「K Á R Y Y N」と一致するもの

服部 (PIGEON RECORDS) - ele-king

名古屋のPigeon Recordsでバイヤーをやっています。FKトリビュートからの新譜
& レコードバック常駐盤を何枚か選びました。

www.pigeon-records.jp
https://twitter.com/pigeonrecords

2014.05.09.Fri Black Cream presents Nina Kraviz @ Club Mago
2014.05.17.Sat Familia feat.威力 @ Kalakuta Disco
2014.05.23.Fri The Human Cannon Ball with Conomark & Sonic Weapon @
Kalakuta Disco


1
Jago - I'm Going To Go (Frankie Knuckles Remix) - Full Time Records

2
I:Cube - Cubo Rhythm Trax - Versatile

3
The Jaydes - Area 89 (Boo Williams Tech Dub Remix) - Dame-Music

4
Mr. G - Moments - End Recordings

5
Butric - Up - Sei Es Drum

6
Lisa Moorish - I'm Your Man (Green Velvet Mix) - FFRR

7
Earnest & Just - Still Here - Misterio

8
Heller & Farley Project - Ultra Flava (Any Mixes) - AM:PM

9
Steve Silk Hurley & The Voices Of Life - The Word Is Love - Silk Entertainment

10
James Blake - Limit To Your Love (Daniel Bortz Re-Edit) - White

11
Sydney Youngblood - Anything (Classic Frankie Mix) - RCA

将軍 (RAZOR SHARP / MAZE / 返杯) - ele-king

<将軍 DJ スケジュール>
5/4(sun) INDI PENDULUM DAY@ Kalakuta Disco (名古屋)
5/5(mon) RAZOR SHARP@ club Mago(名古屋)
5/31(sat) IF…x RAZOR SHARP@ Kalakuta Disco(名古屋)
6/7(sat) @ Kalakuta Disco(名古屋)


Marginal Recoreds | PIGEON RECORDS

<web>
https://fluid-nagoya.com<br /> https://razorsharp-nagoya.info/

ここ最近リリースしたものなかからベースミュージック~テクノ~ハウス~エクスペリメンタルな10枚を選んでみました(2014/4/4)


1
Sam KDC - Survive Exit EP - Samurai Red Seal

2
ENA - Bacterum EP - Samurai Horo

3
Djram - DAM Remixes - 2nd Drop

4
Asusu - Velez (A Made Up Sound Remix) - Livity Sound

5
Pinch & Mundance - Turbo Mitzi/Whiplash - Tectonic

6
Gantz - Spry Sinister - Deep Medi

7
Vioces From The Lake - Velo Di Maya Ep - The Bunker New York

8
Dasha Rush - Timid Ocean Drawings - Deep Sound Channel

9
DJ Spider & Marshallito - Propagandas For The Devil EP - Subbass Sound System

10
Florian Kupfer - This Society - L.I.E.S.

interview with The Horrors - ele-king

 ザ・ホラーズが3年ぶりとなる4枚めのアルバム『ルミナス』をリリースした。2005年に結成され、ダークなガレージ・パンクと徹底してゴス的なヴィジュアルでセンセーショナルにデビューした彼らだが、そのイメージに留まることなくアルバムごとにさまざまな音楽的探究を行い、取り入れた知識をサウンドとして具現化し、変化しつづけてきた。彼らにとって初期のイメージはコントロールできなかった若気の至りでもあり、いまとなっては少し恥ずかしさも感じているようだ。しかし、ここまでのキャリアにおいては周囲に流されたり時流に迎合したり安易にルックス面で路線変更したりしたわけではけっしてない。20才前後からレコードの収集やDJをしたりしながらマイペースに吸収してきた知識、そこから自然発生した興味を資本とし、何より持ち前のセンスで独自のホラーズのサウンドを作り出しているのだから、その変遷はどれも輝かしい〈白歴史〉になっている。


The Horrors - Luminous

Tower HMV Amazon

 今作『ルミナス』は、ダンス・アルバムだ。グルーヴ感のあるビートとサイケデリックなサウンドが全編を覆い、ファリス・バドワンのヴォーカルもいつになく甘く、気怠く、ポジティヴだ。現在は世界のフェスティヴァルでもヘッドライナーを務めるほどの存在になった彼らだが、この、暗がりできらめくような密室感のあるダンサブルな作品によって、よりオーディエンスとの距離を縮めるはずだ。変わりつづける彼らの2014年の現状を切り取ったこの作品もまた、ホラーズの「白歴史」として更新されていくだろう。

 今回インタヴューに答えてくれたのは、ファリス・バドワン(Vo)とリース・ウェッブ(B)。インタヴューがはじまる前、レコード・コレクター/DJとしても名を馳せる音楽博士のようなリースはわたしがプレゼントしたガレージの7インチ・ディスク・ガイドに目を輝かせて熱心に読みふけったり、アートスクール出身で絵の個展を開いたこともあるファリスは自分のお気に入りの極細のボールペンでひたすら緻密なイラストを描いていたりと、両者とも穏やかで落ち着いたなかに好きなものへ寄せる真摯な熱意が感じられた。インタヴューでもさまざまに表現を変えたりしながら、伝えたいことをとても丁寧に考えて答えてくれた印象だった。ザ・ホラーズが日本にもファン・ベースを根強く持ち、その人気を一過性ではなくじわじわと増しているのも、そういうところに理由があるのかもしれない。

ただの仲良しが集まっただけのギャング──そういうバンドだったし、いまもじつはそうだしね。(リース・ウェブ)

個人的にはザ・ホラーズはデビュー当時から大ファンで、これ私物なんですけど……(デビュー当時にザ・ホラーズが表紙を飾った『NME』を見せながら)いまこれを見てどう思います?

リース・ウェッブ(以下R):この写真撮らなきゃよかった……(笑)。7年前だね。

この時といまと、音楽に向かう気持ちに変化はありましたか?

ファリス・バドワン(以下F):物事の進め方っていう意味では何も変わってない気がするよ。熱意とか熱さとか、それが僕らには大事だから。最初のアルバムの当時は自分たちもライヴをやることに一生懸命でそのやり方を模索していたところがあると思う。ライヴをやりながら発展していったようなところがあって、そのやり方ってじつはいまも変わっていない。表現力が増したとか、腕が上がったことでよりやりたいことに近づけるようになったという部分、根っこにある気持ちは変わってないと思う。ファースト・アルバムの頃からとにかくやりたいアイデアがいっぱいあって、それをどんどん実験してみたいという意欲があって、それに突き動かされていたというところはまったく変わらないし、でもあのアルバムではなかなか実現しきれなかった部分もあるけど、でもそこをふまえて次があるという点ではすごく意味のある作品だったなと思うよ。

でもちょっと写真だけは恥ずかしいと。

F:いやいや、べつに恥じるところはないんだけど(笑)、自分たちが思っていた自分たちとはちがう形で表現されている写真が一部あるなと。とくに小綺麗な形で出ちゃっているのが多い気がして。というのも、ライヴにおける当時の僕らって、初歩的でアグレッシヴでヴァイオレントですらあるようなバンドだったんだけど、一部のカメラマンの手にかかるとそれが小綺麗にまとめられちゃって、作り込まれているようなイメージになってしまっているものがあったりするんだよね。実際とちがったところがあると思うよ。もっと自分たちはラフなはずだったのにってね。

R:自分たちもまだわかってなかったんだよね。当時の自分たちのステージでのあり方と写真のイメージがちがうのを、自分たちでもどうすればいいかわかっていなかったかもしれないから。

当時の写真も初期衝動的で素敵ですけどね。

R:僕らもこういう写真は嫌いじゃないし、イメージ的にいいなと思うところもあるんだけど、当時の自分たちの表現として正確さにおいては欠けるのかなと思うんだよね……。

メディアに作られてしまっているなという感じはあったんですか?

R:作られてしまったというよりは、一部誤解されるかなって。スタイリッシュでお膳立てされたような印象を与える写真が一部あって、でもそれは本来の僕らの姿とはちょっとちがって、僕らの音を聴いたことがなかったり会ったことがない人が見たら誤解するのかなって。そういう意味で見せ方として不正確だった部分はあると思うな。ファッション的なバンドとか服装にこだわるバンドみたいなイメージを与えそうな写真に対して僕らはそういう印象を持ったことはたしかだよ。 ただの仲良しが集まっただけのギャング──そういうバンドだったし、いまもじつはそうだしね。ただ、ときとともに人間は変化するから、いまの僕らだったらさすがにあれは無理だと思うし、まったく意味をなさないと思うけど、当時の僕らはああいう部分があったっていう点ではリアルさもあるだろうね。だから、そこまでの抵抗感はないよ。昔とすっかり距離を置いているということではなくて、あれはあれで重要な時期だったと思うし、あの頃だって実際にショーに足を運んでくれる人たちには実際の僕らの姿は伝わっていたわけだし。あの頃を否定するつもりも忘れようとしているつもりでもない。単純にいまの僕らはちがうなって思うよ。

では話が変わりますが、リミックス・アルバム『ハイヤー』(2012年)をはさみ前作『スカイング』(2011年)から3年ほどありましたがその間は何をしていましたか?

