「!K7」と一致するもの

Moodymann - ele-king

 結論から言えば、本作『Moodymann』はここ最近のムーディーマンのなかでは抜きんでている。まず何よりもこれは『Black Mahogani』以来の大きなリリースであり、ここ数年のベスト盤的な内容で、彼の集大成でもある。これからムーディーマン(デトロイトの、カルト的な人気をほこるハウス・ミュージックのDJ/プロデューサー)を聴きたいという若い方がこの文章を読んでいたら、迷うことなく本作を手にするがいい。
 というか、このところのムーディーマンは、2012年の『Picture This』をのぞけば、長くもなく短くもないミニ・アルバムをヴァイナルのみの限定盤としてリリースしている(2008年の『Det.riot '67』、2009年の『Anotha Black Sunday』、昨年の『ABCD』……)。これらはすべてが予約で売り切れるほどの競争率なので、本当に好きな人/レコードのためには努力を惜しまない人しか聴いてないと思われる。今回もアナログ盤(12曲)に関しては予約でショートしているが、数週間後にCD(27曲)も出た。要するに、『Moodymann』は久しぶりに手に入れやすいアルバムで、『Picture This』からの再録(アンプ・フィドラーとのまったく素晴らしい“Hold It Down”)、2008年のホセ・ジェイムス“Desire”のリミックス、CDにはくだんの限定盤からの数曲も再録されている。さらにCDにはEPで発表した曲もいくつか再録していて、ラナ・デル・レイ“ボーン2ダイ”のリミックスまで入っている。CDはお買い得だ。
 ムーディーマンは同郷のアンドレスとも似て、ハウス・リスナーのみならずヒップホップのリスナーの耳も惹きつけている。彼のリズム&ブルースのセンスゆえに、ハウス・ミュージックという枠組みを超えて、幅広いリスナーにアピールしているのだろう。現代のような音楽が売れない時代に、こと洋楽への関心が弱まっている日本において、ハウスを扱っているすべての輸入盤店で発売直後に「SOLD OUT」とするムーディーマンの人気は、異例中の異例だ。

 昔、シカゴでハウス・ミュージックが生まれたとき、熱狂した多くのダンサーたちが「教会みたいだ」などという科白でその感動を表したエピソードは知られている。アフリカ系アメリカ人の教会は、──筆者も1度だけ行ったことがあるが──、宗教の現場というより共同体の集会場だ(デトロイトにおいては、奴隷制時代に奴隷を逃がす隠れ家でもあった)。大勢で歌って踊って、それもかなりハードに踊って、神父は、今週は寄付金を公園の壊れたブランコの修繕に使ったとか、建設的な報告する。そうした身近な人びとの集まっているにおいが、そしてデトロイトは破産したというニュースとは裏腹のファニーなアーバン・フィーリングが、尽きることのない地元愛が、果てしないセクシャルな衝動が、ファンキーな笑いが、ムーディーマンの音楽には注がれている。ラナ・デル・レイのリミキサーに抜擢されたほどの人物だが、基本、アンダーグラウンドの音楽家なので、誰しもが彼にアクセスできるわけではない。しかし、それでも彼の音楽は大衆音楽であり続ける。大衆は必ずしも多数を意味しない。むしろ多数の専制に逆らっている、少数派を大切にするという意味において「民衆」の音楽だと言えよう(……数日後には憂鬱な都知事選だ)。
 そして、おっさん節の道化たアートワークが時代錯誤でどんなにダサかろうと、この音楽は──勝ち負けの音楽ではなく──共同体の音楽なので、おおらかに受け止められる。アホだなーと笑っても、音楽がうまいので、文句は言わせない。『Moodymann』の、ハウスから広がる多彩な展開(R&B、ファンク、ジャズ、8ビートの速いピッチの曲などなど)は、彼のキャリアを顧みれば自然な成り行きだ。それは成熟するデトロイト・ハウスの現在でもある。1曲、ファンカデリックの名曲“コズミック・スロップ”をがっつりサンプリングしている曲がある。そして、CDの中面の写真に写っている彼のスタジオのシーケンサーの上には、プリンスの『1999』のカセットが、どーんと、意味ありげに、結局のところこれが彼にとっての最良のポップ作品のひとつであると主張するかのように、置いてある。

