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DELICIOUS ALLSTARS
GRITWEED
SKYLINE / UK / 2011/5/22
»COMMENT GET MUSIC
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Q a.k.a. INSIDEMAN
DEDICATED TO THE MOON 3.19 AT GRASSROOTS
POSSE KUT / JPN / 2011/5/20
»COMMENT GET MUSIC
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KUNIYUKI
ALL THESE THINGS-JOE CLAUSSELL REMIX
MULE MUSIQ(JPN)
»COMMENT GET MUSIC
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TEDDY PENDERGRASS
CAN'T WE TRY-TIMMY REGISFORD REMIXES
SHELTER (US)
»COMMENT GET MUSIC
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ナイト・ジュエルのヴォーカルは「オルタナティヴなサイキック・リアリティを伐り拓く」もののひとつである。それは、たとえばウッズの、ダックテイルズの、ウォッシュト・アウトの音楽が逃避的なものであったとして、しかし、現実社会からの退却が、逆に現実世界へのアプローチとして実効性を持つようなねじれた現代に、それは新しく意味のあるマナーとして認められるべきものではないか? おおむねチルウェイヴ擁護の理論として理解されるこの言葉は、私もおおいに頷かされる部分がある。
ナイト・ジュエルことラモーナ・ゴンザレスは、アリエル・ピンク人脈から浮上し、〈イタリアンズ・ドゥー・イット・ベター〉からデビュー12インチを、〈ヒューマン・イヤー・ミュージック〉や〈グロリエット〉、〈ノー・ペイン・イン・ポップ〉から傑作デビュー・アルバムをリリースするほか、シングルを日本の〈ビッグ・ラヴ〉や〈ストーンズ・スロー〉傘下の〈1984〉から、本作を〈メキシカン・サマー〉からと、インディ・ダンスとドリーミー・シューゲイズとチルウェイヴの混淆する地点に美しい作品をドロップしつづけている。デビュー作のオーヴァー・コンプ気味で奇妙な浮遊感を持つプロダクションは、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルやグライムスのゴーストリーな音像を先取りしていたと言えるし、ドリーミーかつ過度に閉塞感のあるシンセ・ポップはウォッシュト・アウトのけだるく視界の悪いローファイ感に通じている。
そしてなにより彼女のヴォーカルが素晴らしい。初めてダイアナ・ロスを耳にしたとき、まわりの音から遊離して、白飛ばしのようにそこだけくっきりと明度をもっていることに心から驚いた。夢のような、幻覚のような、あるいは持ち主の存在しない声。歴史の教科書の肖像写真のように、いまは亡くなってどこにもいないのに、はっきりとそこに表情がのこされている奇妙さ。そうした忘れがたい存在感が、ゴンザレスの声にもある。些末な日常性や安っぽいリアリズムを超えて、永遠に色褪せない総天然カラーのヴォーカル。この特別な感覚は、チルウェイヴが見る夢と同じ場所へつながっていないだろうか。
本シングル曲"イット・ゴーズ・スルー・ユア・ヘッド"は、これまでの躍動の少ない作風を大きく破る、チープで大衆的なエレクトロニック・ディスコ・ポップである。80年代のダイアナ・ロスか、それともシンディ・ローパーか? ゲート・リヴァーブが華やかに響き、リズム・ボックスが屈託なく16ビートを刻み、シンセは古風。ゴンザレスもいつになくのびやかに歌っている。レイド・バックしたサウンドで、MTVの映像が彷彿としてくる。
しかし、これはレトロスペクティヴとは似て非なる感覚だ。80年代のコスプレという、単なる趣味性を逸脱するようなエネルギーがはっきりと感じられる。つづく"ナチュラル・コージーズ"も同様で、こちらはエコー・タイムの長いヴォーカルとスローなテンポが独特の浮遊感を生む、彼女のトレード・マークとも言えるダンス・ナンバー。曲調は80年代を参照していても、まるでジュリアナ・バーウィックのような調性感と音響を感じるだろう。少しも古い音楽ではない。
B面に収録されたリミックス・ヴァージョンにも注目したい。"イット・ゴーズ・スルー・ユア・ヘッド"はダム・ファンクによるリミックスだが、アニマル・コレクティヴの"ファイア・ワークス"やアリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティの"フライト・ナイト"のリミックスなど、今日的なUSインディ・ロックとゆかりの深い彼の茶目っ気あるナイト・ジュエル解釈がとても楽しい。重たい16ビートが、小粋でファンキーに翻案されている。
もうひとつ、"ナチュラル・コージーズ"はゴンザレスの夫であり、自身のプロジェクトのみならずプーロ・インスティンクトのプロデュースなどでも乗りに乗っているサンプスによるリミックスだ。こちらはエメラルズやタンジェリン・ドリームをさっと湯がいたような、軽めのアンビエント・トラックに仕上がっているので、ナイト・ジュエルとは独立した作品としても味わうことができる。
お・前・の 脳みそどこだー!
何を言ってもわからない 笑ってばかりでわからない
あなたの思いはなんですか?
感情 行動 言動 性格
ファッキューファッキュー アイラブユー
はやく 気付いて はやく 見つけて
だけど... 死ね!"NOmiso"
![]() Tadzio /Tadzio Pヴァイン |
「150曲作って死ね」という、今日じつに古風に聞こえる(まるでスポ根だ)言葉をきっかけに誕生した女性ノイズ・ロック・デュオ、タッジオ。ソニック・ユースもメルヴィンズも知らずにプレ・グランジなハードコアや辛口のジャンク・サウンドを鳴らす彼女たちは、結成1年にしてコンボピアノ、ヘア・スタイリスティックス(中原昌也)、狂うクルー、中村達也等と共演し、キュートなルックスに不敵な態度まで加わってスター性も十分、まさにアンファン・テリブルだ。
それぞれを「部長」「リーダー」と呼び合い、ぶらっと並ぶ立ち姿は、ノー・エイジやテレパシーなど、ここ数年のインディ・ロック・シーンにデュオ編成が目立つ傾向と共振するかのようでもある。このことは音楽シーンにとどまらず、広く現在のコミュニケーションの問題としても重要なポイントではないかと思う。3人以上ではなく、ふたりというミニマルなフォーマットがいま持っているリアリティを、本インタヴューでは随所から読み取ることができるだろう。
「150曲作って死ね」という言葉の主は中原昌也氏だが、見方を変えれば、タッジオとは、バンド誕生の時点で150曲という目標=終わりが予定されている時限プロジェクトとも言え、このワイルドなデュオがいったい150曲制作のあいだに何を見、どのように変化を遂げるのかという大掛かりなドキュメンタリーとしても興味深いものがある。
サブカルチャーにおいて音楽の力が衰退しつつある日本の状況に、タッジオの誕生はどのような影響を与え、何を残せるのか。長い旅路の最初の行程を記録するファースト・アルバム「タッジオ」が完成した。
その頃ふたりとも無職だったんですよ。だから時間だけはいっぱいあって、スタジオにもいっぱい入るけど、ぜんぜんおもしろくなくって。
■まず音楽的な背景からお聞きしたいんですが、ニルヴァーナとかソニック・ユースとか、あるいはメルヴィンズ、そういった90年代初頭のUSのインディ・ミュージックが......
リーダー:えへへ、やばいやばい......(部長に向かって)難しいこと言ってるよっ。
野田:直球だねえ。
リーダー:(部長に向かって)がんばろうねっ。
(一同笑)
■いえいえ、あくまで音を聴かせていただいた上で思い浮かんだのが、そういうバンドの名前でして......
