「S」と一致するもの

Free Soul × P-VINE - ele-king

 好評だった「Free Soul」とPヴァインのコラボTシャツ、あらためて受注販売されることが決まりました。人類学者の原知章が橋本徹にインタヴューした書籍『渋谷カルチャー考現学』が代官山蔦屋書店で先行発売されることを記念しての企画です。受注期間は5月27日(水)朝10時から6月23日の23時59分までとのことですが、注文が既定の数量に達した場合は受付を終了するとのことなのでお早めに。

代官山 蔦屋書店にて展開される、『渋谷カルチャー考現学 ――稀代の編集家・橋本徹(SUBURBIA)ライフ・ヒストリー』の先行販売を記念した〈『渋谷カルチャー考現学』フェア〉(6月1日〜11日)の開催にあわせ、ご好評につき、Free Soul Tシャツの受注販売を再開いたします!

Free Soul × P-VINE presents
50th Anniversary "Free Soul" T-Shirts
In 50 color variations
PRE-ORDER START !

90年代以降、世界中の音楽ファンを魅了してきたコンピレーション・シリーズ “Free Soul” と、Pヴァイン創立 50周年を記念したコラボレーション企画として、新作 T シャツの受注販売を開始します。

Pヴァイン内でレコードカルチャーを応援し続けてきた VINYL GOES AROUND が手がけた 2023〜2024年の本企画は、異例のヒットを記録。20代の若い世代から、90 年代に青春を過ごした世代まで、幅広い層から高い評価を受けました。

当時は30ヴァリエーションでの展開でしたが、今回は50周年のアニヴァーサリーにちなんだ 全50ヴァリエーションをラインナップ。

“Free Soul”の世界観と、Pヴァインが歩んできた50年の歴史を重ね合わせた、特別なコレクションとなっています。また、昨年末逝去された小野英作さん(Free Soul のロゴを手がけたデザイナー)への哀悼の意を込め、襟元に特別なイラストをプリントしました。

本商品は完全受注生産。ボディの在庫にも限りがございますため、数量に達し次第、受付を終了する場合がございます。 この特別な機会を、どうぞお見逃しなく。

ANVRGD-5002
Free Soul × P-VINE Official T-Shirts

サイズ: S / M / L / XL / XXL
販売価格: 3,200yen (With Tax 3,520yen)

受注期間:2026年5月27日(水)10:00〜6月23日(火)23:59
発送時期:7月下旬頃

https://anywherestore.p-vine.jp/collections/50th-anniversary-freesoul-tshirts

◾️橋本徹さんからのコメント

P-VINEの50周年記念で、三たび企画をいただいたVINYL GOES AROUND制作によるFree SoulロゴTシャツ。今回のオファーと前後して、Free Soulコンピのジャケット・デザインを手がけてくれた、僕の友人で恩人でもあるアート・ディレクター、小野英作が2025年12月21日に亡くなってしまいましたので、ご遺族の承諾を得て急遽、彼のSNSアイコンをタグ下にあしらい、R.I.P.メッセージをプリントさせていただきました。

P-VINE 50周年を祝して50種、Free Soul32周年にちなんで各3,200円。Free SoulもCafe Apres-midiもSuburbiaも今の自分があるのも、小野英作のおかげです。感謝と追悼の思いをこめて。

橋本徹(Suburbia)

#pvine #50thAnniversary #FreeSoul #ToruHashimoto

GEZAN - ele-king

 武道館の熱気には驚かされた。本人の弁によれば、「三回に一回は解散しそうになってた」というほどバンド内の人間関係に影響が出ていた全国47都道府県ツアー、それを乗り越えたからこそ生み出せたにちがいない、強力なアンサンブルにグルーヴ。映像や炎を駆使した演出にも目を奪われたけれど、不意をつかれたのはやはりアンコールだった。交流のあるアーティストたちが代わるがわるステージに上がり、ワン・コーラスずつかましていく局面、向井秀徳から鎮座DOPENESSまで入り乱れるその様は、少なからぬ人びとが自分の趣味、島宇宙に閉じこもりがちな現代にあって、GEZANの存在が文化的な結節点になっていることの象徴のようでもあった。価値観が異なっていても、目指す方向がばらばらでも、ぼくらはいつか出会いなおす(し、きっといっしょにやっていける)──そうしたコモンな感覚は最新作『I KNOW HOW NOW』の冒頭、穏やかなアコギに導かれ、メンバー全員が「ぼくは北を前だと思った」「オレは東を前だと思った」とマイクをまわしていく “beat” によくあらわれている。
 通算7枚目となる最新作はGEZANのひとつの到達点だ。5枚目『狂(KLUE)』(2020年)でダブを導入し一気にサウンドの幅を広げ、6枚目『あのち』(2023年)では高らかにバグパイプを鳴り響かせてみせた彼ら。昨秋の炎上はことさらフロントマンの政治性が強調される結果となってしまったかもしれないが、しかし『I KNOW HOW NOW』はなによりもまずGEZANというバンドが繰り広げる音楽的冒険の、さらなる深化を示している。
 驚くべきは、その静かさだろう。サイレンスという意味ではない。たとえば “HAPPY HIPPIE” や “BEST DAY EVER”、“予感” で存在感を放つバグパイプは、もはやこの民族楽器がGEZANのシグネチャーとなっていることを証明している。もちろん彼らがもつハードコアやハード・ロックの側面が失われたわけではない。重厚なギターもあればデス・グロウルもある。ただ、これまでのアルバムがみせてきた激しい表情と比べてみたとき、新作はだいぶ落ち着いた印象を受けるのだ。マヒト当人は「台風の中心は静か」と表現していたけども、それを成熟と呼んでしまうのは性急だろうか? “Amrita” では「イーグルに子どもが生まれた」と歌われる。すぐさまそれは「どうやって説明すればいい?/あの飛行機はね/ひとを殺しにいくところ」と冷酷な現実へと接続されるわけだが、こうした親の観点は従来のGEZANにはなかったものではなかろうか。
 異色なのは先行シングル “数字” だ。これまた以前のGEZANのイメージを裏切る軽快なビートに貫かれた同曲は、グランジふうギターを挟んだりしながら終盤一気に加速、カオスを出現させる。最終曲 “予感” では(前作収録曲 “TOKYO DUB STORY” 同様)切り刻まれたような声の使い方がされていて、これはおそらくエレクトロニック・ミュージック由来の着想だろう。あるいはポスト・ロック/マス・ロックを想起させる “HOWL” のギター&ドラムス、青葉市子を招いた “BEST DAY EVER” で効果的に用いられる5iveのシンセ。これら数々の創意工夫に耳を傾けていると、クラブ・ミュージックから実験音楽までさまざまな「現場」で彼らがインプットしてきたもの、その絶妙なハイブリッドがこの『I KNOW HOW NOW』なのではないかという気がしてくる。「べつに吸収しようとかはぜんぜんなくて」とマヒト本人であれば否定するだろう。しかし彼ほどアンダーグラウンドのギグやパーティに足を運んでいるアーティストはほかに思い浮かばない。そうした好奇心、雑食的態度こそ、GEZANを文化的ハブたらしめているのではないだろうか。なにせ彼らはウガンダのニェゲ・ニェゲともつながったのだ。マヒトゥ・ザ・ピーポーという人間の懐の深さ、器の大きさをかんがみるに、GEZANは今後も止まることなくさらに進化していくにちがいない。
 この「アンダーグラウンド」は「アウトサイダー」といいかえることもできる。全感覚祭のDIY精神、あるいは映画『i ai』にもあらわれていたように、「まっとうな」道だけが正解じゃないんだぜと、GEZANの今回の新作もまた教えてくれているのだ。レールから外れる生き方がかつてなく困難になった時代にあって、それを勇気と呼ばずにいることは非常に難しい。

