「AY」と一致するもの

interview with 5lack - ele-king

たまにゃいいよな
どこか旅に出て
いまの自分を忘れて逃げるのも
東京は奪い合いさ、だいたい
パラサイトが理由をつけて徘徊
さよなら、fake friendsにバイバイ
本物ならまたどこかで会いたい
"早朝の戦士"(2013)

 先日福岡市を訪れて僕がもっとも驚いたのは、東京圏からの避難民の多さだった。「東京圏から福岡市への転入が急増 15年ぶり、震災避難が影響か」という記事は、2011年の東京圏から福岡市への転入者が前年比で31.5%増加し、1万3861人に上ったと報告している。その後も避難民は増え続けているようだ。
 福岡の友人夫婦は、彼らのまわりだけでも、震災以降(正確には、福島第一原子力発電所の事故が引き起こした放射能拡散があきらかになって以降)の本州からの避難民が30人はいると語った。さらに彼らの人脈をたどり範囲を拡大すれば、1000人は下らないのではないか、ということだった。最初は耳を疑ったが、実際に僕も福岡でたくさんの避難民と出会った。小さい子供連れの家族やカップル、ひとりで移住してきた若い女性らと話した。ラッパーや音楽家の移住者にも会った。福岡に居を移した友人は博多弁を巧みに使いこなし、繁華街の外れにあるアート・スペースのキーパーソンになっていた。彼らは新たな生活を営みはじめたばかりだったが、彼ら避難民と地元民の交流が町に新鮮な空気を送り込んでいるように感じられた。福岡は避難都市として、未来への静かな躍動をはじめていたのだ。

E王
5lack×Olive Oil - 50
高田音楽制作事務所 x OILWORKS Rec.

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 東京のダウンタウン・板橋から登場したスラックが最新作『5 0』を東京と福岡を行き来しながら、福岡在住のビートメイカー、オリーヴ・オイルとともに作り上げたというのは、それゆえに実に興味深い。制作は2012年におこなわれている。  
 スラックが2009年に放った『My Space』と『Whalabout』という日本語ラップの2枚のクラシック・アルバムは、東京でしか生まれ得ないポップ・ミュージックだった。多くの人びとが、シビアな巨大都市の喧騒のなかを颯爽と行き抜く20代前半の青年のふてぶてしく、屈託のないことばと音に魅了されている。そして、シック・チームのアルバムを含むいくつかの作品を発表したのち、この若きラッパー/トラックメイカーは、日の丸を大胆にジャケットのアートワークに用いた『この島の上で』(2011年)のなかで、震災以降の東京の緊迫と混乱をなかば力技でねじ伏せようとしているかに見えた。逃げ場のない切迫した感情がたたきつけられている作品だ。その後、センチメンタリズムの極みとも言うべき『』(2012年)を経て、最新作『5 0』に至っている。

 すべてのビートをオリーヴ・オイルに託した『5 0』が、スラックのキャリアにおいて特別なのは、東京にこだわっているかに思えたスラックが移動を創造の原動力にしている点にある。『5 0』は福岡に遊んだスラックの旅の記録であり、旅を通じてアーティストとしての新たな展開の契機をつかんだことに、この作品の可能性と面白さがある。移動が今後、日本の音楽の重要な主題になる予感さえする。東京への厳しい言葉があり、福岡への愛がある。
 僕が、はっきりとスラックの「変化」を意識したのは、2012年9月28日に渋谷のクラブ〈エイジア〉でおこなわれた〈ブラック・スモーカー〉の主催するパーティ〈エル・ニーニョ〉における鬼気迫るパフォーマンスだった。実兄のパンピーとガッパー(我破)、スラックから成るヒップホップ・グループ、PSGのライヴだった。スラックはパンピーをバックDJにソロ曲を披露した。彼は初期の名曲のリリックを、フロアにいるオーディエンスを真っ直ぐに見据え、毅然とした態度で攻撃的に吐き出した。オーディエンスに背を向け、気だるそうにラップする、聞き分けのない子供のようなデビュー当初のスラックの姿はそこにはなかった。オリーヴ・オイルと制作を進めていることを知ったのもそのときだった。

 インタヴューは、僕が福岡を訪れる前におこなっている。大量の缶ビールを両手いっぱいに抱え、取材場所の会議室に乱入してきた野田努の襲撃によって、ゆるやかな離陸は妨害され、墜落寸前のスリリングな飛行がくり広げられることとなったが、スラックは言葉を選びながら4年前のデビューから現在に至る軌跡について大いに語ってくれた。スラックのひさびさの対面ロング・インタヴューをお送りしよう。


なんでもいいってことになったら、死んでるのと変わらないから。だからこそ、ヒマを潰す。自由を一周したら責任が生まれて、社会の仕組みが見えてきた。それを理解しないで社会のことをやっててもダメだから、ちゃんとこなして文句言おうと思ってますね。

対面インタヴューはひさびさですか?

スラック:ひさびさですね。シック・チームで雑誌の取材とか受けましたけど。

僕がスラックくんにインタヴューさせてもらったのが、2009年末なので、約3年前なんです。セカンドの『Whalabout』を出したあとですね。

スラック:3年前ですか。早いっすね。

早いですよね。この3年間は個人的に激動だったんじゃないですか。作品もたくさん出してましたし。

スラック:たしかに。

野田:超若かったよね。

いまと雰囲気がぜんぜん違う(笑)。

スラック:そうですよね。22歳と25歳じゃぜんぜん違う。

そうか、25歳になったんですね。

スラック:ってことは次のインタヴューは30くらいかな。

ハハハ。

スラック:もう子供みたいにはしてられないですよね。

スラック(s.l.a.c.k.)って呼べばいいのか、娯楽(5lack)って呼べばいいのか、どっちですか?

スラック:あれでいちおうスラックなんですよね。

5がSと読めるということで、スラックと。

スラック:はい。まあ、名前なんかなんでもいいや、みたいな。オフィシャル感みたいなのをはめこもうとすると大変なんですけど、勝手に自分のあだ名を変え続けてる友達とかいたじゃないですか。

なるほどね。そうゆうノリだ。

野田:(『5 0』のCDをみながら)ああ、オリーヴ・オイルといっしょにやったんだ!

スラック:そうです。

野田:これは聴きたいなあ。オリーヴ・オイルといっしょにやってるってとこがいいと思うね。

スラック:めっちゃ気が合って。

このアルバムの制作で福岡にちょくちょく行ってましたもんね。

スラック:はい。最近はオリーヴさんとK・ボムさんと仲良いです。

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オレがラップする「適当」を、気を抜いてとか楽天的にとか、ポジティブに受けとられれば良いですけど、責任のない投げやりな意味として受けとるのは勘違いかなって。

僕が今回インタヴューさせてもらおうと思ったきっかけは、去年の9月28日の〈エル・ ニーニョ〉のスラックくんのパフォーマンスに感動したからだったんです。PSGのライヴでしたね。

スラック:はいはいはい、あの日、やりましたね。

これまで感じたことのない鬼気迫るオーラを感じて。

スラック:オレがですか?

うん。「適当」っていう言葉は当初は日本のラップ・シーンに対する牽制球みたいな脱力の言葉だったと思うんですね。もう少し気を抜いてリラックスしてやろうよ、みたいな。

スラック:はいはいはい。

それが、より広くに訴えかける言葉になってたな、と思って。

スラック:漢字で書く「適当」の、いちばん適して当たるっていう意味に当てはまっていったというか。要するに、良い塩梅ということです。だから、いいかげんっていう意味の適当じゃなくて、ほんとの適当になった。まあ、でも、最初からそういう意味だったと思うんですけど、時代に合わせるといまみたいな意味になっちゃうんですかね。ちょっと前だったら、もうちょっとゆるくて良いんじゃんみたいな意味だったと思う。

自分でも言葉のニュアンスが変わった実感はあるんですか?

スラック:オレがラップする「適当」を、気を抜いてとか楽天的にとか、ポジティブに受けとられれば良いですけど、責任のない投げやりな意味として受けとるのは勘違いかなって。

なるほど。

スラック:あの日のライヴは良かったっすね。

自分としても良いライヴだった?

スラック:そうそうそう。

どこらへんが?

スラック:楽しみまくりました。アガり過ぎて、終わってからも意味わかんなかった。

さらに言うと、スラックくんにとっても東日本大震災はかなりインパクトがあったのかなって思いましたね。スラックくんのライヴを震災後も東京で何度か観てそう感じたし、『この島の上で』のようなシリアスな作品も出したじゃないですか。実際、東京はシリアスになって、それはますます進行してると思うし、そういう緊迫した状況に対して、あの日のライヴの「適当」って言葉が鋭いツッコミになってるなって感じたんですよ。

スラック:いまやるとたしかに地震前とは違いますね。

野田:『この島の上で』を出すことに迷いはなかったの?

スラック:えっと......

野田:なんて真面目な人間なんだろう、って思ったんだけど。

スラック:そう言われますね。「真面目過ぎだよ」って。でも、自然に出しましたね。かなり混乱はしましたね。

混乱というのは、『この島の上で』を出すことについて? それとも東京で生きていくことに?

スラック:人の目はぜんぜん意識してなかったですね。たまたまああいう曲調の音楽が作りたかっただけだと思うんですよ。そこに自分の精神が自然にリンクした。自分が真面目になったイメージもなかったんですよ。

野田:わりと無我夢中で作っちゃった感じなの?

スラック:そうっすね。でも最近まで、「元々自分が音楽をどういう精神でやってたんだっけ?」ってずっと悩んでたような気がしますね。

野田:ぶっちゃけ、日の丸まで使ってるわけじゃない? 「右翼じゃないか」って受け取り方をされる可能性があるわけじゃない。

スラック:あの頃は、愛国心というか、「自分は日本人だ」みたいな意識が強くなってたんです。

『この島の上で』のラストの"逆境"はストレートに愛国心をラップした曲だよね。

スラック:なんて言ったらいいんですかね。あれはある意味ファッションですね。日本人がいまああいう音楽を残さないでどうするっていう気持ちがあった。歴史的に考えて、日本の音楽のチャンスだった思うんです。

野田:よく言われるように、国粋主義的な愛国心もあれば、土着的な、たとえば二木みたいに定食屋が好きだっていう愛国心もあるわけじゃない?

ナショナリズムとパトリオティズムの違いですよね。

野田:愛国って言葉はそれだけ幅が広い。いまの話を聞くと、あれだけ時代が激しく動いたわけだから、記録を残したかったっていう感じなの?

スラック:うーん、いろんな気持ちが同時にありました。いま上手くまとまりませんけど、全体的に描きたかったのは日本でしたね。

僕はタイトルの付け方が面白いと思ったんですよ。「この国」って付けないで、「この島」と付けたところに批評性を感じた。その言葉の違いは大きいと思う。

スラック:そうっすね。とりあえず、日本人がいまこういうことやってるぜっていうことを主張したかった。だから、音楽のスタイルも日本っぽい音を使いました。

国もそうだけど、震災以降、「東京」もスラックくんの大きなテーマになった気がしました。どうですか?

スラック:そうっすね。いろんな街に行って、東京って形がない街だなって思ったんですよ。

今回のアルバムにも東京に対する愛憎が滲み出ているじゃないですか。東京を客観的に見る視点があるじゃないですか。

野田:でも、"愛しの福岡"って曲もあるよ。

それは東京から離れて作ったからでしょ。

スラック:けっこう東京は嫌いではありますね、いま。

野田:おお。

スラック:嫌いっていうか、他の街に行くと、自分が実は騙されてんじゃないか、みたいに思うんです。

東京に住んでいてそう感じる?

