。いいとこなしだ。

 だが、けっして味がまずいのではない。ときには油でギトギトのポテト・フライも食べたいと思う。味が濃くて、ファスト・フード的ではあるが、だからこそおいしいというものがある。げんに筆者はこの「合法なダウンロードも取り締まるしかない」かもしれない音楽不況下で、お金を出して本作を聴いている。すくなくともレプターの「粗悪さ」にはそのくらいの強度がある。アセンズの4人組、2008年結成、このアルバムがデビュー・フルとなる。シングル・リリースされた"セバスチャン"や"イソプレン・バス""オリフィス・オリガミ"など、くっきりとしたフックにインフレするエモーション、感情の幅がせまくてはっきりとしているから、テレビアニメやテレビドラマと相性がいいかもしれない。"ハウスボート・ベイビーズ""サンキュー・グリース370b"など音数の多いMTVポップスも同様だ。登場人物やキャラクターが、めまぐるしく現れては消え、忘れがたい表情をのこしていく......OPのスピード感やEDの叙情性を容れるのに、とても適したフォームかもしれない。"スリー・シャイニング・サンズ"や"シティ・オブ・サンズ"はここぞというシーンを彩る叙情的な挿入曲となるだろう。80'Sポップスの消費性をオマージュし、批評的に取り込む作品は多いが、レプターは単純明快に消費的で、それでいてはらはらと心をたきつけてくるところがすがすがしくもある。

 2010年をまたいでからは、インディ・ミュージックにおいては粗食志向と入眠(ヒプナゴジック)音楽への傾向がいっそう加速している印象がある。ファットなものはあまり好まれていない。筆者はこの傾向をとても快く思う人間のひとりだ。だが、若い心と身体はもっと高カロリーなものを欲しないのかと、少しばかり不思議にも思ってきた。アニマル・コレクティヴをオーヴァーグラウンドなポップへと肉づけしたベン・アレンが、この作品の背後にもひかえている。アニコレの新作が騒音にみちて動的なものであることもふくめ、もう少し注意を払ってもよいのではないだろうか。

Shop Chart


1

J Dilla - Dillatroit Mahogani / US / 2012/7/1
超絶推薦盤!遂に入荷!<MAHOGANI>×J DILLA!!極上のJ DILLA未発表ビーツを軸に展開されるデトロイト・ブラックネス!KDJによるエクスクルーシヴ・エディット・テイクを収録。マスト盤。

2

DUMP - NYC Tonight Presspop Music / Zelone / US / 2012/6/30
パンク・ロッカーG.G.ALLINによる"NYC TONIGHT"を原曲の趣を一切排除し、まさかの極上ブリージン・ディスコへリメイクしてしまった最早カヴァーの域を超越した驚異的一枚。その JAMES MCNEW自身によるビートダウン・ブギーなディスコ・ロック・ヴァージョン、そして坂本慎太郎によるアコースティックな黄昏トロピカル・サマー・ヴァー ジョンの2テイク、共にインストも完備した鉄板内容で収録!

3

Richie Phoe - Echo Outernational Balance / US / 2012/6/28
レイドバックした極上メロウ・ダビー・ダウンテンポ山盛り収録!UK/ブライトン在住のクリエイターRICHIE PHOE絶品内容スギル傑作ファースト・アルバム!

4

Hikaru - High Psy (Limited Edition) Modulor Japan / JPN / 2012/6/20
※7inch付き限定盤今年も来ましたDJ HIKARUニュー・ミックス!万遍無い音楽愛に溢れた極上クロスオーヴァー・ミックス推薦盤!

5

Rodena Preston & The Voices Of Deliverance - Must Jesus Bare The Cross Alone (Joaquin Joe Claussell's Edit) Sacred Rhythm Music / US / 2012/6/30
JOE CLAUSSELL自身もパーティーの終盤など"ここぞ"というときにプレイしてきた至高のゴスペル・チューンRODENA PRESTON & THE VOICES OF DELIVERANCE"MUST JESUS BARE THE CROSS ALONE"を、DJユースに長尺化(オリジナルの倍近くとなる7分弱)したそのJOE CLAUSSELLエディットに加え、何とオリジナル・ヴァージョンもカップリング収録!

