「!K7」と一致するもの

Charles Webster × Burial - ele-king

 90年代後半、UKディープ・ハウス・シーンのキイパースンとして活躍したチャールズ・ウェブスターが、2001年の『Born On The 24th Of July』以来じつに19年ぶりとなる新作『Decision Time』を送り出す。
 アルバムには(マッシヴ・アタック『Blue Lines』への参加で知られる)シャラ・ネルソンを筆頭に、これまでチャールズが関わってきたヴォーカリストたちが多くフィーチャーされている。フォーマットはヴァイナル/CD/配信の3種で、11月20日に発売。それに先がけ10月9日にはシングル「The Spell」もリリースされる。
 注目すべきは、アルバム収録曲 “The Second Spell” のプロダクションにベリアルが参加している点だろう。シングル「The Spell」でも彼はリミックスを手がけており、これはかなり珍しい。なんでも今回のコラボは、かつてベリアルがチャールズのプレゼンス名義による『All Systems Gone』(1999年)を自身の重要な影響源としたことがきっかけになったそうだ。
 驚くべきコラボ、これは大いに期待できそう!

single
Charles Webster
The Spell (feat Ingrid Chavez)

format: 12” vinyl / digital
release: 2020/10/9

A1. The Spell (Burial Mix)
B1. The Spell (Charles Webster Dub)
B2. The Spell (Charles Webster Vocal Mix)

album
Charles Webster
Decision Time

format: double vinyl / CD / digital
release: 2020/11/20

01. Burning (feat Sio)
02. This Is Real (feat Shara Nelson)
03. We Belong Together (feat Thandi Draai)
04. Love Lives (feat Sio)
05. I Wonder Why (feat Sipho Hotstix Mabuse)
06. Music (feat Thandi Draai)
07. Wait And See (feat Terra Deva)
08. Secrets Held (feat Emilie Chick)
09. The Spell (feat Ingrid Chavez)
10. The Second Spell (feat Ingrid Chavez)

Carl Craig & Moritz von Oswald - ele-king

 偉大なるテクノ・マエストロ、かつて一緒にカラヤンをリコンポーズドしたふたり、カール・クレイグとモーリッツ・フォン・オズワルドが新たなコラボ・プロジェクトをスタートさせている。
 新曲 “Attenuator” はここ2年のあいだにデトロイトとベルリンでおこなわれたセッションから生まれたもので、カールとモーリッツそれぞれのヴァージョンがある。それらを収めたシングルが10月23日に発売、フォーマットは配信と12インチ・ヴァイナルが予定されている。
 現在ショート・ヴァージョンが〈プラネットE〉のサウンドクラウドで公開中。予約はこちらから。


JAGATARA - ele-king

 これは観たい! 曲目リストを眺めているだけで興奮してくるけれど、超貴重かつ超入手困難なじゃがたらの映像作品、かつてVHSにてリリースされていた『ナンのこっちゃい HISTORY OF JAGATARA』3作を、Blu-rayにて復刻する企画が始動している。
 オーダーメイド方式で、予約数が一定に到達すれば商品化が実現、という流れ(10月1日現在では41パーセントの達成率)。予約の〆切は12月29日とまだ先ではあるが、いまのうちに予約しておきたい。
 詳細は下記URLからご確認を。

https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=0208&cd=DQXL000000785

JAGATARA、5時間超えの大作ヒストリービデオがBlu-rayで復活!

1990年、ヴォーカリスト江戸アケミの逝去に伴い制作され、JAGATARAの10年間に渡る活動から膨大な量のライヴ、リハーサル、レコーディング、インタビュー等の映像を3本のVHSに収めたヒストリー作品『ナンのこっちゃい HISTORY OF JAGATARA I〜III』。現在廃盤で超入手困難となっている本作品から約5時間半にわたる映像を1枚のBlu-rayディスクに収録。JAGATARA研究の第一級資料とも言える、貴重なシーン満載のファン必携作。

