「AY」と一致するもの

ライトノベル・クロニクル2010-2021 - ele-king

変わるラノベ、変わる時代

ヒット作から浮かび上がる現代日本の風景
ベストセラー60作を一挙読解

SAO、魔法科、ログホラ、ビブリア、俺ガイル、薬屋、ノゲノラ、オバロ、Re:ゼロ、このすば、転スラ、ダンまち、のぶ、よう実、幼女戦記、ナイツマ、ゴブスレ、はめふら……

時代を彩ったヒット作は何を描いていたのか?
それは読者の心情や社会状況といかに呼応し、あるいはズレていたのか?

従来の文庫ラノベからウェブ小説、ボカロ小説、ライト文芸までを巻き込み変化を続ける「ライトノベル」
その時事風俗・流行商品としての変遷

発表されるやいなやバズを引き起こした「ラノベの中学生離れ」論も所収

目次

はじめに
2010
[コラム] 涼宮ハルヒの変遷 『ハルヒ』受容の一七年史
2011
[コラム] ウェブ小説書籍化の歴史──「異世界転生」前史① 九〇年代~二〇〇〇年代前半
2012
[コラム] ウェブ小説書籍化の歴史──「異世界転生」前史② 二〇〇〇年代後半
2013
[コラム] ラノベの中学生離れ──中学生市場はなぜ重要なのか
2014
[コラム] 西尾維新〈物語〉シリーズ──新規に中高生読者を獲得し続けたモンスター作品
2015
[コラム] 中国ウェブ小説の衝撃
2016
[コラム] 韓国ウェブ小説の衝撃
2017
[コラム] 有料課金モデルを試みたLINEノベルはなぜ終わったか
2018
[コラム] やる夫スレ書籍化から見えるラノベとの差異
2019
[コラム] ボカロ小説の第二の波──ヨルシカ、YOASOBI、カンザキイオリ
2020
[コラム] YouTube発コンテンツのラノベ化の明暗──VTuber小説と「マンガ動画」小説
2021
あとがき

著者プロフィール
飯田一史(いいだ・いちし)
青森県むつ市出身。中央大学法学部法律学科、グロービス経営大学院MBA修了。出版社にて小説誌、カルチャー誌、ライトノベルの編集者を経てフリーランスのライターに。マーケティング的視点と批評的観点からウェブ文化や出版産業、マンガ、アニメ、児童書等について取材&調査して解説。寄稿先に現代ビジネス、Yahoo!ニュース個人、リアルサウンドブック、新文化、monokaki、日刊サイゾーなど、単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』『ウェブ小説の衝撃』、共著に限界研編『21世紀探偵小説』『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』、山川賢一・奥村元気編『Fate/Plus 虚淵玄Lives 解析読本』ほかがある。


オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧

amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
honto
e-hon
Honya Club
mibon本の通販(未来屋書店)
アニメイト
メロンブックス
とらのあな

全国実店舗の在庫状況

紀伊國屋書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂
TSUTAYA

Riddim Chango Records - ele-king

 東京の〈Riddim Chango〉レーベルが新作をドロップする。UKのエレクトロ・ファンクのプロデューサー、Lord Tuskによるサンズ・オブ・シメオン名義のDub作品。今回も売り切れ必至なので、ダブ頭でダビーなハートのダブ戦士たちは急がねばです。 

Label : Riddim Chango Records
artist : Sons of Simeon
title : Goliath Brothers

仕様/品番/バーコード
10"インチ・アナログ盤 / デジタル配信 (Bandcamp先行配信) / RCEP-007 / 4580211858257
発売日:2021年3月26日(金)

Side A
01 - Goliath Brothers Verse 1
Side B
01 - Goliath Brothers Verse 7
02 - Goliath Brothers Verse 36
Produced & mixed by Sons of Simeon
Lacquer cut by Jason Goz (Transition Studio)

プレオーダー
https://riddimchango.bandcamp.com/album/goliath-brothers?fbclid=IwAR1IiwKZp3lk786tYVJwWVl51adBvt5eDd5_WLxdCUhrOJ-gzLB3uvP8Usg

 Funkin Evenの〈Apron〉レーベルやJohn Rustの〈Levels〉レーベルでのハウス/テクノ寄りのリリースや、USのレジェンドMCであるMos Defとのアルバム制作、Sun Runners名義でVaporwave寄りのアルバムの発表など多方面で活躍するLord Tuskは大のサウンドシステム・ファンとしても知られている。幅広い音楽性を生かしたLord TuskならではのキラーなDub/StepperをDMZ等との仕事で知られているTransitionスタジオでマスタリング。サウンドシステムの鳴りは安定保証!

unagi - ele-king

 アコースティック、エレクトロニック、電子音、環境音までさまざまな音を自由自在に操る須長のマルチな才能が全面開花。インナースペースからアウタースペースへと放たれるコズミック電脳アンビエント・ジャズが完成した。ここにはスティーヴィー・ワンダーもモンクもサン・ラーもいる。ソフト・マシーンもエイフェックスもイーノも、ジョージ・デュークもマッドリブもサンダーキャットもいる。昨今のワールドワイドなジャズやオーガニック・ハウス、ローファイ・ヒップホップとも連動するアップデートされた音響は、聴き手の五感をたくみに刺激し、肉体に浸透してインナーマッスルを震わせ揉みほぐしてくれる。
 全曲ほとんどひとりで作られた作品だが、内面に閉じられておらず、人懐っこく語りかけてくるような感覚がある。神秘的な芳香と有機的な躍動感、あたたかいユーモアが同居して、聴き手のイマジネーションをやさしく引き出してくれる。ベーシストだけに低音の冴えは天下一品。ピジカットもアルコもサブベースも含め、ぶっといベースを全編で味わえるのも、この『Perpetual』の大きな魅力だ。ヘッドフォンで聴いてもいいけど、ベースが出るシステムで聴くと、空間が「鳴る」「震える」気持ちよさを体感できる。
 ダンスが第一義の作品ではないのでビートはひかえめだけど、リズムの底にはしなやかなスウィングとグルーヴが流れており、多彩な音の重なりがおりなす柔らかくとろけるようなハーモニーとあいまって、至福のリスニング体験を提供してくれる。(春日正信)

■MV
https://www.youtube.com/watch?v=m73GTcoXRLw

■アルバム情報
unagi『Perpetual』
2月24日配信先行発売
https://nex-tone.link/96350

CD: 3月24日発売(300枚限定生産)
JAN: 4580275440924
品番: BMP-2025

収録曲
1 Perpetual
2 Tillandsia
3 Coholism
4 Lotus Prayer
5 海松(みる)
6 A.M.
7 Night Lights
8 Marbling
9 Urgency
10 Avoid
11 Two Seas
12 After All

