「R」と一致するもの

Apifera - ele-king

 イスラエル出身のキーパーソンで、キーボード奏者及びマルチ・ミュージシャン/プロデューサー/ビートメイカーとして多彩な活動を続けるユヴァル・ハヴキン。昨年はリジョイサー名義で『スピリチュアル・スリーズ』という素晴らしいアルバムをリリースした。リリース元の〈ストーンズ・スロウ〉とはその前のアルバムの『エナジー・ドリームズ』(2018年)からの付き合いで、ユヴァルによってイスラエルとロサンゼルスを繋ぐ仲介役的な役割も果たしてくれているのだが、彼の新しいユニットのアピフェラもまた〈ストーンズ・スロウ〉からとなる。

 アピフェラはユヴァル・ハヴキン(キーボード)ほか、ニタイ・ハーシュコヴィッツ(キーボード)、アミール・ブレスラー(ドラムス)、ヨナタン・アルバラック(ベース)という、すべてイスラエル出身のミュージシャンからなる4人組バンドである。ロサンゼルスが拠点と紹介しているところもあるが、実質的な活動地はイスラエルのテル・アヴィヴだろう。
 ユヴァルはテル・アヴィヴのテルマ・イェリン芸術学校卒だが、ほかのメンバーもだいたいこの学校出身か周辺の音楽仲間である。このサークルからはタイム・グローヴ、リキッド・サルーンといったバンドや、L.B.T.というヒップホップ集団が出ているが、この4人はそれらのいずれかに参加している。実際のところリジョイサーの『エナジー・ドリームズ』にはニタイ、アミール、ヨナタンが、『スピリチュアル・スリーズ』にもニタイとヨナタンが参加していたので、アピフェラの『オーヴァースタンド』はそれらの延長線上にある作品とも言える。
 一方、ニタイはイスラエル出身のベーシストとして世界的に名を馳せるアヴィシャイ・コーエンのトリオのピアニストとしても知られ、アミールはアミット・フリードマンやオメル・クレインらのグループで演奏し、ヨナタンはビッグ・バンドのアヴィ・レオヴィッチ・オーケストラのメンバーとしても活躍するなど、既にイスラエル・ジャズ界でそれぞれポジションを獲得しているので、アピフェラはそうした実力者4人が集まったバンドでもある。こうしてスタートしたアピフェラは、昨秋はファンク・レジェンドのスティーヴ・アーリントンのニュー・アルバム『ダウン・トゥ・ザ・ローエスト・タームズ:ザ・ソウル・セッションズ』に参加し、そして自身の『オーヴァースタンド』をリリースするに至った。

 アピフェラという名前は蘭に集まってきた蜜蜂のことを指しているようで、オーガニックなサウンド構造とハーモニーやアレンジにより、豊かで多様な自然界を映し出すという方向性を持つ。ユヴァル・ハヴキンの名を一躍広めることになったバターリング・トリオにも共通する音楽性で、ヒレル・エフラルによるジャケットのアートワークにもそうした雰囲気が反映されている。イスラエルの民謡やラヴェルやサティなどに影響を受け、そのほかにもスーダンやガーナなどアフリカの音楽からサン・ラーの作品まで、メンバー4人が育んださまざまな音楽的要素が盛り込まれている。インスピレーションの赴くままにライヴ・セッションを3日間ほどおこない、『オーヴァースタンド』はレコーディングされた。最小限のオーヴァーダビングはあるものの、基本的にはこうした自由なセッションをそのまま録音している。
 セッションにはメンバー4人以外にゲストでノアム・ハヴキン(キーボード)、セフィ・ジスリング(トランペット)、ヤイル・スラツキ(トロンボーン)、ショロミ・アロン(サックス、フルート)が参加しているが、いずれもユヴァルやニタイたちの音楽仲間で、これまでもいろいろな作品で共演してきた面々だ。

 ニタイによると、アピフェラのサウンドにとってオーケストレーションは重要なパートで、特に音の質感に注力し、音色や温度感についていろいろディスカッションしながらセッションしていったそうだ。表題曲の “オーヴァースタンド” においてもそうした丁寧に吟味したサウンド・テキスチャーが張り巡らされていて、上質なアンビエント・ジャズとなっている。“レイク・ヴュー” におけるビートとエレピのバランスも絶妙で、抽象性の高い音色が聴く者のイマジネーションを無限に広げていく。リズム・セクションのセンスの良さを感じさせるジャズ・ロック調の “エネック・ハマグロ”、幻想的なエレピが印象に残る “ヤキズ・ディライト” など、ハービー・ハンコックやチック・コリアが1970年代にやっていたフュージョンを現代的にアップデートしつつ、“ザ・ピット&ザ・ベガー” や “Gerçekten Orada Değilsin” のようにイスラエル民謡からきたと思われる独特の音階を織り交ぜている。
 ただ、ある特定の国の音楽に固定されるのではなく、どこの国とも言えない無国籍感やさらに言えば時代性を超越した音を出しているのがアピフェラでもある。“ノートル・ダム” もヨーロッパ的であるが、具体性ではなくあくまで抽象性を感じさせる音だ。ヴォーカルやコーラスは一切入らず、楽器の音色のみでアルバムが作られている点も、この抽象性に一役買っているだろう。“アイリス・ワン” や “フォー・グリーン・イエローズ” などは一種のライブラリー・ミュージックのようでもあるが、アーティスト性を打ち出すことによって型にハマった音を作るのではなく、ある意味で匿名的なサウンドにすることによって聴き手の想像力を広げていく。鳥のさえずりなどを交えた “パルス” は、そうした抽象性や匿名性をつき進めていったもので、アピフェラが目指す自然界の音を表現したものだ。

