ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  2. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  3. Gaku Kiishi ──『サイコ』『オーメン』『シャイニング』『リング』から『8番出口』『バックルームズ』まで、ホラー映画の音楽を分析する1冊が刊行
  4. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  5. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  6. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  7. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  8. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  9. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  10. Bicep ——バイセップが3つの新曲で、フリー・パーティ、レイヴ、サウンドシステム文化を主張する
  11. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  12. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  13. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  14. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  15. sugar plant ──2026年を締めくくるライヴが11月21日に開催
  16. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  17. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  18. Arca - XXXXX
  19. Robert Del Naja ──マッシヴ・アタックの3D、二度目の逮捕
  20. Malaria! ——80年代初頭の西ベルリンから、ポスト・パンク/アヴァンギャルド・シーンを象徴する最重要バンド、マラリア!再発

Home >  Reviews >  合評 > How To Dress Well- Total Loss

How To Dress Well

合評

How To Dress Well- Total Loss

Weird World/ホステス

Nov 06,2012 UP 北中正和、木津 毅、北中正和、木津 毅、北中正和、木津 毅、北中正和、木津 毅 E王
12

こういう音楽が存在する 文:北中正和

E王 How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

Amazon iTunes

 人間、元気なときは、出かけて他の人と接触するのが苦にならない。たとえひとりで過ごすとしても、前向きな気分でいられる。しかしときには、そうでないことだってある。そんなときは、出かけて人に会う気も起こらないし、何かを思い浮かべようとしても、考えが悪いほうに転がりやすい。
 『トータル・ロス』は、どちらかといえば、後者の気分にフィットしやすいアルバムではないだろうか。浮かない気分や冴えない考えのすきまにしみこんできて、痛みをわかちあい、凝った心を静かにほぐしてくれる音楽。
 ヴォーカルにはR&B的なファルセットの影響が感じられるが、"ラニング・バック"を除けば、一般的なR&Bとちがって、サウンドにビートやリズミカルなグルーヴがそれほど重視されているわけではない。曲はアンビエント的というか、ゆっくりと東の空が白んでいく様子を眺めているような穏やかな起伏をともなって進むように構成されている。サウンドはときには未来的で、ときには室内楽的。歌はメロディ重視で、"オーシャン・フロア・フォー・イヴニング"あたりでは、歌声が古い賛美歌めいて聴こえる部分もある。
 この種の音楽の歌は「こんなにかわいそうな私」「こんなに美しいぼく」の肯定のスパイラルに陥りがちだが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの歌には人に向かって語りかけてくるところがある。トム・クレルのヴォーカルにも、感情を強調するのではなく、そっと取り出して置いて眺めているようなニュアンスがある。ぼくはこういう音楽が好きだが、いつも聴いていられるかというと、そうではない。しかしたとえ聴かなくても、こういう音楽が存在することを知っていることによって回避できるストレスがあることはまちがいないと思う。


文:北中正和

»Next 木津 毅

12