R:そのうちの2年間はほぼツアーでとられていたよ。フェスもあったりとか……。詳細は省くとして(笑)、いったんレコーディングに入ったあとにまたフェスも入ったりして、3年の間で事実上18ヶ月はツアーに出ていたよ。で、やっとスタジオに入れたなと思ったら夏フェスのシーズンが来てしまってまた外に出るっていう感じで、けっこう途切れ途切れだったんだよね。ライヴに忙しかったからなかなかフォーカスを絞ってレコーディングに専念することができなくて、3年はあっという間だったよ。基本的に自分たちが完全に納得するものができるまではレコードを世に出さないっていう僕らの姿勢があるから、長い時間はかかったけど、べつに焦る必要もなかったから納得がいくまで時間をかけようというスタンスでできたよ。

『ハイヤー』のリミキサーの人選は自分たちで行ったのですか?

R:うん、そうだよ。

個人的にはピーキング・ライツ(Peaking Lights)の起用が興味深かったです。そのあたりのシーンにも興味があるんですね?

R:そうだね。そういったシーンにはつねに目を光らせているし、ピーキング・ライツは最近のアーティストのなかでは僕たちのフェイヴァリットかな。サウンド的にもすごくおもしろいことをやっているし、ダブの影響を取り込んで、ホーム・スタジオを持っていて……たぶん結婚はしてないと思うけどカップルなんだよね? そのスタジオで手作りのシンセサイザーを作ったりテープに録音したり、そういうやり方も興味深いよ。他のリミキサーに関しては、普通のリミキサーとはちょっとちがうメンツになっているよね。ピーキング・ライツもバンドとしてライヴ活動をしている人たちでミキサーではないし、コナン・モカシン(Connan Mockasin)もいわゆるアーティストだし、ちょっと毛色のちがう人を選んだんだよ。

では最新作『ルミナス』についてなんですが、まず、このタイトルにした理由は?

F:(ずっと『NME』を読んでいたファリスが)いやあ……。それにしても、これを見てたら、いまはずいぶんいなくなっちゃったバンドが多いなあと思って。僕らもそんなに長くやっているつもりはなかったけど、考えてみれば9年でしょ。でもなあ、その9年の間にずいぶんバンドが現れては消えたもんだなあと思いながら読んだよ。
 で、『ルミナス』に関してだけど、曲作りのプロセスそのものなんじゃないかなと思うよ。エネルギーが発散されて、そのときに光が放たれるっていう感覚、僕らの曲作りは昔からそうだけど、とにかく自分たちを表現したいって。有機的な作業を経て最終的な形まで、曲が自然に発展していくそのプロセスを表現した言葉かな。

アルバムの発売を一度延ばし、ミックスにじっくりと時間をかけたようですが、こだわった部分、意識した部分は?

F:じつは延期した理由はミキシングのためにということではなかったんだ。というのも、僕らの制作って同時進行なんだよね。とくに“フォーリング・スター”とかはミキシングをしながらもまだレコーディングして、録ってはまたミキシングして、という形で。そのふたつを分けて考えていないから、ミキシングに入ってもなお曲が発展して、徐々に曲が完成していくっていうやり方なので、ミキシングのために延ばしたっていうわけではなかったんだよ。

今作では、非常にダンサブルに仕上がっていると感じましたが、そのように意識したんですか?

R:僕らがあらかじめこういう方向に、って座って話し合ったわけではなくて、まずは作業をはじめてみて、それがどこに向かっているかを見極めていったんだけど、最初の段階ではまったく何もなくて白紙のキャンバスがそこにあっただけど、その中から自分たちが何にエキサイトできるかなと探っていったんだけど、わりと早い段階で気がついてみたら自分たちがエネルギーの発散とか動きたくなる感覚とかに傾倒していることに気がついて、それを追求していくことになったんだ。いわゆる踊れるレコードになったのがその結果なんだけど、フェスティヴァルの会場でやるのも想定しているけど、今回はナイトクラブとかダンスフロアで聴いても楽しめるような音が頭の中にあったから、その点では意識的だったと言えると思うよ。最初は無意識だったけど、だんだんと曲作りの焦点になっていった。

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それにしても、これを見てたら、いまはずいぶんいなくなっちゃったバンドが多いなあと思って。(ファリス・バッドワン)

7年前ですらいたバンドがいなくなっちゃってることを考えると、そのさらに前にもいい音楽がたくさんあったっていうことを知らせるのは大事かなと思っているよ。(リース・ウェブ)

〈ザ・フライ・アワーズ〉でサーストン・ムーアと共演したようですが、いきさつは?ソニック・ユースをはじめとする彼の音楽についてそれまでどう思っていましたか?

R:とくにジョシュ(G)がソニック・ユースの大ファンで、たぶん彼にとっていちばん好きなバンドなんじゃないかな。ついこの間もジョシュとそういう話をしていたんだけど、ギターをはじめたきっかけがソニック・ユースだったって言ってたよ。ああいう、当たり前のギターではなくて、ペダルを噛ませたりノイズを鳴らしたりチューニングを変えてみたりっていうところで、一般的なギターの認識とはがらりと違うことをやったバンドだってね。ああいうバンドを聴いたのははじめてだったんだって。
 〈ザ・フライ・アワーズ〉の授賞式ではお互い演奏することがわかっていたから、まずはそのステージでいっしょに共演しようかっていう話と、レコードにも参加してくれないかって話を持ちかけたんだ。それまで会ったことなかったんだけど、言ってみたら気さくにいいよって言ってくれたんだ。実際に、ギター一本ぶらさげてスタジオに来てくれたんだよ。サーストンは、ゆっくりゆっくり準備するんだよね(笑)。こんなことがあってさー、とか話しながらね。2回やればじゅうぶんかなって思ったんだけど、せっかくだからって3回通しで弾いてもらって。で、そのあとお酒飲みに行って。飲みながらNYのいろんなバンドの話をしてもらったりしながらね。すごく楽しかったよ!

〈オール・トゥモロウズ・パーティーズ〉や〈オースティン・サイケ・フェス〉などのフェスティヴァルへの参加で受ける刺激はありますか? わたしは以前、ザ・ホラーズがデビューの年に〈SXSW〉へ行ったことがあるのですが、あなたたちが熱心にいろいろなバンドのライヴを観てまわっていたのを見かけましたよ。

R:今年も〈オースティン・サイケ・フェス〉がすごく楽しみなんだよ。週末にフェスに行くとだいたい自分たちの出番が終わったら帰ってきてしまうことも多かったり観たいバンドの出る日が違ったりして、なかなか他のバンドを見ることができないままだったりするんだけど、〈オースティン・サイケ・フェス〉はラインナップもいつも充実しているし、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとかブライアン・ジョーンズタウン・マサカーとかそういうバンドがばーっと出ているところに行ったらもうとにかく見たいよね。ロンドンでももちろん音楽シーンは充実しているしライヴもたくさん観れるけど、フェスに行ったら一気に観られるからね。僕らは相変わらずライヴを観に行くのが大好きなバンドだから、ああいう機会にはどんどん観るようにしているよ。

フェイスブックで、連載のようにしてお気に入りの曲のユーチューブ・リンクをあげて紹介していたり、レギュラーのDJイヴェントをずっと続けていたりして、たくさんの音楽を聴いて紹介しつづけているのもとても素晴らしいと思います。ホラーズを好きな若いファンたちも、あなた方のルーツであったりインスピレーションを受けた音楽を聴いて興味を広げていくでしょう。そのようによい音楽を紹介しつづけることには使命のようなものを感じているのでしょうか?

R:僕らが紹介しているものは、ホラーズに直接関係があるものとは限らないんだけどね。好きだと思うもの、聴いているものをみんなとシェアしたくてやっているよ。指一本でいろいろなものが聴けてしまう時代だけど、それでも聴き逃してしまういいバンドとかいい曲はたくさんあると思うので、それをぜひ紹介したいなと思うよ。僕らに直接影響を与えているかというとちょっとちがうものもあるけど、僕らのようなバンドに興味を持ってくれる趣味のいい人たちなら気に入ってくれるだろう、というものを紹介しているよ。さっきもファリスが言ってたけど、7年前ですらいたバンドがいなくなっちゃってることを考えると、そのさらに前にもいい音楽がたくさんあったっていうことを知らせるのは大事かなと思っているよ。使命というほどではないけどね。

いまでもレコードは買いつづけていると思いますが、ロンドンでお気に入りの店は? また、フィジカルな録音物へのこだわりはありますか?

