「Nothing」と一致するもの

Arca - ele-king

(小川充)

 スペインの闘牛士が着る上着をまとい、義足を付けた足でヨロヨロと歩き、ケツの穴から血を流して息絶えるアルカ。アルカの新作にあわせて公開された“レヴェリー(夢想)”のPVでの光景だが、毎度のことながらアルカの相棒のジェシー・カンダが手掛ける映像は、シュールでグロテスクなものだ。ここでのアルカは半獣半人のようで、マタドール(闘牛士)であり、同時に最後は殺される雄牛でもあるのだろう。彼の作品に常に漂う生(性)と死のイメージを、闘牛というメタファーを通して表現している。サイレン音で始まる“デサフィオ(挑戦)”のPVでは、お馴染みのボンテージ姿のアルカがいる。息絶えているような(もしくは死んだかのようにぐったりしている)アルカの周りには荒くれた男たち。最近はゲイやレズビアンであることをカミング・アウトするアーティストも少なくないが、それでもアルカほど作品からそうしたセクシャリティを感じさせる人はいないだろう。このPVから漂う凌辱や暴力、セックスや死の匂いは、アルカの自宅付近のアブニー・パーク墓地のイメージなのかもしれない。アルカによれば死者の傍にいると落ち着きが生まれ、詩的なものが生まれてくるそうだ(そして、そうしたものにゲイは惹かれてくるそうだ)。

 これまでのPVでは、アルカの姿はデジタル加工されたアートのようだったり、フィルターが掛けられて明確ではないことが多かったのだが、これら新作のPVでは、はっきりした肉体として示されている。そして、どちらのPVでも彼は自身の声を用いて歌っている点も象徴的だ。どちらかと言えば、これまでの作品はトラックに重きが置かれ、声を使う場合も器楽的に加工したものが多かった。初期のミックステープでは歌とラップを断片的に取り入れたこともあったが、それもトラックの一部として用いていたにすぎない。しかし、新作『アルカ』においては13曲中の8曲で自身の歌声を打ち出している。〈ミュート〉から〈XLレコーディングス〉へ移籍しての初めてのこの作品は、アルカにとって通算3作目のアルバムになるが、今までのような別人格のひとつの「ゼン」や「ミュータント」ではなく、アレハンドロ・ゲルシのアーティスト名であるアルカの名を冠したもので、ジャケットにもまた自身の顔をさらしている(まるでエリエイアンのようではあるが)。顔や肉体、声を使い、自身の内面をさらけ出していく意思が、『アルカ』からは伝わってくる。

 ヴェネズエラをルーツとするアルカは、彼の感情をもっともよく表現する母国語のスペイン語で歌う。“ピエル(皮膚)”や“アノーチェ(昨夜)”に顕著だが、アルカの歌はヴェネズエラの伝統的な歌謡のトナーダを想起させるものだ。ラテンの歌には悲しみや苦しみを歌ったものがあり、これらの歌にもそうした痛みや飢えといった感覚がある。今はロンドンで活動するアルカだが、ヴェネズエラの荒廃した社会で過ごした少年期の体験が、これらの歌に反映されているのかもしれない。インストの“キャストレーション(去勢)”やインタルード的な“ホイップ(鞭打ち)”は比較的これまでの曲に近いビート作品だが、全体的にはトラックからメタリックでグリッチなエレクトロニカ的要素は後退している。それよりも歌うことによってメロディ重視の方向へ傾き、“シン・ルンボ(道無し)”や“コラーヘ(勇気)”など、ヴェネズエラ時代に学んだピアノを生かしたポスト・クラシカルな作風が強まっている。“サウンター(彷徨)”は今までの持ち味であったノイズ混じりの実験的なトラックと、中世の教会音楽的な歌や和声が融合した意欲作と言えるだろう。“フガーチェス(儚いものたち)”や“ミエル(蜜)”は、甘美さを極限まで純化したような作品。“チャイルド”や“アーチン(いたずらっ子)”は、無邪気さと残酷さを併せ持つ子供を映し出している。アルカの作品の魅力のひとつに、醜悪さと美麗さが入り混じった奇妙な感覚がある。『アルカ』は表面的には美しく映る作品が多いが、そうした美というものも血や獣性と結び付いており、生(性)と死は背中合わせであることを伝えるアルバムだ。

小川充

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(デンシノオト)

 自らの声/ヴォーカルを大胆に導入したということで話題の新作だが、ヴォーカル(=メロディ)が全面化したことにより、作曲家の才能とパフォーマーとしての肉体の刻印が露わになった点こそが重要ではないかと思う。
 刺激的な音響とヴィジュアルに眼と耳が向かいがちだが、彼はまずもって作曲家として才能がある。パフォーマーとアーティストの両極を生きることができる稀有な人物なのだ。今思えばファースト・アルバム『ゼン』、セカンド・アルバム『ミュータント』、インターネット上にアップされるいくつものミックス音源などは、作曲家、パフォーマー、サウンド・デザイナーとして、それぞれの実験をおこなっていたように思える。そして、〈ミュート〉から〈XLレコーディングス〉移籍後となるサード・アルバムである本作において、その三つがついに統合された。
 本作は、2016年にインターネット上で公開されたミックス音源『Entrañas』に収録された曲も収録されているが、戦争を思わせる破壊的な音響が炸裂する『Entrañas』と比べると、この『アルカ』は、比較的静謐な作品である。自身の肉体性が生々しくも美しく音楽として昇華されている、とでもいうべきか。13曲中9曲にアルカ自身のヴォーカルが導入されているのもその証に思える。

 『アルカ』には、恐るべき完成度と、魅惑と、逸脱と、均衡と、破格と、美がある。新しいオペラであり、強烈な電子のロックであり、ポスト・ヒューマン時代の民族音楽であり、越境する人間の音楽/ダンスである。ジェシー・カンダのアートワークとの相乗効果もあり、アルカは歌手=歌い手として、自らの体を、ベネゼエラへの生贄のように捧げているかのようにすらみえる。そう、人間という「個」の刻印の芸術の実践のように。
 まずは不穏な美を称える電子民族歌謡のような“Anoche”や“Reverie”、荒廃した世界へのレクイエムのような“Sin Rumbo”、アルバム中もっともポップな“Desafío”などの音の肌理に触れてほしい。そして、肉体=個という戦争の記憶を想起・生成するような“Castration”に戦慄してほしい。

 これらの楽曲を聴き込むにつれ、デヴィッド・ボウイの死後、ロックという仮面と肉体=個を音楽(という擬態?)というモードに時代性を刻印したのは、昨年のアノーニのアルバムと、このアルカの新作ではないかとすら思ってしまう。アノーニも個というものの崇高さ、個という多様性、しかし安易に「同調しない」という個の姿勢に貫かれている。このアルカの新作も同様だ。そこで還元されるのは、個=自身の肉体である。ゆえに本作はセルフタイトルなのではないか。

 音楽とは共同体に深く根づいているのでいっけん分かりにくいが、しかし、やはり音楽の真の力とはアナーキズムであり、共同体の破壊でもある。既存の政治形態、社会思想、社会通念を壊すものでもある。なぜか。そもそも、あらゆる音楽は個の身体から発しているからだ。音楽とは原=社会な芸術なのである。このアルカの新作に収録された楽曲すべてに横溢する血の匂いは、21世紀の電子音楽を身体という原=社会的なものへと還元させようとする、強い欲望と意志に思えてならない。
 私は2010年代的なエクスペリメンタル・ミュージックが、これほどの芸術性を獲得したことに深い感動を覚えた。断言しよう。アルカ史上、最高傑作である。

