「W K」と一致するもの

Moodymann - ele-king

 結論から言えば、本作『Moodymann』はここ最近のムーディーマンのなかでは抜きんでている。まず何よりもこれは『Black Mahogani』以来の大きなリリースであり、ここ数年のベスト盤的な内容で、彼の集大成でもある。これからムーディーマン(デトロイトの、カルト的な人気をほこるハウス・ミュージックのDJ/プロデューサー)を聴きたいという若い方がこの文章を読んでいたら、迷うことなく本作を手にするがいい。
 というか、このところのムーディーマンは、2012年の『Picture This』をのぞけば、長くもなく短くもないミニ・アルバムをヴァイナルのみの限定盤としてリリースしている(2008年の『Det.riot '67』、2009年の『Anotha Black Sunday』、昨年の『ABCD』……)。これらはすべてが予約で売り切れるほどの競争率なので、本当に好きな人/レコードのためには努力を惜しまない人しか聴いてないと思われる。今回もアナログ盤(12曲)に関しては予約でショートしているが、数週間後にCD(27曲)も出た。要するに、『Moodymann』は久しぶりに手に入れやすいアルバムで、『Picture This』からの再録(アンプ・フィドラーとのまったく素晴らしい“Hold It Down”)、2008年のホセ・ジェイムス“Desire”のリミックス、CDにはくだんの限定盤からの数曲も再録されている。さらにCDにはEPで発表した曲もいくつか再録していて、ラナ・デル・レイ“ボーン2ダイ”のリミックスまで入っている。CDはお買い得だ。
 ムーディーマンは同郷のアンドレスとも似て、ハウス・リスナーのみならずヒップホップのリスナーの耳も惹きつけている。彼のリズム&ブルースのセンスゆえに、ハウス・ミュージックという枠組みを超えて、幅広いリスナーにアピールしているのだろう。現代のような音楽が売れない時代に、こと洋楽への関心が弱まっている日本において、ハウスを扱っているすべての輸入盤店で発売直後に「SOLD OUT」とするムーディーマンの人気は、異例中の異例だ。

 昔、シカゴでハウス・ミュージックが生まれたとき、熱狂した多くのダンサーたちが「教会みたいだ」などという科白でその感動を表したエピソードは知られている。アフリカ系アメリカ人の教会は、──筆者も1度だけ行ったことがあるが──、宗教の現場というより共同体の集会場だ(デトロイトにおいては、奴隷制時代に奴隷を逃がす隠れ家でもあった)。大勢で歌って踊って、それもかなりハードに踊って、神父は、今週は寄付金を公園の壊れたブランコの修繕に使ったとか、建設的な報告する。そうした身近な人びとの集まっているにおいが、そしてデトロイトは破産したというニュースとは裏腹のファニーなアーバン・フィーリングが、尽きることのない地元愛が、果てしないセクシャルな衝動が、ファンキーな笑いが、ムーディーマンの音楽には注がれている。ラナ・デル・レイのリミキサーに抜擢されたほどの人物だが、基本、アンダーグラウンドの音楽家なので、誰しもが彼にアクセスできるわけではない。しかし、それでも彼の音楽は大衆音楽であり続ける。大衆は必ずしも多数を意味しない。むしろ多数の専制に逆らっている、少数派を大切にするという意味において「民衆」の音楽だと言えよう(……数日後には憂鬱な都知事選だ)。
 そして、おっさん節の道化たアートワークが時代錯誤でどんなにダサかろうと、この音楽は──勝ち負けの音楽ではなく──共同体の音楽なので、おおらかに受け止められる。アホだなーと笑っても、音楽がうまいので、文句は言わせない。『Moodymann』の、ハウスから広がる多彩な展開(R&B、ファンク、ジャズ、8ビートの速いピッチの曲などなど)は、彼のキャリアを顧みれば自然な成り行きだ。それは成熟するデトロイト・ハウスの現在でもある。1曲、ファンカデリックの名曲“コズミック・スロップ”をがっつりサンプリングしている曲がある。そして、CDの中面の写真に写っている彼のスタジオのシーケンサーの上には、プリンスの『1999』のカセットが、どーんと、意味ありげに、結局のところこれが彼にとっての最良のポップ作品のひとつであると主張するかのように、置いてある。

丸屋九兵衛 - ele-king

 先日、インドネシアに行ってきたんですよ。バリ島とジャカルタと併せて10日くらいの旅。ジャカルタではマージナルというパンク・バンドの住居兼コミューンみたいなところを訪ねて大変貴重な経験をしたのだけれど、それはまた別な話なのでどこかで書く予定。
旅行に際しては、いわゆる有名なシリーズのガイドブックを買ったのだけど、やはり普通のガイドブックというのは最大公約数をターゲットにしてるものだから、どうしても限界がある。どこのクラブやライヴハウスが盛り上がっているのかとか、中古レコードはどこで買えるのか、言葉はわからなくてもマンガくらいはどんなものがあるのかチェックしてみたい、映画はどんなものが作られてるのだろうか、等々、そういうことが知りたいじゃないですか。

 で、一方で台湾というと、まあ親日的でご飯が美味しいという程度の印象しかなかったのだが(あとはまあ、むかし映画が盛り上がってたな、という記憶があるくらい)、最近友人が岸野雄一さんと一緒に台湾に行ってレコードを掘るのにハマっているというのでにわかに興味を覚えたところなのである。そんな矢先のこの本の刊行は大変嬉しかった。