※本作品は商品化を前提としない資料用映像を素材にしており、お見苦しい箇所、お聴き苦しい箇所がございます。画質、音質クオリティは2003年発売のDVDと同等です。またオリジナル発売時に収録されていた「UNDER THE MOON」「SEX DRUG ROCK'N ROLL」は制作上の都合により収録されておりません。以上ご了承ください。

[ナンのこっちゃい HISTORY OF JAGATARA I]
01. HEY SAY
02. 無差別テロ
03. アジテーション
04. HEY SAY
05. 日本人て暗いね
06. ヴァギナ・ファック
07. HEY SAY
08. 日本株式会社
09. BABY
10. 家族百景
11. 夢泥棒
12. 少年少女
13. タンゴ
14. 裸の王様
15. 日本人て暗いね
16. 日本人て暗いね
17. クニナマシェ
18. ジャンキー・ティーチャー
19. もうがまんできない
20. ジャンキー・ティーチャー
21. 少年少女
22. タンゴ
23. 裸の王様
24. 日本人て暗いね
25. ある平凡な男の一日

[ナンのこっちゃい HISTORY OF JAGATARA II]
01. 夢の海
02. クニナマシェ
03. 岬で待つわ
04. 南国美人
05. 南国美人
06. みちくさ
07. BABY ROCK
08. BIG DOOR
09. OPENING
10. 少年少女
11. 都市生活者の夜
12. VIENUS WALTZ

[ナンのこっちゃい HISTORY OF JAGATARA III]
01. BLACK JOKE
02. TABOO SYNDROME
03. 中産階級ハーレム
04. ゴーグル、それをしろ
05. GODFATHER
06. CASH CARD
07. もうがまんできない
08. アジテーション’89
09. SUPERSTAR?
10. つながった世界
11. タンゴ

BLYY - ele-king

 池袋を拠点に2001年より活動を続けてきたというヒップホップ・グループ、BLYY (ブライ)が、活動20年目にして初のフル・アルバムとしてリリースした本作。メンバーの年齢的にもおそらく40歳を過ぎており、ベテランと言っても差し支えないと思うが、ライヴを中心に地道に(かつ着実に)キャリアを積んできた彼らの年輪のひとつひとつがしっかりと刻まれた、実に深く染み入ってくるファースト・アルバムだ。

 5MCによるマイクリレー、MCでもある alled がフルプロデュースしたトラック、そして DJ SHINJI によるスクラッチと、それら全てが、彼ら自身、リアルタイムに経験してきたであろう90年代から2000年代初頭のヒップホップがベースとなっており、現在進行形の日本のヒップホップとは全く違った空気感を放っている。例えばブーンバップ・ヒップホップの流れとも共通する部分は感じられるものの、しかし結果的に目指している方向性は全く異なる。個人的には最盛期の LAMP EYE や BUDDHA BRAND などを思い出したりもしたが、BLYY が醸し出すムードは、そういった往年のグループともまた異なる。彼らのサウンドの中にあるモノクローム感というか、ピュアでありながら薄汚れたようなダークな感触は、もしかしたら池袋という街の空気感がダイレクトに反映された結果なのかもしれない。

 勝手な想像ではあるが、彼らがグループ結成当初に作り上げたスタイルをそのまま継承し、純粋培養させながら、ひたすら磨き上げてきた結果でき上がったのが本作だとすれば、非常に納得がいく。その一方で、流行りには一切乗らずにひとつのやり方をひたすら20年も続けてきたのであれば、正直驚くしかない。アルバム1曲目の “MAN” を聞いただけでも、彼らの声質からフロウ、ライミング、リリックに込められた言葉のひとつひとつ、さらにサンプリング・ソースやトラックの出音まで、おそらく30代後半以降の日本語ラップ・ファンであれば、何か強く心に引っかかってくる部分があるだろう。単なるノスタルジーともまた違う、彼らなりの美学が作り出した究極のアートがこの作品には宿っている。

 ちなみに本作のリリース元は PUNPEE や BIM、SIMI LAB、C.O.S.A. らを擁する、あの〈SUMMIT〉だ。いまの日本語ラップ・シーンを背負って立つ存在である〈SUMMIT〉が、BLYY のようなアーティストの作品を世に送り出すというのは本当に意義深いことであり、改めてその審美眼には恐れ入る。

