たまにゃいいよな
どこか旅に出て
いまの自分を忘れて逃げるのも
東京は奪い合いさ、だいたい
パラサイトが理由をつけて徘徊
さよなら、fake friendsにバイバイ
本物ならまたどこかで会いたい
"早朝の戦士"(2013)
先日福岡市を訪れて僕がもっとも驚いたのは、東京圏からの避難民の多さだった。「東京圏から福岡市への転入が急増 15年ぶり、震災避難が影響か」という記事は、2011年の東京圏から福岡市への転入者が前年比で31.5%増加し、1万3861人に上ったと報告している。その後も避難民は増え続けているようだ。
福岡の友人夫婦は、彼らのまわりだけでも、震災以降(正確には、福島第一原子力発電所の事故が引き起こした放射能拡散があきらかになって以降)の本州からの避難民が30人はいると語った。さらに彼らの人脈をたどり範囲を拡大すれば、1000人は下らないのではないか、ということだった。最初は耳を疑ったが、実際に僕も福岡でたくさんの避難民と出会った。小さい子供連れの家族やカップル、ひとりで移住してきた若い女性らと話した。ラッパーや音楽家の移住者にも会った。福岡に居を移した友人は博多弁を巧みに使いこなし、繁華街の外れにあるアート・スペースのキーパーソンになっていた。彼らは新たな生活を営みはじめたばかりだったが、彼ら避難民と地元民の交流が町に新鮮な空気を送り込んでいるように感じられた。福岡は避難都市として、未来への静かな躍動をはじめていたのだ。
![]() 5lack×Olive Oil - 50 高田音楽制作事務所 x OILWORKS Rec. |
東京のダウンタウン・板橋から登場したスラックが最新作『5 0』を東京と福岡を行き来しながら、福岡在住のビートメイカー、オリーヴ・オイルとともに作り上げたというのは、それゆえに実に興味深い。制作は2012年におこなわれている。
スラックが2009年に放った『My Space』と『Whalabout』という日本語ラップの2枚のクラシック・アルバムは、東京でしか生まれ得ないポップ・ミュージックだった。多くの人びとが、シビアな巨大都市の喧騒のなかを颯爽と行き抜く20代前半の青年のふてぶてしく、屈託のないことばと音に魅了されている。そして、シック・チームのアルバムを含むいくつかの作品を発表したのち、この若きラッパー/トラックメイカーは、日の丸を大胆にジャケットのアートワークに用いた『この島の上で』(2011年)のなかで、震災以降の東京の緊迫と混乱をなかば力技でねじ伏せようとしているかに見えた。逃げ場のない切迫した感情がたたきつけられている作品だ。その後、センチメンタリズムの極みとも言うべき『情』(2012年)を経て、最新作『5 0』に至っている。
すべてのビートをオリーヴ・オイルに託した『5 0』が、スラックのキャリアにおいて特別なのは、東京にこだわっているかに思えたスラックが移動を創造の原動力にしている点にある。『5 0』は福岡に遊んだスラックの旅の記録であり、旅を通じてアーティストとしての新たな展開の契機をつかんだことに、この作品の可能性と面白さがある。移動が今後、日本の音楽の重要な主題になる予感さえする。東京への厳しい言葉があり、福岡への愛がある。
僕が、はっきりとスラックの「変化」を意識したのは、2012年9月28日に渋谷のクラブ〈エイジア〉でおこなわれた〈ブラック・スモーカー〉の主催するパーティ〈エル・ニーニョ〉における鬼気迫るパフォーマンスだった。実兄のパンピーとガッパー(我破)、スラックから成るヒップホップ・グループ、PSGのライヴだった。スラックはパンピーをバックDJにソロ曲を披露した。彼は初期の名曲のリリックを、フロアにいるオーディエンスを真っ直ぐに見据え、毅然とした態度で攻撃的に吐き出した。オーディエンスに背を向け、気だるそうにラップする、聞き分けのない子供のようなデビュー当初のスラックの姿はそこにはなかった。オリーヴ・オイルと制作を進めていることを知ったのもそのときだった。
インタヴューは、僕が福岡を訪れる前におこなっている。大量の缶ビールを両手いっぱいに抱え、取材場所の会議室に乱入してきた野田努の襲撃によって、ゆるやかな離陸は妨害され、墜落寸前のスリリングな飛行がくり広げられることとなったが、スラックは言葉を選びながら4年前のデビューから現在に至る軌跡について大いに語ってくれた。スラックのひさびさの対面ロング・インタヴューをお送りしよう。
なんでもいいってことになったら、死んでるのと変わらないから。だからこそ、ヒマを潰す。自由を一周したら責任が生まれて、社会の仕組みが見えてきた。それを理解しないで社会のことをやっててもダメだから、ちゃんとこなして文句言おうと思ってますね。
■対面インタヴューはひさびさですか?
スラック:ひさびさですね。シック・チームで雑誌の取材とか受けましたけど。
■僕がスラックくんにインタヴューさせてもらったのが、2009年末なので、約3年前なんです。セカンドの『Whalabout』を出したあとですね。
スラック:3年前ですか。早いっすね。
■早いですよね。この3年間は個人的に激動だったんじゃないですか。作品もたくさん出してましたし。
スラック:たしかに。
野田:超若かったよね。
■いまと雰囲気がぜんぜん違う(笑)。
スラック:そうですよね。22歳と25歳じゃぜんぜん違う。
■そうか、25歳になったんですね。
スラック:ってことは次のインタヴューは30くらいかな。
■ハハハ。
スラック:もう子供みたいにはしてられないですよね。
■スラック(s.l.a.c.k.)って呼べばいいのか、娯楽(5lack)って呼べばいいのか、どっちですか?
スラック:あれでいちおうスラックなんですよね。
■5がSと読めるということで、スラックと。
スラック:はい。まあ、名前なんかなんでもいいや、みたいな。オフィシャル感みたいなのをはめこもうとすると大変なんですけど、勝手に自分のあだ名を変え続けてる友達とかいたじゃないですか。
■なるほどね。そうゆうノリだ。
野田:(『5 0』のCDをみながら)ああ、オリーヴ・オイルといっしょにやったんだ!
スラック:そうです。
野田:これは聴きたいなあ。オリーヴ・オイルといっしょにやってるってとこがいいと思うね。
スラック:めっちゃ気が合って。
■このアルバムの制作で福岡にちょくちょく行ってましたもんね。
スラック:はい。最近はオリーヴさんとK・ボムさんと仲良いです。
[[SplitPage]]オレがラップする「適当」を、気を抜いてとか楽天的にとか、ポジティブに受けとられれば良いですけど、責任のない投げやりな意味として受けとるのは勘違いかなって。
■僕が今回インタヴューさせてもらおうと思ったきっかけは、去年の9月28日の〈エル・ ニーニョ〉のスラックくんのパフォーマンスに感動したからだったんです。PSGのライヴでしたね。
スラック:はいはいはい、あの日、やりましたね。
■これまで感じたことのない鬼気迫るオーラを感じて。
スラック:オレがですか?