リーダー:はい。
■はい。好きな音楽っていうと、どんな感じでしょう。
リーダー:ええと、いま言われたなかだと、ニルヴァーナは知ってます。
部長:ふたりで全然好きなの違うんで......。ハードコアとかも全然詳しくないですし。いろいろ言われるんですけど。
リーダー:ソニック・ユースとかも最近知ったくらいで。リーダーは。
■ええー!? 「好きで好きで仕方ない」ってくらいかと思いました。
部長:全然。私もソニック・ユースは通ってないですし。
リーダー:バンドやりだしてからメルヴィンズとかも知ったんです。メルヴィンズ知らないでバズ・オズボーンの曲ができたんですけど。
■へえー。"シック"とかもすごい重たい音で、ハードコアとかグランジとかを通過せずに、いきなりどうしてそんな音が生まれてきたんだろうって思います。
リーダー:リーダーは、なんか、知り合いとかがハードコアのバンドをやってるのを見てたんですけど。ぜんぜん趣味でやってる人たちの。汚ーい感じの。
■はい。汚ーい感じの。
リーダー:未来のない感じの。
■ははは。
リーダー:とかを見てて、って感じなんですけど。
■へえー。じゃ、日本の知り合いのバンドからの影響なんですね。バンドを組むのは初めてですか?
リーダー:はい。初めてです。
■ギターもドラムも初めてですか?
リーダー:はい。リーダーは初めてです。
部長:ドラムは中学のときに1、2年やってました。
■中学で1、2年やったきりですか。部活動とか?
部長:いえ、バンドです。流行ってたんで、その頃。私が中学くらいの頃ですけど。
■曲は......
部長:コピー・バンドです。
■うーん。それで、初めてバンドを組んで急にあんなノイズが出てくるわけですか? ドラムも手数の多い感じの......
リーダー:バンドやるちょっと前に中原(昌也)さんとかと出会って、そういうノイズを初めて聴いたんですよ、リーダーは。そういう音を出したいって思ったわけでもないんですけど。
野田:中原君のライヴを観て?
リーダー:はい。何回か観ましたね。
■うーん......
リーダー:あ、でもライトニング・ボルト。ライトニング・ボルトのライヴを観てリーダーはいちばんかっこいいと思いました。
■ああ!
リーダー:いままで忘れてた。
■それです! そのコメント拾えてよかった。
リーダー:ははっ!
野田:2年くらい前ですかね。
リーダー:そうですね。中原さんに誘われて行きました。
部長:私は逆に、高校のときから中原さんの音楽を聴いてたので、大人になってからこんなふうに一緒にやったりすることになるなんて思ってなかったです。
■憧れとかあったわけですか。
部長:憧れというか、普通に好きで、家にCDとか持っていたので、変な感じ。すごい変な感じがします。
■あ、では音楽的にタッジオを引っぱっているのは部長さんですか?
部長:引っぱって......?
(一同笑)
■ははは。いえ、では曲ができるときはどんな感じなんでしょう?
部長:ふたりでスタジオ入って、ほんとに、ふたりで話しながらできる感じなんですよ。だからどっちかが作った曲を持ち寄るとかではなくて、どっちが引っぱるとかでもなくて。
■まずスタジオに入るところからはじまるんですね。
リーダー:そう、スタジオに入って、音を出して、いまのいいねって言ってどんどんくっつけてくみたいな。
■なるほど。バンドのきっかけは、学校とかですか?
リーダー:ううん、何かのライヴの打ち上げで出会って、ふつうにそこで、お友だちになって......
部長:で、リーダーがそこでギターを......
リーダー/部長:もらってー。
リーダー:で、なんかやりたいねって言ってたら、部長が昔ドラムをやってたって言ってたのを知って、で、スタジオ入ってみますかみたいな。
部長:最初はなんかコピーとか。
リーダー:そう。そのニルヴァーナとかやってたら、できなくって。
■あら。タッジオでコピーとかやってたんですか。
リーダー/部長:ぷっ(笑)。
部長:あはは。でもコピーとかいっても、全然できてなくって!ふたりとも全然へたくそで、もう「はーっ」ってなってたんですよ。2、3ヶ月くらい。
リーダー:ニルヴァーナとかも全然......
部長:全然できなくてつまんないし(笑)、ニルヴァーナとかやってても。その頃ふたりとも無職だったんですよ。だから時間だけはいっぱいあって、スタジオにもいっぱい入るけど、ぜんぜんおもしろくなくって。それでちょっと(オリジナル曲を)作ってみよっかって。
リーダー:自分たちで作れば間違いがないから、すごい楽しくて。
■ははは。たしかに「あ、ここ間違った」とかいうことがない。全部正解ですね。
リーダー:そう、自由にできる。
部長:自分のレヴェルに合わせて。
■じゃ、けっこう、突然変異的に、そういういろいろな偶然やら事故やらが重なってできてきた音楽なんですね。
野田:中原昌也の音楽を聴いてたっていうのはどのくらいの時期からですか?
部長:暴力温泉芸者とか、トラットリアから出してたのとかです。
野田:ふーん、じゃわりと昔から。
部長:はい。私もともと小山田(圭吾)さんのとか大好きだったので、そこからたどって聴いてたんですけど。
野田:へえ。じゃ部長さんがマニアックなんだ。
部長:マニアック......そうですね(笑)。
リーダー:「部長さん」......(笑)
[[SplitPage]]私から見ても......いくつ離れてるんだっけ? わかんない、けっこう歳が離れてるんですけどこんな感じだし。リーダーには同世代の子とかは「若いわね~」ってふうに見えるんじゃないですかね。
![]() Tadzio /Tadzio Pヴァイン |
■おふたりのお名前、部長さんとリーダーさんだったら、どっちも偉いじゃないですか。
リーダー:そうなんです。だからこういう名前にしたんです。どっちかが嫌だってことは絶対やらないっていう意味で。
部長:どっちも部長、リーダーみたいな感じです。
■はいはい。すごいかっこいい名前ですよね。
リーダー/部長:ははははっ!
リーダー:かっこいいですか?
■はい。すごいしびれました。
部長:あはは! けっこう変えた方がいいって言われるんですけど。
リーダー:こんな褒められたの久しぶり。ていうか初めて褒められた!
■だって、若い、新しい世代の女性アーティストが、「オニ」と「ピカチュウ」(あふりらんぽ)を反復したってだめじゃないですか。そうじゃなくて、「部長」と「リーダー」って、いまいろんな映画やドラマなどが思い浮かぶんですが、2000年代の日本のサブカルチャーが描いてきた、若い人間の新しい関係性を象徴するような、いい名前だと思います。
リーダー:ははは。膨らましていただいてありがとうございます。
■いえいえ、クールな名前ですよ。
リーダー:つけてよかったねー。一生リーダーと部長でいいよ。
■あはは! では作品にお話を戻しまして。私"ノーミソ"とか音も言葉も好きなんですが、意外に歌詞が頭に入ってこないんですよね。ノイズとファンキーなリズムがかっこよくて、どちからと言いうと身体がよろこぶ感じなんですよ。で、タッジオにとって歌詞ってどのくらい大事なんですか?
リーダー:とても......大事?
野田:はははは!
部長:とても大事です! 全部、実話とか思ったことを歌詞にしてるんで。
リーダー:すごい嫌いな、まあ、苦手な方がいまして。
部長:ぷっ(笑)
リーダー:その人に問いかけてる感じなんですよ。ノーミソがほんとどこにあるんだろって思って。
■あ、具体的に顔の見えてる曲なんですね。
部長:これはそうですね。
リーダー:(聴いている人が)いろんな人に当てはめてもいいんですが、それがきっかけですね。
■へええ。歌詞はすっごく大事なんですね?
部長:あははは、歌詞を聴かせたいわけではないんですが......
リーダー:歌詞を書いてるのもすごい楽しい。
部長:うん。
■そうなんですね。詞に、現代の風俗を感じさせるようなものが全然出てこないなと思って。辻でブルースマンが悪魔と契約するシーンを下敷きにしてたり、ビッグマフへの憧れがあったりとか、ピストルズも出てきますし、「ファックユー」と中指を立てるようなポーズを感じさせたり、ちょっと古い世界の言葉でできてますよね。ひとつだけ現代を感じさせるのが"カピバラ"。
リーダー:あ、電車かな?
■電車も出てきますね。カピバラ自体にもいまを感じますが。
野田:何? カピバラって。
■動物ですよ。ゆるキャラです。
リーダー:ほ乳類の中でいちばん歯が強いらしくって......