R:最近ロンドンのお気に入りのレコード・ショップは閉まっちゃったんだよね……。イントキシカ(Intoxica)とか……。

F:マイナス・ゼロ(Minus Zero)とかね。

R:世界のどこに行ってもレコード店は減っちゃっていて残念だね。

F:ボストンのあの地下のところも……、なんだっけね。

R:リリースに関して言うと、アートワークも含めてアナログのそんざい可能性を僕は信じているよ。流通形態がみんなMP3とかダウンロードとかになっているのはわかっているんだけど、売上のごくわずかだとわかっていても、アナログの存在感は僕は強く感じているし大事にしたいね。

interview with Swans - ele-king


スワンズ - To Be Kind
[解説・歌詞対訳 / 2CD / 国内盤]
MUTE / TRAFFIC

Amazon

 4月8日に保坂さんと湯浅さんとディランのライヴ──モニターがトラブったあの日である──にいった翌週、季節はずれのインフルエンザにかかりタミフルでもうろうとしながらこのインタヴューの質問を考えていたら、ボブとジラが二重写しになったのは、テンガロン・ハットをかぶったいかめしい男を真ん中にした男臭い集団のもつムードに似たものをおぼえたからだろうが、それはアメリカの国土に根づく、というより、いまも澱のようにこびりつくアメリカン・ゴシックの、無数の歴史的諸条件によりかたちづくられた感覚を、一方は60年代のフォーク・ロックとして、他方は80年代のインダストリアルと00年代のフリーフォークがないまぜになった感覚で表出するからではないか。音楽の貌つきはまったくちがう。映し出す時代も、住処も地表と地下ほどにちがうかもしれない。ところがともにフォークロアではある。それはポピュラリティさえもふくむ複層的な場所からくる何かである。

 私は前回のインタヴューで再活動をはじめてからのスワンズの宗教的ともいえる主題について訊ねたところジラはそれを言下に否定した。それもあえていうまでもなくそれはディランが70年代末から80年代初頭キリスト教ににじりよったように彼らの一部でありいうまでもなかったのかもしれないと思ったのだった。

 『To Be Kind』は前作『The Seer』を引き継ぎ、長大な曲が占める。セイント・ヴィンセント、コールド・スペックスを招き、ジョン・コングルトンが録音で参加した布陣も今回も冴えている。朗唱のようなジラのヴォーカルと豪壮な器楽音の壁が長い時間をかけ徐々に徐々に変化する作風は前作以上に有機的で、1年前の日本公演をふくむワールド・ツアーの成果を反映した現在のスワンズの音楽を指してジラは「音の雲」と呼ぶのだが、刻刻と変化するのにそれは同時に豪壮な構築物でもある。矛盾するような得心するような、こんな音を出せるバンドは彼らをおいてやはり他にいない。

ハウリン・ウルフは私のヒーロー、アイコンなんだ。彼の自伝も数年前読んだ。すごい人生を歩んだ人だ。1900年代初頭のミシシッピの貧しい小作人の子どもでね、13歳になるまで靴もはいたことがないほどだった。8、9歳くらいから畑を耕しはじめ、もちろん教育など受けたこともなかったが缶を叩きながら畑の中で歌った。

2013年2月の来日公演からすでに1年経ち記憶も定かでないかもしれませんが、とはいえ、その前の来日公演となると20年以上前だったわけですが、なにか印象に残っていることがあれば教えてください。

MG:その来日ではライヴは1回こっきりだったんだけど、日本のファンはとても熱狂的だったのを憶えているよ。あと、これはいつも思うことなんだけど、日本人の礼儀正しさにはほんとうに関心するね。

資料によれば『To Be Kind』の素材となった部分はこのときのツアーで練り込んでいったとあります。じっさい2013年2月の東京公演では“To Be Kind”ではじまり、“Oxygen”などは“The Seer”とメドレーで演奏していました。そのときすでに『To Be Kind』のコンセプトはできあがっていたのでしょうか?

MG:いや、一部の(と強調)要素はライヴを通じて、インプロヴァイズしながら練り込み、そこから私がリフやグルーブを足して、一年をかけてひとつの大きな作品として形を変えていった。たとえば、はじめの段階では歌詞はまだなかったのがその当時読んでいた本を元にライヴで徐々に歌詞をつけたしたりした。それがこのアルバムの半分くらいの曲で、残りの曲のグルーブやサウンドに関しては、アコギでつくりあげたんだ。“A Little God in My Hands” “Some Things We Do” “Kirsten Supine”“Natalie Neil”、それと“To Be Kind”もコアの部分はすべてアコギでつくった。『To Be Kind』の多くはそういった手法でメンバーと集まってつくりこんだ。スタジオでは他のミュージシャンも参加して私がアレンジを加え、練り込み、映画のサウンドトラックのような感じにつくりあげた。

『The Seer』と『To Be Kind』は長尺曲を中心としたCD2枚+DVD1枚にわたる作品という両者の構成もよく似ています。このような構成にこだわった理由を教えてください。あるいては楽曲の要請としてこれは必然だったのでしょうか。

MG:ライヴ音源は長時間に渡っていたからね、34分っていう曲もあったし。そういう曲のことをどういえばいいのか、音の雲とでも呼ぼうか。曲の長さを気にすることなく、流れに任せて演奏して、その曲の存在価値を見い出そうと決めたんだ。素材が集まった段階でどういうフォーマットに落とし込んでリリースするかを決めた。それで今回はCD2枚、ヴァイナル3枚という構成になったんだ。DVDはボーナス・ディスクだ。ほら、われわれは心優しいからね(笑)。

とはいえ、前作と本作では音の表情はかなりちがっています。よりブルージーになったといいますか。要因のひとつにレコーディングを担当したジョン・コングルトンの存在があったのではと思うのですが、彼とは事前にどのような音づくりを目指しましたか。またレコーディング中で印象に残ったトピックがあれば教えてください。

MG:メンバーは私が集めてきた要素よりも、ライヴでやったものを意識していた。どういうサウンドのアルバムにしたいかということはすでに頭にあったし、曲ごとにどの楽器を使うか、どういう構成にするかなどのリストもつくっていた。他のミュージシャンが参加して、別のものをもってくると私のアイデアよりもいいと思うものが出てきたりもした。ブルージーになったかどうかはわからないな。ブルースの雰囲気くらいはとりいれていたかもしれないがコード進行までは意識してはいない。どちらかというと、グルーブとか深い音という面でだろうね。ジョンとはそれぞれの曲がどのような相互作用を持つかを重点に考えていた。スタジオで録音されたものをきっちり演奏するというよりも、ライヴで演奏を重ねることによってより大きな建造物をつくりあげていきたいと思ったんだ。

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Jennifer Chruch

ルーヴェルチュールは奴隷の反乱の扇動者で、ナポレオンの失脚の一因ともなった人物だ。1700年代後半から1800年代前半のハイチで初めて奴隷の反乱が成功したのはルーヴェルチュールのおかげだった。その後にナポレオンの部隊に捕まり、フランス国内で投獄されそこで人生を終えた。

音楽の形式としてゴスペルに対する憧憬をあなたは前回のインタヴューで述べておられました。『To Be Kind』ではそれがより直裁に表現されたと考えられないでしょうか。

MG:実際ゴスペルは詳しくないんだけど、永遠に続くクレセントがゴスペルに通じるものがある、という意味でその当時そういったんじゃないかな。ゴスペルの熱気のようなものはスワンズとの共通項だね。

ジョン・コングルトン氏はセイント・ヴィンセント氏からの紹介ですか?

MG:いや、その反対だ。ジョン・コングルトンが以前からスワンズといっしょにやりたいといっていたんだ。もともと、スワンズのパーカッションのソー・ハリスがジョンとかかわりがあり、いちどShearwaterというジョンがプロデュースしたバンドとライヴをしたんだ。ソーはあと、スモッグの……えーっと誰だっけ? そう、ビル・キャラハンともいっしょにやって、それもジョンがプロデュースした。そういうわけでソーがジョンのことを薦めていっしょにやるようになった。ジョンは長年のスワンズ・ファンなんだけど、3年程前にスワンズの曲をセイント・ヴィンセントに聴かせたら、えらく気に入ってくれてわれわれのライヴに来るほどのファンになったんだ。今回のアルバムでは構想段階で女声ヴォーカルがほしかったから、セイント・ヴィンセントに連絡をしたというわけだ。レコーディングではダラスまできてくれて、すばらしいヴォーカルを録ることができたよ。

彼女以外に『To Be Kind』でも前作と同じく多彩なゲスト・ミュージシャンを起用されています。準メンバーのビル・リーフリン氏以外に、上述のセイント・ヴィンセント氏、コールド・スペックス氏のふたりの女声ヴォーカルが特徴的ですが、彼女たちに声をかけたのはそのような理由だけですか。

