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Brother Raven

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三田 格   Nov 17,2010 UP

 グローイングもエメラルズもほんの少し前まではヘヴィ・ドローンだったことを思うと、もはやどんな方向に流れるのもありなんだろうけれど、それにしても摩訶不思議な展開に踏み込みつつあるサイケデリック・ドローンの新作をいくつか。

 最初は比較的従来のアンビエント・ドローンに近いもので、滝川じゃないクリステル・ガルディによる初期3部作『クルセイダー』『アライアンス』『オーシャン・ウーマン』からのセレクト集。順に1曲、6曲、5曲という抜き方で、大雑把にいってAサイドが『アライアンス』のAサイド、Bサイドが『オーシャン・ウーマン』のAサイドに近い。初期3部作をそのまま2CD『リフツ』にまとめたことで知名度を得たOPNのアイディアに触発されたのではないかと思えるもので、内容的にもシャープさをすべて丸く包み込んだような仕上がりは平たくいってOPNへの女性からのアンサーという感じもなくはない(実際、B4はOPNと共作)。アナログ・リリースでは1作目となる『ライズ・イン・プレインズ』(裏アンビエントP243)でもバウンシーで抑揚な激しいドローンが展開されていて、それはここでもそのまま継承され、酔っ払ったようにクニャクニャとウネり続けるドローンはタイム・トンネルから出られなくなってしまったような不安を与えながら最後までまったく安定しない(安直にアラビア風ともいえるし、過去のジャケット・デザインなどから勝手に推測するとガルディはもしかするとイスラム系なのかもしれない。そう思うとピート・ナムルックとドクター・アトモによる『サイレンス』をドローン化したものにも聴こえてくるし、だとしたら〈アタ・タック〉からリリースされたブルカ・バンドとの共演かリミックスを希望~。音楽を禁じるタリバンに対抗してブルカを着たままで演奏するので、普通に演奏しているのにどこかサイケデリックになってしまう女性3人組のバンドです! 殺される覚悟なのか?)。

 また、OPNが主催するRオンリーのレーベル、〈アップステアーズ〉から『イン・フィータル・オーラ』をリリースしていたアントワープのイナーシティことハンス・デンスが新設の〈アギーレ〉からリリースした『フューチャー・ライフ』(カセット付き)はドローンの文脈にテリー・ライリーやギャビン・ブライヤーズを思わせる古風なミニマル・ミュージックを背景に溶け込ませることでやはり独特の酩酊感を演出する。どの曲もはっきりとしたイメージは持たず、レジデンツ『エスキモー』をドローン化したような曲があるかと思えばローレンス風のダブ・テクノに聴こえてしまう曲あり、どの曲もモコモコといっているうちにいつしかその世界観に呑まれていく......。

 上記の〈アギーレ〉からリリースしたデビュー・カセット『ダイヴィング・イントゥ・ザ・パイナップル・ポータル』が最近になってアナログ化されたばかりのポッター&アンダースンが、そして、とんでもない。こういうのは......ちょっと聴いたことがなかった。大ガラスの兄弟を名乗るシアトルのデュオは09年から4~5本のカセット・テープをリリースした後に初のアナログ・リリースとして『VSS-30』を〈ディジタリス〉からリリースし、導入部こそ典型的な思わせぶりのようでありつつ、全体的にはクラフトワークにハルモニアが憑依し、それでいてクラウトロックの亜流には聴こえず、とてもシンプルですっきりとした構成に落とし込むという離れ業をやってのけている(すべてテープにライヴ録音)。ドローンの要素はもはや皆無で、新しいと思える部分はすべてリズムに神経が集中している。ダンス・ミュージックにおけるフィジカルなリズムではなく、ノイ!のようにそれで遊んでいるタイプ。リズム自体が遠くへ行ったり近づいたり、あるいは間隔を意識させることでとても空間的な時間をつくり出したりする。これはスペース・ロックの新しいフォーマットといえるのではないだろうか。デビュー作では彼らはまだドローンの要素を残しており、むしろ、そのせいでエメラルズのようにクラウトロックと重ねて聴く要素もそれなりにあったと思うのだけれど、ここにはそのような過去との接点はかなり見えづらいものになっている。勢いや新鮮な感覚という意味では『ダイヴィング・イントゥ~』も非常にいい演奏だし(これもテープにライヴ録音)、アンビエント・ミュージックとしてのわかりやすさも侮れない。しかし、『VSS-30』で達成されたものはその先にあるものといえ、この進歩をめちゃくちゃ評価したい。
 セーラームーンの必殺技、スパークリング・ワイド・プレッシャーをユニット名にしたフランク・ボーによる『フィールズ・アンド・ストリング』や裏アンビエントの2008年で大きく取り上げたミルーの正式なサード・アルバム『ザ・ロンリネス・オブ・エンプティ・ローズ』など紹介したいものはまだまだ多い。それらはまた機会があれば。

三田 格