「Not Waving」と一致するもの

泉まくら - ele-king

 たとえば、Swag。意味はいろいろあるけど、大体は自分が誇れるもの、自慢できることというニュアンスで使われる。それはオンナ、金、車、ジュエリー、時計という、いわゆるステレオタイプなヒップホップのイメージを形作るもので、これが日本人にはなかなか受け入れづらい。ヘッズは別だけどね。

 ヘッズではない日本人でも腑に落ちるSwagと何か? 僕は(以前も引き合いに出したけど)KOHEI JAPAN『FAMILY』のあり方だと思う。この作品はその名の通り、自分の家族について歌ったもので、KOHEI JAPANは「家族はサイコーっしょ」という主張をSwagとして歌った。

 物事の陰と陽で言えば、比較的陽の部分がクローズアップされた内容だが、リアルな描写が多く、「3年保育私立幼稚園 さらに小中高 足して12年 / 一番安くて約1000万 一番高くて5000万 / 子供2人いたらその倍だねえ 大学は行かなくていいんじゃね?」(『続・男はまぁまぁつらいよ〈オジサンの小言〉』)などのラインは取りつく島がない。僕は当時、この曲を聴いて家庭は金かかるんだ……って真剣に思った。

 バブル以降の世代である僕らは、徹底して現実的な世界を生きてきた。ゆえにアメリカン・ドリーム、いわゆる立身出世の物語を本質的に理解することが難しい。アメリカではギャングがビリオネアになることをJay-Zのような一部の大物たちが体現してくれたけど、日本のヒップホップで彼らほどのサクセスを手にした人はいない。やはりそれが与沢翼では、どうにも夢がないように思える。けど、僕らに突きつけられている現実はJay-Zではなく、翼だ。このような状態で、USヒップホップのようなことを歌っても、それはリアルに聴こえるはずがないし、「結局アメリカのマネゴトじゃん」と言われても返す言葉がない。

 泉まくらのSwagは女子のカルマだ。想像する性を生きる男子にとっては、一生理解することのできないリアル。それが女子のカルマだ。結局人間は他人同士で、人と人とが分かり合うということは幻想でしかない。まして違う性の生き物が何をどう感じているかなど一生知ることができない。僕らはただただ想像するだけなのだ。何が言いたいかというと、そんなものSwagにするのだから泉まくらというラッパーは相当サグな人なんだろうな、と。またそういうトピックを選ぶあたりも、日本語ラップの系譜においては、THA BLUE HERB、SEEDAらのようなラッパーの直系であるな、と感じた。

禁断のサイボーグかおり! - ele-king

 禁断の多数決の新譜、もう聴きました?
セカンド・アルバム『アラビアの禁断の多数決』ですよ。インタヴューからも本当におもしろい存在だということが伝わってきますよね。
そんな彼らの「ツイン・ピークス集団」にサイボーグかおりが迎えられた模様! 収録曲“トゥナイト、トゥナイト”のスピンオフ・ミュージック・ビデオが公開されています。いったいどんなセッションを見せてくれるのか!?

リズムを刻まずにはいられないお嬢様育ちの女子大生ヒューマンビートボクサー「サイボーグかおり(CYBOG KAORI)」を迎えた“トゥナイト、トゥナイト”スペシャル・ヴァージョンです!!

CYBORG KAORI and 禁断の多数決「トゥナイト、トゥナイト session」


「禁断の多数決」のリーダーである「ほうのきかずなり」が監督を担当。
◆ 禁断の多数決 オフィシャルサイト ⇒ https://kindan.tumblr.com
◆ サイボーグかおり オフィシャルブログ ⇒ https://ameblo.jp/saketoba0212/


〈electraglide 2013〉直前! 物販やります - ele-king

 エレグラ、いよいよ明後日に迫りましたね!
 ele-kingは物販ブースに参加!
『ele-king』バックナンバーや新刊『アナキズム・イン・ザ・UK』(ブレイディみかこ)といったele-king booksシリーズはもちろんのこと、OPNのTシャツや、

なんと久保憲司撮影の額入フォトグラフも販売予定! ブース内では来月発売の『久保憲司写真集 loaded』の中身をパネル展示、生ゲラもチェックできます! 最速11。

 さらには「年間読者ベスト投票箱」も設置。来月発売の年末号『ele-king vol.12』掲載のチャートを当てていただいた方には、抽選で新刊をプレゼントいたします!

