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三田 格 Dec 29,2010 UP
カラード・マッシュルーム・アンド・ザ・メディシン・ロックスのキノコ・ジャケに続いてエメラルズからジョン・エリオットとレイディオ・ピープルことサム・ゴールドバーグによるセカンド・コラボレイション。EPと銘打たれ、45回転というフォーマットにもかかわらず、かつてなく濃厚な構成と全体を大きく突き動かすダイナミズムが一気に聴き手を引き込んで離さない。ムーグやコルグをメインとしたアナログ・シンセサイザーが序盤から大きく波打ち、ベースのうねりは70年代の記憶をくすぐりかねないほどレトロ色を帯びつつも、メディテイションとは違う事態へと発展している。まったく新しいとまではいわないけれど、チルアウトやクラウトロックとはまた違ったテクスチャーに向かって一歩を踏み出そうというものになりつつあるというか。タイトル曲ではジュリアン・コープによるアンビエント・プロジェクト、クイーン・エリザベスを思わせるアブストラクなドローイングを先達と同じく心のままに楽しんでいる感じがよく伝わってくる(叙情性に関して屈託のない曲ほど古さを帯びて感じられるというのは、はて、なぜなのか)。
また、オリジナルのカセット・リリースを09年に〈ディジタリス〉が6種類のジャケットでアナログ化していたイマジナリー・ソフトウッズ名義のドローン作も、新たにジェイムズ・プロトキンのリマスターを得て同時期にリイッシュー。アナログ2枚組のヴォリウムで展開されるアンビエント・ドローンはイーノを思わせるスタティックな世界観に貫かれ、最近になってアウター・スペースや上記のコラボレイションなどで躍動感を強く押し出している面とは違う側面を強く印象づける(たまたま、年末の行事が立て込んでいるときに、疲れ果ててぼんやりと聴いていたら、これが効いてしまいましたね)。音数を抑え、ドローン本来の単音だけで展開される「延び」にすべての神経を集中させた感じは単純なドローンから様々に変容を遂げつつある現在において、シンプルな表現の強さを奪い返すような出来と言えるだろう......って、2年前に制作されたものだから、ある意味、当たり前か。あるいは、そこにスティーヴ・ライヒを思わせる弦楽の響きが漣のようにループされ、その残響音だけで聴かせるシークエンスや『ミュージック・フォー・エアポート』をドローン化したような"アンタイトルド(B3)"など、静謐をつくり出すヴァリエイションにもどこか考え抜かれた風情がある。リマスター以前のヴァージョンを聴いていないので、プロトキンの力量がどれほどのものかはわからないけれど、それなりのものがあるのだろうと思いつつ......(プロトキンに関してはOPNからサン・アローまで、このところの大事な作品では彼の名前を見ないものはないというほど気になる存在となっているので、復活版『ele-king』でインタヴューをオファー。この10年のUSアンダーグラウンドについて広く話を訊いているので、お楽しみに)。
それにしても2010年はエメラルズにはじまり、エメラルズで終わっていくなー。2011年は誰がこれに匹敵する大量リリースで振り回してくれることだろうか。
それではよいお年を。
三田 格