REFUGEE MARKETの空気感 文:巻紗葉 a.k.a. KEY
Fla$hBackSFL$8KS FL$Nation & Cracks Brothers.Co,Ltd |
わたしがFebb a.k.a. Young Masonの存在を知ったのは、確か2年前に池袋bedで行われたREFUGEE MARKETだった。中は相変わらずの盛況ぶりで人ごみが苦手なわたしは友人とともに、入口の前でおしゃべりをしていた。そのとき、Febbというまだ非常に若いがラップもトラックも作る少年がいるということを教えてもらった。じつはそのときにKID FRESINOの話も聞いていたが、友人は彼を本名の名字で読んでいたため、つい最近までその人物がKID FRESINOであるということを知らなかった。
日本においては縮小の一途を辿るヒップホップ業界だが、まだ20歳にも満たない少年たちがトラックメイキングやラップをしているという事実が単純に面白かったので、彼らの存在はずっと頭の片隅に残っていた。そして昨年が終わろうとしている頃、FebbがjjjとKID FRESINOとともにFla$hBackSというグループを結成し、『FL$8KS』というアルバムをリリースするということで早速音源を入手した。一聴してなるほど、わたしが彼らの存在をどこでもないREFUGEE MARKETで知ったのはある種の必然であったんだな、と気付いた。ソウルフルなネタ使いをベースにゆったりとした横揺れの"Fla$hBackS"や、ブラックスプロイテーションを想起させるファンキーな"2014"など、そこから感じさせられるのは前述のREFUGEE MARKETの空気感だった。もっと言えば、ISSUGI、Mr.PUG、仙人掌、16FlipからなるMONJUなのだ。もちろん彼らがMONJUの猿真似であるということではなく、Fla$hBackSはDOWN NORTH CAMPのクルーがREFUGEE MARKETという現場を通じて行ってきた良質なヒップホップの根を絶やさない活動から産まれたひとつの成果であるということだ。
アメリカン・ハードロックを思わせるギター・ソロをユニークな感覚で切り取り、アッパーなブラック・ミュージックに組み替えてしまった"Cowboy"(タイトルも人を舐めているような不敵さがあっていい)などから感じさせるセンスは、彼らがただフレッシュであるだけで注目されているわけではないことの証明だろう。
ただひとつだけ苦言を述べるのであれば、それはパンチラインの少なさかもしれない。このアルバムを象徴するような力強いワンパンチがあれば、この作品の価値はさらに上がったことだろう。しかしそれも彼らの年齢を考えれば、まだまだ心配するようなことでもない気もするが。本作とISSUGIの大傑作アルバム『EARR』と聴き比べるのも面白いかもしれない。
文:巻紗葉 a.k.a. KEY
[[SplitPage]]ラップの根源的な快楽へ 文:中里 友
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ミックステープ『1999』がブレイク・ポイントとなったJoey Bada$$をはじめ、彼が率いるPRO ERAのクルー、Schoolboy QやKendrick Lamarも所属するBlack Hippy、〈Brainfeeder〉と契約を果たし、ミクステ『Indigoism』も好評のThe Underachiever、それにFlatbush Zombies、レイダー・クラン......ジャンル内で多様化が進むなか、いま列記した連中の作る曲は質感としては粗野で生々しく、つんのめった初期衝動的な高揚感がある。それが「90年代的」と評されるのも納得いく話だと思う。こうした90年代をリヴァイヴァルせんとする機運を多くの人が感じているとは思うが、トレンドというよりむしろ、90年代に幼年を過ごした少年たちがロールモデルに選んだのが、若かりし頃のNasであり、2Pacであるかのような、そういった印象を受ける。サウンドをとってみれば、ここ日本でも同様の現象は起きている。
2月にリリースされたライムスターの最新作『ダーティー・サイエンス』は、DJ JIN曰くジェレマイア・ジェミーのサウンドに影響を受けたという。そこから、80年後期~90年代前半のハードなローファイ・サウンドのトラックに対比して、よりアップデートした「いま」のラップを乗せるというアルバムのコンセプトが生まれたのだが、イリシット・ツボイの貢献により、よりカオティックで荒々しい印象を持たせることに成功している。去年からOMSBやsoakubeatsの作品など、示し合せたようにラフで攻撃的なラップものが続くなか、ようやくのフィジカル・リリースを果たしたFla$hBackSは少し趣きが違っていた。腰を落ち着けたリズムをとりながら、ひたすらクールで散文的にカットアップされたリリック、それに煌びやかなトラック......瑞々しい若さによって彼らは別の道筋で90年代を再解釈、アップデートしてみせた。コンセプチュアルで計算された作品のなか、息せき切ったような早いBPMで、言葉にエモーションを込めるライムスターとは、まるで対照的だった。