スラック:はい。東京は「パラサイティスティック」ですね。

「パラサイトが理由をつけて徘徊」("早朝の戦士")っていうリリックがありましたね。ここで言うパラサイトってどういうことなの?

スラック:自分で生み出す感じじゃないということですね。

たとえば、誰かに乗っかってお金を儲けるとか。

スラック:そうですね。

もう少し具体的に言うと?

スラック:言い辛いんですけど。

他人をディスらなくてもいいので(笑)。

スラック:そうっすね。多くの人が自分発祥のものじゃないことをやっている気がするんです。

それはたとえば、日本にオリジナリティのある音楽のスタイルが少ないと感じる不満にも通ずる?

スラック:それもそうですし、市場とかを考えても......、うーん、何か落ち着か なくなってきた......

野田さんがいきなりディープな話題に行くからですよ! もうちょっとじっくり話そうと思ってたのに(笑)。

野田:そんなディープかねぇ?

ディープでしょう。

スラック:いや、ぜんぜん大丈夫です。

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人の目はぜんぜん意識してなかったですね。たまたまああいう曲調の音楽が作りたかっただけだと思うんですよ。そこに自分の精神が自然にリンクした。自分が真面目になったイメージもなかったんですよ。

ちょっと仕切り直しましょう。まず、今回のアルバムについて訊かせてください。オリーヴ・オイルといっしょにほぼ全編福岡で作りましたよね。作品を聴いて、東京を離れて感じたり、考えたことが反映されてるんだろうなって思ったんです。

スラック:そうですね。普通に落ちちゃうぐらい、東京にいたくなくなりましたね。

去年、それこそ〈エル・ニーニョ〉で会ったときに、「東京、離れるかもしれませんよ」って思わせぶりな言い方してましたもんね。

スラック:ハハハ。

野田:東京生まれ東京育ちじゃない。でも最近は、東京村みたいにもなってきてない? 「スラック以降」、とくにそういう感じがするんだけど。

スラック:だから、オレみたいな位置の人がいっぱい出てくればいいなって思う。なんかこうサービス業になってるんですよ。

野田:でも、それは東京だけに限らないんじゃない?

スラック:でも、スピード感があるからこそ、スピードが遅いことに対して文句を言うんですよね。

情報の速さに慣れてるんだよね。便利さに慣れてるっていうことですよね。

スラック:それもそうですし。

野田:それは東京じゃなくて、ネットじゃない?

スラック:ネットはありますね。ネットも携帯も超アブナイと思う。いつか電気と人間がひっくり返るときがくる気がしますね。

震災が起きた直後に"But This is Way / S.l.a.c.k. TAMU PUNPEE 仙人掌"をYouTubeにアップしましたよね。で、3月20日に〈ドミューン〉の特番に出てくれた。そのときに「情報被曝」っていう言葉を使っていて、それがすごく印象に残ってる。『この島の上で』の1曲目"Bring da Fire"でもその言葉を使ってたよね。どういうところからあの言葉が出てきたの?

スラック:起きなくていい争いが起きる可能性が何百倍にも増えてると思うんです。昔は恋人ともすごい距離歩かなかったら会えなかったのに、電話ができる回数分ケンカが増えて別れる率が上がってるとか(笑)。たとえば、そういうくだらないことが超増えてる。だから、もうちょっとシンプルに人間になって、五感を使っていきたい。

野田:フリーでダウンロードして音楽聴く人間は、意外と文句ばっか言うんだよ。サービス業じゃないんだっていうのにね。

スラック:料理人とかもそうですけど、客から文句があったら、「帰れ!」って言えばいいんじゃないかなって。それで潰れるのは店なわけだし。

この数年間でスラックくんに対する周りの見方も大きく変化したと思うんですよ。いろいろ期待もされただろうし、プレッシャーを感じているんじゃないかなって。

スラック:いや、それはないですね。みんなは新しく出てくるアーティストに盛り上がってるけど、オレはまるでよくわからないアーティストばっかりなんで。

ハハハ。つまり、スラックくんが評価できるアーティストが少ないってことですか?

スラック:日本のリスナーのハードルがそんなに高くないんじゃないかって思いますね。音楽を聴いてんのかな?って。

それに似たようなことを3年前のインタヴューでも言ってたね。「無闇にタレント化したり、ブログを頻繁に書いてみたり、そういうのが目立ってて。なんでそこを頑張ってんだよ」って(笑)。

スラック:音楽のスタイルや実力で出てきたヤツもそっちに流されてる気がする。

インターネットやSNSの弊害なのかもしれないですよね。SNSで発信したり、表現したりしないといけないという強迫観念に縛られているのかもしれない。ただ、それは音楽産業の構造の問題でもあると思う。経済的に厳しいから、ミュージシャンが、プロデューサーやプロモーターの役割も担わなくてはいけない現状があるから。

スラック:というか、ネットとカメラを使うDIYみたいのが主流になって、誰でもプロっぽく作れるから、リスナーが本物を見抜けないんじゃないすかね。まあ、どちらにしろ、プレッシャーの感じようがない。

自分に脅威を感じさせる存在がいない、と。

スラック:数人しかいないですね。

野田:本人を目の前にして言うのもなんだけど、スラックはぶっちゃけ、下手なメジャーよりも売れちゃったと思うんだよね。自分が売れて、周りからの反応ではなく、自分自身に対するプレッシャーはなかったの?

スラック:うーん。

野田:そこは動じなかった?

スラック:動じませんでしたね。だから、『この島の上で』の話に戻ると、「こういうアルバムもオレは出すんだよ」くらいでの気持ちでしたね。

野田:ハハハハハッ。

スラック:「このデザイン、ハンパなくない?」、みたいな。

野田:なるほどね。『My Space』と同じような気持ちで作ったということだ。

スラック:ある意味ではそうです。自然に真面目にやったんです。

『この島の上で』のような誤解をされかねない作品を出して、その評価や反響に賛否あっても、ぶれることなくいままで通り音楽を続けていく自信があったと。

スラック:そうっすね。でも、無意識ですね。それと、Ces2と出した『All in a daze work』を『この島の上で』のあとに出したんですけど、『この島の上で』の前に完成してましたね。

スラックくんの作品を昨日一晩で聴き直したんですよ。『情』がとくに象徴的だけど、ある時期から、泣きの表現、センチメンタルな表現に力を入れはじめた印象を受けたんですよ。

スラック:『情』では景色を描きたくて、映画を作るようなイメージで作ったんです。日本人の誰もが共感できるものっていうか。

叙情や情緒になにかを託していると感じたんですよね。

野田:サンプリングのアレもあるだろうけど、フリーダウンロードで配信したのはなぜなの?

スラック:あれはなんででしたっけ?

マネージャーF:『情』は、いままでお客さんがCDを買ってくれてたり、ライヴも観てくれたりすることへのお返しっていう意味があったんでしょ。

スラック:そうだ、そうだ。まあ、ネタのこともあるけど、かなりの赤字になるのが決まってたんですけど、正規の作品ばりにガッツリ作ったんですよ。

マスタリングもばっちりやってますよね。

スラック:そうです。行動で示したかったですね。

野田:律儀な男だね(笑)。

自分のファンに対して、愛があるんですね。

スラック:そうっすね。いや、でもファンに対して、愛はたぶんないです。

えぇぇー(笑)。ファンががっかりするよ。

スラック:でもやっぱり両想いは難しいですよ。オレのことを理解しきれるわけがないし。

厳しいね。

野田:いやいや、そりゃそうでしょ。

スラック:もちろん感謝はしてますけど。

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いろんな街に行って、東京って形がない街だなって思ったんですよ。けっこう東京は嫌いではありますね、いま。嫌いっていうか、他の街に行くと、自分が実は騙されてんじゃないか、みたいに思うんです。

ここまでの話を聞いて思うのは、スラックくんはひとりひとりの音楽リスナーに音楽を聴く耳を鍛えてほしい、育ててほしいという意識があるんだなって思いましたね。

スラック:それもありますね。

野田:あるんだ!? オレは、どっちかって言ったら、スラックはまったく頓着しないタイプなのかなって思ってた。

いや、あるんじゃないですか。

スラック:真面目とふざけが同時にあって、どうでもいいっちゃどうでもいいんですよね。でも、なんでもいいってことになったら、死んでるのと変わらないから。だからこそ、ヒマを潰す。自由を一周したら責任が生まれて、社会の仕組みが見えてきた。それを理解しないで社会のことをやっててもダメだから、ちゃんとこなして文句言おうと思ってますね。

それは3年前にインタヴューしたときには感じてなかったことなんじゃない。

スラック:感じてませんでしたね、たぶん。

ハハハハハ。22歳でしたもんね。

スラック:そうですね。だから、あのときはもう文句ばっかでしたね。

野田:ヒップホップってアメリカの文化じゃない? 日本人もアメリカ的なものに憧れて、ヒップホップにアプローチしていくところがあるでしょ。スラックはアメリカから押し付けられたアメリカに満足できないということを暗に主張したいのかなって感じたんだけど。

スラック:でも最近、オレはアメリカの自然なヒップホップをやるんじゃなくて、オレらの自然な生活感のあるヒップホップじゃないと無理があると思ってますね。これ、ちょっと話が違いますか?

野田:いやいや、そういうことだよね。あと、必ずしもアメリカが良いわけではないでしょ。日本以上に過酷なところがある社会だからさ。

スラック:そうですよね。

野田:アメリカに憧れる気持ちは、音楽好きのヤツだったら、若い頃は誰にでもあったと思う。でも、海外をまわってから日本をあらためて見直すってこともある。たとえば、幸いなことに、アメリカほどひどい格差社会は日本にはまだないと思うからさ。そういう意味での日本の良さだったらオレは理解できる。

スラック:そうですね。愛国心というか、オレが日本人であることが問題なだけで。

野田:それは思想とかじゃなくて......

スラック:自分のチームを立てるしかないってことですね。

野田:自分の親や町内や地元が好きなようなもんなんだね。しょうがないもん、そこで生まれちゃったんだから。

スラック:そうそう。だから、楽しみたい。日本の道路をアメリカやイギリスの国旗を付けた車が走ってるのを見て、「なんだろう?」、「日本はどこに行ったんだろう?」って思うときがある。「日本にももっと楽しむところがいっぱいあるはずなのに」って。そういう意味で、ファッションって言い方をしたんです。

たとえば、日本文化のどういうところを楽しもうと思ったの?

スラック:ガイジンが面白がる日本を楽しんでみたり。

ガイジンのツボを突く日本ははこういとこなんじゃないか、と。

スラック:ガイジンというか世界に対してですね。それが日本の金になっていくって発想だと思います。

シック・チームは海外のラッパーやトラックメイカーと交流があるし、スラックくんの周りにもいろんな国の友だちがいますよね。そういった人たちとの会話のなかで生まれた発想ですか?

スラック:いや、オレがひとりで走ってましたね。ただ、地震のあと、スケーターの仲良いヤツと話しても、スケボーの世界も海外に対して、「日本人ならどうする?」、「オレらはなにを作る?」って方向に向かっていったらしい。

国を大きく揺るがす大震災や原発事故が起きて、日本人のアイデンティティを問い直す人たちが多かったってことなんですよね。

スラック:多いんじゃないすかね。どうなんすかね?

