「NotNotFun」と一致するもの

BO NINGEN × COMANECHI - ele-king


BO NINGEN
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コマネチ
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 グローバルな現代において、海外に音楽を届けること自体は簡単なことのかもしれない。ただ、実際に足を運び、さらに海外を拠点に活動をするとなると、そう簡単にはいかない。
 だからこそ、ボー・ニンゲンとコマネチがイギリスを拠点に活動し、『NME』からも評価され、ザ・ホラーズやザ・ドラムスなどからも認められているという事実に、僕たちはもっと注目すべきだろう。ボー・ニンゲンに関しては、新作『ライン・ザ・ウォール』の国内リリースが2月27日に決定しているので、今後、日本でもより幅広く注目されることになりそうだ。

 ロンドンを拠点に活動をしているアキコは、近年、ザ・ビッグ・ピンクを辞め、コマネチの活動に専念。2月14日には、セカンド・アルバム、『ユー・オゥ・ミー・ナッシング・バット・ラヴ』をリリースしている。グランジからの影響を強く感じさせ、ボディソニック・ビートとヘヴィなギターがいろんな角度から飛んでくる。ノイジーで、ハードで、パンキッシュだが、多くのリスナーがアプローチしやすい音楽でもある。
 スタイリッシュだが型にまったくはまらないクールさという点では、ボー・ニンゲンと似ているのかもしれない。

 去る2月、同時期に新作もリリースし、共通点も多いボー・ニンゲンとコマネチが日本でツアーした。これは、バンドでヴォーカルを務めるボー・ニンゲンのタイゲン、そしてコマネチのアキコとの対談。言いたい放題過ぎるふたりの対談、どうぞ、お楽しみください。

やっぱね、人生、リスク背負った方がええよ。理由つけて親があかんとかお金ないとかそんなんばっかり。たしかに現実問題で無理なんかも知らんけど、ほんまにそれくらい真剣に考えてんやったら、飛び出せっ!!!

イギリスを拠点に活動をする日本人、そしてリリースもほぼ同じタイミングということで共通点の多いおふた方ですが、せっかくの機会なので、今日はおふたりが普段あまり話せないことや、訊けないことを対談という形式でやれたらと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。早速なのですが、イギリスの嫌いな点を思いつくだけ挙げてください。

タイゲン:うわ、それたぶん100個くらい出てくる! だってコマネチのイギリス人のふたりが言ってたもんね(笑)。

アキコ:そう、だってドラムのチャーリーなんか日本に住める言うてたよ。

(笑)

タイゲン:とりあえず皆パッて言うのは、間違いなくご飯。

アキコ:ご飯! 例えば、今回帰って気づくんは、24時以降とか、お腹空いたらイギリスやとケバブかチップスしかないのよ。 お惣菜とかおにぎり一個食べたいなとかそういうのがないもん。

タイゲン:あとイギリスってライヴ後の打ち上げにご飯を食べにいくっていう文化がなくて、飲むだけみたいな。

アキコ:わかる!

タイゲン:そのくせにあんまり飲まないし。

アキコ:そうそう。 あれ疲れるよなぁ、結構。

タイゲン:あと単純にイギリス・ツアーしててもご飯の替えがない。どこ行っても同じっていうか。

アキコ:そう。 名古屋やったら、うなぎとか、手羽先とか、あるでしょ? 大阪やったら、たこ焼き、お好み焼きとかさ、そういうのないもん!

タイゲン:まったくないね。コマネチのイギリス人のふたりも、日本に着いてサービス・エリアの時点で感動してたからね(笑)。

アキコ:なんか、「なんでこんな美味しいの!」って、いままで朝ご飯っていったらベーコン・エッグしか知らんかったとか言うてたわ。

(笑)

タイゲン:食文化っていうのがまずあって、バンドで言うと僕はあれですね、イギリスって怠く演奏するのがかっこいいみたいなの多くない?

アキコ:たしかに。

タイゲン:日本のバンドはイギリスに比べるとまじめじゃん?

アキコ:それはある!

タイゲン:まじめすぎるのは良くないにしろ、テクニック、モチベーション、アティチュードにしろ、心持ちというか、音楽に対する向かい方というかさ、なんか惰性的な気がする......。

イギリスで活動をするということは、必然的に同業者はイギリス人が多いわけですよね。実際、日本人とイギリス人の相性みたいなものはどうなんですか?

タイゲン:意外と合う......かな? どっちもシャイだよね。

アキコ:うん。 シャイ。

長く滞在するうえで、人間関係などはあまり苦にならないのですか?

アキコ:いやでも、なんていうか......。

タイゲン:雑だよね。

アキコ:めっちゃ雑!!

タイゲン:時間ルーズだし、適当......。

では逆に、イギリスの良い点はなんでしょうか?

アキコ:え、ちょっと待って、あたしらまだ2個しか言うてないやん。

(笑)

アキコ:あとはね、汚い。

タイゲン:汚いねー(笑)。

アキコ:道も汚いし、バスも汚いし、食べたゴミとかポイ捨てするし、こっち帰って来たら、ゴミなんか絶対捨てたくないって思うもん!

タイゲン:紳士の国と言われていますが、紳士の割合は相当低い! あと教育が行き届いてないですね。

アキコ:マナーとか礼儀みたいな。

タイゲン:格差もある。親が金持ちでプライヴェート・スクールというか、それと公立とのね。

アキコ:食べ物も凄いよ。

タイゲン:また食べ物になっちゃうけど(笑)。

しかし、おふたりはそんなイギリスに拠点を置いて実際に生活しているわけであって(笑)、良いところももちろんありますよね?

タイゲン:うん(笑)。とりあえず音楽活動に関しては、凄いやりやすい。

アキコ:やりやすい! やりやすい!

具体的にどういったところがですか?

タイゲン:例えば、日本だとノルマというものがあって、えっと、ちなみにアキコちゃんは日本で活動してた?

アキコ:してない。 ちなみにノルマってどういう意味?

タイゲン:「ペイ・トュー・プレイ」。

アキコ:うそー!!! 自分らでお金払って演奏させて貰うの?!

タイゲン:というか、チケットが売れないと自分たちで払うの。

アキコ:えーーーーーー!!!!!  あ、でもイギリスにもそういうセコいプロモーターおるよね。

タイゲン:セックス・ピストルズがDJするからとか言って釣ってくる奴とかいるけど、でもだいたいはないじゃん? ちょっとはお金貰えるかもしれないし、赤にはならない気がする。

アキコ:たしかになー。

タイゲン:あと人がよく混ざってライヴに来るよね。ホラーズがぽつっと来たりさ、ファッションの人とか、アートの人とかが普通にお客さんとして観に来てくれて、それがコラボに繋がったりするし。

アキコ:日本やったら、上下関係みたいなのあるでしょ? そんなん関係ないもん、イギリス。日本だとあれがあるじゃん、えーっと、ほら、あれ、なんやったっけ?