 踊り疲れたらぜひ立ち寄ってみてくださいね!
 編集部も参加しております。ビールはおごれないのですが、ぜひぜひお声がけください!

■!!!(チック・チック・チック)から来日直前コメントが到着!!

大合唱!!汗まみれの肉弾戦!!!最狂のモンスター・グルーヴ・バンドがいよいよ帰還! 
ロック・フリーク、パンクス、テクノ・ヘッズをまとめて飲込む狂乱のグルーヴで幕張メッセのフロアがダンサーの洪水で溢れかえること必至!!!

ヴィデオ&メッセージ


★今年リリースされた最新アルバム『THR!!!ER』収録の大ヒットシングル「One Girl / One Boy」のインスト音源と日本語読みの歌詞をフリー・ダウンロード!
歌詞を予習してエレグラで!!!と一緒に大合唱しよう!!!

歌詞/インスト音源のダウンロードはこちら!
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/
Chk-Chk-Chk/%21%21%21_OneGirlOneBoy.zip


My Bloody Valentine - ele-king

 じつに22年ぶりの最新作『mbv』をリリースしたマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(以下、マイブラ)。08~09年の「再始動ツアー」以来となる大規模なライヴ・サーキットを、アジアを皮切りにおよそ1年かけておこなってきた彼らが、その締めくくりの公演を11月11日(月)、12日(火)とニューヨークでおこなった。このライヴを終えたらすぐ、アイルランドの新居に設立したプライヴェート・スタジオにこもり、ニューEPのレコーディングに入る予定だと話してくれたケヴィン・シールズ(ヴォーカル&ギター)。「次のライヴは、来年の夏頃やりたいな」とも言ってたが、常人とは時間感覚が著しく違う彼のこと、この機会を逃したらしばらくライヴは観られないのではないか、ひょっとしたらこれが最後のチャンス……? などと考えているうちにいても立ってもいられなくなり、気づけばニューヨークまで来ていた。
 会場は両日とも、マンハッタンの中央に位置する〈ハマースタイン・ボールルーム(Hammerstein Ballroom)〉。2年前にポーティスヘッドの単独公演を観た場所だ。オープニング・アクトは、初日がオーストラリアのシンガーソングライター、アダム・ハーディング率いるダム・ナンバーズで(おそらくダイナソーJr.繋がり)、最終日はニューヨーク出身のバンド、ダイヴが務めた。地元の若手バンドが出るとあってか、客層は最終日のほうが圧倒的に若く、フロアにはアンドリュー・ヴァンウィンガーデン(MGMT)の姿もあった。  オープニング・アクトが終わると、BP.ファロン(ジャーナリスト/写真家)によるDJタイム。ドキュメンタリー映画『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ヒストリー』に語り部として登場していた彼のDJは、とにかく大ネタの連発。T・レックスやストゥージズ、セックス・ピストルズの名曲を惜しげもなくスピンしていく。ニューヨークは、少なくとも筆者の行く先々ではルー・リード追悼一色という感じだったが、ファロンがヴェルヴェット・アンダーグラウンド“ヴィーナス・イン・ファーズ”をかけると、フロアからはひときわ大きな歓声が上がっていた。  ビートルズの“オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ”が大音量で流れ出すと、客電が徐々に暗くなっていくなか、あちこちからシンガロングが響きわたる。最新作を「“愛”に包まれたアルバム」と公言していたマイブラと、そのファンに対するファロンからの心憎いプレゼントだ。