野田:多かったとは思うけど、K・ボムやオリーヴ・オイルはそういう意味では、ずば抜けた日本人でしょ。言ってしまえば、日本人らしからぬ日本人でもあるじゃない。

スラック:逆にオリジナル、本物はこれだよって。

野田:みんなが思う日本人のパターンに収まりきらない日本人だよ。

スラック:怒られるかもしれないけど、Kさんもオリーヴさんも友だちっぽいんですよね。良い意味で気をつかわないし、怒らしたら恐いんだろうなっていうところが逆に信用につながっている。

K・ボムの凄さは、あの動物的な直感力だと思うんだよね。

スラック:運動神経なんですよね。オリーヴさんも音作りの運動神経がすごい。一気に作って、完成してるんです。速いんですよ。

スラックくんは、K・ボムというかキラー・ボングのアヴァンギャルドな側面についてはどう思う? ある意味で、ヒップホップから逸脱してるじゃないですか。〈エル・ニーニョ〉のときも、PSGのライヴのあとに、メルト・ダウン(キラー・ボング、ジューベー、ババ、オプトロン)の壮絶なライヴがあって、〈ブラック・スモーカー〉は、そういう異色な組み合わせを意図的に楽しんでやってると思うんだよね。

スラック:もちろんKさんには音楽の才能を感じますし、Kさんが違うジャンルの音楽をやっていても理解できる。むしろ、リスナーからは似たようなシーンにいるように見られていても、オレはぜんぜん感じないヤツもいますよ。

そこの違いみたいなものはリスナーやファンにわかってほしい?

スラック:まあ、わかったほうがいいとは思いますけど、半々ですね。理解してほしいっちゃほしいけど、それでみんなが傷つくのはかわいそうっちゃかわいそうですよね。迷いがありますね。だから、日本のシーンってまだぜんぜん形になってないと思います。これから20代以下の若いヤツらがたぶんすごいことになる気がします。

スラックくんの活動を見てると、自分が100%出せるイベントやパーティにしか出演しないというか、けっこうオファーを断ってるじゃないんですか?

スラック:そうですね。みんながどんぐらい受けてるかを知らないけど、たとえばモデルにしろ、嫌いな服は着れないし、完全に自然が良いですね。

安易に手を取り合わなかったり、オファーを断ることで守りたい自分のスタイルや信念はなんなんですかね?

スラック:けっこう生々しい東京の話になってきちゃいそうですね、そうなると(笑)。単純にだるい人間関係とか良くないものとの関係とか、ニセモノやイケてない関係とかが多いですよね。そういうのはあんまり信用してない。

スラックくんの攻撃性みたいなものはそこまで曲に反映されてないですよね。

スラック:そうなんすかね? 意外と出してますよ。

そうか、意外とラップしてるか(笑)。

スラック:次出すやつとかヒドイなあ。

野田:トゲがある?

スラック:そのときの気持ちはもう忘れてる感じですけど、イライラして曲書いて発散しましたね。

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みんなは新しく出てくるアーティストに盛り上がってるけど、オレはまるでよくわからないアーティストばっかりなんで。日本のリスナーのハードルがそんなに高くないんじゃないかって思いますね。音楽を聴いてんのかな?って。

少し話を変えると、3年前にインタヴューさせてもらったときに〈ストーンズ・スロウ〉から出すのが、ひとつの夢でもあるという話をしてましたよね。久保田利伸を例に出したりして、ディアンジェロみたいなブラック・ミュージックを消化して、表現したいと。その当時語ってた理想についてはいまどう考えてます?

スラック:〈ストーンズ・スロウ〉はいまは興味ないですね。オレはいまそっちじゃないですね。オレはただJ・ディラが好きだったんだなって思いますね。

野田:J・ディラのどんなとこが好きだったの? サンプリングをサクサクやる感じ?

スラック:彼のスタイルが、90年代後半以降のヒップホップのスタンダードになったと思うんですよ。

最近、トライブの『ビーツ、ライムズ&ライフ~ア・トライブ・コールド・クエストの旅 ~』って映画が上映されてて、すごい面白いんだけど、あの映画を観て、あらためてトライブからJ・ディラの流れがヒップホップに与えたインパクトのでかさを実感したな。

スラック:セレブっぽいっていうか。音楽としてヒップホップの人が追いつけないところに行こうとしはじめると、結果的にモデルがいっぱいいるようなオシャレな音楽になっていく。そうやってブレていく人たちが多いと思う。そうなるとあとに引けなくなるし。

それこそ漠然とした言葉だけど、スラックくんは「黒さ」に対するこだわりが強いのかなって。

スラック:黒さだけじゃないんですよ。自分もアジア人ですし。

野田:白人の音楽で好きなのってなに?

スラック:ラモーンズとかですね。

一同:ハハハハハ。

スラック:なんでも好きですよ。ピクシーズとかカート・コバーンも好きだし。

野田:ラモーンズって、けっこう黒人も好きなんだよね。

スラック:極端にスパニッシュっぽいものとかラテンっぽいものも好きです。

いま、スラックくんが追ってる音楽はなんですか?

スラック:ディプセットとかジュエルズ・サンタナとか聴いてますね。中途半端に懐かしい、あの時代のヒップホップにすごい癒されてて。いま聴くと、オレが好きなヤツらって、ここらへんの音の影響を受けてんのかなーって思ったりして。

シック・チームでもひと昔前に日本で人気のあったアメリカのラッパーをフィーチャーしてましたよね? えー、誰でしたっけ?

マネージャーF:エヴィデンス。

そうそう、エヴィデンス! あのタイミングでエヴィデンスといっしょにやったことに意表を突かれましたね。

スラック:ダイレイテッド・ピープルズですね。

そう、ダイレイテッド・ピープルズ! 日本でもコアなリスナーの間で人気あったじゃないですか。面白い試みだなと思いましたね。

スラック:だから、「これはもしかして日本人がいまちょっと来てるんじゃねぇのか」って思った。でも、いままでの日本の打ち出し方ってイケテないのが多いから、そこは慎重にかっこよくやりたいんですよ。

野田:ダイレイテッド・ピープルズに、90年代の『ele-king』でインタヴューしましたよ。

スラック:マジすか?

野田:マジ。当時はパフ・ダディがポップ・スターだったじゃない? ダイレイテッド・ピープルズやエヴィデンスは、そういうものに対するカウンターとしてあったよね。

スラック:オレの周りは年齢層も30歳ぐらいの人が多くて、ナインティーズ推し派が多いんですけど、オレはネプチューンズとかも好きなんですよ。オレはサウスが流行ってた時代に育ってるけど、その中でナインティーズっぽいことをやってた。だから、「ファレルとかも良くない?」って思う。

日本では、90年代ヒップホップとサウス・ヒップホップの溝はけっこう深いしね。

スラック:深いし、ナインティーズ推し派の人たちはやっぱ固いっつーかコアですよね。あと、オレの世代でもまだやっぱ上下関係が残ってて、オレはそれを否定して少数派になっちゃった。だから、もうちょっとやりやすい環境を求めて、いま動き回ってますね。

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動じませんでしたね。だから、『この島の上で』の話に戻ると、「こういうアルバムもオレは出すんだよ」くらいでの気持ちでしたね。「このデザイン、ハンパなくない?」、みたいな。

良い音楽を作るためにはしがらみを取っ払わないといけないときもあるよね。

野田:いや、良い音楽を作るためには独善的でなければならないときもあるんだよ。ジェイムズ・ブラウンみたいに、「おい! ベース、遅れてるぞ。罰金だ!」って言うようなヤツがいないとダメなときもある。

スラック:たしかに言えてますね。だから、人と上手くやるのって難しいですね。とくに日本のお国柄とか日本人の精神もそこにリンクしてくるから。日本はいますごい絶望的だと思うし、そのなかでポジティブに楽しんで生きていけるヤツがある意味勝ち組だと思う。社会的に勝ち組と思ってるヤツらもいきなり明日にはドン底になって動揺する可能性だってある。親父とも最近、そういう日本のことを話したりするようになって。

野田:お父さん、すごい音楽ファンなわけでしょ?

スラック:そうですね。

野田:スラックは、『My Space』と『Whalabout』を出したときにメジャーからも声をかけられたと思うのね。「うちで出さない?」って。

スラック:はいはい。

野田:それを全部断ったわけじゃん。断って自分のレーベル、高田......、なんだっけ?

スラック:高田音楽制作事務所(笑)。

野田:でも、いわゆるアンダーグラウンドやマイナーな世界に甘んじてるわけでもないじゃない。

スラック:はい。

野田:だから、「第三の道」を探してるんだろうなって思う。アメリカの第三のシーンみたいなものが、ダイレイテッド・ピープルズとかなんじゃない。

あと、レーベルで言うと、〈デフ・ジャックス〉とかね。

野田:そう、〈デフ・ジャックス〉とかまさにね。

〈ストーンズ・スロウ〉も精神としては近いでしょうね。

野田:まあそうだね。そのへんの「第三の道」というか、いままでにない可能性に関しては諦めてない?

スラック:うーん、どうですかね。自分の立場が変わって、シーンをもっと良くすることができる位置にきた気はします。元々の人には嫌われたりするかもしれないけど、シーンを自分の色にできる影響力を持った実感もちょっと出たし。やらないことも増えたり、変なことやるようになったり。「第三の道」っていうの探してるかはわからないですけど、元の自分のままでいることはけっこう無理になりましたね。いまの自分の立場になって、昔の自分みたいなヤツが出てくるのを見て、「オレはこんなことしてたんだ」って思うこともある。そういう経験をしてきたから、後輩には良くしようって。そういう変化をもたらすきっかけにはなれるんじゃないかなってたまに思っちゃう。

シーンについて考えてるなー。

スラック:「なんでオレがこんなことしなきゃいけないんだよ!?」って思いながら、「オレがやってんじゃん」みたいな。

ハハハ。

スラック:いまオレが言ったようなことをやる専門のヤツがいっぱいいたらいいのにって思う。でも日本人は、有名なラッパーに「なんとかしてください」ってなっちゃうんですよ。アナーキーくんみたいに気合い入れて自分を通してやり遂げて、曲もちゃんと書くってヤツがもっと存在していいと思う。言い訳ばかりはイヤですね。

野田:日本の文化のネガティブなことを言うとさ、やっぱり湿度感っていうか、ウェット感がある。たぶんそういうところでけっこう惑わされたのかなって思うんだけど。

あと、派閥意識みたいなのも強いですからね。それがまた面白さなんだけど。

野田:日本人がいちばんツイッターを止められないらしいんだけど、なぜ止められないかって言うと、そこで何を言われているか気になって仕方がないというか、人の目を気にしてるからっていうさ、そうらしいよ。

スラック:ああ。

野田:自分が参加しないと気になってしょうがないんだって。二木はとりあえず、そういう人の目を気にしちゃってる感じをファンキーって言葉に集約してなんとか突破しようとしてるわけでしょ。あれだね、スラックは理想が高いんだね。

スラック:理想はたぶん、高いかもしれない。

そういう意味でもスラックくんの存在はすごい重要だと思う。

スラック:あとオレは、カニエやファレルに負ける気で音楽は作ってないすね。

野田:カニエとファレルだったらどっち取る?