6

V.A. [Compiled, Edited And Mixed By The Idjut Boys] - 5 Years Of Claremont 56 Claremont 56 / UK / 2012/6/30
祝!<CLAREMONT 56>5周年!傑作リリース連発のレーベル音源をIDUJT BOYSが厳選セレクトしエクスクルーシヴ・エディット/コンパイル、そしてライブ・ミックスしてしまった豪華フルヴォリューム3枚組!

7

Mo-waii / DJ Shinya - Star House / Novo Samba NNNF / JPN / 2012/7/3
某プロデューサーの覆面プロジェクトMO-WAIIによる極上レイドバック・ダウンビート、そして前作に続く登場のDJ SHINYAによるブラジリアン・ブレイクビーツをカップリングしたリミテッド7"!

8

Almunia - Pulsar / The Magician Claremont 56 / UK / 2012/7/3
レーベル設立5周年を迎えた絶好調PAUL MURPHY主宰<CLAREMONT 56>が新たにフックアップするイタリアの注目バレアリック・デュオALMUNIA、昨年リリースの傑作アルバム「NEW MOON」に続く待望の新作12"シングル!

9

The Reflex - Re-Visions Vol.3 G.A.M.M. / SWE / 2012/6/27
<MOTOWN>を題材にしたTHE REFLEXによる好評「THE RE-VISIONS」シリーズ第3弾!STEVIE WONDER名曲郡の絶品リワーク/リエディット×3!

10

Slow Motion Replay Presents Dunk Shot Brothers - Love Celebration SMR / JPN / 2012/6/30
ONUR ENGINに触発された和モノ・レアグルーヴ・エディッツ!SLOW MOTION REPLAYのマッシュアップ/エディット・プロジェクトDUNK SHOT BROTHERSサード・リリース。

Chart by JET SET 2012.07.09 - ele-king

Shop Chart


1

Locussolus - Berghain / Telephone International Feel /
ウルグアイを拠点に構えるバレアリック・トップ・レーベル"International Feel"からリリースされた過去作全てがカルト・ヒットを記録しているDj Harveyを中心とした新プロジェクトLocussolusによる待望の新作2トラックス。

2

Marter - Comfort "Kuniyuki Takahashi Rmx" Jazzy Sport /
国内はもちろんのこと海外でも高い評価を獲得する、Marterがビート・ダウン~ハウス・シーンで多くの支持を獲得すること必至な強力盤をリリース!

3

Little Tempo - Golden Deluxe - The Best Of Little Tempo Sunshine /
説明不要のジャパニーズ・ダブ・バンド最高峰、リトルテンポ。結成20周年を記念した自身の選曲によるベスト・アルバムが登場!!なんと、Cd3枚組全45曲、豪華箱入りデジパック仕様。限定店舗のみとなるノベルティ・7インチ特典付きます。

4

Cornershop - Solid Gold Aniligital /
ごぞんじCornershopの最新アルバム『Urban Turban』収録のキラー・ディスコ・トラックが、ラメ入りゴールド・ディスクで完全限定ヴァイナル・カット!!

5

Major Lazer - Get Free Mad Decent /
説明不要の黄金タッグ、DiploとSwitchによる衝撃のミラクル・ポップ・ソング。Bonde Do Roleのリミックスをカップリングしたナンバリング入り完全限定盤!!

6

Almunia - Pulsar / The Magician Claremont 56 /
Ukバレアリック人気レーベル"Claremont 56"から、Leonardo Ceccanti & Gianluca Salvadoriのイタリアン・デュオ、Almuniaによるシングル第二弾が到着!!

7

James Mason - Rhythm Of Life Shout Productions /
レア・グルーヴ、ジャズ・ファンク、ディスコ・ブギー...Theo ParrishからMuroまで、ジャンルを超えDj/アーティスト達にも愛され続ける『Rhythm Of Life』が再発。

8

J Rocc & Rhettmatic - Beat Junkies 45 Series Volume 1 Fat Beats /
J Roccの呼びかけにより1992年Caにて結成。凄腕ターンテーブリスト集団として確固たる地位を築き上げ、ヒップホップをネクスト・レベルへ押し上げたレジェンダリー・クルー=Beat Junkiesから、7"シリーズがリリース!

9

Haruka - Easy Listening - /
Future TerrorのHarukaによる、アンビエント・ミックスが到着。アンビエント~ドローン~電子音楽~フィールド・レコーディング音源などをもとにミックス。アート・ワークは河野未彩さんが担当。

10

V.A. (Compiled, Edited And Mixed By The Idjut Boys) - 5 Years Of Claremont 56 Claremont 56 /
Paul Murphy手掛けるバレアリック~ニューディスコ系人気レーベル"Claremont 56"の設立5周年を記念した豪華3枚組アルバムが登場!!