タイゲン:ごますり?

アキコ:そうそう。

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うちらがやってるようなアンダーグラウンドとメインストリームがちゃんと繋がってるよね、階段が架かってるというか。バンドのノルマとかもないから、最初は1回のライヴ20ポンドみたいなところからはじまって、だんだん50~100くらいに上がってって、っで、メジャーになっていくっていうかさ。

堅苦しくないという意味では、イギリスは良いと。

タイゲン:そうそう! 砕けてるっていうか、友だちみたいな感じでお客さんがライヴ後に話しかけてくれるし、そういうアーティストとお客さんの関係みたいなものは凄くいいなって思って。日本だと、物販で本人が手売りしてたけど、申し訳なくなって、家帰った後にアマゾンでCDポチった(購入)とかツイッターで書いてあったりして(笑)。

アキコ:あー! それ私も言われた。前回コマネチで日本ツアーした時に、なんか7インチのシングル買って、サインして貰いたいから会場に持ってきたのに恥ずかしくて頼まれへんかったって!

でもそれ凄いわかりますけどね(笑)。

タイゲン:あとイギリスの良い点でいうと、日本だとどうしてもアーティストとプロモーター、会社の人でも、イコールに成りづらいというか、上から見てくるか、下から見てくるかどっちかになっちゃうかなっていう感じがする。イギリスは結構そういった意味では対等っていうかさ。

アキコ:イギリスやとお客さんとアーティストが一緒みたいな感じやけど、こっちやったらファンの人が崇めてるような感じがあるもんね。

タイゲン:そこらへんに関しては凄く自然体だよね。あと音楽的にも、うちらがやってるようなアンダーグラウンドとメインストリームがちゃんと繋がってるよね、階段が架かってるというか。さっきも言ったけど、バンドのノルマとかもないから、最初は1回のライヴ20ポンドみたいなところからはじまって、だんだん50~100くらいに上がってって、っで、メジャーになっていくっていうかさ。

アキコ:そうそう! 繋がってる、繋がってる。

タイゲン:日本だとメジャーになるときに、凄いステップ・アップがあって、ノルマが無くなるまでがまず大変っていうか、めちゃくちゃジャンプしなくちゃダメで、しかもそこからギャラが出るまでがあって、ギャラがあってから食えるようになるまでがまたあって、凄い階段が一段一段デカいんだけど、イギリスだと逆に一段一段、じょじょに上がっていく感じというか。

アキコ:うん、わかる。

タイゲン:だからイギリスに関しては、まず音楽活動がやりやすいっていうのがあるかなーって僕は思うけどね。


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先ほど、コラボまでの流れもイギリスだと自然だと仰っていましたが、例えば、ボー・ニンゲンの"Nichijyou"という曲ではサヴェイジズのヴォーカル、ジェニー・ベスがフューチャリングで参加しています。あのコラボはどういった成り立ちで生まれたものなのでしょうか?

タイゲン:もともと凄い前に、彼女が以前やってたプロジェクトで対バンしてて、うちのレーヴェルとも仲良かったからたまに話してて、っでゲスト・ヴォーカル探してる時に、彼女は? って言われて、いいかもねって。普通に友だちのノリで聞いてみて、じゃあやるよって。本当そんな感じ。

アキコ:そういうのよくあるよ。お金払うからリミックスしてくださいとかさ、そういう風に頼んでやるんじゃなくて、「レッツ!」 ていうかさ、一緒にやろう! みたいなね。

タイゲン:うんうん!

以前、たいげん君がエレキングのインタヴューで、海外(イギリス)を拠点に活動をする理由に対して、「日本にいないからこその日本人らしさや日本の良さをちゃんと見ることが出来るから」って言ってたのが凄く印象に残っているのですが、アキコさんにとっての海外を拠点に活動する理由ってなんですか?

アキコ:単純に世界に飛び出したいと思ったからかな。日本で活動してたら日本語で歌わなきゃとかやっぱり思うし、でもイギリスやったら、まあロックの発祥地やし、自由に音楽やりやすそうなイメージはあったし、さっきの話じゃないけど、もっと広がりやすいかなって、おっきく世界に。日本で活動するんもええんやけど、あたしはそれが嫌やった。

タイゲン君も、まず高校を卒業した時点で、日本という選択肢はなかったと言ってましたよね。

タイゲン:うん。

アキコ:あたしもそうやった。日本出たときに、帰らへんって思ってたから。そういう気持で行ったからね。例えば日本で売れて、おっきくなっても、あたしにとってそれは成功じゃないから、他の国の人、このバンド知ってんの? ってなるでしょ。

なるほど。では次に、逆に日本の良い点はなんだと思いますか? これも思いつくだけ挙げてください。

タイゲン:飯はもういろいろ話尽くしたから(笑)、音楽的にいったら、お客さん凄い観てくれるよね?

アキコ:うーん......、でもノリ悪くない?

タイゲン:まぁ、そういう場所もあるけど(笑)、いやでも場所次第だと思うよ。さっきの姿勢の話じゃないけど、日本の場合は全体的に、音楽をやることに対してのストイックさみたいなものは、イギリスにはなかなか無い点だと思う。ノルマ制度があるからこその敷居の高さみたいなものは実際ある気がするし、下手だったらライヴ・ハウスで演奏出来ないんじゃないか? みたいな、いい意味での争いがあるよね。

"海外に出ていない"と仮定するとしたら、現在どのように日本で活動しますか? そもそも、日本で活動しますか?

タイゲン:うーん......、してるとは願いたい(笑)。

アキコ:ねぇねぇ、あたし、たいげん君に質問したいねんけど?

あ、どうぞ!(笑)

アキコ:イギリス行ったときに、日本人のメンバー探してた?

タイゲン:ううん。

アキコ:じゃあ、なんで日本人だけのメンバーになったの?

タイゲン:僕、最初バンドを5個くらいやってたんだけど、ちなみに担当は全部ベースで、イギリス人やらフランス人やら、いろんな国の人と活動してた中で、ギターのこうへい君にまず出会って、外人とジャムってるうちに、ギターのゆうきに出会って、もんちゃんに出会って、っで気づいたらこの形になってたっていう(笑)。でも別に日本人を募集してたわけじゃないよ。イギリス人と一緒にやってたバンドとかも、引き続き活動はしてたんだけど、解散したり、国に帰ったり、そうこうしてるうちにボー・ニンゲンが忙しくなってった感じかな。

逆に、アキコさんはどうだったんですか?

アキコ:あたしは海外に出て、向こうの音楽やりたいってなったから、日本人と組む気はなかったね。って、なんかレイシストっぽいかな?(笑)。

タイゲン:いやいや(笑)、日本出てきたわけだから、それは普通じゃん?

