Home > Reviews > Marihiko Hara- FAUNA
ミニマルな展開、典雅なビート感覚といった、端正なIDMの顔と、ポスト・クラシカル勢にも接続するようなシネマティックな叙情性とを、アルカイックな微笑みのもとに統合してしまう......クリーンでナイーヴで、しかしそうであることを客観的にとらえてもいる2010年代のフィーリングが、ここに発露されているのではないか。いたずらっぽく茶目っ気のあるサウンド・コラージュや、イタリア語ラップのユーモラスな用い方も心愉しい快作。
動物から受けたインスピレーションが基柱となった、ユーモア溢れるコンセプト・アルバム。
京都を中心に活動する音楽家原摩利彦のCDリリースとしては2作目となるソロ・アルバム。普段は電子音楽イベントnight cruisingを中心にライブを行っており、『セイジ-陸の魚-』(監督:伊勢谷友介、音楽監督:渋谷慶一郎)サウンドトラックへの参加や、高谷史郎(ダムタイプ)の作品にて音響を担当するなど、映像作品や舞台にも関わる。また柳本奈都子とのユニットrimaconaとしても活動している。 本作はアルバム名のFAUNA(動物相=一地方又は一時代における全動物の種類)をコンセプトに制作された、原のイメージを裏切るカラフルな作品に仕上がっている。 例えば"Megafauna"では、象のような大型動物の鳴き声、動作、生態、身体的特徴(柄や色)を表現。その他の楽曲でも動物の特性を落とし込むというアナリティカルなプロセスが採用されている。
また「スーパー銭湯にある精算機の小銭が落ちる音」「ある田舎町の5時を伝えるサイレン」など、日常の環境音を収集及び加工した素材を使用したり、"fauna v"ではフィレンツェ在住のイタリア人ラッパーMillelemmiによる脱力系ラップをフューチャーするなど、様々なユーモアが込められている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
橋元優歩