■unagi (須長和広)
 2006年、ジャズカルテット『quasimode』のベーシストとしてEMIよりメジャーデビュー(現在は活動休止中)。作曲・アレンジも担当し、EMI / Blue Noteより5枚のフルアルバムをリリース。
 アーティストのライブサポートやレコーディング等にも数多く参加。過去には専門誌である「ベース・マガジン」で連載を持ち、著作のベース教本は国内のみならず韓国においても出版されている。
 音楽制作においてはアコースティック/エレクトリックの中にある楽器本来の温かみあるサウンドを好み、ロック・フォーク・ジャズ・ブラック・ミュージックからエレクトロまで幅広く日々グッドミュージックを模索している。
 2015年にソロ・アルバム「MIRROR」をUniversal Music / Blue Noteレーベルよりリリース。2018年以降は『quasimode』のドラマー・今泉総之輔とのジャズユニット 『COSMIC TEMPLE』も定期的に活動中。

HP | Twitter | Instagram

■unagi×阪急メンズ東京タイアップキャンペーン
CD発売を記念して、3月17日から4月6日まで阪急メンズ東京では数々のタイアップ企画を実施します。ファンには見逃せない特典をご用意!
CD販売は阪急メンズ東京7F「ギンザレコード」及び阪急阪神百貨店公式通販「HANKYU HANSHIN E-STORES」のみとなります。お見逃しなく。

A Tribute To Andrew Weatherall - ele-king

 アンドリュー・ウェザオールの死から最初のアニヴァーサリーにあたる2月17日、〈Rotters Golf Club〉より「In A Lonely Place (A Tribute To Andrew Weatherall)」と題されたEPがリリースされている。送り出したのはアンドリューの兄弟イアンとダンカン・グレイ(イニシャルをつなげた IWDG 名義)。
 表題曲はニュー・オーダーの同名曲のリワークで、デヴィッド・ホルムズ、TLSにおけるアンドリューの相棒だったキース・テニスウッド、そしてハードウェイ・ブラザーズのショーン・ジョンストンによるリミックスも収録。
 すべての収益はアンドリューのパートナーおよび血栓症の慈善団体へと寄付される。


https://soundcloud.com/rotters_golf_club/sets/iwdg-in-a-lonely-place-clips

IWDG
In A Lonely Place (A Tribute To Andrew Weatherall)
Rotters Golf Club

1. In A Lonely Place
2. In A Lonely Place (David Holmes Rework)
3. In A Lonely Place (Keith Tenniswood Remix)
4. In A Lonely Place (Hardway Bros Axis Dub)

KANDYTOWN - ele-king

 先日最新EP「LOCAL SERVICE 2」をリリースし、4月にはCD『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』の発売を控える KANDYTOWN。それを記念し、オフィシャル YouTube チャンネルにてメンバーのインタヴュー映像が公開されている。新作の話から料理の話まで、クルー各人の想いや裏話を知ることができる。これは嬉しいプレゼントだ。

 同映像にも出演している Neetz と KEIJU の最新インタヴューはこちらから。

[2021年3月11日追記]
 その後、上記インタヴュー映像の続編となる「PART 2」「PART 3」が公開されている。第2弾では紅蘭、オカモトレイジ、山田健人、柳俊太郎からの質問に、第3弾では JJJ、KID FRESINO、川谷絵音からの質問に回答するメンバーの姿が収められている。合わせてチェック!

KANDYTOWN
新作リリースを記念したインタビュー映像『LOCAL SERVICE's INTERVIEW PART 1』を
公式YouTubeチャンネルにて公開

国内屈指のヒップホップクルー KANDYTOWN が2月14日に配信された 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」、4月21日発売の2000枚限定生産の 2CD EP『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』の発売を記念したインタビュー映像:“LOCAL SERVICE's INTERVIEW PART 1” を自身の公式 YouTube チャンネルにて公開した。

この映像にはクルーのメンバーによるインタビューは勿論、縁の方々からの「メンバーに聞いていみた」質問が寄せられており、初回は第3代 K-1 WORLD GP スーパー・ウェルター級王者・第6代 Krush ウェルター級王者:木村 “フィリップ” ミノル、『GQ JAPAN』編集長:鈴木正文からの質問にメンバーが回答する姿が収められている。

なお、この映像は全3回を予定している。

“LOCAL SERVICE's INTERVIEW PART 1” YouTube URL
https://youtu.be/jDruE7F_iH0

“One More Dance” MUSIC VIDEO YouTube URL
https://youtu.be/iY340Z3BTdA

2nd EP「LOCAL SERVICE 2」& 限定生産2CD EP「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」購入URL
https://kandytown.lnk.to/localsevice2

【KANDYTOWN 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」作品情報】
title:「LOCAL SERVICE 2」
release date:2021.02.14
price:¥1,400(without tax)
track list
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Sterling Sound 
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

【限定生産2CD EP「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」作品情報】
title:「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」
release date:2021.04.21
price:¥2,500(without tax)
track list (DISC1)
「LOCAL SERVICE」
1. Prove (Lyric: Gottz, KEIJU, MUD Music: Neetz)
2. Till I Die (Lyric: Ryohu, MASATO, BSC Music: Neetz)
3. Explore (Lyric: Gottz, MUD, Holly Q Music: Neetz)
4. Regency (Lyric: MASATO, Ryohu, KIKUMARU Music: Neetz)
5. Fluxus (Lyric: Neetz, DIAN, Dony Joint Music: Neetz)
6. Kapital (Lyric: BSC, KIKUMARU, Dony Joint, DIAN, Ryohu Music: Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi at RDS Toritsudai
Masterd by Rick Essig at REM Sound
Sound Produce: Neetz
Additional Arrange: KEM
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

track list (DISC2)
「LOCAL SERVICE 2」
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Stearing Sound
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

【KANDYTOWN PROFILE】 
東京出身のヒップホップ・クルー。
2014年 free mixtape 『KOLD TAPE』
2015年 street album 『BLAKK MOTEL』『Kruise』
2016年 major 1st full album 『KANDYTOWN』
2017年 digital single 『Few Colors』
2018年 digital single 『1TIME4EVER』
2019年 e.p. 『LOCAL SERVICE』,major 2nd full album『ADVISORY』
2020年 Digital single 『PROGRESS』
2021年 2nd EP『LOCAL SERVICE 2』,2CD EP『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』