■うん。「適当」っていう言葉は当初は日本のラップ・シーンに対する牽制球みたいな脱力の言葉だったと思うんですね。もう少し気を抜いてリラックスしてやろうよ、みたいな。
スラック:はいはいはい。
■それが、より広くに訴えかける言葉になってたな、と思って。
スラック:漢字で書く「適当」の、いちばん適して当たるっていう意味に当てはまっていったというか。要するに、良い塩梅ということです。だから、いいかげんっていう意味の適当じゃなくて、ほんとの適当になった。まあ、でも、最初からそういう意味だったと思うんですけど、時代に合わせるといまみたいな意味になっちゃうんですかね。ちょっと前だったら、もうちょっとゆるくて良いんじゃんみたいな意味だったと思う。
■自分でも言葉のニュアンスが変わった実感はあるんですか?
スラック:オレがラップする「適当」を、気を抜いてとか楽天的にとか、ポジティブに受けとられれば良いですけど、責任のない投げやりな意味として受けとるのは勘違いかなって。
■なるほど。
スラック:あの日のライヴは良かったっすね。
■自分としても良いライヴだった?
スラック:そうそうそう。
■どこらへんが?
スラック:楽しみまくりました。アガり過ぎて、終わってからも意味わかんなかった。
■さらに言うと、スラックくんにとっても東日本大震災はかなりインパクトがあったのかなって思いましたね。スラックくんのライヴを震災後も東京で何度か観てそう感じたし、『この島の上で』のようなシリアスな作品も出したじゃないですか。実際、東京はシリアスになって、それはますます進行してると思うし、そういう緊迫した状況に対して、あの日のライヴの「適当」って言葉が鋭いツッコミになってるなって感じたんですよ。
スラック:いまやるとたしかに地震前とは違いますね。
野田:『この島の上で』を出すことに迷いはなかったの?
スラック:えっと......
野田:なんて真面目な人間なんだろう、って思ったんだけど。
スラック:そう言われますね。「真面目過ぎだよ」って。でも、自然に出しましたね。かなり混乱はしましたね。
■混乱というのは、『この島の上で』を出すことについて? それとも東京で生きていくことに?
スラック:人の目はぜんぜん意識してなかったですね。たまたまああいう曲調の音楽が作りたかっただけだと思うんですよ。そこに自分の精神が自然にリンクした。自分が真面目になったイメージもなかったんですよ。
野田:わりと無我夢中で作っちゃった感じなの?
スラック:そうっすね。でも最近まで、「元々自分が音楽をどういう精神でやってたんだっけ?」ってずっと悩んでたような気がしますね。
野田:ぶっちゃけ、日の丸まで使ってるわけじゃない? 「右翼じゃないか」って受け取り方をされる可能性があるわけじゃない。
スラック:あの頃は、愛国心というか、「自分は日本人だ」みたいな意識が強くなってたんです。
■『この島の上で』のラストの"逆境"はストレートに愛国心をラップした曲だよね。
スラック:なんて言ったらいいんですかね。あれはある意味ファッションですね。日本人がいまああいう音楽を残さないでどうするっていう気持ちがあった。歴史的に考えて、日本の音楽のチャンスだった思うんです。
野田:よく言われるように、国粋主義的な愛国心もあれば、土着的な、たとえば二木みたいに定食屋が好きだっていう愛国心もあるわけじゃない?
■ナショナリズムとパトリオティズムの違いですよね。
野田:愛国って言葉はそれだけ幅が広い。いまの話を聞くと、あれだけ時代が激しく動いたわけだから、記録を残したかったっていう感じなの?
スラック:うーん、いろんな気持ちが同時にありました。いま上手くまとまりませんけど、全体的に描きたかったのは日本でしたね。
■僕はタイトルの付け方が面白いと思ったんですよ。「この国」って付けないで、「この島」と付けたところに批評性を感じた。その言葉の違いは大きいと思う。
スラック:そうっすね。とりあえず、日本人がいまこういうことやってるぜっていうことを主張したかった。だから、音楽のスタイルも日本っぽい音を使いました。
■国もそうだけど、震災以降、「東京」もスラックくんの大きなテーマになった気がしました。どうですか?
スラック:そうっすね。いろんな街に行って、東京って形がない街だなって思ったんですよ。
■今回のアルバムにも東京に対する愛憎が滲み出ているじゃないですか。東京を客観的に見る視点があるじゃないですか。
野田:でも、"愛しの福岡"って曲もあるよ。
■それは東京から離れて作ったからでしょ。
スラック:けっこう東京は嫌いではありますね、いま。
野田:おお。
スラック:嫌いっていうか、他の街に行くと、自分が実は騙されてんじゃないか、みたいに思うんです。
■東京に住んでいてそう感じる?
スラック:はい。東京は「パラサイティスティック」ですね。
■「パラサイトが理由をつけて徘徊」("早朝の戦士")っていうリリックがありましたね。ここで言うパラサイトってどういうことなの?
スラック:自分で生み出す感じじゃないということですね。
■たとえば、誰かに乗っかってお金を儲けるとか。
スラック:そうですね。
■もう少し具体的に言うと?
スラック:言い辛いんですけど。
■他人をディスらなくてもいいので(笑)。
スラック:そうっすね。多くの人が自分発祥のものじゃないことをやっている気がするんです。
■それはたとえば、日本にオリジナリティのある音楽のスタイルが少ないと感じる不満にも通ずる?
スラック:それもそうですし、市場とかを考えても......、うーん、何か落ち着か なくなってきた......
■野田さんがいきなりディープな話題に行くからですよ! もうちょっとじっくり話そうと思ってたのに(笑)。
野田:そんなディープかねぇ?
■ディープでしょう。
スラック:いや、ぜんぜん大丈夫です。
[[SplitPage]]人の目はぜんぜん意識してなかったですね。たまたまああいう曲調の音楽が作りたかっただけだと思うんですよ。そこに自分の精神が自然にリンクした。自分が真面目になったイメージもなかったんですよ。
■ちょっと仕切り直しましょう。まず、今回のアルバムについて訊かせてください。オリーヴ・オイルといっしょにほぼ全編福岡で作りましたよね。作品を聴いて、東京を離れて感じたり、考えたことが反映されてるんだろうなって思ったんです。
スラック:そうですね。普通に落ちちゃうぐらい、東京にいたくなくなりましたね。
■去年、それこそ〈エル・ニーニョ〉で会ったときに、「東京、離れるかもしれませんよ」って思わせぶりな言い方してましたもんね。
スラック:ハハハ。
野田:東京生まれ東京育ちじゃない。でも最近は、東京村みたいにもなってきてない? 「スラック以降」、とくにそういう感じがするんだけど。
スラック:だから、オレみたいな位置の人がいっぱい出てくればいいなって思う。なんかこうサービス業になってるんですよ。
野田:でも、それは東京だけに限らないんじゃない?