P-VINE 50TH ANNIVERSARY - ele-king

 〈Pヴァイン〉設立50周年記念アイテムとして、前回のジャンパーにつづき、新たに3種類のグッズが発売されることになった。スリップマット2種、トートバッグ2種、Tシャツ4種、いずれも受注生産限定。ラインナップは下記よりご確認いただけます。

P-VINE 50TH ANNIVERSARY
P-VINE ORIGINAL GOODS

スタッフジャンパーに続き、P-VINEの50周年を記念した待望のオリジナルグッズが登場。

P-VINEのクラシックなロゴを落とし込んだ、スリップマット、トートバッグ、Tシャツの全3アイテムを展開します。

日常使いから現場まで活躍する、実用性とデザイン性を兼ね備えたラインナップに仕上げました。

いずれも受注生産限定でのご用意となります。
この機会をぜひお見逃しなく。

★P-VINE ORIGINAL GOODSご予約ページ
https://anywherestore.p-vine.jp/collections/p-vine-original-goods

【 ITEM LINE UP 】

■ P-VINE ORIGINAL SLIPMAT
・カラー(2色展開):
 ホワイト×ブラック
 ホワイト×レッド
・販売価格:\¥1,500(税抜)

■ P-VINE ORIGINAL TOTE BAG
・カラー(2色展開):
 生成り×ブラック
 生成り×レッド
・販売価格:\ ¥4,000(税抜)

■ P-VINE LOGO T-SHIRT
・サイズ: S / M / L / XL / XXL
・カラー(4色展開)
 ブラック × グレー
 グレー × ブラック
 ナチュラル × ネイビー
 ナチュラル × バーガンディ
・販売価格:\ ¥ 3,500(税抜)

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受注受付:5月22日(金)18:00 ~ 6月7日(日)23:59
商品の発送は7月中旬頃を予定しております。

※ご注文後のキャンセル・変更は承っておりません。
※配送日時のご指定は承っておりません。

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MODE 2026 - ele-king

 独自のキュレーションで実験音楽やエレクトロニック・ミュージックの体験の場を創造しつづけてきた「MODE」。6月6日にはモインとgoatによるリキッドルームでの公演が決定しているが、さらに6月29日と30日にも草月ホールでプログラムが実施されることになった。
 29日は灰野敬二&ダニエル・ブランバーグ(元ケイジャン・ダンス・パーティ)、オルガン奏者のエレン・アークブロと雅楽グループ=伶楽舎の共演という2本のライヴ、30日は実験音楽の大ヴェテラン、シャルルマーニュ・パレスタインと、そしてジム・オルーク&石橋英子の2組というラインナップで、今回のMODEも新たな発見がえられそう。詳しくは下記をご確認あれ。

MODE 2026
June 29th & 30th

[Performance]
Venue: Sogetsu Hall

June 29th
Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble

June 30th
Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi

実験的な芸術を通じた「交換・交流」の場を提示するアートプラットフォーム「MODE」が、6月29日(月)、30日(火)に東京・赤坂の草月ホールにて、2つのパフォーマンスプログラムを開催。

29日(月)には、2つの新作が世界初演。2026年ヴェネツィア国際現代音楽祭にて生涯功労金獅子賞の受賞が決定した前衛音楽家・灰野敬二と、A24配給の映画『The Brutalist』の劇伴でアカデミー賞を受賞したDaniel Blumbergによるコラボレーション作品。さらに、オルガンを用いたドローン作品で国際的に高く評価される作曲家Ellen Arkbroが、リードオルガンと篳篥のための新作を発表する。演奏には雅楽グループ「伶楽舎」の奏者が参加。

30日(火)には、約14年ぶりの来日公演として、ぬいぐるみやベル、持続音をシグネチャーとする音楽家/現代美術作家であり、ニューヨーク・アンダーグラウンドを起点に半世紀以上にわたり活動し、ドクメンタ8への参加でも知られるCharlemagne Palestineによるパフォーマンスを開催。客演には、日本を拠点に作曲、演奏、プロデュースを自在に行き来し、Gastr Del SolやSonic Youthでの活動でも世界的に知られるJim O’Rourkeと作曲、演奏、歌唱に加え映画音楽でも国際的に高く評価される石橋英子のデュオを迎える。

実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム「MODE」は、6月29日(月)、30日(火)の二日間にわたり、東京・赤坂に位置する草月ホールにて2つのパフォーマンスプログラムを開催します。

■6月29日開催のプログラムについて

6月29日(月)に開催されるプログラムでは、二つの世界初演が披露されます。

日本を代表する前衛音楽家であり、2026年の「第70回ヴェネツィア国際現代音楽祭」にて最高栄誉である「生涯功労金獅子賞」を受賞する灰野敬二(Keiji Haino)と、元YUCK(ヤック)のフロントマン、元Cajun Dance Party(ケイジャン・ダンス・パーティ)のリードボーカルであり、『The Brutalist』の劇伴でアカデミー賞を受賞したDaniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)によるコラボレーションが「MODE」の委嘱により世界初披露されます。

さらに、パイプオルガンやリードオルガンの持続音を用いたドローン作品で国際的に高く評価される作曲家Ellen Arkbro(エレン・アークブロ)が、リードオルガンと、雅楽において中心的な役割を担うダブルリード楽器である篳篥(ひちりき)のための最新作を世界初演として発表します。Arkbroがリードオルガンを担当し、雅楽演奏グループ伶楽舎(Reigakusha Gagaku Ensemble)に所属する中村仁美(Hitomi Nakamura)、國本淑恵(Yoshie Kunimoto)、鈴木絵理(Eri Suzuki)、田渕勝彦(Katsuhiko Tabuchi)が篳篥を演奏します。

■Keiji Haino & Daniel Blumbergについて

灰野敬二は50年以上にわたり、ノイズ、フリージャズ、ブルース、ロック、電子音響、フォーク、ドローンといった多様な領域を横断しながら活動を続けてきた日本の前衛音楽家です。Antonin Artaud(アントナン・アルトー)に触発され演劇を志すも、The Doors(ザ・ドアーズ)に遭遇したことを契機に音楽へと転向。初期ブルースから中世音楽、歌謡曲に至るまで幅広い音楽を吸収し、1970年代より活動を開始しました。 1978年にはロックバンド「不失者」を結成。ソロ活動と並行しながら、灰野を中心にしたプロジェクト「滲有無」、90年代後半に結成したカヴァー・バンド「哀秘謡」など複数のプロジェクトや名義を通じて様々な表現を展開してきました。
1980年代の活動休止を経て復帰以降も、即興演奏を軸に音を身体的な体験へと変容させる実践を深化させてきました。ギターやパーカッションにとどまらず、ハーディ・ガーディや各地の民間楽器、電子機器などを用い、それぞれの特性を極限まで引き出す独自の演奏で知られています。 その革新性は国際的にも高く評価され、2026年にはヴェネツィアで開催される第70回国際現代音楽祭にて、生涯功労金獅子賞を受賞することが決定しています。近年も精力的に作品発表を続け、国内外のアーティストとのコラボレーションを重ねています。

一方、ロンドンを拠点とする音楽家・作曲家Daniel Blumbergは、Cajun Dance PartyやYuckでの活動を経てソロへと移行し、即興音楽や映像、ドローイングなど様々な実践を展開してきました。映画音楽の分野でも評価を高め、2025年には『The Brutalist』のスコアでアカデミー賞およびBAFTAを受賞。日本では2026年初夏に上映予定のゴールデングローブ賞受賞作品『アン・リー/はじまりの物語』でも劇伴を手がけています。

Blumberg にとって灰野は重要な存在のひとりであり、ロンドンのライブベニュー Cafe OTO で初めて目撃した灰野の演奏は、彼に強い印象を残したという。翌日再び会場を訪れると、その演奏は前日とはまったく異なるものだった。この体験を通じてBlumbergは音楽を固定されたものではなく、常に変化し続けるものとして捉えるようになる。「同じライブを繰り返さない」という現在の姿勢にも表れている。