Menagerie - ele-king

 動物園とかサーカスの動物ショー、そこから転じて多種多様な人間や、いまでいうならダイヴァーシティに通じるような意味合いのメナジェリー。このメナジェリーをグループ名に、オーストラリアのメルボルンを拠点に活動するジャズ・バンドがある。2012年に『ゼイ・シャル・インヘリット』でデビューを飾り、2017年リリースのセカンド・アルバム『ジ・アロウ・オブ・タイム』は以前にレヴューでも取り上げたのだが、それから4年ぶりの新作『メニー・ワールズ』をメナジェリーが発表した。
 リーダーのランス・ファーガソンはこの4年間、2000年代初頭よりメイン活動として続けるファンク・バンドのバンブーズでアルバム・リリースやツアーがあり、プレジャーやジェイムズ・メイソンなどのレア・グルーヴ曲をカヴァーしたレア・グルーヴ・スペクトラムというプロジェクトでアルバムも出すなど、主にディープ・ファンクやジャズ・ファンク、レア・グルーヴ方面で動いていた。
 一方でジャズ界に目を移すと、メナジェリーの音楽性にもっとも近いカマシ・ワシントンが大作『ヘヴン・アンド・アース』(2018年)をリリースし、シャバカ・ハッチングスヌバイア・ガルシアらサウス・ロンドン勢の活動がクローズ・アップされてきた、というのがここ3~4年の間のトピックである。
 そうしたタイミングを見計らってきたわけではないが、この新作『メニー・ワールズ』はカマシやサウス・ロンドン勢の動きに共振するようなアルバムとなっている。アルバム・ジャケットはギル・メレの名盤『パターンズ・イン・ジャズ』(リード・マイルズが手掛けた〈ブルーノート〉のアルバム・カヴァーの中で特に秀逸なデザインのひとつである)を模したような感じであるが、音楽自体はギル・メレとはまったく関係性がない。基本的にはファーストやセカンドのスピリチュアル・ジャズやモード・ジャズ路線を踏襲したものとなっている。

 演奏メンバーはランス・ファーガソン(ギター、ヴォーカル)を筆頭に、マーク・フィッジボン(ピアノ)、フィル・ビノット(パーカッション、ヴィブラフォン)、フィル・ノイ(テナー・サックス、アルト・サックス、ソプラノ・サックス)、ロス・アーウィン(トランペット)、クリスティン・デララス(ヴォーカル)、ファロン・ウィリアムス(ヴォーカル)はファーストやセカンドでプレイしてきた面々で、新たにベンジャミン・ハンロン(アコースティック・ベース、エレキ・ベース)、ダニエル・ファールジア(ドラムス)が参加している。
 ダニエルはバンブーズのメンバーでもあるが、そのほかのミュージシャンもバンブーズはじめランス周辺のファンク系グループから集まってきた者が多い。一方でダニエルはベンジャミンと共にヒュー・ブレインズのトリオでコンテンポラリー・ジャズもやっていて、ベンジャミンはメルボルン交響楽団のメンバーでもあるなどメルボルン・ジャズ界の俊英である。
 マークは父親がオーストラリアのジャズの始祖的なシンガー&バンジョー奏者で兄弟もミュージシャンという音楽一家の出身。自身の活動ではもっぱら正統的なジャズを演奏するピアニストであるが、かつてジャイルス・ピーターソンとパトリック・フォージの伝説的なDJイベントの「ディングウォールズ」でセッション・プレイヤーをレギュラーで務めていたこともある。
 フィル・ノイはバンブーズのほかにオインセンブル・メルボルンというグループでフリー・ジャズをやっていて、ロスもバンブーズの一員だがマグノリアというロック・バンドにも参加する(こちらにもダニエルは参加)。フィル・ビノットはハイエイタス・カイヨーテからハーヴェイ・サザーランドなどとまで共演するなど、実にさまざまな経歴を持つメンバーが集まっており、メナジェリーという言葉そのものの集合体となっている。

 リード・シングルとなった “フリー・シング” はアフロ調のパーカッションにラスト・ポエッツ風のスポークン・ワードが被さるナンバー。「フリーダム」というユニヴァーサルなメッセージを説く曲で、かつての〈ストラタ・イースト〉のような1970年代のスピリチュアル・ジャズを想起させる。“ホープ” もメッセージ性の強い曲で、ファラオ・サンダースマッコイ・タイナーなどのレジェンドからいまのカマシ・ワシントンにも通じるような演奏。フィル・ノイのテナー・サックスもコルトレーン、ファラオ、カマシと繋がってくるラインである。印象的なメロディを持つモーダル・ジャズだが、ファンク・ビートを咀嚼した力強いリズム・セクションがバンブーズ経由ならではと言えよう。
 タイトル曲の “メニー・ワールズ” は、神秘的なピアノと重厚なリズム・セクションによるジャズ・ファンク。フレディ・ハバードの “レッド・クレイ” とかアイドリス・ムハマッドの “ローランズ・ダンス” など、スピリチュアル・ジャズというよりもどちらかと言えば1970年代の〈CTI〉や〈クドゥ〉あたりのサウンドを思い起こさせる。こうしたセンスはDJ/プロデューサーでもあるランス・ファーガソンならではのものだろう。
 “マウンテン・ソング” はラテン~ボサノヴァのリズムを取り入れ、ロス・アーウィンのトランペットを中心とした哀愁溢れる演奏が光る。“ヒム・オブ・ザ・ターニング・ストーンズ” は6拍子の変則調のモーダル・ジャズで、賛美歌風のコーラスがフィーチャーされた格調の高い作品。コルトレーン的とも言えるが、もっとも近いのはジョー・ヘンダーソンの “ブラック・ナルキッソス” あたりの雰囲気だろうか。“クオンタム・ブルース” はソリッドなリズムのジャズ・ロック調ナンバーで、レア・グルーヴなどクラブ・サウンドを経由したビート感覚を持つ。新加入のダニエル・ファールジアのドラミングと、それをうまくメナジェリーのサウンドに落とし込んだランスのプロデュース力が光る作品である。