 21時を少し過ぎた頃、デビー・グッギ(ベース)、コルム・オコーサク(ドラム)、ケヴィン、ビリンダ・ブッチャー(ヴォーカル、ギター)の順でステージに登場。コルムとケヴィンはアコギを抱え、デビーはエレキギターをセッティング、ビリンダはキーボードの前に立つ。東京国際フォーラムと同じく、名曲“サムタイムズ”でライヴはスタートした。続いてサポート・メンバーのジェーン・マルコ(ギター、キーボード、コーラス)が加わり、通常の楽器編成に戻って“アイ・オンリー・セッド”“ホエン・ユー・スリープ”と『ラヴレス』からのナンバーを披露。ジェーン加入前の彼らは、シンセの印象的なシーケンス・フレーズをサンプリング音源で再現していたが、これをジェーンに弾かせることによって曲のテンポから完全に自由になった。ここぞとばかりにコルムがスピードを上げ、デビーのベースがグイグイとドライヴする“ホエン・ユー・スリープ”は、心拍数が跳ね上がるくらいカッコいい。マイブラのライヴの醍醐味は、なにもケヴィンの爆音ギターや、“ユー・メイド・ミー・リアライズ”中盤のノイズ・ビット(10分を超えるフィードバック・ノイズ)だけじゃない。この、鉄壁のリズム隊による唯一無二のグルーヴにもあるのだ。他にも、「叩き終わった途端に絶命してしまうのではないか?」と心配になるほど渾身の力を振り絞るコルムのドラミングが印象的な“ナッシング・マッチ・トゥー・ルーズ”、うねるようなデビーのベースラインが腰を揺さぶる“カム・イン・アローブ”、刹那的なケヴィンのギター・ソロに聴くたび身震いさせられる“ユー・ネヴァー・シュッド”など、毎度お馴染みのセットリストながら何度観ても鳥肌が立つ。
 最新作『mbv』からは、国際フォーラムと同じく“ニュー・ユー”“オンリー・トゥモロー”“フー・シーズ・ユー”そして“ワンダー・2”を演奏。変則的なブレイクが挿入される“ニュー・ユー”は、日本公演では毎回ミスしてヒヤヒヤものだったが、今回は無事に完奏して一安心(シロウトか)。ビリンダとデビー、そしてジェーンも加わった重層的なコーラス・パートは見どころのひとつだ。“フー・シーズ・ユー”は、銀河系をイメージしたスクリーンをバックにケヴィンとビリンダがユニゾン・ヴォーカル。ビリンダはケヴィンのギター・ソロ・パートもスキャットでユニゾンしていたのが印象的だった。ヒプノティックな“トゥー・ヒア・ノウズ・ホエン”に続いて演奏された“ワンダー・2”は、メンバー全員がエレキギターをプレイするという変則的なフォーメーション。E-Bow(エレキギターの弦に当てて、電気的にフィードバックを発生させるエフェクター)を弦の上で小刻みに揺らし、高音フレーズで宙を切り裂くケヴィン。「トレモロアーム(ギターのトレモロバーを掴んだままギターをストロークし、音色に“ゆらぎ”を与える奏法)」に続いて編み出した彼のこの奏法は、来日時のインタヴューによれば、“イン・アナザー・ウェイ”など『mbv』の他の曲でも多用されたそうだ。  ここからは、早くも終盤戦。“スゥーン”“フィード・ミー・ウィズ・ユア・キス”“ユー・メイド・ミー・リアライズ”と畳み掛けていく。国際フォーラムでは、“スゥーン”に余計なキック音を足していたのが気になって仕方なかったが、今回それは改善されていた。2日めは撮影をしながらステージを観ていたのだが、特にサプライズ的なこともなく、セットリストから何からほとんどいっしょ。ただ、最終日ということで多少は開放的な気分になっていたのか、ラスト2曲の前に珍しくコルムとビリンダでMCをはじめたのにはびっくり。また、“ユー・メイド・ミー・リアライズ”のノイズビットのときにステージ袖へと回ってみたら、フランス人の女性PAエンジニアとローディーがかたくハグし合っていたり、ケヴィンを担当する天才ギター・テクがコブシを振り上げて大声で叫んでいたり、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。こんな凄まじい爆音に包まれながら祝杯をあげるなんて、いかにもマイブラのクルーらしいなあと思っていたら、少しだけウルッときてしまった。
 終演後、楽屋にはパティ・スミスの姿が。「『ラヴレス』こそわたしの人生を変えた一枚」と公言する彼女とケヴィンは、05年と06年にロンドンの〈クイーン・エリザベス・ホール〉にて即興ライヴをおこなっている(2枚組CD『コーラル・シー』として08年にリリースされた)。今年はじめの韓国公演で再会したときには、12年10月にニューヨークを襲ったハリケーン「サンディ」の被災地への支援活動についてふたりは話し合ったそうだ。そんなふたりが並んでソファに座っている様子は、まるで映画のワンシーンを観ているようだった。  さて、大阪、東京、メルボルン、グラスゴー、マンチェスター、ロンドン、バルセロナ、苗場、国際フォーラムそしてニューヨークと、追いかけ続けたマイブラのライヴも、これでしばらくは見納めである。冒頭で紹介したケヴィンの計画どおり、新居でのレコーディングが無事にスタートし、来夏には再びライヴをおこなうかどうかは神のみぞ知るところ。「ケヴィン時間」に過剰な期待もせず絶望もせず、気長に待ち続けることにしよう。