デンシノオト

interview with YungGucciMane - ele-king


YungGucciMane
JADE [Explicit]

Hip HopTrapPshychedelic Rap

Amazon iTunes

 YungGucciManeの音楽、そして発言はまた極めて感覚的だ。このインタヴューを読んで興味が湧いたなら、まずはYouTubeにアップされている新作アルバム『JADE』の楽曲をぜひ聴いて頂きたい。KOHHの『YELLOW TAPE3』、そして『Concrete Green13』にその名を見れば、YungGucciManeが一部好事家の支持を集めるのも頷けるのではないか。YungGucciManeが鳴らすのは新しいヒップホップだ。ほとんどYungGucciManeというジャンル、そう言ってもいいほどに日本には類を見ない音楽である。初めてのインタヴューの日(今回は3度目だった)、YungGucciManeに影響を受けた音楽について聞くと、彼はチーフ・キーフとビートルズ、そして久石譲と即答した。これらの音楽の影響が渾然一体となり、YungGucciManeというアウトプットで鳴らされたものが『JADE』だ(『NO PAPERS』『Static』といったこれまでの作品は、主にTRAPのみを取り込んでアウトプットした楽曲だ)。これについては1曲目の“I CAN’T WAIT”、2曲目“Across The Universe”と聴いて、なるほどと頷けるものがあると期待したい。
 初めてのインタヴュー時と同じく、この日も彼のクルーHASA MONEY(ハザ・マネー)のラッパーJUICY Bと一緒に話を聞いた。

僕に対する僕自身のイメージなんですけど、リンだったり……トラップの、なんていうか…ドラッグネタというか、そういう音楽を作るイメージが強いと思ったんですよね。そういうのを作るのもいいんですけど、まぁそれだけじゃないというか。『JADE』に関しては、そういうものを廃除していきたかったんですよ。

アルバム『JADE(ジェイド)』には「JADE」という楽曲が収録されているわけではありません。このタイトルは何を意味しているのですか?

YungGucciMane:JADE(翡翠)という緑色の石があるんですけど、『NO PAPERS』(YungGucciManeの第1作目収録)の「Emerald Splash」から連想していって、このタイトルになりました。

ああ、エメラルドも緑の宝石ですね。では、これもまた曖昧な質問なのですが、そもそも発端となった「エメラルド」はどこから出てきた言葉なんですか? 

YungGucciMane:一番最初に『NO PAPERS』を従兄弟の宮下慎二と一緒に制作している時に、こう…なんですかね……「エメラルドスプラッシュ!」っていう言葉が出てきたんですよ。

JUICY B:ハッハッハ(笑)。

YungGucciMane:そのときの感覚のイメージですね。ああ、エメラルドスプラッシュだわ、いまヤバいわっていう……感じの言葉から生まれてきました。そこからまだ使っているという感じです。

なるほど……。でも『JADE』全体の印象は『NO PAPERS』とはまったく違いますね。

YungGucciMane:これまでの僕のイメージだと……それは僕に対する僕自身のイメージなんですけど、リンだったり……トラップの、なんていうか…ドラッグネタというか、そういう音楽を作るイメージが強いと思ったんですよね。そういうのを作るのもいいんですけど、まぁそれだけじゃないというか。『JADE』に関しては、そういうものを廃除していきたかったんですよ。絵を勉強したりしたこともありますし、もっと自分の内面を出したいと思って作ったアルバムで、だから結構幻想的なアルバムになったのかなとは思います。

『JADE』の制作期間は絵を描いたり、生活そのものがクリエイティブなモードだった感じなんですね。

YungGucciMane:できあがったのは多分、リリース前の3、4か月くらいで、その前は私生活ですごいゴタゴタしたりしていたんですよ。トラブルに巻き込まれたりしたこともあって。それが済んで、芸術と音楽の世界に浸れる期間になって一気に作っていった感じですかね。

いろいろトラブルみたいなことがあった分、かえって高まったんですかね。

YungGucciMane:完全にそうですね。そういうことを全部処理して自由になった後に……

JUICY B:気分的には最高の状態でやっていた感じ?

YungGucciMane:そうそう。でも、そういう期間でも曲はずっと録り続けてましたけどね。ゴタゴタを片付けながら、でも音楽はずっと作っていた。それが完璧になる状態を待って、なった状態でそれまで作っていた曲を完璧に仕上げていった感じですね。

評判や反響はどうですか?

YungGucciMane:iTunesStoreのデータは見てないので詳しいことはわからないんですけど、ただ聴いたと言ってくれる人は結構いて、その人たちの評判はすごい良かったですね。Twitterとかインスタの感触も結構いいですね。いろんな人がいるので全部に対応はできないんですけど、気になった人とはそれで繋がったりもしています。

僕もこのアルバム、すごい好きです。ちなみにどの曲からできたんですか?

YungGucciMane:“Across The Universe”です。それが去年(2016年)の冬ぐらいですね。この曲から発想が広がっていった感じです。

 Across The Universe これは歌い出す壁画
 頭の中に洗濯機 グルグル飾り付ける石器
 “Across The Universe”

『JADE』を出した後に、また『NO PAPERS』みたいなふざけてる、そのまんまの俺を次は出そうかなと思っています。『JADE』で一度内面的なものを出して、次はもろトラップで遊んでいるアルバムを出してやろうかなと。

先ほど内面を出したかったという話や幻想的なアルバムになったという話が出ましたが、こういうリリックは象徴的ですね。

YungGucciMane:ちょっと宇宙の感じというか、瞑想じゃないですけど、サイケデリックに近い感じはしますけどね。音楽を創るときにすごい集中すれば、そういう世界に行けちゃうタイプなんで、そういう感じで作りました。

“アンレムスイミング”もまさにそういう世界観を連想させる曲です。どこかサイケデリックな感覚ですね。

YungGucciMane:これは後半にできた曲です。この曲はダジャレなんですよ。ノンレム睡眠てあるじゃないですか。それだとつまらないので、そこからアンレム睡眠という言葉が思いついて、睡眠をスイミングにしたらどうなのかなと。そのイメージで作った感じですね。ちょっと「エメラルドスプラッシュ」っぽい……自分のなかの言葉が生まれた感じだったんですよね。

造語というんですかね。それをパッと出して使えるというのは、僕が自分の感覚に置き換えて考えるとすごい難しい行為です。でもたしかに“エメラルドスプラッシュ”も“アンレムスイミング”も独特のきらめきや浮遊感を持った言葉で、何か伝わるんですよね。そもそもYungGucciManeさんは人に何かを伝えたいという思いはあるんですか?

YungGucciMane:ありますよ。言葉でというよりは、音楽でという感じですが。

ああ……今回“グリーンエメラルド”という曲もありますが、これにしても言葉というよりは、音楽でエメラルド感は伝わります。

YungGucciMane:そうですね。それに尽きます。エメラルド感ですね。それを出したかった。このアルバムは“Across The Universe”の世界観に始まり“グリーンエメラルド”まで繋がっていった感じです。

アルバムを通して伝えたかったことみたいなのはあるんですか?

YungGucciMane:『NO PAPERS』の時は絶対これがあったほうがいいって感じで出して、『JADE』はこういうのがあってもいいんじゃないかっていう感覚ですかね。

それはあえて言えば、“どこ”に“それ”があったほうがいい、あってもいいということなんですか?