R.I.P. U-Roy - ele-king

 2月17日、ジャマイカのキングストンでEwart Beckford──音楽の世界ではU-ロイの名前で知られる偉人が亡くなった。没年78。
 U-ロイは、ジャマイカのDeeJay(DJ)カルチャーのオリジネイター──厳密にオリジナル=いちばん最初ではないが、もっとも最初にその人気と影響力をもったことからほぼオリジネイターと言われている。U-ロイとは、マイクを握って音楽に合わせて喋る(トースティングする/ラップする)ことの古典である。
 実際の話、ジャマイカのDeeJay(DJ)カルチャーは今日ぼくたちが親しんでいる音楽の始原と言える。そもそもDeeJay/ディージェイは、サウンドシステム(=強力なスピーカーとアンプを擁する、レコードに合わせたダンス・パーティ)において場を盛り上げるために喋りを入れる司会者めいた役のことで、マイクを手に取り曲間に曲を紹介したりキャッチフレーズを入れたりしたという。ちなみにレコードをかけながら最初に喋った人物=厳密な意味でのオリジネイターはカウント・マチューキである(もちろんキング・スティットも忘れてはならない)。ジャマイカでは座談風にラップすることはトースティングと呼ばれている。
 「ディージェイをやるようになったのは14歳のときだった」、2006年に来日した際、U-ロイはぼくの取材でこう話してくれた。「サウンドシステムにはもっと小さい頃から通っていた。おばあちゃんに行ってもいいか訊いてから行った。もちろんいつでも行かせてもらえるとは限らない。そんなときは寝たふりをして、みんなが寝静まってから家を出たものだ。当時のサウンドシステムは、夜の8時にはじまって朝の4時ぐらいに終わる感じで、とにかくたくさんの人がそこに集まっていたんだよ」
 マチューキを崇拝していたU-ロイだったが、ディージェイになった理由は歌うよりも喋るほうが簡単に思えたからだという。とはいえ、レコードに合わせて喋りを入れるということを客をさらに呼び込むためのひとつの芸にして、しかもそれ自体をあらたな作品/表現としてしまうことはそう誰にでもできることではないだろう。U-ロイはラップの先祖とも言われている。
 彼がマイクを握りはじめたのは60年代初頭だが、ディケイドの後半、つまりロックステディ時代に残したいま聴いてもまったく素晴らしい記録は──世界初のディージェイ・アルバムとして知られる『Version Galore』(1971)で聴ける。ここでは、ロックステディの名曲(ヒット曲)の数々のリディムに合わせてのU-ロイのトースティングがミックスされているわけだが、そのなかにはディージェイ音楽としては空前のヒットとなった“Wear You To The Ball”も含まれている。彼の最初の3枚のシングルは、もとの歌手が歌っているレコードよりも売れたのだ。それは衝撃であり事件である。
 つまりディージェイの台頭は、大衆音楽史における変革でもあった。先にも述べたように、音楽で歌わなくても喋りが面白ければ人は集まるということが証明されたこと、既発の録音物はそれで完結ではなく使い回しができるということが実証されたこと、そして、ディージェイの喋りをより効果的に演出するためには既発の録音物から歌を削除したインストゥルメンタルのほうが向いていること、しかもそのインストゥルメンタルの音の抜き差しによる空間の創出によってさらに喋りが際立つこと──サウンドシステムというブロック・パーティ/レイヴ・パーティの青写真のなかでラップという手法は胎動し、それとリンクしてダブという既存の曲を再構築するという、すなわち今日ぼくたちがリミックスと呼んでいる手法もほぼ同時に生まれたのだった。U-ロイはそうしたダンスホール文化のパイオニアのひとりであり、そして彼の初期のパートナーこそダブの王様キング・タビーその人だった。
 「キング・タビーのシステムでディージェイをはじめて人気が出てくると、ジャマイカ中から人が集まってきた」、ジャマイカのダンスホールを制覇することなる当時の様子をU-ロイはこのように語った。「数あるシステムのなかでもタビーのアンプとスピーカーはすごい技術力で作られていて、とにかく抜きんでいていた。当時はまだ彼のメインの仕事はウォーターハウス地区のゲットーで働く電気技師だった、修理なんかをやるようなね。彼のシステムはほかでは聴いたことのない大音量だったけれど、スピーカーを飛ばしたことはいちどもないんだ。エコー・マシンなど最新の機材も輸入したり、アンプもかなりハイパワーだった。タビーはみんなが寝静まったくらいの時間にヴォリュームを上げるんだけど、それぞれの家庭で電気をあまり使わなくなった時間帯を待って、町中の電気をそこに流れ込ませるためにね」
 U-ロイはその後、〈Virgin〉にライセンスされたソウル・シンジケートとの『Dread In A Babylon』をはじめ、デジタル時代になっても多くのオリジナル作品を残している。90年代はかねてから大ファンだったというマッド・プロフェッサーの〈Ariwa〉から数枚のアルバムを発表しているが、2018年にも同レーベルから『Talking Roots』を出している。また、ベスト盤『The Originator』をはじめとする数々のコンピレーション盤も残しているが、サウンドシステム文化からも離れず、シャバ・ランクスやランキン・ジョー、チャーリー・チャップリンといった次世代のディージェイたちの育成に力を注いでもいた。
 最後まで精力的に活動的していたU-ロイは、2019年にはアルバム『Gold: The Man Who Invented Rap(ゴールド:ラップを発明した男)』をレコーディングしたそうだ。そこには元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズ、キリング・ジョークのユース、シャギー、サンティゴールド、ジギー・マーリーらが参加している。夏になる頃にリリース予定だという。

 あらためて言おう。たとえばポップ・ミュージックのファンであれば誰もが知っている“Tide Is High”という曲がある。ザ・パラゴンズの曲で、ブロンディのカヴァーも有名だ。このレコードにU-ロイのトースティングがミックスされると、しかしそれはU-ロイの曲になってしまうのだ。すごいことだと思う。ぼくはこの偉人に取材したとき、限られた時間でついついキング・タビーのことばかり訊いてしまったのだが、U-ロイはこの失礼な日本人相手に始終穏やかに、事細かにタビーの話をしてくれた。持って来たレコードにサインをもらったのだけれど、このDJカルチャーの大大大先輩は、「peace(平和)、love(愛)」と書いてくれた。ゲットーのサウンドシステムで長年マイクを握ってきた先達からの重みのある言葉だと思う。
 最後に『ガーディアン』に掲載された追悼記事のなかの彼の言葉を引用しておきます。「私はただ人びとがユニティするよう呼びかけていただけだ。私は決して人を見下したりしなかった。暴力はじつに醜く、愛はじつに愛らしい。私は大学に行ったことなどないが、常識はある。自分が学んだことを最大限に活用している」
 
 なお、これからU-ロイを聴いてみたい人にぼくからのおすすめは、まずは何よりも『Version Galore』。これがディージェイというスタイルを最初に確立した作品である。古典中の古典だが、いま聴いても充分輝いている。ロックステディ時代(Treasure Isle時代)を網羅している編集盤『Super Boss』もおすすめ。ここではもうひとつの初期の大ヒット曲“Rule De Nation”も聴ける。ベスト盤では I Am The Originator』が曲数も多くおおすめ。キング・タビーとの絡みでは『U-Roy Meets King Tubbys』がある。

TECHNO definitive 増補改造版 - ele-king

今日もテクノを聴くんだぜ。
その歴史を体系的にとらえた厳選ディスクガイドのロングセラー

テクノ・ディスク・カタログの決定版が加筆・修正を施し、増ページにて復活!

