「R」と一致するもの

 アイスランドのインディ・シーンが熱い? 2013年に、毎年11月にレイキャビックで開かれる音楽フェスティヴァル「アイスランド・エアウエイヴス」に行って以来、すっかりアイスランドの音楽にハマっているNY在住の沢井陽子。Randam Accese N.Y.番外編として、アイスランド・シリーズ行きます。ビョークの新作も発表されたし、アイスランド人気、日本にも押し寄せそうです。
 まずは、ジャスト・アナザー・スネイク・カルトというバンドのメンバー、ソーリのインタヴュー。アイスランド生まれで、アメリカ育ちの彼は、両国のインディ・シーンを知っています。

interview with Þórir(ジャスト・アナザー・スネイク・カルト)


取材に答えてくれた、
ジャスト・アナザー・スネイク・カルトの
Þórir(ソーリ)

まず自己紹介をお願いします。

Þórir(ソーリ):僕はジャスト・アナザー・スネイク・カルトというバンドのÞórir(ソーリ)です。エクセントリックなローファイ・サイケポップをプレイしています。https://snakecult.tiredmachine.com

どのくらいアイスランド(レイキャビック)に住んでいますか? 現地の生活について教えてください。

P:僕はレイキャビックで生まれ、子供から青年期にかけてアメリカで暮らしました。レイキャビックには5年前に戻ってきました。冬は長く気候は恐ろしいけど、家の中は暖かいので、創造的なことに集中したいなら最高の場所です。週末の夜は、知っている人全員が、同じバーでいるのを見かけます(笑)。とても居心地が良く好きだけど、アメリカが懐かしく感じるときもあります。アイスランドは、ニッチェなシーンを支持できないくらい人口が少ないけど、自分のことだけに集中出来るメリットがあります。アイスランドは不毛で、木や野生動物が懐かしく霜が多すぎます。夏のあいだ少し暖かくなったとしても、日中のある時点で温度がいきなり下がるから、セーター無しでは家から出られないです。

私は、2013年〜14年の「アイスランド・エアウエイヴス」時にレイキャヴィックに滞在し、ユニークなインディ音楽シーンと文化に魅せられました。アイスランドは、一度経済崩壊した国にも関わらず、少なくとも、同じように、経済的、将来の不安にさらされながら、活動している他の国のインディバンドたちに比べて、とても元気で活発なエネルギーがあります。それはなぜでしょうか。

P:銀行が崩壊する前、アイスランド人の生活にはバブルが繁栄していました。銀行と国民の大多数がお金を借り、無責任に投資し、その富がどこから来たのか誰も疑わなかったのです。崩壊時も、アイスランド人はそんなに貧困になりませんでした。自己破産して、自分の家や車を売った人もいましたが、食べ物に困ることはなかったし、むしろ物事は普通に戻りました。人びとは働いて借金を返さなくてはならなかったですが、仕事はあったし、社会保障もありました。
 銀行経済に失敗すると、アイスランド政府は、観光事業に力を入れはじめました。アイスランド通貨の価格が下がったので、観光客は行きやすくなりました。アイスランド自身は、魚とヴィデオゲーム以外、ほとんど生産能力がないので、外貨の流入は、アイスランド人の消費者運動に必要でした。政府はアイスランドと文化を外国に強く促進し、観光地をアピールしました。結果として、アイスランドのミュージシャンにもたくさんのサポートがあり、外国に進出することを助けてくれました。
 が、同時に政府は、近くしか見えていないことも多く、音楽会場を閉め、それをホテルや観光客のための物に建て替えました。観光客の季節には、本当のアイスランド人を、ダウンタウンで見かけることはありません。全員観光客なのです。家は、高い値段で観光客に貸されるため、夏の間だけでも、手頃な価格で住む所を見つけるのが難しくなりました。
 サンフランシスコやニューヨークで起こっていたような、同じ文化の死が、レイキャビックにも起こっているのはおかしいですね。いま、レイキャヴィックの音楽シーンは、黄昏時かも知れません。アイスランドの難しいところは、他にアーティストが行く場所が無いことです。アイスランドのアートや文化を海外に促進し、支持してくれても、住むのが難しくなって来ています。いずれは、バランスが取れるのかも知れませんが。
 音楽やアートを作るときは、やりたくてやるので、ほとんどの人は、そこにお金は絡みません。アイスランドにはミュージシャンをサポートする十分な人口はありません。退屈な大衆音楽を作っている一部の大物ミュージシャンをのぞいて、コンサートやレコードの売り上げで生活出来る人はいないのです。大多数のアーティストが、いつも金銭面で奮闘していますが、これは銀行が崩壊した前も後も、変わらないと思います。

レイキャヴィックに、マクドナルドやスターバックスがないのはなぜでしょうか?

P:経済的な理由からだと思います。他のフランチャイズは、アイスランドで経営するため、より利益を生む企業家でした。他にも、KFC、サブウェイなど多くの多国籍なチェーン店があり、ビジネスモデルを真似た地元のチェーンもあります。マクドナルドがクローズしたのは、フランチャイズのオーナーにとって、自分のハンバーガー屋でビジネスをする方が利益があったからだと思います。

アイスランドの人びとは、反グローバリゼーションを意識しているのでしょうか?

P:アイスランドは、極端な消費者優先主義者国です(ほとんどの欧米の国がそうだと思いますが、それ以上に)。グローバリゼーションを考える人もいますが、ほとんどは考えていないか、少なくとも真剣ではないです。アイスランド人は、環境や社会的に責任を追うたくさんの製品を作りますが、実際は違います。例えば、観光地のお店で売られているアイスランディック・セーターは、ほとんどが中国製で、「ファーマーズ・マーケット」なる意図的な欺き商標名で売られています。
 アメリカに住んでいたときは、アイスランド人の消費者意識に気づいていませんでした。対して、グラスルーツ音楽やアートに関わるアメリカの若者は、何かあると急速に進化します。こんなことはアイスランドではほとんど起こりません。
 アイスランドはEU加盟国ではないですが、ヨーロッパの経済地域にあります。党派の両端から見て、中道派はEUに加盟したいが、リベラル派と保守派は加盟したくないのです。中道派がEUに加盟したいのは、アイスランド政府が堕落していて、乱用を防止することで、利益を得た人びとから力を奪うからだと思います。排他的な漁業権のように、保守派はアイスランドのお金の利益を守りたいし、左翼は反グローバリゼーションの理由で反対していると僕は思います。

ビョークのニュー・アルバムが発売されましたが、ビョークはアイスランドでも特別人気があるのでしょうか? レイキャヴィックで、素晴らしいバンドをたくさん見た後では、ビョークも、アイスランドではごく普通なのでは、と思いました。