 一言で言うと、『bmr』編集長にして無類の雑学王である丸屋九兵衛氏による偏愛的台北ガイド。「ビッグ・イン・ジャパンを語らない」(具体的には杏仁豆腐とか小龍包とか)というコンセプトが本文中でも明らかにされているように、あくまでも現地ではこれが熱いという視点でセレクトされているところがいい。あと、「住むように旅したい」というスタンスにも共感する(インドネシア旅行は移動が多くて1箇所2~3泊とかだったからいまひとつ食い足りなかったのだ)。そういうところに旅の醍醐味を見るタイプの人であればきっと重宝するだろう。
 読む前はもっとカルチャーに特化した感じなのかなと思っていたのだけど、食についての情報が充実しているのもありがたい(夜市で売られるさまざまな串焼きの写真を見ているだけでも行ってみたくなる)。そうそう、本書の最大の特徴は著者と「現地有志」による大量の写真である。眺めているだけでも現地の熱気が伝わってくる。
 また、日本統治時代から戦後の蒋介石政権、中国との関係など、ストリートカルチャーの背景にある歴史をしっかりおさえて解説してくれるところも世界史マニアのこの著者ならではだろう。

 もちろん偏愛的である以上、自分の関心事に100%応えてくれるわけではない。たとえばぼくの興味の対象である古いロックのレコードや、ノイズ~エクスペリメンタル・ミュージックについての情報はまったく得られない(そのかわり、ヒップホップやR&B、グラフィティにスニーカーやキャップなどについては面白いことがたくさん書いてある)のだけれど、それはまあこの際大した問題ではない。
 どの街でもたぶんそうだけど、上っ面な部分に触れるだけではなくもっとディープなカルチャーに触れようと思ったら、最初の一歩がなかなか大変なのだ。そこのところを上手く手引きしてもらうことができれば、あとは自分でどんどん世界を広げていくことができる。ほんと、ジャカルタにもこういう本があったらよかったのになー。

 かつては、パリでいえば『パリのルール』、ロンドンだったらカズコ・ホーキの『ディープなロンドン』、アメリカであればファビュラス・バーカー・ボーイズの『地獄のアメリカ観光』、韓国なら幻の名盤解放同盟の『ディープ・コリア』といった名著がこれまでに刊行され、大いに参考にしたり妄想を膨らませる助けになったりしてきたわけなのだが、こうして見るとほとんど全部古いのでそろそろアップデートしたものが読みたい気がする(どれもだいたいいま読んでも面白いと思うけど)し、アジアでのレコード・ディギングが進むいまなら、ソウルやバンコクなどいろんな都市の「カオスガイド」をもっともっと読みたい、そしてレコードや本を買いに行きたいと思う。

ピークが終わらない! - ele-king

 ピークが終わらない! いまもっとも勢いのあるDJ/プロデューサーのひとり、Seihoが〈ラッキー・ミー〉のオベイ・シティとジャパン・ツアーを開始する。〈ラッキー・ミー〉といえば、ハドソン・モホークや彼の別プロジェクトTNGHT、マシーンドラムなどの作品をリリースし、〈ワープ〉や〈プラネット・ミュー〉に近接するセンスでシーンを掘削するグラスゴーのアンダーグラウンド・ダンス・レーベル。Seihoとの相性もばっちりだ。
 2月7日の大阪公演を皮切りに、福岡、名古屋をまわり、最終日は10日@代官山〈Unit〉。自身のレーベルを運営し、順調にリリースも行い、各地を飛び回って夜を彩るSeiho、その活躍は今年も止まらない。彼あるところに音の祭あり。Seihoの移動式祝祭日に飛び込もう。

■詳細
https://www.perfect-touch.us/seiho-obey-city/
https://2-5-d.jp/news/12146/

■Seiho + Obey City / Way Cool Winter Japan Tour 2014

東京公演
日時:2014年2月10日(祝前日)23:00-
場所:Unit
数量限定前売りチケット:https://peatix.com/event/28151/view
出演:
Obey City
Seiho
DJ WILDPARTY
Metome
PARKGOLF
The Wedding Mistakes
SEXY808
Pa’s Lam System
Hercelot

-Sound Clash-
LEF!!!CREW!!!
HyperJuice
TREKKIE TRAX


Villains - ele-king

 かつてキャトル・プレス(Cattle Press)とゆー恐ろしいバンドがおりまして、トゥデイ・イズ・ザ・デイ(Today is the Day)やクライシス(Crisis)、ディスアソシエイト(Dissasociate)などの恐ろしい仲間たちとともに90年代のニューヨークの地下シーンを形成しておりました。キャトル・プレスやらヘムロック(Hemlock)、ダイング・ライト(Dying Light)にも参加していたLino Reca氏が率いるヴィレインズ(Villains)には、過去10年間聴いた邪悪なバンドの中でつねにもっとも興奮させられているのであります。

 昨今のテクノ界隈のアーティストがブルズムやらクロマグスのTシャツを着用するトレンドとは対極に位置しながらも、どこかしらリンクしてしまうのは、このバンドが持つニューヨークらしい都会的でニヒルなセンスゆえであろうか。

 バソリー(Bathory)を彷彿させる非ゴスなブラック・スラッシュとブラック・フラッグ的(Black Flag)なアメハが共存するヴィレインズの、結成から10年間追求しつづけたストリート・メタル・ノワールはここにひとつの完成を披露する。前作『ロード・トゥ・ルイン(Road to Ruin)』から顕著に表れはじめた西海岸パンク/ハードコアなブレイク・ダウンは本作品ではさらにフィーチャーされ、ニューヨーク特有の、冷たく、血なまぐさいスラッシュと不気味に共存している。いつのまにかLino Reca氏がギター/ヴォーカルとなったのもあってか、いままで以上にひねくれたリフが全編通してウネりまくる。抗うことができないヘドバン衝動に身を委ねれば日頃の鬱憤で酒に我を忘れ、ブルックリンの場末のバーでチャンネーを巡るトラブルに巻き込まれるであろう。ニヒリスティックな男のロマンがここにある。
 立ち上げから現在まで徹底してヴィレインズをプッシュしてきた〈NWN! プロダクション〉による美しいパッケージは今回も素晴らしく、このバンドの歴史とともに振り返る〈NWN!〉の軌跡へのリスペクトを忘れてはなるまい。