interview with Kindan no Tasuketsu - ele-king


禁断の多数決
アラビアの禁断の多数決

AWDR/LR2

Amazon HMV iTunes

 2011年。古今東西ありとあらゆる音源が一並びに混濁する景色のなかで、彼らは「透明感」と歌った。

 禁断の多数決、その名は、フロンティア・ラインが複雑に歪んだシーンにとても鮮やかな印象を残した。アニマル・コレクティヴ譲りのサイケデリア(ほうのきは日本のエイヴィ・テアだ)、一大気運であったシンセ・ポップ、ひたひたと押し寄せるニューエイジ・リヴァイヴァル・モード――当時もっとも影響力のあった音楽的トピックを、ドリーミーかつエクスペリメンタルに巻き込み、バンド名からもうかがえるようなノイジーな批評性を漂わせ、またリスナーとしての喜びも溢れさせ、日本のポップスとしてもしっかり着地する、誰もが気になる(けれどもいまひとつ謎の)バンドとして。

筆者はEPにもなった“透明感”にビリビリときていた。世の中はとうに透明な場所ではなかったので、透明には「感」をつけなければならなかった。「感」をつけるフィーリングが、そのフェイクな味わいのシンセ・ポップからよくつたわってきた。いまこの世界にあるのは、透明によく似た、透明の偽物だけ……。

かといって、彼らの音楽はドリーミーで、なにか得体のしれないエネルギーと音楽的記憶を宿していて、ニヒルや偽悪のそぶりは感じられない。むしろその逆であるところにリアリティがある。本物の透明がない以上、そのことが「本当」になる……本物がないことが本当になっている時代を、アルカイック・スマイルで肯定しているような彼らの音のたたずまいに、筆者はとても親近感を抱いた。その頃、世間は『けいおん!』旋風のただなかで、筆者はあの素晴らしいアニメ版が宿している、抜けるような透明「感」にも、同じようなことを感じていた。