LITTLE CREATURES - ele-king

 “大きな河” の歌詞に「いつも負けるぼくら」の一節がある。そうかもしれない。大きな河に浮かぶ船では仕組みをつくった賢いひとが船頭役ときまっていて、そうじゃないひとたちはいつなんどきうねる河に放り出されないともかぎらない。それこそがこの世のことわりであり、アルバムの曲名にもみえる「ことわり」とはおそらく「理」をさし道理や条理を意味するが、たとえ理を問うても、無視されるならまだしも、はぐらかされるのがこのところはセキのヤマ、とかくにひとの世は住みにくいのは漱石の時代から世の常か、それとも近代の宿痾か。青柳拓次、鈴木正人、栗原務――リトル・クリーチャーズの3人は5年ぶりの新作『30』でそのように嘆いている、頭(かぶり)をふりつつ眉根をよせている、いやただしくは怒っている。静かに、青い炎のように。
 感情が腑に落ちるのは歌詞が日本語だからか。リトル・クリーチャーズといえばロック、ジャズ、アコースティックなフォーク音楽から最新型のエレクトロニック・サウンドまで、幾多の音楽性を血肉化しながら時代のツボを突くレコードを世におくりだしてきた。主眼となるのは音であり、音が語るなかにのみ彼らの真意はあり、ことばは副次的な要素にすぎない。むろんこれは推察にすぎず、真相は訊ねてみるほかないが、英語の歌詞を選択したのは基準を国内よりも海外に置き、言語の意味よりも響きを優先するかにみえた。すくなくとも記号と細分化の時代だった1990年代の落とし子として彼らを認めるものにとってことばはいつも音におくれてやってきた。
 8枚目のアルバム『30』ではそのことはあてはまらない。リトル・クリーチャーズは全編で日本語の歌詞をもちいているのである。題名の『30』は1990年のデビューから30年たったことをさすという。しからば満を持しての舵取りかと思いきや端緒は5年前の前作『未知のアルバム』ですでにひらいていた。そこで彼らははじめて全編日本語詞を採用しきりつめたアンサンブルに簡素な述懐を組み合わせていた。私は不勉強ながらこのアルバムを後になって手にとり青柳、鈴木、栗原の個の合算からなりたつリトル・クリーチャーズという等式の左項と右項がひっくりかえる気持ちがした。1+1+1は3にしかならないが、3は1+2にも2+1にも、元のとおりの1+1+1になることもある。ソロからサポートまで、おのおのが個別の活動をおこなう彼らにあってバンドとはたがいの成長をたしかめあう実家みたいなもので、数年ごとにたちより英気を養ったらまたそれぞれの場所におもむいていく。音楽家のキャリアを積むなかであたりまえに青柳、鈴木、栗原の集合体だと思い込んでいたリトル・クリーチャーズはじつのところひとつの生き物(クリーチャー)だった――などと述べてもダシャレにもならないが、『30』にはこの30年3者がつちかったものが詰まった太くしなやかなうねりがある、どこをきっても個に分解できないむすびつきがあり音の疎密を問わず意思のゆきとどいた空間性が底流をなしている、それらをたずさえ彼らは別天地へむかうのである。
 “速報音楽” は狼煙である。注意深く耳を傾けるものにとどく高らかに鼓吹しないファンファーレである。「そのラジオもっと音上げよう」と青柳拓次は歌いはじめる。ラジオは感受のメタファであるとともに、出会いの偶有性を意味し、おそらくは「情報をとりにいく」という主体的な行為がややもするとフェイクにまみれる昨今の風潮を言外ににおわせている。清志郎がベイエリアやリバプールからキャッチしたように、リトル・クリーチャーズのアンテナはナイジェリアやバンコクやジャマイカからやってくるホットなナンバーをすくいあげる。ポイントは「踊れる」かどうか。そして踊るというポピュラー音楽の基底部にあるものは『30』にくりかえしあらわれるキーワードになっていく。とはいえ彼らが志向するのは派手派手しいダンス音楽とも趣を異にする。存分に間をとった合奏から滲み出すグルーヴとでもいえばよいだろうか。ギターのトーン、ベースのノリ、ドラムのタメ、それらの重なり合いで生じる残像のような効果もひきだしながらトリオ編成の旨味が『30』の随所に散りばめてある。ややファットなドラムとシンプルなギターのサウンドが『30』の音像の土台となり、鈴木のベースはスラップからシンセベース風の音色まで遊動的な役割をうけもっている。めいめいが曲も詞も書くグループとあっては曲ごとの色合いもさまざまだが、アルバム総体はグラデーションを描くにも似た自然な広がりをたもっている。12曲中8曲をしめる青柳の色がつよいとはいえ、鈴木の手になる “左目” や “踊り子” の編曲の巧みさ、栗原の “悲しみのゆくえ” や “ハイポジション” のストレートなアプローチがアルバムにダイナミズムをもたらしているのはまちがいない。それらが煽情的で装飾的な方法論とは無縁になりたっているのは3者の30年におよぶ来歴を彷彿させてあまりある。現状を追認するでも冷笑主義におちいるでもない、そのような場所にふみとどまるからこそ青柳の問題提起も私たちの日々と地続きのものとうけとれるのであろう。
 『30』は日本語という言語と、ハイブリッドという簡単な言い方ではおいつかない音楽的複合性で歩をすすめるリトル・クリーチャーズの現在地を照ら出している。1990年、才気煥発な若者として音楽シーンに登場し、新しもの好きのファンはもとより大向こうをうならせつづけて30年、またたくまに月日はすぎたが、思えば遠くにきたものだという慨嘆はリトル・クリーチャーズとは無縁である。『30』にもそのような姿勢はない。かわりに彼らは『30』のフィジカルを『STUDIO SESSION』と題したライヴ盤との2枚組の仕様で30年の時間の厚みを描き出そうとする。キャリア全域からまんべんなく選曲した全編英語詞の全10曲はベスト盤の意味合いもかねるが、アコースティック基調のまろやかな演奏に感じるのはいまここで前を向く彼らの姿である。2枚組のあざやかなコントラストはそのことを立体的にうかびあがらせるばかりかフィジカルの利点をしめしてやまない。
 それにつけても「踊りかける」ってすてきな曲名ですね。

BES - ele-king

 SWANKY SWIPE / SCARS としての活動でも知られるラッパーの BES。昨年リリースされた I-DeA とのミックス『BES ILL LOUNGE Part 3 - Mixed by I-DeA』から、BIM とのコラボ曲のMVが公開された。同曲のデジタル・シングルも本日より配信がスタートしている。
 さらに、同曲を収めたアナログ盤『BES ILL LOUNGE Part 3 - EP』も本日リリース。完全限定プレスとのことなので、なくなるまえに急げ!

BES と BIM のコラボ曲 “Make so happy” のMVが公開! また同曲のデジタル・シングルが本日より配信開始となり、完全限定プレスのアナログ盤『BES ILL LOUNGE Part 3 - EP』も本日リリース!