スラック:ファレルですね。

野田:あー、オレと同じだなあ。じゃあ、ファレルとカニエの違いはどこ?

スラック:まあ、いちばん簡単に言えば、最初は見た目なんですよ。あと、ファレルは最終的に音が気持ちいいし、器用だし、音楽だけに留まってない。音楽のセンスが違うところに溢れちゃってる。あの人とかもう、究極の楽しみスタイルじゃないですか。チャラい上等じゃないですけど。

野田:それって逆に言うと、実はいちばんずるい。

スラック:ずるいですね。

野田:バットマンの登場人物でいうジョーカーみたいなヤツじゃん。人を笑わせといて、実は殺人鬼っていうようなさ。

すごい喩えだ(笑)。

スラック:ネプチューンズというか、ファレルは作る音で信用得てますよね。それは周りからのディスで止められるものじゃない。

野田:フランク・オーシャンとかはどうなの?

スラック:フランク・オーシャンは好きっすよ。

野田:オッド・フューチャーは?

スラック:オッド・フューチャーも最終的に好きになりましたね。

野田:あのへんはファレル・チルドレンじゃない。

スラック:そうですね。メインストリームの良いものを真似して、でも惑わされずに、あの世代のアングラ感やコアな感じを出してますよね。だから、信用できる。

考えてみれば、フランク・オーシャンも「第三の道」を行ってるアーティストですよね。

野田:そうだね。

スラック:彼はなんか人生にいろいろありそうな音してますよね。

野田:そうそう。で、オッド・フューチャーにレズビアンがひとりいる。

たとえば、日本のヒップホップで「第三の道」って言ったら、やっぱりザ・ブルー・ハーブじゃない。

スラック:よく聴いてたし、オリジナルだし、彼らのはじまりを思うとすごいと思いますね。「ガイジンもなにこれ?」って思うような、日本っぽいことをやって、それをやり通してるし。

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日本はいますごい絶望的だと思うし、そのなかでポジティヴに楽しんで生きていけるヤツがある意味勝ち組だと思う。社会的に勝ち組と思ってるヤツらもいきなり明日にはドン底になって動揺する可能性だってある。親父とも最近、そういう日本のことを話したりするようになって。

スラックくんの言う「日本っぽい」っていうのがなにを意味するのかもう少し訊きたいな。たとえば、『この島の上で』の"まとまらない街"や"新しい力"では、日本の伝統音楽というか邦楽をサンプリングしたようなトラックを作ってるでしょ。

スラック:たとえば、久石譲の音楽をCMや映画で聴いたりして、オレらだけが本当の意味で楽しめることに、みんな気づいてると思うんですよ。しかも、それでかっこ良ければ、ばりばりガイジンに対しても自信満々で行けるって。

「日本っぽい」オリジナルな音楽を作るというのは、いまでもスラックくんのひとつのテーマ?

スラック:ああ、でも、もう、ぶっちゃけいまはゆるいです。いろいろやってみて、疲れてきて、いまはもういいや、みたいな。地震のあと、坊さんの話を勉強したり、善について考えたりもして。でも、オレには無理だなって。全部を動かすスタミナはオレにはなかった。だから、いまはそっちは放置プレイです。

野田:でも、日本っていうのはAKBとか、オレはよく知らないけど、アニメとかさ、そういうのもひっくるめて日本だからさ。

スラック:そうすね。

野田:そういう意味で言うと、いまスラックが言ってる日本ってすごい偏った日本だと思うんだよね。

スラック:だから、オレはオレで、自分の好みをもっと広めたい。

野田:スラックの同世代の他の子はやっぱりアニメを観てたりしたでしょ。

スラック:そうですね。

野田:携帯小説を読んだりとかさ(笑)。

スラック:オレの世代はめっちゃ携帯世代ですね。でも、若いヤツらって意外と真面目で、時代は大人たちの裏で変わっていると思う。

野田:オレもなんか、スラックより下の世代と話が合うんだよね。

それぐらいの世代ってフランクだよね。

スラック:タメ語っぽいヤツは多いですね。

野田:オレなんかスラック以上に先輩後輩の上下関係のなかで育ってるから。

スラック:若いヤツらはオレの立場とかどうでもよくて、みんなはっきり言ってくるんで。「それ違くない?」って。それがけっこう当たってたりして、自分の邪念に気づけるし、面白いすね。だから、20歳未満の世代にも期待してますね。

野田:そのぐらいになると、「インターネットは単なる道具っしょ」っていう距離感なのね。

スラック:たしかに。

野田:さっぱりしているよね。

スラック:いまの若いヤツに対しては「プライドなんて育てない方がいいよ」って言いたいっすね。東京はダメだし、警察はギャングだし。もうちょっと賢い、本当に強い選択をしないと。暴力は損することも多いから。うまくなかに入り込んで壊すような、風穴を開けるようにならないとダメだと思う。ダメっていうか、そうしないと良くはならない。

東京の状況を良くしたいって気持ちもあるっていうことなのかな。

スラック:ありますね。最近、けっこう自分が良くねぇ時代にいるんじゃないかって気づき出して。オレらの親世代とかはちょうどバブルの子供世代だったりして、地震ではじめて動揺した世代だと思う。

野田:お父さんは何歳なの?

スラック:50中盤ぐらいなんで。

野田:えー、じゃあ、ぜんぜんバブルじゃな......い......いや、バブルか。

スラック:バブルの若者で、戦争にも当たってないし、なんにも触れてなくて、めっちゃ平和ボケ世代なんですよ。

野田:運がいいんだよ。

ある意味羨ましい。

スラック:そうそうそう。だから、その子供世代とかがまさにオレらとかで、いま大変な不景気に立たされてる。オレら世代はけっこうクソ......、クソっていうか、自由を尊重する気持ちだけは育って、でも手に入れる腕もないし、趣味もなけりゃ、ほんとにみじめだなって思ったりもします。好きなことがないとかは、大変だろうなって思いますね。

いやあ、すごいおもしろいインタヴューだけど、野田さんの襲撃によって話がとっ散らかったなあ。......あれ、野田さん、どこ行くんですか?

野田:トイレですよ!!

一同:ダハハハハハッ。

『5 0』のことも訊きたくて。いちばん最後の曲、"AMADEVIL"ってなんて読めばいいんですか?

スラック:これはオリーヴさんがつけましたね。

意味はわかります?

スラック:いや。

ラストのこの曲の音が途中で消えて、そのあとにまた曲がはじまるでしょ。僕はその曲がアルバムのなかでベストだと思ったんですよね。

スラック:"BED DREAMING"だ。なんかベッドの上から一歩も出ないような日に書いた曲なんですよね。

福岡と東京を行ったり来たりしながら録音したわけでしょ。

スラック:行ったり来たりして、あっちで書いて、家で録ったり、それを送ったりしてましたね。去年の夏からですね。

そもそもどうしてオリーヴ・オイルとやろうと思ったんですか?

スラック:アロハ・シャツ着て過ごしたいなって。東京を置いといて。で、金にしちゃえって。

なるほどー。

スラック:長いラップ人生、なにをしちゃいけないもクソもねぇだろと思って、いろいろやろうかなって。あと、音を違うフィールドの人に任せたかったんですよね。これまで全部自分で仕切ってたから、任せれるアーティストとあんまり出会ってなかったんで。

2曲目に"愛しの福岡"ってあるじゃないですか。福岡の東京にはない良さ、面白さってどういうところですか?

スラック:人間ぽいすね。なんかこう、厳しいところと、緩いところがあって、日本人ぽい。また日本人出てきちゃった。

タハハハハッ。

野田:また口挟ませてもらってもうしわけないけど、福岡は日本の歴史において重要なところだよね。やっぱオリーヴ・オイルとやったっていうのが今回すごく面白いと思ったのね。オリーヴ・オイルもK・ボムもオレはリスペクトしてるトラックメイカーだけど、2人とも311があって、いわゆる感情的に涙の方向に行かなかった人たちじゃない。だから、そういう意味で言うと、『情』の叙情感とぜんぜん違うものじゃない。

スラック:たしかにそうです。

野田:『情』のあとだからさ、涙の路線の延長っていうのもあったわけじゃない。

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オレら世代はけっこうクソ......、クソっていうか、自由を尊重する気持ちだけは育って、でも手に入れる腕もないし、趣味もなけりゃ、ほんとにみじめだなって思ったりもします。好きなことがないとかは、大変だろうなって思いますね。

E王
5lack×Olive Oil - 50
高田音楽制作事務所 x OILWORKS Rec.

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今回のオリーヴ・オイルとのアルバムには一貫したテーマは最初からありました?

スラック:まず、オリーヴさんとの組み合わせがオレは最高だったんですよね。それと個人的には旅ですね。

たしかに旅はテーマだね。

スラック:東京側にも福岡みたいな街があるっていうのを伝えたかった。東京の身内に「おまえらもちゃんとやれよ」みたいなことも説明して、身内のことをディスすることによって、みんなの環境にもリンクすると思った。

たしかに、さりげなくディスってますよね。

スラック:そうですね。けっこう身内のことばっかり否定してて、オレもカッコ悪いかもしれないけど、ただ身内だからとりあえず「カッコいい」ってなってる状態も変だと思うから。そこで調子に乗っちゃってる友だちも危ないとオレは思うから。

いや、でも、それは勇気あるディスだと思いますよ。やっぱり福岡と東京を行き来したり、旅をしながら、東京や東京にいる仲間や友だちを客観的に見たところもあるんですかね。

スラック:そうですね。もちろんどこの街に行っても同じ現状があるけど。福岡にはオリーヴ・オイルっていう素晴らしくスジの通った人がいて、そこでKさんとも出会うことができた。たまたま福岡って街も良くて、あったかくて。

へぇぇ。

スラック:運ちゃんがまずみんなめっちゃ話しかけてきて。

野田:ガラ悪いからねー。九州のタクシー。

スラック:東京って街は最先端っていうよりは日本の実験室ですよね。東京が犠牲になって、周りを豊かにしてる気がしました。

地方が犠牲になって、東京を豊かにしてるって見方もあると思うけどね。原発なんてまさにそうだし。ただ、スラックくんの地方の見方を聞いていると、生粋の東京人なんだなーって思う。悪い意味じゃなくてね。

スラック:そうですね。たとえば、揉め事があったとして、他の地域だったらその場でケリがつくんじゃないかってことも、東京は引っ張って、引っ張って、引っ張って、みたいな。音楽のやり取りでも問題が起きると、じゃあ、本人同士で話し合って、決別するならして、仲良くするならすればってところまでが複雑。すごい街だなって思いますね。

どうなんだろう、大阪にしても、京都にしても、物理的に街が小さいっていうのもありますよね。人口も少ないし。たとえば、音楽シーンだったら、ヒップホップとテクノの人がすぐつながったりするし、シーンっていうより街で人と人がつながってる感じもあるし。人間の距離感が東京より近いんですよね。

スラック:ああ。

札幌に行ってもオレ、そう感じましたよ。ともあれ、板橋の地元で音楽をやりはじめたころと、付き合いが広がりはじめてからでは、なにかしらのギャップを感じてるってことなんだ。

スラック:オレは家で勝手に音楽をやりはじめただけなのに、そこを忘れちゃうんですよね、都心に出てやってると。しかもそこが重要なのに。なんか人がどうこうとか、責任が出てきて。地元帰ってくると、「いや違う。そうじゃない」ってなるんです。都心はシンプルじゃなさすぎて。