こうした背景のもと、「MODE」の委嘱により、両者のコラボレーションが実現。
本プログラムにて世界初披露されます。

■Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensembleについて

Ellen Arkbroはストックホルム出身、現在はベルリンを拠点とする作曲家/ミュージシャン/サウンド・アーティストです。パイプオルガンやリードオルガンの持続音を基盤に、純正律や倍音、共鳴を探求する作品で知られ、アコースティック楽器、電子音、あるいはその両者を組み合わせた作品やインスタレーションを制作しています。La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)に師事し、スウェーデンのエレクトリック・ハープシコード奏者Catherine Christer Hennix(キャサリン・クリスター・ヘニックス)率いるKamigaku Ensembleでも活動するなど、幅広い実践を展開してきました。

伶楽舎は、雅楽の合奏研究を目的に、雅楽の伝承・普及に第一線で尽くし続けた芝祐靖(Sukeyasu Shiba)が1985年に創立し、発足した雅楽演奏グループです。現行の雅楽古典曲の演奏にとどまらず、現代作品の上演にも積極的に取り組み、これまでに湯浅譲二(Joji Yuasa)、一柳慧(Toshi Ichiyanagi)、池辺晋一郎(Shinichiro Ikebe)、猿谷紀郎(Toshio Saruya)、伊左治直(Sunao Isaji)、桑原ゆう(Yu Kuwabara)など多くの作曲家に新作を委嘱してきました。日本を代表する現代音楽家、武満徹作曲の雅楽作品『秋庭歌一具』の演奏でも複数の賞を受賞しています。

<作品紹介>
本プログラムでArkbroは、リードオルガンと篳篥(ひちりき)のための新たな作品を伶楽舎の篳篥奏者たちとともに発表します。篳篥は、日本の伝統的なダブルリード楽器であり、雅楽において中心的な役割を担う音色を持つ楽器です。 本作は、これらの楽器に固有の音色、豊かな倍音構造と共鳴が生み出す音の響きに着目し、7リミットの純正律に基づく精緻に調整された音程や和音を通じて、リードオルガンと篳篥の音の融合を探ります。

その過程で、音の繊細で生々しいテクスチャー、そしてハーモニーを質感を伴う音の重なりとして立ち上がらせ、聴き手の意識をひらいていきます。 演奏者たちは各和音のチューニングに深く関与し、響きの明晰さを追求しながら、ひとつの音として鳴り、ひとつの響きとして聴き合うことを目指します。

Arkbroがリードオルガンを担当。篳篥は伶楽舎所属の中村仁美、國本淑恵、鈴木絵理、田渕勝彦が演奏します。こちらも世界初演として披露されます。

■6月30日開催のプログラムについて

6月30日(火)に開催するプログラムでは、約14年ぶりの来日となるCharlemagne Palestine(シャルルマーニュ・パレスタイン)が出演します。Charlemagne Palestineは、反復、持続、倍音、空間の響きを用いた独自の実践を築いてきた音楽家であり、ニューヨーク・アンダーグラウンドを起点に半世紀以上にわたり活動を続けてきました。La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)、Terry Riley(テリー・ライリー)、Steve Reich(スティーブ・ライヒ)らと並び語られてきた巨匠の一人です。ぬいぐるみを用いたマルチメディア彫刻や空間作品を手がける現代美術作家としても活動し、ドクメンタ8への参加をはじめ、現在も世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表し続けています。

客演には、Jim O’Rourke(ジム・オルーク)と 石橋英子(Eiko Ishibashi)のデュオが出演します。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えてきた重要人物であり、実験音楽、映画音楽、プロデュースワークを横断しながら独自の活動を続けてきました。Gastr del Sol(ガスター・デル・ソル)での活動や、Sonic Youth(ソニック・ユース)の元メンバーとしても知られるほか、小杉武久(Takehisa Kosugi)とともにMerce Cunningham(マース・カニンガム)舞踏団の音楽を手がけ、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Arnold Dreyblatt(アーノルド・ドレイブラット)、Christian Wolff(クリスチャン・ウォルフ)らとなどの仕事を通じて、現代音楽とポストロックのあいだを横断してきた存在でもあります。石橋英子は、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『悪は存在しない』(2023年)などの映画音楽も手がけ、2025年には最新アルバム『Antigone』を発表しています。両者はデュオとして、2025年に5作目となるアルバム『Pareidolia』をリリースしています。

■Charlemagne Palestineについて

1947年ブルックリン生まれのCharlemagne Palestineは、ニューヨーク大学、コロンビア大学、マネス音楽大学、カリフォルニア芸術大学で学び、カントール(聖歌の歌い手)やカリヨン奏者としての訓練を経て、1960年代よりニューヨークの前衛芸術シーンで活動を開始しました。電子音源、鐘楼、パイプオルガン、ピアノ、声などを用いた儀式的な持続音楽を探究し、97鍵のピアノを用いた「Strumming」や、パイプオルガンのための「Schlingen Blängens」といった演奏技法を含む独自の実践を築いてきた作家です。2時間に及ぶ声の作品『Karenina』や、身体の動きや映像を伴うパフォーマンスなども展開してきました。

1980年代初頭から1990年代半ばにかけてはパフォーマンス活動を休止し、ぬいぐるみを祭壇のように配したマルチメディア彫刻やインスタレーションの制作に専念しましたが、その後ステージに復帰し、Pansonic(パンソニック)、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Rhys Chatham(リース・チャタム)らとの共演を重ねました。パフォーマンス活動の傍ら、現在も現代美術作家としても、世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表してきました。

現在はブリュッセルを拠点に活動しており、近年も継続的に新作発表と公演を行っています。2024年には、アムステルダムのOude Kerkで開催されたSonic Acts Biennialにてオルガン公演を行い、その記録作品『The Organ is the Worlds Greatest Synthesizer』が2026年1月にリリースされました。

2012年には、東京・SuperDeluxeで行われた灰野敬二、Jim O’Rourke、Oren Ambarchi(オーレン・アンバーチ)の公演に、石橋英子とともにゲスト参加し、ワイングラスによる演奏で共演しています。今回の来日公演は、約14年ぶりとなります。

■Jim O’Rourke & Eiko Ishibashiについて

Jim O’Rourkeと石橋英子は、日本を拠点に国際的な活動を展開するアーティストです。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えた中心人物のひとりであり、数多くの映画音楽や実験作品を手がけるほか、Gastr del SolやSonic Youthでの活動でも広く知られています。石橋英子は、マルチ奏者、シンガーソングライター、作曲家として活動し、2021年の『ドライブ・マイ・カー』、2023年の『悪は存在しない』の音楽を担当。2025年には、7年ぶりとなる歌のアルバム『Antigone』をリリースしました。

二人は、即興演奏を基盤に独自の音響世界を築くデュオとして、2010年代から活動を続けています。2023年にはフランス、スイス、イタリア、アイルランドを巡るヨーロッパ・ツアーを行い、その録音を再構成したアルバム『Pareidolia』を2025年にDrag Cityからリリースしました。この作品は二人にとって5作目のコラボレーション作品であり、ライブ音源を編集しながら新たな対話として組み立てていく、彼らの方法がよく表れた作品です。

Jim O’Rourkeは、かねてよりCharlemagne Palestineの音楽に深い敬意を示しており、2015年作『Ssingggg Sschlllingg Sshpppingg』を「その年のお気に入りであり、彼の最高作かもしれない」と評しています。

【プログラム概要】

Performance - Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble
開催日時:2026年6月29日(月)Doors 18:15 / Start 19:00
会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 / MAP
チケット料金 :自由席 ¥8,000(税込)
プレイガイド:イープラス / ZAIKO
出演者:Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble
協力:ゲーテ・インスティトゥート 東京