 というわけで2013年のUSパンク・ハードコアで若手ハイライトはホアクス(Hoax)──解散したっぽいのだが──、ベテランはヴィレインズでした。

 2013年度イヤーズ・エンド・リストに入れ忘れたのでここに記しておきます。

Shotahirama - ele-king

 断言しよう。2014年、最初の衝撃である。本作によってわたしたちの耳はモード・チェンジした。

 痙攣と震動が同時に生成する。耳と肉体が感電する。震える。驚異的な現象としての音響=音楽の炸裂。メロディはない。リズムはつねに変化する。変化、持続、切断、生成。そして震動。これらはまるでショータヒラマのライフ=人生そのもののように感じる。彼が生きている、暮らしている、聴こえている、触れている、震動している、そして感じている、ラヴとヘイトに満ちた世界のありようが、この電子音にたたみ込まれている。この快楽的で痺れるような電子音の震動は、一人の音楽家が体験する瞬間や衝動だ。それはストリートの光景や音のように刹那に通り過ぎていく音=ドキュメントでもある。電子音楽、電子音響、パンク、ビート、リズム。鼓動。つまり生きているということだ。ライフ・ミュージック・オブ・サウンド!

 このショータヒラマの3枚めのアルバムのタイトルは『ポスト・パンク』と名づけられている。これまでも『サッド・ヴァケイション』、 デュサレイ・アダ・ネキシノとのスプリット・シングル『ジャスト・ライク・ハニー』など、パンク以降のロック史上の名作を思わせる名前が付けられていたが、それらは単なる引用ではないはずだ。歴史と個人史が交錯する地点がそこにあったから、そう付けられていたとわたしは理解している。

 とすると、この『ポスト・パンク』もまた、ポスト・パンクという単語から思い浮かぶであろう、あれやこれやのアーティストやアルバムやそれやこれやの歴史的事実を、いちど、知った上で忘却してしまった方がいい。そう、何より、2014年の「ポスト・パンク」なのだから。

 事実、この音を耳にした者は誰しも直感的にその事実を理解するだろう。高速で流れ行く音の光景。ノイズとビートの瞬時的な変化と生成。その音響は聴く者に、中毒的な耳の快楽をひきおこす。弾け飛ぶビート。脳髄に直撃するノイズ。すべてはその瞬間に生成し、打ち抜き、変化を繰り返す音の運動だ。わたしたちは、そのサウンド・マッサージを鼓膜に浴びる。

 これらはまるで、流れ行くストリートの光景や音を、電子音響にトランスフォームした音の姿だ。そしてショータヒラマはそれらの音を極めて肉体的なリズムで「演奏」してみせている、この痙攣、この震動、このリズム、この運動、この衝動は、ショータヒラマの体から湧き出るリズム=衝動そのものではないか。

 わたしは、ここに、ショータヒラマがこれまでのアルバムで実験を繰り返してきたフィールド・レコーディングとサウンドのコンポションに対する大きな跳躍を感じた。音を採取し加工しマッピングするようにコンポジションすることを通じて作品を生み出してきた彼は、本作において、自身の内にあるリズム/ビート/衝動を、楽曲に注入し、自身の作品のアップデートを図ったのではないか、と。もちろん、前作『ジャスト・ライク・ハニー』で既にその兆候を聴き取ることはできる。そう、既にビートが導入されているのだから。だが、本作の跳躍はさらに圧倒的なのだ。

 曲を再生する脳内を飛び散るようなビート。それは接続と変化の中で音の姿を変えていく。そのコンポジションのみならず、音色の素晴らしさは筆舌に尽くし難い。乾いた、しかし、物質的な手触りを感じさせる音の粒が耳を刺激する。そこに透明で純度に高い透明な層のような電子ノイズが次々にレイヤーされ、聴く者を痺れさせていくのだ。音響は次々に変化し、一度や二度聴いただけでは全体を把握することが不可能なほどの驚異的な音響密度。

 この震動と痙攣と圧縮感覚は、まるでアート・リンゼイ、イクエ・モリ、ティム・ライトらによるDNAの痙攣的にリズム/ビートの遺伝子を引き継ぐかのようである。昨年、イクエ・モリのツアーに同行し、衝撃的なライヴを披露したというのも納得である(ちなみに初回特典のCD-Rには、イクエ・モリ・ツアーでのライヴ・トラックが収録されている。ライヴらしい躍動感のみならず、アルバム・ヴァージョンにはないエレクトリック・ギターまでもが導入されている! これがまた最高・最強のトラック。クールな熱情がみなぎっている。なくならないうちに購入されることをお勧め)。

 だが、わたしはここであえて歴史の焦点を絞ってみたい。グリッチ・ミュージックとの接続である。例たとえば90年代中盤以降から00年代頭にかけてグリッチ・ミュージック創世に尽力したレーベル〈メゴ〉は、ラップトップ・コンピューターによる電子音のエラーを積極的に活用していくことで、テクノ以降の電子音楽のパンク化を実現した。ここに壊れた音(電子ノイズ)の快楽と摂取が実現したのだ。たとえばピタのアルバム『セブン・トンズ・フォー・フリー』(1996)、『ゲット・アウト』(1999)、『ゲット・オフ』(2004)などを本作を聴いたあとに聴いてみてほしい。(ポスト・)デジタル・ミュージックの清冽さと、エラーを活用する「失敗の美学」を聴きとることができるだろう。