「鳴るぜ携帯/今夜は出れない/社会人としてオレはあり得ない/理由は言えない」("BED DREAMING")ってラップもしてますもんね。

野田:ハハハハハッ。

スラック:そう、電話の束縛も超苦手で。

このインタヴューの日程決めるやり取りも超スローでしたもんね。

スラック:電話出なかったりとかで、人と揉めたりしたんですよ。

たしかに揉めると思う(笑)。

スラック:そうなんすよね。揉めたり、怒られたりしましたね。でも、オレはそういうスタイルにマインドはないんですよ。彼女だってキレてこないのにって。

「社会人として失格」とか「だらしない」って言い方されたら終わってしまう話なんだろうけど、スラックくんには強い拒絶の意思を感じますね。そこに信念がある。

野田:信念あると思うね(笑)。

たぶん「第三の道」っていうのはそういうところからはじまると思うんだよね。社会的なしがらみから自由にやりたいわけでしょ。

スラック:そうですね。だから、そこは逆にわからせたいですよね。悪気はないし、ちゃんとやってる人に敬意もあるんです。ただ、こういうやり取りのなかでは敬意を表せないって思うときがあるんです。オレは自分のペースを保ってやりたいし、ストレスはやっぱりダメですね。

野田:まあ、アメリカはすごい孤立しやすい社会で、たとえばJ・ディラみたいな人でさえも、放っとけば孤立しちゃう。日本って逆に言うと孤立し辛い社会でしょ。

スラック:そうですよね。

放っといてくれない。

野田:「オレは独りになりたいんだ」って言っても。

スラック:それはそれで幸せなんだなって思いますけどね。

野田:そうだよ。

スラック:でも、まあ、そこも塩梅ですよね。そういう意味でも上手くできるヤツといるようにしたい。一般的には難しいことなんだと思いますけど。いまは、そういうこと考えまくった上で、生きてるときは気を抜いてますね。

野田:ところで、311前に愛をテーマにした『我時想う愛』を出したじゃない? あれはなんでだったの? しかも、ジャケなしで、いわゆる透明プラスティックのさ。

スラック:あれ、裏にジャケがあったんですよ。そういう意味でも、みんな、固定概念に縛られ過ぎだよって。

野田:ダハハハハ。

虎の絵があったよね。

スラック:あれがレーベル・ロゴで、黄色い人種ってことですね。

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けっこう身内のことばっかり否定してて、オレもカッコ悪いかもしれないけど、ただ身内だからとりあえず「カッコいい」ってなってる状態も変だと思うから。そこで調子に乗っちゃってる友だちも危ないとオレは思うから。

それで思い出したけど、あのアルバムに"I Can Take it(Bitchになった気分だぜ)"って曲があったでしょ。スラックくんが男と女の一人二役やるじゃない。

スラック:はいはいはいはい。ビッチ本人と説明にまわってる自分という設定でやったやつですね。

そうそうそう。ビッチになりきって女の子の気持ちをラップして、フックでスラックくん本人が出てきて、「オレはそうとは思わない」って優しく語りかけるでしょ。歌謡曲だと、男が女の恋心や気持ちを歌うパターンがあったりするけど、ヒップホップで男が女の気持ちをああいう形でラップをするっていうのはなかったことでしょ。あれは革新的な試みだと思った。

スラック:ビッチになった気分だったんですよね。

しかも、ビッチっぽい女の子の心の機微を上手く表現してるんだよね(笑)。

スラック:そうなんですよね。あの曲、いわゆる自称ビッチみたいな娘たちに評判が良くって。

いい話だなあ。

スラック:「わかる~」みたいになっちゃって。

野田:ねぇなぜ、あのときに愛っていうテーマを持ち出したの?

スラック:愛情を感じてたんだと思いますね。いろんなものから。しかもその後、めっちゃ地震とリンクしていったことは、まったく不意だった。

野田:そうだよね。よく覚えてるのが、ちょうどあのアルバムが出て、しばらくして311があって、〈ドミューン〉に出演してくれって頼んだ。それこそ、シミラボ、パンピー、K・ボムが出てくれた。

そう考えると、あのメンツはすごかったなあ。

スラック:そうですね。

野田:あのとき、1曲目で、アルバムの1曲目("But Love")をやったじゃない。

スラック:うんうん。

野田:あのときはすごく力を感じた。

スラック:そうっすね。愛っていうか、愛って言葉自体、たぶんあのときはもう日本化してたんですよね。

野田:ふぅーん。

スラック:愛っていう言葉が、響きとしてもいいだろうって思ったんです。オレ的には『我時想う愛』で一周した感じだったんですよ。あそこで『My Space』くらいに戻ったなって。『我時想う愛』を作ってるときは、「死ぬ気でやってないと後悔するぜ」ってことに仕事柄気づいたんです。そういう哲学は常に考えちゃうタイプなんです。そしたら、地震がたまたま起きて、ほんとに死ぬ気がしたから、あのアルバムと気持ちがリンクしたんじゃないかなって思うんですよ。だから、そうですね、うん、そういう本気で生きる、みたいなタイトルだと思うんですよね。タイトルはちょっと邦楽っぽいですね。東京事変じゃないけど。

野田:アハハハハ。

スラック:ニュアンスで言えば、中島みゆきとかウルフルズとかエレカシとかの言葉に近いのかもしれない。エレカシとか好きっすね。エレカシとかの言葉のニュアンスをラップで使いたかったんですよね。そこに日本人としての自然さ、侍とか忍者とかじゃない、日本人のオレらの自然さを出したかった。

なるほどね。

スラック:ブラック・ミュージックとかソウルで「~オブ・ラブ」って言葉やタイトルがあるじゃないですか。

うんうんうん。

スラック:それを日本で表現したら、ああなった感じです。ソウルのバラードにはバラの絵があったり、そういう時代のソウルのイメージですね。

へぇぇ。

野田:アナログ盤にしなかったのはなぜだったの? 

スラック:たしかに出そうと思ってたんですけど、この島が動いてそれで忘れてましたね。アナログにするっていう話はあったんですよね。いま自分の行動を振り返ってみても、やっぱり地震のあとは熱くなり過ぎたなーって思うんですよね。


大きなベッドにダーイブ
オレは人生を変える夢を見た
ふざけてる現実に手を振り
イカしたデザインの船で目指すのさ
そこは東京、アメリカ、中国にコリア、UK、ジャメイカ、帰り道、レイバック
光る星の近くを通る
クソも離れて見れば光るらしい
だけど本物も転がってる
そいつに触ると目が覚める
ここがトゥルーだぜ
まだオレはベッドの上
まだオレはベッドの上
"BED DREAMING"(2013)


5lack x Olive Oil 「- 5 0 -」 のrelease party

-平日にもSPECIALは転がっている!!―

この街、福岡で生まれた奇跡のSESSION !!

5lack x Olive Oil 「- 5 0 -」 のrelease partyを本拠地BASEで開催!!

第3月曜日はO.Y Street で祝福の杯を交わしましょう!!

*終電をご利用の方も楽しめるタイムテーブルとなっています*

2013.03.18 monday@福岡CLUB BASE
open 18:00 - close 24:00
ADV : 2,000yen (w1d) 【LIMITED 70】
DAY : 2,000yen
** 20:00までにご来場の方には1drinkをプレゼント!!

RELEASE GUEST: 5lack x Olive Oil

GUEST VJ: Popy Oil

CAST:
HELFGOTT
WAPPER
LAF with PMF
ARCUS
DJ SARU
MOITO
DJ KANZI

上映: 『LATITUDE SKATEBOARD』

** 当日「- 5 0 -」アイテム販売あり!! **

<WEB予約>
当日の18:00までに contact@club-base.netヘ『件名:5O release party』『本文:代表者名と予約人数』
をメールしていただいた方は前売料金での入場が可能に!!

【チケット取扱店舗】
Don't Find Shop 福岡市中央区大名1-8-42-4F 092-405-0809 https://www.oilworks-store.com/
TROOP RECORDS 福岡市中央区大名1-3-4シェルタービル3F 092-725-7173 https://trooprecords.net/
DARAHA BEATS 福岡市中央区天神3-6-23-203 092-406-5390 https://darahabeats.com/
TICRO MARKET 福岡市中央区大名1-15-30-203 092-725-5424 https://www.ticro.com/
famy 福岡市中央区警固1-4-1 2F 092-732-6546 https://www.portal-of-famy.com/

CLUB BASE
福岡県福岡市中央区天神3-6-12 岡部ビル5F
MAIL : contact@club-base.net
TWITTER : @BASEfukuoka

特設HP:https://0318-50-releasepartyatbase.jimdo.com/

山本精一 - ele-king

 まいどまいど、とりあげるのが遅くなったのを詫びてばかりいるので今回はあやまらない。とりあげる時期で作品の価値が変わるわけでなし、もし変わると思うならあなたはメディアリテラシーという言葉にいいように踊らされた半可通にすぎないとか偉そうなこといってもうしわけありません。
 このアルバムが出たとき、私はレヴューを一本も書けないほど忙しかったのだろうか、もう思い出せない。何日か前のことはおろか、昨晩何を食べたかのかもあやふやになっている。私は子どもが保育園に通うので、園に渡す日誌を書くが、そこに昨晩何を食べたか書く欄があり、そこで筆が止まり、「昨日の夜何食べたっけかね?」と訊ねてみると娘はムッツリだまっている。気分を害したのではない。質問の意味が飲み込めないのだ。「昨日」という概念が定かでないのである。子どもにとっては2日前も3日前も過去として等しく昨日であるようである。一昨年、日弁連が出した子どもの司法参加を求める意見書にも「誘導・暗示に陥りやすい子どもの特性に配慮し、子どもからの聴取りは専門的訓練を受けた面接者が行う」という一文がある。外的要因に左右されがちな子どもの供述を司法に組み入れるための指針が提案されているが、大人だからといってつねに記憶が定かなわけではあるまい。

 山本精一がカヴァー・アルバムをつくろうと思ったとき、彼の記憶のどこからこれらの歌は呼ばれてきたのだろうか。『山本精一カバー・アルバム第一集』と題した本作の収録曲は"ターン・ターン・ターン"(ピート・シーガー)、"アイ・ビリーヴ・イン・ユー"(ニール・ヤング)、"サークル・ゲーム"(ジョニ・ミッチェル)、"フォー・アブセント・フレンズ"(ジェネシス)、"オーブル街"(ザ・フォーク・クルセイダーズ)、"失業手当"(高田渡)、"そして船は行くだろう"(あがた森魚/岡田徹)、"ランブリン・ボーイ"(トム・パクストン/高石友也/岡林信康)、"からっぽの世界"(ジャックス)、"ウィ・シャル・オーヴァーカム"(ピート・シーガー)の10曲、ライヴでもおなじみの曲を洋楽/邦楽(とひさしぶりに書いたが)半々選んでいる。フォーク・ソングといい条、それは音楽のスタイルとしてだけでなく、フォークをより言葉の元の意味に近い場所へ、匿名の民衆の歌であり、プロテスト・ソングであるフォークへと遡行させていくことは、本作がピート・シーガーではじまり終わることをほのめかしている。間に入る曲は50~60年代中心だが70年代初頭もある。たとえば「そして船は行くだろう」は去年、岡田徹のムーンライダーズ休止後の初のアルバム『架空映画音楽集II erehwonの麓で』の収録曲で、さきごろ岡田とYa-To-Iを再開した山本精一もこのアルバムに参加している。だからこのカヴァー・アルバムは第一集と銘打っているが厳密には愛唱歌を古い順にまとめたものではない。私は「カバー」の「第一集」とうたわれることで、自然とそれが編年的なものであるかのごとく、気をまわしてしまうが、むしろ一貫しているのはフォークに範をとった演奏による音の響きであり、山本精一は70年代をひとつの境に、今日ではとくに、オリジナリティを求めるがゆえに語りの主体と方法とを問題にせざるを得ないフォークの潮流を、50~60年代のそれと向き合わせることで異化するかにみえる。単にノスタルジーであれば昭和を懐かしむ輩と変わらない。たしかにシンプルだが。かそけ さを帯びている。フラットな歌唱と抑制したギターの底でハレーションを起こしかけた音の粒が泡立っている。基調となるのは「白」であり、「光」であり、だから「昼」である、と私は思う。そんなもの曲解だ、とおっしゃらないでいただきたい。いやむしろ山本精一の解釈が光をあてる。