Performance - Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi
開催日時:2026年6月30日(火)Doors 18:15 / Start 19:00
会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 / MAP
チケット料金 :自由席 ¥8,000(税込)
プレイガイド:イープラス / ZAIKO
出演者:Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi

公演の詳細はMODE公式インスタグラムをご確認ください。
https://www.instagram.com/mode.exchange/

【Artists Biography】

灰野敬二(Keiji Haino)

1952年5月3日、千葉県生まれ。Antonin Artaud(アントナン・アルトー)に触発され演劇を志すが、The Doorsに遭遇し音楽へ転向。Blind Lemon Jefferson(ブラインド・レモン・ジェファーソン)をはじめとする初期ブルースのほか、ヨーロッパ中世音楽から内外の歌謡曲まで幅広い音楽を検証し吸収する。1970年、Edgar Allan Poe(エドガー・アラン・ポー)の詩から名を取ったグループ「ロスト・アラーフ」にヴォーカリストとして加入。また、ソロで自宅録音による音源制作を開始し、ギター、パーカッションを独習する。1978年にロックバンド「不失者」を結成。1983年から87年にかけて療養のため活動休止。1988年に復帰して以来、ソロのほか、不失者、滲有無、哀秘謡、Vajra、サンヘドリン、静寂、なぞらない、The Hardy Rocksなどのグループ、experimental mixture名義でのDJ、他ジャンルとのコラボレーションなど、多様な形態で国際的に活動を展開している。ギター、パーカッション、ハーディ・ガーディ、管楽器、弦楽器、各地の民間楽器、DJ機器などの性能を独自の演奏技術で極限まで引き出し、パフォーマンスを行なう。200点を超える音源を発表し、確認されているだけでも2,000回以上のライブ・パフォーマンスを行なっている。

Instagram https://www.instagram.com/keijihaino_official/
Bandcamp https://keijihaino.bandcamp.com/album/my-lord-music


Daniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)


Photography by Taylor Russell

Daniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)は、現代音楽における唯一無二の表現者であり、ミュージシャン、ソングライター、そしてアーティストとして、即興、ミニマリズム、実験的ソングの境界を横断する独自の表現を展開している。前衛的なパフォーマンス、フィールドレコーディング、視覚芸術にまたがる背景を持ち、近年の最も独創的かつ感情的に鋭い作曲家の一人として評価されている。

Seymour Wright(シーモア・ライト)、Billy Steiger(ビリー・スタイガー)、Tom Wheatley(トム・ウィートリー)、Elvin Brandhi(エルヴィン・ブランディ)、Joel Grip(ジョエル・グリップ)といった前衛音楽家たちとの長年のコラボレーションでも知られ、作曲と即興の境界が溶け合う、流動的でコラボレーティブな環境を作り出してきた。Muteから4枚のソロアルバムをリリースし、ICAやCafe OTOなどの場所で演奏を行なっている。また、ドローイングにも取り組み、繊細なシルバーポイント(銀筆画)による作品は国際的に展示されている。

2025年には、Brady Corbet(ブレイディ・コーベット)監督の映画、The Brutalistの壮大なスコアにより、アカデミー賞およびBAFTAを受賞。生々しい感情の深度と急進的なサウンドの発明性を融合させる作曲家としての評価を決定づけた。最近では、Mona Fastvold(モナ・ファストヴォルド)監督の映画『The Testament of Ann Lee』(2025年)において、歌とスコアを担当。歌声、鐘の音、チェレスタといった「別世界のパレット」を使い、伝統的なシェーカー教徒のスピリチュアル(霊歌)を眩いばかりの新しい形へと変容させた。一方で、Gianfranco Rosi(ジャンフランコ・ロージ)の映画『Below The Clouds』では、John Butcher(ジョン・ブッチャー)やSeymour Wrightといった重要なサクソフォニストを起用し、ポンペイ近郊バイアの火山地帯の海中で録音された没入的なサウンドスケープを構築している。

強度、脆さ、そして芸術的自律性に根ざした実践を通して、Blumbergは現代の映画音楽、そして「歌」という形式そのものの可能性を再定義し続けている。

Instagram https://www.instagram.com/_danielblumberg_/
Bandcamp https://danielblumberg.bandcamp.com/


Ellen Arkbro(エレン・アークブロ)


Photography by Gaia Tamburini

Ellen Arkbro(エレン・アークブロ、1990年ストックホルム生まれ)は、精密なチューニングによるハーモニーの探究を軸に活動する作曲家、ミュージシャン、サウンド・アーティストである。アコースティック楽器のための作品、電子音による作品、そして両者を組み合わせた作品を制作している。簡潔な音楽言語と緻密に設計された構成は、歓びと哀しみが同時に立ち上がるような複雑な感情を呼び起こし、どこか距離を感じさせる静謐な美しさを湛えながら、聴き手を多様な感情のスペクトラムへと導く。

その作品は大きなスケールと高い精度を備えているが、単なる手法の実験にとどまることはない。Arkbroの制作は多様な音楽的背景に支えられており、La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)、Marian Zazeela(マリアン・ザジーラ)、Chong Huey Choe(チョン・ヒー・チェ)、Marc Sabat(マルク・サバト)のもとでの学びに加え、ジャズやブルースの音階、ポップにおけるモーダルな感覚、エレクトロアコースティック音楽や音響合成、さらにCatherine Christer Hennix(キャサリン・クリスター・ヘニックス)のKamagaku Ensemble(カミガク・アンサンブル)での活動など、幅広い経験がその基盤となっている。

Arkbroは自身の制作を通して、ハーモニーが生み出す音の質感や響きそのものに耳を向けている。聴くという行為を受動的なものではなく、創造的な参加を伴う能動的なプロセスとして提示し、聴き手を徐々に音の中へと引き込み、その響きと一体化していくような体験へと導く。近作のソロ作品『Nightclouds』(Blank Forms Editions / La Becque Editions)は、内省性と広がりをあわせ持つ作品として、彼女の現在の創作を象徴する重要な一作となっている。

Instagram https://www.instagram.com/ellenarkbro/
Bandcamp https://ellenarkbro.bandcamp.com/album/nightclouds


伶楽舎(Reigakusha Gagaku Ensemble)

伶楽舎(れいがくしゃ)は1985年に発足した雅楽演奏グループ。創立者・芝祐靖。現音楽監督・宮田まゆみ。発足以来、現行の雅楽古典曲だけでなく、廃絶曲の復曲や正倉院楽器の復元演奏、現代作品の演奏にも積極的に取り組み、これまでに湯浅譲二、一柳慧、池辺晋一郎、猿谷紀郎、伊左治直など様々な作曲家に新作を委嘱。武満徹『秋庭歌一具』の演奏で2002年中島健蔵音楽賞特別賞受賞。第16回(2016年度)佐治敬三賞、2020年第50回ENEOS音楽賞邦楽部門受賞。他に解説や体験を交えた親しみやすいコンサート、学校での公演なども多く行い、雅楽への理解と普及に努めている。

※プログラムには同グループに所属する中村仁美、國本淑恵、鈴木絵理、田渕勝彦が出演します。

Instagram https://www.instagram.com/reigakusha/
Bandcamp https://blacksweat.bandcamp.com/album/gagaku-suites


Charlemagne Palestine(シャルルマーニュ・パレスタイン)


Photography by Agnes Gania

1947年、ニューヨーク・ブルックリン生まれ。サウンド・アーティスト、作曲家、パフォーマー、ビデオ・アーティスト、インスタレーション作家として活動する。ニューヨーク大学、コロンビア大学、マネス音楽大学、カリフォルニア芸術大学で学ぶ。