P:ビョークは伝説です。彼女は成功したポップスターであると同時に、真のアーティストで、いつもびっくりさせるような創造的な音楽を作っています。アイスランドでビョークに影響を受けていないミュージシャンを見つけるのは難しいと思います。

https://snakecult.tiredmachine.com



「Iceland Airwaves NOV 5-9 2014」レポート

 2013年に初めて行って、あまりの良さに2014年も自動的にアイスランド行きをブックしてしまった。
 ひとから何がそんなに良いのかと訊かれるが、とにかく人が温かく、街の小さいお店、大きな会場など、さまざまな場所で音楽を楽しめるところも良いし、何よりも、来てみるまで、何が起こるかわからないところにこのフェスの魅力がある。今回も、行き当たりばったりでバンドを見たが、アクシデントもありながら新しいお気に入りのミュージシャンにたくさん出会えた。

 今回は金曜日から現地入り、3日で総勢25のバンドを見た。Olena, Fufanu, Vorhees, Sin Fang, La luz, Godchilla, Unknown mortal orchestra, Ham, Anna soley, Mosi musik, Prins polo, Vok, Young Karin, Kaelan Mikla, Munstur, Spray Paint, Leaves, Odonis Odonis, Low Roar, Grisalappalisa, Perfect Pussy, Vintage Caravan, MC bjor, Just another snake cult, AmabadamA
 他にもチラッと見たバンドや、通りかかったバンドも少なくない。歩くとそこかしこで音楽が鳴っているので、音に吸い込まれるように入って行き、良ければステイ、ダメなら次。人気のあるバンドは大勢の人が入っているが、次のバンドまでの暇つぶしと言うこともある。エアウェイヴスのアプリケーションをダウンロードすると、いま何がやっていて場所がどこかなど全て把握できる。このアプリケーションが大活躍!
 以下、好きだったバンドをいくつかピックアップしてみました。

Vok
@ landsbankinn

まずはvok 。去年から噂は聞いていて、今回やっとライヴが観れた。
男2人、女1人、サックスとギター、エレクトロ、DJなど。ディストーションかかった、深い女の子のヴォーカルが良い。ビョークが生まれた町というのが納得出来る。
https://www.facebook.com/Vokband

Grisalappalisa グリサラパリサ
@gaukrinm

知り合いのレコード・レーベルの所属アーティストだったことで、たまたまキャッチしたが、すぐにエアウエイヴスのお気に入りになった。男6人組。ヴォーカル2人、サックス、ギター、ベース、ドラム、半端ないハイエナジー。キラキラのシャツを脱ぎ捨て半裸になるヴォーカル。聞けばそれがスタイルらしい。アグレッシブなフリーホイール・クラウトロック。
https://grisalappalisa.com

Just another snake cult
ジャスト・アナザー・スネイク・カルト
@ kaffbarinn

ランダムに出会ったローカル・バンド。様々なエレクトロ機材を使いつつも、ベースはローファイ・アコースティック。チェロや爪琴などの弦楽器を加えフリーキーなのにドリーミー。ライヴはドキッとさせられる面多し。
https://snakecult.tiredmachine.com

Low roar ロウローア
@gamla bio

アメリカ出身のライアンがアイスランドの引っ越して、ひとりぼっちの寂しさからこのバンドを作った。切なくて美しいレーザービームが似合うバンド。ライヴはストリング隊が美しく弦を奏で、オーケストラのようなスペクタクル。いまではビルボードまでが彼らをカヴァーするまでに。
https://www.lowroarmusic.com

Vorhees ヴォーチス
@bio paradis

NY出身のdenaのプロジェクトで、エレクトニックとギターをミックスした、サウンドコラージュ。Rachel coleyというNYのデザイナーが彼女のスタイルを担当し、ヘアリーなトップがよく似合っていた。mumのサウンドを担当していたゆかりで、9回ほど来日経験あり。只今日本語勉強中。
https://vorheesmusic.tumblr.com

Unknown mortal orchestra
アンノウン・モータル・オーケストラ
@bio paradis
会場に入るのも一苦労な人の多さ。外から覗いていたが、勇気を出して人混みの中へジャンプ。ライヴは3人編成。サイケデリックなシャープ・ソウルは、ヒップホップからインディロックファンまでを網羅し、一緒に歌っているファンもいた。イギリスのバンドだと思っていたら(なぜ?)、ルーベンは、ニュージーランドからポートランドに移住したらしい。
https://unknownmortalorchestra.com

Godchilla ゴチラ
@12 tonar

男3人組のコズミック/ドーム/ノイズ/サーフバンド。音は宇宙の様にヘビーで、来ている客は男が多かったが、ルックスが良いので、ファンが増えそう。
https://www.facebook.com/Godchillah

Ham ハム
@ KEX hostel

びっくり! アイスランドの伝説のヘビーロック・バンド。マスタード色のベスト、シャツ、パンツにシルバーのヘアーがヴォーカリスト。バンド全体がカッコよすぎて、エアウエイヴスってエレクトロが主流じゃなかった? と疑ってしまった。このショーがHAMのたった一回のエアウエイヴス・ショー。KEXPが盛り上がるのもわかった。
https://blog.kexp.org/2014/11/07/kexp-at-iceland-airwaves-day-3-ham/?fb_ref=Default&fb_source=message

ラジオ・ショーが終わっても10分ほどアンコールが鳴り止まず。アイスランドのレッド・ゼペリンは言い過ぎか?
https://facebook.com/svikharmurdaudi

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 レイキャヴィックの歩ける町の作りがこのフェスを可能にしているひとつだが、人びとの音楽に対する半端ない熱意、昼のショーは子供も参加できるしファミリーフレンドリー、10代のバンドもチラホラ、英語が通じる、人々の大酒呑み&パーティ好きで誰彼も受け入れる、と理由は様々だが、1日目で興奮がピークに達してしまうのだ。
 エアウエイヴスが終わると、人々はレイキャヴィックから抜け出し、南部やゴールデンサークル、ブルーラグーンなどの観光地、町をふらっと歩くだけで、自然の美しさに感謝し、時間がなければ近所の温水プールなど、アイスランドのアトラクションは後を絶たない。世界中からこのフェスティバルに来る人が後を絶たないのはよくわかる。何が起こるかは自分次第だが、素晴らしい音楽と感動に出会えるのは間違いない。来年は一緒にいかがですか? 

https://icelandairwaves.is

 最近、小学一年生の長女のピンク離れが著しいのです。ハーモニカ、手袋、トレーナー、何を買うにも水色を所望する。保育園時代はあんなにもピンクまみれだったのに。彼女の女友だちの持ち物も、そういえば水色ばかりです。女児のランドセルの色も昔は赤一色でしたが、近頃は水色のランドセルもよく見かけます。

「自転車を買い換えるとしたら、ピンクと水色どっちがいい?」
「ぜったい水色!」
「ピンクと白なら?」
「白!」
「ピンクと茶色なら?」
「……ピンク。つーか茶色はありえないっしょ」

 小1女子にとって、もはやピンクとは茶色よりマシ程度の扱いです。日本色彩研究所が2009年に小中学生を対象に実施した好きな色アンケートによれば、小2女子のじつに4割以上が「最も好む色」として「水色」を挙げているのに対し、ピンクは14%のみで7位どまり。さらに、小2女子の19%が「最も嫌いな色」としてピンクを挙げているのです。
〈研究1部報〉 「金銀・ダイナミック」と「水色・クリア」を好む現代の子どもたち- 日本色彩研究所