Katalyst - ele-king

 縁の下の力持ち──大物を陰で支えるミュージシャンたちが一堂に会したコレクティヴ、カタリストのデビュー作がリリースされる。
 故ロイ・ハーグローヴのRH・ファクターの一員であり、最近ではソランジュの世界ツアーに帯同していたブライアン・ハーグローヴを筆頭に、アンダーソン・パーク『Malibu』や(フローティング・ポインツの〈Eglo〉から出た)シャフィーク・フセイン『The Loop』、カマール・ウィリアムズ『Wu Hen』などに参加していた精鋭たちが集結、鮮やかなアンサンブルを聞かせるジャズ・アルバムに仕上がっている(各メンバーのバイオはこちらから)。
 日本盤はハイレゾ仕様とのことなので、チェックしておきましょう。

KATALYST
Nine Lives

ビヨンセやアンダーソン・パーク、ケンドリック・ラマーやソランジュ、ジェイ・Zといったビック・アーティストを支える大注目の精鋭ジャズ・コレクティヴ、カタリストによるデビュー作!! 確かなテクニックと絶妙なアンサンブルを聴かせてくれる、珠玉のアルバム。日本限定盤ハイレゾCD「MQA-CD」仕様にてリリース!!


Official HP : https://www.ringstokyo.com/katalyst

カタリストが掲げる “コンテンポラリー・インストゥルメンタル” は、ジャズのみならず、ヒップホップやR&Bのスターたちも魅了し、彼らはこれまで数々の重要なレコーディングやライヴに参加してきた。LAを拠点とする精鋭ジャズ・ミュージシャンたちによるコレクティヴが遂に完成させたデビュー・アルバムは、これまでの集大成であり、ここから始まる新たな変革を我々に聴かせてくれる。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : KATALYST (カタリスト)
タイトル : Nine Lives (ナイン・ライヴス)
発売日 : 2020/11/25
価格 : 2,600円+税
レーベル/品番 : rings (RINC68)
フォーマット : MQA-CD

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Brian Hargrove: Piano (Roy Hargrove’s The RH Factor, Solange)
David Otis: Sax (Mac Miller, SiR, Theo Crocker, Anderson Paak, Shafiq Husayn, Kendrick Lamar)
Corbin Jones: Bass, Sousa-phone & Tuba (Beyoncé, Jay-Z, Lupe Fiasco, Kendrick Lamar)
Jonah Levine: Piano, Trombone (Anderson Paak, Kanye West, Chance the Rapper)
Emile Martinez: Trumpet (MNDSN, SiR, Van Hunt, Iman Omari, Shafiq Husayn)
Greg Paul: Drums (Gary Bartz, Roy Ayers, Joao Donato, Kamaal Williams)
Marlon Spears: Bass (SiR, Lonnie Liston Smith, Kamaal Williams)
Brandon Cordoba: Piano
Ahmad DuBose: Percussion

Tracklist :

01. WhatsAname
02. FreeHand
03. BBB
04. Leimert Day
05. Leimert Night
06. Fitted
07. Fresh: Earth
08. Fresh: Fire
09. Fresh: Wind
10. FITTED Fitted
+BONUS TRACK 追加予定

KMRU - ele-king

 ケニア・ナイロビ出身のKMRU(ジョセフ・カマル)は、2017年ごろからDJ活動とアーティスト活動を開始し、翌2018年には「Resident Adviser」の「15 East African Artists You Need To Hear」にも選出された。

 活動初期は現在のようなエクスペリメンタルな作風ではなく、シンガーとのコラボレーション・トラック/曲を発表し、ケニアのエレクトロニック・ミュージック・シーンでは知られた存在だったという。トラックメイカー時代(?)のジョセフ・カマルはドイツのレーベル〈Black Lemon〉からジョン・トーマスとのコラボレーションEP「Eternal Summer」をリリースしたり、ポエトラ・アサンテワとのコラボレーション曲 “Round Pegs” を生みだしたりするなど精力的な活動を展開していた(https://soundcloud.com/poetra-asantewa/round-pegs)。