部長:すごいのほほんとしてるのに、牙だけグワーッ! ってなってるんです。
リーダー:そういう歌ですね。それが神様に勝ったっていう。
■うんうん。それでその"カピバラ"だけがいまっぽいなんて、いまの世界は嫌いなのかな? って思って。
リーダー/部長:えーっ(笑)!!
リーダー:あははは。全部リアルなものですよ。私たちの世界の。
部長:まあ、イライラしてることは多いのかもしれませんけど、べつに嫌いとかではないですね。ふつうですよ。
リーダー:そう。日常で起こったことを歌詞にしてる。
■なんか、友だちとどこそこへ行ったとか、その駅名がでてきたりとかしないなと思いまして。あるいは恋愛をテーマにすることがあっても、現実のディテールにこだわる書き方ではなくて、もっと抽象的というか......
リーダー:抽象的ってなんですか?
■ええと、じゃ、誰かを好きだとして......
リーダー:あ、でもラヴ・ソングはいっぱいあります。
■え? そうですか。
リーダー:1曲めとか3曲めとか。
部長:"ビースト・マスター"は恋愛の曲です。
■あー! "ビースト・マスター"が恋の歌だとすれば、私的に、相手は女の子のように感じられます。
リーダー:なんかかっこいい人でもブスと付き合ってる人とか多くて、でもそれは......
部長:見た目はブスでも中身がきれいな人を好きになるからあいつは素敵よ、みたいな。あたしはきれいだけど、中身はブス、という曲です。
リーダー:でも、片思いの曲なんです。
野田:三角関係の曲なんだ。
リーダー:そうです。三角関係です。ふつうの男女の恋愛の曲です。
■でもその相手の男性よりも、女性に向けてる視線の方が濃くないですか? 深いっていうか。こんなに深い観察が生まれているわけで。
リーダー:はい。
■いま"ノーミソ"の話になりましたけど、"ノーミソ"とかって神様やカリスマのいない世界のことを歌っていると思うんですね。"ベルギー"で言えば「あの子」。神様とかあの子とか、そういう特別な、唯一の存在っていうものがいない場所。で、いるのはカピバラなんです。それが世界だ。って言ってるのかなと思いました。
(一同笑)
■えっと、かけがえのない存在ってあるじゃないですか。それが、ない。というか成立しない世界。いまってインターネットがあればどこにでもつながるし、たいていのものが手に入りますよね。職場とか地域のつながりとかにしたって、昔のような結びつきとかしがらみ、そこにいるのが自分じゃなきゃいけない感覚って薄いですし、他の誰でも原理的には替えがきく。そういうすごく流動性の高い社会なわけですよね。神様も彼女もあの子もいないんだけど、カピバラみたいなゆるキャラだけがはっきり存在してる。鋭い牙を隠し持って......。そんなとこが現代的な感覚だな、と。
(一同笑)
部長:そこまで考えてないです。
リーダー:べつに、神様に頼らなくても、哺乳類=人間だけでやってけるよっていう。クロスロードに行ったら、神様はいなくてカピバラがいたから、あ、自分たちだけでなんとかしろってことねって思った、という。
■タッジオって、まず詞ではなく音が聴こえてくるので、しかもいまっぽい言葉が希薄なので、詞って大事じゃないのかなあって思ってたんですよ。でも違うんですね。
リーダー:はい。うちらがいまっぽくないからそうなんだと思います。
■はぁ。
リーダー:まあ、だからお互いいまっぽくないってだけなんですけどね。ね?
部長:うん。
野田:そういう、「いまっぽくないな」っていう感覚はあるんですか? 普段生活してて。浮いてるとか、同世代と合わないとか。
部長:たぶん、リーダーはあるのかもしれないよね。まわりに大人が多いんで。私から見ても......いくつ離れてるんだっけ? わかんない、けっこう歳が離れてるんですけどこんな感じだし。リーダーには同世代の子とかは「若いわね~」ってふうに見えるんじゃないですかね。
野田:じゃ、リーダーくらいの人たちの典型的な同世代像ってどんな感じなんですか?
リーダー:うーん、リーダーの同世代......?
野田:部長はなんとなくわかるよね。トラットリアとかコーネリアスとか聴いててさ。
リーダー:うーん、同世代、同世代......
■何してたりするんですか? バイトとか?
リーダー:うーん......みんな何してるんだろう。
部長:とくにバンドはじめてからは、同世代の人とかとは遊ばないもんね。
リーダー:もとから友だちいなかったのにもっといなくなっちゃった。
[[SplitPage]]見た目はブスでも中身がきれいな人を好きになるからあいつは素敵よ、みたいな。あたしはきれいだけど、中身はブス、という曲です。
![]() Tadzio /Tadzio Pヴァイン |
■なんか、若い方って保守的だなあと思ったりすることが多いんですよ。それこそ古い音楽を参照したりして、すごくブルージーなギターを弾く女性サイケ・バンドとか。素でレトロ志向な若いバンドがけっこう多い気がして、そういう「いまっぽさ」に対する批評があるのかなって感じるんです。同世代とか見てて、かったるいなとか思いませんか?
部長:そういうのありますね。
リーダー:渋谷歩いててよくね(笑)。
部長:ふたりで歩いてて、悪口しか言わないんですけど(笑)。
リーダー:変なバスとか走ってて。
■あ、バスレベルで駄目ですか(笑)。ツイッターとかは?
リーダー:部長はやってます。
■つかいこなせてる感じありますか? 私ツイッターって全然活用できなくて。
野田:はははは。
部長:ライヴの感想見たりとか、イベントのお知らせ見たりとかって感じですね。
■なんだか、私よりもずっと落ち着いていて、ずっと年上のように感じられてきますね......。音楽以外にハマっているものとかないんですか?
部長:うーん。
■音楽ばっかりですか。レコード屋さんとかは行きます?
部長:レコード屋さんは行きますね。DJをやってたりしたんで。
■あ、そうですね。ジャンル関係なくご覧になります?
部長:いえ、偏ってますね。機械で作った音楽ばっかり聴いています。バンドは全然知らないですね。
■あ、じゃあまさに『エレキング』なんて......
部長:買ってましたね。
野田:さすが!
■なるほどー。どんどんタッジオが見えてきました。私、おふたりは立ち姿もすごくかっこいいなと思うんですが、ここ3年ほど、海外の音楽はとくにそうなんですが、デュオが多いんですよ。こう、ふたり組が、ぶら―っと立ってる写真が多くて、それが妙にかっこよくて説得力があるんです。デュオってミニマルな単位で、まあ、ひとりがいちばんミニマルですが、いま複数人で音楽やろうとすると、ふたりっていうサイズになにか意味やカギがあるんじゃないかなってことを考えさせられるんです。3人以上のバンドってやれると思います?
部長:(小声で)たぶんできない......
リーダー:やりたくないですね。
部長:サポートで入ってもらうとか......
リーダー:そう、ゲストで出てもらうとかはアリだけど......
部長:一緒に曲作ったりとかは無理ですね。
リーダー:うん。めんどくさそう。
■ああ、ふたりのあいだでの緊密な何かがあるわけですね。
リーダー:はい。そう。スタジオ風景とかは誰にも見せられないですね。
(一同笑)
リーダー:悪口しか言ってない。
(一同笑)
リーダー:自画自賛しかしない。
部長:褒めあって曲ができるから、聞かせられません。
リーダー:うん。けなすことはいっさいしない。
■じゃあ、ふたりがいちばん動きやすいサイズなんですね。
部長:増えすぎるとちょっと。
リーダー:ちょっと、ですね。
部長:あんまり団体行動とかも得意じゃないし、3人以上になると支障も出てくるかなあ。
リーダー:そうですね。揉めるからね。
■わりとプライヴェートでも一緒にいるんですか?
部長:はい。よくお茶とかはしてたんですよ。
■その延長でスタジオに入るようになったって感じですか?