 同記事では「小学校低学年の女子はピンクを「かわいい」「子どもっぽい」「女の子っぽい」色と感じており、それよりも「きれい」で「すっきり」「さわやか」なイメージの水色を好ましいと感じているからでしょう」とその理由を推測しています。Yahoo!知恵袋でも同じような質問がいくつかなされていたので回答を総合してみると、「ピンクは子どもの色、水色はお姉さんの色」というのが低学年女子の共通認識であるようです。長女にも訊いてみたところ、「ピンクは子どもっぽい。水色は元気な女の子って感じ」と答えていました。小学校に上がると子どもは友だち同士の関係を重視するようになり、休日も親とのお出かけより友だちと児童館で遊ぶことを優先したりします。急激なピンク離れは、お母さんに庇護される子どもの世界(ピンク)を卒業し、友だちと対等に渡りあえる賢くてはきはきした元気な女の子になろう、という独立心の現れなのかもしれません。そういえば、私が小学校低学年の頃にお気に入りだったサンリオキャラクター「タキシード・サム」も、薄い青が基調でした。


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『80'Sガールズ大百科』 ペンギンのキャラクターがタキシード・サム

 80年代のサンリオにはピンクのキャラがほとんどいなかった、という話は第1回でしましたが、これも当時のサンリオがお小遣いをもらいはじめた小学生女子をターゲットにしていたからでしょう。

 もっとも、同調査によれば小5・6女子は水色に次いでピンクを「最も好きな色」として挙げています(27%)。女子小学生に人気のファッション誌『ニコ☆プチ』を覗いてみると、モデルたちはピンクを全面に出すことは避けつつも、ヘア・アクセサリーや靴などに差し色としてピンクを採用しているようです。


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 高学年になって配色のセンスがある程度育ってくると、一度は避けたピンクのイケてる使い方や、自分に似合う色相を模索するカワイイ道がはじまるのでしょう。さらに専門学校進学希望の高校生を対象とした同種のアンケートでは、ピンクが女子の好きな色で1位、嫌いな色で2位にランクインしています(『高校生白書』2007年8月調査)。この傾向は大人になっても続き、「日本女性は大人になってもピンクが好き」というイメージの根拠になっています。とはいえ中学生以降、女子の好きな色はばらけるため、1位といってもせいぜいその割合は2割前後。また、嫌いな色の上位に必ず上がる色でもあります。さらに興味深いことに、40代以上の女性では年代が上がるとともにピンクへの嗜好が薄れていくのですが、それにともない嫌いな色の上位からもピンクが消えるのです(色についてのアンケート・ランキング - @nifty何でも調査団)。ピンクはどうして、こんなにややこしい色になってしまったのでしょうか。

 平成7年から8年にかけて、世界20か国の学生5,500名を対象に色のイメージを訊き、その国民性の違いを調査した大規模な研究があります(『図解世界の色彩感情事典──世界初の色彩認知の調査と分析』千々岩英彰)。この調査によると、危険はほとんどの国で「赤」、孤独は「黒」または「暗い灰色」といったふうに、多くの色イメージが国境を越えて共有されていることがわかりました。女性をイメージする色は日本を含めた多くの国で「赤」「ピンク」などの暖色系が選択されています。試しに世界各国の言語で「母の日」と入力しGoogle画像検索をしてみると、多くの言語でもピンク、赤、薄紫といった色がおもに選ばれています(例外はタイの水色など)。とくにピンクは多くの人に母親、生殖、赤ちゃん、幼さをイメージさせるようです。ドイツ生まれのシュタイナー教育でも、子宮の中をイメージさせるとして幼児の生活空間をピンク色で覆うことが推奨されています。また、ピンクは国際的に乳がん早期発見キャンペーンのイメージ・カラーでもあります。

 一方で、「献身」をイメージする色は国によってまちまちです。中国やロシアは国家を象徴する赤、欧米ではキリスト教のシンボル・カラーである青、そして日本のみがピンクでした。調査をまとめた千々岩英彰教授は、日本人にとって献身といえば母親だからなのではないかと推察しています。また、「家庭」をイメージする色は日本ではピンクという答えが少なくなく、東アジア各国も上位を暖色系が占めたのですが、欧米では寒色系も多くランクインしています。家庭を守るのは母親の務めと見なされがちな東アジアに比べ、欧米では父親の関わりも大きいということなのでしょう。

 この調査にはありませんが、日本における「ピンク」はエロの代名詞でもあります。「ピンクサロン」「ピンク映画」「ピンクチラシ」、かつては「桃色遊戯」「桃色映画」なんて言葉もありました。ランダムハウス英和大辞典には、英語の「pink」には日本の「ピンク」に含まれているようなわいせつな意味はなく、わいせつを意味する色は「blue」であると記されています(例:ブルーフィルム)。なお、中国ではわいせつといえば黄色、スペインでは緑、イタリアでは赤だそうです。ピンクが女性を象徴する色だとしても、母親や幼さを想起させる色は直接的なエロとは結びつきづらいのでしょうか。

 母性、幼さに加えて献身にエロ。日本におけるピンクは意味がてんこ盛りです。この意味の重さは、日本の女性が負っている期待の重さであると考えても、さほど外れてはいないでしょう。一言でまとめると「客体であれ」という期待です。これはおそらく、「母と子の世界」「男社会」が分断された高度成長期以降に量産された、父性不在の母子密着育児の産物ではないかと考えています。世にあふれるピンクとは、主体である自分を居心地よくするためだけに存在する客体としての女性性の象徴です。しかしそのピンクは、大半の日本人女性にとって小学生のときに「幼稚でダサイ」と卒業した「ダサピンク」なのです。さらには、独身時代には性的対象として最適化された振る舞いをしないと嘲笑され、母になってからはベビーカーやスマホを使うだけで「母親のくせに楽をしやがって! 母性が足りない!」とバッシングされる女性にとって、自分たちを追い詰める抑圧の象徴でもあります(そう考えると、その手の期待が薄まる中年期以降の女性ではピンクへの愛憎も薄れるのは当然ですね)。

https://www.jnfl.co.jp/topics/file/20150113-1.pdf
これぞダサピンク現象の究極形態、と一部で話題になった
日本原燃の「女性のための放射線講座」チラシ。放射線で女子力アップ! 