そういえば、「90年代生まれによる90年代再解釈の......」と野田努が評する通り、いつかクラブで会ったとき、Febbは、1994年生まれの彼は90年代の音楽に対する憧憬をはっきりと語ってくれた。TETRAD THE GANG OF FOURのメンバーであるSPERBと共にCrack Brothersなる不定ユニットでも活動する彼は、16歳でGOLD FINGER'S KITCHENのMPC BATTLEの本戦でベスト4へすすむトラック・センスを持つ。しかし、個人的にはなんといっても、彼のラップを素晴らしいと思う。Crack Brothersの音源の他、Black SwanコンピやBCDMGでの客演でも彼のラップが聴けるので、興味がある方は是非チェックしてほしい。どっしりと胴を据えながら、B.D.やNIPPSのように、ゴロ合わせのようにはめていくラップ。それはときに連想ゲームのようにイマジネーティヴな単語の連なりであったり、ときには刺激的なパンチラインとしてするりと耳に入ってくる。そうした(勿論痛快でカッコいい)ラップが、ともすれば「ドープ」だとか「玄人好み」という言葉に回収されてしまいそうになってしまうところを、より開かれた音楽としてメロウに、そして時にロマンチックでフレッシュなものにしているのは、Fla$hBackSの音楽性の形成に大きく寄与したjjjのトラックのおかげだろう。声ネタを多用したソウルフルで華やかな上モノ、緩急入れた力強いビートはインスト物として聴いても十分に楽しめるほど。彼の作品集『ggg』はもちろん、個性派ラッパーとしていま注目のあべともなりに提供している楽曲"ヨルナンデス"は、彼の独特のタイム感や野性的な一面をうまく引き出した素晴らしいトラック・ワークだ。そしてFla$hBackS第3の男、KID FRESINOもトラック・メイキングとDJの他に、ラップをはじめたということで(アルバムが早くも4月3日に〈Down North Camp〉からリリース予定)、Fla$hBackS本隊にどんな作用が起きるか、いまから楽しみでしかたない。
そして、もうひとつ。Fla$hBackSを聴いてヤラれてしまったポイントがある。それは歌詞の合間、もしくはイントロ・アウトロに挿入される相づちや掛け声、シャウトアウトなど、おそらくは彼らのリリック・ノートにも記されていない言葉のカッコよさだ。人によっては拍を取ったり、ラップを入れる前のチューニング感覚に近い。
もっと言うとそれは、単なる「ノリ」で発せられることが大きいのだけれど、なんといっても、その「ノリ」がとても重要だ。何故なら、自然と発せられたそうした言葉こそが、何より彼らの特別なセンスを表すものでもある。相方がラップしている
裏で、好きにスピットする言葉が曲に躍動感を吹き込み、新たな情報を加える。決して雑な印象はなく、むしろそれが聴いていて、とても気持ち良いのだ。Febbが時折入れる「A-ha」はとてもチャーミングだし、jjjの名前ひとつとっても、音が楽しい。何を言っているかはさして重要ではなく、彼らが発せざるを得なかった言葉が持つ響きが、ジャストなスパイスとして効いている。
Down North CampやBlack Smokerの関連諸作等々、歌詞カードを掲載しないアーティストたちに共通しているのは、言葉の持つ意味性に囚われすぎず、音として純粋に楽しんでほしいという気持ちの表れであることは明らかだ。だがそれ以上に、彼らが純粋培養し、大切にしてきた仲間内の独特のノリを感じとってほしいがためなのかもしれない。総じてゆるいBPMであることも、個々の自由なノリを重視すればこそだと思えば、合点がいく。もしかしたら、彼らは90年代なものに回帰しているのではなくて、ラップをすることの、ヒップホップをやることの、根源的な快楽へと立ち返っているのかもしれない。付け加えていうなら、それは遊び心溢れる実験性への道でもあるはずだ。いま、何度かの最盛期を迎えているこの音楽が、また新たなステージに向かっているように感じられてならない。
文:中里 友


トラックスマンと聞いて「Footwork On Air」みたいなの期待した人、ごめんなさい。でもすぐに快感に変わるのでそのままお付き合いください。音を分析するまでもなく、ノイズ、キック、スネア。その3つの音しか鳴ってない。リズムにほんのり施されたリバーブがアシッドハウス全盛期のTRAXレコーズを髣髴とさせる。間違いなくキラーチューン。早くプレイしたい!