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日本出たときに、帰らへんって思ってたから。そういう気持で行ったからね。例えば日本で売れて、おっきくなっても、あたしにとってそれは成功じゃないから、他の国の人、このバンド知ってんの? ってなるでしょ。


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ちなみに、タイゲン君とアキコさんとの出会いはどのような感じだったんですか?

タイゲン:スタジオだ!!

アキコ:違う! 前から知っとったんやで。

タイゲン:うそ!

アキコ:スクリーミング・ティー・パーティが〈ストールン・レコーディングス〉で頑張ってたときに、コマネチで対バンしたのよ。っで仲良くなって、スクリーミング・ティー・パーティのマイスペース見たら、ボー・ニンゲンがトップ・フレンドに入っとって(笑)。

マイスペース懐かしいですね(笑)。

タイゲン:マイスペースっていい時代だったよね(笑)

アキコ:いい時代やった(笑)。そんでクリックしたら、もう一発で気に入って。

タイゲン:ああ、ありがとう(笑)。

アキコ:そんとき流れたのが、"人生一度きり"で、そんでこのバンドむっちゃええ! ってなって、まわりの友だちとかにも言っとった。あたしがビッグ・ピンクやってたときとかも、サポートはボー・ニンゲンがいいってお願いしてたもん。 実現せえへんかったけど。

タイゲン:でも最初に会ったのはスタジオだよね?

アキコ:うん、スタジオ(笑)。別のバンドやっとったときにスタジオで会って、あたし写真撮るの好きやから、写真撮らせて貰って

タイゲン:いきなり第一声にして、「あれやろ? "人生一度きり"やろ?」 って言われたの覚えてる(笑)。

アキコ:「歌詞もめっちゃいいし、わかるわ~!!!」言うて(笑)。

タイゲン:ははははははは!

(笑)

タイゲン:なんか、スタジオとかでもさ、日本だと同じスタジオで練習してるバンドとあんまり仲良くなったりしない気がするんだけど、だってスタジオの紹介でチャーリーもコマネチに入ったんでしょ?

アキコ:うん。なんかそういう場所での対抗意識はないよね!

タイゲン:うんうん! 友だちの紹介とか、スタジオで知り合ったとかさ、そういう人間関係がいい意味で軽いノリっていうか。

アキコ:軽いノリ。だから「バンドやんねん!」とかそういうことを深刻に考えるんじゃなくてね。あっ、そうそう、話が逸れるけど、この間ね、とある人があたしに、LAに住んでる日本人の友だちがバンドはじめたいって言ってんねんけど、どうしたらいいんかアキコちゃん、アドヴァイスしてあげてくれませんか? って、え? アドヴァイスするようなことちゃうやん! って、バンドやりたかったら普通に友だちとか、音楽好きな子らとかと話したりして、この子らこんな音が好きやねんなって、それでじゃあバンドやってみーへんってなるやん。

(笑)。

タイゲン:ギターのこうへい君と出会ったとき、まだギター歴2年とかだったし、こうへい君に出会えたのがイギリスだったっていうのは大きかったのかなってたまに思う。お互い。

おふたりは、ヤックのマリコさんともお知り合いなんですよね? 現地のシーンにも、日本人のコミュニティみたいなものがあるんでしょうか?

タイゲン:とくにはないかな。イギリス人、日本人関係なく、音楽とか人柄とかで共鳴しあってるだけだと思うし、たまたまそこが日本人だったっていうだけで、日本人だから連むっていうわけではないかな。

アキコ:まぁ、家が近いからっていうのもあるよね(笑)。でもそういうのはまったくないよ。気が合うから。

タイゲン:日本のシーンの良い点は、いわゆる、何々系って言われるくらい、イギリスと比べたら、実際めっちゃたくさんかっこいいシーンで溢れてる印象だけど、逆に閉鎖的な気もする。コマネチもボー・ニンゲンも、あとヤックとかもさ、音は違うけど、ちゃんと交流があるし、対バンもするじゃん。

アキコ:なんか、自分らのやってるジャンルじゃなくても、みんな他の音楽も気に入って観に行ったりするし、イギリスは観に行きやすいよね。安いし、いろんなところでライヴがあるし、皆、オープン!

コマネチで言えば、ザ・ドラムスとのツアーが記憶に新しいのですが、彼らとのツアーもまさにそういう感じで動き出したんですか?

アキコ:そうなんですよ。昔はあたしも閉鎖的で、聴く耳を持たないときもあってんねんけど、先入観というかね、でもビッグ・ピンクやってたときに、『NME』ツアーで仲良くなって、そんときも音が全然ちゃうし、最初ドラムスのことはそんなに良いとか思ってなかったんけど、聴くたんびに好きになって、ポップやなぁ~思て、コマネチでやるときも、ほんまに、ブッキング・エージェンシーなく、今度こっち来んねんてね! サポートしていい? って連絡したらすぐオーケー出て、ベス・ディットーのゴシップもそうやし。彼らは昔からツアーを頑張ってて、そんときからあたしよくライヴ観に行ったりしてて、コマネチでも小さい会場のときからサポートもしてたんけど、いまでも、イギリス帰って来たらコマネチでサポートしてって、どんなにおっきくなっても向こうから連絡来る。見捨てへん、うちらのこと。

タイゲン:地に足ついてるバンド多いよね。ホラーズも本当にそうだし、めっちゃ良い奴らだよね!

アキコ:なんかあたしいまレストランでバイトしてんねんけど、そこに毎日来るんですよ、ホラーズ(笑)。

ははははははははは

タイゲン:売れっ子のロック・スター感ゼロだよね! なんか初めてうちらのライヴ観に来てくれたときも、すげー良かったってベースのリースが言ってきてくれたんだけど、オレもバンドやってるんだって、最初から偉そうな感じじゃなくて、僕がどんなバンドやってんの? って聞いてから、ちゃんと、ホラーズって凄く丁寧に答えてくれて。

アキコ:電話番号も向こうからくれるし、それで今度お好み焼き作るから食べにおいでって言うたら、ほんまに来てん(笑)。

タイゲン:はははははははは

アキコ:うちに(笑)。

タイゲン:共鳴しあって、単純に何かやろうってときに、少なからずの壁みたいなものが無いからこその、やりやすさみたいなものはやっぱりあるかな。それはイギリスの良い点、だね。

イギリスとその他ヨーロッパの違いはどのように感じていますか?

タイゲン:国によって反応は違うけど

アキコ:違う! でも他のヨーロッパより、イギリスのほうが音楽を発信してるよね。

タイゲン:やっぱり、他のヨーロッパのバンドもイギリスに来たがってるし、逆にイギリスは来られ成れてるから、まぁホスピタリティーは最悪なんだけど(笑)、でもさっきも言ったけど、チャンスが多い環境があるからね、イギリスには。イギリスの音楽業界、僕は健康だと思うんだよね。

アキコ:うん。

現在のアメリカのシーンについてはどう思いますか?