 こう書くと「そんなややこしいことを考えているのは一部の特殊なフェミ女だけだろ? 大半のまともな女は、俺たちが期待する〈女性〉役割もダサピンクも楽しんでいるはず」と思われるかもしれません。そこで、いまどきの若い女の子の一人称「ウチ」に注目してみましょう。関西人でもない若い女子が一人称で「ウチ」(書き文字では「ゥチ」)を名乗る。この現象が知られるようになってからずいぶんたちます。上限は二十歳前後のお嬢さんから下限は幼稚園児まで。2004年の読売新聞の調査によれば、アニメ『おジャ魔女どれみ』(1999年~2003年)の登場人物の一人称を当時の幼稚園児が真似したことから全国に広まったとのこと。ご多聞にもれず、長女のクラスでも女子の一人称は「ウチ」ばかりだといいます。不思議に思った私はこんなふうに訊いたことがあります。

「どうして〈私〉って言わないの?」
「〈私〉は恥ずかしい! ウチに似合わない」
「どうして〈私〉が恥ずかしいの?」
「〈私〉は……〈女性〉って感じがする」
「〈ウチ〉は〈女性〉じゃないの?」
「〈ウチ〉は〈元気な女の子〉って感じ。ほら、ウチ元気いっぱいでしょ? (ガッツポーズ)」

 「私」に違和感を感じて、変わった一人称を使う現象はいまにはじまったことでもなく、80年代の文化系女性の間で一人称「ぼく」が流行したことがありました。ただし「ウチ」を名乗る少女たちは、文化系でも「フェミ女」でもありません。それぞれに独立した人格を持った複数の女の子が戦う女児向けアニメ『セーラームーン』のテレビ放映がはじまったのが1992年。同じく複数の女の子が戦う『プリキュア』シリーズは現在も続いています。女の子にもそれぞれ人格があり、主体になりうることは、幼少期よりこれらのアニメになじんでいた若い女性にとってもはや自明のことです。モテや大人の価値規範に従順なピンクの女(しずかちゃん)としてちやほやされるか、モテではなく自分の夢に向かっていきる非ピンクの女(ジャイ子)としてモンスター扱いされるしかなかった旧世代の少女のような屈託は、そこにはありません。いわば彼女たちは、主体になりうるピンク(イケピンク)を知ってしまっているのです。ですから女児アニメを卒業するやいなや世間にあふれる客体としての女性イメージ(ダサピンク)にぶつかって違和感を感じつつも、「元気な女の子」という主体としてのセルフ・イメージを「ウチ」に込めて守ろうとします。そうした試行錯誤ののちに、主体としての女性性を象徴する自分なりのイケピンクにたどりつくのではないでしょうか。


年始にTwitterで盛り上がった「わたしのイケピンク」ハッシュタグ。客体としての女性性は1種類だが主体としての女性性は人の数だけあるから「わたしの」なんですね。

イケピンクを使いこなすニッキー・ミナージュ。ふるえるほどに主体的……!

 次回以降は、海の向こうのイケピンクについても考察してみたいと思います!

Letha Rodman Melchior - ele-king

 昨年秋に癌によって55歳の生涯を閉じた音楽家、リーザ・ロッドマン・メルシオ。晩年はとくにノイズ、アンビエント、ドローンと、アブストラクトなサウンド・アートを追求し、際立った作品を遺した。ベスト盤でも発掘音源のコンピレーションでもなく、前作『ハンドブック・フォー・モルタル(Handbook For Mortals)』(2013)に次ぐオリジナル作としてリリースされた本作『シマリング・ゴースト』は、その名のとおりきらきらと──グルーパーやジュリア・ホルターや、メデリン・マーキーにエラ・オーリンズなど、アンダーグラウンドの突端の強く瑞々しい才能たちとまるで違わぬ輝きを放っていて、驚きと悼みの念に打たれてしまう。
 
 過剰なコンプによって結界のように展開されるメルシオの音響世界には、なるほど人ならぬ影ばかりが息づく。先述のエラやグルーパーばかりではなくハウ・トゥ・ドレス・ウェルの初期のプロダクションにも近い。「ウィッチ」と呼ぶかどうかはともかく、“Metius Fabricius”や“Taurus Mountains”のように、一方に電子音楽の黎明期を彷彿させる曲がある一方で、昨今トレンドの諸ワードを当てはめたくなるその現役感は、彼女の年齢を考えずとも畏敬すべきものだ。闘病生活は2011年からつづいたというが、ソロ名義でのリリースはその少し前からはじまり(2008年にハンドメイドのカセット作品などをリリースしている)、ちょうど2000年代末からいまにいたるアンビエントやドローンのモードが浮かびかがっている。そもそもが柔軟な人なのか、計算があるのか天然なのかと判じることはできないが、とても自然にいまという時間を受け入れておられたのだろう。この作品に刻まれているのは、年輪や円熟ではなく、またその否定でもなく、まして回顧や悔恨などでもありえず、時間が生きて動いたり止まったりする、その所作、その音だ。そんなふうに感じられる。

 メルシオ自身はピアノに管にギター、テルミンなどなんでもこなすマルチ・インストゥルメンタリストだが、ハープについては、ハープ奏者のメアリー・ラティモア(Mary Lattimore)を招いている。ハープはピアノとともに、彼女の音のテクスチャーを場面場面で色づける変数として大きな役割を負うもので、これらが出てくると、とくに彼女の肉声を錯覚する。旋律やハーモニーを成すものとしても、それは彼女のなかの線的な感情──メッセージに近いものとして感覚される。死期を自覚する中で作品を生む、遺作になることがわかっていて作品を編むというのはどんな心持ちだろうか。そんなことは音に接する上では不要な情報で、むやみに劇的な解釈によって作品をゆがめるなという向きもあるだろうけれど、筆者が最終的に本作を購入したのは、ひとえにその想像のなかに愉しみと悦びとを得ようと思ったからだ。フィジカルで手に入れたい作品とそうでもないものとの差は、私にとって装丁や作品の格の問題というよりも、その他人に寄せる曖昧な空想をすこしでも確信し悦びにするための補助となる、遺物のようなものかどうかということかもしれない。趣味のいいことだとはいわない。けれど『シマリング・ゴースト』には、たしかに彼女のゴーストとしての感触と、彼女の未来としてのフィジカルを感じられた。

ookubofactory初作品に多数のコメント! - ele-king

 ookubofactoryの初作品にたくさんのコメントが寄せられている。こんなに祝福を受けるookubofactoryとはどんなバンドなのかというと、トクマルシューゴが参加していることでも知られるGellersや、前野健太とdavid bowie たちでベーシストを務める大久保日向が率い、ハヤシ(Gt./nhhmbase)、岡崎英太(Ba./ex:YOMOYA)、ヤノアリト(Dr./H Mountains)といった名うてのミュージシャンたちが集う「オルタナティヴ・ホームメイド・ロック・バンド」。力ある演奏者たちが生み出すホームメイドな空気感が、おのおのが短編のようにいきづくこのささやかなアルバムとなった──リリース日である2月18日に先んじて本作が販売されるというイヴェントにも足を運びたい。

■ookubofactory  『ホームワーク』  (P-VINE)

 トクマルシューゴも参加するガレージロックバンドGellers、そして、前野健太とdavid bowie たちでベーシストを務める大久保日向率いるバンドがookubofactory。泣きのメロディと意外性の詩満載の大久保の曲に、ハヤシ(Gt.、nhhmbase)、岡崎英太(Ba.、ex:YOMOYA)、ヤノアリト(Dr.、H Mountains)、といった界隈の実力者が集まり、良質なUS インディーロックからの影響を感じさせる作品『ホームワーク』は生まれた。
宅録感、箱庭感のある全10 曲からなる短編集のようなアルバム。アーティスト写真は大森靖子の写真集も上梓した金子山が手掛ける。