表紙イラストは今回もアブカディム・ハックの描き下ろし

Contents

Preface

Space Age
Krautrock
Synth-Pop
Electro
Rave Culture
Detroit Techno
Hard Minimal / Dub Techno
Artificial Intelligence
Glitch / Drone
Electroclash
Dubstep / L.A.Beat
Juke / Bass Music

INDEX

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧

amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
honto
e-hon
Honya Club
mibon本の通販(未来屋書店)

全国実店舗の在庫状況

紀伊國屋書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
有隣堂

P-VINE OFFICIAL SHOP

SPECIAL DELIVERY

interview with KANDYTOWN (Neetz & KEIJU) - ele-king


KANDYTOWN
LOCAL SERVICE 2

ワーナーミュージック・ジャパン

Hip Hop

Amazon Spotify Apple


KANDYTOWN
LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION

ワーナーミュージック・ジャパン

Hip Hop

Amazon Tower HMV

 東京・世田谷を拠点にするヒップホップ・コレクティヴ=KANDYTOWN。グループとしてはメジャーからこれまで2枚のアルバム(2016年『KANDYTOWN』、2019年『ADIVISORY』)をリリースし、さらにほとんどのメンバーがソロ作品をリリースする一方で、音楽のみならずファッションの分野でも様々なブランドとコラボレーションを行なうなど、実に多方面に活躍する彼ら。コロナ禍において、ほぼ全てのアーティストが活動を自粛せざるをえない状況であった2020年、彼らは『Stay Home Edition』と題したシリーズを自らの YouTube チャンネルにて開始して新曲を立て続けに発表し、多くのヒップホップ・ファン、音楽ファンへ勇気と活力を与えた。

 この『Stay Home Edition』で公開された3曲をブラッシュアップし、さらに3つの新曲を加えて2月14日にリリースされたEP「LOCAL SERVICE 2」。タイトルの通り、このEPは2年前の同日にリリースされた「LOCAL SERVICE」の続編であり、この2月14日という日付が KANDYTOWN のメンバーである YUSHI の命日ということを知っているファンも多いだろう。今回のインタヴューでは KANDYTOWN のメイン・プロデューサーである Neetz と昨年、アルバム『T.A.T.O.』にてメジャー・デビューを果たした KEIJU のふたりに参加してもらい、彼らにとって非常に大きな意味を持つ 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」がどのような過程で作られていったのかを訊いてみた。

注:これまで配信のみでリリースされていたEP「LOCAL SERVICE」と「LOCAL SERVICE 2」だが、今年4月に初めてCD化され、2枚組のCD『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』として〈ワーナー〉からリリースされる予定。

スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。(Neetz)

あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって〔……〕。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。(KEIJU)

前回インタヴューさせていただいたのがアルバム『ADVISORY』のリリースのタイミングで。その後、コロナで大変なことになってしまったわけですが、やはり KANDYTOWN の活動への影響は大きかったですか?

KEIJU:NIKE AIR MAX 2090 にインスパイアされた楽曲の “PROGRESS” (2020年3月リリース)を作っていたときが、世の中が「やばい、やばい」ってなっていた時期で。自分たちも世間の皆様と同じように困ることもあったんですけど、人数が多いグループなので集まりづらいっていうのがいちばん大きくて。どうしても目立つ集団でもあるので、人目を気にして、外では会えなくなりました。けど、一昨年から、自分たち用のスタジオや事務所を用意するっていう動きをしていたのもあって。ちょうど去年の4月くらいに事務所とスタジオを借りて。それで音楽を作ろうってはじまったのが、今回出た「LOCAL SERVICE 2」にも繋がる『Stay Home Edition』で。

『Stay Home Edition』はどういったアイディアから来たものでしょうか?

Neetz:スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。

『Stay Home Edition』では結果的に3曲発表しましたが、あの順番で作られたんですか?

Neetz:そうですね。最初が “One More Dance” で、次が “Faithful”、“Dripsoul” という順で。

KEIJU:1ヵ月半とかのうちに全部曲を出し切って、それをEPとして完成させちゃおうって話になっていたところを〈ワーナー〉とも話をして。ちゃんと段取りをして、しっかりやろうっていうふうになったので(『Stay Home Edition』を)一旦止めて。

Neetz:どうせならちゃんとオリジナル・トラックで作って、まとめてEPとしてリリースにしようっていう話になって。

KEIJU:だから、ほんとは8月とかには曲もほぼできている状態だったんですよ。でも、〈ワーナー〉の人にも会えなくて、話し合いができなかったりもして。それにそのタイミングで出してもライヴもできないし。

では、リリースまでのタイミングまでにけっこう温めていた感じなんですね?

Neetz:そうですね。3月から5月にかけてレコーディングを全部終えて、そこから既に出ている3曲のトラックを差し替える作業をやって。ミキシングも自分のなかで時間がかかっちゃって。それで全部が終わったのが9月くらい。それなら「LOCAL SERVICE 2」として2・14に出そうっていうことになって。

いまおっしゃった通り、『Stay Home Edition』と今回のEPでは全く違うトラックになっていますが、『Stay Home Edition』のほうは Neetz くんのトラックだったのですか?

Neetz:ではなかった。だから、どうせなら全部変えてやろうっていう意気込みで俺独自の感じで作ったので、その色が強くなったのかなと思います。

改めて “One More Dance” がどのように作られていったのかを教えてください。

Neetz:IO が最初にオリジナルのトラックを持ってきて、フックを最初に入れて。Gottz と柊平(上杉柊平=Holly Q)がそのとき、スタジオにいたので、IO のフックを聴いて柊平と Gottz がそのフックのコンセプトに当てはめてリリックを書いていった感じですね。

KEIJU:自分が聞いた話では、IO くんと柊平が中目黒に新しい事務所の家具を買いに行った帰りにスタジオに寄って。「このまま曲を作ろうか?」って流れで作ったら Gottz が来て、それで3人で作ってったそうです。

完全にノリで作ったわけですね。

KEIJU:今回の『Stay Home Edition』はいちばん昔のノリに近かったかなってちょっと思ってて。突発的に「会って遊ぼうよ」から、なにかを残そうじゃないけど、ノリで「曲やろう!」ってなってできた感じだった。自分は結構「コロナ大変なことになってるな」と思っていましたし、自分のソロ・アルバムのこともあって、その時期はあんまりみんなに会わないようにしていたんですよ。だから、自分は客観的にみんなの動きを見てたんですけど、さっき LINE が飛び交っていたと思ったら、その5、6時間後には曲ができていたりして。そういうのが、すごく昔の感じだなって思いましたね。

Neetz:そうだね。KEIJU はみんなの動きを客観的に見てた側だったのかもしれない。

そういうこともあって、今回は KEIJU くんの参加曲が1曲なわけですね?