CAN - ele-king

 カンは消えたはずのにくすぶりつづける燃えさしみたいなもので、五輪の聖火さながらに人知れず誰かにリレーされた熾火は忘れたころにどこかから狼煙をあげる。煙い。が、その煙たさは直裁にスモーカー的なそれというより、ジャマイカの音楽のセオリーを無視した野趣に通じる、常識の顔を曇らせる煙たさであり、表面的な部分でなく構造が問題になっているので、古びない上にちょっと寓話的だと思います。
 クラウトロックらしい喰えなさ、90年代に宇田川町のレコ屋のポップでよくみかけた「いなたさ」のようなものが、ホルガー・チューカイ、ヤキ・リーベツァイト、イルミン・シュミット、ミヒャエル・カローリのアンサンブルには脈打っていて、そこに黒人のマルコム・ムーニーやら日本人のダモ鈴木やらが絡みつくバンドの構成も独特だった。そしてそれはコスモポリタンの進歩主義ともグローバリズムの不可逆性ともちがう、牛や馬と人間が同等の、つまり寓話的な磁場をもつ世界だった。私は無論、差別しているわけでもないし博愛でもない。うまくいえないがある種のアナーキーズム、白石美雪さんの書いたジョン・ケージの本の副題「混沌ではなくアナーキー」と同じニュアンスを、あくまでロック・バンドの体をなしながら音楽における他者性を体現したバンドはカンを置いてほかにない。
 『ザ・ロスト・テープス』を聴いて、あらためてそう考えた。
 『ザ・ロスト・テープス』はその名の通り、カンの1968年から77年までのオリジナル作品に収録していないスタジオのボツ音源やサントラ用の曲、ライヴ音源など、未発表曲を集めた3枚組のハコもの。私は試聴盤がディスク1だけだったので全部は聴いていないが、とはいっても、これまでなぜ正式にリリースされなかったのか、首を捻るばかりのツブぞろいの楽曲が目白押しだ。冒頭の"Millionenspiel"はいかにもタランティーノが好きそうなB級スパイ映画のタイトルバックにぴったりのサーフィン~ガレージ系のスピード・チューンだが、これはじっさいドイツのテレビ映画に使われていたのだった。イルミン・シュミットが音楽を担当した縁での起用だったようだが、結成当時(68年)のカンを「音楽教育を受けたパンク・バンド」と述懐したチューカイの面目躍如たる、方法論を知悉しながら枠組みから逸れていく実験性をはやくもかいまみせている。カローリのギターの奇妙な歪み、チューカイの呪術的なベースライン、全体を鼓舞するヤキのドラムスに色をつけるイルミン、技術的に革新的なわけでもなく、むしろありふれたものであるかもしれないのに、カンが誰もマネできないところにいつづけられたのは、カンが発端には即興を最終的には編集を彼らのカギとしていたからだろう。そこでは、マルコム・ムーニー、ダモ鈴木たちノン・ミュージシャンは「音楽教育」の外の広大な非音楽の沃野に直結したバイパスの役割を担った。あるいは、カンというバンドをデフォルメないしキャラクタライズしたというべきか、ともあれ、カンのフロントマンは彼らでしかありえなかったのは、『モンスター・ムーヴィー』(69年)から『フューチャー・デイズ』(74年)まで、傑作が彼らの在籍時に集中していることからもわかる。もちろんカンのどれが傑作かは、みなさんいろいろ意見があって、語り合えば明日の朝までかえるのは目に見えているが、さいわいなことにこのハコには『アウト・オブ・リーチ』(78年)でミソがつくまでのカンの未発表音源がくまなく入っている。キマりきった吉幾三のような、ほとんど恐山仕込みにさえ聞こえるマルコムのヴォーカルが不穏な"Waiting For The Streetcar"、ドアーズの"Touch Me"を思わせるイルミンの鍵盤リフなど、ストレートなロック・モチーフとチューカイお得意の短波ラジオの音源をめまぐるしくカットアップした"Graublau"、20世紀実験音楽の典型ともいえる具体音や非楽音の使い方の牧歌的でありながらじつに骨太な感触、イルミン・シュミットが資料に寄せた通り、このハコのおもしろさはまずはカンの正規盤とはちがう、創作の課程を伝えるところにある。逆にいえば、20世紀でもっとも自律的な音楽的運動体のひとつだったカンというロック・バンドの生成変化の中身をみせるものともいえる。