それから2年が経って、彼らはいま旅をしている。セカンド・フル『アラビアの禁断の多数決』では、やっぱりどこかフェイクな感触を残す旅が繰り広げられていて、奇妙に実体のない国名や地名がたくさん散りばめられているのが特徴だ。彼らの旅は「現地」にあるのではなく、『世界の車窓から』(テレビ朝日)の現地「感」にある。本物に触れられない切なさが、禁断の多数決の強度である。それは音を磨き、無二の個性を生み出している。CDケースの中敷きに印刷されたシノザキサトシによる短編で、好奇心旺盛なコロンブ・ハッチャーマンが「なんかくれ」とものをねだるのも、ほうのきがピーター・ゲイブリエル(過激な仮装)をリスペクトすることも、「本物」に対する両義的な希求感の表れだということができるかもしれない。

 シノザキの短編はこのアルバムのアート・ワークのコアをなすような内容で、ある砂漠の村が、そこに突如現れた「浮遊人」たちの存在によってちょっとした変化を迎える顛末を描いている(『アラビアのロレンス』が下敷きになっている)。が、変化といっても決定的なことは何も起こらず、最後は砂漠がめくれあがって、その下からまた砂漠が出てくるという、どこか閉塞的なクライマックスが、バカバカしいタッチで展開されることになる。そのとき空には「リバースター」なる謎の物体が浮かんで妙なる音楽を奏でていて、砂漠がめくれるきっかけになったのは、くだんのハッチャーマンによる「なんかくれ」発言だ。砂漠がめくれてもまた砂漠。「なんか」はいつまでも手に入ることはない。ハッチャーマンは物乞いをつづけるだろうし、しかし「なんか」が手に入らなくても塞いだり暗くなったりすることなどなにもない……。

 おそらくこのアルバムで鳴らされている音楽が、このとき「リバースター」から流れていた音楽だ。俗物として描かれる元宗教家の床屋は、その体験を「そりゃ驚いたよー、(中略)こんなことを言ってもわかんないと思うけどさ、実物のリバースターを見たら、そんな気難しい顔はしないと思うなー」と語る。筆者はこのくだりが好きなのだけれども、『アラビアの禁断の多数決』は、実際、それと同じような感じで、気難しい顔になって向かい合うものではない。砂漠の下から砂漠が出てくる世界で、それをそのままに、心地よく聴けばいいと思う。

この短編はいいライナーノーツかもしれない。インタヴューの時点でこのテキストのことは知らなかったが、話をきいていて、筆者には禁断の多数決についてのいろんなことが、ほぼこのテキストに沿うような内容で、すーっと氷解していくように感じられた。

目次
音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

音楽雑誌の記憶

ほうのきさんって、『スヌーザー』とか読んでました?

ほうのき:年末の年間ベスト号には大変お世話になりました。

リアルですね(笑)。なんというか、ひとりのリスナーとしてのほうのきさんにすごく親近感がありまして。不特定多数の洋楽リスナーが、音専誌を通じて大きな話題を共有できていた、その最後期くらいの記憶をお持ちなんじゃないかなって思うんですよ。

ほうのき:なるほど。

「洋楽ファン」っていうカテゴリーがまだギリギリ生きていて、紙メディアが機能していて。しかもたぶんロック寄りで、ちょっと突っ込んだ情報や言葉が欲しくて、みたいな、自分と近い聴き方・読み方をされていたんじゃないかという勝手な妄想なんですが。

ほうのき:もともとはたくさん買っていたんです。たぶんいま言っていただいたのは合っていますね。他には『クッキー・シーン』とか『アフター・アワーズ』とか。

そうそう! まさに。

ほうのき:『リミックス』、『ロッキング・オン』、『クロスビート』、『(ミュージック・)マガジン』とかも、年間ベストの号はなんでも全部、必ず買ってましたね。

よくわかりますよ。田舎のせいもありますけど、シーンってそんなふうに感じるものでした。

ほうのき:ちゃんと月々買ってたんですよ。それがいつのまにか買わなくなってしまって……。

ああ、なるほど……。

ほうのき:当時、僕も僕の友人もみんな音楽が詳しくて。レコード屋にもよく行っていたんです。みんな本当にマニアックでした。けれど、なぜだかどんどん掘らなくなっていったんです。

ああー、それは根深い。時代性の問題でしょうか。

ほうのき:僕は鈴木慶一が好きで。彼が、「“いまいい音楽がないよね”ってみんな言うけど、それって自分が掘ってないだけで、本当はあるんだよ」っていうようなことを言っていたんですよ。自分が古くなっているってことに気づいてないだけなんだ、って。それには感銘を受けました。Hi-Hi-Whoopeeって人いるじゃないですか。あ、明後日、ele-kingで何かやりますよね?