リーダー:そう、お茶がスタジオに変わったみたいな。
■先に言った海外のぶらーっとしたデュオもそうなんですが、3人以上ではないリアルがあるんだなって思うんですね。高校のときは部活とかはされてなかったんですか?
リーダー:リーダーはされてないです(笑)。
部長:私はギター部でした。弾けないのに。しかも部長でした!
(一同笑)
部長:弾けないけど仕切るのが好きだったんで仕切ってました。
■でも団体行動は無理......?
リーダー:無理ですね。だから大勢のバンドってすごいと思う。何がどうなってんのか。
■話は変わりますが、資料によるとこのアルバムは一発録りだっていうことなんですが、「せーの」で一気に録っちゃったんですか? いつもライヴやってるみたいな感じで。
リーダー:はい。それを何回かやって録りました。
■へえー。じゃほとんど1日とかですか?
部長:はい。1日だね?
■次いくよ、次いくよって感じで?
部長:録りっぱなしです。頭から最後までずっと録りっぱなしで、それを何回かやって。
リーダー:そう。通して、それを3回くらいやって終わり。
■へえー。それで1セットまるまるじゃなくて、そのなかからいいものをチョイスしているってことですね。
リーダー:そうです。
■そんなところから想像しても、一見ライヴがすごく大事なバンドなのかなって思えるんですが、じつは家で聴いたり、再生されることが大事な音楽なんじゃないかという気もするんです。ライヴをやっているのと曲を作ったり録音したりしているのとどっちが好きですか?
リーダー:どっちも楽しい。どっちも大事なことです。違う種類の楽しさです。
■ライヴも大事なことなんですね。
部長:やっぱり大きい音でやれるっていうのが。反応も見れるし。
■スタジオは、曲作りというか、ふたりでいろいろ言い合っている場所なわけですよね。それに対してライヴは知らない人もいっぱいいるところです。どちらが居心地がいい場所なのかなと思って。
リーダー:居心地がいいのはやっぱりスタジオだよね。
部長:そうだよね。
リーダー:空気もいいし。ライヴ・ハウスは空気悪くて。
■ははは! そうですよね。オーディエンスの方って年代や性別的にはどんな方が多いんですか?
リーダー:おっさんばっかりだよね。
(一同笑)
部長:CD出したばっかりだし、ライヴもまだ10回ちょっとしかやってないので、まだよくわからないですね。客層とかは。もっと若い人にも観てほしい。
■ああ、それはまさにCDになってから、これからという感じですよね。
部長:うんうん。
■しかし、おじさんばっかりなんですか。
部長:とりあえず、出す前までは......
野田:なんでおじさんばっかりなんですか(笑)?
■いや、わかります! 私も思いますよ。ノイズ・ロックをやる若い女性って、おじさんの萌えポイントなんですよ!
(一同笑)
部長:あー、それ誰かも言ってた。
■だから、そういうところにタッジオが取り込まれちゃうと悔しいなと思って。
野田:なんかディスクユニオン(橋元)が言うと説得力あるね。
(一同笑)
■いやー、そうですよほんと。だから、そういうところに取り込まれるのではなくて、音もスタイルもあるわけですから、ぜひとも外にぶつけていっていただきたいなって。若い層に。ただ、若い人が音楽聴いてるのか?って話はありますけどね。
リーダー:ああ、そうねえ。
[[SplitPage]]うん。怖い。渋谷とかにあるやつ怖い。「日本を元気に」とか言って......
![]() Tadzio /Tadzio Pヴァイン |
■日本の音楽シーンはどのようにご覧になっていますか?
リーダー:えー......怖い......
(一同笑)
■ははは! 怖いっていうのはなんでしょう?
リーダー:それは......
野田:ねえねえ、ノイズ・ロックの若い女性がおじさんの萌えポイントだっていうのはさ、具体的にはどんなバンド名が挙がるの?
■ええ!? 気になりますか。いや、それこそトーク・ノーマルとかどうですか?
野田:でもあれはさ、若い子から教えてもらったんだよ。
■ああ、そうなんですか?
野田:もっと有名どころで言うと?
■私、日本のアーティストだとよくわからないですが、それこそあふりらんぽとかどうなんでしょう?
A氏:最初はおじさんだったと思いますね。
リーダー:へえー......
野田:ああ、そう?
部長:そうなんだ......
■何でしたっけ、私いますごい大事なことを......。あ、そうです。日本の音楽シーンです! 怖いっていうのは何なんですか?
リーダー:あー、怖い!
■アイドル・ユニットとかはどうですか?
リーダー:あれは、かわいい。
■AKB48とかも好きですか?
部長:好きではないですけど! かわいらしいなとは思います。
■あのなかでむかつく人とかはいないんですか?
部長:むかつく人は......ていうか、全然知らないですね。
リーダー:うん。全然知らない。
■エグザイルとかは?
部長:あれは怖い!
リーダー:うん。怖い。渋谷とかにあるやつ怖い。「日本を元気に」(※渋谷駅前の広告看板)とか言って......
部長:全然元気になれない。
(一同笑)
リーダー:なんか落ち込んじゃう。あれ見ると。
■ああ、わかるなあ......(笑)。
リーダー:だったらスマップとかがいい。
部長:うん。
リーダー:スマップは平和。聴いたことないけど。
部長:写真だけね。
■じゃ、逆に前野健太さんとかはどうですか? ひとりでギター抱えて、活動もごくインディで。
部長:あの人は好きでした。
■あ、そうですか?
部長:かわいくて。
■かわいいですか!
部長:なんか私、なんだっけ、ダックス?(※スペース・シャワー・TVの動画配信サイト)に出たときに、前野健太さんの映像も流れてて、初めて観たんですけど、かわいい。
■ははは! かわいい、と。なんか、前野健太さんが一言で収められちゃいましたね(笑)。
部長:いえ、ちゃんと聴いてないので......
リーダー:リーダー聴いたことない。
■(笑)それこそ、同じ世代くらいの方で、たとえばライヴで一緒になったりする気になるアーティストとかはいないんですか?
リーダー:いないですね。
■ははは!
部長:バンドはあんまりわからないんですよ。DJとかなら。
■神聖かまってちゃんとか、相対性理論とか......
リーダー:も、わかんない。
■わかんないですか。
部長:わかりますよ!
リーダー:わかりますよ。
部長:わかるけど、ちゃんと聴いてない。
リーダー:タイプじゃない。
部長:そう、タイプじゃない。
野田:かまってちゃんと似てるとこあるよね!
部長:ええ!!
リーダー:ええ!!
■うーん、鏡合わせに......ですかね?
リーダー:あんまり聴いたことない。
部長:私は全然だめです、かまってちゃん。
■そうなんですか。
リーダー:対バンしてかっこよかった人か......茶谷(※久土'N'茶谷)さんくらいかなあ?
■やっぱりじゃあ......自分たちが一番かっこいいってこと?
部長:ははは!
リーダー:まあ、そうなっちゃいますね。
(一同笑)
■なっちゃいますね(笑)。なんか、あえて聴かない、というよりは、バリアがある感じ?
リーダー:いや、かっこいいのはかっこいいと思う。つい最近も、なんだっけ? THE GIRL(注:日暮愛葉さんが新たに組んでいるバンド)?
部長:THE GIRLとか、久土'N'茶谷もかっこいいと思ったし。
リーダー:だから、レコ発にも久土'N'茶谷に出てもらうし。
■ああ......
部長:なんか落ち込んできちゃった。
リーダー:なんかへこんできちゃったねえ。
■いえいえ! もうちょっと「怖い」ってあたり掘り下げてお聞きしたいんですが。「怖い」のニュアンスってあるじゃないですか。べつにホラーで怖いわけじゃないですから。
リーダー:なんか、全部おんなじに聴こえる。全部おんなじに聴こえて怖い。
部長:なんか、あれをいいと思って聴いてる人の感覚が怖い。
リーダー:そこで音楽をやったら、私たちの音楽は大丈夫かしらって。
■ああ。じゃ、音楽性というよりは、立っているところ、生きているところがみんなと違うんじゃないかっていう感覚ですかね?