スラック:でも、スピード感があるからこそ、スピードが遅いことに対して文句を言うんですよね。
■情報の速さに慣れてるんだよね。便利さに慣れてるっていうことですよね。
スラック:それもそうですし。
野田:それは東京じゃなくて、ネットじゃない?
スラック:ネットはありますね。ネットも携帯も超アブナイと思う。いつか電気と人間がひっくり返るときがくる気がしますね。
■震災が起きた直後に"But This is Way / S.l.a.c.k. TAMU PUNPEE 仙人掌"をYouTubeにアップしましたよね。で、3月20日に〈ドミューン〉の特番に出てくれた。そのときに「情報被曝」っていう言葉を使っていて、それがすごく印象に残ってる。『この島の上で』の1曲目"Bring da Fire"でもその言葉を使ってたよね。どういうところからあの言葉が出てきたの?
スラック:起きなくていい争いが起きる可能性が何百倍にも増えてると思うんです。昔は恋人ともすごい距離歩かなかったら会えなかったのに、電話ができる回数分ケンカが増えて別れる率が上がってるとか(笑)。たとえば、そういうくだらないことが超増えてる。だから、もうちょっとシンプルに人間になって、五感を使っていきたい。
野田:フリーでダウンロードして音楽聴く人間は、意外と文句ばっか言うんだよ。サービス業じゃないんだっていうのにね。
スラック:料理人とかもそうですけど、客から文句があったら、「帰れ!」って言えばいいんじゃないかなって。それで潰れるのは店なわけだし。
■この数年間でスラックくんに対する周りの見方も大きく変化したと思うんですよ。いろいろ期待もされただろうし、プレッシャーを感じているんじゃないかなって。
スラック:いや、それはないですね。みんなは新しく出てくるアーティストに盛り上がってるけど、オレはまるでよくわからないアーティストばっかりなんで。
■ハハハ。つまり、スラックくんが評価できるアーティストが少ないってことですか?
スラック:日本のリスナーのハードルがそんなに高くないんじゃないかって思いますね。音楽を聴いてんのかな?って。
■それに似たようなことを3年前のインタヴューでも言ってたね。「無闇にタレント化したり、ブログを頻繁に書いてみたり、そういうのが目立ってて。なんでそこを頑張ってんだよ」って(笑)。
スラック:音楽のスタイルや実力で出てきたヤツもそっちに流されてる気がする。
■インターネットやSNSの弊害なのかもしれないですよね。SNSで発信したり、表現したりしないといけないという強迫観念に縛られているのかもしれない。ただ、それは音楽産業の構造の問題でもあると思う。経済的に厳しいから、ミュージシャンが、プロデューサーやプロモーターの役割も担わなくてはいけない現状があるから。
スラック:というか、ネットとカメラを使うDIYみたいのが主流になって、誰でもプロっぽく作れるから、リスナーが本物を見抜けないんじゃないすかね。まあ、どちらにしろ、プレッシャーの感じようがない。
■自分に脅威を感じさせる存在がいない、と。
スラック:数人しかいないですね。
野田:本人を目の前にして言うのもなんだけど、スラックはぶっちゃけ、下手なメジャーよりも売れちゃったと思うんだよね。自分が売れて、周りからの反応ではなく、自分自身に対するプレッシャーはなかったの?
スラック:うーん。
野田:そこは動じなかった?
スラック:動じませんでしたね。だから、『この島の上で』の話に戻ると、「こういうアルバムもオレは出すんだよ」くらいでの気持ちでしたね。
野田:ハハハハハッ。
スラック:「このデザイン、ハンパなくない?」、みたいな。
野田:なるほどね。『My Space』と同じような気持ちで作ったということだ。
スラック:ある意味ではそうです。自然に真面目にやったんです。
■『この島の上で』のような誤解をされかねない作品を出して、その評価や反響に賛否あっても、ぶれることなくいままで通り音楽を続けていく自信があったと。
スラック:そうっすね。でも、無意識ですね。それと、Ces2と出した『All in a daze work』を『この島の上で』のあとに出したんですけど、『この島の上で』の前に完成してましたね。
■スラックくんの作品を昨日一晩で聴き直したんですよ。『情』がとくに象徴的だけど、ある時期から、泣きの表現、センチメンタルな表現に力を入れはじめた印象を受けたんですよ。
スラック:『情』では景色を描きたくて、映画を作るようなイメージで作ったんです。日本人の誰もが共感できるものっていうか。
■叙情や情緒になにかを託していると感じたんですよね。
野田:サンプリングのアレもあるだろうけど、フリーダウンロードで配信したのはなぜなの?
スラック:あれはなんででしたっけ?
マネージャーF:『情』は、いままでお客さんがCDを買ってくれてたり、ライヴも観てくれたりすることへのお返しっていう意味があったんでしょ。
スラック:そうだ、そうだ。まあ、ネタのこともあるけど、かなりの赤字になるのが決まってたんですけど、正規の作品ばりにガッツリ作ったんですよ。
■マスタリングもばっちりやってますよね。
スラック:そうです。行動で示したかったですね。
野田:律儀な男だね(笑)。
■自分のファンに対して、愛があるんですね。
スラック:そうっすね。いや、でもファンに対して、愛はたぶんないです。
■えぇぇー(笑)。ファンががっかりするよ。
スラック:でもやっぱり両想いは難しいですよ。オレのことを理解しきれるわけがないし。
■厳しいね。
野田:いやいや、そりゃそうでしょ。
スラック:もちろん感謝はしてますけど。
[[SplitPage]]いろんな街に行って、東京って形がない街だなって思ったんですよ。けっこう東京は嫌いではありますね、いま。嫌いっていうか、他の街に行くと、自分が実は騙されてんじゃないか、みたいに思うんです。
■ここまでの話を聞いて思うのは、スラックくんはひとりひとりの音楽リスナーに音楽を聴く耳を鍛えてほしい、育ててほしいという意識があるんだなって思いましたね。
スラック:それもありますね。
野田:あるんだ!? オレは、どっちかって言ったら、スラックはまったく頓着しないタイプなのかなって思ってた。
■いや、あるんじゃないですか。
スラック:真面目とふざけが同時にあって、どうでもいいっちゃどうでもいいんですよね。でも、なんでもいいってことになったら、死んでるのと変わらないから。だからこそ、ヒマを潰す。自由を一周したら責任が生まれて、社会の仕組みが見えてきた。それを理解しないで社会のことをやっててもダメだから、ちゃんとこなして文句言おうと思ってますね。
■それは3年前にインタヴューしたときには感じてなかったことなんじゃない。
スラック:感じてませんでしたね、たぶん。
■ハハハハハ。22歳でしたもんね。
スラック:そうですね。だから、あのときはもう文句ばっかでしたね。
野田:ヒップホップってアメリカの文化じゃない? 日本人もアメリカ的なものに憧れて、ヒップホップにアプローチしていくところがあるでしょ。スラックはアメリカから押し付けられたアメリカに満足できないということを暗に主張したいのかなって感じたんだけど。
スラック:でも最近、オレはアメリカの自然なヒップホップをやるんじゃなくて、オレらの自然な生活感のあるヒップホップじゃないと無理があると思ってますね。これ、ちょっと話が違いますか?
