ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns The TIMERS『35周年祝賀記念品』に寄せて
  2. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  3. Saint Etienne - The Night | セイント・エティエンヌ
  4. ele-king presents HIP HOP 2024-25
  5. Félicia Atkinson - Space As An Instrument | フェリシア・アトキンソン
  6. COMPUMA ——2025年の新たな一歩となる、浅春の夜の音楽体験
  7. Columns ♯9:いろんなメディアのいろんな年間ベストから見えるもの
  8. Whatever The Weather ──ロレイン・ジェイムズのアンビエント・プロジェクト、ワットエヴァー・ザ・ウェザーの2枚目が登場
  9. Terry Riley - In C & A Rainbow In Curved Air | テリー・ライリー
  10. interview with Sonoko Inoue ブルーグラスであれば何でも好き  | 井上園子、デビュー・アルバムを語る
  11. Saint Etienne - I've Been Trying To Tell You  | セイント・エティエンヌ
  12. interview with Shuya Okino & Joe Armon-Jones ジャズはいまも私たちを魅了する──沖野修也とジョー・アーモン・ジョーンズ、大いに語り合う
  13. Masaya Nakahara ——中原昌也の新刊『偉大な作家生活には病院生活が必要だ』
  14. VINYLVERSEって何?〜アプリの楽しみ⽅をご紹介①〜
  15. 忌野清志郎 - Memphis
  16. ele-king vol.34 特集:テリー・ライリーの“In C”、そしてミニマリズムの冒険
  17. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか
  18. Columns Talking about Mark Fisher’s K-Punk いまマーク・フィッシャーを読むことの重要性 | ──日本語版『K-PUNK』完結記念座談会
  19. FRUE presents Fred Frith Live 2025 ——巨匠フレッド・フリス、8年ぶりの来日
  20. The Cure - Songs of a Lost World | ザ・キュアー

Home >  Reviews > Nomura Kenji- Folklore

Nomura Kenji

Nomura Kenji

Folklore

SRCD037 / shrine.jp

Amazon

倉本 諒 Feb 26,2013 UP

 普段こういった音楽をほとんど聴かない小生は、先ほどから頭を内部から爪でカリカリされている気がしてならない。各サウンドのテクスチャーとその間を駆け巡る旋律は驚くほど色鮮やかな展開を見せている。それはあたかもモノクロームの写真作品で構成されるジャケットに写されていない色彩を聴者というそれぞれのパレットを用いて彩色するべくうながされているような感覚である。

水と光が織りなす情景をイメージさせる、 内省的なエレクトロニカ。

Nomura Kenjiは京都出身、大阪在住のアーティスト。これまで関西を中心にイラスト、造形、絵画、写真などの分野で創作活動を行ってきた。2011年よりrace tone tortoise名義で音楽制作を開始、本作がキャリア初リリースとなる。 水面に落ちる水滴のような澄んだピアノのハイトーンが印象的な"Rythmic Canal"、夜の湖に映る街灯りを連想させる"Blue Jay"、波の音と鳥のさえずりがサンプリングされた"Teach"など、水と光が織りなす情景をイメージさせる美しい楽曲が並ぶ。"Teach"ではアフリカン・パーカッション、"Just"ではエチュード風のピアノ、"Rain Drop"では金属打楽器の音が楽曲の最後に配置されているが、環境音、楽器の音色、電子音が調和する中、あえて違和感の残るレイアウトを選択する手法も作曲の特長となっている。 全体を内省的な印象が覆っているが、アルバムを制作する際には室内や、自然を歩きながらのリスニングを想定し、一曲一曲をコンパクトに仕上げたという。また全トラックに共通する独特の間は、京都の街から受けたインスピレーションが反映されているそうだ。 アートワークは野村本人のモノクロ写真作品を採用。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

倉本 諒