MG:コールド・スペックスはソウルフルでゴスペルなすばらしい声のもち主だ。“Bring the Sun”にぴったりだった。彼女を起用したのは、すばらしいシンガーだから。この一言に尽きる。彼女は以前、スワンズのカヴァーをやったこともあるんだ。いままで聴いてきたスワンズのカヴァーで唯一いいと思えたのが彼女がやったものだった。『My Father Will guide Me Up A Rope To The Sky』に収録した“Reeling The Liars In”という曲で、いうことなしのできだった。そこから繋がったんだ。

「Chester Burnett(ハウリン・ウルフ)」「トゥーサン・ルーヴェルチュール」といった歴史上の人物を本作ではとりあげたのはどのような理由からでしょうか? またこれら歴史上の人物からあなたはどのようなインスピレーションを得たのでしょうか。

MG:ハウリン・ウルフは私のヒーロー、アイコンなんだ。彼の自伝も数年前読んだ。すごい人生を歩んだ人だ。1900年代初頭のミシシッピの貧しい小作人の子どもでね、13歳になるまで靴もはいたことがないほどだった。8、9歳くらいから畑を耕しはじめ、もちろん教育など受けたこともなかったが缶を叩きながら畑の中で歌った。ほどなくギターも習った。苦境に立たされているからそこから逃避したい気持ちがあったんのだろうね。後に南部を中心に酒場のドサまわりをはじめ、知名度もあがってきたところで、シカゴに移り、マディー・ウォーターズらとともにエレクトリック・ブルース、つまりシカゴ・ブルースだ、それを確立した。それがのちに多くのひとに多大な影響を与えることになった。その意味では魔法使いという呼び名がふさわしい。苦境から這いあがり世の中に多大な影響を与えるすばらしい人生であると同時にすばらしい声のもち主でもありひと息で低いバリトンから高いヨーデル調の声まで幅広く出る。彼の曲には楽しくてダーティで性的な要素がすべて詰まっている。
 ルーヴェルチュールはまったく別のところから引っ張ってきた。“Bring the Sun”はインプロヴァイズを重ねてつくった曲で歌詞はなかった。その頃私はルーヴェルチュールの伝記を読んでいて、それで彼の名を歌詞の中で連呼することを決めた。そこから歴史的瞬間を捉えるような音的な言葉をつけ加えて曲を構築したんだよ。ルーヴェルチュールは奴隷の反乱の扇動者で、ナポレオンの失脚の一因ともなった人物だ。1700年代後半から1800年代前半のハイチで初めて奴隷の反乱が成功したのはルーヴェルチュールのおかげだった。その後にナポレオンの部隊に捕まり、フランス国内で投獄されそこで人生を終えた。
 彼もハウリン・ウルフと同じく、奴隷としての人生から自由の身となり、働いていた農園のオーナーからは努力を認められ、オーナーや修道士から読み書きを教えてもらったそうだ。そこから、ルソーなんかのフランス啓蒙思想家やマキャヴェッリについて読み、軍事戦略について学んだ。彼も奴隷からはじまり歴史を変えた人物だった。ルーヴェルチュールによるナポレオンの失脚がなければ、ナポレオンはアメリカへルイジアナを譲渡することなどなかったにちがいない。ルーヴェルチュールの軍に勝つには、軍事強化のための資金が必要だったかね。だから彼も世界の歴史を変えた人物の一人だよ。私が読んだのは、マディソン・スマート・ベルの著書(マディソン・ベルはルーヴェルチュールとハイチ革命について『All Souls' Rising』『Master of the Crossroads』『The Stone That the Builder Refused』の三部作を著し、『Toussaint Louverture : A Biography』なる評伝もある)。フランスの歴史上重要な時代だからおさえておいた方がいい。

『To Be Kind』はなぜ〈Young Gods〉ではなく〈Mute〉からのリリースなのですか?

MG:〈Mute〉のダニエル・ミラーがスワンズのことを再結成後からずっとフォローしてくれていたんだ。私は1990年から〈Young Gods〉をやっていてスワンズをはじめ、他のアーティストのリリースもしてきているから、あえて他のレーベルと契約するのは頭になかったのだけどアメリカ国外のディストリビューションには弱かったから、ダニエルがミュートとの契約の話をもちかけてくれてよかったよ。どちらかというとパートナーシップだね。われわれは若いバンドでもないし、懐の広い叔父さんのレーベルと契約をしたわけではない(笑)。音楽を心から愛して、サポートの厚いダニエル・ミラーのことは私自身とても尊敬しているし、ミュート・レコードからのリリースはとても名誉なことだ。だからこういう流れになってうれしいよ。

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Sibastian Sighell

音楽を心から愛して、サポートの厚いダニエル・ミラーのことは私自身とても尊敬しているし、ミュート・レコードからのリリースはとても名誉なことだ。だからこういう流れになってうれしいよ。

『To Be Kind』は繊細かつ実験的な音づくりだと思いました。あなたは前回のインタヴューでベーシック・トラックを録った後、どのような音が必要か考え、音を追加するとおっしゃっていました。今回はそれが非常に緻密におこなわれていると思いましたが、そこにもジョン・コングルトン氏のアイデアが活かされているのでしょうか。

MG:うん。彼は今作ではプロデューサーではなくエンジニアだ。だいたいにおいて、私がアイデアを出して練り込むんだけど、彼に「これも試してみなよ」ってな感じでいわれたり。プロデューサーではないんだけど、アイデアを提供してくれたりはしたよ。どんなエンジニアにもそうあってほしいと思うよ。たとえば、エンジニアにはピッチがおかしかったりしたら、それをすぐに察知して教えてほしい。私はそれ以外のことで頭が一杯だからね。ジョンはその役割も果たしてくれている。私のアイデアをうまくまとめて、さらに広げてくれもした。そういった意味ではジョンのアイデアはかなり活かされているよ。

逆にいえば音盤をライヴで再現するのは難しいと思いました。その点についてはどう思われますか。ライヴはスタジオワークとはまったく別ものでしょうか? スワンズとってレコードとライヴをそれぞれ定義してください。

MG:まず、音源をライヴで忠実に再現することには一切興味はない。ライヴでプレイするのであれば、まったく別のものにしたいと思っている。アルバムをプロモートするためにライヴをしたいんじゃない。ライヴの「いま」を体験してほしいんだ。ツアーをすれば、要素はつねに変化するし、1週間後2週間後のライヴではセットもまったく異なってくる、たとえ同じ曲を演奏していても。だからライヴとスタジオワークはまったくもって異なったものだ。アルバムは録音された曲の集合体。曲を組み立てて、アルバムを構築して、ひとつのアート作品をつくるという行為は私は好きだ。そのプロセスが終わっても音楽はコンセプトとして生き続けるのだがそれをライヴで演奏するとなるとつねに自由自在に変化できるようにしていかなければいけない。
 ニーナ・シモンの“Sinner Man”を考えてごらん。ライヴごとに変化していっているよね。いいアーティストはそれができるのだと思うよ。いわゆるポップ・ソングじゃないかぎりね、われわれはまるっきりのアヴァンギャルドではないけれどもつねにフレッシュで予測できない音楽をつくっていきたい。自分のためにもオーディエンスのためにも。

『To Be Kind』では器楽音意外の具体音(馬の歩み、いななきなど)も使われており、それもあって音による(言葉ではありません)大河ドラマを聴くような気がしました。たとえば『To Be Kind』をサウンドトラックにするとしたら、どのような映画がよいと思いますか。古今東西誰のどんな映画でもかまわないのであげてください。

MG:黒澤明の『蜘蛛巣城』(1957年)とラース・フォン・トリアーの『メランコリア』(2011年)だね。あと、ギャスパー・ノエの『アレックス』(2002年)かな。勇気があったら観てごらん(笑)。ところでギャスパー・ノエの『エンター・ザ・ボイド』(2009年)は映画館で観たかい? 私は家のスクリーンで観たんだが映画館で観たらまた違った体験ができたんじゃないかと思った。家だとトイレに行ったり、スナックを取りに行ったりできるけど映画館じゃできないだろ。だからあの映画の間映画館の椅子に縛りつけられていたらどんな気分だろうと思ったんだ。ストーリーも映像もすごく美しい。当初ストーリーはなかなか入り込めなかったが終わってから作品について読んでもういちど観たらようやくどういうことかわかってきた。よくできた作品だと思うよ。キャラクターの視点からの録り方がよかったね。あと、体内に入りこむところも。

アートワークにはボブ・ビッグスの作品を使っていますが、1981年に彼の目にした彼の作品をなぜ本作でまた使いたいと思ったのでしょう。資料によれば、この作品はボブ・ビッグス氏の家の壁に描かれた水彩画だということですが、ビッグス氏とあなたは旧知の間柄なんですか。