 やがてジョセフ・カマルはアンビエントなサウンドへと変化を遂げ、本作のリリースへと行き着く。あえていえばそのサウンドはまるで別物といっても良い(サウンドの変貌は彼のバンドキャンプで発表されたトラックを追いかけていくと分かってくるだろう)。
彼はウィリアム・バジンスキーからステファン・マシューの系譜に連なるアンビエント・アーティストへと生まれ変わったのだ。本アルバムのマスタリングをステファン・マシュー/Schwebung Mastering がおこなっていることは象徴的に思える。

 ナイロビ出身のジョセフ・カマルが生み出すアンビエントには、深い安息への渇望があるように聴こえてくる(もしかするとナイロビの治安も関係しているのかもしれない)。その「安息への渇望」への感覚が、アンビエント・リスニングにおける現代的な「チル」の問題について考えるときに重要なテーゼを投げかけてくれるように思えるのだ。
 現在、アンビエント・ミュージックはいわゆる「環境音楽」から、自宅・自室のリラックスした環境で聴く「安息の音楽(チル)」としての側面が強まっている。その「ホームステイ」的な聴取・生活は、コロナ・ウィルス以降の世界においてより現実的になってきたが、しかし一方でコロナ禍以前から「チル」な音楽は一定の浸透力を持っていたことも事実だろう。なぜだろうか。
 ここでひとつの私見・私論を蛇足ながら述べさせて頂きたい。それは「こうまで00年代末期から20年代にかけてチルな音楽が広がった時代背景には世界的な経済不況と治安悪化の問題が根柢にあるのではないか。だからこそ安心できる家にいるときに過剰にくつろぎたい/安息したい欲望が高まったのではないか?」である。このように考えてみると2020年代的なチルな音楽、そしてアンビエント音楽が希求され浸透した背景には、そういった過酷な現代社会と表裏一体の関係にあったかのかもしれない。

 本作『Peel』はKMRUが現代実験電子音響の聖地〈Editions Mego〉からリリースしたアルバムである。しかも『Peel』リリースの翌月には『Opaquer』を立て続けに発表した。さらに9月にはデジタル・リリースで「while we wait」をリリースする。どれもアンビエントの楽曲であり、彼の創作意欲はとても高まっているのだろう。
 あえて簡単に分類するなら『Opaquer』の方がクラシカル、ミニマルなどの音楽的な要素が多く、音楽家/作曲家としての彼の力量を聴くと満喫できる仕上がりとなっていた。一方『Peel』は彼の特有の「チル」な感覚が全6曲・70数分に渡って持続し、アンビエントの現代性を体現するような稀有な仕上がりになっている(「while we wait」は『Peel』の音を融解したようなドローンと環境音を基調とした38分強の長尺トラックだ)。
 『Peel』にはこの時代の「空気」が濃厚に漂っているように感じられた。それもそのはずだ。カナダ・ケベック州モントリオールへと旅していたジョセフ・カマルだったが、新型コロナ・ウィルスの影響で国境が閉鎖され、ナイロビへの帰国を余儀なくされ、母国ケニアへと帰国、自宅に籠って48時間で完成させたアルバムというのだ。1曲目が “Why Are You Here” という曲名なのも本作を象徴しているように思えてくる。

 コロナ禍のロックダウン的状況のなか制作された『Peel』は、同時に体を休息し、安息へ導くアルバムである。やわらかい電子音に空気のなかを漂うかのごときノイズ、時間をかけて生成し変化するアンビエンスには「親密さ」があり、深い睡眠のように無時間的な「安息」の感覚もあり、家族たちとの穏やかな時間の記憶のような音色の色彩に横溢していた。
 1曲目“Why Are You Here” の静謐な始まりから、穏やかな波のように持続する2曲目 “Well” と3曲目 “Solace”、次第にサウンドが拡張され聴覚と知覚に浸透していくかのごとき “Klang”、夢の中のミニマル/ドローンのごとき “Insubstantial”、そして22分に及ぶアルバム最終曲 “Peel”。全6曲がシームレスにつながり、70分におよぶ音の波を生成する。なかでも “Peel” はアルバム全般を統合したような長大な曲であり、透明な空気と濃厚な霧が交錯するような美しさに満ちている。