 ショータヒラマは、そんなグリッチ以降の電子音響の歴史をアップデートしようとしている。グリッチは電子音響のパンクであった。ゆえに本作はポスト・パンクとはいえないか。何が違うのか。デジタル・ミュージックに、自分の衝動と人生と震動と鼓動と視覚と聴覚をすべて電子音に畳み込もうとしているからではないか。それは理屈ではない。コンセプトでもない。一種の衝動である。その衝動=震動が織り込まれた電子音楽/音響として生成すること。そしてそれを2014年的な圧倒的な情報密度で作品化すること。つまり衝動と密度の多層的生成。いや、もともと彼の音楽にはそのような驚異的な圧縮/解凍感覚があったのだ。ゆえに収録時間が20分程度で十分なのだ。織り込まれた音の情報や層がクロノス時間を越えている。時間が縦に圧縮されている、とでも言うべきか。

 断言しよう。本作はショータヒラマが成しえた驚異的な音響的達成の成果であり、最高傑作である。聴くほどに耳と脳が震える。聴くほどに音を求める。アディクトとコンポジションとインプロヴィゼーションの彫刻=超克。驚異的な情報密度の圧縮と解凍。「聴く=効く」の交錯。まさに電子ノイズ・ビート・ミュージック・サウンドの全く新しいカタチである。

 繰り返そう。本作は、2014年、最初の衝撃である。さらにこうも言い換えよう。本作は、最後からはじまる最初の挑戦でもある、と。そして、本アルバムの名前として付けられた言葉を、もう一度、つぶやいてみよう。そう、「ポスト・パンク」と! わたしたちは、みな「以降」の時代を生きている。だが、衝動や衝撃や震動は収まることはない。世界に音が満ちており、ストリートの光景や音も終わることなく、わたしたちの耳から記憶に刻み込まれているのだから。生きていること。つまりライフ・ミュージックだ。本作は電子音楽/電子音響がライフ・ミュージックであることを堂々と告げている傑作である。

ele-king Help wanted - ele-king

 たしか2009年の秋から冬に変わる頃、ワタクシは自宅の台所のテーブルにノートパソコンを置いて、宇川直宏の電話の指示に従いながらオープンしたのが、web ele-kingでございます。懐かしいですね、まだDOMMUNEがオープンする前でした。そこからなんとか、いろいろな人たちの助けや、いろいろな世代との出会いもあって、こうしてやってこれているわけであります。まだまだ理想には遠いと思ってはいますが、はじめた頃に比べたらずいぶん幅広く読まれるようになったと実感しております。
 さて、それでweb ele-kingはじまって以来の、スタッフ募集です。デスク業務です。ワタクシと橋元の机に挟まれながら作業しなければならないという、おそろしい環境ですが、とにかく音楽の話が好き、文章を読んだり書いたりするのが好き、CDやレコードを買うのが好き、音楽メディアと編集業務に興味がある人、そして気持ちがある人、待っております。編集部の菅村君から「ファッションやアート、ライヴ好きの方もヨロシク!」とのことです。とはいえ、おそらく皆様が思っている以上に地味な仕事ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。(野田) 


【職種】
デスク

【仕事内容】
書籍・WEB編集補助業務
(資料作成及び発送、データ入力、原稿整理、画像整理)

【求めるキャリア・スキル・応募資格】
・基本的なPC操作
・基本的なWORD、EXCEL操作
・幅広く音楽に興味をお持ちの方
・基本的なPhotoshop、Illustrator操作できる方、優遇。

【雇用形態】
アルバイト(学生歓迎 ※大学生以上)

【勤務地】
東京都渋谷区 本社

【交通】
JR線 「渋谷」駅より徒歩6分

【勤務時間】 
週2~5日(月~金)10:00~18:00(原則)

【給与】
時給 870円以上

【待遇条件】
交通費全額支給 (学生の場合は通学定期の経路外を支給)
試用期間2ヶ月

【休日休暇】
完全週休2日制(土・日)、祝日、夏季・年末年始休暇

【募集人員】
若干名

【応募方法】
履歴書(写真添付、Eメールアドレス明記)及び職務経歴書(書式自由)を同封の上、下記宛先までご郵送ください。
※好きな音楽等も明記ください。

【書類送付先】
<郵送>
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町21-2 池田ビル2F
株式会社 Pヴァイン 人事担当宛て
※履歴書在中の旨、ご明記下さい

<メール>
job@p-vine.jp のアドレス までお送り下さい。

【応募締切】2014年2月10日
※書類選考の上、面接対象者のみ、当社より締め切り後2週間以内にご連絡いたします。
※応募書類はご返却いたしません。ご了承下さい。
※応募書類につきましては今回の採用選考にのみ使用し、同意なくそれ以外の目的に利用したり、第三者に提供する事はございません


UKAWA'S TAGS FACTORY - ele-king

 みんな大好きDOMMUNE宇川直宏の「セレブリティー1000人の偽サイン展」、そう、「偽サイン」です。覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。宇川直宏いわく「降霊術」によってセレブを自らに「憑依」させてサインを描くという、その1周回ったいかがわしさ、オリジナルを超えた偽物のリアリティといいますか、当たり前の価値観をカオスの海に放り投げながら笑っているといいますか、とにかく、5年前の500人の偽サイン展から、宇川は、日々偽サインを忘れることなく、その数ついに1000人に到達したのであります。
 そう、先週から山本現代において、その完結編として「UKAWA'S TAGS FACTORY(完結編)~宇川直宏によるセレブリティー1000人の偽サイン展」がはじまっています。2月22日まで開催しているので、ぜひ、観に行きましょう。あまりの「うまさ」(いろいろな意味で)に驚くはず。そして、その1000人の人選には、宇川直宏らしさが思い切り出ています。開催中には、トークショーも予定されているそうで、楽しみです。
 なお、開催中には、「FREE DOMMUNE ZERO」にて話題となった「夏目漱石/THE UNIVERSE」も展示されます。