■アルバム・ダイジェストはこちら!
https://soundcloud.com/ok_kojo/uuczregqjiwn

■推薦コメント

ookuboFactoryとして大久保日向が初ソロアルバムをリリース。
本当にかなり良くて、その理由が幼馴染みだからか知らないけど感動。
何年一緒にいても彼のことは何もわからない。――トクマルシューゴ(twitterより)

「とめられないぜ オレ ずっと アメリカ」と聴こえる歌詞が一瞬ロック、と思いきや気だるい。アルバム通してこの気だるさがまどろんでいてペシッと叩きたくなる。――前野健太

インディー大航海時代をゆく大久保船。見習いでいいんでおれも乗せてください!――菅原慎一(シャムキャッツ)

大久保くんの創るサウンドは鋭利で重くてかっこいいなといつも思うんだけど、彼が特異なのはそこに哀愁や恥じらいを感じさせてくれるところ。歌詞もよくよく聴くとフォークみたいでなんだか泣けてくるし。面白いね。大久保くんに、愛しさに似た感情が沸きました(恥)。――あだち麗三郎

大久保日向のうたはドライで底知れぬ不気味さを持っている。叙情的で轟音且つ緻密なバンド・サウンドと相俟って、この先まだ誰も行けていないところまで行ける気がします。それとまた大久保家で餃子パーティやろうぜ。――吉田悠樹(NRQ)

本気になったお父さんの背中は逞しく、優しく、丸い背中をパンと叩く。
裸のオオクボくんはちと気持ち悪いけど、とても心に響きました。――シャンソンシゲル(ゲラーズ)


今じゃすっかり姿を消した、くだらない駄洒落と下ネタと思い出話でげらげら笑う朝焼けの景色なんだけど、ついつい同居しがちな切なさが一切漂っていない。
日本人離れした天然の楽観主義。余裕のダンディズム。
馬鹿どもが大好きなめんどくさいの対極にあるロックンロールです。最高です。――田代幸久(ゲラーズ)

小さな沢山の 日向くん が蠢いて 大きなお城を 築いてる。――三輪二郎

謎の多い男、大久保くん。の、謎のCD。これで謎が解けるかと思いきや、さらに謎が深まるばかり。大久保くん……。謎だ……。――pop 鈴木

何もない荒野でやけっぱちになりながらキラキラした何かを生成するような、やるせなく愛おしい黄昏ポップ作品集『ホームワーク』。疾走感溢れるライヴ感はそのままに、Lo-Fi で温かみのある本作、是非期待してお待ちください。

■ookubofactory HP

https://ookubofactory.tumblr.com/

■LIVE INFORMATION

ookubofactory Presents 『factory 5』
〜ookubofactory 1st album「ホームワーク」先行販売〜

2015/2/10(火) @ 下北沢three
open 19:00 / start 19:30
ADV:¥1,500(+1D)/DOOR:¥2,000(+1D)
w/ GOUPIL AND C / 石井ナルト(Qomolangma Tomato)

ookubofactory Presents 『factory 6』
〜ookubofactory 1st album「ホームワーク」発売イベント〜

2015/5/15(金) @ Shibuya O-nest
open 19:00 / start 19:30
ADV:¥2,300(+1D) / DOOR¥2,800(+1D)
w/ elephant and more...

【RELEASE INFORMATION】

ookubofactory / ホームワーク
品番:PCD-93875
定価:¥2,300+税
Release: 2015.2.18
Tower HMV Amazon

収録曲
1. 春風
2. アメリカ
3. エリックさん
4. みんな正しい
5. アルバトロス
6. ニワトリ
7. 待合室
8. 終わりからの始まり
9. やらなくちゃ
10.夏合宿


 初音ミクに扮したレイヤー“るしゃ” を加えた初音階段、アイドル・グループBiSとの合体バンドBiS階段など、アニバーサリー・イヤーである2014年に向けひたむきにのぼりつめたキング・オブ・ノイズこと非常階段の、35年にわたる歴史をソウカツするドキュメンタリー・フィルム。この映画は2010年の『非常階段 A STORY OF THE KING OF NOISE』と一昨年の『非常階段ファイル』、2冊のヒストリーブックを元にJOJO広重はじめメンバーへのインタヴューと貴重な記録映像で構成予定。しかもその制作費はクラウドファウンディングで募るという。詳細は以下のリンクをご覧いただきたいですが、パトロン(出資者)へは映画のエンドロールへの名前掲載、オリジナルグッズの進呈から自宅への出張ライヴといった、ご近所迷惑すれすれのビッグな特典ももりだくさんだ。
 監督は『太秦ヤコペッティ』や、一連の風営法報道でも話題になった『SAVE THE NOON』を撮った宮本杜朗。1981年生まれの映画監督と、彼の生まれる前から活動する重鎮ノイズ・バンドによるアルケミーは、字義どおりいまだ観たことのない映画の誕生を約束している。ここはひとつ、このプロジェクトに噛んでみるにしくはないじゃないですか!

■こちらから
https://camp-fire.jp/projects/view/1407

 みなさんボンソワール。
 今日のお題はシャルリ・エブド事件。この件について話そうとしても自分の中でどうにも整理がついていないので混乱してしまうのだが、私が理解したことを私なりに書いてみようと思う。
 まずはシャルリ・エブドという週刊紙について。個人的には事件まで聞いたこともなかったが、40年以上続くその風刺のスタイルは決して大衆にウケるものではなかったという。なにしろシャルリ・エブドの前身、風刺雑誌ハラキリ(ええ、腹切です)のスローガンが“journal bête et méchant=バカで意地悪な雑誌”である。彼らはその攻撃的とも言える挑発の姿勢を最初からはっきりと打ち出していた。その遠慮なさ、そして下品さは多くの人が眉をひそめるものだったが、宗教、政治などすべての体制に等しく楯突き茶化すことによって疑問を呈する、というのがその姿勢だった。日本人の私には、そして今となっては彼らの茶化す姿勢が風刺なのか中傷なのかをフェアに論じるのは困難だが、編集長をはじめ今回殺害されたシャルリ・エブドの編集者やイラストレーターたちは皆人道主義者だったという。そして彼らの葬儀はまるでコミュニスト集会の様相を呈していた。