KEIJU:そうですね、参加曲が少ないのはそれが理由っすね。兄に子供ができたりもして、みんなとは会わないほうがいいと思って。

Neetz:KEIJU は KEIJU のスタンスを貫いてましたね。

KEIJU:みんなが新しい事務所に溜まっていて、自分は「いいなぁ、楽しそうだな」って感じで見てて。でもさすがに(EPを)出すっていうから、「参加したいです!」って言って参加させてもらった感じです。

ちなみに最初の3曲には IO くんと Holly Q が3曲とも参加していて、それってなかなか珍しいですよね? 特に IO くんは前回の「LOCAL SERVICE」には1曲も入ってなかったと思いますし。

KEIJU:最初の “One More Dance” を作った流れで自然と、その感じで2、3曲目も動けたんじゃないですかね。コロナのこのタイミングで出そうっていうイメージまでもって。

Neetz:それがみんなにも伝わったのがデカかった。

ちなみに『Stay Home Edition』で “One More Dance” の説明の欄にヘレン・ケラーの言葉が引用されていましたけど、あれは誰が考えたんでしょうか?

Neetz:あれも IO くんのチョイスですね。

曲自体はノリで作られたのかもしれないけど、そういう部分も含めてすごくメッセージ性がある曲だなと思いました。

KEIJU:作る過程で「こういう人に向けて、こういう曲を書いてみよう」みたいな話は若干あったんだと思います。

Neetz:“One More Dance” に関しては統一性がしっかり取れていて。より統一性を出すために、リリックを書き直してもらったりもしました。

たしかに『Stay Home Edition』とEPでは、若干リリックが違いましたよね。

Neetz:曖昧になっている部分を、曖昧にしないで具体的にしようかなって感じで柊平に直してもらって。

KEIJU:Neetz から言ったんだ? 柊平ってけっこう、自分の作ったものに対してのクオリティが保たれているかすごい気にするじゃん。「これで良いのかな?」って訊いてくるもんね。

Neetz:そういう人には言ってあげたほうが良いかなって。

『Stay Home Edition』のコメントを見ると Holly Q 人気が高いというか。あの3曲で改めて彼の評価が上がっていますよね。

KEIJU:“One More Dance” のラップも初めて聴いたとき、1個違うレベルというか、柊平の新しい面が見えたなって。いままでは全部出し切るっていう感じだったけど、ちょっと手前で止めるみたいな歌い方であったり。そういう新しさをすごく感じて。

俳優としてもすごく活躍されていて、テレビドラマとかにも出ていますけど、ちなみにメンバーはどういうふうに見ているんですか?

KEIJU:俺は率直にすごいと思うし、みんなそう思っていると思う。ポッと出ではないですし、19歳とかそのくらいからバイトをしながらモデルをやったり、事務所を変えたりっていう過程を見ているので。ただ、柊平が出ていると客観的に観れなくて、内容が入ってこなくなっちゃう(笑)。だから、あんまりがっつりは観ないんですけど、普通にできないことだなと思います。

Neetz:すごいなと思いますね。

その中で今回みたいにちゃんと曲にも参加しているのが凄いですね。

KEIJU:前回の『ADVISORY』のときも、柊平の撮影が忙しくて1ヵ月間いられなくなるってなって。けど、柊平が「入れないのは嫌だから」って言って、誰もまだリリックを書き出していない頃にひとりで書いて、3、4曲とか録って撮影に行ったんですよ。意欲が本当に凄くて。柊平のあのヴァイブスにみんなも感化されて、負けていられないから、自分もやろうってなったのは感じましたね。

[[SplitPage]]

いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。(Neetz)

「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。(KEIJU)


KANDYTOWN
LOCAL SERVICE 2

ワーナーミュージック・ジャパン

Hip Hop

Amazon Spotify Apple


KANDYTOWN
LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION

ワーナーミュージック・ジャパン

Hip Hop

Amazon Tower HMV

EPの後半3曲は完全な新曲となるわけですけど、まず “Sunday Drive” は Ryohu くんがトラックを担当で。以前のインタヴューのときに KANDYTOWN の曲は基本 Neetz くんが作って、さらに Neetz くんが出していない部分を Ryohu くんが埋めるみたいなことは仰ってましたが、今回も同様に?

Neetz:そういう感じで作っていました。このEPの中の俺にはないような曲(“Sunday Drive”)を入れてきてくれたので、すごくバランスが良くなって。結果、Ryohu のビートがスパイスになっていますね。

“Sunday Drive” はおふたりともラップで参加していますが、トラックを聴いてどういう感じでリリックを書いたのでしょうか?

KEIJU:最初はもっとブーンバップというか、ベースが効いてるヒップホップなビートだったけど、最終的には最新っぽさも足されたものが返ってきて。ビートを聴かせてもらったときに、「これだったらいますぐリリックを書こうかな」って。そのとき、一緒にいたっけ?

Neetz:一緒にいたな。

KEIJU:リリックを一緒に書いて、「どうしようか?」ってなって。

Neetz:それで、KEIJU が伝説の2小節を入れて。

KEIJU:伝説の2小節からはじまったけど、タイトルが “Sunday Drive” になって「アレ?」ってなった(笑)。「俺の伝説の2小節は?」って。それでその2小節はやめて、新たにフックを書いて。

Neetz:まとまっていないようでまとまってる。いつもの俺らですね。

(笑)

KEIJU:俺はとにかく、あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって、その思いが全部出ているような恥ずかしい感じのリリックになっちゃって。サビも書いてって言われていたから、メロディーとかも考えながら、「ああじゃない、こうじゃない」を繰り返していて。高揚している自分と地に足付けるバランスの中で、あのリリックとフロウが出てきて。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。でも、サビはすぐできたよね?

Neetz:そうだね。

KEIJU:4小節自分で書いたものを Dony(Joint)と Neetz、MASATO に歌ってもらって。

Neetz:結果、みんな自分に向かって書くようなリリックになって。

KEIJU:渋い曲になったよね。

ビートへのラップの乗せ方もすごく気持ち良いです。

Neetz:そうですね。EPのなかでいちばんリズミカルな感じになっていて。4曲目でそれが出てくることによって、すごく映えるようになってる。

あと曲の最後のほうに「届けるぜローカルなサービス」ってラインがありますが、この時点でタイトルを「LOCAL SERVICE 2」にするっていうのはあったんですか?

Neetz:まだですね。MASATO がたまたまそのワードを入れて。EPのタイトルは完全に後付けです。

次の “Coming Home” ですけど、これは Gottz&MUD のコンビを指名したんですか?