丸屋九兵衛 - ele-king

 先日、インドネシアに行ってきたんですよ。バリ島とジャカルタと併せて10日くらいの旅。ジャカルタではマージナルというパンク・バンドの住居兼コミューンみたいなところを訪ねて大変貴重な経験をしたのだけれど、それはまた別な話なのでどこかで書く予定。
旅行に際しては、いわゆる有名なシリーズのガイドブックを買ったのだけど、やはり普通のガイドブックというのは最大公約数をターゲットにしてるものだから、どうしても限界がある。どこのクラブやライヴハウスが盛り上がっているのかとか、中古レコードはどこで買えるのか、言葉はわからなくてもマンガくらいはどんなものがあるのかチェックしてみたい、映画はどんなものが作られてるのだろうか、等々、そういうことが知りたいじゃないですか。

 で、一方で台湾というと、まあ親日的でご飯が美味しいという程度の印象しかなかったのだが(あとはまあ、むかし映画が盛り上がってたな、という記憶があるくらい)、最近友人が岸野雄一さんと一緒に台湾に行ってレコードを掘るのにハマっているというのでにわかに興味を覚えたところなのである。そんな矢先のこの本の刊行は大変嬉しかった。

 一言で言うと、『bmr』編集長にして無類の雑学王である丸屋九兵衛氏による偏愛的台北ガイド。「ビッグ・イン・ジャパンを語らない」(具体的には杏仁豆腐とか小龍包とか)というコンセプトが本文中でも明らかにされているように、あくまでも現地ではこれが熱いという視点でセレクトされているところがいい。あと、「住むように旅したい」というスタンスにも共感する(インドネシア旅行は移動が多くて1箇所2~3泊とかだったからいまひとつ食い足りなかったのだ)。そういうところに旅の醍醐味を見るタイプの人であればきっと重宝するだろう。
 読む前はもっとカルチャーに特化した感じなのかなと思っていたのだけど、食についての情報が充実しているのもありがたい(夜市で売られるさまざまな串焼きの写真を見ているだけでも行ってみたくなる)。そうそう、本書の最大の特徴は著者と「現地有志」による大量の写真である。眺めているだけでも現地の熱気が伝わってくる。
 また、日本統治時代から戦後の蒋介石政権、中国との関係など、ストリートカルチャーの背景にある歴史をしっかりおさえて解説してくれるところも世界史マニアのこの著者ならではだろう。

 もちろん偏愛的である以上、自分の関心事に100%応えてくれるわけではない。たとえばぼくの興味の対象である古いロックのレコードや、ノイズ~エクスペリメンタル・ミュージックについての情報はまったく得られない(そのかわり、ヒップホップやR&B、グラフィティにスニーカーやキャップなどについては面白いことがたくさん書いてある)のだけれど、それはまあこの際大した問題ではない。
 どの街でもたぶんそうだけど、上っ面な部分に触れるだけではなくもっとディープなカルチャーに触れようと思ったら、最初の一歩がなかなか大変なのだ。そこのところを上手く手引きしてもらうことができれば、あとは自分でどんどん世界を広げていくことができる。ほんと、ジャカルタにもこういう本があったらよかったのになー。

 かつては、パリでいえば『パリのルール』、ロンドンだったらカズコ・ホーキの『ディープなロンドン』、アメリカであればファビュラス・バーカー・ボーイズの『地獄のアメリカ観光』、韓国なら幻の名盤解放同盟の『ディープ・コリア』といった名著がこれまでに刊行され、大いに参考にしたり妄想を膨らませる助けになったりしてきたわけなのだが、こうして見るとほとんど全部古いのでそろそろアップデートしたものが読みたい気がする(どれもだいたいいま読んでも面白いと思うけど)し、アジアでのレコード・ディギングが進むいまなら、ソウルやバンコクなどいろんな都市の「カオスガイド」をもっともっと読みたい、そしてレコードや本を買いに行きたいと思う。