SWANKY SWIPE / SCARS としての活動でも知られ、活発な活動を続けているシーン最高峰のラッパー、BES。日本語ラップ・シーンにおける数多くの重要アーティスト/作品に関与してきたシーンを代表するプロデューサー/エンジニア、I-DeA。その両者のジョイントで昨年11月にリリースとなった最新ミックス『BES ILL LOUNGE Part 3 - Mixed by I-DeA』から BIM とのコラボによる “Make so happy” のミュージック・ビデオが公開! メジャーからインディペンデントまで様々なアーティストの作品に関与してきた映像クリエイター、渡邉剛太氏がディレクションを担当し、BES と BIM だけでなく I-DeA やプロデュースを担当したビートメイカー、K.E.M もカメオ出演しています。(※映像は最後までご覧ください)

また同曲のデジタル・シングルがインスト付きで本日より配信開始となり、同曲も含むアナログ盤『BES ILL LOUNGE Part 3 - EP』も完全限定プレスで本日ついにリリース! アナログ盤には BIM の他に B.D.、D.D.S & MULBE、MEGA-G との各コラボによる新曲計4曲とその全インスト・ヴァージョンがコンパイルされております。

*BES "Make so happy" feat. BIM (Official Video)
https://youtu.be/9wDDIRhsaFs

[デジタル・シングル情報]

アーティスト:BES
タイトル:Make so happy feat. BIM
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年2月26日(金)
仕様:デジタル・シングル
Stream/Download:
https://smarturl.it/bes_makesohappy

[12EP情報]

アーティスト:BES
タイトル:BES ILL LOUNGE Part 3 - EP
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年2月26日(金)
品番:P12-6776
仕様:レコード(完全限定プレス)
税抜販売価格:2,800円

★P-VINEショップ限定で予約・購入いただいた方に先着順で「特典ステッカー」がつきます!

[トラックリスト]

SIDE-A:

1 SWS feat. D.D.S & MULBE
 Prod by DJ SCRATCH NICE
2 美学、こだわり feat. MEGA-G
 Prod by BES & I-DeA
3 Make so happy feat. BIM
 Prod by K.E.M
4 表裏一体 feat. B.D.
 Prod by DJ SCRATCH NICE

SIDE-B:

1 SWS (Instrumental)
 Prod by DJ SCRATCH NICE
2 美学、こだわり (Instrumental)
 Prod by BES & I-DeA
3 Make so happy (Instrumental)
 Prod by K.E.M
4 表裏一体 (Instrumental)
 Prod by DJ SCRATCH NICE

Andrew Nosnitsky - ele-king

 毎年年末、彼のブログにポストされる「ベスト・ラップ」のリストは、多くのラップ愛好家たちの指針になっているという。オークランドを拠点に活動するヴェテラン・ヒップホップ・ジャーナリスト、Noz ことアンドリュー・ノスニツキーによるカセットテープが〈C.E〉からリリースされている。

 となるとやはりヒップホップのミックスなのかと思いきや、〈C.E〉のウェブサイト上で試聴すると、いきなりエクスペリメンタルなドローンが流れてくるから驚きだ(右上の再生ボタンをクリック後、いちばん上のカセットをクリック)。途中からちゃんとラップ・ソングに切り替わるものの、これはなかなかおもしろいアイディアである。ぜひチェックを。

Andrew Nosnitsky
フォーマット:カセットテープ
収録音源時間:約60分(片面約30分)
発売日:発売中
販売場所:C.E
〒107-0062 東京都港区南青山5-3-10 From 1st 201
#201 From 1st Building, 5-3-10 Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo, Japan 107-0062
問合せ先:C.E
www.cavempt.com

interview with Smerz - ele-king

DJラシャドの音楽がわたしたちのスタート地点だったと思う。いまではほかのいろいろな音楽にインスパイアされているけれどね。(アンリエット)

 スメーツが登場したとき、多くのリスナーが惹きつけられたのは彼女たちの音楽のクールな(冷たい)感触だったのではないだろうか。重たく金属的なビート、素っ気のない電子音の連なり、体温の感じられない醒めた歌。「Okay」(2017年)と「Have Fun」(2018年)の2枚のEPは当時、インダストリアル・リヴァイヴァルとオルタナティヴR&Bの北欧からの応答といちおうは位置づけられたが、その冷ややかさはどこかミステリアスなままで、スカンディナヴィアの冬の暗がりから微笑んでいるようだった。
 ノルウェーの首都オスロで育ち、同じ高校に通っていたにも関わらずデンマークはコペンハーゲンの音楽学校で親しくなったというアンリエット・モッツフェルトとカタリーナ・モッツフェルトのふたりは、ジューク/フットワークへの共通の関心などからエレクトロニック・ミュージックに接近。両者ともプロデューサーとシンガーを兼ね、ふたりの緊密な関係性をあくまで軸としてDIYにトラックを制作していく。〈XL〉から「Have Fun」をリリースする頃には、エリカ・ド・カシエールとともにコペンハーゲンの新しいR&Bとして注目されることとなった。

 だから、期待の新星としては間髪入れずにフル・アルバムをリリースしそうなものだが、ふたりは慣習に囚われずにしばしの沈黙に突入する。3年ほどのブランクを経ていよいよ放たれたデビュー作『Believer』は、なるほどEP群からかなりの飛距離を感じさせるものとなった。
 ダークなトーンのエレクトロニックR&Bという路線は踏襲しながら、オペラやクラシック、コンテンポラリー・ミュージック的な管弦楽の要素を大胆に、しかし断片的に導入。さらにノルウェーのトラッド・フォークの引用も加わり、異形のマシーン・ミュージックが出現している。“Rain” の気だるげでミニマルなR&Bにはエキゾチックな室内楽がまとわりつき、歌を中心に置いたシンプルなピアノ・バラッド “Sonette” にもひどくアブストラクトなシンセが響いてくる。聖と俗とがエレクトロニック・ミュージックのもとで入り乱れるのはビョークの新世代的な展開とも言えるかもしれないが、しかし、スメーツにはビョークのような情熱的なエモーションはない。
貪欲な実験が立て続けに繰り広げられるアルバムのなかで、思いがけずストレートにポップな “Flashing” などを聴くとむしろ煙に巻かれたような気分になるが、サイバーな響きと北欧フォークの土着的な旋律が同座するこの曲からはアヴァンとポップの微妙な領域を進もうとする意思が感じられる。ジャンル・ミックスが当たり前になった時代に、ほかにはない配合で音楽を混ぜ合わせて新しいものを生み出そうとすること。それも、どこまでもクールに。
 すべてのクリエイションを自分たちで掌握する女性ふたりのデュオというところも現代的だし、ラース・フォン・トリアーの諸作を思わせるミュージック・ヴィデオなどヴィジュアル展開を見るとファッショナブルな存在になっていくだろうことも予感させるが、何よりもそのサウンドにおいて、『Believer』はポップ・ミュージックのこの先の可能性を静かに照らしている。