YungGucciMane:それはもう全体ですね。

全体というのは世界の音楽シーンにということですか?

YungGucciMane:そうですね……って感じで思ってました。世界的に見てもこういうヒップホップがあってもいいんじゃないかっていうことですね。『NO PAPERS』みたいな世界観を壊したかったというのもありますね。さっきも話しましたけど『JADE』の制作は絵やアートに目覚めていた時期でもあったので、そういう世界観のなかで録った。これはコンセプトを作ったタイプのアルバムだったと思います。

ここまでお話を伺うと「内面的」「瞑想」みたいな単語からシリアスな作品と誤解されそうですが、そういうわけではないですよね。本当に、もっといままでどこにもなかった音楽という強さがあるというか。とくに“ナッシング”という曲がそれを象徴していると思っているのですが、この曲の客演のフィーメルラッパー、ド着☆幽霊テレサのバースがまた凄まじくて。この名前も凄まじいのですが(笑)。

YungGucciMane:(ド着☆幽霊テレサの客演は)単純にあのラップはかっこいいから入れたんですけど、ちょうどいいバランスで入れられたかなとは思ってるんですよね。超イケてるんですよ。ラップがいかれてるんで。いきなり「やる」と言いはじめて、「いいよ、やりなよ」と言って。最初は俺にかぶせてくるのかなと思ったんですよ。フロウだったり。そうしたら全然関係ないことをラップしはじめて、そこがめっちゃ面白くて。なんだこいつ、クソ関係ねぇこと歌いはじめたと思って(笑)。そこが最高でしたね。あれはマジで最高だった。ぶっ潰されたなぁみたいな。

JUICY B:(笑)。

(笑)。YungGucciManeさんからのディレクションは一切なかったんですか?

YungGucciMane:いきなりっすよ。ハンパないですよね。

ハンパないですね。ハンパないといえば、このアルバムのジャケットがまた……イケていて……。超かっこいいですね。

YungGucciMane:あれはすごい気に入ったアーティストの人がいて、その人の作品を使わせてもらったんですよ。ツイッターで知り合ったんですけど、美大生の女の人の作品なんです。僕の音楽を聴いてくれていて、仲良くなって使わせて欲しいとお願いしたらぜひ使ってくれと言ってくれて。あの作品に惚れちゃったんですよね。この作品は実物があるんですけど、それを撮った写真がこれなんです。

JUICY B:マジで? なるほどね。加工しているのかと思ってたわ。マジでヤバイね。

そのアーティストのお名前を伺ってもいいですか?

YungGucciMane:マザーファッ子さんですね。ツイッターでもマザーファッ子で出てます。

JUICY B:名前がウケるね。ははは(笑)。

こちらもすごい名前ですね(笑)。これはマスターピースだと思いました。もうひとつ、『JADE』の制作中にCherry Brownさんとのシングル『新世界』をリリースしています。こちらの動きはどうなっているんですか?

YungGucciMane:チェリー君とはまだアルバムの制作が続いてます。そっちは作りたいように作って、かっこいい曲を入れてこうって感じです。最近、新しいのを送ってくれて、それでデモで乗っけたりしたのが何曲かありますね。もう結構できてます。

JUICY B:(できてるのは)全部かっこいいよね。

そういった楽曲を作りつつ『JADE』を作っていたということですよね。ふたつの作品に相互の影響や関係はありますか?

YungGucciMane:チェリー君とやるときも、普通に俺の世界は俺の世界、チェリー君にはチェリー君の世界があるので、それを合わせればいい。だからあんまり切り替えはしないですね。俺が中心になってチェリー君がそれに付け足してくれるパターンとチェリー君が中心になって俺がそれに付け足すパターンがあって、お互いの世界を侵し合わない。そういう感覚のノリを保って作り続けている感じです。

『新世界』も広く聴いて欲しい曲ですし、こちらのアルバム完成も楽しみです。では、最後にYungGucciManeさんの今後の動きや展開があれば教えて下さい。

YungGucciMane:『JADE』を出した後に、また『NO PAPERS』みたいなふざけてる、そのまんまの俺を次は出そうかなと思っています。『JADE』で一度内面的なものを出して、次はもろトラップで遊んでいるアルバムを出してやろうかなと。いまドープ目なトラップを録りためているので、そこら辺を次は出そうかなと思っています。

ありがとうございました!

 インタヴュー中にはCHIEF KEEF、YOUNG THUG、Migos、J $tashの曲が鳴り響き、筆者が訊くとYungGucciManeがそれぞれの音楽が持つ魅力についてレクチャーしてくれる(大抵、それは「ノリ」という言葉で説明される。例えば「YOUNG THUGはクソオリジナルなノリが好きなんです。Lil’ Wayneからつながっているけど、完全にオリジナルなノリにしてる」「Migosはノリが好きですね。合いの手的な感じの独特なノリが……」など)。その合間合間に、ロヒプノールは、ベンザリンは、ザナックス(ソラナックス)は、ドグマチールは……というレクチャーまで挟み込まれ……。
 やがて最近外国から送ってきたというビートを鳴らしながらYungGucciManeとJUICY Bはレコーディングを始める。ふたりとも相変わらずリリックは一切書かない。

『NO PAPERS』 

「Across The Universe」

「ナッシング」

Songhoy Blues - ele-king

 きました。前作すっごい好きだったんですよ。2015年に出た『Music in Exile』は、個人的にその年のベスト10に入るアルバムでした(レッド・スナッパーによるリミックスも最高でした)。ソンゴイ・ブルースはマリのバンドで、最高のブルース・ロックを奏でる前途有望な4人組です。どれくらい有望かというと、かれらは昨年、ザ・ストーン・ローゼズのマンチェスター公演のフロントアクトに抜擢されています(諸事情により実現しませんでしたが)。その組み合わせに舞い上がったのは私だけではないはずです。
 そんな彼らが6月にセカンド・アルバムをリリース! これは正直、今週いちばん心躍ったニュースかもしれません。しかも新作にはなんとイギー・ポップが参加しています。イギー御大は昨年アルヴァ・ノト(!)と共作を発表していましたが、今度はソンゴイ・ブルースですか。御大、年をとればとるほど先鋭的になっているというか、素直にかっこいいですよね。日本盤もリリースされるようなので、とりあえずは公開された新曲“Bamako”を聴いて待っていましょう。いやあ、楽しみだわあ。

マリのソンゴイ族4人組から成るブルース・バンド、
ソンゴイ・ブルースのセカンド・アルバムが完成!
新曲“Bamako”を公開!