 ジャックスの"からっぽの世界"は彼らのファースト『ジャックスの世界』(1968年)の収録曲で、山本のカヴァー・アルバムでも山になっている。『ジャックスの世界』はいうまでもなく日本のロック史上もっとも重要な作品のひとつである、ということになっている。私も学生のころから何度となく聴いた。だけでなく、2011年の湯浅学氏監修によるファースト・アルバムを復刻するシリーズ「EMI ROCKS The First」ではライナーさえ書いた。そのときも聴き直したが、印象は昔とさほど変わらなかった。というか、白状すると重たくも感じた。それはこのアルバムが早川義夫の「嵐の晩が好きさー」("マリアンヌ")ではじまるからであり、この距離感のない、森敦流にいえば密蔽した世界に入って行くには私には余裕がなかった。つまり「夜」が広がっていて、その後の"時計を止めて"のいかにも60年代フォーク的な抒情性、"からっぽの世界"の歌詞と相反する洒脱なアンサンブルに耳が届く前に、黒々とした闇に塗り込められ鼻をつままれてもわからない気がした。それが山本精一のフィルターを通すと白々と明けてくる。茶谷雅之とのカオス・ジョッキーの"Asph"を思わせる潮の満ち引きのような山本のエレクトリック・ギターとフラットな歌唱は混沌としてサイケデリックではあるが、70年代以降、つまりブルース/ハード・ロック的なファズを利かせたサイケではなく、ヴェルヴェッツや西海岸の60年代のそれに近い。だが歌詞にはラヴもピースもあらわれない。むしろ愛と平和に対抗するように死をあつかっている。ジャックスの、早川義夫の歌唱では死が鈍器のようであった。ジャックスのころの世界ではその現状に対抗するためにそのように声を上げなければならなかったのはよくわかる。ところが山本精一のヴァージョンでは歌詞はサラリと歌い過ぎ、歌い手のエモーションが蒸発した"からっぽの世界"の真空状態はニヒリズムさえたやすく招き寄せない。
 まるでジャケットにあしらった山本精一が撮った写真のように山本精一はそこで影になっているようである。影は実体と相似だが実体そのものではない。そして影はまた昼の産物であるが昼のなかに闇をうむ。

 山本精一はカヴァー・アルバムという形式を利いた風に使うのではなく、歌に主導権を譲りわたし、しかし存在の痕跡をそこに刻み、歌の歌うがままにする。もちろん曲を選んだのも歌も演奏も山本精一であるのだから彼らしささはゆるがないが、曲はそれぞれ自律している。そして響き合っている。すべてが移ろうと歌った"ターン・ターン・ターン"からニール・ヤングの"アイ・ビリーヴ・イン・ユー"へ。さらにヤングと同じ時期トロントに居合わせたジョニ・ミッチェルの"サークル・ゲーム"へ歌はめぐり、「For Absent Friends(不在の友のために)」歌ったジェネシスへ。2009年にみずから世を去った加藤和彦の「オーブル街」から、多くのフォーク・ソングを日本語の息吹をあたえた高田渡の"失業手当"(この曲も原曲はラングストン・ヒューズである)へ。"ランブリン・ボーイ"は"失業手当"と共鳴し、"失業手当"のひしゃげたギターが"からっぽの世界"の先触れとなる。
 歌に何かを託し言葉がメッセージとなることを、私たちはよく知っているが、生と死を遍歴し彷徨する山本精一の世界はひとつの価値観に収斂するものではない。19世紀初頭、老境のゲーテが人妻マリアンネと、14世紀のペルシャの詩人ハーフィズの詩を元に交わした詩が『西東詩集』となったように、過去とも現在とも、そして未来とも唱和し暗示する。そしてこのアルバムが"ウィ・シャル・オーヴァーカム"で終わるとき、私は去年、紙「エレキング」の水玉対談で水越さんが「"ウィ・シャル・オーヴァーカム"は『We Shall Overcome』のところじゃなくて『Some Day』ってのがいいんだよ」といっていたのを思いだした。
 いますぐ実現しっこないと思えたことがいつか実現するとき、そこから過去になった現在をふりかえった私のおぼつかない記憶はこのアルバムを聴いている今日をどのように思いだすだろうか。
 今日は3月11日である。

Chart - JET SET 2013.03.11 - ele-king

Shop Chart


1

Will Sessions Feat. Rickey Calloway - The Jump Back (Funk Night)
リリースする全ての作品が当店大ヒットを記録するWill Sessions。本作は再び、Rickey Callowayをフィーチャー!

2

O.s.t. - Django Unchained (-)
鬼才Quentin Tarantino手がける最新話題フィルムからのサントラがヴァイナル・カット!Rick RossやJohn Legend, Anthony Hamiltonのオリジナル楽曲に加え、James Brown Vs 2pacというナイスな組み合わせが実現したB-5、他映画からのフレーズも盛り込んだボリュームありの全23曲!

3

Skints - Part & Parcel (Soulbeats / Bomber Music)
Hollie Cookに匹敵のポップなセンスと、スカからラガまで取り込んだクロスオーバーなサウンド。Prince Fattyプロデュースの大傑作が入荷です!!

4

Gold Panda - Trust (Notown)
新世代エレクトロニカ最高の才能による新曲が待望のヴァイナル・リリース!!自身のレーベルNotownとGhostlyとの共同リリースによる限定12インチ。ダウンロード・コード封入!!

5

Tx Connect / Speculator - House Of Confusion (L.i.e.s.)
少量入荷につき即日ソールドアウトが続くus最深地下"L.i.e.s."発のリミテッド黒盤シリーズ最新作4番。Wt Records総師Willie Burns A.k.a. Speculator手掛けるカルト・エディッツ3楽曲を収録!!

6

Spinnerty - Gestures (Record Breakin)
John RobinsonやB.bravoを迎えた同レーベルからの前作も好評だった、ベイエリアのビートメイカー/DjのSpinnertの新作が登場! クロスオーバーにオススメなLil Dave, J-boogieのリミックスも必聴!

7

Space Dimension Controller - Welcome To Mikrosector - 50 (R&s)
デビュー12"『The Love Quadrant』がいきなりの当店爆裂ヒットを記録したのも記憶に新しいギャラクティック・ベース・ディスコ人気者S.d.c.が遂に待望の1st.アルバムを完成です!!

8

Lindstrom & Todd Terje - Lanzarote (Olsen)
昨年、Six Cups Of Rebel名義でのアルバムや、Smalltown Supersoundからの数々の12"でも不動の人気を魅せたLindstromと、'12年度、ディスコ/ハウス・シーンにおいて世界的なセールスを記録したと噂の絶えない大人気Todd Terjeがタッグを組んだ注目作品!

9

Four Tet - 181 (Text)
毎度即日完売する大人気レーベルTextから、主宰Four Tet自らによる3年振りの変則最新アルバムが登場。なんと'97年~'01年にかけての自作曲をメガミックスした長尺2曲を収録です!!

10

Third World All Stars - Rebel Rock (Pressure Sounds)
ジャジーなサックス、メロウなシンセ、ヘヴィなベース。Errol Dunkleyの名作『Sit And Cry Over You』を下敷きにした極上レゲエ・インストが再発!

tofubeats - ele-king

春にアルバムなどが出ます。
https://www.tofubeats.com/


1
Toro y moi - Anything In Return
何度聞いてもウオオオオオ!ウオオオオオ!ってなります。
ちなみに余談ですがボイラールームでのDJ動画で最後司会の女性と楽しそうに踊っている動画もとても最高です。Kyle Hallが95NORTHのNow It's TimeをかけているSunday Bestの動画でI loveNY TEEを着た美女が踊っている動画がそういう音楽で青春を取り戻す瞬間動画ではベストでしたがそれを超えました。

2
Esta - WhatIsGnaMake
ここ最近のベスト。単曲配信でしたがこれを書いてる2日前くらいにこれ収録のアルバム出ましたがそれも良い。

3
Gwen Stefani - Luxurious (VΞRACOM'z Egyptian Cotton C&S)
他の曲でジャンルが"gay trap"って書いてるのあったりとか、ここらへんはほん
と遊びがあっていい。

4
Symphony Hall - One Night Stand (feat.Jay Norton)
Marbleまわりが格好良すぎてつらい......

5
Ta-ku - Diamond Mouth
TRAPよりもうちょっとだけこういうノリのほうが好きっぽいのかなと思います。

6
DJ paypal - IRL
picnic womenから上品さを差っ引いた感じ。むしろ上品なDJ paypalがpicnicwomenなのかも......

7
AVAN LAVA - sisters
昨年の作品ですが落としてからずっと聞いてます。全曲いいしライヴ動画もマジ最高

8
Mirror Kisses - runaways
ほとばしるナード風なルックスも込でこういうbandcamp以降よく見かける音源は打ち込みでライブはバンドみたいなの好きです。 kickstarterで企画やってるのも今っぽい。

9
Giraffage - Close 2 Me
なにげにperfumeとか大ネタ使い多いですが原曲好きなのばっかやってくれるので好きです。

10
木原さとみ(東京パフォーマンスドール) - 銀色のシルエット(remix)
年2回くらい東京パフォーマンスドールのライブ動画を見直すシーズンがありますが今年頭のは結構長くて、持ってない音源まとめて買いました。 リミックス盤収録のナイスブギー。
. 米光美保 - あなただけ感じて[EXTENDED FULL POWER DIGITAL MIX!!]
角松氏プロデュース元TPD米光氏のアルバムのリミックストラック。イントロ以外は言うほど切れてませんが何よりこのタイトルがグッときま す。#EXTENDEDFULLPOWERDIGITALMIX

CE$ - ele-king

CE$-(MOBBIN HOOD,she luv it)
DJではBASS/TECHNO/HIPHOP/GRIME/DUBSTEP/TRAPをプレーしたりしてます。
部屋ではHARDCOREとREGGAEをよく聴きます。
MIXCDも何枚かリリースしてますので、良かったらチェックしてみて下さい。
今年は新しいMIXCDと新しいパーティーも企画中です。
&全国の友達に、いつも有り難う御座います。
https://soundcloud.com/for2empty
https://soundcloud.com/mobbinhood
https://soundcloud.com/ces-5