野田:いやいや、そういうことだよね。あと、必ずしもアメリカが良いわけではないでしょ。日本以上に過酷なところがある社会だからさ。
スラック:そうですよね。
野田:アメリカに憧れる気持ちは、音楽好きのヤツだったら、若い頃は誰にでもあったと思う。でも、海外をまわってから日本をあらためて見直すってこともある。たとえば、幸いなことに、アメリカほどひどい格差社会は日本にはまだないと思うからさ。そういう意味での日本の良さだったらオレは理解できる。
スラック:そうですね。愛国心というか、オレが日本人であることが問題なだけで。
野田:それは思想とかじゃなくて......
スラック:自分のチームを立てるしかないってことですね。
野田:自分の親や町内や地元が好きなようなもんなんだね。しょうがないもん、そこで生まれちゃったんだから。
スラック:そうそう。だから、楽しみたい。日本の道路をアメリカやイギリスの国旗を付けた車が走ってるのを見て、「なんだろう?」、「日本はどこに行ったんだろう?」って思うときがある。「日本にももっと楽しむところがいっぱいあるはずなのに」って。そういう意味で、ファッションって言い方をしたんです。
■たとえば、日本文化のどういうところを楽しもうと思ったの?
スラック:ガイジンが面白がる日本を楽しんでみたり。
■ガイジンのツボを突く日本ははこういとこなんじゃないか、と。
スラック:ガイジンというか世界に対してですね。それが日本の金になっていくって発想だと思います。
■シック・チームは海外のラッパーやトラックメイカーと交流があるし、スラックくんの周りにもいろんな国の友だちがいますよね。そういった人たちとの会話のなかで生まれた発想ですか?
スラック:いや、オレがひとりで走ってましたね。ただ、地震のあと、スケーターの仲良いヤツと話しても、スケボーの世界も海外に対して、「日本人ならどうする?」、「オレらはなにを作る?」って方向に向かっていったらしい。
■国を大きく揺るがす大震災や原発事故が起きて、日本人のアイデンティティを問い直す人たちが多かったってことなんですよね。
スラック:多いんじゃないすかね。どうなんすかね?
野田:多かったとは思うけど、K・ボムやオリーヴ・オイルはそういう意味では、ずば抜けた日本人でしょ。言ってしまえば、日本人らしからぬ日本人でもあるじゃない。
スラック:逆にオリジナル、本物はこれだよって。
野田:みんなが思う日本人のパターンに収まりきらない日本人だよ。
スラック:怒られるかもしれないけど、Kさんもオリーヴさんも友だちっぽいんですよね。良い意味で気をつかわないし、怒らしたら恐いんだろうなっていうところが逆に信用につながっている。
■K・ボムの凄さは、あの動物的な直感力だと思うんだよね。
スラック:運動神経なんですよね。オリーヴさんも音作りの運動神経がすごい。一気に作って、完成してるんです。速いんですよ。
■スラックくんは、K・ボムというかキラー・ボングのアヴァンギャルドな側面についてはどう思う? ある意味で、ヒップホップから逸脱してるじゃないですか。〈エル・ニーニョ〉のときも、PSGのライヴのあとに、メルト・ダウン(キラー・ボング、ジューベー、ババ、オプトロン)の壮絶なライヴがあって、〈ブラック・スモーカー〉は、そういう異色な組み合わせを意図的に楽しんでやってると思うんだよね。
スラック:もちろんKさんには音楽の才能を感じますし、Kさんが違うジャンルの音楽をやっていても理解できる。むしろ、リスナーからは似たようなシーンにいるように見られていても、オレはぜんぜん感じないヤツもいますよ。
■そこの違いみたいなものはリスナーやファンにわかってほしい?
スラック:まあ、わかったほうがいいとは思いますけど、半々ですね。理解してほしいっちゃほしいけど、それでみんなが傷つくのはかわいそうっちゃかわいそうですよね。迷いがありますね。だから、日本のシーンってまだぜんぜん形になってないと思います。これから20代以下の若いヤツらがたぶんすごいことになる気がします。
■スラックくんの活動を見てると、自分が100%出せるイベントやパーティにしか出演しないというか、けっこうオファーを断ってるじゃないんですか?
スラック:そうですね。みんながどんぐらい受けてるかを知らないけど、たとえばモデルにしろ、嫌いな服は着れないし、完全に自然が良いですね。
■安易に手を取り合わなかったり、オファーを断ることで守りたい自分のスタイルや信念はなんなんですかね?
スラック:けっこう生々しい東京の話になってきちゃいそうですね、そうなると(笑)。単純にだるい人間関係とか良くないものとの関係とか、ニセモノやイケてない関係とかが多いですよね。そういうのはあんまり信用してない。
■スラックくんの攻撃性みたいなものはそこまで曲に反映されてないですよね。
スラック:そうなんすかね? 意外と出してますよ。
■そうか、意外とラップしてるか(笑)。
スラック:次出すやつとかヒドイなあ。
野田:トゲがある?
スラック:そのときの気持ちはもう忘れてる感じですけど、イライラして曲書いて発散しましたね。
[[SplitPage]]みんなは新しく出てくるアーティストに盛り上がってるけど、オレはまるでよくわからないアーティストばっかりなんで。日本のリスナーのハードルがそんなに高くないんじゃないかって思いますね。音楽を聴いてんのかな?って。
■少し話を変えると、3年前にインタヴューさせてもらったときに〈ストーンズ・スロウ〉から出すのが、ひとつの夢でもあるという話をしてましたよね。久保田利伸を例に出したりして、ディアンジェロみたいなブラック・ミュージックを消化して、表現したいと。その当時語ってた理想についてはいまどう考えてます?
スラック:〈ストーンズ・スロウ〉はいまは興味ないですね。オレはいまそっちじゃないですね。オレはただJ・ディラが好きだったんだなって思いますね。
野田:J・ディラのどんなとこが好きだったの? サンプリングをサクサクやる感じ?