 フランスインテリ層の傲慢なのかもしれないが、彼らの認識は「彼らのやり方に必ずしも賛成するものではないが、彼らの思想は絶対的に人種差別的ではなかった」というものであることは確か。公称発行部数も45,000部と決して多くなかったこの風刺週刊紙は、小さいながらも多くのフランス人にとって報道の自由のシンボルだったわけだ。
 私は個人的にアメリカによる「世界の警察」的な絶対的道徳感に馴染めなく、そのこともフランスへの愛着に繋がってきたのだが、社会党員の友人による「世界人権宣言はフランス憲法を参考にしていて、以来、フランスは人道国家だと自分たちでは自覚してる。そして人道的な問題は、異文化、異宗教、自分たちとは異なったものだからといって放置はできない」とシャルリ・ エブドの風刺を通しての問題提起を正当化する姿を見て、フランス人もそのような絶対的道徳感を持っているのだと気付かされた。なにせ世界征服を本気で夢見たナポレオンの国である。少なくとも人道問題には一過言あると世界に向かって主張したいのも理解できる。
 また、今回の事件でフランス人に大きなショックを与えたひとつの要素は言論の自由がおびやかされるかもしれない、という恐怖だったようだ。18世紀反権力の哲学者ヴォルテールが言ったとされる「私はあなたの書いたものは嫌いだが、私の命を与えてもあなたが書き続けられるようにしたい」との名言があるように、フランスでは報道、言論の自由は聖域であり、それがいかなる形を取ろうとも尊重されるべきだとされている。先述の蒸し返しになるが、どこまでが言論の自由であり、どこからが中傷なのか、フランス人には明確な判断基準があり、シャルリ・エブドはそのOKライン内だったわけだ。今回の360万人の追悼集会はそのような言論の自由が脅かされることへのNonという意思表示がひとつの目的だった。
 また、今回のシャルリ・エブドへの襲撃、惨殺は明らかにテロリスト側(それがどの程度国際組織的意図があったかはまだわかっていない)が、下品ながらフランスの言論の自由と人道主義の小さな(大きな組織ではなかったということも重要)シンボルを叩き潰すという挑発であり宣戦布告であったことは明らかだ。そして先の追悼集会はその挑発に対するNonでもあったわけだ。
 ちなみに〈エド・バンガー〉や〈マーブル〉、〈サウンド・ペリグリノ〉といったパリのエレクトロ・レーベルのアーティストたちもデモに参加したそうだ。私の周りだけでもこの集会に参加しなかった人はひとりもいない。


テキ・ラテックス(元TTC)

 最後に信頼できる友人でありアーティスト、テキ・ラテックス(元TTC,現サウンド・ペリグリノ)の言葉を紹介して終わりたい。彼はアメリカ・ツアー中で事件も追悼集会もパリで体験はしていない。そして今フランスでシャルリ・エブドに関して逡巡した思いを語るのは大変勇気がいることだということを付け加えておこう。
 「最初に言っておきたいのは、この事件への思いは僕自身100%自信を持って白黒つけられていないということ。でも今思っているのはこんな感じ……。もちろん当然テロには反対だし、少しの正当性もあの事件にはない。でも僕にはこれが単純な宗教の問題だけでも、言論の自由に対する脅威だけでもないように思える。そしてこの事件で反宗教的な立場を取ることにどうしても疑問を感じてしまうんだ。僕は無神論者だけど、他の人の信仰心は尊重する。もちろんたとえばサウスパークのように揶揄することはOKだと思うけど、僕は繰り返し同じ人種(*注釈この場合アラブ系)や宗教が風刺され批判されることは、差別的な風潮に一役買っていないとは言えないと思うんだよ。シャルリ・エブドに起きたことは本当にひどいけれど、それに対する回答がさらなる風刺であり、”私はシャルリ”であり、イスラム教を非難することであるっていうのはやはりひどいことだし、そこにさらなる反動が生まれるんじゃないのかな。どうかな、違うかな……」

*フランス人の謎の行動を解明する連載、山田蓉子の「ハテナ・フランセ」は紙エレキングで絶賛連載中。

戸川純、6連続ライヴ! - ele-king

 紙エレキングの連載は次の号もありません! そうです、絶賛休載中の戸川純が本業に身を入れ、2015年は頭からステージで飛ばしまくります。いろんな企画が目白押しです。2015年最初は戸川純に「パンクの先生」と呼ばれる久保田慎吾とドッキング。一時はタッキー&翼までカヴァーしようかと思ったほど選曲に凝っているそうです(フライヤーではナイロン100%で撮られていた写真も大公開)。続いてジム・オルークの新バンドと対バン、5月には大槻ケンヂの電車とも対バンです)もしかして映画『いかしたベイビー』以来の顔合わせでしょうか)。昨年は非常階段やヒカシューへの客演がどれも評判を呼ぶなか、同世代との対バンはほとんどなかったので、いずれも貴重な組み合わせとなるでしょう。
 また、3月31日には、毎年恒例となったバースデイ・ライヴも行われます。前回同様、ゴスロリ大臣、稲田朋美もぶっ飛ぶロリータ・ファッションを今年も更新か、それとも…(安部政権下のため自粛)。4月には前回、好評をもって迎えられた沖縄と金沢にも飛びます。これじゃー、当分、連載は再開しないな…


Panda Bear - ele-king

木津毅

 ここのところティム・バートンの過去作をまとめて見返していたせいか、パンダ・ベアの新作をバートン作品と切り離して聴くことができない。このアルバムを聴いていると、脳裏に『シザーハンズ』や『スウィーニー・トッド』のジョニー・デップが現れる……。いや、パンダ・ベアはゴスでもないし、ファンタジーに執着しているわけでもない。が、このアルバムは音のヴィジュアル志向とでも言おうか、とてもカラフルな色づけが施されている。子どもっぽい感性で独自の死生観に立ち向かって行ったらキッチュな世界が立ち上がっていた、という感じか。インナースリーヴで死神と対峙する彼、ノア・レノックスのイラストを見ていると、そこにはなにか、童話やファンタジーを基にした映画のようなイマジネーションが広がっているように感じる。タイトルがなんといっても秀逸で、脳内では反射的にこう日本語に変換される……『パンダさんクマさん しにがみにであう』。

 アニマル・コレクティヴ、ひいてはパンダ・ベアの足取りとは、21世紀におけるある少年(たち)の冒険譚だったのではないか。それは『トム・ソーヤーの冒険』的な腕白なものではなくて、もっとこう頼りなく、どこかしら控えめで、空想的な……自分を含める多くの人間が「逃避的な」と形容したそれである。だからこそ、インターネット時代のか弱いベッドルーム・ポッパーたちを繋ぎとめ、ディケイドの一大潮流を生み出したわけだが、本人(たち)はどこまでもマイペースに自分たちの遊び場を守ってきた。その遊びはアメリカという国においてはおよそ男性的だったりタフだったりする要素に欠けていたが、あまりにも本人たちが楽しそうだったため、みんな真似せずにはいられなかったのだ。
 冒険譚、といってもパンダ・ベアのソロ前作『トムボーイ』におけるテーマのひとつは父親になることで、そこで繰り広げられていたのは子どもっぽさや頼りなさを片方で抱えながらも大人になることへの試みであった。あらためて言うまでもなく父というモチーフはじつにアメリカ的なものだが、パンダ・ベアはそのステレオタイプに(おそらくは無意識的に)逆らっていた。強くたくましい父親にはなれない、けれどもなんとか声を出して、「僕を頼っていいんだよ」と告げること。わたしたちがパンダ・ベアのスウィートな長音に象られた歌を応援したくなるのは、自分の居場所をどうにか見つけるのに懸命な子どもがやがて年を取り、成長「してしまう」ことでどうにか外界に向かって行くドキュメントをそこに見出していたからではないか。