Neetz:本当は Gottz&MUD のアルバム用に作ったビートで、それに入る感じだったんだけど。コンセプト的にも今回のEPに入れたほうが良いかなってなって。MUD にワンヴァース目をやってもらって、Gottz も書いてくれたけども。(今回のEPに) KEIJU のヴァースが少なすぎるってなって、KEIJU も入れようと思ったけど……。

KEIJU:まあ、そういうことがあったんですけど、良い曲だなって。

あのふたり用に作った曲っていうのは伝わってくるようなトラックですよね。

KEIJU:それに、なんかあのふたりのセットを(ファンが)求めている流れもありますから。そういうこともあって自分は身を引こうと思って。

最後の曲の “Sky” ですが、リリックもトラックも KANDYTOWN そのものを表している感じがしますね。

Neetz:いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。

この曲で言っていることがまさにいまの KANDYTOWN のスタンスにも感じますね。

Neetz:そうですね。変わらずあり続けるのもそうだし、この仲間とやっていくことがすごく大事だと思うし。そういうスタンスでこれからもやっていけたらなって思いますね。

ちなみに、客観的に見てどの曲が好きですか?

Neetz:トラック的に上手くできたのは3曲目(“Dripsoul”)。

KEIJU:俺はやっぱ、最初に聴いたときの “One More Dance” のインパクトが強くて。IO くんがああいうメロディーをつけるときのモードがあるじゃない?

Neetz:たしかに、たしかに。

KEIJU:そのメロディーが聴こえたからすごく印象に残っている。

覚悟みたいなものですかね?

KEIJU:そう、覚悟があるなって感じて。あと、好きな曲というと、自分が入っている曲(“Sunday Drive”)は制作現場にいて、みんなの雰囲気とかも含めてすごく良かったと思うし。それに対して自分はスムースで昔っぽさもある感じにできたので、“Sunday Drive” は良いなと思う。サビの掛け合いとかもしばらくはやっていなかったので、「一緒にリリックを書くのも良いよね」って話をしながらやったのも憶えているし、結構楽しかったよね。

Neetz:久々に楽しかった。

久々にみんなが会うというのは、やなり何か違うものがありますか?

KEIJU:それはもう、だいぶ違いましたね。あのときってみんな寂しくてとかじゃないけど、「うわぁ、浮足立つなぁ」って。言わなくてもいいことを言っちゃいそうだなみたいな。しかもそれをリリックに書いちゃいそうなくらい、普段は言わないことを言おうとしちゃう。それが嫌だなって部分もあったんですけど。

Neetz:若干どんよりしたというか。そういう雰囲気だった気もするけど。違う?

KEIJU:それもあったかもね。この先どうなるか分からないし。俺とか本当にコロナを気にしていたので、みんなに「手洗った?」ってすぐ訊くような勢いだったんで。

それだけ人数いれば、人によって考え方も全然違いますしね。

KEIJU:あの活動(『Stay Home Editon』)がはじまったときに、「はじまったそばから、すげぇやってるな?!」とか思いながら。俺は羨ましくもあり、みんなに会いてぇなっていうのもあったし。置いてけぼり感もすごくあった。いま思うとそんなに(以前と)変わりないと思うんだけど、久しぶりに会ったときは違ったね。

KANDYTOWN の次の作品に向けてもすでに始動していると思いますが、現時点でどのような感じになりそうでしょうか?

Neetz:とりあえず、ビート作りははじまっていて。このEPの音作りは俺独自で進めたので、次の作品に関してはもっとみんなの意見を取り入れたものを作れたらいいなと思ってます。あと、「KANDYTOWN に合うサウンドとは?」っていうのをめちゃくちゃ考えていて。「それって何だろう?」って考えてたときに、昔のソウルフルな感じであったり、1枚目(『KANDYTOWN』)の感じの音なのかなって思ったりもするし。まだ答えは分かってないんですけど。

KEIJU:さっきふたりで車の中で話をしていて。もっと幅を広げたり、Neetz の言うように昔のソウルフルなスタイルで続けていくのも良いよねって。やれる範囲で幅を広げていこうって話をしてはいて。ビートのチョイスもいままでやっていなかったこともやってみようって。

Neetz:結果的にそれが KANDYTOWN のサウンドになるので。

KEIJU:そう。自分たちのこれまでの活動の中でも、それまでやらなかったビートをチョイスしてやってきて、それでちょっとずつ進化している。昔、YouTube にもアップした “IT'z REVL” って曲とか、当時は自分たちの中ではすごく新しいチョイスで、新しい感覚だと思ってやってたし。少しずつ、そういう変化を上手く出せていけたらいいなって思う。あと、「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。そうやって、深い部分で切磋琢磨していけたら、新しいものが生まれるなって思っているので。

メンバー間のコミュニケーションの部分などで何か以前と変化はあったりしますか?

KEIJU:最近はコミュニケーションを高めていて。自分らは最近野球をやっているんですけど。(インタヴューに同行していた)DJの Minnesotah はバスケをやっていて。KANDYTOWN の中でもバスケと野球とサッカーってチームが分かれているんですけど、そういう感じで集まれる時間を増やしていこうよって話をしていて。それが音楽に直結するわけではないですけど、日々の言葉のキャッチボール的なことができればなと思ってて。そうすることで、これからの KANDYTOWN の作品が、もっと密なものになればいいなって思いますね。

KANDYTOWN
2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より
“One More Dance” の MUSIC VIDEO 公開

国内屈指のヒップホップクルー KANDYTOWN が本日2月14日配信の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より、
先行配信トラック “One More Dance” の MUSIC VIDEO を公開。この映像は前作 “PROGRESS” に引き続き盟友:山田健人が手掛ける。楽曲に参加している IO、Gottz、Holly Q、Neetz に加えクルーから Ryohu、Minnesotah、KEIJU、Dony Joint、Weelow がカメオ出演。

2月14日より配信となった 2nd EP は2020年の4月・5月の Stay Home 期間中に公開された楽曲3曲を再度レコーディングしリアレンジしたものに新曲3曲を収録。楽曲のレコーディングやプロデュースをメンバーの Neetz が担当。海外作家との共作やアレンジャー起用して作られたトラックなど意欲作が並ぶ。

そして、4月21日には、配信リリースされていた2019年2月14日発売の 1st EP「LOCAL SERVICE」と2021年2月14日発売の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」の両作品を2000枚限定で初CD化し1枚にコンパイル。
DISC 1 の「LOCAL SERVICE」は過去に限定でレコードのリリースはあったがCD化は初となる。

“One More Dance” MUSIC VIDEO
https://youtu.be/iY340Z3BTdA

2nd EP「LOCAL SERVICE 2」& 限定生産2CD EP『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』
https://kandytown.lnk.to/localsevice2