 本作は30時間以上におよぶテープが元になっているという。以前イルミン・シュミットにインタヴューしたとき、彼はカンはスタジオでテープをまわしっぱなしにしてた、とにこやかに語っていたが、このハコをそれを裏づけるだけでなく、さらに膨大な未発表音源が眠っている可能性をも示唆している。全部出てきたら明日の朝といわず、三日三晩、寝ずに語り合わないといけない。

interview with Hot Chip - ele-king

 僕が欲しかったのは君だった
 さあ、僕らの最後の選択の時だ
 僕たち、どうやって嘘をついたり後知恵で批判したりするだろうか?
HOT CHIP "Don't Deny Your Heart"(2012)

 え~、またなの~? 親愛なる読者、どうかそう思わないで欲しい。来日ライヴはまるでパンクのコンサートのように、下手したらトリのブロック・パーティを食ってしまうほどの縦のりの大騒ぎだったホット・チップ。以下、バンドのフロントをつとめるふたり、アレクシス・テイラー(Alexis Taylor)とアル・ドイル(Al Doyle)といっしょに、実験的な取材を試みた......。


うん、髭のある女性は好きだな。とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。








Hot Chip

In Our Heads


Domino/ホステス


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野田:いいですか? 今回はひとつルールを決めたいと思います。「絶対に、本当のこと、真実を言ってはいけない」というルールです。

どうでしょう?


アレクシス:(即答)了解。いいよ。


アル:りょ、了解......難しいね(笑)!


野田:それでは「ホットチップくん」、よろしくお願いします。


オッケー。えー、まず最初に、Welcome to Japan! ということで、日本の好きなところはどこでしょう?


アル:(即答)何にも好きじゃない。嫌い。


(一同爆笑)


アル:こんな感じで行きますよー、みんな(笑)!


アレクシス:この視点で、ちょっと考え方を変えてみよう。なんで僕が日本を好きか。食べ物がシンプルで、ここで食べれる料理はひとつだけ。


アル:そうだね......(笑)!


アレクシス:ハンバーガーしかないから。まあ、いいんだけど。あと、住んでる人が......もっと愛想があったらいいのになと思う。


アル:ふふふふ......(笑)!


アレクシス:献身的じゃないし、秩序もないし、何事にも雑だから。いや、これ難しいね。こんな嘘をついてると、僕が無礼に聞こえない?


(一同爆笑)


アレクシス:でも嘘をつき続けなきゃいけないんだよね。もっと上手く答えていこうか。


好きな女の子のタイプは?


アル:アレクシス、これはマジでちょっと......(笑)!


アレクシス:これも嘘じゃないといけないんだよね? 了解。(しばし沈黙)......とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。


アル:うん、髭のある女性は好きだな。うん、髭か......気にしないけどね。


アレクシス:ほんと、こんなこと考えたことなかったよ。ねえ、やっぱり、ほら、すごく無礼に聞こえるよね?


アル:無礼になるのは愉しいよ! 日本では無礼な感じでいこう。ははは(笑)。


アレクシス:女性全員を不快にしてしまいそうだね。


心配しないで!「Don't Worry. There is nothing left to....」


アル:そうだね(笑)。


(註:アレクシスの別バンドであるアバウト・グループ≪About Group≫の曲"Don't Worry"の歌詞)


得意な楽器はなんですか?


アレクシス:僕はギターの才能が輝いてるよ。


(一同笑)


アレクシス:ギターに関してはハッキリと言える。それに、たぶん僕は世界一のギタリストだよ。惑星一だ。あとは、吹奏楽器ならなんでも得意。なんでもこいって感じだよ。


アル:僕も吹奏楽器は得意だな。


ほう。2010年のツアーでは"I Feel Better"のイントロでフリューゲル・ホルンをプレイしてましたね。


アル:そうそう。とても得意だよ......って、嘘つくのも大変だ!


アレクシス:これって僕らが嘘をついてることは読者に伝えてくれるの?


野田:もちろん、もちろん!


もちろん、もちろん! オフコース!


アレクシス:了解。いいよ。......でも、それも嘘かもしれないじゃない?


いやいやいや......なにもなにも......(笑)。


アル:ぷははははは! 了解(笑)。


このインタヴューはスペシャル・ゴージャス・ボーナス・トラックです!