ピークが終わらない! - ele-king

 ピークが終わらない! いまもっとも勢いのあるDJ/プロデューサーのひとり、Seihoが〈ラッキー・ミー〉のオベイ・シティとジャパン・ツアーを開始する。〈ラッキー・ミー〉といえば、ハドソン・モホークや彼の別プロジェクトTNGHT、マシーンドラムなどの作品をリリースし、〈ワープ〉や〈プラネット・ミュー〉に近接するセンスでシーンを掘削するグラスゴーのアンダーグラウンド・ダンス・レーベル。Seihoとの相性もばっちりだ。
 2月7日の大阪公演を皮切りに、福岡、名古屋をまわり、最終日は10日@代官山〈Unit〉。自身のレーベルを運営し、順調にリリースも行い、各地を飛び回って夜を彩るSeiho、その活躍は今年も止まらない。彼あるところに音の祭あり。Seihoの移動式祝祭日に飛び込もう。

■詳細
https://www.perfect-touch.us/seiho-obey-city/
https://2-5-d.jp/news/12146/

■Seiho + Obey City / Way Cool Winter Japan Tour 2014

東京公演
日時:2014年2月10日(祝前日)23:00-
場所:Unit
数量限定前売りチケット:https://peatix.com/event/28151/view
出演:
Obey City
Seiho
DJ WILDPARTY
Metome
PARKGOLF
The Wedding Mistakes
SEXY808
Pa’s Lam System
Hercelot

-Sound Clash-
LEF!!!CREW!!!
HyperJuice
TREKKIE TRAX


Suphala - ele-king

 タブラというこのマイナーな楽器における世界的に著名な奏者といえば、やはりザキール・フセインの名を挙げねばならないだろう。彼は民族楽器と呼ばれるものをその伝統の檻から解き放ち、種々のアーティストと交流しつづけることでいまもなお絶大な影響力を保っているのであるが、その父アラ・ラカもまたタブラの使い手であり、こちらは祝祭と狂乱の奇蹟としていまだに語り継がれているあのウッドストック・フェスティヴァルにおいて才能をいかんなく披露していたのだった。この偉大なる親子に師事したスファラはタブラを扱う「正統」な後継者とも呼べるのであろうが、そのことは北インドの歴史を背負いつつも、それが根づこうとする圧力には抗いながら音楽を奏でているということを意味する。彼女の名義による4枚めのアルバムが、鬼才ジョン・ゾーンの主宰する〈ツァディク〉から、先鋭的な女性の音楽家に注目する「オラクルズ」シリーズの一環としてリリースされた。周知のようにこのレーベルにおいては、実験のための実験に堕することのないいわば快楽に対して開かれた音楽が数多く出されており、本作品もまたタブラがもつユニークな音色とその連なりが生みだす躍動感がダイレクトに聴く者を刺激する、爽快なアルバムに仕上がっている。

 スファラはインド系移民の両親のもとにアメリカ合衆国でこの世に生を享けた。それは生誕からして、ある民族に固有な血の流れが伝統として育まれる領域に、安住することを許されていなかったのだとも言える。この宿命的なタブラの後継者は、1枚めのアルバムにおいてエレクトロニクスを大胆に導入してみせ、つづく2作品ではハスキーな低音とクリアーな高音が特徴的な自身の声をも駆使することで新たな境地を切り拓いたのだったが、本作品に至ってようやく、彼女によるタブラの演奏それ自体が前面に押し出された音楽が生みだされることとなった。それはたとえば、1曲めの“インタールード”に参加した新世代のジャズ・ヴォーカリストであるホセ・ジェイムズの歌声が、まるで声明のような唸りを持続させることによって、歌い手を焦点化することを徹底的に回避しようとしていることからも窺えるだろう。歌というものは、あらゆる楽器を後景に退かせる強度をもっている。実際、前2作において歌い手をフィーチャリングした楽曲では、スファラがどれほど魅惑的な打撃を行おうとも、それらはどうしても歌声を脇で支える役目から前に出ることはできないでいた。しかしここにおいて聴かれるのは声を基層とすることで際立つタブラの響きであり、その鋭いリズム感覚なのである。