 長々と言葉を連ねてきたが、何より「夜」の光景を捉えた印象的なアートワークが、本アルバムのムードを雄弁に表現していることはいうまでもない。深い夜にたちこめる霧の時のようなアンビエンス/アンビエント。まるで満ちる音の波のように、もしく音の空気のように70分強のあいだ濃厚なアンビエントが展開していくのだ。私たちは彼のサウンドを聴取することで、睡眠と覚醒のあいだにあるような不可思議な安息を得ることになるだろう。
 世界が危機的であればあるほど、人間には世界から隔離された睡眠のような時間が必要だ。現実には否応なく戻ることになる。人には休息が必要だ。KMRU『Peel』は、われわれにとって、そんなひとときの安息を用意してくれる美しいアンビエントだ。

Tricky - ele-king

 現実から遊離してしまうでもなく、ことさらに現実を突きつけるでもない。自分と世界の距離感がちょうどいいと思いながら先行EPの「Hate This Pain」を聴き、通算14作目となる『Fall to Pieces(落ちて粉々に)』を聴いていた。いつもそうだけれど、3年前の『Ununiform(不均一な)』よりもさらに音数が減り、なけなしの躍動感もなくなっている。どうして僕はこんなに『Fall to Pieces』に惹かれるのだろう。これまでに経験したことがないような音楽でもないし、台風でもない(10号上陸前夜に書いています)。かつてバードがいた位置にはマルタがいて同じように歌っている。オープニングから静かに鳴らされるバスドラムとスネア一発のループ。隙間だらけのシンセ・ベースに遠くで薄く鳴るギター。2曲目もあまり変わらない。ヤング・マーブル・ジャイアンツにシンセ・ベースが加わっているだけというか。続いてタンゴ。途中で3拍子から4拍子に変わる。次もその次もよく音数がこんなに少なくて曲が成り立つなと思うほど。“Hate This Pain”はおどろおどろしいトリッキーのヴォーカルとピアノのリフにわずかな管楽器のインサート。「なんだよ、この遊びは なんだよ、このゲームは~」。苦しみから逃れようとする歌だけれど、重くのしかかる要素はない。DAFかと思えば“Pump Up The Volume”を思わせるワシントン・ゴーゴーと、簡素ななかにも音楽性の幅広さには確かなものがある。「聴けば聴くほどスルメ」というのはこういうことを言うのだろう。

 1993年のデビュー以来、トリッキーがこの世界を素晴らしいところ、百歩譲って居心地のいいところとして表現したことはほとんどなかった。一度は自壊したクラブ・カルチャーが1992年に立て直しを図り、再びアシッド・サマーを謳歌していた時期に暗い表情で現れたエイドリアン・サウスは「扱いにくい」とか「ズルい」を意味するトリッキーを名乗り、同じくブリストルのポーティスヘッドと共にトリップ・ホップというタームを確立する。デビュー・アルバムのタイトル『Maxinquaye(マクシンクェイ)』は自殺した母親の名前(マクシン・クェイ)で、独我論とソシオパスに満ちていると評された曲の多くは彼がマッシヴ・アタックの初期メンバーだった頃にボツをくらった曲だったという。曲のテーマから録音方法に至るまでどこをとってもネガティヴなエピソードしか出てこないトリッキーはそれから約10年後には音楽に対する情熱を失い、しばらく音楽活動を休止するも4年ほどして(アメリカに住んでいたからか)ドライでゴージャスな雰囲気の『Knowle West Boy』(08)で復帰。奇跡的にカリビアン・ムードが楽しい『Mixed Race(混血)』、淡々とした作風に戻った『False Idols(偽のアイドル)』、本名をタイトルにして珍しくゲスト多数の『Adrian Thaws』と順調にキャリアを再開させ、『Fall to Pieces』はヴォーカルのバードとの間にできた娘が鬱で苦しみ、自殺した後にリリースされた初のアルバムとなった。『Fall to Pieces』を聴くと『Maxinquaye』でさえ明るいトーンに聞こえてくることは否めない。『Maxinquaye』がリリースされた翌月に生まれた娘は昨年、24歳になったばかりだった。トリッキーがマッシヴ・アタックを離れてソロで立った年齢である。