■~2月22日 @山本現代?宇川直宏 個展【2NECROMANCYS】

=「UKAWA'S TAGS FACTORY(完結編)~宇川直宏によるセレブリティー1000人の偽サイン展」
&「夏目漱石/THE UNIVERSE(re-turns)」with やくしまるえつこ(朗読)!


https://www.yamamotogendai.org/japanese/exhibition/index.html

interview with Phoenix - ele-king

 たぶん、これを読んでいる人はビートルズ以前のフランスの音楽、シャンソンが世界の人びとを魅了した音楽だったということを知らないだろう。
 エディッド・ピアフはビヨンセのように誰からも愛され、ジャック・ブレルはフランク・シナトラのような偉大なシンガーだった。
 ビートルズの初めてのフランス公演は、シルヴィ・ヴァルタンの前座としてだった。この公演中にビートルズは自分たちの曲がアメリカで初のナンバー・ワンになったことを告げられた。それは、エンターテインメントの世界の音楽がロックへと変わった瞬間であり、ロックの本質を本当に理解しているアメリカ、イギリスだけが世界の音楽を牛耳っていくはじまりだった。
 アメリカ、イギリス以外の国の音楽が世界の隅に追いやられていったのは、それらの国のエンターテインメント界が旧来のままだったことがいちばんの理由だと思うが、ミッシェル・ポルナレフのようなロック世代の大スターも出てきはしたが、しかし、それまでは世界の音楽をリードしていたフランスの音楽が他の国のチャートに顔を出さなくなったのは不思議で仕方がなかった。ジャズの終わりを看取った国、アフリカン・ミュージックを発信してきた国にしてはフランスの音楽の低落ぶりは不思議で、だから、フレンチ・ハウス、テクノが世界的に評価されたとき、さすが、フランスだと思った。フランス音楽の低迷は言葉の問題だったのかと思っていたら、ついにフェニックスがグラミー賞をとり世界的に認められた。なぜ、フェニックスが世界的に認められたのか、訊いてみた。今月行われた来日公演の楽屋にて、答えてくれたのはギターのローラン・ブランコウィッツとベースのデック・ダーシーだ。

僕たちはいいプレイヤーじゃない、でもいいリスナーだと思っている。僕たちが目指しているのはアメリカのゴールデン・エラと呼ばれた時代の音楽だ。75年とか、MIDIが使われる前の音楽だ。(ローラン・ブランコウィッツ)

グラミー賞をとったことは驚きましたか?

ローラン:僕らはどんな賞ももらったことがなかったから、驚いたよ。初めてもらった賞が、権威ある賞だったから、嬉しかった。でも、長いこと賞ももらわずにやってきたけど、それはそれでよかったよ。

デック:新しい経験で、いままで感じたことない感覚だったね。

ローラン:いい経験だったと思う。

なぜ、グラミー賞をとれたと思いますか?

ローラン:なぜ? 成功はいろいろなものの積み重ねだよね。いろんなひとたちがいいね、と言ってくれるようになって、成功をしたんだと思う。

僕がなぜこんな質問をしたかというと、昔のフランスの音楽って、普通に世界レベルの音楽だったじゃないですか。それがビートルズ以降、ただの地域の音楽になってしまったと思うのです。そんななかであなたたちは久々に世界に認められたフランスのアーティストだと思うのですが、それはなぜかなということを訊きたかったのです。

デック:いい質問だね。

ローラン:ミッシェル・ポルナレフは日本でもポピュラーだったの?

はい、ビートルズより人気がありましたよ。

ローラン、デック:へー。

僕の両親の時代ですけどね。

ローラン:(ふたりでフランス語で相談しながら)なぜ、そんなことになってしまったかはまったくわからないんだけどね。僕らふたりの見解だとフランスの音楽産業のせいだと思う。フランスの音楽業界は間違った道を歩いてしまったんだ。これがフランスの音楽業界が衰退した理由の一つだと思う。僕らの世代は旧来の音楽産業とは関係ないところでやっている。だから僕らは成功したと思う。僕らの世代は自分たちのベッドルームでレコードを作っている。だからそういう古いフランスのシステムの影響を全く受けずにすんだ。

それは僕も同じことを考えていて、びっくりしました。

ローラン:フランスの音楽シーンの復活にはテクノジーの進歩もとっても重要だ。僕たちはテクノジーで古いシステムから解放され、自由を手にしたんだ。

なるほど、だから、フランスのシーンはまずハウスやテクノから成功していったのですね。フレンチ・ハウスやテクノの人たちとの共通点を感じますか?

ローラン:そうだね。音楽がぜんぜん違っても、ほとんど同じ機材を使っているよね。サンプラーなど。そして、何より同じような古いレコード(音楽)を愛している。ハウスの人たちも、ヒップホップの人たちも、当時の最高のギター、ドラム・サウンドを一日中聴いている。僕らもそうだ。そして、それらからまったく新しい音楽を作ろうとしている。それがいまのカルチャーだ。これが共通点だよね。僕らはもっとソングライティングに力を入れているというのが違う部分かな。そうしようとしているんじゃなく、僕らはそういうのが好きというくらいなんだけどね。これがフェニックスだね。

おー、僕はフェニックスというのは、70年代のアメリカン・ロック、映画『ヴァージン・スーサイド』に使われたような当時のアメリカの郊外のキッズが聴きそうなスウィートなアメリカン・ロックを、現代のヨーロッパの若者たちに置き換えたようなサウンドを目指しているのかと思っていました。