 続く楽曲においても、その中心は常にスファラとタブラの間に生まれる即物的な緊張関係におかれている。旋律を奏でるということがメタファーではなく具体的に、それもスティールパンのようにあらかじめ設えられた音高を組み合わせるのではなく掌の微妙な力加減によって実現できるこの特異な打楽器から聴かれるのは、奏者の肉体と呼応する音の流れ。まさにスファラの掌が歌う。それはタブラに触れ、撫でまわし、一方で烈しく叩きつけるという北インドの身体性を、ニューヨークの地下水脈を掘り起こすようにして実現するという重みをもっている。そうして8曲めの“エイト・アンド・ア・ハーフ・バーズ”に至ったとき、音の質感がガラリと変わることに聴き手は驚かされる。この楽曲はスファラの3枚めのアルバムのある楽曲を、彼女と同様にインドの歴史を背負ったピアニストのヴィジェイ・アイアーがリミックスしたもので、いわばスファラとタブラが織り成す緊張関係を解剖台の上におくことでつぶさに観察できるようにしたものとなっている。さらに最後の楽曲である9曲めの“ヴァシカラン”では、ザキール・フセインとユニットを組んでもいるベーシストのビル・ラズウェルによって、本アルバムそのものがリミックスの素材にされる。聴き手はこれまでの体験を辿り直しながら、記憶と記録のあわいへと投げ込まれることとなる。

 本作品に限ったことではないのだが、スファラが奏するタブラには、不思議と異国情緒の響きがない。彼女は打撃という非楽音=ノイズの瞬間的な発生、もしくは曖昧な輪郭をもったまとまりによって生まれる音の微細な固有性といったものを際立たせ、そして歌わせる。ピアノ、トランペット、サキソフォンなどの西洋楽器によるエスニックな旋律を、タブラの「都会的」な音色とリズムが先導する。このことはしかし伝統の脱色を意味することはない。彼女の音楽はあくまで特定の民族楽器に独自な語法に定位しつつ、そこに堆積した時間の澱みを凝固させることなく現在の文化の中へと鋳直すことで、伝統の再活性化を図ろうとするものであるからだ。だからかつて世の中を賑わせたようなワールド・ミュージックといったたぐいの、表層的なエスニシティの乱用とは異質なものでもある。そしてこうした試みの内実は、彼女によるタブラの演奏が中心におかれることでやっと明確化されたのだ。このように考えたとき、本作品は単に若手の先鋭的な女性タブラ奏者が名だたるジャズメンとセッションを繰り広げたというだけでは収まりきらないような、伝統と革新の往還運動がもたらす悦びを、聴き手に届けてくれるのである。

East India Youth - ele-king

 ロック・ミュージックはたぶん、若者が自身を表現するのに一番に思いつくチョイスでなくなってからずいぶん経ってしまったのだろう。「ドリーミー」な自己を表現するのに適した音がこの数年ではっきりしたからだ。シンセサイザーによるポップ・ミュージックは様々なヴァリエーションを生みながら、あらゆる夢を描き分けることを野望しているようにすら思える。そして、このイースト・インディア・ユースの「ドリーミー」は……頭が沸いている。
 東インドの若者を名乗り、ラップトップ・ミュージックをやっているこの青年も時代が違えば、ギターを持ったシンガーソングライターだったかもしれないし、あるいはバンドを従えてたかもしれない。それだけソング・ライティングはしっかりしているし、別の言い方をすれば特別凝ったことをしているわけではない。ちゃんとしたエモーショナルなメロディがあるし、線の細い声ながらしっかりソウルを乗せて歌っている。けれども、シンセ・サウンドによるアンビエント・ポップの意匠を纏うことによって、はじめて到達できた領域があるのだろうとも同時に感じる。想像でしかないが、彼は音楽を通して自分のなかへなかへと潜り込むことを欲望しているのではないか。