 “Hate This Pain”で歌われていた苦痛とはこのことだったのだろうか。前作で久しぶりに歌っていたバードがこのアルバムでは歌っていない理由もおそらく同じで、「石になったみたいだ ドラッグじゃないのにストーンしてる~」と繰り返す“Like A Stone”からは、彼がショックで何もできなかった様子がみっちり伝わってくる。“Like A Stone”からはまたトリッキーのサウンドにはおなじみとなっているウエスタン調がぶり返し、運命論のようなものに強く支配されている印象が拭えない。トリッキーの歌詞は一般的に「問いかける」タイプのものが多いとされるけれど、彼自身、自分の置かれた境遇が過酷すぎて、自然と誰かに解決策を求めるようなものになってしまうだけなのだろう。ラストの“Vietnam”はどこか『ツイン・ピークス』みたいで、絶望的なのにどことなく甘美。どんな歌詞なのかと思えば「オレは爆弾をつくっている 誰でもいいんだよ、ヴェトナム~」とやはりソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)は健在だった。社会に対する脅迫状のような歌詞を書いてしまう男がそして、昨年末に出版した『Hell Is Round The Corner』は意外にも個人的な自伝であると同時に底辺の声を記録した社会の記録としても読めるものだという。徹底的に個人であることが、それ以上のものになる。これ以上、不幸なこともないのかもしれない。

YPY - ele-king

 コロナ禍により部屋にこもらざるをえない状況がつづいたためだろうか、ますます創作意欲に火がついているように見える。
 goat のようなエクスペリメンタル・ロック・バンドを率いる一方、行松陽介のパーティ《Zone Unknown》では Zodiak とともに実質的なレジデントを務め、コンサート《GEIST》や楽団 Virginal Variations では京都の前衛派チェリスト、中川裕貴を招くなど、大阪を拠点に多角的な文脈で活躍をつづけている日野浩志郎。彼による打ち込み主体のソロ・プロジェクトが YPY である。
 今年の頭、まだパンデミックが本格化するまえに彼は、同名義にて自身のレーベル〈birdFriend〉からダブにフォーカスしたカセットテープを2本リリースしているが、今度は〈BLACK SMOKER〉から新作が送り出されている。題して『Compact Disc』。丁寧に各曲の頭文字まで「CD」で統一されたこのアルバムは、まさにCDでしか聴くことができない。

 前々作『2020』や前作『Be A Little More Selfish』からはがらりと様子が変わっている。時流に乗ってこれまでよりもぐっとテンポを落とし、キックのパターンを固定、そのうえをいろんなノイズがフリーキーに乱れ舞う、というのが基本路線で、忘我の境地とでも言うべきか、ある種の逃避性を携えてもいる。
 その魅力を最大限に味わえるのが冒頭 “Cool Do!” だ。太い低音が牽引する力強いグルーヴは、彼が goat などのバンドや各地のプレイで培ってきた身体感覚に由来するのかもしれない。そのうえをシンセ・ノイズが縦横無尽に駈け巡る16分弱はまさしく電子音の狂宴といったあんばいで、いやでも恍惚とした気分になってくる。なかなかクラブに足を運べないこの時代に、これほど強烈なテクノ・トラックが生み落とされたことは素直に感嘆すべきだろう。ちなみに同曲を聴いた編集長は、「73~74年のドイツのコズミック・ミュージック、ベルリン・スクールのテクノ・ヴァージョン」「こころおきなくフリークアウトできる」と言っていた。つまりは究極の「トリップ」体験であると。