【Chart for ele-king 2013 Mar.】※順不同


WDsounds exclusive mix/DJ HIGHSCHOOL (WDsounds)
レーベルinfoにも書いてあったけど、HIPHOPは現在のRUDE MUSICのひとつだという事を、改めて思わせてくれるMIX。

BEDTIME BEATS VOL.3/SONETORIOUS aka DJ HIGHSCHOOL(804 Productions)
Flunking This Semesterを聴いた時の衝撃は忘れがたいです。

presidents wolf mixWOLF 24 (PRESIDENT HEIGHTS)
ふとした時に気づいたら部屋で流してます。

Wake&Bake Basics Cough,Cough,Pass/GRINGOOSE(seminishukei)
&Prillmal Dessert Delights/GRINGOOSE(seminishukei)
耳に気持ちいいBREAKBEATS/HIPHOP/SOUL/FUNKが、街の温度と共に響いてきます。

・Misty the Sound Crack/ONE-LAW(FELLOWZ)
全曲本当に素晴らしいのですが「Coltez」が一番お気に入りです。
中毒性も凄いと思います。

P-SHOCK/Mr.PUG from MONJU(DOG EAR RECORDS)
&EARR/ISSUGU FROM MONJU(DOG EAR RECORDS)
DOGEARからのこの2作品は、純粋な彼らのHIPHOPであり、二人の美学がヒシヒシと伝わってきます。

FL$8KS/FLA$HBACKS(FL$Nation & Cracks Brothers.Co,Ltd )
完全なる新世代によるSUPA FRESHな1枚。

Telephone my girlfriend on a cold dai/MASS-HOLE(MidNightMealRecords)
これまでのMASSのMIXの中でも一番エロい感じですね。最高です。

〈SPF420〉第3回目が開催 - ele-king



 以前、ヴェイパーウェイヴ界隈のフェスティヴァル〈#SPF420 FEST〉の模様を本誌でお伝えしたが、きたる3月20日にその第3回目が開催される。苗場にも幕張にも長野にも行けずとも、お手元の機器がインターネットに接続されてさえいればこのフェスには参加できるので、ご安心を。会場はこちらです。

video chat provided by Tinychat

HTTP://WWW.TINYCHAT.COM/SPF420

 とはいえ、開催時刻には気をつけてほしい。米国東部時で3月20日22:00だが、日本標準時で考えると3月21日(木曜日)12:00である。平日ではあるものの、時間がある方はぜひこの戯れに混ざってみてはいかがだろうか。
 前回の様子は、チャットも込みで、以下の動画を参照していただきたい。

Transmuteo Live @ SPF420FEST2.0 from Transmuteo on Vimeo.

 今回の出演者で注目したいのは、情報デスクVIRTUALでもなくプリズムコープ(PrismCorp)でもなく、元来の名義での登場となるヴェクトロイド。もともとトロ・イ・モアをリミックスしていたように、ヴェクトロイドはそもそもチルウェイヴの潮流のなかで名を拡げていたアーティストだ。おそらく、今回はミューザックの垂れ流しではないだろう。どのようなライヴを披露するのか楽しみである。
 ほかにも、日本のツイッタラーからも愛されている、ジューク/スクリューが得意なDJペイパル。ヴェクトロイドともギャラリーで共演しているマジック・フェイズ。そして、サウンドクラウドにも音源のない、謎のツイッタラー=コーダック・キャメオがなにをするのか気になるところである。
 なお、フライヤーデザインはホワイトバックグラウンドによるもの。

 主宰のひとり、ストレスからプレスキットが届いたので、その言葉をもとに再構成したフェスティヴァルの詳細を以下にご紹介しよう。
 ストレスがこのフェスティヴァルを積極的にプロモーションしたがっているのは明らかで、自分たちの正体を隠したがるヴェイパーウェイヴ連中が、注目を集めた後にどのように振る舞っていくのかがこのイヴェントの一番の見どころともいえる。

 やあ、〈SPF420〉に興味をもってくれてありがとう。

 〈SPF420〉はタイニーチャット(HTTP://WWW.TINYCHAT.COM/SPF420)で開催されるオーディオ/ヴィジュアルのライヴ体験です。 この私=ストレスが、チャズ・アレン(またの名をメタリック・ゴースツ)とともに、きたる3月20日の〈SPF420〉を主宰しています。

 ショーのラインナップは以下のとおりです。

DJペイパル (DJ Paypal)(https://soundcloud.com/dj-paypal
コンタクト・レンズ (Contact Lens)(https://soundcloud.com/contactlens
ヴェクトロイド (Vektroid)(https://soundcloud.com/vektroid
マジック・フェイズ (Magic Fades)(https://soundcloud.com/magicfades
ブラックドアウト (Blackedout)(https://soundcloud.com/blvckedout
コーダック・キャメオ (Kodak Cameo)(https://twitter.com/fumfar

シュガー・C(Sugar C)(https://soundcloud.com/metallicghosts)我らがハウスDJ
トランスミューティオ(Transmuteo)(https://soundcloud.com/transmuteo)アフターパーティー主宰

 フェイスブックのイヴェント・ページもあります。
https://www.facebook.com/events/136903026484461

 前回の〈SPF420〉は2013年1月3日に行われました。ラインナップは、ヴェラコム/トランスミューティオ/プリズム・コープ/ラグジュリー・エリート/クールメモリーズ/インフィニティ?・フリーケンシーズ/メタリック・ゴースツ。
 そのときのいくつかのアーティストの音声は、以下にあります。
https://soundcloud.com/spf420

 以下は、1月3日(第2回目)についての記事です。

"Vaporwave and the observer effect", written by Leor Galil for The Chicago Reader:
https://www.chicagoreader.com/chicago/vaporwave-spf420-chaz-allen-metallic-ghosts-prismcorp-veracom/Content?oid=8831558

"『#SPF420FEST 2.0』から見るヴェイパーウェイヴ @ tinychat.com" written by ele-king.net (グーグル翻訳をおすすめします):
https://www.ele-king.net/review/live/002758/

"#SPF420FEST2.0" written by Jheri Evans for Decoder Magazne:
https://www.secretdecoder.net/2013/01/spf420fest20.html

 観客動員は、135人ものリスナーたちを記録しました。私たちはセルフ・プロモーション以外なにもしていませんが、このイヴェントを拡げていきたいと思っています。私たちの世界を、喜んで併合していきます。

音楽、ドラッグ、会話
XOXO,
SPF420: Roll The Dice ™

HTTP://WWW.TINYCHAT.COM/SPF420


 ストレスのプレスキットでは本誌の記事も紹介されているが、(ヴェイパーウェイヴ連中は散々つかっているというのに)どうやら日本語を読めないらしい。
 
 大麻を意味するスラング「420」に合わせて3月20日開催なのだと思われるが、では4月20日(マリファナ・デイ)にはなにかあるのだろうか?
 どうやら、やはり、ヴェクトロイドは期待を裏切らないらしい。〈ビアー・オン・ザ・ラグ〉から新作のリリースにも期待しよう。

The Bridge 反レイシズムRemix ECDILLREME - ele-king

 ここ数年......に限ったことではないが、町やネットで、あからさまな排外主義、レイシズムが平然とのさばっている。なんでも町では、在日の外国人(とくに韓国人)に向けての「死ね」「殺せ」などといった、まったくこれはナショナル・フロントかというシュプレヒコールが起きているというではないか。何か何までサッチャー時代のUKを30年遅れでなぞっているようだが、日本のメディアではどういうわけか問題化されない(欧米では、サッカーの現場においても人種差別の撤廃は叫ばれている)。
 ご存じの方も多いかと思うが、反レイシズムのラップをECDとイルリメが作っている。これまで明るみにでなかった、一種のタブーに挑戦した勇気ある、素晴らしい曲だ。なるべく多くの人たちに届くように、友だちにも教えてあげよう。

The Bridge 反レイシズムRemix ECDILLREME by ECD on SoundCloud


The Bridge 反レイシズムRemix ECDILLREME - YouTube

 野菜割引とは何だろう......? ローカル×超ローカル、ジャンル×超ジャンル、熊本の秘境に遊び、食べ、憩い、踊り、泊まる、地元エコ・ヴィレッジ主催のユニークな音楽イヴェントをご紹介しよう。風光明媚な土地柄に豪華なラインナップ、スローフードにトリップな音楽ショーまで加わり、浮世の垢を落としコリをほぐす「音楽マッサージ」が体験できそうだ。

【熊本 イベント】 ∞∞∞saihate 3 DAYS Gathering∞∞∞

敷地面積10,000坪。熊本県宇城市三角の山の上にある「三角エコビレッジサイハテ」。グラフィックデザイナー、パーマカルチャーデザイナー、タイル作家、料理人、DJなど10名ほどの住人と日々訪ねてくる来訪者によって衣食住+文化循環型のエコビレッジを作っています。

そんな秘境「サイハテ」で3/9〜3/11に「∞∞∞saihate 3 DAYS Gathering∞∞∞」が開催。九州はもとより関東・関西から多数のアーティストがサイハテに集まります。

1日目、3/9はライヴとDJの宴「ALL LIGHT,ALL RIGHT」。熊本初ライヴとなる関西の鬼才「オオルタイチ」。元CANのダモ鈴木やDJGonnoとのコラボレーションなどで多彩な活躍をする宇宙ギタリスト「MANDOG」。九州勢は熊本を代表するバンド「Doit Science」、熊本のビートメイカー「ILL THE ESSENCE」。大牟田の誇る女子高生ドラマー杏ちゃん所属のバンド「電子たくあん」、大分からサックス・インプロヴァイザー**「山内桂」。そしてDJは中原昌也、ALTZ、BING aka TOSHIO KAJIWARA、EGGという九州、関西、関東がミックスされたラインナップです。
 
2日目、3/10は各地で宇宙マッサージを出店しファンを増やし続けているプリミ恥部が主催する「ニューサイハテシャンバラデイ∞∞∞プリミ恥部な全宇宙○」。これは宇宙音と宇宙映像と宇宙ダンスの渦の中心で宇宙マッサージを体感できる「ニューシャンバラデイ」に会場が映画化されていく映画ショー「プリミ恥部な世界」がリミックスされる超絶宇宙ショー!!! 九州初開催です。「これはいったい何!?」という方もぜひイメージを膨らませてみてください。

そしてこの日のDJはTOWA TEIとYOGURT!!!! まさかこんな秘境にこのメンツ......という豪華さだと思います。
多数のミュージシャン、DJ、ダンサー、デコ、VJ、参加したすべての人で作り上げる宇宙フロア。「たった今は、全宇宙だ!!!」をサイハテで体感してください。

3日目3/11もパーティーとワークショップが決定しています。が、こちらの内容はシークレット。期間中のフードは全国のローフード愛好者から支持されている京都のCacao∞Magicや狩猟肉推進チームHUNTなど珍しい出店が揃います。

また、チケットもユニークな仕組みを採用。ドネーション制度を導入した33人限定の「自由料金チケット」は3日間のイベント参加と会場への宿泊がセットになっており、ディープにギャザリング参加したい人にもってこいです。また、この他に1日ごとの参加チケットも設定されています。

会場のサイハテまではJR熊本駅から電車利用や熊本市内から車で約1時間。JR三角駅と会場の送迎車も用意していますので、車で来られない方や遠方から遊びにくる方も安心です。サイハテの広大な敷地には豊富で美味しい柑橘類の木々が茂り、最近は住人とワークショップ参加者で作り上げたアースバックハウスも1棟完成したばかり。いくつかのチルアウトスペースもあり、イベント以外でも充実した時間を過ごせるはず。この機会に山の上の桃源郷に遊びに行きませんか?