MG:その当時からボブとは面識はあったが親しい仲ではなかった。例の作品は壁の水彩画じゃなくて、黒い用紙上のパステル画だ。その作品がとても気に入ったんだ、ジャスパー・ジョーンズの旗や標的の作品のようにアイコン的でね。表現方法が不思議で興味をそそられた。神秘的なシンボルのようでね。意味が込められているかそうでないのかもわからない。面白いのは、ずっとみていると、意味と無意味が交互に共鳴しはじめるんだ。実際に自分が何をみているのかもわからなくなってくるようでね。30年の時を経て、使用許可をもらったんだけど、黒のバックグラウンドから頭だけを切り取ったんだ。今みてもらっているベージュの部分は実際は段ボール用紙で、その上に作品がエンボス加工でプリントされている。ツヤ加工もしてあるから、段ボール用紙からまるではがせるような風合いだよ。当初の予定では、実は赤ちゃんの代わりに女性の乳首を使おうと思っていたんだ(爆笑)。でも実際画像を集めはじめたら、乳首に焦点を当てると美しくも何ともないことがわかった。これは使えないとなった。そこでなぜかボブのことが思い浮かんだんだ。ほら、赤ん坊と乳首は同じような感情を呼び起こすだろ(笑)? それでボブに例の赤ちゃんの作品について訊ねたわけだ。

上記質問と同じ意味で、あなたが長年あたためながらまだ実現していないことのひとつをこっそり教えてください。

MG:もしかしたら知っているかもしれないけど、私は以前に本を書いたことがある。時間があればぜひまた執筆活動をはじめたいね。いまは本を読む時間もなかなかとれないから、時間ができたらまずは読むことからはじめたい。読むときに使う脳の部分をまずは活性化させないとね。だからそれができる時間がとれれば、また書きはじめられる。それが死ぬ前にやりたいことだね。

スワンズは現在のシーンでは孤高の存在だと思われます。ジラさんにとって現在のシーンで共感できるバンドないしミュージシャンはいますか? もしくは他者の存在はさほど気にすることはないですか。

MG:最近の音楽にはさほど興味がないんだけど、ベン・フロストやシューシューはいいと思うね。サヴェジーズやリチャード・ビショップの音楽もいい。いわゆるメジャーなポップ・ミュージックには興味はないね。

次回の来日公演はいつになりますか? まさかまた20年後ということはないと思いたいですが再々来日を待ちわびる日本のファンにコメントをお願いします。

MG:I love you very much(笑)!

Love Cult Take Druss - ele-king

 昨年の私的ベスト・レコードの一枚であるグノド・プレゼンツ・ドウェリングス&ドラス(GNOD presents Dwellings & Druss)の衝撃も冷めやらぬ〈トレンスマット(Trensmat)〉からのダメ押しの一枚。

 マンチェスターにて2006年に結成された大所帯サイケ・ヘヴィ・クラウト集団グノド(GNOD)は、現在まで音源/ライヴともに非常に積極的な活動をおこなってきた。残念ながら僕は一度も彼らのライヴを見られていないが、対バンしたことのある友人はみな口を揃えて当時の彼らを賞賛している(それはたとえばヨーロッパ・ツアーに出掛けたサン・アローやポカホーンテッド、または自身の初ツアーでバッグ演奏をグノドに無理矢理頼みこんだ迷惑極まるハイ・ウルフなどなど)。
 ホワイト・ヒルズ(White Hills)やボング(Bong)など、これまでグノドと親交を深めたバンドからもおおいにうかがい知れるように、当初彼らのサウンドはクラウト・ロックのストイックな反復と、ドゥームを通過したドローンによるヘヴィなサイケデリアとまさしくゼロ年代の推移を押さえるものであった。

 2011年に〈ロケット・レコーディングス(Rocket Recordings)〉から発表された『イングノドウィートラスト(Ingnodwetrust)』あたりから明らかにゴッドフレッシュ感全開のインダストリアル・メタルな音作りとダブ処理によるサイケデリアを融合させる試みをはじめた。この頃から前述の〈NNF〉周辺のバンドとはある種真逆な方向性を目指したと言っていいだろう。
 2013年に発表された『グノド・プレゼンツ・ドウェリングス&ドラス(GNOD presents Dwellings & Druss)』はバンドのベース隊であるドウェリングスことクリス・ハスラム、ドラスことパディー・シャインによる打ち込みを全面的にフィーチャーした大胆なアルバムとなった。これまでのグノドの持ち味であった疾走感溢れるトライバルなパーカッションを充分に感じさせる見事なコンポジションが、彼等をポスト・インダストリアル/ミニマル・テクノの領域まで昇華させた素晴らしい出来栄えだ。

 〈パブリック・インフォメーション(Public Information)〉からのデビュー・LP『フィンガー・クロスド(Finger Crossed)』で、短波レディオとロシアン・フォークをマッシュアップしたようなサウンドを展開した、ロシアはペドロザヴォーツクを拠点にする男女デュオ、ラヴ・カルト(Love Cult)とドラスによるコラボレーション4曲と、各アーティスト2曲ずつによるこのレコード。ヴォイス・サンプリングとテープワープ・サウンドに見事なドラム・シーケンスが乗るコラボ曲は秀逸だ。アルバム全体としてストーリーが明瞭であり、また極端すぎる感情的なクライマックスもなく、近年のベースミュージック・リスナー全体に受け入れられても不思議ではない。
 ちなみにラヴ・カルトはDIYレーベル〈フル・オブ・ナッシング(Full Of Nothing)〉を主催、ドラスは身内テープ・レーベル〈テスラ・テープス(Tesla Tapes)〉を主宰する。お互いのアンダー・グラウンド・ネットワークが今回のコラボレーションに発展したのは必然とも言えよう。

 そういえばドウェリングスの〈テスラ・テープス〉からのテープ音源の再発として昨年末にリリースされたドント・セイ・ナッシングは即完売となったようだ。バッキバキに打ちつけるノイズ・ビートからドローンに洗い流されてゆく見事な展開や、キックの濫用を避けつつ長尺で聴かせるものなど、凡百のトレンドとは一線を画す作品だ。

 ちなみにドウェリングスとドラスはかなりのガジェット系ミュージシャンである。その手の連中のライヴにさんざんウンザリさせられている近年、彼等のような存在にはとても勇気づけられる。そういった意味では〈オパール・テープス(Opal Tapes)〉からのゲド・ゲングラスのテクノ名義、パーソナブル(Personable)とドウェリングス&ドラスによるコンピレーション、『Mirror & Gate Vol. III』もガジェット野郎はチェックすべきかも。

BAUS Theatre - ele-king

 バウスシアターが閉じるウワサはしばらく前からあったがそれがウワサでないと知ったのは灰野さんのミックスCDをいただくかわりに自分のバンドのCDを灰野さんにさしあげることになったのだが手元になかったのでボイドの樋口さんにもらいにいったらバウスの西村さんがおられた。
 西村さんに聞いた細かい理由は書かないし書いても詮ないが街の風景の一角ともいえる場所がなくなるのは、言葉でいう以前にそれがじっさいそうなり視覚から喪われてはじめて言葉にならない欠落とも感じない違和感をおぼえる。バウスシアターに足繁く通った映画ファンだけでない。食材を買いこむお母さん、学校に通う学生、レコードを買いに来たひとライヴハウスに訪れたひと、古着や古書を物色する方々、井の頭公園は反対側だがそこにデートに行くカップルでさえ喪失感を抱かないはずはなく、せっかく水をいれかえた池でボートに乗ったらかならずや別れることになるだろう。しかしそのまえに2014年6月にバウスシアターと私たちにも長いお別れは訪れる。私は吉祥寺が住みたい街ランキングの1位から陥落するのは時間の問題だと思うが、私はすくなくともこのイベントが終わるまではバウスシアターに住みたいくらいだ。
 爆音映画祭はいまから6年前当地で産声をあげた。映画館の音響ではなくライヴハウス仕様で映画を観るとともに「聴く」体験はサウンドトラックだけでなく人声と物音までふくむ音を視覚表現と対等に、映画という時間のなかにしかうまれない世界を感覚のすべてに訴えるものだった。私はこれを機に映画は過去のものであっても回顧の軛から逃れ、ちょうどDJカルチャーにおいて音楽の再生にプレイとリバースが二重写しになったような映画の観方を提示した。その意義はゼロ年代以降のシステムに地殻変動を起こした映画のシーンでけっして小さいものではなくバウスシアターはその主戦場であった。爆音映画際はこれからもつづけていくにちがいないがバウスシアターでの爆音はこれで見おさめである。
 期間は4月26日から5月いっぱい。プログラムは公式ホームページのご覧になるなりしてたしかめていただきたいが90本を数える上演作品にはバウスシアターや吉祥寺になじみぶかい「バウスを巡る映画たち」と題したもの、よりすぐりの爆音上映には当ページ読者にもぴったりの音楽映画も多数ふくむ。まだご覧になっていない方はぜひとも、何度か来られた方にもまたちがった映画体験が待ち受けているはずである。私なぞクストリッツァの『アンダーグラウンド』を前回の爆音で観たとき、冒頭のジプシーが高らかとラッパを吹き鳴らすシーンでイスがビリビリ震え、さすが爆音だと唸ったがそれは地震(震度3)のせいだとのちに知ったほど、予期せぬできごとが起こるのが爆音上映の醍醐味なのである。
 また爆音映画際の期間中は上映だけでなく、ライヴイベントとも予定しているという。大友良英による大編成ノイズ・プロジェクト「コア・アノード」、気鋭の映像作家、牧野貴による『Phantom Nebula』生演奏付き上映、このイベントのためにだけにニューヨークからやって来るマーク・リボーが『紐育の波止場』と『キッド』(当初『街の灯』の予定だったのを変更)に音をつけ、井上誠率いるゴジラ伝説LIVE 2014も襲来するのである。5月17日には、僭越ながら湯浅湾祭と題してヘア・スタイリスティックスの無声映画への劇伴ライヴ、カーネーションの直枝政広のソロ・ライヴにもちろん私ども湯浅湾のライヴもございます。一所懸命練習します、明日から。6月に入ってからの10日間は「ラスト・バウス/ラスト・ライヴ」と題し、かつて映画だけでなくコンサートや演劇も催すハコだったのをしのばせる充実のラインナップでのライヴ週間も待っている。かえすがえす閉じるまでバウスに住みたいくらいだ。閉じてもスクウォットしてもいいくらいだ。