アレクシス:了解。


アル:ははは、了解。気にしないで(笑)。


そう、そのロイヤル・トラックス(Royal Trux)みたいな感じです。


アレクシス&アル:ふふふふ......。


(註:『In Our Heads』のボーナス・トラック"Doctor"にはロイヤル・トラックスのニール・マイケル・ハガティ≪Neil Michael Hagerty≫がギターで参加しており、ロイヤル・トラックスのアルバム『Accelerator』のTシャツをインタヴュー時のアレクシスが着ていた)


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ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(「ギリシャ人」)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。

自分の好きなところはどこですか?

アレクシス:うーん......。僕は背が高くて......。

ふふふ......(笑)。

野田:うう(笑っていいのか気遣う)。

アレクシス:だから、見晴らしがいいところ。......僕の体型も好き。で......。

アル:僕は彼の体型きらいだけどね。ははははは!

野田:ははははは!(遂に笑う)

ふふふ(笑)。

アレクシス:......視覚が優れてること。で......、聴覚が素晴らしくて......、強い意志の力があるところも好き。......あらゆる悪に抵抗できることも。......それで......決断力もあるところ。

なるほど。あなたはアバウト・グループのリーダーですもんね。

アレクシス:いや、違うよ。

本当ですか、えっと、では。

アレクシス:17名いるメンバーのうちの1人でしかないよ。

17名?

アル:ふふふ(笑)。

ふふふ(笑)。了解しました。好きなダブステップのアーティストはいますか?

アル:(即答)スクリレックス(Skrillex)!

野田:ははははははは(爆笑)!

やっぱり(笑)!

アル:明らかでしょ!

アレクシス:僕は世に出ているダブステップに関するあらゆるものが好きで、ずっとずっと後世まで残ればいいなと思ってる。僕にとっては、もっともオリジナルでもっとも高尚な音楽のフォーマットかな。

はははは......!

アル:ふふふ(笑)。

レディオヘッドについてはどう思いますか?

(沈黙、5秒)

アレクシス:表現豊かで、......思慮があって、......とても音楽が美しい。とくに歌手の声がね。彼にしか触れられない心の琴線というのものに届くいてくるし......。

アル:ふふふ(笑)。

ふふふ(笑)。

アレクシス:で、......彼ら全員がレディング(Reading)出身というのに感心します。

アル:レディングという町にとても貢献してるよね。

(註:レディオヘッドはオックスフォード(Oxford)出身。ちなみに、ホット・チップのうちジョー・ゴッダード(Joe Goddard)はオックスフォード大学出身)

チャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットのようなポリティカルなミュージシャンとの共演についてはどのような感想をもっていますか?

アル:(即答)やったことない。

アレクシス:ないね。

(一同爆笑)

おおおお、了解、了解しました(笑)! では、とくにポリティカルなロバート・ワイアットのような人と共演したいと思いますか?

アレクシス:うーん、政治には興味がない。2012年以前に作られたどんな音楽にも興味がない。どれにもね。

アル:古臭いよね。

アレクシス:古くて霧のかかった音楽だよ。

アル:彼らには「黙れ、ジジイ」と言いたい。「黙ってればいいから。音楽やらなくていいから」と思うな。

(註:元ディス・ヒート≪This Hear≫として名高いチャールズ・ヘイワードは、ホット・チップの『One Life Stand』と『In Our Heads』にも参加しており、アバウト・グループのメンバーでもある。元ソフト・マシーン≪Soft Machine≫のロバート・ワイアットはホット・チップのリミックスEP『Made In The Dark』にヴォーカルで参加しており、ベルトラン・ブルガラ≪Bertrand Burgalat≫との曲"This Summer Night"をホット・チップがリミックスしている)

おふたりは、自分たちのことをプロフェッショナルだと思いますか?

アレクシス:んー......。

(しばしの沈黙)

アル:あー...、超難しい! 脳みそが燃えてる(笑)!

アレクシス:うーん、僕たちは......見た感じ、いまだにとってもアマチュアっぽく見えると思う、やることなにもかもにおいてね。僕たち自身が僕たちは音楽で生計を立てていると思っていたとしても、ね。たぶん、......僕たちをプロフェッショナルだと思っているのは、世界で僕たち自身だけだよ。

アル:ほう。ふふふ(笑)。

なるほど。

野田:ふふふ......(笑)。

アル:ふふふ......(笑)。

アレクシス:ふふふ......!(堪えきれず声を抑えて笑う)

野田:自分たちの音楽でいちばん伝えたくないことはなんですか?