タイゲン:最近ジュークっていうのが流行ってるでしょ、知ってる?

アキコ:知らん。

タイゲン:僕も知らなくて、それでツイッター見て、あれはアメリカだよね。

アキコ:ジュークって日本のあの......

タイゲン:違います! 違います! うちのドライヴァーと同じジョークを言わないでくれ(笑)!

(笑)

タイゲン:あとイー・ディー・エムとか。イギリスだとあんまり聞かないけどね。なんかでも影響的な部分で言ったら、アメリカが強くなってきてるのかなってちょっと感じるけどね。日本はとくに。

以前、イギリスのティースやザ・ビッチズなどのバンドは、イギリス・シーンの不満を吐露し、ティースに関しては実際にアメリカに拠点を移しました。現状としては、個人的に、僕もアメリカの方がシーンが活発な印象を受けているのですが、それに関してはどう思いますか?

タイゲン:残念だね、でもアメリカはまだ行ったことがないからなぁ~。なんとも言えないんだけど、コマネチは行ったことある?

アキコ:コマネチの前のバンドで行った!

タイゲン:どうだった?

アキコ:うーん......、シーンとかはよくわからんけど、活動をするうえでは大変やよ、辛い! なんかやりにくかったなぁ、アメリカはデカイから、移動が12時間やったり。

タイゲン:なるほどね。

では、海外のバンドとしっかりコンタクトを取りながらも、日本でのツアーもしっかりこなし、非常に上手いヴァランスで活動をされているおふた方ですが、これから海外に活動を展開しようと思っている日本のバンドやアーティストにメッセージを送るとしたら、どんな言葉を送りますか?

タイゲン:とりあえず、出て、やるしかない(笑)。

アキコ:それしかないやろ(笑)。やっぱね、人生、リスク背負った方がええよ。理由つけて親があかんとかお金ないとかそんなんばっかり。たしかに現実問題で無理なんかも知らんけど、ほんまにそれくらい真剣に考えてんやったら、飛び出せっ!!! 

Blue Hawaii - ele-king

 グライムスを生んだカナダのD.I.Yなアート・スペース〈アルバタス〉から、ブルー・ハワイのセカンド・アルバムが届けられた。彼らの名は2010年のデビュー作(『ブルーミング・サマー』)において、当時ピークを迎えつつあったチルウェイヴの一端として知った方も多いのではないだろうか。2013年を迎えるいま、その多くは次の方向を模索しながら、あるいはアンビエントへ、あるいはハウスへ、R&Bへ等々とさまざまに拡散する状況を迎えているが、たとえばトロ・イ・モワハウ・トゥ・ドレス・ウェル、そしていくつかのレーベルがそうであるように、より自らのアイデンティティを深く彫り出しながらテクニックの洗練を目指すものが多いことは間違いない。

 ブルー・ハワイもまたその例外ではない。彼らの場合は、〈4AD〉的な幽玄、スタンデルプレストンのアシッディなヴォーカルに焦点が絞られつつある印象だ。エレクトロニックなアシッド・フォークと言ってしまってよいかもしれない。"デイジー"のようにミニマルなビートを追求したダンス・トラックもあるが、リンダ・パーハックスのポスト・チルウェイヴ版といった趣もある。要するに、歌もの志向を強めたエレクトロニックなサイケ・アルバムに仕上がっており、迷いないディレクションがなされていると感じる良盤だ。

 さて、ブルー・ハワイは男女デュオであるが、今作『アントゥゲザー』のジャケット写真には多少驚かされる。いや、これが映画DVDのアートワークならば驚くには当たらず、「何か恋人たちの物語なのだろう」で終了なのだが、アー写から判断するにこれは本人たち自身なのである(ですよね?)。加工が施されているとはいえ、モデルではなく自身らが抱き合うフォトグラフを用いるのは、それなりに勇気を必要とすることではないだろうか。しかもトリオ以上の編成におけるふたりならともかく、デュオ中のふたりという他者性を容れない関係性や、視点が相互の間で完結する抱擁のコンポジションが意味するところは、本作が愛をめぐるコンセプチュアルなアルバムであるか、彼らがとにかく愛しあっているか、しかない。そこで急に男女デュオという編成が気になりはじめる。

 インディ・シーンにおいて男女や夫婦のユニットは多く見かけるが、ピーキング・ライツやハラランビデスのようにドープなフィーリングを持った夫婦デュオの一方には、ピュリティ・リングやハウシーズのようにペアかどうか曖昧な、そのあたりみずみずしい微妙さを残した年若いアーティストたちもいる。男女デュオがパートナー同士であることは、そうでない場合とはやはり異なってくるのではないだろうか。男女ペアで過度な接触を生みながら行われるアイス・ダンスなどを見ていると、競技者同士がつきあっている場合、互いをプライヴェートに知るからこそ生まれる表現やアドバンテージがあったりするのではないかという気がしてくる。デイデラスとそのパートナー、ローラ・ダーリントンによるユニット、ザ・ロング・ロストなどは、非常にインティメットで睦まじいムードのドリーム・ポップ作品をリリースしている。彼らのアルバムほどラブラブであることが全面化されていて、かつそれがストレートに音を研磨している作品は珍しいが、ブルー・ハワイの今作には、色合いは違えどそれに近いものを感じる。

 と思っていたら、国内盤のライナーにふたりがカップルであることが明記されていたので膝を打った。しかも、トラックメイカーであるアレックス・アゴー・コワン(男性側)が、ラファエル・スタンデルプレストンに片思いをしていたという顛末まであえて明記されているから素晴らしい。ナイスな解説だ。このことは、ゴシップであるようでいてじつは本質的なトピックなのだ。スタンデルプレストンのヴォーカルをいかにコワンのトラックがサポートし、彼女が光となるように注意を払っているか、そのことを裏付けるようなエピソードである。もともとブレイズのヴォーカルとしても知られる存在だが、キャリアの有無を超えて、コワンの音やビートメイクには彼女への憧れや優しさのようなものがにじんでいる。自らは影として、歌がより自由に、より遠くまで届くためにふるまうときに最大値を示す、というような......。トラックメイカーのエゴは相応には必要なものだが、サポートするという非エゴイスティックな行為に全エゴが振り向けられるというあり方は、やはりカップルならではの持ち味ではないかと思う。前作よりもエディット感が出ていて、ベース・ミュージックからの影響もスマートに消化され、かなりテクニカルなものではあるのだが、この「出すぎない美」の正体はなるほど相手への想いであったかと納得した。