 ウィリアム・ドイルによるソロ・プロジェクト、イースト・インディア・ユースのデビュー作『トータル・ストライフ・フォーエヴァー』はひどく内面的で、そしてそれは統合失調的に混乱しているように聞こえる。支離滅裂と言ってもいいぐらいだ。だが、ドイルはその矛盾こそをある種の自己だと定義しているのだろうか、自己紹介となるはずのファースト・アルバムにはさまざまなサウンドが散らかっている。じわじわと音量が上がってまた消えていくオープニング、“グリッター・レセッション”におけるビートレスのシンセ・サウンドから何やら大仰だが、テーマ・トラックの“トータル・ストライフ・フォーエヴァー I”のアトモスフェリックなシンセ・ノイズを通り抜ければ、イーヴン・キックによるアッパーなシンセ・ポップ“ドリッピング・ダウン”へと突入する。上モノが不自然なぐらいにキラキラしていて、かと思えば、続く“ヒンターランド”では攻撃的なミニマル・テクノを披露する。“ヘヴン、ハウ・ロング”で「天国までどのくらい?」と切なく苦しそうに何度も歌い上げたかと思ったら、アウトロではハイ・テンポで執拗な反復を繰り広げる。総じて幻想的でアンビエント的な音楽だが、ムードは共通していても、それは極めて危ういバランスで保たれている。ちゃんとチルウェイヴとジェイムス・ブレイクよりも後の音をやろうとしているけれども、ドローンやノイズがここに現れてもそれは「いまの音を取り込んでやろう」などという利口さによるものではないように思える。
 「誰かを探している」と切なげに繰り返す“ルッキング・フォー・サムワン”にしても、また、アルバムに散見される賛美歌やゴスペルの要素にしても、そこで描かれる像はいかにもフラジャイルで内省的な青年の姿だ。大げさな言い方だが、宗教音楽的に妙に荘厳な音には何らかの救済への欲求が響いているようだ。けっしてカジュアルな音楽ではない。

 思い出すのはジェイムス・ブレイクのファースト・アルバムだ。あのレコードには、自身にしか理解できない内面の吐露とエモーションと、未発達であることを隠そうとしない幼児性があった。『トータル・ライフ・フォーエヴァー』もまた、ドイル本人がようやく発見した彼が封じ込められており、そしてそれは歪な形のままで転がり落とされている。この未完成な佇まいがゆえに、しかしながら、これから先へのスケールを感じさせる才能の登場だ。

Sunline Records - ele-king

 ドクター西村(Discossessio、悪魔の沼……ほか)は、いまでこそイタロ・ディスコ/コズミック博士およびDJとしての顔が知れているが、実はこの人、90年代はバロン・レコードなるカルトなレコ屋の店頭で、セオ・パリッシュやムーディーマンを日本で最初期に売っていた人で、シカゴの超マイナー・レーベルからフレンチ・ハウスあたりの目配せに関しても先駆的なものがあった。00年代のシスコ・ハウス店時代は、ご存じ、リンドストロームを日本に紹介したのはこの人だったと言っても過言ではない。ハウス全般に関する博士だ。そんなドクターが、ネット・ショップを開いた! 名前はサンライン・レコーズ(https://sunlinerecords.jp/)。
 彼の貴重なコレクション(?)が売られているのかどうかはわかりませんが、さまざまなジャンルのレア盤ばかりです。レコード好きは、チェックしよう!
 悪魔の沼の最新ミックスCDは、ブラックスモーカーから3月初旬発売予定。また、現在ドクター西村は近刊『ハウス・ディフィンティヴ』の執筆のほうでもがんばっていただいています。こちらもご期待下さい! 

Villains - ele-king

 かつてキャトル・プレス(Cattle Press)とゆー恐ろしいバンドがおりまして、トゥデイ・イズ・ザ・デイ(Today is the Day)やクライシス(Crisis)、ディスアソシエイト(Dissasociate)などの恐ろしい仲間たちとともに90年代のニューヨークの地下シーンを形成しておりました。キャトル・プレスやらヘムロック(Hemlock)、ダイング・ライト(Dying Light)にも参加していたLino Reca氏が率いるヴィレインズ(Villains)には、過去10年間聴いた邪悪なバンドの中でつねにもっとも興奮させられているのであります。

 昨今のテクノ界隈のアーティストがブルズムやらクロマグスのTシャツを着用するトレンドとは対極に位置しながらも、どこかしらリンクしてしまうのは、このバンドが持つニューヨークらしい都会的でニヒルなセンスゆえであろうか。