 おなじくランニング・タイムの長い終盤の “Collapse Dojo” も似たような感覚に浸らせてくれるが、こちらはより高い部分の音が暴れまわっている印象で、合成音声のごとくシンセがなにかを喋っているように聞こえるからおもしろい。
 一定に保たれたビートは時間感覚を狂わせる効果をもたらしてもいて、ゆえにリスナーの意識は展開よりも空間のほうへと誘導されることになる。たとえば “Cold Disc” などは極上のダブとしても享受可能だろう。本作中唯一4つ打ちの採用されていない “China Dynamic” や、ハンドクラップ~スネアの連打とおならのような電子音とのかけあいが楽しい “Cashout Dream” あたりも、レイヤー間のせめぎあいに惹きつけられる。
 バンド、ソロ、楽団とさまざまな試みを実践し、これまで幾度も自身の限界を更新してきた日野浩志郎。シンプルな機材とビートで、しかし無限の電子音の可能性を追求した本作もまた、彼のスタイルを拡張する1枚と言えよう。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 波紋を呼んだ前作『Age Of』から早2年。多作かつコラボ大王のダニエル・ロパティンはこの間もサントラの制作やザ・ウィークエンド、モーゼズ・サムニーの作品への参加など、絶え間なく音楽活動にいそしんできたわけだけど、ついに本体=ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとしてのニュー・アルバムを10月30日にリリースする。
 なんでも、今回はこれまでのOPNを集大成したような内容になっているとのことで、期待も高まります。現在、アルバムから3トラックを収録した先行シングル「Drive Time Suite」が配信中、試聴はこちらから。

[10月14日追記]
 くだんの先行公開曲3トラックのうち、“Long Road Home” のMVが本日公開されている。監督はチャーリー・フォックスとエミリー・シューベルトで、エロティックかつなんとも不思議なアニメ映像に。OPN の原点の回想であると同時に最新型でもあるという新作への期待も高まります。

ONEOHTRIX POINT NEVER
集大成となる最新アルバム『MAGIC ONEOHTRIX POINT NEVER』から
先行シングル “LONG ROAD HOME” のミュージックビデオが公開!
過去作品のオマージュにも要注目!
アルバム発売は10月30日! Tシャツ付セットの数量限定発売も決定!

ライヒ、イーノ、エイフェックス・ツインからバトンを受け継ぐ存在としてシーンに登場し、今や現代を代表する音楽プロデューサーの一人となったワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、そのキャリアの集大成として完成させた最新作『Magic Oneohtrix Point Never』から、先行シングル “Long Road Home” のミュージックビデオを公開した。

Oneohtrix Point Never - Long Road Home (MV)
https://www.youtube.com/watch?v=w5azY0dH67U

アルバム発表と同時に、シングル・パッケージ「Drive Time Suite」として3曲を一挙に解禁した OPN ことダニエル・ロパティン。自身の作品だけでなく、映画音楽や、ザ・ウィークエンドの大ヒット作『After Hours』のプロデュースを経て、ポップと革新性を極めたサウンドに早くも賞賛の声が集まったが、今回ミュージックビデオが公開された “Long Road Home” は、その3曲の解禁曲の一つとなっており、メイン・ヴォーカルをロパティン本人が務め、元チェアリフトのキャロライン・ポラチェックが参加している。チャーリー・フォックスとエミリー・シューベルトの二人が監督した本ビデオは、異世界の不気味な二つの生物が、ロマンティックに絡み合う様子が描かれたストップモーション・アニメーションとなっており、人間の感情とエロティックなダークユーモアの間で展開する求愛の乱舞が、ファンタジーと現実の境を破壊していくストーリーとなっている。『R Plus Seven』のアートワークにも登場する、ジョルジュ・シュヴィツゲベルが1982年に発表した短編作品「フランケンシュタインの恍惚」へのオマージュとなっている点も楽しめる映像となっている。