Philip Glass(フィリップ・グラス)、Terry Riley(テリー・ライリー)、Phill Niblock(フィル・ニブロック)、Tony Conrad(トニー・コンラッド)らと同時代の作家であり、1960年代以降、電子音源、鐘のカリヨン、パイプオルガン、ピアノ、声、その他の鍵盤楽器を用いながら、儀式的で強烈な持続音楽を制作してきた。もともとカントール(聖歌の歌い手)として訓練を受け、その後はカリヨン奏者としても活動した経歴を持つ。現在に至るまで、自作の発表においては一貫して自らソリストとして演奏している。

初期の重要な作品として、電子音による持続音響作品が挙げられる。Moog、Buchla、Serge、ARP、Oberheimなどが開発した多数の発振器やフィルターを用い、独自の音響を早くから探究してきた。これらの作品は数時間、時には数日間に及び、音色の緩やかな変化やビート音の揺らぎを探究しながら、「黄金の音」を探し求める試みとして展開されている。

アンプリファイド・ピアノのための演奏技法「Strumming」では、和声、不協和音、音塊を強烈な身体的エネルギーとともに展開し、ピアノという楽器の音響的限界を押し広げていく。その結果、演奏の力によってピアノの調律が自然に崩れることもあり、やがて従来のピアノとは異なる、多層的な電気音響的響きを放つ装置のような存在へと変容する。特に好んで使用するのは、通常のピアノより9音低い音域を備えた9フィートのBösendorfer Imperial、そして手と足の両方で演奏する二重の鍵盤機構を持つグランドピアノ、Borgatoである。

パイプオルガンによる持続音響技法「Schlingen Blängens」では、教会や劇場に備えられたオルガンの多様な音色の組み合わせを、錬金術のように融合させながら「黄金の音」を探究する。独自の持続鍵盤技法によって、数百から数千にも及ぶ音色の微細な変化を生み出し、巨大な雲のような音響が、それぞれの教会や劇場の建築空間と共鳴しながら展開していく。

ボーカリストとしては、2時間に及ぶ大作『Karenina』で幽玄なカウンターテナーのファルセットを響かせる。また、サウンド/モーション映像作品などでは、空間を移動しながら母音や倍音をゆっくりと変化させる長い声を発し、壁に体当たりする、迷宮のような空間を走り回る、オートバイやジェットコースターに乗りながら歌うなど、シャーマニックで反復的な身体的パフォーマンスを展開する。

1980年代初頭から1990年代半ばまでパフォーマンス活動を休止し、その期間はぬいぐるみを用いた神聖な祭壇のようなマルチメディア彫刻やインスタレーションの制作に専念した。これらの作品は、現在でも彼のパフォーマンスに欠かせない重要な要素となっている。

パフォーマンス活動への復帰以降、1960〜70年代の作品をCDやレコードで再発するとともに、多くの新作を制作・録音してきた。また、Pansonic(パンソニック)、Simone Forti(シモーネ・フォルティ)、Rhys Chatham(リース・チャタム)、Perlonex(ペルロネックス)、Gol(ゴル)などの音楽家とも共演・録音を行っている。現在も世界各地の会場やフェスティバルで定期的に演奏活動を行いながら、マルチメディア・インスタレーションを発表している。

現在はベルギー・ブリュッセルを拠点に活動する。

Instagram https://www.instagram.com/charlemagnepalestine/
Bandcamp https://charlemagnepalestine1.bandcamp.com/music


Jim O'Rourke & Eiko Ishibashi(ジム・オルーク & 石橋英子)

Jim O'Rourke(ジム・オルーク)
1969年シカゴ生まれ。Gastr Del Sol、Loose Furなどのプロジェクトに参加。一方で、小杉武久と共にMerce Cunningham(マース・カニングハム)舞踏団の音楽を担当し、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Arnold Dreyblatt(アーノルド・ドレイブラット)、Christian Wolff(クリスチャン・ウォルフ)などの作曲家との仕事を通して、現代音楽とポストロックの橋渡しを行なう。 1997年、超現代的アメリカーナの系譜から『Bad Timing』を発表。1999年には、フォークやミニマル音楽などをミックスしたソロ・アルバム『Eureka』を発表し、大きく注目される。 1999年から2005年にかけてSonic Youthのメンバー/音楽監督として活動し、広範な支持を得る。2004年にはWilcoの『A Ghost Is Born』のプロデューサーとしてグラミー賞を受賞。 アメリカ音楽シーンを代表するクリエーターとして高く評価され、近年は日本に活動拠点を置く。日本ではくるり、カヒミ・カリィ、石橋英子、前野健太など多数をプロデュース。武満徹作品『コロナ東京リアリゼーション』など、現代音楽に至る多彩な作品をリリースしている。 映像作家とのコラボレーションとして、Werner Herzog(ヴェルナー・ヘルツォーク)、Olivier Assayas(オリヴィエ・アサイヤス)、青山真治、若松孝二などの監督作品のサウンドトラックを担当している。

Eiko Ishibashi(石橋英子)
石橋英子は日本を拠点に活動する音楽家。これまでにDrag City、Black Truffle、Editions Megoなどからアルバムをリリースしている。 2020年1月、シドニーの美術館Art Gallery of New South Walesでの展覧会「Japan Supernatural」の展示のための音楽を制作し、『Hyakki Yagyo』としてBlack Truffleからリリースした。 2021年、濱口竜介監督映画『ドライブ・マイ・カー』の音楽を担当。2022年には『For McCoy』をBlack Truffleからリリースし、同年よりNTSのレジデントに加わる。 2023年、濱口竜介監督と再びタッグを組み、『悪は存在しない』の音楽と、ライブパフォーマンスのためのサイレント映画『GIFT』の音楽を制作。国内外でツアーを行なっている。 2025年3月、Drag Cityより7年ぶりの歌のアルバム『Antigone』をリリース。

Instagram https://www.instagram.com/eikoishibashi/
Bandcamp https://jimorourke.bandcamp.com/album/pareidolia

【About MODE】

MODEは、2018年にロンドンで創設された実験的な芸術を通じた「交換・交流」のための空間を提供するアートプラットフォーム 。坂本龍一がキュレーターを務めた初開催以降、ロンドンと東京を拠点に「音」を軸とした国際的な文化交流の場として展開している。都市の余白や歴史的な音楽芸術ベニューを舞台に、空間の建築的特性や場所がもつストーリーに呼応する多彩なプログラムを実施。アーティストとオーディエンスが音楽や芸術文化、その歴史的背景を分かち合い、インスピレーションを交わすことで、新たな実験的表現が生まれる場を創出している。
過去の主な出演者(抜粋)

2018 LONDON (The Barbican Centre / The Silver Building / Camden Art Centre)
坂本龍一 + Alva Noto / 坂本龍一 + David Toop / Beatrice Dillon / 空間現代 / 細野晴臣 + Acetone / Curl / 毛利悠子 + 鈴木昭男
2019 LONDON (Round Chapel / 55-57 Great Marlborough Street / South London Gallery)
Rashad Becker / Eliane Radigue / Julia Eckhart / Bertrand Gauguet / Yannick Guédon / Wolfgang Voigt / Laurel Halo / Ellen Arkbro / Tomoko Sauvage / John Also Bennett + Amospheré / Loraine James

2023 TOKYO (淀橋教会 / Vacant Space in Aoyama / WWW)
Eli Keszler / Kafka’s Ibiki (Jim O'Rourke, 山本達久, 石橋英子) / Park Jiha / 伶楽舎 / Posuposu Otani / Merzbow / Kali Malone featuring Stephen O'Malley & Lucy Railton / Laurel Halo / Tashi Wada with Julia Holter / 日高理樹

2024 TOKYO (草月ホール / 伊藤邸(旧園田高弘邸) / LIQUIDROOM)
INCAPACITANTS / Puce Mary / Yuko Araki / FUJI|||||||||||TA / Okkyung Lee / 坂田明 / Bendik Giske / Valentina Magaletti / Still House Plants / goat