 バソリー(Bathory)を彷彿させる非ゴスなブラック・スラッシュとブラック・フラッグ的(Black Flag)なアメハが共存するヴィレインズの、結成から10年間追求しつづけたストリート・メタル・ノワールはここにひとつの完成を披露する。前作『ロード・トゥ・ルイン(Road to Ruin)』から顕著に表れはじめた西海岸パンク/ハードコアなブレイク・ダウンは本作品ではさらにフィーチャーされ、ニューヨーク特有の、冷たく、血なまぐさいスラッシュと不気味に共存している。いつのまにかLino Reca氏がギター/ヴォーカルとなったのもあってか、いままで以上にひねくれたリフが全編通してウネりまくる。抗うことができないヘドバン衝動に身を委ねれば日頃の鬱憤で酒に我を忘れ、ブルックリンの場末のバーでチャンネーを巡るトラブルに巻き込まれるであろう。ニヒリスティックな男のロマンがここにある。
 立ち上げから現在まで徹底してヴィレインズをプッシュしてきた〈NWN! プロダクション〉による美しいパッケージは今回も素晴らしく、このバンドの歴史とともに振り返る〈NWN!〉の軌跡へのリスペクトを忘れてはなるまい。

 というわけで2013年のUSパンク・ハードコアで若手ハイライトはホアクス(Hoax)──解散したっぽいのだが──、ベテランはヴィレインズでした。

 2013年度イヤーズ・エンド・リストに入れ忘れたのでここに記しておきます。

Shotahirama - ele-king

 断言しよう。2014年、最初の衝撃である。本作によってわたしたちの耳はモード・チェンジした。

 痙攣と震動が同時に生成する。耳と肉体が感電する。震える。驚異的な現象としての音響=音楽の炸裂。メロディはない。リズムはつねに変化する。変化、持続、切断、生成。そして震動。これらはまるでショータヒラマのライフ=人生そのもののように感じる。彼が生きている、暮らしている、聴こえている、触れている、震動している、そして感じている、ラヴとヘイトに満ちた世界のありようが、この電子音にたたみ込まれている。この快楽的で痺れるような電子音の震動は、一人の音楽家が体験する瞬間や衝動だ。それはストリートの光景や音のように刹那に通り過ぎていく音=ドキュメントでもある。電子音楽、電子音響、パンク、ビート、リズム。鼓動。つまり生きているということだ。ライフ・ミュージック・オブ・サウンド!

 このショータヒラマの3枚めのアルバムのタイトルは『ポスト・パンク』と名づけられている。これまでも『サッド・ヴァケイション』、 デュサレイ・アダ・ネキシノとのスプリット・シングル『ジャスト・ライク・ハニー』など、パンク以降のロック史上の名作を思わせる名前が付けられていたが、それらは単なる引用ではないはずだ。歴史と個人史が交錯する地点がそこにあったから、そう付けられていたとわたしは理解している。

 とすると、この『ポスト・パンク』もまた、ポスト・パンクという単語から思い浮かぶであろう、あれやこれやのアーティストやアルバムやそれやこれやの歴史的事実を、いちど、知った上で忘却してしまった方がいい。そう、何より、2014年の「ポスト・パンク」なのだから。

 事実、この音を耳にした者は誰しも直感的にその事実を理解するだろう。高速で流れ行く音の光景。ノイズとビートの瞬時的な変化と生成。その音響は聴く者に、中毒的な耳の快楽をひきおこす。弾け飛ぶビート。脳髄に直撃するノイズ。すべてはその瞬間に生成し、打ち抜き、変化を繰り返す音の運動だ。わたしたちは、そのサウンド・マッサージを鼓膜に浴びる。

 これらはまるで、流れ行くストリートの光景や音を、電子音響にトランスフォームした音の姿だ。そしてショータヒラマはそれらの音を極めて肉体的なリズムで「演奏」してみせている、この痙攣、この震動、このリズム、この運動、この衝動は、ショータヒラマの体から湧き出るリズム=衝動そのものではないか。

 わたしは、ここに、ショータヒラマがこれまでのアルバムで実験を繰り返してきたフィールド・レコーディングとサウンドのコンポションに対する大きな跳躍を感じた。音を採取し加工しマッピングするようにコンポジションすることを通じて作品を生み出してきた彼は、本作において、自身の内にあるリズム/ビート/衝動を、楽曲に注入し、自身の作品のアップデートを図ったのではないか、と。もちろん、前作『ジャスト・ライク・ハニー』で既にその兆候を聴き取ることはできる。そう、既にビートが導入されているのだから。だが、本作の跳躍はさらに圧倒的なのだ。