[MJSIC VIDEO CREDIT]
KANDYTOWN LIFE PRESENTS
FROM""LOCAL SERVICE 2""
『One More Dance』

Director : Kento Yamada
Director of Photography : Tomoyuki Kawakami
Camera Assistant : Kohei Shimazu
Steadicam Operator : Takuma Iwata

Lighting Director : Takuma Saeki
Light Assistant : Hajime Ogura

Production Design : Chihiro Matsumoto

Animal Production : SHONAN-ANIMAL

Editor & Title Design : Monaco

Colorlist : Masahiro Ishiyama

Producer : Taro Mikami, Keisuke Homan
Production Manager : Miki SaKurai、Rei Sakai、Shosuke Mori
Production Support: Wataru Watanabe, Yohei Fujii

Production: CEKAI / OVERA

STARRING
IO
Gottz
Holly Q

Ryohu
Minnesotah
KEIJU
Dony Joint
Neetz
Weelow
Kaz

[KANDYTOWN 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE 2」
release date:2021.02.14
price:¥1,400 (without tax)

track list
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Sterling Sound 
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

[限定生産2CD EP「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」
release date:2021.04.21
price:¥2,500 (without tax)

track list (DISC1)

「LOCAL SERVICE」
1. Prove (Lyric: Gottz, KEIJU, MUD Music: Neetz)
2. Till I Die (Lyric: Ryohu, MASATO, BSC Music: Neetz)
3. Explore (Lyric: Gottz, MUD, Holly Q Music: Neetz)
4. Regency (Lyric: MASATO, Ryohu, KIKUMARU Music: Neetz)
5. Fluxus (Lyric: Neetz, DIAN, Dony Joint Music: Neetz)
6. Kapital (Lyric: BSC, KIKUMARU, Dony Joint, DIAN, Ryohu Music: Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi at RDS Toritsudai
Masterd by Rick Essig at REM Sound
Sound Produce: Neetz
Additional Arrange: KEM
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

track list (DISC2)
「LOCAL SERVICE 2」
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Stearing Sound
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

Glenn Astro - ele-king

 「3ヶ月以内にアルバムを完成させるという「最後通告」を自分に設けてたんだ。上手くいかなかったら自分のキャリアを考え直して、音楽を趣味で続けていこうと思ったんだ」アルバムのイントロにこう綴られたグレン・アストロの想い。5年ぶりにリリースされたソロ・アルバムにはそれを言うだけの彼の熱意と進化を見ることができる。
 彼のデビュー当時、2013年頃まで遡ろう。当時のハウス・シーンの状況を振り返るといわゆるサンプリング・ハウスがある種のムーヴメントになっており、日本では「ビートダウン」というキーワードがひとり歩きしていた。オリジネーターでもあるムーディーマンやセオパリッシュ以降のモータウンではカイル・ホールやジェイ・ダニエルが新世代として台頭し、ヨーロッパではMCDE(モーター・シティ・ドラム・アンサンブル)やダム・スウィンドル(旧名:デトロイト・スウィンドル)、そしてアストロの盟友でもあるマックス・グリーフなどが頭角を現す。音が悪いのも「味」と捉えたスモーキーなキックやハイハットにソウルやジャズのフレーズをサンプリングして作るある種ヒップホップ的な制作スタイルは当時のクラブ・フリークを虜にし、時代のアナログ志向なマインドも追い風になってレコード・リリース・オンリーのレーベルや謎のエディット・レーベルが次々出ては消えていく、そんな時代だった。
 その後〈22a〉や〈Rhythm Section International〉がクラブ・サウンドとジャズを隣接させながらUKジャズ・シーンの火種になり、かたやロー・ハウスという括りでモール・グラブやDJボーリングなどが登場してくる。
 そのなかでもマックス・グリーフとグレン・アストロはライヴァルに差を付けるようなアイデアとスキルが光っており、2016年には〈Ninja Tune〉から2人のコラボレーションアルバム「The Yard Work Simulator」をリリース(同年には来日ツアーも果たしている)。このアルバムではサンプリングで使われる素材や実際のサンプリングをできる限り避け、ローなサウンドは残しつつイチから音作りと編集をしていくというテーマが存在しており、当時のシーンの状況から見るととてつもなく実験的かつ過激な内容に仕上がっている。いまではサンプリング・ハウス~生音回帰のような流れはスタンダードのように思えるが、DTM、ベッドルーム・ミュージック全盛期の時代を振り返ると2人の取り組みはかなり前衛的だった。同胞のデルフォリクそしてグリーフとともにレコード・レーベル〈Money $ex Records〉もユニークなサウンドが多く、どこか旧態依然のサウンドから脱却しようとトライし続けたようにも感じられる。

 今作にもフィーチャリングで参加しているアジナセントとは17年にミニ・アルバム『Even』をリリースし、サイケデリック/バレアリックなフュージョン・サウンドを展開、翌年には〈Money $ex Records〉で発掘したホディニとともに「Turquoise Tortoise」を発表、ヒップホップやベース・ミュージックを絶妙に混ぜ込んだ作風を披露している。
 振り返ると7年という短いキャリアのなかでここまで数多くのジャンルを跨いだプロデューサーは非常にレアな存在と言えるし、彼の多様なセンスとハードワークが成せる業に違いない。それを踏まえた最新作の『Homespun』、レーベルはデビュー・アルバム『Throwback』をリリースしたデンマークの〈Tartelet Records〉から。原点回帰と進化を同時に行ったアストロのサウンドが様々なジャンルを通過して美しくひとつに集約されている。

 メランコリックな雰囲気でスタートするアジナセントとのコラボ曲“Homespun”をはじめ、J・ディラのオマージュトラックという“The Yancey”など、過去の作品と比較すると十八番だったスモーキーなムードは若干の影を潜め、エレクトロニックでハイファイなサウンドも目立つ。全曲違ったテイストの曲を披露しながらも、アンビエント、ディスコ、ジャズ、テクノ、ベースミュージックとどれもひとつのジャンルで括れないような絶妙な塩梅でフュージョンされている。終盤の“Viktor's Meditation”では和のテイストを取り入れたような楽曲で思わぬサプライまで起こしてくれた。
 DJ的な目線で見ればこのアルバムをキッカケにどんなジャンルにも移動できるポテンシャルを感じるし、改めてこのアルバムを3ヶ月で組み立てた彼の才能が今後どんな方向に行くか非常に楽しみではある。結果どこに向かっても素晴らしい作品ができ上がるのは間違いないだろう。こんな卓逸した才能を持ちながら音楽を趣味でやろうか真剣に考えてしまうのはデビュー当時から「鬼才」と言われる所以なのだろうか。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377