アル:僕たちの感情とか、それと、欲望とか、うーん...。

アレクシス:楽しすぎる音楽は好きじゃないな。表現豊かな音楽も。

アル:そうだね......、退屈で現実に則していない音楽が好きかな、それと、うーん......。(笑)

アレクシス:僕はいつどんなときも、ダニエル・スパイサー(Daniel Spicer)という人がどんな音楽を作るかについて考えるんだ。彼は『Wire』誌のとても素敵な記者で......。

アル:はははははは(笑)!

アレクシス:彼は自分のバンドをもっていて、<Linkedin>というサイトに彼と記者として仕事をする機会を人びとに宣伝しているんだ。僕は、彼は世界でもっとも知的な人だと思うし......

ぷっははははは(笑)。

アレクシス:狭量なんてことはまったくないし、自分勝手に人を非難しないし、出身で人を判断することをしないし、音楽を聴くことに本当に集中していて、とても公平で、僕はいつも......発言するときには彼のことを考えてるんだ。

アル:なにかを決断するときも考えてるよ。音楽だけでなくて、生き方そのものについて、彼に教わっているね。

アレクシス:彼の口髭は全然好きじゃないんだけどね。

(註:ダニエル・スパイサーによるアバウト・グループの1stアルバムのレヴュー
 「ドラムがすべて(all about the drums)」で、他は取るに足らないといった旨である)

(註:また、アレクシスは『Wire』誌に直接メールを送ったようで、「ダニエル・スパイサーに、嫌いな人をレヴューでイラつかせるのをやめるようアドヴァイスしてくれないか。彼はなによりもまず最初に、僕のかけている眼鏡の種類にイチャモンをつけた。ジョン・コクソン≪同じアバウト・グループのJohn Coxon≫が同じフレームの眼鏡を『Wire』でかけていても攻撃しないのにね。どんなに度を超して幼稚な雑誌なんだろうと思った」という言葉が『Wire』誌に掲載されている。
https://www.exacteditions.com/read/the-wire/october-2011-9409/6/3/>

雑誌やウェブで、ホット・チップは「nerd」(ナード)や「wonk」(ウォンク)という語で「オタク」と形容されがちですが。

アル:うん。

その上で、"Night And Day"のようセクシュアルなことを歌うことについてはどう思っていますか。

アル:ははははは!

ちょっとセクシュアルですよね。

アレクシス:どう思っているか......。セックスについて書くことは本当に居心地が悪いし、いつだって避けようとしてるよ。それに......。

アル:それに、「オタク」という形容についても、僕たちはそういう期待に応えてきて......、そのイメージでキャリアを積んできたんだ。「オタク」のイメージも僕らから発信し出して、それから記者もそう書き出して......、それで......僕らが考えてたのは、パラダイムというか......。

アレクシス:実際のところ、僕たちがたくさんの記者を雇ったんだ。デビューするにあたって、言葉を広めて。

アル:イメージを作るためにね。

アレクシス:ただ、ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(グリーク。ギリシャ人)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(ギーク。オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。それがマイナスにも働いてしまって、遂には僕らが5人の「Geek」によるバンドだと嘘をつかなくてはならなくなって......、つまりさ、今日、実際、大変な時期を過ごしてるんだよ。

アル:うん、そのとおり。次のアルバムはギリシャの経済状況について書くよ。書くべきだよね。

野田:はははは......笑えないんだけど!

「Me and Ulysses」?

アル:そう、そういうこと(笑)!

アレクシス:ふふふふ......(笑)。

(註:ホット・チップがまだアレクシスとジョーのデュオだったデビュー・アルバム『Coming On Strong』では、ふたりのクレジットは「Ulysses and Sophocles」という古代ギリシャ人名の表記になっており、収録曲"Keep Fallin'"ではそのことを強調して歌っていた。)

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まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......


ご存知のとおり。昨年に僕がロンドンに行っておふたりに会う前には、日本では地震がありました。


アル:はい。


地震と津波によって原子力発電所がとても危険な状態になって、現在でも日本に住んでいて安全なのかどうかが実際にはわかりません。イギリスは最初に原発事故を経験している国ですよね。そこで、おふたりの原子力についての見解を教えてください。


アル:これで本当の意見を言えないのは大変なことになるよ!