スラック:彼のスタイルが、90年代後半以降のヒップホップのスタンダードになったと思うんですよ。
■最近、トライブの『ビーツ、ライムズ&ライフ~ア・トライブ・コールド・クエストの旅 ~』って映画が上映されてて、すごい面白いんだけど、あの映画を観て、あらためてトライブからJ・ディラの流れがヒップホップに与えたインパクトのでかさを実感したな。
スラック:セレブっぽいっていうか。音楽としてヒップホップの人が追いつけないところに行こうとしはじめると、結果的にモデルがいっぱいいるようなオシャレな音楽になっていく。そうやってブレていく人たちが多いと思う。そうなるとあとに引けなくなるし。
■それこそ漠然とした言葉だけど、スラックくんは「黒さ」に対するこだわりが強いのかなって。
スラック:黒さだけじゃないんですよ。自分もアジア人ですし。
野田:白人の音楽で好きなのってなに?
スラック:ラモーンズとかですね。
一同:ハハハハハ。
スラック:なんでも好きですよ。ピクシーズとかカート・コバーンも好きだし。
野田:ラモーンズって、けっこう黒人も好きなんだよね。
スラック:極端にスパニッシュっぽいものとかラテンっぽいものも好きです。
■いま、スラックくんが追ってる音楽はなんですか?
スラック:ディプセットとかジュエルズ・サンタナとか聴いてますね。中途半端に懐かしい、あの時代のヒップホップにすごい癒されてて。いま聴くと、オレが好きなヤツらって、ここらへんの音の影響を受けてんのかなーって思ったりして。
■シック・チームでもひと昔前に日本で人気のあったアメリカのラッパーをフィーチャーしてましたよね? えー、誰でしたっけ?
マネージャーF:エヴィデンス。
■そうそう、エヴィデンス! あのタイミングでエヴィデンスといっしょにやったことに意表を突かれましたね。
スラック:ダイレイテッド・ピープルズですね。
■そう、ダイレイテッド・ピープルズ! 日本でもコアなリスナーの間で人気あったじゃないですか。面白い試みだなと思いましたね。
スラック:だから、「これはもしかして日本人がいまちょっと来てるんじゃねぇのか」って思った。でも、いままでの日本の打ち出し方ってイケテないのが多いから、そこは慎重にかっこよくやりたいんですよ。
野田:ダイレイテッド・ピープルズに、90年代の『ele-king』でインタヴューしましたよ。
スラック:マジすか?
野田:マジ。当時はパフ・ダディがポップ・スターだったじゃない? ダイレイテッド・ピープルズやエヴィデンスは、そういうものに対するカウンターとしてあったよね。
スラック:オレの周りは年齢層も30歳ぐらいの人が多くて、ナインティーズ推し派が多いんですけど、オレはネプチューンズとかも好きなんですよ。オレはサウスが流行ってた時代に育ってるけど、その中でナインティーズっぽいことをやってた。だから、「ファレルとかも良くない?」って思う。
■日本では、90年代ヒップホップとサウス・ヒップホップの溝はけっこう深いしね。
スラック:深いし、ナインティーズ推し派の人たちはやっぱ固いっつーかコアですよね。あと、オレの世代でもまだやっぱ上下関係が残ってて、オレはそれを否定して少数派になっちゃった。だから、もうちょっとやりやすい環境を求めて、いま動き回ってますね。
[[SplitPage]]動じませんでしたね。だから、『この島の上で』の話に戻ると、「こういうアルバムもオレは出すんだよ」くらいでの気持ちでしたね。「このデザイン、ハンパなくない?」、みたいな。
■良い音楽を作るためにはしがらみを取っ払わないといけないときもあるよね。
野田:いや、良い音楽を作るためには独善的でなければならないときもあるんだよ。ジェイムズ・ブラウンみたいに、「おい! ベース、遅れてるぞ。罰金だ!」って言うようなヤツがいないとダメなときもある。
スラック:たしかに言えてますね。だから、人と上手くやるのって難しいですね。とくに日本のお国柄とか日本人の精神もそこにリンクしてくるから。日本はいますごい絶望的だと思うし、そのなかでポジティブに楽しんで生きていけるヤツがある意味勝ち組だと思う。社会的に勝ち組と思ってるヤツらもいきなり明日にはドン底になって動揺する可能性だってある。親父とも最近、そういう日本のことを話したりするようになって。
野田:お父さん、すごい音楽ファンなわけでしょ?
スラック:そうですね。
野田:スラックは、『My Space』と『Whalabout』を出したときにメジャーからも声をかけられたと思うのね。「うちで出さない?」って。
スラック:はいはい。
野田:それを全部断ったわけじゃん。断って自分のレーベル、高田......、なんだっけ?
スラック:高田音楽制作事務所(笑)。
野田:でも、いわゆるアンダーグラウンドやマイナーな世界に甘んじてるわけでもないじゃない。
スラック:はい。
野田:だから、「第三の道」を探してるんだろうなって思う。アメリカの第三のシーンみたいなものが、ダイレイテッド・ピープルズとかなんじゃない。
■あと、レーベルで言うと、〈デフ・ジャックス〉とかね。
野田:そう、〈デフ・ジャックス〉とかまさにね。
■〈ストーンズ・スロウ〉も精神としては近いでしょうね。
野田:まあそうだね。そのへんの「第三の道」というか、いままでにない可能性に関しては諦めてない?
スラック:うーん、どうですかね。自分の立場が変わって、シーンをもっと良くすることができる位置にきた気はします。元々の人には嫌われたりするかもしれないけど、シーンを自分の色にできる影響力を持った実感もちょっと出たし。やらないことも増えたり、変なことやるようになったり。「第三の道」っていうの探してるかはわからないですけど、元の自分のままでいることはけっこう無理になりましたね。いまの自分の立場になって、昔の自分みたいなヤツが出てくるのを見て、「オレはこんなことしてたんだ」って思うこともある。そういう経験をしてきたから、後輩には良くしようって。そういう変化をもたらすきっかけにはなれるんじゃないかなってたまに思っちゃう。
■シーンについて考えてるなー。
スラック:「なんでオレがこんなことしなきゃいけないんだよ!?」って思いながら、「オレがやってんじゃん」みたいな。
■ハハハ。
スラック:いまオレが言ったようなことをやる専門のヤツがいっぱいいたらいいのにって思う。でも日本人は、有名なラッパーに「なんとかしてください」ってなっちゃうんですよ。アナーキーくんみたいに気合い入れて自分を通してやり遂げて、曲もちゃんと書くってヤツがもっと存在していいと思う。言い訳ばかりはイヤですね。
野田:日本の文化のネガティブなことを言うとさ、やっぱり湿度感っていうか、ウェット感がある。たぶんそういうところでけっこう惑わされたのかなって思うんだけど。
■あと、派閥意識みたいなのも強いですからね。それがまた面白さなんだけど。
野田:日本人がいちばんツイッターを止められないらしいんだけど、なぜ止められないかって言うと、そこで何を言われているか気になって仕方がないというか、人の目を気にしてるからっていうさ、そうらしいよ。
スラック:ああ。
野田:自分が参加しないと気になってしょうがないんだって。二木はとりあえず、そういう人の目を気にしちゃってる感じをファンキーって言葉に集約してなんとか突破しようとしてるわけでしょ。あれだね、スラックは理想が高いんだね。
スラック:理想はたぶん、高いかもしれない。
■そういう意味でもスラックくんの存在はすごい重要だと思う。
スラック:あとオレは、カニエやファレルに負ける気で音楽は作ってないすね。
野田:カニエとファレルだったらどっち取る?