アフリカのマリ共和国とニジェール共和国に分断して居住する部族、ソンゴイ族の4人が組んだブルース・バンド、ソンゴイ・ブルース。デーモン•アルバーン率いる音楽プロジェクト、アフリカ・エクスプレスのアルバムに楽曲が抜擢されたことをきっかけに注目を集め、ヤー・ヤー・ヤーズのギタリスト、ニック・ジナーとマーク・アントワーヌ・モロー(マルーン5、ケイナーン、アマドゥ&マリアムほか)プロデュースによるデビュー・アルバム『ミュージック・イン・エグザイル』を2015年にリリース。

ブライアン・イーノが大絶賛していたり、デーモン・アルバーンやジュリアン・カサブランカスがサポート・アクトに起用するなど、著名なミュージシャンからも熱い注目を集めているほか、アラバマ・シェイクスのシカゴ公演にスペシャル・ゲストとして登場したりと一躍話題のバンドとなった彼ら。

あれから2年、そんな彼らからセカンド・アルバム『レジスタンス』が届けられた! 2016年秋にプロデューサーにニール・コンバー(M.I.A.、ジャンゴ・ジャンゴ、クリスタル・ファイターズ)を迎えて制作された今作は、ロンドン発のトラックメイカー、ラグジュアリーがシンセで、イギー・ポップ、スティーリング・シープらがヴォーカルでゲスト参加している。

早速アルバムから“Bamako”が公開となった。

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「Bamako」の音源試聴はこちら:
https://youtu.be/xBujXJVBxNU
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「Il Ma Fata」直訳すると「外へでかけよう」というフレーズを繰り返し歌うこの曲は、マリ共和国の首都バマコでのナイト・ライフを祝したもの。リード・ヴォーカルのアリユ・トゥーレは次のように話す。

「自分たちの故郷についてポジティヴで楽しい曲を書きたかったんだ。アフリカっていうとネガティヴで、戦争や飢饉といった悪い報道しかされない。そんなイメージを払拭できて、誰もが共感できる曲にしたかった。土曜の夜に出かけることについて歌うことで、人々が普段知らないアフリカを伝えたかった」

ファースト・アルバムを気に入ったなら今作でガッカリすることはない。今作でもソンゴイ・ブルースらしく、地元の伝統的なスタイルとモダンなギター音楽を融合させた独特のサウンドを奏でてくれている!

■アルバム情報
アーティスト名:Songhoy Blues(ソンゴイ・ブルース)
タイトル:Résistance(レジスタンス)
海外発売日:2017年6月16日(金)
レーベル:Transgressive / HOSTESS
※日本盤詳細は追ってご案内

■トラックリスト
01. Voter
02. Bamako
03. Sahara (featuring Iggy Pop)
04. Yersi Yadda
05. Hometown
06. Badji
07. Dabari
08. Ici Bas
09. Ir Ma Sobay
10. Mali Nord (featuring Elf Kid)
11. Alhakou
12. One Colour

※新曲“Bamako”iTunes配信スタート&アルバム予約受付中!(高音質Mastered For iTunes仕様)
リンク:https://itunes.apple.com/jp/album/r%C3%A9sistance/id1227668291?app=itunes&ls=1&at=11lwRX

■バイオグラフィー
2012年1月に起きたマリ北部紛争を乗り越え、ソンゴイ族であることに誇りを持つ4 人の若者、アリユ・トゥーレ(Vo)、ウマール・トゥーレ(B)、ガルバ・トゥーレ(G)、ナタネール・ダンベレ(Dr)で結成したブルース・バンド。伝統と現代、国産と 外国産、若さと古代がブレンドされたサウンドは聴く者の心を躍らせ、ブライアン・イー ノ、デーモン・アルバーンなど著名アーティストも大絶賛。2015年、ヤー・ヤー・ヤー ズのギタリスト、ニック・ジナーとマーク・アントワーヌ・モロー(マルーン5、ケイナーン、アマドゥ&マリアムほか)プロデュースによるデビュー・アルバムをリリース。2017年6月、2年ぶりとなる新作『レジスタンス』を発売することが決定。

CLAP! CLAP! - ele-king

 クラップ!クラップ!といえばリズム、リズムといえばクラップ!クラップ!です。これまでリリースされた2枚のアルバムは、いずれも魅惑的なリズムを聴かせる伝統的かつコンテンポラリなダンス・ミュージックでした。そりゃあポール・サイモンも魅了されるわけです。そんなクラップ!クラップ!が5月20日に来日公演を開催します。しかも今回のライヴは、ドラム2台を従えてのバンド・セットになるそうです。あの個性的なサウンドがいったいどう再現されるのやら、いまから気になってしかたがありません。きっと深夜帰りの病んだ気持ちに優しく作用することでしょう!

[5/19追記]最終ラインナップが決定しました。食品まつり a.k.a foodman、JUN KAMODA、1-DRINK、RLPが参加します!

祝! CLAP! CLAP! バンド・セットによる来日公演決定!

ビート・ミュージック~ベース・ミュージック・リスナーから辺境~民族音楽ファンやサイケ系インディ・ロック・ファンまで巻き込んで話題騒然となった大ヒット・ファースト・アルバム『TAYI BEBBA』に続く全世界待望のアルバム『A THOUSAND SKIES』を携えて CLAP! CLAP! の再来日公演が決定! しかも、今回はツイン・ドラムを配したバンド・セットでのライヴを本邦初披露! CLAP! CLAP! 衝撃のサウンドをライヴでご堪能あれ! さらに一筋縄ではいかぬメンツのブッキングが進行中、さらなる詳細は近日発表! 密林のごとき熱量マックス、そしてその物語は宇宙へと飛躍する前代未聞のパーティになること必至、乞うご期待!

*既に発表されております同日(5.20 sat)THE STAR FESTIVAL @スチールの森・京都はソロ・セットでの出演となります。バンド・セットは東京公演のみとなります。

[5/19追記]追加ライヴ・アクトとして、USツアーを目前に控えたジューク/フットワーク・プロデューサー、食品まつり a.k.a Foodman が決定。パーティを司るDJ陣は、CLAP! CLAP! のシングル「Hope feaat. OY」のリミックスを手掛けた ILLREME こと JUN KAMODA、テクノからビート~ベース・ミュージックまでボーダーレスな現場最前線でのパーティー・メイキングに絶対的信頼の 1-DRINK、海外ビート・シーンからも厚い信頼を得ている次世代ビート・サエンティスト RLP の参戦が決定!
過去2回の来日公演を確実に凌駕するであろう熱量マックスの密林グルーヴでオーディエンスを宇宙まで昇天させてくれることでしょう!

UBIK version
5.20 sat @東京 代官山 UNIT
Live: CLAP! CLAP! (Band Set), 食品まつり a.k.a foodman [5/19追記]
DJ: JUN KAMODA, 1-DRINK, RLP [5/19追記]

Open/ Start 24:00-
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (w/ Flyer, Under 25), ¥4,000 (Door)
Information 03-5459-8630 (UNIT)
www.unit-tokyo.com

Ticket Outlets: PIA (330-316), LAWSON (72575), e+ (eplus.jp), diskunion CLUB MUSIC SHOP (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, JET SET TOKYO, clubberia, RA Japan, UNIT

CLAP! CLAP! (Black Acre, IT)
CLAP! CLAP! は、ディジ・ガレッシオや L/S/D など多数の名義で活躍するイタリア人プロデューサー、クリスティアーノ・クリッシがアフリカ大陸の民族音楽への探究とサンプリングに主眼を置いてスタートさせたプロジェクトである。様々な古いサンプリング・ソースを自在に融合して、それらを極めてパーカッシヴに鳴らすことによって実に個性的なサウンドを確立している。彼は伝統的なアフリカのリズムをドラムマシーンやシンセといった現代の手法を通じて再生することにおいて類稀なる才能を持っており、その音楽体験におけるキーワードは「フューチャー・ルーツ/フューチャー・リズム」。CLAP! CLAP! の使命は、トライバルな熱気と躍動感に満ちていながらも、伝統的サウンドの優美さと本質を決して失わないダンス・ミュージックを提示することである。2014年にリリースされ翌年CD化されたファースト・アルバム『TAYI BEBBA』は、ビート・ミュージック~ベース・ミュージック・リスナーから辺境~民族音楽ファンやサイケ系インディ・ロック・ファンまで巻き込んで大ヒットを記録中、その勢いをさらに加速させる日本独自企画アルバム『TALES FROM THE RAINSTICK』を2016年5月にリリースした。さらにはポール・サイモンの最新アルバム『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』にも参加、注目を集めてきた。そして、CLAP! CLAP! 全世界待望の新作『A THOUSAND SKIES』は、2017年2月にリリースされたばかりである。