ローラン:僕たちはいいプレイヤーじゃない、でもいいリスナーだと思っている。僕たちが目指しているのはアメリカのゴールデン・エラと呼ばれた時代の音楽だ。75年とか、MIDIが使われる前の音楽だ。

産業ロックになる前の音楽ですね。

ローラン:アメリカのいろんなジャンルの音楽の天才が集まって、素晴らしい機材とたくさんのお金を使って作っていたような時代の音楽を、ベッドルームで、正確に言うと、狭い地下室で、安い機材で、サウンド・エンジニアの知識もなく、スティーリー・ダンのような音楽を作ろうとしていたんだ。

うわっ、スティーリー・ダンですか、感動しました。前作『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』が商業的に成功したので、『バンクラプト!』はスティーリー・ダンのようなお金をかけた制作もできたと思うのですが、前作と変わらない感じがしますね。

デック:たしかに同じようなプロダクションだね。でも、僕たちがやっていることは新しい音楽を作ること、同じようなプロダクションでも、やり方はとってもランダムだね。

ローラン:僕らはみんなを驚かせたいんだ。リスナーに誰か違う音楽を聴いているような感覚を与えたいと思っている。今回は、ランダムにやりながらそれをどういうふうに完成させるかというプロセスを理解できたね。

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ヌーヴェルヴァーグも僕たちも、アメリカとコネクトしていたが、距離があった。だから僕たちはアメリカの音楽にファンタジーや妄想を感じながら、大きくなった。リアルよりもね。

フェニックスというとおしゃれで、時代の空気を読み取って、マーケット戦略もばっちりみたいなバンドだと思っていたのですが、まったくそんな感じじゃないんですね。

ローラン:そうだよ。『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』は成功したアルバムになったけど、完成したとき、すごく変なアルバムを作ったと思った。少しの人にしか気に入られないんじゃないかと思ったよ。だけど、たくさんの人が気に入ってくれた。だからマーケットなんか気にしなくっていいと思って、『バンクラプト!』は『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』と同じアティチュードで作ったんだ。僕らが思うにフェニックスを好きな人は驚かされるのが好きで、ラジオでかからないような曲を聴くのが好きなんだろうな感じる。だから、そういう方法論で作っていくんだ。普通はファンに寄り添っていくとダメになると思うけど、いまのフェニックスとファンの関係はいい関係だね。

ロック黄金時代のバンドとファンの関係のようですね。

ローラン:僕らがフェニックスをはじめた頃は僕らのような音楽を好きな人たちは少数派だったけど、いまはいい耳を持った人たちが増えているよね。フェニックスをはじめた頃の音楽シーンは酷かったけど、いまはどんどんよくなっていっているよね。

フェニックスを含むフランスの新しい音楽全般についてうかがったのですが、僕はフランスの音楽はイギリスやアメリカの音楽と比べると、エレガントで、スウィート──というのは偏見のようにとられるかもしれないですが──あたたかさやノスタルジーを感じるんですが、なぜでしょうか?

ローラン、デック:うーん、いい質問だね(難しい質問だね)。

あっ、すいません、フェニックスは自分たちのことはフランスぽくないと思っているんですか?

ローラン:そんなことないよ。僕たちも君が思うようなことを思っているよ。音楽でこうだというのは難しいね。フランス映画にたとえて話すと、フランス映画もまた音楽のように、アメリカ映画と違うよね。フランス人はいろんな感情をミックスするのがいいと思うのかもしれない。フランス映画はコメディだと思っていると、突然悲しいシーンが出てきたりするよね。フランス映画はそういうことができる。

ゴダールやトリフォーのように。

ローラン:そう。完全なる自由だよね。

デック:突然、話が脱線したり。

「これは映画ですよ」と観客に話しかけたり。

ローラン、デック:そう、そう。

ヌーヴェルヴァーグもアメリカの映画に影響されて、独自な映画になりました。あなたたちの音楽もまさにそのような感じですね。

デック:そのとおり。ヌーヴェルヴァーグも僕たちも、アメリカとコネクトしていたが、距離があった。だから僕たちはアメリカの音楽にファンタジーや妄想を感じながら、大きくなった。リアルよりもね。

日本人といっしょですね。フェニックスが日本で人気があるのは、同じ感覚を持っているからでしょうね。

ローラン:そしてもう一つ、ヌーヴェルヴァーグと僕たちが似ているところは、ヌーヴェルバーグも僕たちもハリウッドのような機材を持っていないけど、エレガントな姿勢を保っていたことだね。何か違うかなと思ったら、マスター(先人)の作品を見て、作り直せるところ。ヌーヴェルヴァーグと僕たちは似ていると思うけど、僕が好きなのは初期の作品だよ。アヴァンギャルドよりも、クラシックなときのほうがいいと思う。アヴァンギャルドな部分は古くさい感じがするね。

フランス映画もヌーヴェルヴァーグ以降、落ち込んでいたのが、80年代に『ディーバ』『サブウェイ』『ベティ・ブルー』で盛り返しましたよね。いまのフランスの音楽シーンはそのときと同じような熱気を感じるんですが、どうでしょうか?

ローラン:えーっと、言いにくいんだけど、僕には『ディーバ』や『サヴウェイ』のような映画はヌーヴェルヴァーグの上澄みだけで作ったような映画のような気がするんだよ。音楽で言うとMIDI以降というか。

あー、すいません。なるほど。でもフェニックスのことがよくわかりました。『サブウェイ』などの映画にはヌーヴェルヴァーグがリスペクトしたアメリカ映画への熱いリスペクトがないですよね。フェニックスはとってもフランスのバンドかもしれないけど、そこにはアメリカ音楽の黄金時代への憧れと尊敬の熱い血が燃えていますよね。

ローラン、デック:そのとおり。

フェニックス / バンクラプト! (ワーナーミュージックジャパン)
Phoenix / Bankrupt!

