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昨今異常な盛り上がりを見せるUKのジャズ・シーンにおいて、ユセフ・カマールやジョー・アーモン・ジョーンズらと並び日本でも人気を集めるアーティスト、ヌバイア・ガルシアのニューアルバム『Source』がリリースされた。僕が最初に彼女の存在を知ったのは2017年に〈Jazz Re:freshed〉から出た『Nubya's 5ive』(アルバムの中の “Red Sun” を初めて聴いたときはジョン・コルトレーンの楽曲かと勘違いしてシャザムしたのをいまでも覚えている……)。そこから約3年間の飛躍を考えると驚くべき成長速度である。UKジャズの決定版とも言えるコンピレーション『We Out Here』(9曲中5曲に参加するという異例の抜擢)や女性メンバー主体の7人編成のアフロビート・バンド「ネリヤ」、そして盟友ジョー・アーモン・ジョーンズのソロ・アルバムにも参加するなど、活動は多岐に渡り、まさに駆け抜けるような素晴らしいキャリアをここ数年で築き上げた。デビュー当時は「女性版カマシ・ワシントン」という呼び声もあったが、様々なコラボレーションや活動を通して自身独特の演奏と音楽を披露しているのがこのアルバムを聴いてもわかる。
リード曲となる “Source” では『We Out Here』周辺のコミュニティーに共通して見えるレゲエやカリビアンなサウンドの縦ノリに力強くサックスが絡み合い、曲の展開が進むにつれてその熱量がさらに高くなっていく。ハウスやブロークンビーツ界隈のアーティストとも交流があってか、とにかく彼女のサックスは非常にグルーヴを感じる。激しすぎず、緩すぎずな絶妙なバランスが常にキープされていて、メロウなジャズから激しいレゲエ調まで緩急も素晴らしい。アルバムのなかで僕がいちばんオススメしている T.4 の “Together Is A Beautiful Place To Be” はジョー・アーモン・ジョーンズの美しいピアノのソロに乗せて、まるで歌っているかのような美しい音色を奏でてくれる。アルバム終盤ではコロンビアのマルチ・インストゥルメンタル・トリオ「ラ・ペルラ」とのコラボレーションで “La cumbia me está llamando (featuring La Perla)” を披露。ロンドンのローカル・ラジオ「NTS Radio」にてラジオDJも務める彼女はジャズやレゲエに混ざって時折クンビアも紹介していたが、まさかアルバムにこのような形で入ってくるのはサプライズだった。スタンダードなジャズ・アルバムというよりは彼女のサックスを軸に自身の吸収した様々な音楽をヌバイア・ガルシア流に表現したと言ってもいいだろう。DJ的な目線でも色んなジャンルの間に挟んでも違和感がないし、幅広いジャンルのリスナーに受け入れられるアルバムに仕上がっている。
ジャイルス・ピーターソンも彼女を絶賛し、次の10年、20年の音楽シーンの担い手としても期待のかかる彼女のフル・アルバムは様々なジャンルを内包したUKジャズ・シーンのマイルストーン的な作品と言っても過言ではないだろう。今頃であればアルバムをリリース後、順調にワールドツアーもおこない、ここ日本の地でもライヴを披露してくれただろうがしばらく実現できないのは残念。代わりに先月披露された NPR Music の名物企画 Tiny Desk (なんと彼女の自宅から放送)もぜひお見逃しなく。観葉植物で囲まれた空間が逆にUKジャズ特有のDIYなコミュニティーを象徴するかのようだ。