スラック:ファレルですね。
野田:あー、オレと同じだなあ。じゃあ、ファレルとカニエの違いはどこ?
スラック:まあ、いちばん簡単に言えば、最初は見た目なんですよ。あと、ファレルは最終的に音が気持ちいいし、器用だし、音楽だけに留まってない。音楽のセンスが違うところに溢れちゃってる。あの人とかもう、究極の楽しみスタイルじゃないですか。チャラい上等じゃないですけど。
野田:それって逆に言うと、実はいちばんずるい。
スラック:ずるいですね。
野田:バットマンの登場人物でいうジョーカーみたいなヤツじゃん。人を笑わせといて、実は殺人鬼っていうようなさ。
■すごい喩えだ(笑)。
スラック:ネプチューンズというか、ファレルは作る音で信用得てますよね。それは周りからのディスで止められるものじゃない。
野田:フランク・オーシャンとかはどうなの?
スラック:フランク・オーシャンは好きっすよ。
野田:オッド・フューチャーは?
スラック:オッド・フューチャーも最終的に好きになりましたね。
野田:あのへんはファレル・チルドレンじゃない。
スラック:そうですね。メインストリームの良いものを真似して、でも惑わされずに、あの世代のアングラ感やコアな感じを出してますよね。だから、信用できる。
■考えてみれば、フランク・オーシャンも「第三の道」を行ってるアーティストですよね。
野田:そうだね。
スラック:彼はなんか人生にいろいろありそうな音してますよね。
野田:そうそう。で、オッド・フューチャーにレズビアンがひとりいる。
■たとえば、日本のヒップホップで「第三の道」って言ったら、やっぱりザ・ブルー・ハーブじゃない。
スラック:よく聴いてたし、オリジナルだし、彼らのはじまりを思うとすごいと思いますね。「ガイジンもなにこれ?」って思うような、日本っぽいことをやって、それをやり通してるし。
[[SplitPage]]日本はいますごい絶望的だと思うし、そのなかでポジティヴに楽しんで生きていけるヤツがある意味勝ち組だと思う。社会的に勝ち組と思ってるヤツらもいきなり明日にはドン底になって動揺する可能性だってある。親父とも最近、そういう日本のことを話したりするようになって。
■スラックくんの言う「日本っぽい」っていうのがなにを意味するのかもう少し訊きたいな。たとえば、『この島の上で』の"まとまらない街"や"新しい力"では、日本の伝統音楽というか邦楽をサンプリングしたようなトラックを作ってるでしょ。
スラック:たとえば、久石譲の音楽をCMや映画で聴いたりして、オレらだけが本当の意味で楽しめることに、みんな気づいてると思うんですよ。しかも、それでかっこ良ければ、ばりばりガイジンに対しても自信満々で行けるって。
■「日本っぽい」オリジナルな音楽を作るというのは、いまでもスラックくんのひとつのテーマ?
スラック:ああ、でも、もう、ぶっちゃけいまはゆるいです。いろいろやってみて、疲れてきて、いまはもういいや、みたいな。地震のあと、坊さんの話を勉強したり、善について考えたりもして。でも、オレには無理だなって。全部を動かすスタミナはオレにはなかった。だから、いまはそっちは放置プレイです。
野田:でも、日本っていうのはAKBとか、オレはよく知らないけど、アニメとかさ、そういうのもひっくるめて日本だからさ。
スラック:そうすね。
野田:そういう意味で言うと、いまスラックが言ってる日本ってすごい偏った日本だと思うんだよね。
スラック:だから、オレはオレで、自分の好みをもっと広めたい。
野田:スラックの同世代の他の子はやっぱりアニメを観てたりしたでしょ。
スラック:そうですね。
野田:携帯小説を読んだりとかさ(笑)。
スラック:オレの世代はめっちゃ携帯世代ですね。でも、若いヤツらって意外と真面目で、時代は大人たちの裏で変わっていると思う。
野田:オレもなんか、スラックより下の世代と話が合うんだよね。
■それぐらいの世代ってフランクだよね。
スラック:タメ語っぽいヤツは多いですね。
野田:オレなんかスラック以上に先輩後輩の上下関係のなかで育ってるから。
スラック:若いヤツらはオレの立場とかどうでもよくて、みんなはっきり言ってくるんで。「それ違くない?」って。それがけっこう当たってたりして、自分の邪念に気づけるし、面白いすね。だから、20歳未満の世代にも期待してますね。
野田:そのぐらいになると、「インターネットは単なる道具っしょ」っていう距離感なのね。
スラック:たしかに。
野田:さっぱりしているよね。
スラック:いまの若いヤツに対しては「プライドなんて育てない方がいいよ」って言いたいっすね。東京はダメだし、警察はギャングだし。もうちょっと賢い、本当に強い選択をしないと。暴力は損することも多いから。うまくなかに入り込んで壊すような、風穴を開けるようにならないとダメだと思う。ダメっていうか、そうしないと良くはならない。
■東京の状況を良くしたいって気持ちもあるっていうことなのかな。
スラック:ありますね。最近、けっこう自分が良くねぇ時代にいるんじゃないかって気づき出して。オレらの親世代とかはちょうどバブルの子供世代だったりして、地震ではじめて動揺した世代だと思う。
野田:お父さんは何歳なの?
スラック:50中盤ぐらいなんで。
野田:えー、じゃあ、ぜんぜんバブルじゃな......い......いや、バブルか。
スラック:バブルの若者で、戦争にも当たってないし、なんにも触れてなくて、めっちゃ平和ボケ世代なんですよ。
野田:運がいいんだよ。
■ある意味羨ましい。
スラック:そうそうそう。だから、その子供世代とかがまさにオレらとかで、いま大変な不景気に立たされてる。オレら世代はけっこうクソ......、クソっていうか、自由を尊重する気持ちだけは育って、でも手に入れる腕もないし、趣味もなけりゃ、ほんとにみじめだなって思ったりもします。好きなことがないとかは、大変だろうなって思いますね。
■いやあ、すごいおもしろいインタヴューだけど、野田さんの襲撃によって話がとっ散らかったなあ。......あれ、野田さん、どこ行くんですか?
野田:トイレですよ!!
一同:ダハハハハハッ。
■『5 0』のことも訊きたくて。いちばん最後の曲、"AMADEVIL"ってなんて読めばいいんですか?