ポップのメロディには、人びとに何かを伝えるというコミュニケーション能力が高く備わっていると思う。ポップ・ミュージックはストーリーを直接的に伝えるのがとても上手。(カタリーナ)

日本では現状ノルウェー出身のデュオと紹介されることが多いのですが、現在もデンマークのコペンハーゲンを拠点にしているのでしょうか? 自分たちの意識としては、「コペンハーゲンのデュオ」というアイデンティティのほうが強いですか?

アンリエット(以下H):わたしたちはいまそれぞれ違う都市にいるのね。カタリーナはオスロにいて、わたしはコペンハーゲンにいる。どちらの都市も違った意味でわたしたちの活動にとって大切だと思う。

初めてのインタヴューですので、基本的なところから少し聞かせてください。初期のバイオを見ると、DJラシャドジェシー・ランザに影響を受けたとありますが、結成時にふたりを強く結びつけた共通のアーティストや作品はどういったものでしょうか? 音楽以外でもだいじょうぶです。

カタリーナ(以下C):かなり昔の話になるね。たくさんあるから難しいけど、デンマークの音楽をふたりでよく聴いていた。でもやっぱりDJラシャドの音楽が当時のわたしたちを象徴していると思う。わたしたちにとってすごく新しいものに感じられたし、彼の平然とした態度もカッコ良かったし、複雑なリズムで遊ぶ感じも楽しくて好きだった。

H:そうね、DJラシャドの音楽がわたしたちのスタート地点だったと思う。いまではほかのいろいろな音楽にインスパイアされているけれどね。

初期のライヴの映像を見ると、おふたりとも機材を触り、歌っていますが、楽曲制作においておふたりの役割分担のようなものはありますか?

C:楽曲制作のときの役割分担はとくにないよね。ライヴのときはヴォーカルのパフォーマンスがメインになるから、機材はバックトラックをかけるくらいしか使っていないの。今回のアルバムでは過去に作ったトラックを生演奏してみた。アンリエットはヴァイオリンを弾いて、わたしはピアノを弾いている。でもライヴのときは、できあがったバックトラックを披露するという形で機材を使っているね。

H:楽曲制作のときはまた別のプロセスで、わたしが何かひとつのことをやって、カタリーナがまた別のことをやったりという感じで進めている。そうすることによって、おたがいを補完するような音楽にしていく。だからおたがいからフィードバックを受け合っているというプロセスなのね。たとえば、カタリーナがビートを作っていたら、わたしはそこからインスピレーションを得て、何か次のことをしようと思う。それをお互いの間で繰り返してやっている感じね。

EP「Okay」や「Have Fun」の時点でスメーツの個性はかなりできあがっていたと思っていたので、『Believer』でのサウンドの拡張には驚きました。デビュー・アルバムとしては時間をかけたほうだと思うのですが、それは音楽的な関心の幅がこの3年で一気に広がったからですか?

C:そうだと思う。新しい音楽にずっとインスパイアされ続けていると、自分の作品が完成したとなかなか思えなくて。新しい発見がつねにあったり、何か新しいことをやりたいという衝動につねに駆られていると、アルバムの完成というものが見えなくなってしまう。でもそういうことをやりたいという大切な時期があったから、今回のアルバムという形になった。

H:新しい音楽を作りたいという時期がしばらくあったのよね。

C:でもアルバム制作の時期のなかにも様々な段階があったね。ひとつの時期というわけではなかった。

通訳:制作中にも複数の段階があったというわけですね。

C:その通り。

ポップな音楽を作るのはもっとも難しいことのひとつ。だからその要素を扱って作業するのはとても楽しい。(アンリエット)

とくにEPにおいてコンテンポラリーR&Bからの影響が強いように思います。スメーツはトラックだけでもじゅうぶんに個性的で実験的ですが、ポップな歌の要素を捨てることもないですよね。スメーツにとって歌のポップさはなぜ重要なのでしょうか?

C:ポップのメロディには、人びとに何かを伝えるというコミュニケーション能力が高く備わっていると思う。音楽の聴き方はひとによって違うから一概には言えないけれど、個人的には、ポップ・ミュージックはストーリーを直接的に伝えるのがとても上手だと思っている。

H:それにポップな音楽を作るのはもっとも難しいことのひとつだとわたしは思っている。だからその要素を扱って作業するのはとても楽しい。いろいろな工夫をしてポップな音楽に仕上げていくのは楽しいよね。

ただ、歌の入っている曲においても、R&Bのヒット曲のようにエモーショナルに歌い上げないですし、スメーツにはどこか冷たさや醒めた感覚がつねにあるように思えます。この美意識はどこから来るものなのでしょうか?

C:それは意図的なものではないよ。それはわたしたちの作業の仕方から来るものなのかもしれないし、わたしたちの能力や技術によるものなのかもしれない。

H:わたしたちがインスパイアされた、ソースとなった音楽がわたしたちにそういう影響を与えて、その結果としてわたしたちの音楽にそういう雰囲気が含まれているのかもしれない。でもたしかに意図したものではないね。

C:それはパソコンで作業しているからなのかとたまに思う。パソコンだと、ピアノやギターを弾いて作曲するときとは違って、(画面を)縦に見ながら作業することが多いでしょ。でもわたしたちはその作業方法を少し変えていこうとしていて、もう少し横に進めていく感じの作業にしたいと思っている。パソコンで作業していると、最初から細かい要素をいろいろと詰めこみがちになってしまう。サウンドが最初から大切なものとして捉えられてしまうから。短い枠のなかで、取り扱う要素が多くなりがちだと思う。

リズムは初期からジューク/フットワークの影響がありますよね。あなたたちから見て、フットワークの面白さはどういったところにありますか?