 そのわりにタイトルが『アントゥゲザー』、詞がいやに暗鬱な調子を帯びているところもなかなか好みだ。さまざまに拒絶と保留の態度を描写し、「刑務所の愛」とまで形容しながら、「わたしはもっとあなたを愛しに来た」と結ぶなんというヤンデレ。グライムスが天を舞う小悪魔だとすれば、スタンデルプレストンは地を這う天使というところだろうか。「アン」をつけることでしか「トゥゲザー」を表現できない彼女の詞は、彼女のヴォーカルのなかにほんとうによく表現されている。

ふたたび浮かび上がる巨影 - ele-king

 明日はいよいよアンディ・ストット東京公演を目撃することができるわけだが、マンチェスターのアンダーグラウンド・ヒーロー、デムダイク・ステアの再来日もまた外すわけにはいかない。〈ファンダーズ・キーパーズ〉の一員でもあるショーン・キャンティ、ドーター・オブ・ザ・インダストリアル・レヴォリューションとしても知られるペンドル・コーヴンの片割れMLZによる同ユニット。行き過ぎた音の発掘屋と絶対零度なドローンの使い手が、われわれに見せてくれる風景とは......。
 紙ele-kingも絶賛準備中の次号は「新工業主義(ニュー・インダストリアル)」特集。ちょうど1年前にも本誌ではきっちりと記事を組んでいるが、ひきつづき彼らの活躍やその意義を次号の特集内にてもキャプチャーしていきたい。シーンに横たわる黒々とした巨影、デムダイク・ステアふたたびの公演を見逃すな!

2013.03.19 TUE
root&branch/UNIT presents DEMDIKE STARE

<UNIT>
DEMDIKE STARE (MODERN LOVE, UK) LIVE A/V
DJ NOBU (BITTA/FUTURE TERROR)
MLZ (MODERN LOVE, UK)
STEVEN PORTER (10LABEL/SEMANTICA RECORDS/ WEEVIL NEIGHBOURHOOD) LIVE

<SALOON>
COMPUMA
Shhhhh

OPEN/START : 23:00
CHARGE : ADV 3,000yen / DOOR 3,500yen(TIL 24:00 3,000yen)
※未成年者の入場不可・要顔写真付きID

TICKET : 【一般発売】3/3(SUN) on sale
Lawson Ticket / e+ / CLUBBERIA ONLINE SHOP / TECHNIQUE

INFO : 代官山UNIT 03-5459-8630

Andy Stott、DeepChird等と並びUK、Modern Loveレーベル所属の代表アーティストとしてマニアから絶大なる指示を得るDemdike Stare。2011年末からリリースを開始した1000枚限定のアナログ4部作をコンパイルしたダブル・アルバム『Elemental』も話題のダーク・エクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックの最先鋒の再来日が決定。
当日はDemdike Stareのライブに加え、Demdike Stare、Pendle Covenのメンバーでありソロでも数多くの作品をリリースしているMLZがDJとしてもプレイ。日本からはFuture Terror、Bittaを主宰し現在最もその動向が注目されるDJ NOBUのDJとSuvrecaの主宰するSemantica Recordsのカタログにも名を連ねるSteven Porterが貴重なLive Setで参加。更に階下のSaloonではワールド・ミュージックから現代音楽までを網羅するCompumaとShhhhhが特異な空間を演出する。





コーネリアスの「あ」 - ele-king

教育テレビ......といまは言わないのだろうか、NHK Eテレにて放送中の教育番組「デザインあ」が東京ミッドタウン内21_21 DESIGN SIGHTに出現している。同番組の内容が展覧会として再組織されており、番組が掲げる「デザインマインドの育成」というテーマに沿って、音や映像を中心にさまざまな展示がなされた楽しい空間だ。ディレクターには総合指導を行なう佐藤卓、番組制作にかかわる中村勇吾に加え、コーネリアスの名も見える。音をめぐってコーネリアスが2つのコーナーを手掛けていることもあり、音楽ファンにも楽しめそうな場所である。館内では撮影も可能。いちはやく春休みを迎えたかたは行ってみられたい。


企画展「デザインあ展」

■会期 : 2013年2月8日(金)〜2013年6月2日(日)

■休館日 : 火曜日(4月30日は開館)

■開館時間 : 11:00〜20:00(入場は19:30まで)
*3月23日(土)は六本木アートナイト開催に合わせ、通常20:00閉館のところを特別に24:00まで開館延長します(最終入場は23:30)

■入場料 : 一般1,000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料
*15名以上は各料金から200円割引
*障害者手帳をお持ちの方と、その付き添いの方1名は無料
その他各種割引についてはウェブサイトをご覧ください

■会場 : 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHTでは、2013年2月より、「デザインあ展」を開催いたします。NHK Eテレで放送中の教育番組「デザインあ」を、展覧会というかたちに発展させた企画です。

展覧会のテーマは、「デザインマインド」。日々の生活や行動をするうえで欠かせないのが、洞察力や創造力とともに、無意識的に物事の適正を判断する身体能力です。ここでは、この両面について育まれる能力を「デザインマインド」と呼ぶことにいたします。

多種多様な情報が迅速に手元に届く時代を迎え、ただ受け身の生活に留まることなく、大切なものを一人ひとりが感じとり、選択し、そして思考を深めることの重要性が問われています。その点からも、豊かなデザインマインドが全ての人に求められているといえるでしょう。

次代を担う子どもたちのデザインマインドを育てること。大人もまた、豊かな感受性を保ちながら、デザインマインドを養うこと。本展では、音や映像も活かしながら、全身で体感できる展示を通して、デザインマインドを育むための試みを、さまざまに用意いたしました。

展覧会のディレクションは、NHK Eテレ「デザインあ」で総合指導を行なう佐藤 卓をはじめ、同番組に関わる中村勇吾、小山田圭吾の3名。デザインマインドを育むこととともに、デザイン教育の可能性に注目した、子どもと大人の双方に向けた展覧会をどうぞご体験ください。

■主催 : 21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団、NHK エデュケーショナル

■後援: 文化庁、経済産業省
■特別協賛: 三井不動産株式会社
■協賛: 株式会社 佐藤卓デザイン事務所
■協力: 株式会社アマナ、株式会社アマナイメージズ、キヤノン株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、ジャパンマテリアル株式会社、ベンキュージャパン株式会社、マックスレイ株式会社、ヤマハ株式会社
■展覧会ディレクター: 佐藤 卓、中村勇吾、小山田圭吾
■参加作家: 阿部洋介(tha ltd.)、岡崎智弘、緒方壽人(takram design engineering)、折形デザイン研究所、studio note、Perfektron、plaplax、山田悦子(むす美)、他
■展覧会グラフィック: 林 里佳子(佐藤卓デザイン事務所)
■展覧会会場構成協力: 五十嵐 瑠衣
■21_21 DESIGN SIGHTディレクター: 三宅一生、佐藤 卓、深澤直人
■同アソシエイトディレクター: 川上典李子