interview with Wild Beasts - ele-king

 ワイルド・ビースツ。UKはケンダル出身の4人組。現体制ではや8年にも及ぶ活動をつづけている彼らは、ポップ・シーンの異端として各メディアからの称賛を得た『リンボ・パント』(2008年)以降、翌年の『トゥー・ダンサーズ』のマーキュリープライズへのノミネートなどを経て、『スマザー』(2011年)でその人気と評価を揺るがぬものにしたかに見える。


Wild Beasts -
Present Tense

Domino / Hostess

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 その後の初のリリースとなる新作『プレゼント・テンス』について、「彼らの確信がその野心に見合うものになった」と評していたのは『ガーディアン』誌だ。同誌の『トゥー・ダンサーズ』(2009年)のレヴューは「近年ヘイデン(・ソープ ※本バンドのメインのヴォーカル)ほどの驚きをもたらしたロック・ヴォーカリストは他に思いつかない」という文章からはじまっているが、それは、当初彼らがシーンに対して投げかけた「驚き」が、少なからず奇異の感やとまどいぶくみのものだったことを思い出させ、同時に、いつしかそれが堂々たる称賛へと変化していたことを実感させる。気に障るあいつは、気になるあいつになり、オンリー・ワンな存在へと変わった──「野心と確信が見合うようになった」というのは、そういうことだろう。

 何が気になるのか、それは彼らの音楽、そしてヴォーカルを耳にしたことのある人ならすぐにわかるはずだ。デヴィッド・バーンやクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーのアレック・オウンスワース、あるいはモリッシーを思い浮かべもする。ヘイデン・ソープのヴォーカリゼーションはスノッブで演劇的だと評されることもあるが、起伏が大きく、耳馴染みのよいとはいえないそれはしかし非常に精神的であり、ポップスというひとつの予定調和性との間に摩擦を起こす。そして、その摩擦そのものがひりひりと音楽を高める──その点、オート・ヌ・ヴのアーサー・エイシンとは、性格は異なれど、性的なモチーフへの強いこだわりや、R&Bを意識する点においてより共通性があるかもしれない。ブラック・ユーモアやエグみのある題材は、トラッドな音楽フォームに彼ら一流の解釈と屈折を加えた楽曲と相俟って、誰も真似のできないかたちをなし、近年作においてはエレクトロニックな方法や発想と結びつきながら洗練の度合いを深めてきた。なんというか、彼らの音楽はけっして「ミュータント」なのではなく、知性と確信とが磨き上げた不屈の皮肉であり批評でありパフォーマンスなのだ。そんなものが堂々とすぐれたポップスとして受け入れられ、称賛を浴びていることがとても心強い。
 インタヴューにはそのヘイデンの歌に穏やかな対照を与え、彼らの音楽性を一層深めているもうひとりのヴォーカル、トム・フレミングが応じてくれた。

■ワイルド・ビースツ(Wild Beasts)
英ケンダル出身のヘイデン・ソープ (V/G)、ベン・リトル (G)、トム・フレミング (V/B)、クリス・タルボルト (Dr)の4人組ロックバンド。08年のアルバム・デビューから現在までに3枚のアルバムを発表。09年、2作目『トゥー・ダンサーズ』が英国最高峰音楽賞マーキュリープライズにノミネート。11年3作目『スマザー』が全英17位を獲得。世界中で賞賛を受け、数々の年間ベストアルバムに選出された。14年、ニュー・アルバム『プレゼント・テンス』をリリース。さまざまなメディアが大絶賛し、全英チャートトップ10入りを記録した。


性っていうのは見れば見るほどわかってくるものなんだ。

“ワンダーラスト”などの性的なモチーフは、あなた方の音楽全体にも重要なインパクトを与えていると思いますが、あなたがたの音楽自体は必ずしも肉体的ではなく、むしろ精神性が勝っているように感じます。ワイルド・ビースツにとってのセクシュアリティとはどのようなものなのでしょうか?

トム:性には間違いなく興味を持っているね。君が言うように、精神性や人間性を性から完璧にかけ離そうとはしていない。その方がいろんな意味でおもしろいと思うんだよね、そうだろ? 音楽はまず体で感じるものだし、イギリス人のミュージシャンはそこまでそれが得意じゃないんだよね。性っていうのは見れば見るほどわかってくるものなんだ。

たとえば、音楽のフォームとして、R&Bは意識されていますか?

トム:R&Bは間違いなくよく聴くジャンルだよ。音を一つ一つどう繋げていくか、ちょっと外れている音をどう音楽に取り入れているか、ヴォーカルがどう鳴り響いているか、外れているリズムの技なんかに興味があるんだ。意識しているからなのかはわからないけど、雨がよく降る小さな島に住む子どもたちが動き回れるように、スペースを作り出しているようなイメージが湧くんだよね。4つ打ちのロック・ミュージックよりはしっくりくるんだと思う。

曲は歌のメロディから先に発想されるのですか?

トム:曲によるね。最初にリリックかタイトルが浮かびあがってきて、それをもとに曲の中心となるアイディアが生まれるんだ。そこからどんどん音楽ができあがっていく感じだね。まとめると、普段メロディがいちばん最後に作り上げられるんだ。

歌がとても強く繊細で、多くの曲はリニアにかたちづくられているように思います。そんななかで”ワンダーラスト”の吃音のようなタイム感やビートが必要だったのはなぜでしょうか。

トム:とてもシンプルなリズムだよ。だけど4/4のはずが3/4が聞こえるから何かが「抜けている」ように感じて、リズムに落ち着きがないように感じるんだよね。僕たちの音楽においてはドラムがいちばん大事な要素だと思ってる。4/4とか8/8よりは3/4、6/8に当てはまるんだ。フォーク・ミュージックの影響を受けてるんじゃないかな。

音楽を媒介するSNSなどの普及によって、音楽はより身近なところで完結的・効率的に流通するようになり、もはやポップ・ミュージックが人々の思いや時代の気分といった大きなサイズの共同性を代弁する必要がなくなったように見えます。あなたがこれまで受けたポップ・ミュージックからの恩恵について、教えてもらえますか?

トム:そうだね、いまはどこでも何でも手に入るからね。情報で溢れているんだ。それに対して興味深いレスポンスがさまざまな楽曲の制作。教会・クラシカルなバックグラウンドを持った幼い僕と、いま僕が作っている音楽との架け橋はポップ・ミュージックだったんだ。ボーイズ・II・メンやハダウェイを長波ラジオで聴くのが僕の音楽の学業において大きな役割を果たしたんだ。小さい頃はそれのありがたみに気づけてなかったけどね。

そんななかで、あなたがたは依然として「大きな」ポップ・ミュージックを引き受け、牽引する存在であるように思います。シーンにおいて、あるいは広くアートの営みの上において、自分たちの役割を意識することはありますか?

トム:そんなにいろいろ考えてたら気がおかしくなると思うよ。何よりも大事なのはとにかく打ちこむこと。おもしろみのあるものを作り出すこと。素直でいること。もちろん観客はほしいし、必要ではあるけど、誰も作れない音楽を作り出さなくちゃいけないんだ。そうするためのいちばんの手段は机に向かってひたすら打ち込むこと。僕たちの役割は何かを言う権限を持つことなんだ。だから、いわば、僕たちが言ったりアクションを起こさない限り起きないことを実現させることかな。

イギリスにはザ・スミスという素晴らしいバンドが存在しましたが、あなた方からは彼らがどのように見えますか?