ああ、はい!  2.5Dさんで番組をやらせていただきます(2013.10.25「2.5D×ele-king 10代からのエレキング!」)。Hi-Hi-Whoopeeのハイハイさんにもご出演いただく予定ですよ。

ほうのき:僕、ハイハイさんのこと何かで知ってそれ以来ずっと見てるんですけど、最近は、ele-kingさんとかハイハイさんとか、あとはベタだけどPitchforkとか、そのあたりはなんとかいまでも追っています。

普通に恐縮ですけれども……。

ほうのき:このアルバム(『アラビアの禁断の多数決』)の制作があって大変だったということもありますけど、もっと言えば、3.11ですね。あのあたりからなんです。なにか追えなくなってきたのは。

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音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

なぜか3.11以降……

ちょうど3.11から年末まで止まってたんです。その間はほぼ聴いてない。そのときまでの知識で作ったのが前のアルバム(『はじめにアイがあった』)です。

それまではさまざまな音楽雑誌やラジオ、レコード・ショップまでもう何もかも、ひととおり網羅していた自信はあったんですよ。音源をハードディスクに入れられるという喜びも覚えて、大量に入れていたんですね。それが、3.11以降やらなくなっちゃって……。

それは、不思議なきっかけですね。

ほうのき:はい。あの出来事があってファースト・アルバム(『はじめにアイがあった』)ができたんです。(東京から)富山に帰ったし。だからあのアルバムにはそのときまでに得たものが反映されているんです。

へえー。3.11以降、なぜか情報を細かく追うことをやめちゃったんですね?

ほうのき:そうなんです。僕、Tumblrが好きなんですね。あの頃Tumblrをばーって見てたら、なんだっけ、あのコンサルみたいな人……

篠崎:大前研一じゃない?

ええっ?

ほうのき:そうそう、大前研一が「人間、変わろうと思ってもそんなスグに変われるもんじゃない」みたいな感じのことを言ってたんですよ。人間が変わるには3つくらいしか方法がなくて、早起きすることと、付き合っている人間を変えることと、引っ越すことだ、みたいな(※)。僕もう、そうだな、ほんとだなと思って(笑)。

※「人間が変わる方法は3つしかない。ひとつ目は時間配分を変えること。ふたつ目は住む場所を変えること。3つ目は付き合う人を変えること。どれかひとつだけ選ぶとしたら、時間配分を変えることが最も効果的なのだ」(『時間とムダの科学』プレジデント社)

ははは! 啓発されちゃったんですか。

ほうのき:ははは! 僕、それまですごく中途半端に音楽やってたんですよ。3.11まではほんとに。だけどその後、本気でやろう! って思ったんです。それが3.11と結びつく理由がどっかにあったんですけど……なんか、思い出せないですね。

なるほど、でも3.11がきっかけで富山に戻られたということなんですね。

ほうのき:そうですね、3.11がきっかけで戻ったのと、あとは大前研一……。

(一同笑)

(笑)あ、なるほど、そのとき何かを変えたいって思ったんですね。それで、住むところを変えるっていう大前研一の言葉にも触発されて。

ほうのき:そうそう、ちょうどTumblrでその言葉が流れてきて。でも、変わりたいというのは前から思ってたんですよ。たまたまそのときにその話を知って、3つとも当てはまって、これ自分だ!ってなったっていうだけで。

ははあ。たしかに3.11っていうのは、陰に陽に、人々に変化のきっかけを与えるものとして働いた部分があるみたいですね。一見関係ないけど離婚した、とか。

ほうのき:ねえ?