[リリース情報]

CLAP! CLAP! "A Thousand Skies"
クラップ!クラップ!『ア・サウザンド・スカイズ』
in stores now
PCD-93997
★日本独自CD化
★アーティスト本人によるストーリー仕立ての全曲解説&対訳を封入
https://p-vine.jp/music/pcd-93997


interview with Purity Ring - ele-king


Purity Ring
Another Eternity

4AD

ElectronicR&BDream Pop

Amazon

 楽器やエレクトロニクス担当のコリン・ロディックとヴォーカル担当のミーガン・ジェイムズからなるデュオ、ピュリティ・リングは、カナダのハリファックス/モントリオールを拠点に活動する……と思っていたのだけれど、LAへと拠点を移してからもう随分と経っていたようである。2011年にインターネット上に発表した音源が注目を集め、〈4AD〉との契約をつかみととり、2012年にファースト・アルバム『Shrines』を、2015年にセカンド・アルバム『Another Eternity』をリリース。他方でダニー・ブラウンのアルバムに参加したりソウルジャ・ボーイをカヴァーしたりチャンス・ザ・ラッパーをプロデュースしたり、はたまたジョン・ホプキンスと共演したりレディー・ガガをリミックスしたりと、精力的に横断的な活動を続けてきたピュリティ・リングだが、ここ最近はツアーに明け暮れていたそうだ。そのツアーの一環なのか、ちょうど3月に来日したかれらに運良く取材する機会に恵まれた。かれらはいま何を考えているのか。次のアルバムはどういう内容になるのか。以下よりお楽しみください。

ピュリティ・リングの音楽は、「ハッピー・アクシデント」で、本当に良い偶然でこういう音楽になったんだ。

前作『Another Eternity』が出てからしばらく時間が経ちますが、この間、何をされていたのですか?

ミーガン・ジェイムズ(Megan James、ヴォーカル。以下、MJ):ほぼツアーをしていたね。もうずっとツアー。その間に曲を書けたらと思うんだけど、まだやり方がよくわかってなくて。とにかくツアーで忙しくて書けなかった。

コリン・ロディック(Corin Roddick、楽器担当。以下、CR):でも少しは曲を書いているよ。アルバムをリリースできるまでには至っていないけどね。これからアルバムの制作に入ろうかなと思っている。

いま模索している方向性みたいなものはぼんやりとあるのでしょうか?

CR:いろんなことをいま実験している最中だね。どんな可能性があるかっていうのを見ているところ。過去のサウンドが進化したものになることは間違いないけど、まだ明確に「この方向性」っていうのは決まってないな。いろいろと試している過程が、自分たちにとってはいちばんおもしろいので、それを楽しんでいるところだね。

ピュリティ・リングの音楽は一言で言うと、ヒップホップやエレクトロのビートとシンセ・ポップの両立だと思うんですが、そもそもピュリティ・リングはどういうふうにはじまったのでしょう?

MJ:(最初はいまと)全然違った。ふたりともまったく違ったね。彼(コリン)の方はエレクトロをやっていたんだけど、じつはドラマーで、私の方はシンガーソングライターっぽい音楽をピアノで作っていた。一緒になって音楽を書き始めるようになってから、自然とこういう音楽になっていったんだ。

CR:できあがったピュリティ・リングの音楽は、「ハッピー・アクシデント」で、本当に良い偶然でこういう音楽になったんだ。最初にビートを書いたときも、以前僕がやっていたバンドや音楽ではこういう(ピュリティ・リングのような)ビートの作り方はしたことがなかった。僕はパンク・バンドにいた経験もあったし、ふたりともまったく違うところから来ていて、一緒になったことでどんどんいまのサウンドが確立されていったんだ。

ここ何年かのピュリティ・リングは、ダニー・ブラウンのアルバムに参加したりソウルジャ・ボーイをカヴァーしたりチャンス・ザ・ラッパーをプロデュースしたりと、ヒップホップのアーティストとの絡みが目立ちます。おふたりはもともと、それぞれシンガーソングライター的な音楽をやったりパンク・バンドにいたりしたとのことですが、その頃からヒップホップへの関心は高かったんでしょうか?

CR:ヒップホップの大ファンだったよ。小学校の頃からエミネムを聴いていたんだ(笑)。ドクター・ドレとか。その頃からずっとハマっているね。

MJ:R&Bとかヒップホップとか、大好きなアーティストや憧れるアーティストはたくさんいるんだけど、ピュリティ・リングのヒップホップのエレメントに関しては、私よりコリンの受けている影響が大きいと思う。

小学校でエミネムやドレを聴いていたら、親に心配されませんでしたか(笑)?

CR:母親からは禁止されていたね(笑)。使っていたソニーのCDウォークマンが中身の見えるものだったから、母親にバレないようにエミネムのCDの上に別のCDを置いていたよ(笑)。

そういうヒップホップのアーティストとコラボする一方で、ケイティ・ペリーやレディー・ガガとも絡んでいますよね。それぞれリスナー層が異なっていると思うのですが、自分たちとしては一貫しているというか、ピュリティ・リングとして特にそこは分けて考えているわけではないのでしょうか?

CR:僕は音楽のすべてのジャンルやスタイルが繋がっていると思っているんだ。プロダクションのディテールで異なる部分はあると思うけど、僕はいろんなものをブレンドしたり繋げたりするのが好きなんだ。ケイティ・ペリーのリミックスもダニー・ブラウンのトラック制作も自分にとっては同じなんだ。そこにあんまり違いは感じないな。

ピュリティ・リングの音楽にはもうひとつ、シンセ・ポップの要素もありますね。ですがそれはキラキラした感じのそれというよりは、どんよりした感じ、ダークな感じのそれです。そこで想像してみたのですが、シューゲイズからの影響はあるのでしょうか?

MJ:そうね。昔はシューゲイズを聴いていたし、影響を受けている部分はあると思う。

CR:シューゲイズというジャンルはリスペクトしているよ。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインも好きだし。でも、アルバムや曲名を全部言えるほどハマっていたわけではないんだ。とはいえ、僕らの音楽のなかのダークでどんよりした部分がシューゲイズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような音楽と比べられるっていうのは、すごく納得がいくよ。

ファースト・アルバムの『Shrines』を出した後、周囲やメディアなどから「シンセ・ポップ」だとか「ドリーム・ポップ」だとか、いろいろな呼ばれ方をされたと思いますが、

MJ:「フューチャー・ポップ」なんてのも言われたよね。

自分たちでピュリティ・リングの音楽に言葉を与えるとしたら、なんと呼びますか?

MJ:それはやらないようにしてる。

CR:つねにジャンルレスでいたいんだ。

MJ:自分たちを何かに括るっていうのは絶対にしたくない。私たちの音楽は本当にいろんなものが混ざっているし、トラック単位でもアルバム単位でも違うから、ひとつ「これ」って言うことはできない。

ピュリティ・リングの音楽を届けたいのはどのような人たちでしょう?