シカゴの若手ホープDJ Tayeのフルアルバム。16ビートと3連符の交差の中で起こる体感スピードのコントロールが絶妙。僕のお気に入りは12曲目「Roll Up」。ロール・アップって言葉だけで色々表現してます。ボイスサンプリングがクドいなんてもう誰にも言わせない。CDもリリースされたとのことなので日本のショップにも並ぶことを期待。レーベル名は「DJ Taye」。弱冠18歳の若者が1人で全部こなす。1人1レーベル時代の到来です。
自分のレーベルでスミマセン。でも素晴らしいんですこのEP。静岡の隼人6号が手掛ける、ジュークとジャングルの融合。筋金入りのジャングリストの彼だからできるハイブリッドな世界観を、今後拡大しえるヨーロッパのジュークシーンにぶち込みたいと思っています。
シカゴから凄いプロモが送られて来た。GETO DJ'Zというクルーに所属する若手K. Lockeは、先輩のTraxmanから学んだ打ち込みスキルとDJ Spinnのようなスムースなネタ使い感を兼ね揃えたトラックメイカー。今後注目を浴びること間違いなし。間もなくお披露目できると思いますので、名前だけでも覚えといてください。
横浜のBoogie Mannことタカミチ・ヒロイは、神奈川の若いジュークトラックメイカーが集うShinkaronというレーベルに所属。昨年末にファーストEPをリリース。中でも「Take Me Back」で見せるスネアとネタの畳み掛けるビートが最高。ファーストにしてこのクオリティー。マジかよ。期待を込めてランクイン。
シカゴのTRIBEというクルーは、ユーチューブを通じていち早くフットワークダンスを日本のファンに教えてくれました。その熱意&ボスのラシャド・ハリスの猛烈な押しに負けて、クルーのトラックメイカー筆頭であるAvery76のEPを我々のBooty Tuneからリリースしました。彼のトラック全般に漂うミッドなテーストは、ジューク=速くて忙しい音楽、という先入観がある人にこそ聴いて欲しい音です。
シカゴ・ジュークだけじゃなくもちろんデトロイト・ジット(ゲットーテック)もチェックしてますよ。オーストラリアを代表するゲットーテックトラックメイカーTyphonicがフランスのBooty Callからリリース。オススメは4曲目「Early」。彼のお得意デトロイトテーストなシンセリフで疾走するゲットーテック。本場デトロイトではリリースが止まっちゃってるけど、ゲットーテックは死なない。
先日、ファーストアルバムとリリースパーティー「Shin-Juke」にて鮮烈なデビューを飾ったクレイジーケニー。そのアルバムの16曲目に収録されたこの曲。凶悪なベースサウンドから湧き出た甘いネタ使いがめちゃくちゃ好きなんだよねー。ヤンキーに優しくされてキュンとする女の子ってこういう気持ちなのかなあ。あー書いてたらむかついてきた。
シカゴのトラックメイカーは若い。彼は17歳。とにかく元気なジューク満載。でもネタ使いがやたらおっさんっぽいんだよね。たまらなくツボ。4曲目「Hero」で爆笑しました。でタイトルが「デジタルジューク」テキトー。でもこれこそがシカゴ。彼のトラックは最近、高確率でプレイしてます。なんせ分かりやすい。
ラップ無しのサタポのオリジナルトラック「Battle Creek Brawl」が先にリリースされてて、その曲が大好きでずっと聴いてましたが、アルバム「160OR80」ではその曲にPUNPEEのラップがモダンなネタに隠れた、ストップ&ゴーを繰り返すフットワークビートを確実に捕らえることで、未知なるグルーヴを放っています。PUNPEE氏に圧巻です。





