「ブラインド・ジョー・デス」とは2001年に他界したギタリスト、ジョン・フェイヒー(と映画ではこの表記を使っているので、ここではこう記す)の異名であり、彼はこの名を彼の好きなブラインド・ウィリー・ジョンスン、ブラインド・ボーイ・フォー、ブラインド・ジョージ・ハガートといった戦前の盲目のブルースマンたちに借り受けた、と作中、そのコメントを引用している。
とはいえ、フェイヒーがブルースに関心をもったのは後年で、日本が敗戦を迎えたいまから70年前に、メリーランド州タコマパークに移り住んだ彼が音楽にめざめたきかっけはカントリーやブルーグラスだった。カントリーウェスタンを演奏する子がたくさんいたからね。それがやがて南部に傾倒したのは、ギターという楽器の欲望にしたがったのか、指が求めたのか、いずれにせよ、フェイヒーの遍歴に筋道はなく、彼が設立し、インディペンデント・レーベルの嚆矢とみなされることも多い〈タコマ・レーベル〉にせよ、すくなくともビジネス的な展望によるものではないことは、別エレ『ジム・オルーク完全読本』に再録したジムとフェイヒーの対談でもあきらかである。というより、なまなかな理路に沿わないことがジョン・フェイヒーの存在をナゾめいたものにした一因であり、『ブラインド・ジョー・デスを探して』では、ピート・タウンゼント、ステファン・グロスマン、キャレキシコのジョーイ・バーンズ、ノー・ネック・ブルース・バンドのキース・コノリーら、世代も音楽性も異にするミュージシャンやジャーナリスト、レーベル関係者がフェイヒーとの逸話や魅力を語るのだが、語るほどに実体をベールがつつむように感じさせるのは、カントリー、ブルース、バルトーク・ベラやチャールズ・アイヴズやハリー・パーチなどの現代音楽からノイズにいたる音楽史を横たえた、生き馬の目を抜く都会と生き馬くらいしかいない田舎からなるアメリカのフォークロアを、フェイヒーは体現するからなのかもしれない。
望むと望まざるとにかかわらず、ナゾは奥深く、いまだ解けない。私はジョン・フェイヒーは彼が自身をなぞらえた旧約聖書中の亀よりもそれはゼノンのいうアキレスと亀にちかいと思う。ひとつのパラドックスであり、聴く者にパララックスを求める。このたびの『ブラインド・ジョー・デスを探して』上映+ライヴはその掟の門の前に私たちを運んでくれることでしょう。(松村正人)

■ブラインド・ジョー・デスを探して ジョン・フェイヒーの物語
会場:渋谷UPLINK
6月13日(土) 15:30開場 / 15:45開演(17:45頃終演予定)
トーク+上映(出演:ジェイムス・カリンガム監督+湯浅学+樋口泰人)
予約¥1,800 / 当日¥2,300(共に1ドリンク¥500別)
6月14日(日) 16:00開場 / 16:30開演(18:30頃終演予定)
LIVE+上映(出演:ダスティン・ウォング)
予約¥2,500 / 当日¥3,000(共に1ドリンク¥500別)
6月14日(日) 19:30開場/20:00開演(22:15頃終演予定)
LIVE+上映(出演:武末亮、牧野琢磨)
予約¥2,500 / 当日¥3,000(共に1ドリンク¥500別)
6月15日(月) 19:00開場/19:30開演(22:00頃終演予定)
LIVE(出演:ジム・オルーク)+上映+トーク(出演:ジェイムス・カリンガム監督)
予約¥2,500 / 当日¥3,000(共に1ドリンク¥500別)
※ご予約はUPLINKのHP(https://www.uplink.co.jp/)よりお願いします