リーダー:変なのがチャートの一位とかになってたら怖いなっていう、「怖い」。
■そういう、ほんとにマスな音楽とおんなじ地平に立ってる感じあります?
部長:別かな。
リーダー:うん。別。
■その自分たちのいる場所でのライバルっていないんですか?
部長:いないかな。
リーダー:うん。いない。
■......やっぱ、かっこいっすね(笑)。
部長:かっこいいっていうか、ほんとに知らないんですよ!
(一同笑)
■あ、でも部長さんはDJとかなら知ってらっしゃるんですよね?
部長:あ、いや、そこは掘り下げなくても......
■いえいえ、聞かせてください。
部長:もともと自分でもやってたので。仙台とかでも。
■日本のDJ。私こそあまりわからないので、教えてください。
部長:仙台でやってたのは、常磐さんとか、二見裕志さんとか、ムードマンとか。
野田:ふーん。
■音的には......?
野田:ディスクノートっていうレコード屋さんあったじゃない、仙台に。なくなっちゃいました?
部長:あるんですけど......ていうか、私、野田さんのDJそこで観てます。
野田:えっ! あ、あのときかあ!......すごいねえ!
(一同笑)
部長:野田さんのDJですよ! でもそういうこと言わないでおいたんですけど、言っちゃった。
野田:えっ、いや......
■(笑)いまテンション上がりましたよね?
野田:いや、だって、すーごい昔ですよ、それ。
部長:中三か、高一かなあ......
■そういうところが、高校の頃のアジトだったんですか?
部長:そうですね。レコード屋さんとかは。
野田:ディスクノートってね、それこそディスクユニオンみたいなとこだよ。
部長:そうですねえ。店の感じとかも......
■あはは、きたないなあ、ごちゃごちゃしてんなあ! みたいな?
野田:ファラオ・サンダースのTシャツを勝手に作って売ってるみたいなね?
■ははは! ディスクユニオンはすごくちゃんとした会社ですよー。ではお話が戻るんですが、これからまた新たなアルバムを作っていく上で、そういったDJ的な素養はフィードバックされてこないんですかね?
部長:フィードバック......されてるのかなあ?
■いえ、次の作品の青写真、ということなんですが......
部長:うーん、フィードバックしようとは思わないし、好きな音楽を持ち込もうとも思わないし、そういうのはまったく別物なんですけど、なんか聴く人によっては、「このリズム、テクノっぽいよね」とか言われたりします。
■ああ! へえ。
部長:だからほんとに別のもので。ぜんぜん知らないことやってるから楽しいのかも。こんなふうに。
■次の展開としては、そういう方向性はないんですかね?
部長:自分からは、ないと思います。勝手に入ってきちゃうってことはあるかもしれないですけど......
[[SplitPage]]なんかみんなすぐ解散とかしちゃうから、それだけはやめろって言われて......。だから、続けるって意味で150。アルバム1枚出して終わりっていう人たちもいるから、そんなんだったた出したくないなっていう感じ。
![]() Tadzio /Tadzio Pヴァイン |
■今回の作品は、1枚目ってこともありますから、これまでの総決算、とりあえずやってきたこと全部出しますってアルバムかなと思ったんですが。
リーダー:総決算?
■総決算といいつつ、結成が2010年でしたっけ?
リーダー:2010年!
部長:そう! まだ1年ちょっとです。
野田:ははは!
部長:まだ総決算は大げさです!
■(笑)あ、そうですね。とりあえず、出しました~って感じですね。
リーダー:そうです。総決算です。
(一同笑)
■(笑)ここまでの時点のものを、まとめたという形のものだと思うんですが、次の作品がまたあるわけじゃないですか。何か見えている画というか、こんな感じの作品になるだろうという予定はあるんですか?
リーダー:ま、曲ができたらまた作る。みたいな感じですかね。
部長:曲をつくっていく、という。
リーダー:うん。どんどんどんどん、いっぱい。
部長:それだけが、目標なので。曲ができて、アルバムができて、みたいな。150曲作るっていう目標があって。
■ああ、そっか。150曲の目標があるんでしたね!
リーダー:はい。そこでもう終わりなんです。
■はい。......えっ、終わり!?
リーダー:そこで終わりです。
部長:中原(昌也)さんから150曲作って死ねって言われたんで。
■はい。
リーダー:だからそこでタッジオは終わりです。
■終わりって......。そういうことですか......それ、言われたこと守ってたら死んじゃうじゃないですか!
リーダー:そうそう、でもタッジオが死んじゃうんです。タッジオ、ダイ。
野田:じゃあさ、150曲作ろうっていうところまではほんとにやるつもりでいるんだ?
リーダー:はい。それが最後っていうこと。
部長:数をいっぱい作りたいですね。わけわかんないのもできるかもしれないけど、とにかくいっぱい。
野田:3枚組のボックス・セットになっちゃうね。
(一同笑)
■ああー! それは刺激的なアイディアじゃないですか。150曲全部入ったやつ!
部長:憧れですね。ボックス・セット!
野田:3枚組じゃ150曲は無理か。
部長:枚数多くしたい。15枚組とか。
リーダー:いいねえ。
野田:でもさ、中原昌也ひとりに言われたからって、なんでそれ守らなきゃいけないんですか?
リーダー:なんか渋谷の焼き鳥屋さんでふたりで食べてたときに言われたんですけど、そんときに言われてすぐスタジオ入ったのがきっかけなんですけど......
部長:なんかみんなすごい後押ししてくれて、中原さんとか。私がドラムやるのも、千住(宗臣)さんに打ち上げで「昔、ドラムやってたんですよねー」って言ったら、「やればいいじゃん、なんでいまやらんの?」みたいに言われて、あ、やっていいんだーみたいに思ったのがきっかけです。
リーダー:すごいまわりが応援してくれる。
■へえー。じゃ、すごい相性でしたね。
野田:え、でもだからさ、中原昌也ひとりに焼き鳥屋でやれって言われたからといってさ......
リーダー:あ、でも言ったんですよ、ちょっと。バンドやってみようかなーみたいな。そしたらなんかもうすごい(中原さんが)興奮しちゃって、ギャー! みたいに言われて。ちょっと、まわりの人が心配するくらい。なんか、隣りのカップルが助けにきたりとか。
(一同笑)
リーダー:傍からみたら、おじさんと若い子がそんな......なんかすごい説教されてるみたいな感じになってて。「やれよ!! やって死ねよ!!」みたいな......
(一同爆笑)
部長:27で死ねって言われたよね。
リーダー:そう。
■このアルバムに入っている以外に何曲もあるんですか?
リーダー:新曲がちょっとあるくらいで、いま13曲ですね。2曲できた。
■じゃほんとにこれで全部、お蔵入りはない方向なんですね!
リーダー:そう。恥ずかしい。20曲くらいあることにしておけばよかった。
野田:いや、しつこくて悪いんですけど、中原昌也のどんなところが好きなんですか?
部長:あんまり深刻なのが好きじゃなくて、なんか中原さんって「なんちゃって」って感じあるじゃないですか。なんか、キャラ、本人自体もそうですけど。そういう音楽がもともと好きなんで、惹かれますね。絵も好きだし。人も好きだし。かわいい。
野田:暴力温泉芸者とヘア・スタイリスティックスとでは、どっちが好きですか?
部長:ええ......そんなに全部を聴き込んでるわけではないんですが......
野田:すごくたくさんあるもんね、中原くんの作品。
部長:どっちってこともないですね......どっちも好きです。最近出してるシリーズとかも。
■150曲というのになにか説得力があったというか、それを守ろうというわけですから。150という数字には何か意味があると思いますか。
リーダー:いや、ないと思います。
野田:きっとそのときたまたま出たんだよ。
(一同笑)
■そんなあやふやな数字にも関わらず守ろうというんだから、すごい信頼関係があるんですね。
リーダー:最初にその話を聞かせたときに言われたから、やけに印象的で。
部長:それを聞いて、量があればなんとかなるだろうって。
リーダー:なんかみんなすぐ解散とかしちゃうから、それだけはやめろって言われて......。だから、続けるって意味で150。アルバム1枚出して終わりっていう人たちもいるから、そんなんだったた出したくないなっていう感じ。
■いまだけじゃなくて、その次出すということが確実に決まってる。ヴィジョンがあるわけではないかもしれないですけど、1回だけじゃない、次もやるという覚悟ですね。そういうのがあるというのは、また古風というか。若い人のバンドには珍しい感じがしますね。
野田:ちなみに、このタッジオっていう名前はどこから......?