Autechre - ele-king

 さすがにこの新作でオウテカにはじめて出会うというひとは少ないとは思う。だが、『エクサイ』はすべてのリスナーに、はじめて彼らの音と出会ったときのことを思い出させるだろう。

 僕の場合、リアルタイムでの出会いが01年の『コンフィールド』であり、ただ面食らった、そんな印象を覚えている。決定的だったのは翌年の『ガンツ・グラフ』で、そこで奔放に暴れまわる金属音の生み出す躍動を「ファンク」と呼ぶのなら、サウンドの実験は何かしかめ面のものではない、決まった枠組みからはみ出そうとする獰猛な力のためにこそあるのだと......気づかされ、そして勇気づけられた気分だった。
 もちろんその後の作品も順に追ってはいたのだが、僕が惹かれたのはむしろ、遡って聴いていった過去の作品群であった。『LP5』から『キアスティック・スライド』へ、『トライ・レペテー』から『アンバー』へ、そして『インキュナブラ』......そこにあった(そしてゼロ年代にはあまりなかった)アンビエンスや美が、オウテカの進歩への欲求によって姿を変えていった道程が逆算的に浮かび上がるようでスリリングだったし、何よりも時間を忘れて聴覚をすべて預けたくなるような快感がたまらなかった。そして、彼らが影響を公言するマントロニクスにも、その後ようやく出会うこととなった。
 当たり前の話だが、音の歴史はリスナーに対して不平等である。オウテカのように20年のキャリアを通してつねに前に進み続けてきたようなアーティストとは、いつ、どこで出会うかによって聴こえ方が変わってくることも大いにあるだろう。だが、それが少し覆されたように思えたのが前作『オーヴァーステップス』で、そこでは初期の彼らの美しい和音やメロディ、アンビエンスが、オウテカが長い時間をかけて歩んできた音を踏まえた上で合流しているように聞こえた。それまでの数作では頭ひとつ出た出来だったといまも感じるし、そこには何か、時間の蓄積がオウテカという究極の進歩主義者にも及ぼすものがあったのではないか......と勘ぐってみたくもなった。

 『エクサイ』は2枚組の2時間を超える超大作で、結果として、ここではリスナーにかなり平等に近い立場がはじめて与えられているのではないだろうか。ここには初期を思わせる美しいメロディがあり、あるいはアシッド・ハウスめいたトリップ感があり、インダストリアルなランダム・ビートがあり、エレクトロへの忠誠がある。図式的に大作イコール集大成、と言いたいわけではない。それらオウテカを象ってきた要素たちが順列組み合わせではなく接続されミックスされ、実に複雑な混合体として生み出されている。1枚目の2曲目"irlite(get 0)"に端的に表れているが、10分に及ぶ組曲めいた構成のなかでインダストリアルとアンビエントとノイズとファンクが重なり合いすれ違い、混淆する。それはまるで、時系列を無視してオウテカのディスコグラフィを行き来するかのような、そしてオウテカの持つ多面性と複雑さをさらに推し進めた形で味わうような体験だ。明言できる統一されたムードはない。BPMもムードも音色もバラバラ、非常に振れ幅の広いアルバムだ。比較的1枚目は曲ごとのカラーがはっきりとしているが、不穏なダウンテンポ・エレクトロ "bladelores"における余韻たっぷりの長音で1枚目が幕を閉じても、『エクサイ』は終わらない。そこから2枚目へと突入し、さらなるオウテカの深淵へと入り込んでいく。かなり進んだところで出くわす、通して13曲目の"spl9"などは『ガンツ・グラフ』を容赦なく鋭利にしたようなメタリックかつカオティックなファンクで、長旅を気楽に楽しむことなど出来やしない。
 さらに言えば『エクサイ』は、オウテカの歴史だけに留まる作品ではない。"T ess xi"のスペイシーな電子音にはデトロイト・テクノが遠景に見えるようだし、"jatevee C"にはたしかにかつてのレイヴのようなアシッディな感覚がある。もちろん、オールドスクールのエレクトロはもはや切り離せないほど深く根を張っている。新しい音好きのB-Boyだった彼らの出自の、その過去まで時空はワープする。いったい何度聴けば全貌を掴めるのだろうか。オウテカが交錯させてきた聴覚体験の道のり、その記憶と出会い直し続けるような濃密さがここにはある。

 けっして気楽に聴けるアルバムではないし、オウテカで2枚組という時点で尻込みしてしまう人間も少ないないだろう。けれども、これはアーティストがエゴによって理性を失った結果の作品ではない。2枚組にした理由を訊けば、ロブ・ブラウンははっきりとこう答えてくれた。「今の時代、どの音楽も短いものばかりだ。それとは対極にあるものを作った」
 その意味では、頑固なショーン・ブースとロブ・ブラウンのふたりはその精神性においてまったく変わっていない。『エクサイ』は、リスナーの音への探究心を挑発し、そして信頼してきた彼らの20年の結実である。険しい道のりを経てようやくたどり着く(ボーナス・トラックを除く)ラスト・トラックの"YJY UX"がはじまった瞬間の慄然とするほど美しさは『LP5』の幕を閉じる名曲"Drane2"を想起させ、しかしそこにノイズとファットなビートが合流することで、わたしたちがまだ知らない領域へと連れて行ってくれる。『エクサイ』は、消費主義を徹底的に拒絶する大がかりなトリップだ。膨大な過去が2時間のなかで行き交い、そしてオウテカは、さらなる音の冒険を進めることを迷わない。

〈シュラインドットジェイピー〉の肖像 - ele-king

 97年に設立され、ひとつの哲学のもとに独自のIDMを模索しつづけてきた国内レーベル、〈シュラインドットジェイピー〉。2011年よりほぼ毎月のペースでリリースされてきた21タイトルをele-kingの視点でご紹介しよう。主宰である糸魚健一のブレない音響観やアート・ワーク、繚乱と展開される各アーティストのサウンド・デザインを楽しみたい。国産のエレクトロニカやIDMの水準をしっかりと感じ取ることができるだろう。

 倉本諒、デンシノオト、橋元優歩、野田努、松村正人、三田格によるレヴュー21タイトル掲載ページは、以下からご覧いただけます。
https://www.ele-king.net/special/shrine.php