2025 - TOKYO (新国立劇場 オペラパレス / 東京都現代美術館 / 公園通りクラシックス / GASBON METABOLISM / ゲーテ・インスティトゥート東京)
Soundwalk Collective & Patti Smith / Marginal Consort / Carl Stone / 立石雷 / 恩田晃 / Park Jiha / Aura Satz / 斎藤玲児 / Ka Baird / Arnold Dreyblatt & The Orchestra of Excited Strings (Konrad Sprenger / Joachim Schütz / Jim O’Rourke / 石橋英子)

Instagram https://www.instagram.com/mode.exchange/
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 「すべてのロックンロールに反対してやる(We oppose all rock and roll)」──サブウェイ・セクトの1978年のシングル「Ambition」のB面曲で歌われたフレーズである。「これこそが自分たちの信条になっていった」と回想するのはトレイシー・ソーンで、ヴィック・ゴダードによるこの歌詞は、パンク/ポスト・パンクにおけるスローガン/コンセプト/警句でもあった。つまりそれは、オレンジ・ジュースの歌詞のもっとも有名なフレーズ──「(これまでのものを)ズタズタに引き裂いて、また最初からやり直そう(Rip it up, and start again)」とほとんど同義でもある。
 しかもそれは、ジョン・ライドンというハーメルンの笛吹き男、その時代においてビートルズ級の影響力をもった若者がセックス・ピストルズ時代の最後のほうに吐いた言葉と共鳴していたのだから、たまったものではない。「俺はただすべてをぶち壊したいだけだ。ロックなんて好きじゃない。なぜ自分がそこにいるのかさえわからない」
 パンクを大いなる「否(ノー)」とするなら、その矛先はパンク自身にも向けられたのである。

 ポスト・パンクとは、パンクを通過した「脱パンク運動」のことだ。「脱パンク運動」を先導したのが、パンク推進運動の中心人物、ライドンだったという史実はいま考えても最高におもしろい。ポスト・パンクとは、パンクに触発されながらパンクには成し得なかったことをやろうと、1970年代末から80年代にかけての英国で起きたムーヴメントのことである。パンクにできなかったことは何か。そのひとつが、大資本を頼りにせず、自分たちでレコードを作るという「DIY主義」だった。(オリジナルのパンクはほとんど皆メジャー・レーベルと契約していた
 セックス・ピストルズの “ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン” という曲がある。歌のなかには、「未来はない(no future)」という決定的な言葉が出てくる。ジョン・ライドンは、その「未来はない」をじつに力強く歌った。前向きな「未来はない」だ。そうか、じゃもう期待しても仕方がない。自分たちのやり方で好きにやろう。これがポスト・パンクであり、こんにちの我々がなんとなく「UKインディ」と呼んでいるものの原点である。

  ズタズタに引き裂いて、また最初からやり直そう
  そのときに、いまほど惨めな気持ちになっていなければいい

 以下、私観。
 ある短期間において、複数のアーティストが複数の素晴らしい作品、なかには流れを変えてしまうような決定的な作品がリリースされていった点において、ポスト・パンク時代のUKとデトロイト・テクノは似ている。じっさい両者には奇妙な共通点がある。DIY主義、反メジャー、反伝統的態度、階級の混在、いちぶの高い政治意識、文化的な横断性と雑食性。インテリとストリートワイズの共犯関係、美術系アーティストがいたことも共通している。

 「すべてのロックンロールに反対してやる」その二。
 そりゃあもう、そう言うからには、ポスト・パンクはロックンロールがやらなかったことをやった。ジャズ、ファンク、ダブ、即興、実験、ディスコ、エレクトロニクス……ポスト・パンクはブラック・ミュージックに借りがあるが、デトロイト・テクノはポスト・パンク時代のシンセ・ポップに借りがある。で、英国に輸入されたアシッド・ハウスやデトロイト・テクノからの影響は、レイヴ・カルチャーを触媒にUK音楽史における移民文化の大発明、すなわちジャングルへと展開するのだった。
 
 「すべてのロックンロールに反対してやる」その三。
 それって要するにクリシェに抗するということである。「難しいことは抜きにして愛し合おうぜ」という理屈をすっ飛ばしたエネルギー、ロックの真骨頂のひとつ、それに対する容赦なきクリティック。
 愛はぼくたちを引き裂く(Love Will Tear Us Apart
 これはお前らの好きなラヴソングなんかじゃない(This Is Not a Love Song)
 これは愛よりも奇妙だ(This Is Stranger Than Love
 むしろ「愛」の定義の解体に腐心していたというか、ザ・バズコックスの “Love You More” にしても恋愛関係のアイロニーでしかないし、ザ・モノクローム・セットにいたっては「愛は排水溝へと流れ落ちていく(Love Goes Down the Drain)」ものなのだ。
 さように、ポスト・パンクには言葉があった。じっさい文学(哲学)かぶれが多かったし、その代表例をいくつか挙げれば……
 アルベール・カミュ: 『転落』ならザ・フォール、『異邦人』ならザ・キュアー
 フランツ・カフカ: 『審判』の主人公から名取ったジョセフ・K
 J.G.バラード: 『残虐行為展覧会』ならジョイ・ディヴィジョン、『クラッシュ』ならザ・ノーマル
 フリードリヒ・ニーチェ: 『善悪の彼岸』ならザ・ポップ・グループ
 アルチュール・ランボー: 『地獄の季節』ならフェルト、アルバム・スリーヴのヴィジュアルにしたのはリップ・リグ&パニック
 アンソニー・バージェス: 『時計仕掛けのオレンジ』からはヘヴン17
 ディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのようなメンフィス・ソウルを素地にもつ汗まみれのバンドでさえも、歌詞のなかにサミュエル・ベケットやローレンス・スターン(『トリストラム・シャンディ』の作者)といった前衛文学者の名前が出てくるし、スクリッティ・ポリッティにいたっては、ウィトゲンシュタインにデリダ、フーコーなどなど、現代思想オタクぶり全開である。また、ウィリアム・S・バロウズのカットアップ手法を取り入れたスロッビング・グリッスル(TG)やキャバレー・ヴォルテールらの存在も忘れてはならない。
 ザ・フォールのマーク・E・スミスもバロウズ流を実践したひとりだが、 彼の場合は、“ポスト・パンク界のM.R.ジェイムズ(Burialも大好きな怪奇小説家)” と形容されたほど、怪奇幻想文学めいた歌詞を書いたことで知られる(詳しくは『K-PUNK』をどうぞ)。ただしその冷徹な辛辣さは、労働者階級のリアリズム、あらゆる権威や知識人、パンクにも向けられていた。
 もちろん、文学といってもひとそれぞれの好みがあり、多声的で、マーク・E・スミスのような「苛ついた不条理の塊」の対極には、なかば優雅に、言わばスマートなアイロニーをもってシーンに切り込んだエドウィン・コリンズがいた。なにせ言葉もサウンドもポスト・パンクへの逆張りと言える、『きみの愛を永遠に隠し通すことなんてできない(You Can't Hide Your Love Forever)』がデビュー・アルバムなのだ。彼らには、若いときにありがちな微笑ましい、文学マウンティングのエピソードもある。架空レーベル名に『ライ麦畑でつかまえて』の主人公ホールデン・コールフィールドの名を忍ばせたコリンズに対し、「へっ、サリンジャーだってよ」と嘲笑したのは、レーベル・メイトのジョセフ・K(ポール・ヘイグ)だった。のちにコリンズは、リチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』をもじった楽曲まで残しているが、モダニズム的な重さに寄りかかっていた他のポスト・パンク勢に比べ、彼はじつに「村上春樹的」な感性を先取りしていたと言えるのかもしれない。(ポストカードに関しては、The Go-Betweensというバンド名もL・P・ハートリーの同名小説に由来している
 あらためて、つくづく特異なシーン/時代だったと思うけれど、しかしそれもそのはずで、彼らのルーツにあったのはエルヴィス・プレスリーではなくデイヴィッド・ボウイだったのだから。(マーク・フィッシャーの名言「グラムこそパンクである、歴史的にもコンセプトにおいても」