リーダー:リーダーが好きなひと。
部長:『ベニスに死す』に出てくる美少年です。
■美少年かあ。
リーダー:リーダーが好きで。
野田:なるほど......古風だねえ。
(一同笑)
■では、まとめになります。いま言っていただいた部分と重なりますが、これからどのように活動していかれるのか、何か野心があればお聞きしたいです。
リーダー:うーん。
部長:うーん。
■ライヴをひたすら続けていく感じでしょうか。
部長:うん、それを続けること。
■じゃ、でっかく、「海外行くぜ!」みたいのはない?
部長:それはもちろん行きます。
リーダー:うん。それはもうライヴをやるっていう予定の中に組み込まれてる感じ。
■シーンをオーガナイズして日本のインディ・ロックを引っぱっていくぞ! というような方向の野心はないですか?
リーダー:いや、それは勝手についてくればいいなって。
部長:やろうと思ってできることではないから。
野田:ていうか、絶対そういうタイプには見えないよね。
(一同笑)
■そういうところがはっきりしてよかったです。野心というか、まあ、自分たちが最高! という。
リーダー:ぷっ。
■そういうところがかっこいいと思います。
A氏:あんまり買い被るらないでくださいね。ほんとにまだ他のバンドと全然対バンしてないから、何にも知らないんですよ。
野田:いや、でも渋谷のディスクユニオンのインディ・コーナーとか行くと、いまの日本のロック・シーン内の断絶っぷりがそのまま凝縮されていて。最新のインディ・ロック=パンダ・ベアの新譜の隣にサニー・デイ・サービスの90年代の高価な中古盤があって、その隣にはスピード・グルー&シンキの2万円のオリジナル盤が売られていたりね、とても同じ音楽ファンとは思えない人が隣同士に並んでいる。
■まさに、そうですね。タッジオのなかにもそういうせめぎ合いというか、すごく混淆としたものを感じますね。
部長:はい。
■だって、「これが好き!」っていうバンドがまわりにないわけですよね?それって、海外の、とくにUSの音楽シーンとかだと考えられないことだと思うんですよ。それこそアニマル・コレクティヴなんかのまわりでは。
部長:アニマル・コレクティヴとか、そういうあたりは私も好きです。ギャング・ギャング・ダンスとか。
■それが日本のバンドでないというところが不幸というか。どうですか、日本の音楽はアニメに勝てると思いますか?
部長:すごい嫌。アニメ。
(一同笑)
部長:嫌。もうー。
■でも、すごい影響力ですよ。レコード屋で働いていてさえ、「若い人は音楽聴くのか?」っていう状況で、では、タッジオの音楽は「けいおん!」に勝てるのでしょうか?
リーダー:ケイオンって?
(一同笑)
部長:よくわかんないけどアニメだよ。
■あ、すみません。私もよくは知らないんです。若い人にすごく支持されているマンガ、アニメです。
リーダー:オタクねー。
部長:そういうこというと「おばちゃんねー」って言われるよ。
リーダー:なんか、オタクもこっちを好きになればいい、ってことでしょ?
■はい、質問の意図としては(笑)。あっちのアタマをぶちのめして......
リーダー:こっちになびかせる。
■そう、こっちになびかせるということはできるんでしょうか? これ、最後の質問ですね。これに答えていただくことで、日本の音楽のひとつの未来をうらないましょう。ということで!
部長:ええー。もう、違う星の人たちみたいに思えちゃって。どうなんですかねー。
リーダー:じゃ、アニメを絞め殺すということで。
部長:うん。アニメを絞め殺す。
(一同笑)
■ははは! じゃ、150曲作ったのちには、
リーダー:のちには。
■世界がひっくり返っているであろうことを期待しまして!
野田:でも、アニメ観たらはまっちゃったりして。
部長:そうかもしれないですね! 偏見かもしれないから。
ブルース・スプリングスティーンの"ボーン・イン・ザ・USA"が共和党のキャンペーン・ソングに使われた話は有名で、村上春樹も音楽エッセイのなかで彼ほど誤解を受けたロック・ミュージシャンもいないみたいな同情的なことを書いていたが、しかし考えてみれば、"ボーン・イン・ザ・USA"に政治的な曖昧さがあるのも事実で、その曖昧さを作ったのは当たり前の話、スプリングスティーン自身である。
レディー・ガガといえば、周知のように欧米のみならず日本においても断トツのセールスを有するミュージシャンであり、スタジム・ロック/アリーナ・ミュージックの女王の座に堂々と君臨している。そればかりか、あの小山田圭吾までもが彼女プロフェッショナリズムを賛辞するほど、ある層からは確実に、絶大な評価を受けている時代のヒロインである。コーネリアスが小野洋子のバック・バンドとしてアメリカ・ツアーをしているとき、RZAなんかといっしょにやって来て同じステージに上がったそうで、つまり、同じアリーナ・ミュージックの女王クラスと言えるであろうリアーナなんかとはそこが違う。良くも悪くも、リアーナは別の場所にいる。
レディー・ガガにとって3枚目のアルバムとなる本作を聴いていると、僕は"ボーン・イン・ザ・USA"を思い出さずにいられない。知らない人がいないほど大ヒットしているタイトル曲の"ボーン・ディス・ウェイ"はこういう歌い出しからはじまる。「どっちを愛してもいい 彼でも 神でも」、そしてこのモダンなエレクトロ・ポップ・ソングは、歌詞のうえではこのように盛りあがっていく。「ドラッグ・クイーンじゃなくてクイーンになればいい/あなたが貧乏でも 恵まれていても/黒人でも 白人でも ベージュ肌でも インディオ系でも/あなたがレバノンに生まれても 東洋系でも/人生で障害を負って/仲間はずれにされて イジメられて からかわれても/今日いる自分を愛して そしてお祝いして/だってベイビー あなたはこの運命のもとに生まれてきた」
ガガのやろうとしていることは"アメリカ的なるもの"の更新である。本国における彼女への熱狂ぶりには、彼女の成功物語やその活力への憧憬に対するもの以上の何か大きな力を感じるが、それはアメリカ的ファンタジーへの熱狂ではないかと作品を聴いていると思えてくる。"ボーン・ディス・ウェイ"とは"やればできる社会(can do society)"、言うなれば民主主義におけるある種の理想主義的声明なのだ。
"ヘアー"というバラードも興味深い。「クールにお洒落する度に親に怒られる」という歌い出しではじまるこのバブルガム・ポップを気取った叙情詩は、「わたしは髪/髪のように自由/わたしでいたいだけ」と繰り返しながら、自由の美徳を強調している。それは誰の耳にも女性の自由の主張に響くにい違いない。が、しかし、たとえば"ボーン・ディス・ウェイ"にはその民主主義がどうして弱い者いじめの政治になっているのかという疑問が抜け落ちているように、"ヘアー"の自由賛歌においても、それが新しい自由主義とどう違うのかという記述はない。彼女の音楽と同様に、ある一線を越えることはないのだ。
それではアルバム『ボーン・ディス・ウェイ』は大雑把な作品なのかと言えば、違う。曲は単純でも歌詞は複雑で、「アメリカ社会のパノラマを反映している」と評している人がいるように、ガガは現代アメリカの複数の場面を実に手際よくいくつかのトピックにまとめている。