■Pick Up

intext - fount
SRCD025

言語=フォント=シニフィアンの「美」が、形式=デザインの「美」へと遡行し、そこからサウンド=音響・音楽が生まれること。京都在住の外山央・尾崎祐介・見増勇介らによるこのエレクトロニクス・サウンド・アート・プロジェクトのミッションは、テクスト・フォント・デザイン・サウンドのマッピングを拡張していくことで、電子音響作品における「形式の美」を刷新する試みのように思えた。電子音の清冽な持続、陶器のような質感のクリッキーなリズム、記憶を解凍のようなサウンド・コラージュ。それらが精密に重なりあい、一切の濁りのない清流のようなサウンド・レイヤーを生成していく。そのサウンドのなんという美しさ! (デンシノオト)

plan+e - sound-thinking
SRCD038

レーベルを主催するサイセクス(PsysEx)とアームチェアー・リフレクションによるアティック・プランに萩野真也が加わって名義が短縮され、さらにE(Ekram)こと古舘健をフィーチャーした即興ユニットの1作目。前半はムーヴ・Dのディープ・スペース・ネットワークを思わせつつ、音数を減らしていないラスター・ノートンというか、ドイツ産にはない情感が随所から滲み出してくる。あるいはマッシヴ・アタックをグリッチ化したような泥臭さをそこはかとなく漂わせ、無機質な音だけで構成されているとは思えない豊穣なニュアンスへと導かれるとも(闇のなかを手探りで進んでいるのに、どこか安心感があるというか)。後半は発想の源がさっぱりわからない“cycloid”や、雅楽(?)にジャズを持ち込んだ“bon sens”など意外な展開が目白押し(後者は今西玲子を琴でフィーチャーし、法然院で録音)。全9曲、似たようなパターンはまったくなく、アンビエント係 数の高い“thinking reed”や“cosmology”にしてもなかなか一筋縄ではいかないややこしさに満ちている。つーか、またしてもピッチフォークあたりに「日本人はなんでオウテカばっかり聴いて、自分の国の......」とか嫌味を書かれそうな予感も? (三田格)

Toru Yamanaka - sextant
SRCD027

睦月、如月は例年僕の生体バイオリズムが最も降下を記録するシーズンである。それは自身のなかと外の世界に最も顕著なズレが生じることを意味する。芸術表現における主たるモチヴェーションのひとつはこのズレを補正することだ。この『セクスタント』には彼の内省的事柄を音像とその配置によって丁寧に具現化していく根源的行為が各トラック毎に完遂されていて、それが聴者の心象から新たなるスケッチを描き出す。セクスタント(航海計器)はいかなる聴者の内なる大海原にても正確な航路を導き出してくれるに違いない。〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉なる独自のブランディングを施されたリリースをハイペース継続している現代型のレーベルが畑は違えど存在しているということは、いい加減正月ボケから目を醒ますべきだと僕に告げているのかもしれない。(倉本諒)

ieva - il etait une fois
SRCD036

最初にヘッドフォンで聴いて、数分後、このアルバムにすっかり魅せられた。イエバによる『Il Etait Une Fois(昔々)』は、聴覚による想像的景色の万華鏡だ。まどろみを誘い、夢と記憶の茂みをかき分け、日々の生活では忘れている感情の蓋を開ける。アンビエント・ミュージックはこの10年で、より身近な音楽となった。ただ、そう、ただ耳を傾けさせすれば、景色は広がる。そして、フィールド・レコーディングとミュージック・コンクレートも、アンビエントにおいてより効果的な手法として普及している。クリスチャン・フェネスやクリス・ワトソン、グレアム・ラムキン、あるいはドルフィン・イントゥ・ザ・フューチャー......本作もこうした時代の新しい静寂に連なっている。女性ヴォーカルの入った最高に美しい曲が2曲あるが、それらは歌ではなく、あくまで音。フィールド・レコーディング(具体音)の断片たちが奏でる抽象的で想像的な音楽のいち部としてある。まったく、なんて陶酔的な1枚だろう。(野田努)

polar M - the night comes down
SRCD022

エレクトロニカにおけるアンビエント以降の音楽/音響はいかにして成立するのか。京都出身のpolar Mことmuranaka masumが奏でる音のタペストリー/層は、この「難題」に対して柔らかな返答を送っているように思えた。電子音響のクリスタルな響き。ヴォーカル・トラックが醸し出す透明な感情。ロード・ムーヴィのサントラのようなギターの旋律。ガムランでクリッキーなビート。これらの音が緻密にエディットを施され音楽作品として成立するとき、「音楽/音響」の対立は綺麗に無化されていくのだ。まるで氷の密やかに重なり合うような結晶のようなデジタル・サウンド。ずっとずっと浸っていたい。(デンシノオト)

Psysex - x
SRCD030

〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉主宰のPsySex(サイセクス)こと糸魚健一をはじめて知ったのは、まだ雑誌に勤めていたとき、〈涼音堂茶舗〉の星さんにファースト『Polyrhythm_system exclusive message』をご紹介いただいたときなので、もう10年になるが、PsySexはこの間、一貫してユニット名の由来でもある“ポリリズム - システム”、つまり揺らぎやズレを内包した機構の構築をつきつめてきた。それはIDMの金科玉条というよりシステム自体の自律性であり、そのベクトルに沿いながらPsySexは〈daisyworld〉や〈12k〉〈port〉〈imagined〉などのレーベルとリンクし、アルヴァ・ノトやAtom TMと親交を深めたが、軸は揺らがなかった。まったくブレない。アルバムごとの表情はもちろんちがうし、テクノロジーの変遷を無視するわけにはいかないが、PsySexのビートとノートとサウンドの化合物は、白地図上の国盗りゲームのようだったIDMのトレンドとはハナから距離をとっていた。『x(テン)』はその10年目の経過報告であり、時空間上に音を置いていくやり方に円熟の旨味さえ感じさせる。ストイシズムのなかに滲むものがある。アブストラクトなのにギスギスしていないのは〈shrine.jp〉の諸作にも通じるものであり、PsySexという機構はそれらとの連関のうちに語られるべき何ものかに拡張しつづけている。(松村正人)

intext - ele-king

 言語=フォント=シニフィアンの「美」が、形式=デザインの「美」へと遡行し、そこからサウンド=音響・音楽が生まれること。京都在住の外山央・尾崎祐介・見増勇介らによるこのエレクトロニクス・サウンド・アート・プロジェクトのミッションは、テクスト・フォント・デザイン・サウンドのマッピングを拡張していくことで、電子音響作品における「形式の美」を刷新する試みのように思えた。電子音の清冽な持続、陶器のような質感のクリッキーなリズム、記憶を解凍のようなサウンド・コラージュ。それらが精密に重なりあい、一切の濁りのない清流のようなサウンド・レイヤーを生成していく。そのサウンドのなんという美しさ!