野田:俺もそう思う。


アレクシス:ある性質があって......。


アル:了解、大丈夫だよ。


アレクシス:僕が思うにはね、まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......、エラーが起こる余地はなくて、現に僕たちもこうやってインタヴューで完全に真実を答えていることからも、それがわかるでしょう。


野田:ははははは。


アレクシス:インターネットは情報を発信していくのに最適な場所だから、なんのリスクもない。つまり言えることとしては......、僕たちは、原子力についての見解もインターネットの皆さんに任せます。


野田:そうきたか、なるほどねえ。


アル:ふふふふ......(苦笑)。


アレクシス:政治家っぽいでしょ。


アル&野田:だははははは。


野田:でも、ここはルールを解除して続けましょう。


オッケー。嘘ではなくて本当のことを。


アレクシス:でも僕たちがそのルールに則っているかってどうやってわかるの?


野田:逆襲されたね。


アレクシス:真実かどうか推測しなくちゃならないよ。


了解しました。


アル:日本ではすべての原発は止めたのだっけ?


残念なことに再稼動されようとしています(註:取材は6月22日)。


アル:ジェームス・ラヴロック(James Lovelock)という科学者(環境学者)がいて、彼は『ガイア理論(Gaia Theory)』を提唱して、書物を発表してるんだ。そこには、事故が起きた際の怖さや危険性があるのは承知しつつも、必要とされている電気を供給するには、他に代替エネルギーがない限りは基本的に原子力を利用しなければならないとある。イギリスだけでなくヨーロッパでも原子力利用に反対するムーヴメントはあるんだけど、まだ誰も十分な代替案を伴ってはいないんだよね。

 もちろん、原子力利用だけが答えじゃないよ。エネルギー使用を抑えるということもできると思う。この問題はもっと議論を深めないとならないことだよね。たとえば、チェルノブイリにしても、人間には大変な悪影響を及ぼしたけども、事故現場の周りでは自然の生態系は問題なく生きていた。そこでジェームス・ラヴロックが面白い提案をしていて、放射性廃棄物をアマゾンの奥地に移せばいいと言ってたんだ。そこに住む生物は構わないだろうし、ジャングルにも全体的に影響はない。人間はそこには絶対行かないしね。これもひとつの意見だよね......とはいえど、こういった話はミュージシャンが発言していいとは思わないけど......。


(註:ジェームス・ラヴロックは、コーンウォール在住のイギリスの環境学者で、地球をひとつの生命体という視点からエコロジーを論じた1979年の『地球生命圏 ガイアの科学』は日本でも話題となった。彼の理論に対しては批判もあり、温暖化に関する諸説には本人も過ちを認めている)


ふむ。


野田:原発に関して言えば、日本には地震があるうえに、民間マターでダメだったのに行政も良いほうに機能してないし、電気料は根上がるし......深刻な状況にあるんです。でも、いまのような意見は日本ではなかなか言えないことのひとつだよね。


アル:たしかに僕がこういうことを言うのは簡単なことであって、日本では困難だと思うんだ。事故の記憶はまだ鮮明だから。ひとまず事故の記憶から距離を置けるようになってから判断をしていくべきかもしれない。何が起きているのかを明らかにしなければいけないし、政治家が結論を下すのも、事故からいくらか年数を経る必要があると思うんだ。


ふむ。


野田:政府もこの数年でどんどん酷い事態になっているし......。


アレクシス:大きい規模の話のなかで意味があるかわからないけども......、あ、これは嘘じゃないよ、僕たちは津波の被災者のためのチャリティーに参加しているんだ。


ふむ。


アレクシス:映像作家のグレゴリー・ルード(Gregory Rood)が明確な態度をもっているバンドを集めたミュージック・ヴィデオのシリーズがあって、そのうち一組がホット・チップなんだ。僕たちの曲"Look At Where We Are"のヴィデオを日本のアニメ監督に作ってもらって、ヴァースの部分でマヘル・シャラル・ハシュ・バズ(Maher Shalal Hash Baz)という日本のバンドをフューチャリングしたものを、今年の後半に出せればいいなと思ってる。レコーディングは済んでいるのだけれども、詳細がどうなっているかは分からない。この活動が、基金であったり、被災者にとって何らかの意味のあるものとして機能してほしいなと思っています。


なるほど。Thank you!