これは愛と変質についてのロマンチックな寓話で、夏の間にダン(OPN)と交わした荒唐無稽で哲学的な会話から生まれたものです。グロテスクな、あるいは悪魔のような生き物を、求愛の儀式を通して、奇妙で愛らしく、また切なさを纏ったキャラクターに見せたいと思いました。親密さが切望され、同時に恐れられているこの時期に、突然変異体のような奇妙な歌声が響くこの曲に、完璧にマッチした映像だと感じました。心の底から素晴らしいと思ったし、それが滲み出てると思います。 ──co-directors Charlie Fox and Emily Schubert

これまでの OPN の音楽的要素を自在に行き来しながら、架空のラジオ局というコンセプトのもとそれらすべてが奇妙なほど見事に統合された本作『Magic Oneohtrix Point Never』は、OPN の原点の振り返りであり、集大成であり、同時に最新型である。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新アルバム『Magic Oneohtrix Point Never』は、10月30日(金)世界同時リリース。国内盤CDにはボーナストラック “Ambien1” が追加収録され、解説書が封入される。また数量限定でTシャツ付セットの発売も決定。アナログ盤は、通常のブラック・ヴァイナルに加え、限定フォーマットとしてクリア・イエロー・ヴァイナルと、BIG LOVE 限定のクリア・ヴァイナルも発売される。Beatink.com 限定のクリア・オレンジ・ヴァイナルとカセットテープはすでに完売となっている。

また、本日10/14より〈WARP〉からリリースされたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの過去作品を対象としたポイント還元キャンペーンが BEATINK.COM でスタート! 会員登録をして対象タイトルを購入すると、次回の買い物時に使用することができるポイントが10%付いてくる。併せて、iTunes でも対象タイトルが全て¥1,222で購入できる期間限定プライスオフ・キャンペーンが本日よりスタート!

Boris - ele-king

 日本を代表するヘヴィ・ロック・バンド、ボリスの伝説的な初期作品が、元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイト率いる〈サード・マン・レコーズ〉よりデジタルおよびアナログでリイシューされる。
 今回再発されるのは96年のファースト・シングル「Absolutego」と98年のファースト・アルバム『Amplifier Worship』。「Absolutego」は60分1曲入りの「シングル」として彼らの自主レーベルからリリースされた後、アメリカのドゥーム/エクスペリメンタル・メタル・レーベル〈サザンロード〉からボーナストラックを加えて過去にも再発されている。『Amplified~』は15分の長尺ナンバー3曲を含む5曲入りで、日本の〈マングローヴ・レーベル〉からリリースされた後、こちらも〈サザンロード〉よりアメリカ盤も発売された。
 〈サード・マン〉のプレス・リリースでも「21世紀のもっとも重要なメタル・バンド」と形容されている彼らだが、今回リイシューされる2作のいずれもドゥーム・メタル/ストーナーロックを中心に据えつつ、最初期の段階からノイズ、ドローン、アンビエントなど様々なジャンルを貪欲に取り込んだ実験精神溢れるバンドだったことが確認できる重要作だ。
 いずれもリマスターが施され11月13日発売、現在Borisのbandcampやレーベルのサイトなどでプリオーダー受付中。



『Absolutego』
https://boris.bandcamp.com/album/absolutego-2
https://thirdmanstore.com/absolutego-standard-black-vinyl
1. Absolutego
2. Dronevil 2


『Amplifier Worship』
https://boris.bandcamp.com/album/amplifier-worship
https://thirdmanstore.com/amplifier-worship-standard-black-vinyl

1. Huge
2. Ganbou-Ki
3. Hama
4. Kuruimizu
5. Vomitself

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 1041 1042 1043 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 1051 1052 1053 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1060 1061 1062 1063 1064 1065 1066 1067 1068 1069 1070 1071 1072 1073 1074 1075 1076 1077 1078 1079 1080 1081 1082 1083 1084 1085 1086 1087 1088 1089 1090 1091 1092 1093 1094 1095 1096 1097 1098 1099 1100 1101 1102 1103 1104 1105 1106 1107 1108 1109 1110 1111 1112 1113 1114 1115 1116 1117 1118 1119 1120 1121 1122