 曲を再生する脳内を飛び散るようなビート。それは接続と変化の中で音の姿を変えていく。そのコンポジションのみならず、音色の素晴らしさは筆舌に尽くし難い。乾いた、しかし、物質的な手触りを感じさせる音の粒が耳を刺激する。そこに透明で純度に高い透明な層のような電子ノイズが次々にレイヤーされ、聴く者を痺れさせていくのだ。音響は次々に変化し、一度や二度聴いただけでは全体を把握することが不可能なほどの驚異的な音響密度。

 この震動と痙攣と圧縮感覚は、まるでアート・リンゼイ、イクエ・モリ、ティム・ライトらによるDNAの痙攣的にリズム/ビートの遺伝子を引き継ぐかのようである。昨年、イクエ・モリのツアーに同行し、衝撃的なライヴを披露したというのも納得である(ちなみに初回特典のCD-Rには、イクエ・モリ・ツアーでのライヴ・トラックが収録されている。ライヴらしい躍動感のみならず、アルバム・ヴァージョンにはないエレクトリック・ギターまでもが導入されている! これがまた最高・最強のトラック。クールな熱情がみなぎっている。なくならないうちに購入されることをお勧め)。

 だが、わたしはここであえて歴史の焦点を絞ってみたい。グリッチ・ミュージックとの接続である。例たとえば90年代中盤以降から00年代頭にかけてグリッチ・ミュージック創世に尽力したレーベル〈メゴ〉は、ラップトップ・コンピューターによる電子音のエラーを積極的に活用していくことで、テクノ以降の電子音楽のパンク化を実現した。ここに壊れた音(電子ノイズ)の快楽と摂取が実現したのだ。たとえばピタのアルバム『セブン・トンズ・フォー・フリー』(1996)、『ゲット・アウト』(1999)、『ゲット・オフ』(2004)などを本作を聴いたあとに聴いてみてほしい。(ポスト・)デジタル・ミュージックの清冽さと、エラーを活用する「失敗の美学」を聴きとることができるだろう。

 ショータヒラマは、そんなグリッチ以降の電子音響の歴史をアップデートしようとしている。グリッチは電子音響のパンクであった。ゆえに本作はポスト・パンクとはいえないか。何が違うのか。デジタル・ミュージックに、自分の衝動と人生と震動と鼓動と視覚と聴覚をすべて電子音に畳み込もうとしているからではないか。それは理屈ではない。コンセプトでもない。一種の衝動である。その衝動=震動が織り込まれた電子音楽/音響として生成すること。そしてそれを2014年的な圧倒的な情報密度で作品化すること。つまり衝動と密度の多層的生成。いや、もともと彼の音楽にはそのような驚異的な圧縮/解凍感覚があったのだ。ゆえに収録時間が20分程度で十分なのだ。織り込まれた音の情報や層がクロノス時間を越えている。時間が縦に圧縮されている、とでも言うべきか。

 断言しよう。本作はショータヒラマが成しえた驚異的な音響的達成の成果であり、最高傑作である。聴くほどに耳と脳が震える。聴くほどに音を求める。アディクトとコンポジションとインプロヴィゼーションの彫刻=超克。驚異的な情報密度の圧縮と解凍。「聴く=効く」の交錯。まさに電子ノイズ・ビート・ミュージック・サウンドの全く新しいカタチである。

 繰り返そう。本作は、2014年、最初の衝撃である。さらにこうも言い換えよう。本作は、最後からはじまる最初の挑戦でもある、と。そして、本アルバムの名前として付けられた言葉を、もう一度、つぶやいてみよう。そう、「ポスト・パンク」と! わたしたちは、みな「以降」の時代を生きている。だが、衝動や衝撃や震動は収まることはない。世界に音が満ちており、ストリートの光景や音も終わることなく、わたしたちの耳から記憶に刻み込まれているのだから。生きていること。つまりライフ・ミュージックだ。本作は電子音楽/電子音響がライフ・ミュージックであることを堂々と告げている傑作である。