アル:いいよ!(日本語で)「どういたしまして」。


どうしよう、何か聞きたいことあったのにな......忘れちゃったな......。


アル:ふふふふ(笑)。


これも嘘でなくて結構です。アレクシスはギターが上手いと答えてくれました。アレクシスはライヴのステージ上でギターを弾く時に"Hold On"でエフェクトを深くかけて弦をかきむしりノイズのような音を出したり、動きの小さいフレーズのみを弾いたりしていますね。ギターに対してコンプレックスがあるのかなと以前から感じていました。新曲の"Flutes"では「I put a prucked string today(今日は、弦楽器をひとつ乗せよう)/Beside a note you taught me play(きみが教えてくれた音色に合わせて)/A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)/Never again...Never again...(二度とない......二度とない......)」という歌詞がありますが、これはどういう意味なのでしょうか。実際のギターに関する体験なのですか?


アレクシス:これはギターに関して歌っているわけではないんだ。"Flutes"で僕が考えていたのは、僕の大好きなザ・ビーチ・ボーイズの音楽への認識についてで、あ、これも嘘じゃないよ。


アル:あはははは(笑)!


アレクシス:『ペット・サウンズ』は、音楽に何個も新しいタンブラーを導入して新しいテクスチャーを導入したアルバムだと思うんだ。ブライアン・ウィルソンは、普通だったらポップ・ソングでは同時に鳴らさないような楽器を重ねて、それぞれに同じラインを演奏させて、レイヤーを作ったからね。そこで僕がさっきの歌詞で考えていたのは、reed instrument(簧楽器)の隣でバンジョーみたいな「prucked string」(撥弦楽器)を鳴らすことで......。僕の音楽部屋にはペダルの付いたハーモニウムを持っていて、それが「A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)」の意味なんだ。だから僕が歌っていたのは、ブライアン・ウィルソンが僕の隣で演奏を聴いていて、アレンジを教えてくれている画なんだ。「wooden box」(ハーモニウム)を「prucked string」(撥弦楽器)の隣で鳴らすんだ、みたいにね。


なるほど。


アレクシス:でも、なんで「Never again...Never again...(二度とない......二度とない...)」と歌ったのかはまったく憶えていないな。この曲の歌詞はジョーが新しい音楽を送ってくれることにとても関係してて......、だからたぶん、こんなに音楽的にエキサイティングな瞬間は二度とないかもしれないということを言っていたんだと思う。提供者であるジョーからこの曲を受けとって、唯一無二なクリエイションの時間に興奮しすぎてたんだね。


ふふふふ。


アレクシス:そして、ギターに関して......ギターを弾くのは本当にとても好きだよ。いいサウンドは作れると思うんだけど、演奏に自信がない楽器は他にもあるんだ。アルはとてもいいギタリストだし、ロブ(Rob Smoughton。ホット・チップに初期から関わっており、現在もライヴやレコーディングに参加している。ソロ・プロジェクトはGrovesnor)もいいよね。ただ、オーウェン(Owen Clarke)も僕と同じで、あらかじめ決められた演奏はできるけど、ナチュラルにギターを弾くということができないんだ。でも、アルはスティール・パンとかフリューゲル・ホルンもここ数年で練習をはじめだしてステージでも演奏しているし、自信があって得意な楽器だけでなく、熟知してなくて自信がないような楽器にも挑戦していくことがいいと思っているよ。


アル:そうだね。


なるほど。ありがとうございます。


アル:ありがとう。


もう終わりの時間ですね。では、最後にひとつ嘘をついてくれますか?


アル&アレクシス:いいよ!


(アレクシス、声を抑えて笑う)


いままでの人生で、嘘をついたことはありますか?


アル:ハハ、ハハハハハハハー......!


(沈黙、10秒)


(野田、耐え切れず声を抑えて笑う)


アレクシス:僕は嘘ばかりついて生きてきた。真実を話したのは、6月22日の12:20(註:インタヴュー開始時間)からだけで、それまでの32年間は嘘まみれの人生だった。


アル:ははは......そうだね(笑)。


野田:ふふふふふ(満足そうに笑う)!


アレクシス:付け加えておくと、僕はジャーナリストに真実を語ったことはないよ。


野田:うまい。Thank you very much for nice answers!


ありがとうございました!


アレクシス&アル:ありがとう!


Please take a rest(どうぞゆっくり休んでください)。


アレクシス:ははは!


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