トム:正直なところ、僕たち結成当初、ザ・スミスに多大なる影響を受けたんだ。彼らがいっしょに演奏するさま、マーティン・カーシーのブリティッシュ・フォークのギター・スタイルを取り入れるジョニー・マー、モリッシーの歌詞の組み方、北のブラック・ユーモア……全部健在なんだ。

イギリスの音楽の歴史を考えるときに、もっとも意識するのはどんなアーティストですか?

トム:とにかくたくさんいるよ。パイオニアであることを第一として考えるけど、スロッビング・グリッスル、エイフェックス・ツイン、ペンタングル、レッド・ツェッペリン。一日中話していられるよ。

では、アメリカのバンドやイギリス以外のミュージシャンで意識する人たちはいますか?

トム:数え切れないほどいるよ。その中から名前を挙げるとすればディーズ・ニュー・ピューリタンズ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ザ・ナショナル、ジ・アントラーズ、フォールズ、スワンズ……。

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古風なコラボレーターなんだよ、僕たち。




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みなさんは小さいころからの仲間だそうですね。ケンダルで青春期を送ることは、たとえばロンドンでのそれと大きく異なるものなのですか?

トム:まあ田舎の小さな町だからね。ちがいは大きいと思うよ。中心からかけ離れた存在感を持っているっていうことを自覚するようになったし、周りのヤツらと世界観を共有するようになった。バンドをやっていて狂いそうなときもある。だけど地に足がついているのはケンダルで育ったからなんじゃないかな。

プロデューサーとして加わっているレックス(Lexxx)の影響や、あるいはレオ・アブラハムス(Leo Abrahams)の影響は、それぞれ今作のどのような部分に反映されていると思いますか?

トム:彼らは才能を持った人たちだよ。レックスは音響の面で制作に関わっていて、レオは作曲やヴォーカルをどう届けるかにおいて制作に関わっていたんだ。僕たちが何を欲していて、どこに向かっているのかちゃんと理解していて、彼らどちらともこのアルバムを一人で作り上げることはできたと思ってる。大きく響くシンセの音だったり、引き締まった楽曲の作りは彼らの影響だね。

リチャード・フォーンビー(Richard Formby)の起用は予定されていましたか?

トム:リチャードにはいままでにも多大なる影響を受けてきたんだ。だけど今回は何か新しいことをしようって決めてね。彼と仕事するのは大好きだから今回はいっしょに制作に取り組めなくて辛かったけど、またきっと機会があると思うよ。彼とは2作をともに制作したし、僕たちはただバンドとして進化していきたかっただけなんだ。

ツアーを一旦休止してアルバム制作に専念したということですが、みなで寝泊まりをして臨んだのですか? その流れや模様を教えてください。

トム:アルバムはほとんどロンドンでレコーディングされたんだ。夜おうちに帰って、朝戻ってきてた。他のアルバムは一つの場所で集中した期間を設けて書いてたんだけどね。今回の方が考える時間も大幅に設けられたし、物事を正しくこなせたんじゃないかな。ロンドンは費用がかさむから、狭い、ちょっと窮屈な場所を使ってたよ。ほとんどの楽曲制作にソフトウェアを使ってたのはそのせいでもあるんだ。アルバムを書き始める前に休養をとったのは、ただただ盲目に取り組むんじゃなくて、自分たちがちゃんと欲してるアルバムを作ってることが確かであって欲しかったから。バンド外にもみんな個々の人生があったから、それがあってこそのアルバムなんじゃないかな。世界を見なきゃならないんだ。

基本的にはヴォーカルをとる方がソングライティングを行っているということになりますか? その場合、相手の入ってくるパートは相手の声や表現で歌われることを想像して作られるのでしょうか?

トム:ほとんどはヘイデンと僕が、それぞれ自分が歌う部分を書いてるね。だけどもちろんお互いのために書く部分もあるよ。お互いの声がどういったポテンシャルを持っているのかも熟知しているし、僕たちの声がお互いの声と自然と溶け込むこともわかってるからね。誰がどこを担当するか、誰が何を曲に与えられるかっていうことはよく考えるところだよ。古風なコラボレーターなんだよ、僕たち。だけどアルバムが完成するまでに、楽曲は4人全員の影響を吸収するんだ。

「アート・ロック」と呼ばれることについてどう思います?

トム:まあ、言われるがままにだね(笑)。いいんじゃない? もっとひどい言い回しはあると思うし。構わないよ。

ジャケットのアートワークとしてコラージュされている図像はそれぞれ意味を持っているのでしょうか? ビルの角はどこなのでしょう?

トム:どの楽曲もじつはイメージを持っていて、それが楽曲のアイディアに結びつくようになっている。コラージュにしたのは毎日僕たちが「理解しろ」と与えられる大量の情報を表している。君が指してるのはおそらく西ロンドンに位置する古いビンゴ・ホールだと思うんだけど、正直なところどの建物の写真を最終的に選んだか覚えてないんだよね。

口当たりのよい言葉や元気のよい掛け声をかけないポップ・アルバムを作りあげることは、かなり勇気のいることだと思いますが、本作はその点、4枚目の作品としてのあなたがたの自信や、音楽制作における確信を表すものだと考えてよいでしょうか。

トム:ありがとう。いままで書いてきたアルバムはここに至るまでに必要不可欠だったと思ってる。このアルバムは他に比べてもっと真っすぐだし、意味合いを表現するという分には素直だよ。この時点で僕たちは自信を持っているし、自分たちという存在を確立できたと思っている。過去のアルバム、過去のライヴから学んできたことをこのアルバムを通して抽出しているっていってもいいと思う。だって、何かを学んできたことを証明しなきゃだめだろ……!

 クリスチャン・フェネス、久々に〈Editions Mego〉からのリリースとなる新譜『ベーチュ』がいよいよ来週登場する。ele-kingでももちろんインタヴューを敢行! 後日の公開を待たれたし! だがそのまえに、音響とポップスの境界で取り組みをつづける日本の重要アーティストたち、小山田圭吾、坂本龍一、デイヴィッド・シルヴィアン、高橋幸宏、各氏のコメントが発表されているのでご紹介しよう。

クリスチャン、アルバム完成おめでとう。
美しいノイズのシャワーがいい気持ち! 小山田圭吾

ロマンティックやなあ! 坂本龍一

クリスチャン・フェネスの新しいアルバムには圧倒的な美しさがある。『エンドレス・サマー』の残響がこだまする、陽光が降り注ぐようなオープニング曲「Static King」、容赦なく無慈悲な「The Liar」、すばらしく壮大な「Liminality」、この3曲だけを取っても、『ベーチュ』はクリスチャンのこれまででもっとも力強い作品だといえる。

クリスチャンの作品は、うらやましいほど幅広い層に届いているようだ。そのラディカルな音の実験ゆえに、もしくは、それとは裏腹に、彼が手がけるほぼすべての作品における、パワフルに感情をかき立てる高潔さに魅了されるオーディエンスは増えるばかりだ。彼が用いるしばしば対立的な音の間の表面上の二分は寛容な心と結びつき、彼がソロやその他の作品の制作過程で取り除く感情の激しさについて何の弁解もせずに、彼をその先駆的な美的感覚に多様なコンテクストを見出すことのできる無二のアーティストたらしめている。まさに、彼の信奉者の多くが映画やダンス、演劇、ソフトウェア・デザイン、そしてもちろん、オーディオといった、横断的な芸術分野に存在しているように。

個人としては、クリスチャンは謙虚で物静かだがユーモアがあり、心の広い人間である。 表現者としての彼は、刺激的にダイナミックで、リスクをいとわない。彼の作品に通底する誠実さはもちろん、彼自身の中に存在するものなのだ。 デイヴィッド・シルヴィアン

フェネスを知ったのは、教授と彼との一連の仕事からだったと思う。しかしその音自体はYMOのライヴでの共演時に初めて、「あ、これがフェネスの音なんだ」と実感するまでよくわかっていなかったかもしれない。ただ実験的な音をだすギタリストと言ってしまうとかなりイメージが違うだろう。その複雑で静かな激しさと繊細さ等々…は、本当に彼独自のものだと思う。
このフェネスの新譜は、そんな音達がひっそりとしかし力強く溢れる、まさにアーティスト、フェネスの世界。
あのプレイ中の長身のたたずまい、愁い顔とよくマッチするなぁ……。(これは余談ですけどね……) 高橋幸宏

*コメントの無断転用を禁止します。


ついにクリスチャン・フェネス、2008年の『ブラック・シー』以来となるニュー・アルバム! フェネスの名を決定的なものにしたあのエポックメイキング作『エンドレス・サマー』(2001年)の流れを汲む、かつ同作をもしのぐあまりにも感動的な大傑作!!