はい。被害が出た出ないということと別のところで、人と人との関係とかムードを変えるタイミングだったりもしたわけですけれども……。それがほうのきさんの上に、音楽にまつわる変化として現れてきてもおかしくないですよね。

ほうのき:それで、その年の年末ですかね。僕、ele-kingさんのとかPitchforkだったりとか、いろんなところで年間ベストで挙げられている音源をほぼすべて落とした(ダウンロードした)んですよ。真面目な話、橋元さんとはかなり気が合うんです。

わー、そうなんですね。

ほうのき:はい。で、2011年の末にベスト音源を全部落としたあと、少しずつまた聴くようになったんですね。日々掘って、日々聴いて、っていうことはなくなりましたけど、まとめて聴くようにはなって。そしてそのときに、ドリーム・ポップとかチルウェイヴみたいなものがばーっと入ってきたんです。一気に。年間ベストのをまとめて聴くわけだから。それで、うわ、これおもしろい、と思って。

たしかに、2011年の末はドリーム・ポップ的なトピックが連続してました。 ※前号の特集が「シンセ・ポップふたたび」、前前号の特集が「現実逃避」

ほうのき:ちょうど3.11から年末まで止まってたんです。その間はほぼ聴いてない。そのときまでの知識で作ったのが前のアルバム(『はじめにアイがあった』)です。ララージとか、アンビエント系のものから、カフェ・デル・マーのコンピとかも好きで、そういうの全部入れようって思って作ったんですけど。で、それを作り終えた頃に年末号があって、おもしろかった。だから、1枚めはチルウェイヴとか意識しないで作ってたんですけど、出した後にみんなにけっこう「チルウェイヴ」って言われて、なんかそれがうれしくて。

へえ!

ほうのき:まとめて聴くのはいまも続いていて、正直Hi-Hi-Whoopeeさんとかの教えてくれるおもしろい音とかも全部保存してあるんですけど、全部聴けてない(笑)。フォルダにたまる一方で、いつか聴くつもりなんですけど、そのままなんです。たとえば、tofubeatsがいいって言っていて、Hi-Hi-Whoopeeもいいって言っていたらその場で聴きますけど……。

わかりますよ。たまる問題の病理はリアルなトピックですよね。しかし、3.11のお話はおもしろいです。どちらかというと政治性とも結びつきやすい話題ですし、下手をするとすごく型にはまった窮屈な議論にもなってしまうので、アーティストさんとかに振りにくい話題なんですけど、ほうのきさんのその、謎の影響と謎の空白時間は興味深いです。チルウェイヴがその空白の後に入り込んできたのは偶然ではないですよ。現実逃避ってことにポジティヴなマナーを与えた流れでしたから。後っていうか、本当は同機してたわけですしね。

ほうのき:ああ……、なるほど!

まあ、でもこういういわゆるバズワード的なものは、たまたまでっちあげられたものでもあるわけで、それが偶然3.11後のタイミングで音として興味深く自分のなかに入ってきただけなのかもしれないですけどね。

ほうのき:3.11に関して言えば、あれだけ大きなことだし、僕もそんなに好んで発言したいわけじゃなくて、自然と変化が起きたってことなんです。だからおっしゃるとおり、偶然なんです。

偽物談、地名談。

ブライアン・イーノは僕のなかでフェイク感なんです。ロバート・フリップは本物感。

前作の話ばっかりで恐縮ですけど、わたし“透明感”って言葉にビビッときたんですよね。「透明」じゃなくて「透明感」っていうところが、すっごく生きてきた時代を象徴的に切りとってるなって思いまして。偽物なんですよ、透明の。透明「感」だから。

ほうのき:ああ、そうですね(笑)。たしかに。

その偽物っていうところを素直に肯定する感性……。偽物ってことにちょっと屈折したカッコよさを感じていたりする感じじゃなくて、です。その偽物ばっかりになっている場所とか世の中を、とくに斜めから見ることなく、生まれたときからそうあるものとして肯定していく、楽しんでいくというか。そういう感覚がひとつ禁断のキャラクターというか特徴なんじゃないかなと思いました。 「偽物」とかってどうです? そういう感覚あります?

