Home > Reviews > Tadashi Sasai- beginning of mud
DJ tatai、DJユニット"W-DRGN"の一員としても活動する笹井直のファーストはスタンドアップ・ベース一本で聴かせる実験作。ピチカートとアルコによるきわめてシンプルなフレーズをエフェクトで変調し、音そのものと対話するように織り上げていく。バール・フィリップスをハーバー(むしろレイディオ・ボーイですかね)が料理したというか、モノトーン基調の渋い音色ながら、一音にひそむ豊かさをさまざまな方向から引きだしている。"mud"のキーワードからプライマスのレス・クレイプールを思いだしたりもした。
演奏への初期衝動。
アップライト・ベースによるプリミティヴなソロ・インプロヴィゼーション。
京都在住のミュージシャン笹井直のファースト・アルバム。DJ tatai名義や、DJバルスとのユニット電楽二重奏、DJユニットW-DRGNのメンバーとしても活動する。また、DJ バルスと共に先鋭電子音楽イベント電子山を不定期で開催している(会場は本門法華宗の大本山妙蓮寺)。
本アルバムはエレクトリック・アップライト・ベースと限られたエフェクター(ディストーション、ディレイ2台、イコライザー)によるソロ・インプロヴィゼーションをライブ録音した作品となっている。
奏法のバリエーションと、ボリューム・コントロール、シンプルなエフェクトを軸としており、楽器で楽曲を作り出すというより、むしろベースを金属の振動を拡張する装置と再定義したうえで演奏しているように聴こえる。
ベース弦の粗く太い金属の質感は脳を振動させ、歪み、フィードバックは独自のプリミティヴィズムを生み出す。短いフレーズがディレイするパートでは、ホワイトノイズごと反復しており、生々しさをより一層強調している。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
松村 正人