"アメリカーノ"で彼女は移民文化についてのロマンティックな弁証法を試みている。それは英語の話せない不法滞在者のラヴ・ソングであると同時に、反抗のファンタジーとしても展開している。"シャイセ"という曲ではアメリカで暮らしながらドイツ語しか話せないドイツ人女性の苦悩をドイツ語で歌ってみせる。こうした曲から滲み出ているのは、いわば中産階級的なリベラル、ガガのアメリカ的なる寛容さへの強い思いであり、フェミニスト・アートと呼ばれるものへの情熱だ。
すべての曲を通して多様な女性が歌われている。孤独な女性、彼氏を愛せないことに悩み、彼氏の耳にコンドームを要求する女性、嫌な女で負け犬であることを自覚している女、ブラジャーを旗に強くなろうとする女性など、とにかく彼女たちは微妙に逸脱し、苦しみを抱え、伝統主義のなかでもがいている。しかし彼女たちは最終的には道徳的で、結論を言えば前向きに未来を見ようとしている。その前向きさはガガのポップ・ダンスと相まって、すさまじい上昇を描く。「私は勇敢に空しさと戦い、勝者となる」、これはアルバムの最初の曲"マリー・ザ・ナイト"の一節である。彼女がローザ・パークス的ではなく、騎士道的であることがよくわかる。
ほんの数年前までは、民主主義における理想を歌うアリーナ・ミュージックは男性ロック・スターの専売特許だった。そういう意味ではガガはきわめて今日的な存在だと言えるが、彼女への評価を、彼女が啓蒙する民主主義に見ていいのだろうか......というところで僕はひっかかっている。彼女のデモクラシーが世界中で売れているさなかにドレイクは弱々しく内省を歌い、そして20歳のタイラー・ザ・クリエイターは「良心が俺の肩から飛び降りて死んじまった」とゲロを吐きながらラップして、最後には「もう死んでみせるよ」とつぶやいている。レディー・ガガの「人生をあきらめない」という歌とはまったく逆に、男は泣き、絶望し、嘔吐し、首を吊っている(とほほほ......)。そしてガガの表現する寛容さと"ヨンカーズ"がなかば強引に問うているであろうそれとでは著しく違っている。いったいどちらが行き詰まった政党政治に加担しているのだろう......というか、男は本当に弱っているというのに、彼女たちときたらアメリカにはまだ力があるんだと言わんばかりに輝いている。自由の女神がエレクトロで踊っても誰も驚かないだろう。
ボブ・ディランをモチーフにしたトッド・ヘインズ監督の映画『アイム・ノット・ゼア』のもっとも美しいシーンのひとつが、マイ・モーニング・ジャケットのフロントマンであるジム・ジェームスがキャレキシコの演奏とともに"アカプルコへ行こう"を歌い上げる、若い娘の葬儀の場面だった。その作品はディランを6人の俳優に演じさせ、各パートで演出も分ける実験的な作りにすることにより、ディランの多面性を一旦バラしてアメリカの時代を考察するヘインズ監督らしいテーマを持っていたが、作品のエモーショナルな部分を繋いでいたのは他ならぬディランの歌であり、ジムがそのハイトーン・ヴォイスで歌うディランの繊細さは映画の時間に緩やかさをもたらしていた。
マイ・モーニング・ジャケットはケンタッキー出身の豪快なライヴ・バンドで、その身体にはハード・ロックの血が濃く流れている。数年前テレビ出演した彼らが、量が多すぎる長髪と髭を振り乱して嬉々として演奏する映像を観て、そのあまりのパワフルさと暑苦しさに僕は友人とゲラゲラ笑っていたものだが、そのエネルギーは毎日のようにジャム・セッションとライヴを重ね続けたアメリカのロック・バンドの底力をまざまざと示すものだ。その演奏とアンサンブルはつねに生き生きとしていて、彼らの手のなかで楽器は嬉しそうに音を上げる。バンドの、ときには4時間に渡るライヴのスケールの大きさはジャム・バンド好きの大絶賛をつねに得ている。そのサイケデリアは白昼夢にまどろむためのものではなく、宇宙へのトリップを欲望する壮大なものだ。
だが、マイ・モーニング・ジャケットはそんな豪快さだけがとりえの単なる田舎の元気なジャム・バンドではなく、同時にフォークやカントリーに対する深い理解やエレクトロニカやヒップホップに対する興味も持ち合わせているところこそが何よりの魅力である。それは恐らくジム・ジェームズによるところが大きく、彼はエリカ・バドゥを絶賛しながらソロ名義ではジョージ・ハリスンのカヴァーを披露する少し変わった感性の持ち主だが、それはステージでフライングVを得意げにかき鳴らしている髭面の男と同一人物でもある。その音楽的な素養を証明したのが4枚目の『Z』だ。以降はとくにシンガーとしての表現力を増した印象が強く、その成果が冒頭で書いた映画のシーンなども生み出すこととなった。ブライト・アイズのコナー・オバーストやM.ウォードらと組んだ、フォーク/カントリー・ユニットであるモンスターズ・オブ・フォークも記憶に新しい。
前作『イーヴル・アージス』は音楽的に手を広げすぎてややまとまりに欠けたところもあったように思うが、6枚目となる『サーキタル』は抑制の効いた構成になっていて、ライヴで見せるような爆発は見当たらないが、その分バンドが持つ繊細さや奥行きが感じられる好盤だ。
アルバムは"ヴィクトリー・ダンス"の不穏なムードで幕を開け聴き手を焦らしつつ、続くタイトル・トラックで早くもハイライトを迎える。慎ましくはじまるそのフォーク・ロックはヴァースを重ねるごとにさまざまな楽器のパートを加えつつ躍動し、7分強のなかでメランコリアとユーフォリアを行き来し、バンドの持つエモーションの幅を見事に体現する。ハード・ロックとファンクがごちゃ混ぜになったような演奏の上に子どものコーラスが乗る"ホールディン・オン・トゥ・ブラック・メタル"も面白いし、ファンキーなホーンが活躍するワイルドなロック・チューン"ファースト・ライト"もこのバンドらしいが、より耳を引くのはアコギとストリングスが織り成すフォーク・ナンバー"ワンダフル(ザ・ウェイ・アイ・フィール)"や、ラストの4分の3拍子のピアノ・バラッド"ムーヴィン・アウェイ"のような穏やかで美しいナンバーだ。野外フェスでこれらの曲が演奏されれば、ひとたびそこはピースフルな空気で覆われることだろう。が、そこには同時に室内楽的な親密さもある。この感覚はこれまであまりなかったものだと思う。そして、それらの楽曲で聴けるジムの歌声の優美で温かな響きは、どこか時間の流れを遅くするような陶酔感を持っている。
マイ・モーニング・ジャケットはアティチュードや佇まいではなく、何よりも演奏と歌で迸る生命力のようなものを表現している稀有なバンドである。そのサウンドは多彩だが、つねに沈みこむことはない。"ワンダフル"では何がワンダフルだと言っているのかと思えば、「僕が向かう場所には警察なんかいない/病気なんてない/僕が向かうのは自分自身でいられる場所/ありのままの魂」という、かつてのアメリカの理想がフラッシュバックするようなものだ。だが、この歌を聴いていると、それがサイケデリックな幻だって構いはしない、いまはここに身体と意識を任せていたい......という気分になってくる。
すでにご存じの方も多いと思いますが、Budamunk + ISSUGI + S.l.a.c.k. による新ユニット、シック・チーム(Sick Team)がいよいよその全貌を露わにします!
発売日は6月2日、しかも......なんとその日にはDOMMUNEでライヴも披露することが決定しました! 7時から12時までたっぷり5時間使って、日本の新しいヒップホップの誕生をお届けします。当日は会場に来れる人は来てくださいね! 生で彼らのライヴやDJを体験しましょう!