スラック:これはオリーヴさんがつけましたね。
■意味はわかります?
スラック:いや。
■ラストのこの曲の音が途中で消えて、そのあとにまた曲がはじまるでしょ。僕はその曲がアルバムのなかでベストだと思ったんですよね。
スラック:"BED DREAMING"だ。なんかベッドの上から一歩も出ないような日に書いた曲なんですよね。
■福岡と東京を行ったり来たりしながら録音したわけでしょ。
スラック:行ったり来たりして、あっちで書いて、家で録ったり、それを送ったりしてましたね。去年の夏からですね。
■そもそもどうしてオリーヴ・オイルとやろうと思ったんですか?
スラック:アロハ・シャツ着て過ごしたいなって。東京を置いといて。で、金にしちゃえって。
■なるほどー。
スラック:長いラップ人生、なにをしちゃいけないもクソもねぇだろと思って、いろいろやろうかなって。あと、音を違うフィールドの人に任せたかったんですよね。これまで全部自分で仕切ってたから、任せれるアーティストとあんまり出会ってなかったんで。
■2曲目に"愛しの福岡"ってあるじゃないですか。福岡の東京にはない良さ、面白さってどういうところですか?
スラック:人間ぽいすね。なんかこう、厳しいところと、緩いところがあって、日本人ぽい。また日本人出てきちゃった。
■タハハハハッ。
野田:また口挟ませてもらってもうしわけないけど、福岡は日本の歴史において重要なところだよね。やっぱオリーヴ・オイルとやったっていうのが今回すごく面白いと思ったのね。オリーヴ・オイルもK・ボムもオレはリスペクトしてるトラックメイカーだけど、2人とも311があって、いわゆる感情的に涙の方向に行かなかった人たちじゃない。だから、そういう意味で言うと、『情』の叙情感とぜんぜん違うものじゃない。
スラック:たしかにそうです。
野田:『情』のあとだからさ、涙の路線の延長っていうのもあったわけじゃない。
[[SplitPage]]オレら世代はけっこうクソ......、クソっていうか、自由を尊重する気持ちだけは育って、でも手に入れる腕もないし、趣味もなけりゃ、ほんとにみじめだなって思ったりもします。好きなことがないとかは、大変だろうなって思いますね。
![]() 5lack×Olive Oil - 50 高田音楽制作事務所 x OILWORKS Rec. |
■今回のオリーヴ・オイルとのアルバムには一貫したテーマは最初からありました?
スラック:まず、オリーヴさんとの組み合わせがオレは最高だったんですよね。それと個人的には旅ですね。
■たしかに旅はテーマだね。
スラック:東京側にも福岡みたいな街があるっていうのを伝えたかった。東京の身内に「おまえらもちゃんとやれよ」みたいなことも説明して、身内のことをディスすることによって、みんなの環境にもリンクすると思った。
■たしかに、さりげなくディスってますよね。
スラック:そうですね。けっこう身内のことばっかり否定してて、オレもカッコ悪いかもしれないけど、ただ身内だからとりあえず「カッコいい」ってなってる状態も変だと思うから。そこで調子に乗っちゃってる友だちも危ないとオレは思うから。
■いや、でも、それは勇気あるディスだと思いますよ。やっぱり福岡と東京を行き来したり、旅をしながら、東京や東京にいる仲間や友だちを客観的に見たところもあるんですかね。
スラック:そうですね。もちろんどこの街に行っても同じ現状があるけど。福岡にはオリーヴ・オイルっていう素晴らしくスジの通った人がいて、そこでKさんとも出会うことができた。たまたま福岡って街も良くて、あったかくて。
■へぇぇ。
スラック:運ちゃんがまずみんなめっちゃ話しかけてきて。
野田:ガラ悪いからねー。九州のタクシー。
スラック:東京って街は最先端っていうよりは日本の実験室ですよね。東京が犠牲になって、周りを豊かにしてる気がしました。
■地方が犠牲になって、東京を豊かにしてるって見方もあると思うけどね。原発なんてまさにそうだし。ただ、スラックくんの地方の見方を聞いていると、生粋の東京人なんだなーって思う。悪い意味じゃなくてね。
スラック:そうですね。たとえば、揉め事があったとして、他の地域だったらその場でケリがつくんじゃないかってことも、東京は引っ張って、引っ張って、引っ張って、みたいな。音楽のやり取りでも問題が起きると、じゃあ、本人同士で話し合って、決別するならして、仲良くするならすればってところまでが複雑。すごい街だなって思いますね。
■どうなんだろう、大阪にしても、京都にしても、物理的に街が小さいっていうのもありますよね。人口も少ないし。たとえば、音楽シーンだったら、ヒップホップとテクノの人がすぐつながったりするし、シーンっていうより街で人と人がつながってる感じもあるし。人間の距離感が東京より近いんですよね。
スラック:ああ。
■札幌に行ってもオレ、そう感じましたよ。ともあれ、板橋の地元で音楽をやりはじめたころと、付き合いが広がりはじめてからでは、なにかしらのギャップを感じてるってことなんだ。
スラック:オレは家で勝手に音楽をやりはじめただけなのに、そこを忘れちゃうんですよね、都心に出てやってると。しかもそこが重要なのに。なんか人がどうこうとか、責任が出てきて。地元帰ってくると、「いや違う。そうじゃない」ってなるんです。都心はシンプルじゃなさすぎて。
■「鳴るぜ携帯/今夜は出れない/社会人としてオレはあり得ない/理由は言えない」("BED DREAMING")ってラップもしてますもんね。
野田:ハハハハハッ。
スラック:そう、電話の束縛も超苦手で。
■このインタヴューの日程決めるやり取りも超スローでしたもんね。
スラック:電話出なかったりとかで、人と揉めたりしたんですよ。
■たしかに揉めると思う(笑)。
スラック:そうなんすよね。揉めたり、怒られたりしましたね。でも、オレはそういうスタイルにマインドはないんですよ。彼女だってキレてこないのにって。
■「社会人として失格」とか「だらしない」って言い方されたら終わってしまう話なんだろうけど、スラックくんには強い拒絶の意思を感じますね。そこに信念がある。
野田:信念あると思うね(笑)。
■たぶん「第三の道」っていうのはそういうところからはじまると思うんだよね。社会的なしがらみから自由にやりたいわけでしょ。
スラック:そうですね。だから、そこは逆にわからせたいですよね。悪気はないし、ちゃんとやってる人に敬意もあるんです。ただ、こういうやり取りのなかでは敬意を表せないって思うときがあるんです。オレは自分のペースを保ってやりたいし、ストレスはやっぱりダメですね。
野田:まあ、アメリカはすごい孤立しやすい社会で、たとえばJ・ディラみたいな人でさえも、放っとけば孤立しちゃう。日本って逆に言うと孤立し辛い社会でしょ。
スラック:そうですよね。
■放っといてくれない。
野田:「オレは独りになりたいんだ」って言っても。
スラック:それはそれで幸せなんだなって思いますけどね。
野田:そうだよ。