C:ヒップホップと共通する要素があって、リズムがあって、とても直感的なところ。ひとを引きつける要素があるところ。フットワークは作るのが難しい部分もあるけれど、その瞬間を楽しめるし、ミックスをするのも楽しい。いいエネルギーがある。

H:難しい部分があるから、すべてを見透かすことができないというか、聴いていて毎回新しい発見があると思う。

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パソコンで作業していると、最初から細かい要素をいろいろと詰めこみがちになってしまう。サウンドが最初から大切なものとして捉えられてしまうから。短い枠のなかで、取り扱う要素が多くなりがち。(カタリーナ)

『Believer』ではオペラやコンテンポラリー・ミュージックの要素が強く入っていることが初期のEPとの大きな違いですが、これはアンリエットさんが作曲を学んでいることが関係しているのでしょうか。そうした要素を、スメーツのエレクトロニック・ミュージックとミックスしようという発想は自然に生まれたものですか?

H:いえ、その発想は、わたしが学校で学んだこととは直接的な関係はないと思う。むしろスメーツとして、いままでよりも幅広いことをやってみようというチャレンジから来ているんじゃないかな。

C:いつだったか忘れてしまったけれど、わたしとアンリエットがとても美しい音楽を聴いていて、それをとても楽しんでいたのね。そして、「このスタイルをわたしたちなりに解釈して音楽に反映させてみよう」ということになった。それがアルバムの曲になるなんてそのときは思っていなかったし、とくに何かを意図したわけではなかったんだけど、この宇宙でわたしたちが何を作れるかやってみよう、という気持ちで制作していたから。

H:でも「これからは新しいことをやろう!」というわかりやすいシフトがあったわけでもなくて。

C:楽しそうだからやってみようか、くらいの気持ちだったよね。

H:昔からそういうアプローチでやってきたんだけど、もう少し幅を広げてみようと今回は思ったんだ。

『Believer』を制作しているこの3年ほどで、おふたりが共通して強く刺激を受けたアーティストや作品は具体的にありますか?

C&H:(即答)バッハ!

C:インスピレーションとして挙げるにはリスクの高い答えかもしれないけど(笑)

通訳:バッハの音楽はタイムレスですよね、複雑なものもあるし。

C:そう! 簡単な音楽ではないけれど、バッハには強いインスピレーションを受けた。それ以外には、コペンハーゲンの音楽シーンにいる友人たちにも刺激を受けたよね。コペンハーゲンの音楽シーンはスタイルごとに細分化されていないというか、少なくともシーン内部にいる者としてはそう感じる。だからスタイルが「分断されていない」という概念に刺激を受けたと思う。

また、北欧の伝統的な文化の探究がヴィジュアル面においてもサウンド面においても『Believer』にはありますよね。これは今回、意識的にアクセスしたものなのでしょうか?

C:サウンド面は意識的なものではないね。アルバムでも、音楽のどの部分が北欧的なのかをピンポイントするのは説明しづらいと思う。でもヴィジュアル面に関しては、わたしたちが去年のロックダウンの最中に主に北欧にいて、ヴィジュアルを制作していたから、そういう選択肢を取るのが自然だった。

コペンハーゲンの音楽シーンはスタイルごとに細分化されていないというか、少なくともシーン内部にいる者としてはそう感じる。だからスタイルが「分断されていない」という概念に刺激を受けたと思う。(カタリーナ)

“I don’t talk about that much” のミュージック・ヴィデオで見られるのは、ノルウェーのハリングダンスでしょうか? 日本ではあまり馴染みがないものなのですが、どういったところにその魅力がありますか?

C:社交ダンスの一種で、どの国にもそういう踊りがあると思う。人びとが集って踊ることによってコミュニケーションを取っている。みんながその踊りという共通言語を知っているから。それってすごく美しいことだと思うのね。ノルウェーにもハリングダンスがまだあれば良いのにと思う。この要素は、パーティにもあれば良いのにと思うものだから。話さなくても、みんなといっしょにいるという一体感があって楽しめる方法。そしてみんながルールを知っている。ハリングダンスもそういう踊りで、色々なパターンに分かれているんだけど、「スプリンガード(訳注:ハリングダンスのパターンのひとつだと思います)をやりましょう!」となれば、みんなどういう動きかを知っていて、どのように踊れば良いのかを知っている。みんなといっしょになってコミュニケーションできる良い方法だと思う。ハリングダンスを通じて、自分のパーソナルな部分も表現することもできるし。そういう魅力があるね。

通訳:ではノルウェーにはハリングダンスは現在はないということですか? 昔の伝統的な踊りということでしょうか?

C:そう、昔の伝統的な踊りね。

ベンジャミン・バロンさんが監督した『Believer』の一連のヴィジュアル・イメージには、北欧の土着的な文化の要素が見られます。本作のヴィジュアル面においてのテーマはどういったものでしたか? また、それをどのように作り上げていったのでしょうか?

C:トレイラーのヴィジュアルを作ったときは、まずアルバムを聴き返して、サウンドには演劇っぽい、ドラマっぽい感じがあると思ったのね。アルバムの曲に登場する様々なシーンが感じられるトレイラーを作ろうと思った。それはより大きな物語から抜粋されたシーンなんだけどね。大きな物語というのは、スメーツの過去3年間の人生。アルバムはその一部。トレイラーはそれをさらに縮小したものということになるね。トレイラーのドラマティックな要素を活用したかった。トレイラーって、それぞれの物語の肝心な部分にすぐ行けて、何の結末も見えないじゃない? そういうのが楽しいと思ったんだ。設定に関しては、時代背景や場所がどこか分からないように、様々な要素を織り交ぜたね。

EP「Have Fun」のジャケットのイメージも強力でしたよね。シスターフッドと言うにはダークなムードもあったように思いますが、スメーツの表現と現代のフェミニズムの間にはどのような関係がありますか?

C:関係をピンポイントで説明するのは難しいけど、現代の時代において女性であることについての物語を語ることによって、フェミニズムの流れの一部という意味になると思う。わたしたちの個人的な物語を共有して、ほかのひとが共感してくれることが大切なのかもしれない。

H:いろいろな物語を共有していくことによって、人びとの視野が少し広くなれば良いと思う。

夢や期待が現実と合致するときもあればしないときもあるという考えがベースになっている。「Believer」というのは、何かが起こるのを信じていたり、信じていなかったりしているひとなんだけど、そういう夢や期待が実現するかしないかという状態。(カタリーナ)

タイトル・トラック “Believer” は歌詞を見るとラヴ・ソングと言えると思いますが、「Believer」という言葉は現代社会を見るとどこか暗喩的な響きがあるように思えます。この言葉をアルバム・タイトルにした理由は何でしょうか?

