ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns ♯5:いまブルース・スプリングスティーンを聴く
  2. 『成功したオタク』 -
  3. tofubeats ──ハウスに振り切ったEP「NOBODY」がリリース
  4. Bingo Fury - Bats Feet For A Widow | ビンゴ・フューリー
  5. Columns We are alive ――ブルース・スプリングスティーンがノース・カロライナ公演をキャンセルしたことについて
  6. Jlin - Akoma | ジェイリン
  7. Chip Wickham ──UKジャズ・シーンを支えるひとり、チップ・ウィッカムの日本独自企画盤が登場
  8. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  9. KRM & KMRU ──ザ・バグことケヴィン・リチャード・マーティンとカマルの共作が登場
  10. Bruce Springsteen - Letter To You
  11. interview with Mount Kimbie ロック・バンドになったマウント・キンビーが踏み出す新たな一歩
  12. Columns ♯3:ピッチフォーク買収騒ぎについて
  13. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  14. Columns ♯4:いまになって『情報の歴史21』を読みながら
  15. interview with Chip Wickham いかにも英国的なモダン・ジャズの労作 | サックス/フルート奏者チップ・ウィッカム、インタヴュー
  16. 野田 努
  17. Columns ♯2:誰がために音楽は鳴る
  18. Mars89 ──自身のレーベル〈Nocturnal Technology〉を始動、最初のリリースはSeekersInternationalとのコラボ作
  19. Columns ♯1:レイヴ・カルチャーの思い出
  20. Ben Frost - Scope Neglect | ベン・フロスト

Home >  Reviews > Toru Yamanaka- sextant

Toru Yamanaka

Toru Yamanaka

sextant

SRCD027 / shrine.jp

Amazon

倉本 諒 Feb 26,2013 UP

 睦月、如月は例年僕の生体バイオリズムが最も降下を記録するシーズンである。それは自身のなかと外の世界に最も顕著なズレが生じることを意味する。芸術表現における主たるモチヴェーションのひとつはこのズレを補正することだ。この『セクスタント』には彼の内省的事柄を音像とその配置によって丁寧に具現化していく根源的行為が各トラック毎に完遂されていて、それが聴者の心象から新たなるスケッチを描き出す。セクスタント(航海計器)はいかなる聴者の内なる大海原にても正確な航路を導き出してくれるに違いない。〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉なる独自のブランディングを施されたリリースをハイペース継続している現代型のレーベルが畑は違えど存在しているということは、いい加減正月ボケから目を醒ますべきだと僕に告げているのかもしれない。

猥雑さと崇高さの融合。京都の地下シーンをリードし続ける山中透が、コンポーザーとしての魅力を余すところなく発揮した傑作。

山中透は80年代より活動する作曲家、レコーディング・エンジニア、プロデューサー、DJ。Foil Records主宰。ダムタイプに結成当初から2000年まで音楽監督として参加し、代表作『S/N』をはじめ多くの作品で音楽・音響を手掛ける。また1989年より続くドラァグクイーン・イベントDiamonds Are Foreverを主催するなど、常に京都の地下シーンをリードしてきた。 本アルバムはクラブ・ミュージックとフィルム・ミュージックを組み合わせたような、独自のバランス感覚で構成されており、山中がコンポーザーとしての魅力を余すところなく発揮した作品となっている。
抑えのきいたグルーヴからジャジーなシンコペーションへと変化するリズムが印象的な"Birdy"、ヴァイブとオルガンのフレーズがクールなファンクネスを作り出す"Slide Show"など、随所に散りばめられたブラック・ミュージック特有の律動は極めてフィジカル。また荘厳なパイプオルガンの旋律が、強烈なエモーションを生み出す"Barnard 68 Part 2"に代表される、猥雑さと崇高さの融合も作品の重要なファクターとなっている。 リミックスにAUTORAやSPDILLなどでも活躍するspeedometerことJun Takayama、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの石川智久が参加。マスタリングはMAGIC BUS Recording Studioの沢村光が手掛けている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

倉本 諒