MJ:ショウをやっていて感動するのは、お客さんたちの年齢が本当にさまざまなこと。服のスタイルもいろんな人たちがいて、それがすごく嬉しい。私たちのオーディエンスやリスナーは会場で喧嘩することもないし、言い争いをすることもない。みんな本当に音楽を聴きたいから来ているのね。そこが、自分たちがいままでショウをやってきてブレない部分だと思う。私たちの音楽が好きで、そして私たちの音楽だけじゃなくて、音楽そのものが本当に好きでハマッている人たちに聴いてほしいと思っているし、実際に聴いてもらえていると思う。

CR:忍耐強い人、かな(笑)。会場でもずっと音楽を聴いてくれているような。

MJ:私たちもそうありたい、と思えるような人たちね(笑)。

僕らの音楽のなかのダークでどんよりした部分がシューゲイズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような音楽と比べられるっていうのは、すごく納得がいくよ。

私は音楽を聴くときに、ヴォーカルが入っている曲でも、最初は歌詞の内容は気にせずに音として聴いているんですが、ミーガンさんのヴォーカルはひとつのサウンドとしておもしろいと思いました。音としてのヴォーカル、というのは意識されていますか?

MJ:ありがとう。おもしろいサウンドにしようっていうのは自分ではあまり意識していないな。偶然、その曲に合ったものができあがるんだ。たとえば、誰もが「素敵な声だよね」って認める素晴らしいシンガーっていうのがいると思うんだけど、自分は逆に、そうならないようにしている。ヴォーカル・トレーニングとかも受けるんだけど、「誰もが認める良いシンガー」になってしまうと、自分のスタイルが消えてしまうと思う。だからいま歌っているスタイルとか、聴こえ方が変わらないようにしよう、っていうのは意識しているね。でも、「この曲では、こういうサウンドに聴こえるように、こう歌おう」とか、曲作りのときにそういうプランを立てることはないかな。

フランク・オーシャンやソランジュなど、最近のR&Bの動向についてはどうお考えですか?

MJ:(R&Bは)90年代にも一度はやって、00年代にも波が来て、いままたそれが戻っている感じがするね。

CR:R&Bは5年前にも一度来て、それがソランジュやフランク・オーシャンが入ってくるスペースを作ったと思う。それでいまR&Bが再び盛り上がっている。R&Bって音楽のなかでもベストなジャンルのひとつだと思うから、その流行が終わらないで、つねに盛り上がっていてほしいなと思う。

ミーガンさんは昔シンガーソングライターのような音楽をやっていて、コリンさんはパンク・バンドをやっていたということで、おふたりはロックも聴いてきていると思うんですが、

CR:あまりロックは聴かないんだ。クラシックなロックンロールは聴いてない。ハードコアやポストパンク、あるいは「叫び」のロックとか(笑)、そういうのを聴いてきたんだ。

なるほど。個人的にはここ最近、R&Bとは対照的にロックは厳しい状況に置かれていると感じているのですが、ロックについてはどうお考えですか?

MJ:インディ・ロックが、いわゆる超「ロックンロール」みたいなものを乗っ取っているような現象があると思う。だから、そこまでインディ・ロックが下火っていうのは感じてない。いわゆる超「ロックンロール」じゃなくてインディ・ロックがはやっている傾向はあるね。そういう音楽も好きだけど、インスパイアまではされないかな。

CR:まあ、戻ってくると思うんだよね。なんでもはやったりはやらなくなったりというサイクルがあるから、みんながまたそういう音楽を新鮮に感じるまで時間がかかると思うんだ。だからR&Bのように、ロックンロールもまた帰ってくると思う。

MJ:私はギターの良い音楽がすごく好き!

日本からはなかなか見えづらいんですが、いまカナダの音楽シーンはどういう感じなのでしょう?

MJ:カナダ? 全然知らない!

CR:(僕らはLAに)移ってるからね。

MJ:私たちはあんまりカナダのシーンについて把握してないんだ。でもそれは、自分たちがLAにいるからわからないってことじゃなくて、私が19歳のとき、カナダに住んでいた頃からもう、自分たちのやっている音楽がシーンからはかけ離れたものだったから。(カナダにも)シーンが存在しているのは知っているし、それが良いシーンだっていうのもわかるんだけどね。ここ5、6年でフェスも大きくなってきたし、シーン自体もベターになってきたと思う。カナダの音楽シーンやカナダのミュージシャンたちにすごく自信がついてきていると思う。「カナダ」っていうカテゴリやジャンルができてきた。いまは政府もアーティストにお金を出していて、アーティストが音楽を作りやすい環境があるし。ドレイクや(ジャスティン・)ビーバーがすごく大きな役割を果たしているんじゃないかな。

あなたたちが最初に注目されたきっかけは、インターネットに発表した音源でした。インターネットの文化についてはどう思っていますか? 良い面でも、悪い面でも。

CR:深い質問だね。良くも悪くもインターネットっていうのは、音楽のプラットフォームになっているわけだよね。だからいろんな人がそこから音楽を発信できるし、自分たちが発見したことのなかった音楽をそこから見つけ出すこともできる。それは素晴らしい部分だと思う。でもマイナスの部分は、誰もがそれをできてしまうから、埋もれてしまう可能性もある。気づいてもらうのが大変になってきているっていうのが良くない面かな。自分たちが曲を出したときは、SoundCloudもまだそこまで浸透してなくて、新しかった。だから自分たちはラッキーだった面もあると思う。いまはどんどんみんながやるようになってきていて、難しくなっているってのはあると思うね。

MJ:まだMyspaceがあった時代だったから、(私たちは)気づいてもらうことができた。インターネットによって、人がどう音楽を聴くかっていう、聴き方が変わったと思うし、いまだにどんどん変わっていっていると思う。いまはメジャー・レーベルがインターネットを使いはじめているし、SpotifyにしろApple Musicにしろ、メジャーな音楽は大きくなってきている。だから、音楽の人への届き方や音楽の聴き方も進化して、どんどん変わっていっていると思う。それは良いことでもあるけど、小さいアーティストたち、まだビッグじゃないアーティストたちの居場所が少なくなっているっていうのも事実だと思う。それがこれからどうなっていくのかは私も注目している。

Dasychira - ele-king

 言葉は便利だ。とりあえず「OPN/アルカ以降」と言っておけばいい。いやもちろん、OPNとアルカを一緒くたにしてしまうのはいささか乱暴だとは思う。でも、そういう言い方をすることで伝わる何かがあるのもたしかだ。じっさい「OPN/アルカ以降」としか形容しようのないサウンドというものもある。けれど幸か不幸か、まだそういうサウンドを的確に指し示す言葉は発明されていない。ヴェイパーウェイヴだとか、ウィッチハウスだとか、ブロステップだとか、これまでいろいろと言葉は編み出されてきたけれど、こと「OPN/アルカ以降」に関しては、いまだに適切なタグが生み出されていないと言っていいだろう。言葉は便利だけれど、いつも少し遅れている。

 そんな「OPN/アルカ以降」という大雑把なくくりのなかで、アッシュ・クーシャと並ぶくらいのポテンシャルを感じさせてくれるのが、このダシキラだ。フォルティDLの主宰するレーベル〈Blueberry Records〉からリリースされた彼のデビュー作「Immolated」は、まさに「OPN/アルカ以降」の王道を行く作品である。
 蛾の一属の名称を自身のステージネームとして使用するこの風変わりな男は、本名をエイドリアン・マルテンス(Adrian Martens)と言い、南アフリカ出身で、ニューヨーク在住のプロデューサーだ。ちなみに南アフリカといえば昨年はゴムが話題になったけれど、特にその周辺と接点があるわけではない模様。