ele-king Help wanted - ele-king

 たしか2009年の秋から冬に変わる頃、ワタクシは自宅の台所のテーブルにノートパソコンを置いて、宇川直宏の電話の指示に従いながらオープンしたのが、web ele-kingでございます。懐かしいですね、まだDOMMUNEがオープンする前でした。そこからなんとか、いろいろな人たちの助けや、いろいろな世代との出会いもあって、こうしてやってこれているわけであります。まだまだ理想には遠いと思ってはいますが、はじめた頃に比べたらずいぶん幅広く読まれるようになったと実感しております。
 さて、それでweb ele-kingはじまって以来の、スタッフ募集です。デスク業務です。ワタクシと橋元の机に挟まれながら作業しなければならないという、おそろしい環境ですが、とにかく音楽の話が好き、文章を読んだり書いたりするのが好き、CDやレコードを買うのが好き、音楽メディアと編集業務に興味がある人、そして気持ちがある人、待っております。編集部の菅村君から「ファッションやアート、ライヴ好きの方もヨロシク!」とのことです。とはいえ、おそらく皆様が思っている以上に地味な仕事ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。(野田) 


【職種】
デスク

【仕事内容】
書籍・WEB編集補助業務
(資料作成及び発送、データ入力、原稿整理、画像整理)

【求めるキャリア・スキル・応募資格】
・基本的なPC操作
・基本的なWORD、EXCEL操作
・幅広く音楽に興味をお持ちの方
・基本的なPhotoshop、Illustrator操作できる方、優遇。

【雇用形態】
アルバイト(学生歓迎 ※大学生以上)

【勤務地】
東京都渋谷区 本社

【交通】
JR線 「渋谷」駅より徒歩6分

【勤務時間】 
週2~5日(月~金)10:00~18:00(原則)

【給与】
時給 870円以上

【待遇条件】
交通費全額支給 (学生の場合は通学定期の経路外を支給)
試用期間2ヶ月

【休日休暇】
完全週休2日制(土・日)、祝日、夏季・年末年始休暇

【募集人員】
若干名

【応募方法】
履歴書(写真添付、Eメールアドレス明記)及び職務経歴書(書式自由)を同封の上、下記宛先までご郵送ください。
※好きな音楽等も明記ください。

【書類送付先】
<郵送>
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町21-2 池田ビル2F
株式会社 Pヴァイン 人事担当宛て
※履歴書在中の旨、ご明記下さい

<メール>
job@p-vine.jp のアドレス までお送り下さい。

【応募締切】2014年2月10日
※書類選考の上、面接対象者のみ、当社より締め切り後2週間以内にご連絡いたします。
※応募書類はご返却いたしません。ご了承下さい。
※応募書類につきましては今回の採用選考にのみ使用し、同意なくそれ以外の目的に利用したり、第三者に提供する事はございません


UKAWA'S TAGS FACTORY - ele-king

 みんな大好きDOMMUNE宇川直宏の「セレブリティー1000人の偽サイン展」、そう、「偽サイン」です。覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。宇川直宏いわく「降霊術」によってセレブを自らに「憑依」させてサインを描くという、その1周回ったいかがわしさ、オリジナルを超えた偽物のリアリティといいますか、当たり前の価値観をカオスの海に放り投げながら笑っているといいますか、とにかく、5年前の500人の偽サイン展から、宇川は、日々偽サインを忘れることなく、その数ついに1000人に到達したのであります。
 そう、先週から山本現代において、その完結編として「UKAWA'S TAGS FACTORY(完結編)~宇川直宏によるセレブリティー1000人の偽サイン展」がはじまっています。2月22日まで開催しているので、ぜひ、観に行きましょう。あまりの「うまさ」(いろいろな意味で)に驚くはず。そして、その1000人の人選には、宇川直宏らしさが思い切り出ています。開催中には、トークショーも予定されているそうで、楽しみです。
 なお、開催中には、「FREE DOMMUNE ZERO」にて話題となった「夏目漱石/THE UNIVERSE」も展示されます。


■~2月22日 @山本現代?宇川直宏 個展【2NECROMANCYS】

=「UKAWA'S TAGS FACTORY(完結編)~宇川直宏によるセレブリティー1000人の偽サイン展」
&「夏目漱石/THE UNIVERSE(re-turns)」with やくしまるえつこ(朗読)!


https://www.yamamotogendai.org/japanese/exhibition/index.html

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