近年のポップ・カルチャーの主題にある種の精神疾患が入り込んでいるのは、音を喩えるさいに"フォビア(恐怖症)"という用語が加わったことからも察することができるけど、この音楽についてもその筋ではR&Bのアゴラフォビア(広場恐怖症)・ヴァージョンなんて形容するようだ。イギー・ポップの"デス・トリップ"(おまえと俺は落ちていく......)で歌われたようなロックのファンタジーから遠く離れた不安だが、しかもその歌メロはR&Bからきているようにポップなのだ。
まずは女性のほう、グライムスに関しては、先日最初のソロ・アルバムをロンドンの〈ロー・レコーディングス〉からライセンス・リリースしたばかりで、わが国でもチルウェイヴのリスナーを中心に話題になっている。4オクターブの声が出るように特訓を積んだというグライムス=クレア・ブーシェは、パンダ・ベアとアリシア・キーズからの影響を、ダフト・パンクを非情にも串刺しにしたようなエレクトロ・ポップのなかにミックスしている。ウィッチ・ハウスやヒプナゴジック・ポップないしはアンビエント・ポップの流れで紹介された彼女のそれは、パニック症候群になったドナ・サマーの風変わりなポップ・ダンスようで、これをIDM~コズミック・ディスコと追ってきたロンドンの〈ロー・レコーディングス〉が目を付けるという流れもまた、いま動いている変化を表していて面白い。
流れについては、ディオンの話も魅力的である。幼少期から音楽のトレーニングを積んできたモントリオール(いま、もっとも文化が白熱している街と言われている)の神童として名高いという彼は、学業を休み、チベット音楽を学ぶためにチベットの寺院で修業を積んで、帰国後はダニエル・ロパーティン(OPN)らとアンダーグラウンドの実験へと手を染めている。そして、OPNのチルウェイヴ・プロジェクト、ザ・ゲーム(あるいはハイプ・ウィリアムス)のリリースで知られるLAの〈ヒッポス・イン・タンクス〉からデビュー・アルバム『ペリナプシア』を昨年発表している。
本作『ダークブルームEP』は、そうした......チルウェイヴ以降の地下変動に関わっているカナダのふたりのキーパーソンによるスプリットである。片面がディオン、もう片面がグライムスで、ここには最新のシンセ・ポップに顕著なスタイルが凝縮されている。その青写真は80年代のエレクトロ・ポップにあり、両者ともにパンダ・ベア以降の声の重ね方、ロング・トーンのチョップド・ヴォイスとそのループを駆使しているが、ふたりの個性は出ている。ディオンはリズム・トラックに工夫を凝らし、グライムスはよりハーモニーに重点を置いている。とくにグライムスによる"ヴァネッサ"はベスト・トラックで、このキャッチーな曲を聴いていると彼女はひょっとしたらリッキ・リーと並んで新しいポップ・アイコンになれるかもしれないと思う。いっぽう、ディオンのほうは陶酔的な"サウザント・マイル・トレンチ"がとくに印象的だ。この人のクセのある歌声は好き嫌いが分かれるだろうが、いかにもチルウェイヴ的な陶酔は悪くない。
「黄金時代を感じるには生まれときが遅すぎた」、このように歌いはじめる"リヴ・ゾーズ・デイズ・トゥナイト"は、セカンド・サマー・オブ・ラヴを知らない世代が初めて1989年の夏について歌った歌である。「トビ(rush)も逃したし、良い時代(better days)も知らない/僕は君の経験した時代を感じることができない/君の貴重な過去に触れることもできない」、とまあ、なんとも実直な憧憬が歌われている。そしてフレンドリー・ファイアーズのエド・マクファーレンはその曲のサビを次のように繰り返すのである。「それでも僕はあなたがたのその日々を今夜生きてみせるよ。僕には手が届かない歴史だと言うけれど、それでも僕はそれらの日々を今夜生きてみせる」
これほど前向きに、レイヴ・カルチャーを知らない世代がそのファンタジーを歌ったことはない。"リヴ・ゾーズ・デイズ・トゥナイト"は過去を調べているが、あくまでも現在についての歌である。「僕をアンダーグラウンドにとどめる亡霊と向き合って/みんなが話している最良のものをいただこう/僕は待っているけど外は寒いから/夜には君をしっかりと抱くんだよ/君の愛を感じるために」
興味深いことに、5月19日付けの『ガーディアン』では、フランキー・ナックルズの"ユア・ラヴ"(注)の記事が組まれている。「永遠にレイヴさせる歌」というわけで、この曲にはいまだ素晴らしい魅力があり、現在もジ・XXのような若いバンドにまで支持されている......などといった事情が記されているが、真実を言えばこの曲は明らかにある時期に飽きられ、忘れられていたのである。しかし......たしかにここ数年で蘇ったのだ。そして、この1987年のシカゴ・ハウスのクラシックのリヴァイヴァルをうながしたのがフレンドリー・ファイアーズなのだ。"ユア・ラヴ"は、このバンドの2006年のデビュー・シングルでカヴァーされている。渋谷のディスクユニオンの2Fのインディ・ロックのコーナーと4Fのクラブのコーナーを往復するリスナーが果たしてどれほどいるのか知らないが、つまりUKではいまそれが起きているのである。
さて、2008年のファースト・アルバム『フレンドリー・ファイアーズ』で80年代のニューウェイヴとイビサの快楽をミックスしたこのバンドは、そしてセカンド・アルバムにあたる本作『パラ』においてより情熱的に、さらに思いを深めながら、ダンス・カルチャーとその"夏"をテーマにしている。音楽的にはUKのエレクトロ・ポップの伝統芸を引き継ぎながら、オーソドックスな構成のキャッチーな歌をダンサブルな演奏をバックに歌っている。「裏庭で一本のテープを見つけた/泥だらけの青いカセットだけど/そのホコリの奥ではリールがまわりはじめて/土のなかに保存されたもうひとつの記憶が再生される」"ブルー・カセット"
『パラ』にひとつ問題があるとしたら、これほどクラブ・カルチャーを扱いながら、ダブステップないしはミニマル・テクノといった現在稼働中である音がまったく関わっていないという点にある。レトロ趣味に終始しているのだ。この音はアンダーワールドでもなければケミカル・ブラザースでもない、ワム!の"クラブ・トロピカーナ"でありアニマル・ナイト・ライフの"ラヴ・イズ・ジャスト・ア・グレート・プリテンダー"なのだ。明らかに彼らは享楽の季節としての80年代をうらやましがっている。
「塵が降ってくる/彼らは行進していった/地下に眠るレコードたちとともに/階段を上がる/クラブから出てライトにキスする/君の愛が欲しい/街に出る/君の面影を心抱いて世界はふたたび回り出す/しかし君は決して僕のものにならない」"チャイム"
こうした若い世代の複雑な感情の吐露に享楽の時代を経験した僕はまだうまく応えることができない。当たり前だが、戸惑いを感じるのである。そして、彼ら自身もそれが素直に喜べることではないことも理解している。「君の愛、それは幻/僕が生きるすべては君の嘘/僕は混乱している/トリップしている/僕は傷つき、参っている/寒いし、負けているというのに、この気持ちは強まるばかりだ」"プル・ミー・バック・トゥ・アース"
な、なんていう告白なのだろう。君の世代にだって面白い音楽がたくさんあるじゃないか、思わずそう言いたくなってくる。ただ......ダンスはあっても、愛と笑顔の夏は手の届かないところに行ってしまったのかもしれない......とは僕も思う。個人的な快楽だけはあっても、集団として理想とするヴィジョンはない。パーティの最後にキング牧師の演説や"パワー・トゥ・ザ・ピープル"をかけるようなDJが、いまさらいるのだろうか。それとも少年たちの愛の歌を聴きながら、潮風に混じったハウスのビートを感じていたあの日々は蘇るのだろうか。「僕はその日々を生きるんだ」と、エド・マクファーレンは何度も何度も繰り返すのだ。「君が持っていた愛を感じる/我慢はしない/僕は今夜、あの日々を生きるんだ」
なおアルバムのタイトルは、メスカリンやLSDの研究でも有名なオルダス・ハクスリーのユートピア小説『島』から取られている。
(注)正確に言えば、この曲のもうひとりの主人公はジェイミー・プリシプルである。多くの人が「フランキー・ナックルズの」を書いているが、これではプリシプルがあまりにも可哀想。蛇足として、使われたドラムマシンはデリック・メイのものだと言われている。