 さあ、そこで “バカになろうぜ(Get Stupid) ” 、マントロニクスの出番である。1985年のこの曲のUKにおける予想外のスマッシュヒットは、ポスト・パンクの高踏さへの反知性主義的な反動というよりは……まあ、それも多少はあったかもしれないけれど、オウテカにとっての最大の影響源のひとつなのだからそれだけとは言い切れない。思うに、サッチャー政権時代の抑圧からの逃避や、社会的弱者にとっての暗い将来に対する開き直りだったのではないだろうか。ポスト・パンク勢の多くは、80年代なばかには勢いを失っていたし、こと政治に走ったいくつかのバンドは、サッチャーが三回目の当選を果た80年代後半になると、もうダメだ、やってらんねえよと言わんばかりにアシッド・ハウス/レイヴ・カルチャーへと猛進した。あるいは、ラジオから流れる“Eric B. Is President” や“Pickin' Boogers”、 “South Bronx ” なんかに気持ちを持っていかれた連中も少なくない。これらの影響をダイレクトに受けた世代が、後の〈XL〉や〈Warp〉だったりするのわけだが、『UKインディ・ロック入門』ではそこまでは追っていない。あくまで、ポスト・パンク以降のUKインディ・ロック史、その誕生と発展、そしておそらくは衰退までの話になると思う。
 その第一弾、副題は「ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとレゲエ編」を刊行します。インディ・シーンにとってもっとも重要なメディアであった7インチ/12インチ・シングルを含む450枚以上のレコード(CDではない)を辿りながら、「そもそも“インディ”とはどこから来て、何を意味し、そしてどうなっていったのか」を解説しているという、たんなるディスク・カタログではないのです。
 では、このとりとめのない文章の最後は、ザ・フォールの1980年の最高にクールな、いかにもポスト・パンクらしい皮肉たっぷりの“Totally Wired”。この曲を聴いて混沌とした時代を乗り切ろう。ま、乗り切れることができたらいいけどね。

  全神経がバキバキ
  完全に覚醒している
  完全に冴えている
  わかるだろ?

  人生に不意打ちはつきもの
  お前の眼球にビンタをかましてくる
  もし俺が左翼的な曲を歌っていたら
  保釈金を払えるくらいは儲かったかもな
  でも現実はまったく違うね
  朝の光が差し込む
  また新たな戦いのはじまり
  また別の口論、そうだろ、そうだろ、そうだろ

  尖る(weird)ために、尖る(weird)必要はない
  アメリカの反体制ブランドを取り入れる必要もない
  異端(strange)であるために、異端(strange)になる必要なんてない
 
  俺の心と身体の意見は一致してる
  イライラする、ムカムカする
  最悪の状態、最悪の状態さ


NF Zessho - ele-king

 福岡出身で現在は東京を拠点に活動、これまでコンスタントにシングルのリリースを重ね、数々の客演もこなしてきたNF Zessho。コレクティヴ「Oll Korrect」の一員としても知られるこのラッパー/ビートメイカーが、デジタルとCDで最新EP「Ultima」を発表している。
 同作は2021年の『Phytoplankton』以来となるまとまった作品で、ほぼすべての曲をNF Zessho本人がプロデュース。客演もなく、みずからのラップに重きを置いた1枚だ。8月5日にはアナログ盤の発売も予定されており、帯付き2枚組/完全限定プレスの仕様。チェックしよう。

[作品情報]

アーティスト:NF Zessho
タイトル:Ultima
レーベル:Enpizlab Records / P-VINE, Inc.
仕様:デジタル | CD | LP
発売日:デジタル | CD / 2026年5月20日(水) LP / 2026年8月5日(水)
LP品番:PLP-8377
定価:CD / 2,200円(税抜2,000円) LP / 4,950円(税抜4,500円)
*各社配信ページ
https://linkco.re/Vy2gmdHp
*CD購入ページ
https://nfzessho.thebase.in/items/144478525
*LP予約ページ
https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8377

[収録曲]※LPはSIDE AがM1~4、SIDE BがM5~7
1. Diamond Run
2. Community Pride
3. Cicada3301
4. Giant Killing Slangun
5. Grease
6. Ultima
7. Sailboat Freestyle
 

パンク/ハードコアは何を伝えてきたのか

DEATH SIDE、FORWARDのヴォーカリストとして40年以上にわたり日本のハードコア・シーンの先頭で活躍、
近年では『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』『右手を失くしたカリスマ MASAMI伝』など、
歴史の語り部として多くの著作をもつ著者が、
差別や戦争への抗議、ヴィーガニズムと動物解放の精神など、
パンク/ハードコアが訴えてきた様々なメッセージとその思想を解説する1冊

「Rooftop」連載コラムからセレクトしたコラムや書き下ろしに加え、
海外アーティストにその「思想」を訊ねた貴重な長文インタヴューも収録

インタヴュー
ペニー・リンボー(元CRASS)
デイヴ・ディクター(MDC)
ディック・ルーカス(SUBHUMANS/CITIZEN FISH/CULTURE SHOCK)
ブライ・ドゥーム(DOOM)
チョーチョー(THE REBEL RIOT)
ボブ・オーティス(DROPDEAD)

「ひとつ俺たちの重要な「常識」を教えよう。俺たちは愛に基づいて生きているだけなんだ。愛のない世界へ中指を立てているだけなんだ。おかしなことをおかしいと言っているだけなんだ。そこには世の中の「常識」とはまったく違う、愛に基づいた異次元の「常識」が拡がっている。」(本書「前書きにかえて」より)

四六判188×128/304ページ

[目次]
前書きにかえて 「愛で支配される世の中を夢見て生きる」
序章 パンクへの目覚め
第一章 差別・排除・多様性
第二章 政治・選挙・抗議
第三章 SNS・情報社会・共感/分断
第四章 気候危機・消費社会・経済
第五章 ジェンダー・アイデンティティ
第六章 動物搾取・命の選別・暴力の構造
終章

[著者プロフィール]
ジャパニーズ・ハードコア・パンク・バンド、DEATH SIDE/FORWARDのヴォーカリスト。40年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。著書に『関西ハードコア』(ロフトブックス/東京キララ社)『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』『右手を失くしたカリスマ MASAMI伝』『Laugh Til You Die 笑って死ねたら最高さ!』『BRUO/ノイズ』(blueprint)『静岡ハードコア』(東京キララ社)。

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お詫びと訂正
このたびは『異次元の常識』をご購入いただきまして誠にありがとうございます。
同書に誤りがありましたため、謹んで訂正いたしますとともに、
お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

P6 目次
(誤)
キンズとパンクスの関係
(正)
スキンズとパンクスの関係

P107
(誤)
戦え、戦え、戦え、戦え、私たちの念のため
(正)
戦え、戦え、戦え、戦え、私たちの信念のため

P299
(誤)
KwayKway
(正)
KyawKyaw

Haruomi Hosono - ele-king

 細野晴臣のニュー・アルバム『Yours Sincerely』が9月11日に発売される。オリジナル・アルバムとしては2019年の『Hochono House』以来7年ぶり、通算23作目となる。日本でのリリース元は、2024年にソニーがたちあげ、YOASOBIも所属するレーベル〈Echoes〉だが、海外ではなんとアメリカの〈Ghostly International〉からのリリースとなっている。なにゆえに。
 〈Ghostly〉といえば、近年ではなんといってもロレイン・ジェイムズのワットエヴァー・ザ・ウェザー名義の作品を送り出しているレーベルだけれども、もともと1999年にマシュー・ディアーの12インチからはじまった同レーベルは、これまでダブリー、シゲトゴールド・パンダティコテレフォン・テル・アヴィヴなどを擁し、インディペンデントなエレクトロニック・ミュージック・シーンの一翼を担ってきた。今回そこに日本の巨匠が合流する、と。
 インスタグラムのメッセージによれば、新作の構想は、日本語の「思い遣り」を英語でなんといえばいいのか調べたところからはじまっているそうだ。9月にはNYとギリシャでトロ・イ・モワとの公演が予定されてもいる。フィジカル盤の予約はこちら、配信はこちらから。