C:夢や期待というものが、現実と合致するときもあれば合致しないときもあるという考えがベースになっている。「Believer」というのは、何かが起こるのを信じていたり、信じていなかったりしているひとなんだけど、そういう夢や期待が実現するかしないかという状態を指している。その気持ちを総括したくて『Believer』というタイトルをつけた。

“Hester” や “I don’t talk about that much” には強力にレイヴ的なサウンドが入っていますが、レイヴ・カルチャーに思い入れはありますか?

H:レイヴ・カルチャーに強い思い入れはないけれど、コペンハーゲンには良いクラブ・シーンやテクノ・シーンがあるからそこからインスピレーションは得ている。

C:でも、昔のレイヴ音楽というか、多幸感がある感じの音楽には影響を受けているよね。

H:ユーロビートとかね。

C:そうそう、ああいう音楽には多幸感が強く現れていて、そういう要素をわたしたちの音楽にも取り入れたかった。そのような音楽が生み出す感覚というものに興味があるから。

クレジットを見るとペダー・マネルフェルト(Peder Mannerfelt)がいくつかのトラックで参加していますが、彼が本作で果たした役割はどういったものでしたか?

C:彼はわたしたちの音楽にとても良いフィードバックをくれた。完成したアルバムを通しで聴くというセッションをしたんだけど、最初にいっしょに聴いてもらったひとがペダーだった。彼の意見を聞けたのも良かったし、わたしたちも第三者といっしょに聴いたことによって、少し離れたスタンスからアルバムを聴くことができたと思う。そのときが、アルバム制作の過程におけるマイルストーンだった。彼といっしょに音楽を聴いたときに、わたしたちはアルバムを作っていたんだと初めて気づいたね。それまでは、ただいろいろなトラックを作っているという感覚だったから。ストックホルムにある彼のスタジオにはシンセサイザーがたくさんあって、“Lux” というトラックで彼はシンセサイザーを弾いてくれたり、ほかでもミキシングを手伝ってくれた。でも彼にいちばん感謝しているのは彼からのフィードバックね。

H:彼はとても良いひとで、良い友人という感じなのね。彼は外の人間だから、それが良かった。彼と過ごした1週間はとても素敵な時間だった。

現在、世界中がきわめて特殊な状況下に置かれているなかでのリリースですが、あなたたちにとって『Believer』はどのようなシチュエーションでリスナーに聴いてほしい作品ですか?

C:それはリスナーの自由だと思う。でも数多くのシチュエーションで聴いてもらえたら嬉しいね。

H:わたしも同感。わたしは洗い物をしているときに音楽を聴くのが大好きなんだ。

C:アルバムを通しで聴くように作ったんだけど、それも絶対そうしなくちゃいけないというわけでもない。でも一応、アルバムとしてまとめた作品ね。

『Believer』はスメーツが現代のエッジーなポップ・ミュージックとシンクロしながら、しかしどれとも異なる個性を見せつけたアルバムだと感じました。あなたたちにとっては、『Believer』でもっとも達成できたと思えるのはどういったことでしょうか?

C:アルバムがリリースされる前に、何を達成できたのかを答えるのは難しいけれど、わたしたちがアルバムを作ってきた過程は本当に素敵な時間で貴重だった。

H:わたしもそう思う。

C:それに、音楽を作っている過程で素敵な時間をたくさん過ごしてきたら、そこから何か良いものが生まれるかもしれないと思うのね。わたしたちがいっしょに制作をして、つねに会話をして、その会話の内容を音楽に反映できたことに満足感を得ている。それに制作中は、つねに新しいものを作りたいという欲求があって、その感覚があったこと自体に達成感を抱いているね。

H:それから、音楽を制作しているときにふたりで遊びながら演奏しているときも達成感があったね(笑)

通訳:とても楽しんで制作ができたようで素晴らしいですね!

H:次のアルバムも作るよ!

Brother Nebula - ele-king

 昨年末リリースですがじわりじわりと聴いているうちに紹介したくなりまして。ということで現在はロンドン・ベースのレーベル〈Legwork〉からの、ブラザー・ネブラのアルバム『The Physical World』。サウンド的にはザ・ブラック・ドッグ・プロダクション~バリル名義あたりのテクノをさらに今様に、そしてDJトラック的に野太く進化させたそんなサウンドで、軽快なブレイクビーツとデトロイト・テクノ的な叙情的なシンセのラインが、思わずその手の音が好きな人にはたまらない音となっています。その手のサウンドのライヴァルと歩調を合わせつつ、リスニング・アルバムとしても、またDJトラックとしても十分に効果を発揮してくれそうな、そんなシンプルな力強さとグルーヴも兼ね備えたアルバムです。

 これまでわりとミステリアスなアーティストで、〈Legwork〉からのその他のリリースでは、もうすこしエレクトロ寄り、音でいうとドレクシアの故ジェームズによるジ・アザー・ピープル・プレイス名義で展開したコズミックかつメランコリックなエレクトロ・トラックをシングル「A Brief History of Lasers」で展開していたり(アルバムの音楽性とは地続きながら別のアプローチなのでこちらもオススメしたい)。また同レーベルからは、〈Future Terror〉での来日などで日本では知られる、アメリカ西海岸、サンフランシスコのウェアハウス・テクノ・シーンの重鎮、DJソーラーと S.I.S. 名義で作品を出していたり(コチラはちょいとイタロが入ったエレクトロ・ディスコで、本作に通じるブレイクビーツ・ハウスなリミックスも披露)、と、わりと謎の存在でした。ところがどうやら最近しれっと Discogs にばらされた情報が本当であれば、その正体はレーベルを主宰するサウンド・エンジニアでもあるベテラン、Lance DeSardi の模様です。もともとはテキサス、ダラスの出身でこれまでにNYの〈Coco Machete〉や〈Chez Music〉といったハウス・レーベルで本名名義や Land Shark で作品をリリース(Land Shark 名義のアルバムは〈Coco Machete〉から、西海岸のハウスの牙城〈OM〉からもライセンス)。