 「生贄」と題されたこのEPは、全体的に冷たく硬質で、ダークなムードに貫かれている。2曲めの“Caduceus”なんて、イントロからもうktkr感満載である。まさにOPNとアルカが仲良く同居しているかのようなトラックで、ときおり挿入される鋭いサウンドは虫の鳴き声を表現しているようにも聴こえる。4曲め“Sensation”も同じ路線で、インダストリアルな電子音がこれまた虫の鳴き声のように耳に突き刺さる。小さな箱に閉じ込めた虫さんを自らの手でじわじわとなぶり殺しにしている場面の生々しいドキュメントとでも言おうか……『進撃の巨人』の殺戮シーンが好きな人ならきっと気に入るだろう。6曲め“Sanctuary”でも、細かく切り刻まれたサウンドたちがまるで殺されゆく者の悲痛な叫びのように鳴り響いている。

 それらの曲とは打って変わって、ブルックリンのシンガーソングライター Embaci がフィーチャーされた先行公開曲“Vipera”では、その神秘的なヴォーカルが支配の実権を握っており、もの悲しげな鍵盤と相まってひと味異なる雰囲気を醸し出している(が、ここでもやはり細かい音響がなんとなく虫の立てる雑音のように聴こえる)。タイトル曲の“Immolated”もノイズとオリエンタルなメロディが奇妙なコミカルさを演出していておもしろい。

 しかし、ダシキラというステージネームといい、「Immolated」というタイトルといい、このアートワークといい、彼は虫に対して何か特別な想いを抱いているのだろうか? ググってみると、カマキリの生活環がどうとか、死んでいく昆虫の瞬間がどうといった話がヒットするので、おそらく何かしらコンセプトはあるのだろう。カドゥケウスはヘルメスの杖だし……
 ところで虫の第一人者と言えば、個人的には真っ先にミラ・カリックスを思い浮かべるのだけれど、彼は彼女の音楽を聴いたことがあるのだろうか? もしインタヴューする機会に恵まれたら、OPNやアルカについてよりも先に、まず虫について尋ねてみたい。

Mikako Brady × Tsutomu Noda - ele-king

 本日みすず書房より『子どもたちの階級闘争』を発売したばかりの、そして来週末には『いまモリッシーを聴くということ』の発売を控える、イギリスはブライトン在住の保育士にしてライ……って、ele-king読者に説明は不要ですよね。はい、ブレイディみかこが来日します。そして、なななんと、われらが編集長・野田努と対談しちゃいます。テーマは「UKは壊れたようで壊れていない――愛と幻想の雑談」。おお……。愛! と幻想! の雑談! だそうです。これはおもしろい話が聞けそうです。イベントは5月17日、MARUZEN & ジュンク堂書店 渋谷店にて開催。詳細は下記をご確認ください。

『いまモリッシーを聴くということ』『子どもたちの階級闘争』刊行記念

対談 ブレイディみかこ×野田努
「UKは壊れたようで壊れていない――愛と幻想の雑談」

5月17日(水)18:45-20:15 MARUZEN & ジュンク堂書店 渋谷店

待望の二著を上梓したばかりのブレイディみかこさんと、音楽ライターとしても『ele-king』誌の敏腕編集長としても長年多くの音楽ファンの信頼を集めている野田努さんに、おふたりがこれまで関心を持ってきたUKの音楽、文化的潮流など幅広い話題で“雑談”していただく夕べ。
ライターと編集者という関係でもお付き合いの長いおふたり。野田さんからはブレイディさんに、「なぜUKに住みはじめたのか」に始まり、影響を受けたものなど“現在のブレイディみかこ”に至るまでのすべてを語らせるという裏の目論見もあるとか。音楽について、人について、そしてもちろん、おふたりがご著書や雑誌で扱われたテーマについて、ディープなお話がいくつも飛び出しそうなトークに乞うご期待。

■会場  MARUZEN & ジュンク堂書店 渋谷店 7F 喫茶コーナー
■日時  5月17日(水)18:45-20:15(開場18:15)
* 対談終了後にサイン会あり
■入場料  1000円(1ドリンク付き)
* 当日、会場にてお支払いください
■お申し込み  ご予約が必要です。同店 7Fカウンター、もしくはお電話にて受付
* お問い合わせは、MARUZEN & ジュンク堂書店渋谷店(電話 03-5456-2111)へ

【出演者紹介】

●ブレイディみかこ(Mikako Brady)
保育士・ライター・コラムニスト。福岡県福岡市生まれ。1996年から英国・ブライトン在住。著書に、『子どもたちの階級闘争──ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(2017年、みすず書房)、『THIS IS JAPAN──英国保育士が見た日本』(2016年、太田出版)、『ヨーロッパ・コーリング──地べたからのポリティカル・レポート』(2016年、岩波書店)、『ザ・レフト──UK左翼セレブ列伝』(2014年)、『アナキズム・イン・ザ・UK──壊れた英国とパンク保育士奮闘記』(2013年)(以上、Pヴァイン)、『花の命はノー・フューチャー』(2005年、碧天舎。ちくま文庫より2017年改題復刊予定)。雑誌『図書』(岩波書店)に「女たちのテロル」を連載中。

●野田努(のだ・つとむ)
1963年静岡市生まれ。web版『ele-king』編集長。1995年に『ele-king』を創刊。2004年から2009年まで『remix』誌編集長。著書に、『もしもパンクがなかったら──2004-2010 SELECTED ARCHIVES A COLLECTION OF ESSAYS』(2010年、メディア総合研究所)、『ロッカーズ・ノーロッカーズ』(2004年)、『ジャンク・ファンク・パンク』(2003年)、『ブラックマシンミュージック──ディスコ、ハウス、デトロイトテクノ』(2001年)(以上、河出書房新社)。共著書に、『TECHNO defintive 1963-2013』(2012年、Pヴァイン)、『ゼロ年代の音楽──壊れた十年』(2010年)、『NO!!WAR』(2003年)(以上、河出書房新社)、『テクノボン』(1994年、JICC出版局)ほか多数。


『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)はこちら
『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)はこちら


行松陽介 - ele-king

ZONE UNKNOWN List

DJ予定
4/21(金) at COMPUFUNK with Kane Ikin
4/23(日) at 難波Bears “line in da utopia”
4/24(月) at 京都 外 with Kane Ikin
5/12(金) at 京都METRO “KYOTOGRAPHIE x CLUB LUV+ 2017”

soundcloud
https://soundcloud.com/yousukeyukimatsu

Ikonika - ele-king

 いや、まず名前がステキなんですよ、アイコニカ。響きが最高に心地よい。アイコニカ。シンプルだし、日本語とも妙にマッチしているし、何度も呟きたくなる名前です。アイコニカことサラ・アブデル=ハミドは〈ハイパーダブ〉に所属するプロデューサーで、ダブステップ~それ以降のサウンドを果敢に追求し続けているチャレンジャーです。その名前の由来については『Contact, Love, Want, Have』のレヴューを参照していただくとして、彼女が6月2日に新作をリリースします。ゲストにも興味深い名前が並んでいます。楽しみです。因習打破! 因習打破!

I K O N I K A

UKクラブ・カルチャーの真価を体現し続ける
型破りの天才女性プロデューサー、アイコニカ
待望の最新アルバム『Distractions』のリリースを発表!