∞∞∞saihate 3 DAYS Gathering∞∞∞

■ジャンル
HOUSE, ELECTRONICA, ROCK

■開催場所
三角エコビレッジサイハテ(熊本県宇城市三角町中村1901-17)

■入場料金
(1)宿泊&3日間のイベント参加ができるスペシャルチケット(完全予約制。33人限定。自由料金制(参加後、ドネーションをお願いします)

(2)1日チケット(1日ごとの参加チケット・宿泊不可)(上記の33人限定チケットとは別枠で用意しています)
【一般】3000円
【県外割引】2500円(熊本県外からお越しの方が対象)
【学割&野菜割引】2000円

■出演者

3/9 (土)「ALL LIGHT,ALL RIGHT」OPEN15:00
【LIVE】オオルタイチ/電子たくあん(大牟田) /ILL THE ESSENCE(熊本)/山内桂(大分)/MANDOG/Doit Science(熊本)
【DJ】ALTZ/BING aka TOSHIO KAJIWARA /中原昌也/EGG
【COSMIC MASSAGE】プリミ恥部
【FOOD】HUNT/Cacao∞Magic/スナックまゆみ/三角エコビレッジサイハテ
【SHOP】ぺーどろりーの

3/10(日)「ニューサイハテシャンバラデイ∞∞∞プリミ恥部な全宇宙○」
プリミ恥部 /平岡香純 /白井多有 /Akashic/朝日太一/ありひるあ/歩き巫女/ALTZ/池田社長/ウタモ/うっちー/wzmakimaw/オオルタイチ /COLORgung/工藤真工/熊谷然/熊谷もん/KEITA/ケンジルビエン/千住宗臣(COMBOPIANO/DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN/KOMAなど)/竹永省吾/TADA(SPOOKY)/デイヴィッド(生意気)/トンチ/中原昌也/東野祥子(BABY-Q)/HiraLion/BING aka TOSHIO KAJIWARA/pee/Heaven Hug/MANDOG/みなみりょうへい/村里杏/メガネ/ 山内桂/YAMAT
【DJ】/TOWA TEI /YOGURT
【FOOD】HUNT/Cacao∞Magic/スナックまゆみ/三角エコビレッジサイハテ
【SHOP】ぺーどろりーの
【fliyer】WhiteWhole(河野未彩+佐藤拓人)

▼特設サイト
https://saihatesambhala.tumblr.com/
▼三角エコビレッジサイハテ
https://www.village.saihate.com/

Charlatan - ele-king

 東京の夜は昼のように明るく、そのために電気代も......という話がよくでる。ヨーロッパの夜は確かに暗い。大通りへ出てもシックな茶色の街灯がポツリポツリと並ぶだけ。落ち着くし、静けさが染み渡っていくように感じられる。しかし、ヨーロッパの夜は9時を過ぎるまではかなり明るく、朝が遅いということもないので、要するに夜といえる時間帯は日本よりもかなり短い。つまり、危険な時間帯も無限に感じられるほど長くはないし、フィツジェラルドが『夜はやさし』と感じるモーメントも(日本人の感覚からいえば)あっさりとしたものだということになる。東京の夜が明るすぎるのは、それが長すぎたからであったのかもしれないし(別に原発推進派じゃないッスよ)、逆に夜という時間帯がどれだけ愛おしいものになるかもそれぞれの地域によって異なるのかもしれない。かつて忌野清志郎は「夜しか歌詞を書かない」と話していた。〈ナイト・スラッグス〉=夜のナメクジたちは、きっと今夜もぐにゃりぶにゃりと奇妙なダンスを踊っていることだろう。

 ここ10年で大量のカセットやRをリリースし、バーニング・スター・コアの後期にライヴ用のサポート・メンバーとして参加したマイク・シフレットによる正規6作目。これまでのノイズ・ドローンから一転してアンビエント・ドローンへ反転し、それこそ夜を追い求め、その優しさに同化しようとしているようなテクスチャーが立ち並ぶ。初雪が舞ってきたような"アシンプトーツ(漸近線)"から弛緩したムードが入り混じるようになり、後半は適度な緊張感を維持しつつも柔らかなギター・ドローンとの拮抗点が探られていく。"インチング(寸動)"で完全にメディテイション・ミュージックへと発展した流れはクロージングで混沌とした側面を取り戻すものの、その表情はやはりかつてのノイズ・ドローンとはかなり隔たりがある。〈タイプ〉からの『サッファラーズ』や『マーシレス』では通奏低音のようにして認められたクラシカルな手法も見事に消え去り、どの角度からも不安を煽るようなことはない。バーニング・スター・コアが徹底した動なら、『聖歌隊、軍隊』と題されたアルバムは完全な静。外に向かって放たれていたエナジーは、いま、回収される時期に来たのかもしれない。

 古くはタレンテルやバーン・オウルからブラザー・レイヴンモーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェルイマジナリー・ソフトウェア、ニガー・ウイズ・ギターズにザ・スレイヴス(紙エレキング8号P33)、kplrや最近ではなぜかイタロ-ディスコじみていたディスカヴァラーなど錚々たるリリースを重ねてきた〈ディジタリス〉を主催し、先ごろ、自分ではもうレコーディングをしないと宣言したブラッド・ローズ(ザ・ノース・シー)のアンビエント・プロジェクト、シャーラタンにもそのような面は濃厚に漂っている(もしかするとラスト・アルバムとなる『アイソレイタリウム』にはそれまでの路線には収まらない側面もあって、これ以上の創作行為がないのはさすがにもったいないような......)。〈アギーレ〉から再リリースされたファースト・アルバム『イキノックス』に較べると、たおやかでしっとりとしたシンセサイザーのうねりはまったく姿を消し、かつては光のなかを歩むようだった雰囲気も闇のしじまへと分け入っていくようなもどかしいニュアンスへとモード・チェンジ。"コーデックス"以下の全6曲は迷子になっていることを楽しんでいるような曲ばかりとなり、その多様性を随時、確認していると、想像力は闇のほうが広げやすいのかなーと。

 ある朝、「夜、どこにあった?」と、かつて仲井戸麗市は嘆いていたことがある。ヨーロッパに較べればかなり長い夜も、彼にはまだまだ足りないらしい。これを書いている午前6時現在、僕も同じようなことは感じざるを得ない。もう少しで外が白みはじめる頃合である。ブラム・ストーカーがドラキュラを生み出したのは歴史的にはオスマン・トルコが恐ろしかったからだけど(トルコがなまってドラク→ドラキュ......と変化した)、いつまでも朝になって欲しくないと願うような人たちがドラキュラのあり方を支持したから、これだけ普遍的な存在になったのかもしれない。そう思っていたらエンディングの長~い"ターミナル・ゼロ"がドラキュラの体内を血液が駆け巡っているような曲に思えてきた。......またパク・チャヌク監督『渇き』でも観ようかな。

 *     *     *    *     *

 『アイソレイタリウム』のスリーヴ・デザインには誰かさんのようにマスクをしたままの女性があしらわれている。これに関しては、エレキング9号で粉川哲夫氏が興味深い考察を加えてくれる予定です(あくまで予定)。また3月11日には粉川哲夫×三田格の共著『無縁のメディア』もエレキング・ブックスから発売です。学生時代に憧れていた方とまさか共著を出すとは思いませんでした! 人生、なにがあるかわからない~。

Jim James - ele-king

 インディ・ミュージシャンもよく出演する、アメリカの人気トーク番組「レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン」でのジム・ジェームスの回が素晴らしかった。バックにザ・ルーツとオーケストラを従えて、仕立てのいいスーツに身を包んだジム本人はギターを持たずに歌に専念する。僕などは日本の往年の歌謡ショーのステージを連想したのだが、数年前までテレビでもむさ苦しい格好で長髪を振り乱しながらギターをかき鳴らしていたことを思えばその洗練には目を見張るものがあった。(いまやビッグな存在とはいえ)インディ界隈のミュージシャンにテレビでこういう舞台が用意される状況そのものも素敵だと思うが、それ以上に、マイ・モーニング・ジャケットで彼が長い時間をかけて培ってきたものがそこにはよく表れていて感慨深かった。

 これまでもちょっとしたEPを出したりはしていたが、本格的なソロ長編としては初の本作。ソングライター、演奏者、プロデューサーとしての総合的な彼の力量が発揮されているアルバムだが、とりわけシンガーとしてのジム・ジェームスにフォーカスが当たっているように感じられる。マイ・モーニング・ジャケットにおいてもここ数作でジムの歌の魅力が前面に出てくるようになったと思ってはいたのだが、ソウル・シンガーからの影響がここではとくに色濃く、なるほどネルシャツとジーンズにアコギではなくて、スーツにスタンドマイクがぴったりの、よくコントロールされた歌唱を聞かせてくれる。
 その意味で、アルバムを通してジムがこよなく愛するブラック・ミュージックのフィーリングが貫かれているのは納得できる。アブストラクト・ヒップホップの感覚とファンクを漂うような"ノウ・ティル・ナウ"、エレガントなソウル"アクトレス"、エキゾチックでセクシーなジャズ・ナンバー"オール・イズ・フォーギヴン"などにそれがよく表れているが、ムードとしてもマイ・モーニング・ジャケットの爆発的なジャムは影を潜めた分、優雅な余裕がアルバムの時間を支配する。そこにじわりと立ち上るサイケデリアの心地よさ。バンドとの断絶も過剰な飛躍もなく、個としての彼の得意分野を過不足なくパッケージした幸福なソロ・アルバムだ。

 ジムの透き通ったハイトーン・ヴォイスによる歌唱にはどこか純潔さや神聖さを匂わせるものがある。そしてそれは、歌詞のテーマと寄り添うことでさらにろ過される。先述のテレビ番組で披露した本作におけるベスト・トラック、フォーキーなソウル"ア・ニュー・ライフ"では「新しい人生を始めよう」と真っ直ぐに告げ、"オール・イズ・フォーギヴン"では「神よ、全てが許されることを」と願う。ラスト・トラック、もっとも歌い方にフラジャイルな感覚が付与されるフォーク・ナンバー"ゴッズ・ラヴ・トゥ・デリヴァー"はこんな風に始められる......「"私には夢がある......" ああキング牧師よ、僕にはわかるよ」。その曲で歌われる「神の愛」の何たるかがわたしたちには感情としてはほんとうには理解できなくても、キリスト教が本来「愛」だとするものが何かを探求すること、あるいはその、理想が理想であるために捧げられる信念の強さには胸を打たれる。そうたとえば、グザヴィエ・ヴォーボワの映画『神々と男たち』において、神への愛の前で暴力に屈しなかった神父たちの姿に打ちのめされるように。
 ジム・ジェームスそしてマイ・モーニング・ジャケットのスピリチュアルな質感のサイケデリアはしかし、それに酔って我を忘れたりはしない。音と歌は美しく統制され、そしてよりよきものを願うことを恥じない。「簡単にそうならないのはわかっている/でもそのために努力する価値は十分ある」"ア・ニュー・ライフ"

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377