 だとすれば『しにがみにであう』は、その続編である。音としては『トムボーイ』よりもアニコレの『センティピード・ヘルツ』との連続性を強くしていて、サンプリングを中心にしたという音作りはノイジーで、音々にそれぞれ強い個性が与えられている。“ミスター・ノア”のいかにもな無邪気なメロディ、“ボーイズ・ラテン”のトリッピーなヴォイスの左右からの応酬を盛り上げるのは、間違いなくそこにわらわらと集まってくる「変な音」の群れである。プロデューサーのソニック・ブームとのやり取りがよりこなれてきたのもあるだろうし、ダブにインスパイアされたという録音での実験が大いに生きている。いっぽうでパンダ・ベアのアンビエント志向を打ち出しているなかでの白眉は中盤、“トロピック・オブ・キャンサー”。甘い夢の調べが8割、その隙間に不穏さや不気味さが2割挿しこまれる、まさに優れた児童ファンタジーのようなドリーム・ポップだ。
 その「キャンサー=癌」が癌で死んだ父親のことを示しているのではないか、ということはすでに指摘されているが、僕はなおさらティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』を思い出さずにはいられない。父親の死という、時間を経ることで訪れる残酷な現実を前にしてファンタジーを持ち出さずにはいられなかったその映画と、“トロピック・オブ・キャンサー”の甘い響きはとても近いところにあるように感じるのだ。『PBMTGR』ではこれまでのパーソナルなモチーフをやや離れ、より普遍的なテーマをもった歌詞を目指したという。それでも“ミスター・ノア”などはじゅうぶんパーソナルだと思うが、たしかに抽象的な言葉が増していて、なるほど、さらにパンダ・ベアが外界に歩を進めたのだと見なすことができる。
 「お前はずっと中にいる/こんなにやさしく/眠っている幼い男の子のように」(“プリンシペ・レアル”)……そうだ、パンダ・ベアはもうその男の子がどこへも行かないことを知っている。だからあとは冒険に出てしまえばいい。たくさんの奇妙な音の登場人物たちを引き連れて、しにがみ=避けられない変化に会いに行く。このアルバムは胸がワクワクする前向きさに貫かれていて、少しばかりキッチュで、そしてどこまでもキュートだ。

木津毅

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野田努

 ホント、たんなる偶然だが、年末帰省したときに入った中古レコード店で見つけて、年明け最初に聴いたレコードがブライアン・ウィルソンの『スマイル』だった。あらためて「あー、つくづくこれってアニコレ……、いやいや、アニコレとはつくづくブライアン・ウィルソンなのだな」と思った。その少し前に初期の大滝詠一を聴いていたことが無意識のうちに自分をその衝動買いへと導いたのだろう。
 そう思えば、ブライアン・ウィルソンを起点に1970年代大瀧詠一とアニマル・コレクティヴは線でつなげることができる。いやいや、できない、いや、でき……まあ、どっちでもいいのだが、いろんな国のいろんな場所にいろんなリスナーいて、いろんな音楽を楽しんでいる現代を生きるアニコレには、良くも悪くも、何が何でもポップ・ソングを作らなきゃならないというプレッシャーも、オブセッションもない。歌を聴かせるというより、彼らは音響を聴かせようとしている。お気楽なものである。

 そして実際のところ、まったく、想像以上に、ずば抜けてお気楽だった。ぜひCDショップで現物を手にとって見て下さい、このアートワーク。黒や灰色やシックな色彩が主流の今日において、かつてのスペクトラムないしはボアダムスを彷彿させるような、目がくらむほどカラフルで発色の良いサイケデリック、時代のなかで浮いている妖しげな別世界への切符──それは見事に『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』を象徴している。ようこそ虹色の世界へ。
 もっともこの色彩豊かなオプティミズムは、今日のトレンドと言えない。そもそも彼らは、時代を読むどころか、もう、自分たちの好きなことを徹底的に追求している感じだ。
 また、ソニック・ブームとパンダ・ベアのミキシングのセンス、方向性、コンセプトは、キング・タビー的と言えない(橋元優歩のインタヴュー記事を参照)。タビーは骨組みだけ残すという意味で「レントゲン音楽」と呼ばれたほどの引き算音楽の創出者だ。あらたに音を加え、音に遊んでいる感覚は、むしろリー・ペリー的だ。ことパンダ・ベアは、ポップスとしての体をなすかなさないかのきわどいところにまでリヴァーブをかけるし、ドラッギー・サウンドでありながら歌のパートが多すぎる。

 ……などと書いているとケチをつけているようだが、違う。誤解しないで欲しい。『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』は予期せぬ、喜ばしい不意打ちのようなアルバムなのだ。パンダ・ベアとソニック・ブームの浮世離れしたサイケデリック・サウンドは、そんなものには興味はなくしつつある五十肩に悩む中年男もその気にさせるほどの、鮮やかな色味を帯びている。このアートワークのように。灰色の音楽ばかりを聴いていたベッドルームを明るく照らす。子供の笑い声のように、あまりにも明るすぎる。

 ソニック・ブームとの共同作業もよりスムーズになったのだろう。音響的な快楽において、『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』は前作以上にパワフルで、スリリングな作品になっている。2曲目の“ミスター・ノア”はハードにトリップするる“サージェント・ペパー~”だし、メロディアスな“クロスワーズ”や“セルフィッシュ・ジーン”、電子仕掛けのシド・バレットと言いたくなる“ボーイズ・ラテン”などなど、チャーミングで、強力な楽曲が並んでいる。悪戯めいた細かい効果音、ソニック・ブームのエンジニアリングも、大胆かつキャッチーでバランスが良い。
 最高の瞬間は、8曲目の“トロピック・オブ・キャンサー”だ。押し黙ってしまうほど美しい、彼にしか歌えないこのバラードを聴くためだけにアルバムを手にする価値はある。とくに初期の、ギターを弾いていた頃の彼が好きなオールドファンにはたまらない曲だが、もう1曲、注目すべきユニークな曲がある。クラシカルなピアノ・ループと電子ノイズが巧妙に交錯する10曲目の“ロンリー・ワンダラー”だ。10年前の陶酔的なチルアウト“ザ・ソフティスト・ヴォイス”が確実にアップデートされている。