HMV Tower
Amazon

FENNESZ 『Bécs』
フェネス/ベーチュ

¥2,500 + tax
14.04.28 in stores
解説付
日本盤のみのボーナス・トラック1曲収録

Tracklist:
1. Static Kings
2. The Liar
3. Liminality
4. Pallas Athene
5. Bécs
6. Sav
7. Paroles
8. Around The World*
*Bonus Track


Akkord - ele-king

 前回のレヴューで、ジャングルには、「音楽的にもまだ開拓する余地があり、横断的に、そしていろんなアプローチを取り入れることができるのだ」と書いた続き。
 遅ればせながら、僕は新世代ジャングルにハマっている。細かく断片化されて再構成されたパーカッシヴなブレイクビートの、言葉が舌に引っかかって出てこないようなまどろっこしさと、それとは相反して加速していくような滑らかさが同居しているという、ある種分裂的な感覚が実に気持ち良い。
 マンチェスターのアコードは、それをミニマル・テクノとうまい具合に調合する。

 さて、いま僕の隣にいる男が、アコードのふたりはシャックルトンからの影響が大きいとわめいている(彼は昨晩彼らと一杯やってきているのだ)。なるほど、たしかに、たしかにそうだ。それにしても、シャックルトンの影響がこういうかたちで表出するのか……。
 
 〈Houndstooth〉は昨年からファブリックがはじめたレーベルで、本作のリリースも2013年の冬、アルバムより半年ほど前に同レーベルから出している「Navigate EP」をいま聴くと──これまたごく個人的な興味の流れでリアルタムで追っている人には「何をいまさら」な話なのだが──リズムの組み方が新鮮に感じられる。
 シャックルトンのような、お化け屋敷で迷子になったような怖さはないが、フィリップ・K・ディックの描くまやかしの世界に迷い込んだかのようだ。風景が揺れているように感じるほど眩惑的で、ホアン・アトキンスともどこかで繋がっているのではと勘ぐらせる、マシナリーな、ロボティックなポスト・ダブステップ・ファンクといった風でもある。
 アコードのふたりは、いまちょうど来日中なので、興味のある方はぜひパーティに行ってみよう。東京公演は、日本人DJのラインナップも面白い。

 もう1枚、昨年のリリースで「何をいまさら」だが、とくに良いと思ったのはフレデリック・ロビンソンのデビュー・アルバムの『Mixed Signals 』。

 90年代にもジャングルはフュージョン/ブラジル音楽との接続を果たしたものだが、それはレイヴ・カルチャーが共同体に疲れて、なかばうんざりした時期におきた、離反と成熟から生まれたものだった。要は、それ相応の手続きと時間を要したのだが、この21歳のドイツ人青年は、そうした、いかにもシーンで揉まれてきたかのような汗や手垢の一切を感じさせないクリーンさで、しかし似たようなことをやっている。ロマンティックな美しいメロディと、こと細かく編集されたブレイクビートのドリルンベースで魅了したエイフェックス・ツインをフュージョンの側に寄せた感じだとでも言えばいいのか。しかもこの青年はひとりで、さまざまな楽器──鍵盤のみならずバイオリンまで──の演奏をこなしている。なんてクールなヤツだろう。

 ダンス・カルチャーには、フィリップ・K・ディックが『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』で描いたように、そこが楽園だと信じてあれこれ貪ったあげくに世にもおそろい目に遭うという側面がある。ゆえに……と言っていいのだろうか、ダンス・ミュージックには、おそらく直感的に、そこを楽園だとは思わせないような、ダークネスを敢えて描くところがある。
 アントールドやミリー&アンドレアの、暗い衝動を秘めたアルバムを聴き入ったあとでは、憎たらしいほどキラキラしていて、屈託のなさが気になるというか、気持ち良すぎて気持ち悪いのだが、耳に優しいのはフレデリック・ロビンソンだ。叙情に耽ることなく、清々しいまでに前進している。ああ、若いって良いナー。家聴きには最高のアルバムだし、僕は、初期のDJサッセや一時期のスヴェックのような、北欧系の、透明度の高いクラブ・サウンドを思い出す。
 本作は、下北沢のZEROに行けばまだ在庫があるかもしれないので、この音にピンと来た人は早めに駆けつけたほうが良いです。

The Correspondents - ele-king

 エレクトロ・スウィングというUKでちょっとした盛り上がりを見せているシーンがある。スウィング・ジャズとハウス、ヒップホップ、エレクトロ・ダンスの交合によって生まれたこのジャンルは、90年代に出現してなんとなく消えたスウィング・ハウスの流れを汲むと言われているが、数年前から復活の兆しを見せており、わが街ブライトンはロンドンと並ぶその聖地に数えられている。
 2009年にこのジャンル専門の初めてのパーティ、ESC(エレクトロ・スウィング・クラブ)がロンドンに登場すると、それに呼応してブライトンにもホワイト・ミンク・クラブが現れ、ロンドンのESCとブライトンのホワイト・ミンクはUKエレクトロ・スウィング界の2トップになった。ブライトンに同性愛者やアナキストが多いということはこれまでも書いてきたが、ブライトンについて言われているもうひとつの要素としてクラブが多いということがあり、骨董の街ということもある。なのでエレクトロ・スウィングのメッカとなる地盤はあった。UKのイビサとも呼ばれるブライトンのクラブ文化と、骨董品屋や古着屋が立ち並ぶザ・レインをうろつくレトロな若者の文化が交合すれば、それはそのままエレクトロ・スウィングというジャンルそのものになる。
 んなわけで、ブライトンのホワイト・ミンクとロンドンのESCは、このジャンルのアーティストやDJをキュレートして様々なダンス・イヴェントを主催しており、The Correspondentsもその周辺から出てきたアーティストである。ロンドン在住のDJ Chucksとフロントマンのイアン・ブルース(この人は将来を期待される画家でもあり、Courvoisier社の「英国の未来を担う全業界混合500人」のひとりにも選ばれた)のデュオであるThe Correspondentsは、イヴニング・スタンダード紙に「キング・オブ・ヒップホップ・スウィング」と称された。その形容がぴったりだったEP「What's Happened to Soho?」を聴いたときには、わたしは少なからず動揺したのであり、“Washington Square”のPVを見たときには、「オスカー・ワイルドがラップしてる」と思ったものだった。

 同曲や“Jive Man”など6曲が収録された2011年リリースのEP「What's Happened to Soho?」は「これがエレクトロ・スウィングだ!」とジャンルを丸ごとぶち投げて来た点で、本当はあれこそが彼らのデビュー・アルバムになるべきだったと思う。というのも、待ちに待っていた彼らのファースト『Puppet Loosely Strung』は、彼らを以前から知っている(とくにステージ)人間からすると、「へっ?」な違和感があるからだ。
 これはおそらく、彼らがエレクトロ・スウィングという狭いサークルから卒業し、ポップ界への進出を宣言したアルバムなのだろう。だからこそスウィングのエレメントは希薄になり、代わりに80年代エレクトロ・ポップのフレイヴァーが色濃く加味されている。リスナー層を広げたいという野心が本来の持ち味を薄めたと思うと悲しいが、それでも『Puppet Loosely Strung』はここ数カ月間わたしが一番聴いているアルバムである。全くそこにある必要性を感じない冒頭曲をすっ飛ばして2曲目の“Fear & Delight”から聴けば、これはこれでやはり新しいムーヴメントの息吹を感じさせるし、昨年のMelt Yourself Down同様、理屈や薀蓄抜きでまず踊れるのがいい。『華麗なるギャツビー』のリメイク映画のサントラでブライアン・フェリー・オーケストラやウィル・アイ・アムもそれっぽいことをやっていたが、アンダーグラウンドなエレクトロ・スウィング・シーンの熱さを伝えるのはやはり彼らのような人々のサウンドだ。

 それと呼応するのかどうかはわからないが、日本では、菊地成孔がホットハウスというダンスパーティを主催していると聞いた。紙版エレキングで、ペペの新アルバムが『戦前と戦後』というタイトルであることを知り、そう言えば、スウィング・ジャズが流行したのも第二次世界大戦の直前だったのだよなあ。なんてことを考えていた。

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 話は唐突に変わるが、4月前半は日本にいた。
 今回の帰省でこれまでにない衝撃を受けたのは、「(戦争は)100%ないとは言い切れない」と言った人がいたことである。
 スウィング・ジャズが流行したのは……。とまた眉間に皺を寄せて考えそうになったが、ふと、ケン・ローチの『The Spirit Of 45』のBGMにもスウィングが使われていたことを思い出した。終戦直後の英国人たちが、戦争に勝った名相チャーチルではなく、地べたの庶民のための政治を選んだピープルズ・パワーの時代にも、あの音が鳴り響いていたのである。
 そして今。
 21世紀のブロークン・ブリテンのアンダーグラウンドでエレクトロ・スウィングが鳴っている。
 と書くと過剰に浪漫的かも知れないが、そのサウンドをヒットチャートに入れる可能性を持ったアーティストがいるとすればThe Correspondentsだ。というのはしごく現実的なファクトである。

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