【最強盤】
2013年4月リリースの同作にボーナス・ディスクを付けた、来日記念盤的作品。
ディスク1にはアルバム『バンクラプト!』全曲を収録。ディスク2は『バンクラプト?』と題し、オリジナル盤収録楽曲のリミックス楽曲やデモ音源、ライヴ・ヴァージョンといった別ヴァージョンをオリジナルの曲順通りに配置。

タワー HMV Review

【通常盤】

タワー HMV

はじまる前からヒストリー。 - ele-king

 楽しくて、ダンサブルで、爆弾みたいなカタコトのライヴを見たとき、「これはトラブル・ファンクの再来か」と思ったが、しかし、カタコトのカセットテープ「今夜は墓場でヒップホップ」や配信のみのEP「MARYOKU EP」を聴くと、「これはビースティー・ボーイズの『チェック・ユア・ヘッド』だ」と思った。ラップあり、ローファイ・ロックあり、ファンクあり、パンクあり、弾き語りあり、涙も笑いもなんでもあり、彼らが言うように、「これは玩具箱」ではないか。
 カタコトには、すでに"まだ夏じゃない"という秋を歌った名曲があり、"魔力"という『楽しい夕に』の頃のRCサクセションのようなアシッドな名曲がある。たとえ惑星が地球に衝突しようと、カタコトこそ、今年の日本のブラテストホープ、ナンバー・ワンであることは間違いない。 ――野田努(ele-king)

 ジャンルは未定! でもいちおうヒップホップということで! MCとバンドとアートがフリーキーに結びつくブライテスト・ホープにしてダークホース、「カタコト」のデビュー・アルバムが今月ついにリリースされる。

 曲名やアートワークだけでも十分に伝わってくるだろう。彼らが何を好み、何に影響を受け、何をよしとしているのか。そして何かがはじまろうとしているということが……! すでにライヴを目撃している人がどのくらいいるのかはわからないが、あのバチバチと放電しているような空気感を目の当たりにすれば、まだ手垢のついていないものに触れるあの期待感を知れば、このアルバムを聴かないという選択肢は生まれないはずだ。

 はちゃめちゃフリーキーなヒップホップ・バンド、カタコトのデビュー・アルバムが2月19日にリリース! ラップをイケてるバンド・サウンドに乗せてご提供!

 これは和製ビースティー・ボーイズか? 2MC、ギター、ベース、ドラムから成るヒップホップ・バンド「カタコト」のデビュー・アルバムにしてベスト版『HISTORY OF K.T.』が2月19日にリリースされます。

 ラップにローファイ・ロック、ファンク、パンク、メタル……とさまざまな音楽性を巻き込んだ、遊び心たっぷり痛快愉快なミクスチャー・サウンド。ポップなのにアグレッシヴ、ファンキーでかつフリーキー、生音とラップのアガる組み合わせに、聴けばたちまち心踊る、100%フレッシュなごった煮チューンが詰まった堂々のデビュー・アルバムの登場です。ele-kingブライテストホープ賞も楽々かっさらう要注目バンド「カタコト」、そのポテンシャルは未知数、ご期待ください。

■PROFILE:
カタコトってなンだ!? メンバーは、 RESQUE-D(MC)、MARUCOM(Guitar)、YANOSHIT(MC)、KKC(Bass)、 FISH EYE(Drum)という映画グーニーズさながらの好奇心旺盛な謎の5人組。パーティ感を前面に出したフリーキーかつファ ンキーな楽曲群はもちろん、アコースティック・ギターに歌心が沁みる曲やピアノを大胆にフィーチャーしたスタンダードなポップスまで、バリエーション豊かで、そのポテンシャルは無限大!得体の知れないツイートや、サイトに 散りばめられた奇妙なアートワーク、メンバーそれぞれのバンド外での意外な活躍……ナゾは多いが、異端こそがポップ、色物だと思ったら大損こくのは必至です。 2014 年、カタコトが異形のマスターピースを世に放つ。今宵もバンドは気の向くまま、新たな計画を企んでる。

カタコトHP: https://katakoto.info/
カタコトTwitter: https://twitter.com/katakoto5
カタコトsoundcloud: https://soundcloud.com/katakoto

カタコト / HISTORY OF K.T.
PCD-22373
定価:¥2,200+税

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トラックリスト
1.「扉を開けてしまった男」
2.Man In Da Mirror
3.HELLO KATY
4.ハーフ&ハーフ
5.「リスからの手紙」
6.からあげのうた
7.Starship Troopers
8.夏じゃない(チルドルームサマー)
9.「殺人鬼のヒットソング」
10.Gooonys
11.デス!プルーフ
12.リュックサックパワーズ feat.VIDEOTAPEMUSIC
13.Super Natural Communication
14.G.C.P
15.「悪魔はどっちだ?」
16.ピアノ教室の悪魔
17.魔力


友川カズキ - ele-king

 復讐バーボン。私は酒場の暗がりでひとり杯を傾ける男の内面にうずまくものを思わせるタイトルにシビれながら、しかしそこに70年代的なデカダンスを見てシビれているなら、ゴールデン街で昔話に花を咲かせながらトグロまくオヤジたちと同じではないかと思ったが、友川カズキの歌を聴いて我に返った。

「花ではない 黄色が拡がってる
永遠とは 刹那のことである

とっくの昔に明日は終わった
静かならざる狂おしい夕暮れに

したたかにあおっているのは
しあさっての復讐の
復讐のバーボンのロック」(“復讐バーボン”)