Loraine James - ele-king

 いや、すごい、作品を出すごとに、新しい音響世界を見せることができるのは、並大抵のことではない。スケジュールの多くはギグで埋まっていると思われるし、それでもこうやって新境地の新作、それも質の高いアルバムを完成させてしまうのだから、やはり、ロレイン・ジェイムズはこの10年のエレクトロニック・ミュージックのシーンにおける重要アーティストのひとりだ。この名義では4枚目、ジュリアス・イーストマンへのオマージュ作品を入れれば5枚目となる『Detached from the Rest of You』は、本人の冗談めかした説明によれば“IDMポップスター・アルバム”、より正確に紹介するなら、いままで以上に歌(ゲスト)をフィーチャーしたグリッチ作品といったところである。

 少しだけジャンル用語説明にお付き合いいただきたい。1990年代から2000年代初頭にかけて、大いに発展した大衆派エレクトロニック・ミュージック(ハウス、テクノ、ジャングル、ミニマル、ガバなど)において、機能的なダンス・ミュージックから離れたスタイルを、IDM、エレクトロニカ、グリッチなどと呼んでいる。音楽の教科書のように明確な境界線があるわけではなく、互いに重なり合っているが、完全に同じではない。IDM(知的ダンス・ミュージック)は、四つ打ちから脱却した変則リズムとヨーロッパ的な旋律を組み合わせた複雑さが特徴のテクノで、AFXやスクエアプッシャーなどが代表である。
 もっとも彼らは、いや、彼ら以外の多くの作り手/メディアも、とくに当初は、IDMという呼称における「インテリジェント」という言葉を嫌った。で、それに取って代わったのが、“エレクトロニカ”という言い方である。こちらは、アンビエントやポスト・ロック的なサウンドをも包括する、より広範囲な音楽性を指す言葉となっている。だから初期のフォー・テットのようなフォークトロニカも、そしてグリッチもエレクトロニカのなかに含まれるサブ・ジャンルのひとつであり、グリッチに関して言えば、この用語の拡大にひと役買ったのが、フランクフルトのレーベル〈Mille Plateaux〉によるコンピレーション・アルバム『Clicks & Cuts』(2000年)だった。
 『Clicks & Cuts』——本来は「失敗」や「不具合」とされるクリック(プツッというノイズ)とカット(音飛び、断片化)、すなわちデジタル技術が本来排除すべきエラー(ノイズ)を音楽の主役へと反転させること、本来であれば機械が見せたくない部分、それをさらけ出す試み、こうしたコンセプト/手法をもって作られたエレクトロニック・ミュージックが“グリッチ”と呼ばれるものである。
 この手法の先駆者には、オヴァルやマウス・オン・マーズらがいるが、機械の「ミス」を主体化したグリッチをポストモダン思想をもって理論武装したのが〈Mille Plateaux〉レーベルだった。ドイツを発信地とし、ウィーンを経由して広がったグリッチは、イギリス製IDMの三巨匠たちの無邪気なドリルンベースとは異なるハイブラウな道筋だったわけだが、しかし、これがみごとに大衆ウケしたのである。“グリッチ”にひとが快楽を感じるとしたら、それはテクスチュアに対するフェティッシュな快楽か、さもなければ、システムの裂け目から漏れ出す表現性に対する心理的な喜びか、いやいやあるいは、テクノロジーにおける悪夢の魅惑か……。
 『Detached from the Rest of You』におけるもっとも重要な影響源であるとロレインが明かしている青木孝允、池田亮司は、ちょうど『Clicks & Cuts』の時代にグリッチと形容された作品を発表している。(ほかにもこの時代、2000年代初頭には、Jan Jelinek、Snd、Pansonic、SutekhやTwerkなど多数のグリッチ系がシーンを席巻していた。いまではアンビエントで知られるTaylor Deupreeや坂本龍一の共作者のAlva NotoやFenneszのような人たちもこの頃のグリッチ界隈から登場している)

 よって、なにをいまさらグリッチなのかと思われるベテラン・リスナーもいることだろう。しかしながら、ロレイン・ジェイムズがすばらしいのは、それをドリーミーな音響体として再定義し、現代的リズム(ジャングル/グライム/ダブステップ以降のリズム)と融合させつつ、曲によってはポップな響きに磨いている点にある。要するに、調理がうまいのだ。チボ・マットの羽鳥美保をフィーチャーした“Flatline”は間違いなく今作のクライマックスだが、この曲はほとんどコーネリアスの領域と重なっている。
 アルバムの冒頭には、たしかに池田亮司のグリッチを想起させる機械の誤作動めいたサウンドがある。機械のエラーに感じる恍惚と喪失感の両義性は、「あなたの残像から、切り離されて」といった意味の題名がほのめかすメランコリアに密接してもいる。ロレインは、彼女が尊敬するIDMの巨匠たちの楽天性(言わば脳天気さ)とは対極的に、内省的な方向性からは今回も逃れられていない。しかしながら、グリッチにおける遊び心と複数のゲスト陣との掛け合いのなかで、アルバムはその舞台を広げ、そのテクスチュアを楽しむこともできるし、ユーモアとエモーションを感じることもできる。“Flatline”に並んで、今作におけるもっとも突出した瞬間はティルザが歌う“Habits and Patterns”である。ほとんどマッシヴ・アタックの領域と重なっているこの曲は、最高に格好いい。
 ニューヨークのサウンド・アーティストのシドニー・スパンの低い歌声が入る“In a Rut”、アンシア・キムの蒸気のような歌声の“Score”も、さらにヒップホップ・ビートをバックにLowのアラン・スパーホークが歌う“Peak Again”も、いちど聴いただけで好きになれる曲だ。全編がグリッチなわけではない。アルバムの最後のほうでは、MCのLe3 bLACK(長年の共演者)とドラマーのFyn Dobsonをフィーチャーした“Ending Us All”がテンポを上げて、いっきに熱量を上昇させる。肉体的なビートは、それに続く“Forever Still”で激しさを増す。ちょっとAyaの過剰さを思い出すかもしれないが、しかし、クローザーの“See Through”では冒頭のグリッチへとつながるような、機械のエラーとメランコリアへと着地する。
 
 ロレイン・ジェイムズのアルバムを、Whatever the Weather名義もふくめてすべてぼくは好んでいるが、今回はとくに出色の出来で、将来的には彼女の代表作の1枚になるだろう。

NU Festival × Sónar - ele-king

 高輪ゲートウェイ駅直結の再開発エリア、高輪ゲートウェイシティにてまたも新たなフェスティヴァルが始動する。〈NU Festival〉と題されたそれは年6月26日(金)~28日(日)にわたって開催。
 同フェスティヴァルのうち、「NU Art」(6/26~28)と「NU Live」(6/27~28)のふたつのプログラムはバルセロナのフェスティヴァル〈Sónar〉とのコラボレーションで、前者では復活した「SuperDeluxe」がキュレーションを担当、後者ではアクトレス&スザンヌ・チアーニ、DJ KRUSH、ウィリアム・バシンスキ、みんなのきもち、トゥ・シェルほか、注目のアクトが多数ラインナップ。
 ほかにも「NU Station」や「NU Park」といったプログラムでは駅舎内や駅前広場にフロアが出現、DJイヴェントが無料で体験可能なようだ。詳細は、下記公式ページより。

各プログラムの位置づけ
https://nufestival.jp/programme/

日割
https://nufestival.jp/426/

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