ダイナミズムとアンビエンスが作り出す、
壮大なヴァーチャル・サウンドスケープへの旅。


intext(インテクスト)はアート・プロジェクトへの参加、音と映像によるライブ・パフォーマンス、デザインワークや出版など、あらゆる境界を越境して活動するグループ。メンバーは外山央、尾崎祐介、見増勇介。外山はsoftpadのメンバーでもある。 本アルバムはこれまでにライブ・パフォーマンスなどを通して、そのサウンドが高く評価されてきたintext待望の初音源。全編を通してダイナミズムとアンビエンスが作り出す壮大なヴァーチャル・サウンドスケープを旅するようなイメージが繰り広げられる。 実際に彼らが旅をした際に収集した音素材を引用したり、それらをカットアップして原型のわからない状態まで加工後使用しているのだが、コンテクストを引き剥がすような技法を用いているにもかかわらず、旅・移動のイメージに帰結することで成立しているパラドキシカルな文法が興味深い。 また作曲にグリッド・システムなどデザインのロジックを持ち込んでいるが、異なる分野のロジックを持ち込み、置き換え、類型を破ろうとするアプローチに、専門的ミュージシャンではない彼ら独自の視点を読み取ることができる。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

plan+e - ele-king

 レーベルを主催するサイセクス(PsysEx)とアームチェアー・リフレクションによるアティック・プランに萩野真也が加わって名義が短縮され、さらにE(Ekram)こと古舘健をフィーチャーした即興ユニットの1作目。前半はムーヴ・Dのディープ・スペース・ネットワークを思わせつつ、音数を減らしていないラスター・ノートンというか、ドイツ産にはない情感が随所から滲み出してくる。あるいはマッシヴ・アタックをグリッチ化したような泥臭さをそこはかとなく漂わせ、無機質な音だけで構成されているとは思えない豊穣なニュアンスへと導かれるとも(闇のなかを手探りで進んでいるのに、どこか安心感があるというか)。後半は発想の源がさっぱりわからない"cycloid"や、雅楽(?)にジャズを持ち込んだ"bon sens"など意外な展開が目白押し(後者は今西玲子を琴でフィーチャーし、法然院で録音)。全9曲、似たようなパターンはまったくなく、アンビエント係 数の高い"thinking reed"や"cosmology"にしてもなかなか一筋縄ではいかないややこしさに満ちている。つーか、またしてもピッチフォークあたりに「日本人はなんでオウテカばっかり聴いて、自分の国の......」とか嫌味を書かれそうな予感も? 

97年に設立され、ひとつの哲学のもとに独自のIDMを模索しつづける国内レーベル、〈シュラインドットジェイピー〉の特集記事はこちらから!

https://www.ele-king.net/special/shrine.php

Toru Yamanaka - ele-king

 睦月、如月は例年僕の生体バイオリズムが最も降下を記録するシーズンである。それは自身のなかと外の世界に最も顕著なズレが生じることを意味する。芸術表現における主たるモチヴェーションのひとつはこのズレを補正することだ。この『セクスタント』には彼の内省的事柄を音像とその配置によって丁寧に具現化していく根源的行為が各トラック毎に完遂されていて、それが聴者の心象から新たなるスケッチを描き出す。セクスタント(航海計器)はいかなる聴者の内なる大海原にても正確な航路を導き出してくれるに違いない。〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉なる独自のブランディングを施されたリリースをハイペース継続している現代型のレーベルが畑は違えど存在しているということは、いい加減正月ボケから目を醒ますべきだと僕に告げているのかもしれない。

猥雑さと崇高さの融合。京都の地下シーンをリードし続ける山中透が、コンポーザーとしての魅力を余すところなく発揮した傑作。

山中透は80年代より活動する作曲家、レコーディング・エンジニア、プロデューサー、DJ。Foil Records主宰。ダムタイプに結成当初から2000年まで音楽監督として参加し、代表作『S/N』をはじめ多くの作品で音楽・音響を手掛ける。また1989年より続くドラァグクイーン・イベントDiamonds Are Foreverを主催するなど、常に京都の地下シーンをリードしてきた。 本アルバムはクラブ・ミュージックとフィルム・ミュージックを組み合わせたような、独自のバランス感覚で構成されており、山中がコンポーザーとしての魅力を余すところなく発揮した作品となっている。
抑えのきいたグルーヴからジャジーなシンコペーションへと変化するリズムが印象的な"Birdy"、ヴァイブとオルガンのフレーズがクールなファンクネスを作り出す"Slide Show"など、随所に散りばめられたブラック・ミュージック特有の律動は極めてフィジカル。また荘厳なパイプオルガンの旋律が、強烈なエモーションを生み出す"Barnard 68 Part 2"に代表される、猥雑さと崇高さの融合も作品の重要なファクターとなっている。 リミックスにAUTORAやSPDILLなどでも活躍するspeedometerことJun Takayama、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの石川智久が参加。マスタリングはMAGIC BUS Recording Studioの沢村光が手掛けている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

ieva - ele-king

 最初にヘッドフォンで聴いて、数分後、このアルバムにすっかり魅せられた。イエバによる『Il Etait Une Fois(昔々)』は、聴覚による想像的景色の万華鏡だ。まどろみを誘い、夢と記憶の茂みをかき分け、日々の生活では忘れている感情の蓋を開ける。アンビエント・ミュージックはこの10年で、より身近な音楽となった。ただ、そう、ただ耳を傾けさせすれば、景色は広がる。そして、フィールド・レコーディングとミュージック・コンクレートも、アンビエントにおいてより効果的な手法として普及している。クリスチャン・フェネスやクリス・ワトソン、グレアム・ラムキン、あるいはドルフィン・イントゥ・ザ・フューチャー......本作もこうした時代の新しい静寂に連なっている。女性ヴォーカルの入った最高に美しい曲が2曲あるが、それらは歌ではなく、あくまで音。フィールド・レコーディング(具体音)の断片たちが奏でる抽象的で想像的な音楽のいち部としてある。まったく、なんて陶酔的な1枚だろう。

フィールド・レコーディングにより切り取った日常の情景と音楽を重ねたアンビエント・アンサンブル。

ieva(イエバ)ことSamuel Andréはフランス出身の音楽家、作曲家、映画作家。2000年からコンピューター・インターフェイスのデザイン研究を開始し、音楽と映像に関するクリエイティヴな活動を続けてきた。これまでにアメリカ、ポルトガル、フランスなどのレーベルから音源を発表している。映画作家としては2002年にthe Aquitain Film Music Competitionの実験映画部門を受賞。現在は京都を拠点にライブ及び創作活動を行っており、過去に自身のレーベルPollen Recから、京都で集音した素材を用いたアルバムをリリースしている。 サウンドワークでは、フィールド・レコーディングにより切り取った日常の情景と音楽を重ねることで、ノスタルジックな感情や、謎めいたイメージを想起させるような作品を制作している。 本作でも車の走る音、鳥の鳴き声、シンセやヴォーカルのフレーズなどによる繊細なアンサンブルが、穏やかな朝の情景を描き出す"a wind away"、ブランコが揺れるような音、人の声、ノワール調の音楽が物語性を呼び込む"an empty swing"など、様々なイメージをもつ楽曲を堪能することができる。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

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