スラック:でも、まあ、そこも塩梅ですよね。そういう意味でも上手くできるヤツといるようにしたい。一般的には難しいことなんだと思いますけど。いまは、そういうこと考えまくった上で、生きてるときは気を抜いてますね。
野田:ところで、311前に愛をテーマにした『我時想う愛』を出したじゃない? あれはなんでだったの? しかも、ジャケなしで、いわゆる透明プラスティックのさ。
スラック:あれ、裏にジャケがあったんですよ。そういう意味でも、みんな、固定概念に縛られ過ぎだよって。
野田:ダハハハハ。
■虎の絵があったよね。
スラック:あれがレーベル・ロゴで、黄色い人種ってことですね。
[[SplitPage]]けっこう身内のことばっかり否定してて、オレもカッコ悪いかもしれないけど、ただ身内だからとりあえず「カッコいい」ってなってる状態も変だと思うから。そこで調子に乗っちゃってる友だちも危ないとオレは思うから。
■それで思い出したけど、あのアルバムに"I Can Take it(Bitchになった気分だぜ)"って曲があったでしょ。スラックくんが男と女の一人二役やるじゃない。
スラック:はいはいはいはい。ビッチ本人と説明にまわってる自分という設定でやったやつですね。
■そうそうそう。ビッチになりきって女の子の気持ちをラップして、フックでスラックくん本人が出てきて、「オレはそうとは思わない」って優しく語りかけるでしょ。歌謡曲だと、男が女の恋心や気持ちを歌うパターンがあったりするけど、ヒップホップで男が女の気持ちをああいう形でラップをするっていうのはなかったことでしょ。あれは革新的な試みだと思った。
スラック:ビッチになった気分だったんですよね。
■しかも、ビッチっぽい女の子の心の機微を上手く表現してるんだよね(笑)。
スラック:そうなんですよね。あの曲、いわゆる自称ビッチみたいな娘たちに評判が良くって。
■いい話だなあ。
スラック:「わかる~」みたいになっちゃって。
野田:ねぇなぜ、あのときに愛っていうテーマを持ち出したの?
スラック:愛情を感じてたんだと思いますね。いろんなものから。しかもその後、めっちゃ地震とリンクしていったことは、まったく不意だった。
野田:そうだよね。よく覚えてるのが、ちょうどあのアルバムが出て、しばらくして311があって、〈ドミューン〉に出演してくれって頼んだ。それこそ、シミラボ、パンピー、K・ボムが出てくれた。
■そう考えると、あのメンツはすごかったなあ。
スラック:そうですね。
野田:あのとき、1曲目で、アルバムの1曲目("But Love")をやったじゃない。
スラック:うんうん。
野田:あのときはすごく力を感じた。
スラック:そうっすね。愛っていうか、愛って言葉自体、たぶんあのときはもう日本化してたんですよね。
野田:ふぅーん。
スラック:愛っていう言葉が、響きとしてもいいだろうって思ったんです。オレ的には『我時想う愛』で一周した感じだったんですよ。あそこで『My Space』くらいに戻ったなって。『我時想う愛』を作ってるときは、「死ぬ気でやってないと後悔するぜ」ってことに仕事柄気づいたんです。そういう哲学は常に考えちゃうタイプなんです。そしたら、地震がたまたま起きて、ほんとに死ぬ気がしたから、あのアルバムと気持ちがリンクしたんじゃないかなって思うんですよ。だから、そうですね、うん、そういう本気で生きる、みたいなタイトルだと思うんですよね。タイトルはちょっと邦楽っぽいですね。東京事変じゃないけど。
野田:アハハハハ。
スラック:ニュアンスで言えば、中島みゆきとかウルフルズとかエレカシとかの言葉に近いのかもしれない。エレカシとか好きっすね。エレカシとかの言葉のニュアンスをラップで使いたかったんですよね。そこに日本人としての自然さ、侍とか忍者とかじゃない、日本人のオレらの自然さを出したかった。
■なるほどね。
スラック:ブラック・ミュージックとかソウルで「~オブ・ラブ」って言葉やタイトルがあるじゃないですか。
■うんうんうん。
スラック:それを日本で表現したら、ああなった感じです。ソウルのバラードにはバラの絵があったり、そういう時代のソウルのイメージですね。
■へぇぇ。
野田:アナログ盤にしなかったのはなぜだったの?
スラック:たしかに出そうと思ってたんですけど、この島が動いてそれで忘れてましたね。アナログにするっていう話はあったんですよね。いま自分の行動を振り返ってみても、やっぱり地震のあとは熱くなり過ぎたなーって思うんですよね。
大きなベッドにダーイブ
オレは人生を変える夢を見た
ふざけてる現実に手を振り
イカしたデザインの船で目指すのさ
そこは東京、アメリカ、中国にコリア、UK、ジャメイカ、帰り道、レイバック
光る星の近くを通る
クソも離れて見れば光るらしい
だけど本物も転がってる
そいつに触ると目が覚める
ここがトゥルーだぜ
まだオレはベッドの上
まだオレはベッドの上
"BED DREAMING"(2013)
5lack x Olive Oil 「- 5 0 -」 のrelease party
-平日にもSPECIALは転がっている!!―
この街、福岡で生まれた奇跡のSESSION !!
5lack x Olive Oil 「- 5 0 -」 のrelease partyを本拠地BASEで開催!!
第3月曜日はO.Y Street で祝福の杯を交わしましょう!!
*終電をご利用の方も楽しめるタイムテーブルとなっています*
2013.03.18 monday@福岡CLUB BASE
open 18:00 - close 24:00
ADV : 2,000yen (w1d) 【LIMITED 70】
DAY : 2,000yen
** 20:00までにご来場の方には1drinkをプレゼント!!
RELEASE GUEST: 5lack x Olive Oil
GUEST VJ: Popy Oil
CAST:
HELFGOTT
WAPPER
LAF with PMF
ARCUS
DJ SARU
MOITO
DJ KANZI
上映: 『LATITUDE SKATEBOARD』
** 当日「- 5 0 -」アイテム販売あり!! **
<WEB予約>
当日の18:00までに contact@club-base.netヘ『件名:5O release party』『本文:代表者名と予約人数』
をメールしていただいた方は前売料金での入場が可能に!!
【チケット取扱店舗】
Don't Find Shop 福岡市中央区大名1-8-42-4F 092-405-0809 https://www.oilworks-store.com/
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DARAHA BEATS 福岡市中央区天神3-6-23-203 092-406-5390 https://darahabeats.com/
TICRO MARKET 福岡市中央区大名1-15-30-203 092-725-5424 https://www.ticro.com/
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