 すでに終わっている「明日」のさらに先の「しあさって」のために呷るバーボンのロックは、過去の仇を討つ復讐という言葉の指向性にもかかわらず虚無に向いている。友川カズキの詩は現代詩的な方法意識をことさら表に出しはしないけれども保守的ではなく、言葉はイメージで色彩豊かに結合していくが、つねにぼくぼくとしている。そんなことはとっくのとうにわかっていたつもりだった。ところが新作を聴くたびに目がさめるのは、私のモノ忘れがひどいのもあるにちがいないが、友川カズキの言葉は歌になることでさらに凄絶さを増す。アコースティック・ギターをかかえ膝をそろえイスに坐り、ツバキを飛び散らしながら文末を食いちぎるように鋭くカブリを振る歌いぶりから一転、朗々と歌い上げる友川カズキの姿をこのアルバムを聴きながら思いだす。同時にあの舞台の上の人を食ったユーモアも。その落差に人は狂気のようなものを目のあたりにした気になり目を逸らし、その実、耳はそばだてるから歌の余韻は残る。いや、余韻などと余裕綽々とはしてはいられないおそるべき残響である。
 このアルバムにもそれがある。いままで以上に、といってもいい。『青いアイスピック』(PSF)から3年ぶり、スタジオ盤としては通算21枚目のアルバムである『復讐バーボン』は“順三郎畏怖”のアコースティック・ギターの大きなストロークからはじまる。順三郎とは戦前からモダニズム~シュルレアリスムの旗手であった西脇順三郎のことで、この曲は西脇の詩を元に友川が歌にした。友川カズキといえば、4作目『俺の裡で鳴り止まない詩』でとりあげ、後にアルバム1枚まるまる使った中原中也(『中原中也作品集』)を思いださないわけにはいかないが、友川は詩人(実作者)であるとともに一遍上人から山頭火から葛西善蔵から住宅顕信から、他者の言葉(と存在)に触発される人でもある。受け手でもあるのだ。それも流行に右顧左眄しない。『復讐バーボン』でも西脇順三郎のほかにもソニーロリンズ(“兄のレコード”)、ジャンポール(“『気狂いピエロ』は終わった”)、新吉高橋(“ダダの日”)など、人名がちらほらある。もっとも引用で何かをほのめかそうとは友川は狙ってはいない。詩に迷いこんだ他者が詩を異化するのを丸抱えしながら存在するから、ディランでもスプリングスティーンでもなく、朝靄をぬって走る滝澤正光様に私は――競輪はズブの素人ではあるけれども――胸を撃たれるのである。
 資質という、わかったようないい方をしていいかわからないが、その側面では友川カズキの音楽は変わりようがない。変わりようがないことは代わり映えしないのではなく変わらないものが不意を突いて眼前に突き出してくる。『復讐バーボン』がとくにそうなっているのは演奏のすばらしさもあるだろう。頭脳警察/シノラマの石塚俊明、パスカルズの永畑雅人、金井太郎、坂本弘道、松井亜由美といったレギュラー陣にNRQ/前野健太とDAVID BOWIEたちの吉田悠樹(二胡)、さらに2009年の友川のドキュメンタリー映画『花々の過失』で共演したギャスパー・クラウス(チェロ)を加えた演奏陣は、曲ごとに組み合わせを変えながら歌を支えるだけでなく、このアルバムでは歌をひっぱっているところもある。資料には「完全一発録りの前例を破り、初めてスタジオ・リハーサルを行った」とある。これってわざわざ特記することなんだろうかと聴く前は思ったが、特記すべきでした。これまでは歌に対して演奏は即興(的)だったので、反応が事後的―といっても、譜面に記せないほどのものなのだが、そしてそれは一部のブルースマンのやり方と同じともいえるのだが―になることもあったが、『復讐バーボン』では事前に音を合わせることで音は不即不離になっている。もちろん緊張感がないわけではない。“わかば”の坂本弘道とギャスパー・クラウスの二台のチェロによるメロディと軋み、“馬の耳に万車券”の即興空間、あるいは“夜遊び”の後奏において私は友川バラッド(ワルツ)とでも呼ぶべき一連の三拍子系の曲の大陸的な音楽性―これはまた縄文的な三上寛とは好対照だと思うが、それについては別稿をもうけたい―がすんなり腑に落ちた。
 そして『復讐バーボン』は1977年の3作目『千羽鶴を口に咬えた日々』に収録した“家出青年”の36年ぶりの盤上の再演で終わる。歌詞の一部を書き換えているとはいえ、この歌に歌われる「家出青年」の内面は36年前のこととは思えない。彼は「蒲団に潜る時『このままでええや』」と思い、「蒲団を蹴る時『このままじゃダメだ』」と思う。その煩悶は時代とは関係なく、ある世代にかぎらずとも、誰もが思いあたる節の嵌りこむ穴であるだろう。友川カズキはセルフ・カヴァーで、生きるに手いっぱいの青年の夜更けに頭をもたげる悩みと、「原発だろうと何だろうと/イヤなモノはイヤだと声を成せばいい」という問題意識を重ね合わせ、歌をなまなましくよみがえらせる。というより「『次世代のため』なぞと言うから滑稽になっちまう/『負の遺産』なぞと括るからたいがいになっちまう」と、過去と未来、以前と以後を峻別したがる人たちと、それにすらとりあわぬ人たちのおためごかしに、友川カズキは再生することで生まれる音楽のなかから、過去でも未来でも以前でも以後でもない現在から叫ぶのである。それでさえ「歌は平気でウソをつく」(“『気狂いピエロ』は終わった”)かもしれないけども。虚構がそうやって真理をつかまえることはいうまでもない。

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