 またキャリアに関しても、2000年代前後にには西海岸のディープ、ハウス・レーベル、例えば〈Seasons〉の作品にクレジットされるなどアーティストとして、さらにはエンジニアとしても長いキャリアがあり、大物アーティストのリミックスなど含めて、さまざまな作品を手掛けていることがそのホームページでわかります。現在はアメリカからハックニーへ移住。
 こうしたキャリアを考えればソーラーとのコラボや、レーベル〈Legwork〉で、ダラス出身で Convextion、E.R.P. 名義などでディープなコズミック・テクノ~エレクトロを奏でるジェラルド・ハンソンの作品をリリースしていることなどもうなづけるといったところでしょうか。

 さてくだんの『The Physical World』は、冒頭で書いたようにそのサウンドのキモはやはりブレイクビーツを援用したリズム・ワークで、表題曲ではイントロでビッグビート?と言ってしまいそうなリズムを鳴らしつつ、グッと引き込まれるメランコリックなシンセのメロディを展開していくあたりで一気にアルバムのとりこに。やはりブレイクビーツ上でデトロイティッシュなテクノを展開した “A Question”、前述のようにブラック・ドッグのバリル名義の作品を豊富とさせる “A Snake In Paradise” “Living WIth It”、ブロークンビーツ的な “The Big If” やジョーイ・ベルトラムの初期を彷彿とさせるアルバムのなかではヘビーな “Clairvoyant” も良きアクセントになっています。

 往年のテクノ・ファン──アズ・ワン、グローバル・コミュニケーション、ブラック・ドッグなどのサウンドが好きな方には現代のサウンドの入り口に、そしてこのアルバムをお好きな方はぜひとも前述のような過去の名作も聴いてみると、なんとも心をわしづかみにされるのではないでしょうか。そんな時代をつなぐ架け橋のようなアルバムでもあったりすると思います。
 とはいえ、もちろんそのサウンドは単なるリヴァイヴァルではなく、現在のアップデートがなされた音であり、その音質や空間表現などに関しても、過去のものとはかなり別の領域でのサウンドのジョイがあります。これは1995年頃に、現在ELMと呼ばれているテクノ・ミュージックの、ある可能性郡がトリップホップ~ジャングル、ハード・ミニマル、エレクトロニカへと別れて霧散してしまわず、ダンス・ミュージックとしての強度、つまるところシンプルなグルーヴ感を失わずに、どこかで生き続けて進化したら……といったことを想像してしまうかのような作品でもあったりします。

Satomimagae - ele-king

 サトミマガエ、憶えてらっしゃるだろうか? かつて畠山地平のレーベル〈White Paddy Mountain〉から作品を発表していた、あまりに独自の世界観を表現するフォークシンガーだ。安易な喩えで恐縮だが、あえてわかりやすく言えば、Grouperと比肩されうるサウンドの持ち主である。孤高の……という言葉も現代は安っぽく使われているが、彼女には相応しいのではないだろうか。
 彼女の新しいアルバムが〈RVNG Intl.〉からリリースされることになった。4月23日、タイトルは『Hanazono』。先行シングル曲「Numa」はリリースされたばかり。忘れがたい音楽が待っています。

Satomimagae – Numa [Video]

Satomimagae
Hanazono

PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-151
CD / Digital
2021.04.23
2,000yen + 税

Track List:
01. Hebisan
02. Manuke
03. Suiheisen
04. Tsuchi
05. Houkou
06. Uzu
07. Kaze
08. Numa
09. Ashi
10. Ondo
11. Kouji
12. Uchu
13. Kunugi (Bonus Track)

※日本独自CD化
※ボーナス・トラック1曲収録
※ヴァイナルはUSはRVNG Intl.、オランダはGuruguru Brainからリリース

Pre-order: https://orcd.co/r6qoo37

CAN - ele-king

 昨年、日本ではほぼ全カタログのリイシューを展開し、大きな反響を得たドイツの伝説、CAN。ele-kingからも別冊を刊行しました。
 いまだにその影響力があり、ロック史においてもヴェルヴェット・アンダーグラウンドやクラフトワークらと並んで重要なバンドのひとつに挙げられるであろうこのバンドは、自分たちのスタジオで数多くのセッションを記録していたことでも知られており、その断片はのちのち発表されたりもしているのだが、ライヴ音源に関しては、1997年に公式に発売された『Music (Live 1971 - 1977) 』のみ。しかし、これはまず音質に問題があり、しかもひと晩のライヴの記録ではなく、残っている使えそうな曲単位でのライヴ音源集であり、映像作品からの抜粋も混じっている。
 そんなわけで、CANの、当時は3時間以上ぶっ通しで演奏されたというライヴ演奏の醍醐味を記録したものは過去になかった。なんどかライヴ録音を試みたことはあったのだが、録音は失敗に終わったという。しかしながら、そうした失敗とは別に、劣化したテープによるローファイ録音のブツはいくつか残っていた。それらを現代のデジタル・レストレーション技術によって最高の音質にまで高めることができれば、全盛期のバンドのライヴ演奏を楽しむことができるだろう。
 〈Spoon〉と〈Mute〉の合同プロジェクト『CAN:ライヴ・シリーズ』では、イルミン・シュミット監修のもと、CANのライヴ音源を何回かに分けて発表する。まずは1975年のシュトゥットガルトでのライヴから。ダモ鈴木脱退後の、バンドは4人になったばかりの、『スーン・オーヴァー・ババルーマ』から『ランデッド』のころの演奏。だがヒット曲の再現ではない。当時のライヴでしか聴けなかった、長きにわたって歴史に埋もれていたCANのスケールの大きな演奏をいま堪能しよう。

「Stuttgart 75 Eins」ダイジェスト音源


以下、レーベルの資料から

 CAN は1968年にケルンのアンダーグラウンド・シーンに初めて登場し、初期の素材はほとんど残されていないかわりに、ファン・ベースが拡大した1972年以降は、ヨーロッパ(特にドイツ、フランス、UK)で精力的にツアーを行い、伝説が広がるにつれ、多くのブートレッガーが集まってきたのだ。『CAN:ライヴ・シリーズ』は、それらの音源の中から最高のものを厳選し、イルミン・シュミットとルネ・ティナ―による監修で、21世紀の技術を駆使して、重要な歴史的記録を最高の品質でお届けする。小説家であり、よく知られたCANファンであるアラン・ワーナーは言う──「彼らのライヴ・パフォーマンスは、壮大な物語が語られているかのようだ──異なる章からなり、気分や天候、季節、異国情緒あふれる風景など、変化に富んだ小説のような」