コード9率いる〈Hyperdub〉の中核メンバーであり、UKクラブ・カルチャーの真価を体現し続ける才媛、アイコニカが4年ぶり3作目となる最新アルバム『Distractions』のリリースを発表! 先行シングル「Manual Decapitation」を公開!

Ikonika - Manual Decapitation
https://soundcloud.com/hyperdub/manual-decapitation?in=ikonika/sets/distractions-2017

2013年の前作『Aerotropolis』発表以降、ドーン・リチャードからチャーチズまで幾多の傑作リミックスを手掛け、世界中をDJツアーで回りながら制作されたという本作は、UKガラージ~ファンキーやハウスから彼女のヒップホップ~R&Bの骨格や構造美に対するフォーカスへとシフトした作品に仕上がっている。サイボトロンがグライムをカマしたかのようなミニマル・エレクトロが炸裂する先行シングル“Manual Decapitation”、アンドレア・ギャラクシーとの〈Night Slugs〉~〈Fade To Mind〉直系R&B“Noblest”やダブステップにヒップ・ハウスのドラムを配合したスロウジャム“Sacrifice”では爆発的な盛り上がりを見せるグライム新世代を担うMCジャムズを迎えるなどこれまで以上にコラボレーションにも意欲的なトラックが顔を揃えている。〈Night Slugs〉の新鋭スウェインJとの官能的なウェイトレスR&Bに同僚ジェシー・ランザのヴォーカルが悶えるエモーショナルな終曲“Hazefield”で幕を降ろすまで、金属のクランク・サウンドと鎮静ファンクのハイテクでミニマルなブレンドが絶妙すぎる2017年にしか生まれえないUKクラブ・カルチャーの真価を体現する傑作!

label: HYPERDUB
artist: IKONIKA ― アイコニカ
title: Distractions ― ディストラクションズ

release date: 2017.06.02 FRI ON SALE

輸入盤CD: HDBCD035 定価: OPEN
輸入盤2LP+DLコード: HDBLP035 定価: OPEN

[ご予約はこちら]
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002160
iTunes Store: https://apple.co/2oQGj1x

[TRACKLISTING]
01. Girlfriend
02. Noblest ft Andrea Galaxy
03. Manual Decapitation
04. Lear
05. BGM
06. 435
07. Do I Watch It Like A Cricket Match?
08. Sacrifice ft Jammz
09. Love Games
10. Lossy
11. Not Actual Gameplay
12. Not
13. Hazefield ft Sweyn J & Jessy Lanza

Smagghe & Cross - ele-king

 スペイン語圏の映画が半世紀ぶりに力量を回復しているのに対し、イタリアとフランスの映画はどうにも低調なままである。80年代に似たような地獄を見たイギリスと日本の映画界でさえ見事に息を吹き返したというのに、特にフランス映画は企画性ばかりが目につき、それこそカンヌでパルムドールに輝いたケン・ローチ『わたしは、ダニエル・ブレイク(I, Daniel Blake)』と同じ年にほとんど同じストーリーで、ステファヌ・ブリゼ『ティエリー・トグルドの憂鬱(La loi du marche)』がつくられているにもかかわらず、大した賞は与えられず(セザール賞ではノミネートのみ)、足元で起きている問題に目が向いていないのかとさえ思ってしまう。ポップ・ミュージックも同じくでフレンチ・タッチからエレクトロクラッシュまであれだけ出てきた才能も外国のレーベルに散り果て、次の世代との橋渡しがうまくできなかった結果、フランスのレーベルからリリースされるのはシカゴやデトロイトのプロデューサーの方が多いのではないかと疑ってしまう。オリジナル崇拝が過ぎるというのかなんというか。

 ここ数年のエレクトロ・リヴァイヴァルに伴い、いつの間にかDAFスタイルが増殖し、ついでのようにエレクトロクラッシュも呼び戻されている。そんななか、ゼロ年代初頭にエレクトロクラッシュを先導していたブラック・ストロボの初期メンバー、イヴァン・スマッグが活発にリリースを回復させている。ブラック・ストロボのどこからどこまでがイヴァン・スマッグだったのか、同じくキル・ザ・DJもどこまでが彼だったのか、その後はエレクトロ・ハウスのミックスCDを数作まとめただけで、どうも掴みどころのない存在であり続けたものの、アンディ・ウェザオールをダウンサイジングしたような彼の存在感はやはり僕の頭のどこかには残っていたらしい。昨年、〈クラック&スピード〉のティム・パリスと組んでリリースしたイッツ・ア・ファイン・ライン名義のデビュー・アルバムは実のところあまり面白くはなかった。しかし、新たにルパート・クロスとタッグを組んだユニットでは「掴みどころのなさ」をそのままテーマとして凝縮させ、全体としてはミュジーク・コンクレートに現代性を持たせ、半分ぐらいはOPNに対するフランスからの優雅なアンサーを聞かせてくれた。ルパート・クロスの素性はよくわからない。スコットランドの映画音楽家、パトリック・ドイルのアシスタントを務めているようで、なるほど映画音楽に通じる情景描写がスマッグ&クロスの『MA』には溢れている。パトリック・ドイルはカトリーヌ・ドヌーヴの『インドネシア』や、最近ではケイト・ブランシェットの『シンデレラ』などを手掛けている作家。 

 まずはジャケット・デザインがいい。オフィーリアをアシッド漬けにしたようなイメージ。ヨーロッパ的なオブセッションから表面的な暗さを取り除いている。かといってアメリカ的でもない。なんというか、絶妙のスタンスを感じさせる。オープニングはガムランを思わせる「カーリロン(Carillon)」。オリエンタル・ムードを引きずりながら続いてドローン調の「マイ・ハート・ザ・ビート・スキップド(My Heart The Beat Skipped)」へ。「ワレン(Warren)」ではポルカのような(?)エレクトロのような(?)二拍子のミニマル・ミュージックがインサートされ、ピアノとフィールド・レコーディングを組み合わせた「オンド・デ・チョック(Onde De Choc)」でも伝統と現代性は激しく衝突している。「オステンダ2(Ostende Pt. 2)」や「スロウダイヴィング(Slowdiving)」ではゴングやスペースクラフトといったフレンチ・プログレの最良の成果をアンビエント・ミュージックとして再生、再評価の機運が高いエリアル・カルマやミッシェル・レドルフィなど発掘音源の動向とも重なって見えるものがある(このアルバムの売りは、アデル・ストライプというオフビート・ジェネレイションの小説家による朗読が「コック・オブ・ザ・ノース(Cock Of The North)」でフィーチャーされていることだとあちこちの紹介やらレビューなどには書いてあるんだけれど……誰だ、それは?)。先に「掴みどころがない」と書いたけれど、後半はチル・アウトの道程がそれなりに組まれてはいる。エンディングもシルヴェスター「サムバディ・トゥ・ラヴ・トゥナイト(Somebody To Love Tonight)」のアンビエント・カヴァー。

 ここ数年、〈クレクレブーン〉や〈アンチノート〉などフランスから伝わってきたアンダーグラウンド・サウンドは本当に少ない。ジェフ・ミルズによるとフェスなどのイヴェント・レヴェルではテクノはいまフランスが一番面白いともいう。〈ブラザーズ・フロム・ディッフェレント・マザー〉や〈フラジャイル・ムジーク〉といったレーベルの次があるなら、誰か早く伝えて欲しい。

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