 グルーヴィーなベースラインに導かれる“カム・トゥ・ユア・センシス”を聴けば、彼が2007年の『パーソン・ピッチ』のインナーに、ムーディーマンやロバート・フッドといったブラック・ハウス/テクノのプロデューサーの名前を記していたことを思い出す。クラブ・ミュージックからの影響は、“プリンシプル・リアル”のような曲にも表れている。
 アフリカ系のディアスポラは、よく辞書を欺く。与えられた言葉の意味を反転させる。マイケル・ジャクソンの「I'm bad」は「俺は不良」ではない。「俺はいけてる」と訳す。Pファンクの「give up the funk」は「ファンクを諦めろ」ではない。「ファンクは終わらない」というニュアンス。『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』は、どこをどう聴いても「死神」ではない。「こんにちわ。天使」だ。悪魔的なまでにアシッディではあるけれど、しかしやはりどうしようもなく、童話的だ。

野田努

The Pop Group - ele-king

 サヴェージズが引き金になったのか、スリーフォード・モッズが風穴をあけたのか、モリッシーが背中を押したのか、まあとにかく、「パンク」が帰ってきつつある……のかも? あるいは、リップ・リグ&パニックが再発されたり、90年代のマッシヴ・アタックがリヴァイヴァルしたり、まあとにかく、ザ・ポップ・グループが35年ぶりに新作を出すのは、わかる。
 ファンにとっては、マーク・スチュワート、ブルース・スミス、ギャレス・セイガー、ダン・カトシスの4人が一緒にスタジオに入って録音したという事実に感慨深いものもあるだろう。が、ザ・ポップ・グループはノスタルジーをはねのける。バンドのヴォーカリスト、マーク・スチュワートといえば、2年前のソロではいち早くブリストルのヤング・エコーのカーン、あるいはファクトリー・フロアといった若手を起用して、「さすが!」と周囲を唸らせた人でもある。だから今回もまた……と思いきや、なんと、プロデューサーはエレクトロでならしたPaul Epworth。これも興味深い組み合わせだ。

 ザ・ポップ・グループとは、ポストパンクにおけるジャズ・ファンク・ダブの壮絶なハイブリッド、ブリストル・サウンドのゴッドファーザー。「ウィー・アー・オール・プロスティテュート」や「いったいいつまで我々は大量殺戮をやり続けるのか?」は、メッセージ的にも古びていない。昨年は、ザ・ポップ・グループの未発表音源集『キャビネット・オブ・キュリオシティーズ』もリリースされている。
 ここに、35年ぶりの新作『シチズン・ゾンビ』をひっさげて、ザ・ポップ・グループのミュージック・トレイラー公開!

THE POP GROUP CITIZEN ZOMBIE (Album Trailer) 【日本語字幕版】



■ザ・ポップ・グループ、初の来日単独ライヴ!
3月1日(日曜日)
@恵比寿リキッドルーム


The Pop Group
CITIZEN ZOMBIE
ビクター(2015年2月25発売予定)
Amazon


موريس لوقا - ele-king

 文章は読めども姿は見えない忍者のようなブレイディみかこさんとは対照的に、盆暮れにはきちんと東京に舞い戻ってくる参勤交代のような山田蓉子を招いて、江戸お庭番衆のような保坂和志が新年会を開いてくれた(山田蓉子は紙版『ele-king』で「ハテナ・フランセ」を連載中。パリのテロ事件は彼女の家から15分の地点で起きたらしい)。保坂さんの新刊『朝露通信』を読んでいると、知りたくもないのに、山梨について異様に詳しくなってしまい、その知識の使いどころに困り果ててしまうというのに、その日も山梨についてさらに細かすぎるエピソードがテーブル狭しとあふれ出していた。そのなかにひとつ、気になることがあった。山梨は人口もそう多いわけではなく、いってみれば狭い場所に人が押し込められているようなイメージだったのに、少し離れた場所に行くと文化圏が変わってしまい、おそらくはいろんな場所や方向から来た複数の集団が共存してきた場所だというのである。全体を貫く山梨性というようなものも長い年月の間には醸成されてきた例もなくはないのだろうけれど、しかし、ベースにあるのは異質な集団が寄せ集まったサラダ・ボウル社会だと保坂さんの言葉は翻訳できる。僕は人種ジョークが好きで、ベルジャン・ウォークだのタイタニック・ジョークを愛してやまない。編集部にはなぜか石川県出身が数人いるために、ことあるごとに石川県について……(以下、安部政権下のため自粛)。ヘイト・スピーチが困るなーと思うのは、こうした人種ジョークが言いにくくなり、さまざまなローカルに対する関心が押さえつけられてしまうからである。べつに僕はベルギーや石川県が憎くてジョークを言いたいわけではない。むしろ、関心を持ったのである。『ヘタリア』を見て神聖ローマ帝国が頭から離れなくなってしまったように……(ちなみに保坂さんの家は閑静な住宅地にもかかわらず舛添都知事の家が近いため家の前をヘイト・スピーチの行列が通り過ぎていくらしい。そりゃあ、山梨県のことばっか書きたくもなるわな)。
 
 さて、本題。エレクトリック化が進むエジプトのダンス・ミュージック、シャービーからموريس لوقا(モーリス・ルーカ)によるデビュー・アルバム。といいたいところだけど、オープニングなどはかなりロック・ミュージックとのクロスオーヴァーが進み、ローカルどっぷりの仕上げにはなっていない。いわば、アフリカにいればボコ・ハラムに狙われ、ヨーロッパに行けばイスラム差別は免れないという場所に立っている。ダンス・ミュージックに飽きてきて、かといってワールド・ミュージックにあっさりと切り替わるでもない耳には、しかし、これが、じつに馴染みやすい。なんというか、ナイス・ミドルイースト。

 シャービーというのは、たいていの場合、ベリーダンスとセットだそうで、ということはジュークやニューオリンズ・バウンスと役割はいっしょで、実際、意味もなく腹踊りがしたくなるような音楽で主流は占められている。ここに、موريس لوقاはロック的な抒情を適度に持ち込みながら、エジプト文化を対象化し、その入り口に立たせてくれる。それ以上、先に進むと観光客は撃たれるというギリギリのところで引き返し、今度はもっと危険を冒してみよう、シャービーという音楽はほかにどんなものがあるのだろうという好奇心を刺激し、気がつくとDJサルディーニャやサダトなんかも聴いている。腹踊りは……(以下、安部政権下のため自粛)。


 クレジットを見て驚いた。ボコ・ハラムのメンバーがいたからではない。ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーの外郭団体、ランド・オブ・クッシュを率いたサム・シャラビの名前もクレジットされていたからである。シャラビがシャービーである。ランド・オブ・クッシュはゴッドスピード由来の重苦しい音楽性に支配され、僕には少しトゥー・マッチだったのに、なるほど、それが腹踊りの陽気さと中和され、それなりに楽しさを演出するようになったという聴き方もできるだろう。文明が衝突し、音楽を生んだのである。「歴史の終わり」とはフクヤマもバカを言ったものである。福島県と山梨県が衝突したような名前だというのに歴史を持ち出すとは、規模がちょっと大き過ぎたというか。それこそ山梨県にもできることがどうして世界にはできないのか。『朝露通信』を読んでいると……(以下、安部政権下のため自粛)。〈サブライム・フルクエンシーズ〉からアラン・ビショップもサックスで参加。
(協力・赤塚りえ子)

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