CAN
ライヴ・イン・シュトゥットガルト 1975 (LIVE IN STUTTGART 1975)

2021年5月28日(金) / 2枚組CD
TRCP-291〜293 / JAN: 4571260591011
2,700円(税抜)

-Tracklist-
CD-1
1. Stuttgart 75 Eins
2. Stuttgart 75 Zwei
3. Stuttgart 75 Drei
CD-2
1. Stuttgart 75 Vier
2. Stuttgart 75 Fünf

[Pre-Order]
https://smarturl.it/CAN_Live


Fishmans - ele-king

 今年でデビュー30周年のフィッシュマンズ、そのドキュメンタリー映画がこの夏ついに公開される。これは2019年に実施したクラウドファンディングによって1800万円以上の支援が集まり実現したもの。制作に2年以上を費やし、『映画:フィッシュマンズ』は完成した。
 バンド結成前夜から佐藤伸治の死、そして現在までを時系列順に追って描くこの映画は、茂木欣一がメインの語り部となって物語は進行し、そのときどきの映像が流れ、その合間に入る関係者の証言によって構成される。とくに100本以上のVHSなどの素材をデジタイズした本邦初の映像はファンにとっては見逃せない。180分という長編だが、良い場面がいくつもあり、それがまったく長く感じないほど内容が濃いという。夏が待ち遠しい!

手嶋悠貴監督コメント:
茂木欣一さんと約束した言葉、「これが最初で最後。嘘偽りなく、フィッシュマンズのすべてを話す」。フィッシュマンズのサウンドを作り上げていった仲間たち、音楽に人生を捧げた佐藤伸治さんの生き様が、三時間近いこの映画の中に詰まっています。彼らの素晴らしい音楽が、沢山の人々の心に響いて欲しい。それがこの映画の想いです。

茂木欣一さんコメント:
フィッシュマンズの仲間たちの出会い、別れ、再会。一人一人がどのような気持ちでここまでの日々を送って来たのか。カメラの前で心の内側を話してくれたみんなの言葉に僕は驚き、そして、こんな素敵な仲間たちと出会えた人生に感謝せずにはいられない。結びつけてくれたのは、佐藤伸治が作り出した色褪せることのない楽曲たち。この映画の完成にすべてを捧げてくれた手嶋監督はじめスタッフの皆さんの愛に、心からありがとう。

出演:フィッシュマンズほか
監督:手嶋悠貴
企画・製作:坂井利帆
撮影:山本大輔
録音・整音:⻩永昌
構成:和田清人
編集:大川景子
アートディレクター:大村雄平
制作プロダクション:ACTV JAPAN
配給:ACTV JAPAN/イハフィルムズ©THE FISHMANS MOVIE 2021
https://twitter.com/FishmansMovie
https://fishmans-movie.com

Smerz - ele-king

 まもなくアルバムが発売となるノルウェーの新世代エレクトロニック・デュオ、スメーツが新たなMVを公開している。明後日2月26日にリリースとなるファースト・アルバム『Believer』収録曲で、「恋愛関係においてチームとしての感覚を失ってしまうこと」が歌われているそう。
 また、3月20日午前6時(日本時間)にはバンドキャンプにてライヴ映像が配信されることも決定。エレクトロニック・ミュージックの今後を担っていくだろう2人のパフォーマンスをチェックする最良の機会だ。お見逃しなく。

Smerz
ノルウェーの新世代エレクトロニック・デュオ、
待望のデビュー・アルバムから最新MV公開。
Bandcamp でライヴ映像配信も決定。

2017年にデビューを果たし、翌年にリリースしたEP作品「Have Fun」で世界を震撼させたカタリーナ・ストルテンベルグとアンリエット・モッツフェルトによるノルウェーのデュオ、スメーツが〈XL Recordings〉より2021年2月26日にリリースする待望のデビュー・アルバム『Believer』から “Flashing” の最新MVを公開した。

Smerz - Flashing
https://youtu.be/3ANjeif2OSY

“Flashing” の公式ヴィデオは先月アルバム発表時に公開された “Believer” のMVと同様にベンジャミン・バーロンが監督を務め、ブロール・オーガストが衣装を担当。「恋愛関係においてチームとしての感覚を失ってしまうこと」を歌っているという “Flashing” は、90sユーロダンスのビートを基礎に、本人たちも公言するクラシックやオペラの影響が垣間見えるスメーツ独特のエレクトロニック・ポップ・サウンドが作り上げられている。

なお、スメーツは2020年9月にオスロで行われた音楽フェス Ultima Festival で収録されたライヴ映像を Bandcamp 上で3月20日午前6時(日本時間)にストリーミング配信することを合わせて発表した。00s初頭から未来へと向かう時空の旅のような、そしてモダニズムを通じてバロック様式を表現するようなスメーツ独特の世界観を味わうことのできる特別なライヴ・パフォーマンスとなっている。

ライヴ映像のご視聴&チケットのご購入はこちら:
https://smerzforyou.bandcamp.com/merch/nattin-med-smerz-soir-e-with-smerz
* 配信日時:3月20日午前6時(日本時間)
* 配信後24時間アーカイヴされます。
チケット代金:€4

近年、盛り上がりを見せるノルウェー地下のクラブ・シーンとも共振しながら、トランスやヒップホップ、R&Bと自身のバックグラウンドである北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、ミュージカル、クラシックのハイブリッドとして産み落とされた衝撃のデビュー・アルバム『Believer』は2021年2月26日に世界同時リリース。日本盤CDには解説及び歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックとして人気作「Have Fun」収録の全8曲が初CD化音源として追加収録され、対象店舗で購入すると先着でアート・カード・セットをプレゼント。輸入盤CD/LPとともに各店にて予約受付中。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: Smerz
title: Believer
release date: 2021/02/26 FRI ON SALE

国内盤CD
国内盤特典:ボーナス・トラックとしてEP「Have Fun」全8曲収録
解説書・歌詞対訳封入
XL1156CDJP ¥2,200+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11668

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