ほうのき:ありますね。ラウンジ・リザーズ。僕、ジョン・ルーリーがフェイク・ジャズって自分たちのことを言うのがすごく好きなんですよ。あと、サム・ライミ。『死霊のはらわた』とかも好きなんですけど、彼らの作った言葉に「フェイク・シェンプ」っていうのがあるんですよ。役名のない役のことをフェイク・シェンプと呼んだそうです。フェイクというのはなにか、好きなのかもしれません。よくわかりますね! 今度飲みにいきましょう。

わー!

ほうのき:フェイクと本物で必ず思い出すのがキング・クリムゾンがなんです。キング・クリムゾンになれない感。

キング・クリムゾンになれない! ……音楽的に? 存在として?

ほうのき:ギタリストに、「この曲、ロバート・フリップみたいに弾いて」っていつも言うんですけど、絶対にそうならないんで。でも、ならないなりに、ブライアン・イーノは褒めてくれるかなって。ブライアン・イーノは僕のなかでフェイク感なんです。ロバート・フリップは本物感。

(一同笑)

いや、何か伝わりましたよ。いまフェイクじゃなくてすごいなって思える人とかいますか?

ほうのき:あ、そうですね、うーん……

その、フェイクっていうのが、ほうのきさんのなかの倫理みたいなものなのか、あるいは趣味なのか。それともとくに意識してない部分なんですかね?

ほうのき:フェイクじゃないもの……。スカーレット・ヨハンソンが出ている新作で、こっちにはまだ来てないですけど、『アンダー・ザ・スキン』っていう映画。そのトレーラーがすごくて。ペンデレツキみたいな不協和音とか、新幹線がトンネル入った瞬間の「スヴォー!」っていう感じの音だけで構成されたトレーラーなんですよ。そういうのに鳥肌が立ちます。でもこれもフェイクかな……。あと、ちょっと関係ないかもしれないですけど、アニマル・コレクティヴは僕、本当に衝撃を受けて。

ああ、きた……

ほうのき:だいぶ衝撃でした。あの人たちはフェイクじゃないと思います。

フェイクやれないから、いまポルトガルとか行っちゃったのかもしれないですね。

ほうのき:ああ、パンダさんですか? 

あ、エイヴィー・テアのほうが好きでした?

ほうのき:僕、エイヴィー・テアが好きですね。両方好きですけど。

わたしもひとつの原点ですよ。それこそチルウェイヴ的なものの始原でもあると思いますし。けっこう直接的な意味で。

ほうのき:あ、僕もそう思います。

はい。それに、ロック寄りのシーンだと、彼らが出てくるまではそれこそロックンロール・リヴァイヴァルとかポストパンク・リヴァイヴァルとか、「リヴァイヴァル」っていう批評的な音ばっかりが溢れていたじゃないですか。そこへかなり素直に、サイケデリックっていうものをいまやるとこうなる、っていう超おっきな例をドーンと出してきたのがアニコレだと思うんですよ。

ほうのき:ああー。

そしてシーンはどんどんとドリーミーに、サイケデリックに。それまでストーンドなノイズを出してた人たちもニューエイジっぽくなっていったりして。みんなアンビエントになって。

ほうのき:メディテーションな感じになって。

そうですよ。ジャンル関係なく眠りのムードに突入して。

ほうのき:僕、2010年くらいに京都のメディテーションズってお店が大好きだったんですけど、まさかいま大人気なお店になるなんて思ってもみませんでした。

ははは!  駆け込み寺的な。何でも早いですよね。……ええと、フェイクの話に戻りますけど、これ、何なんですかね。これ、このアー写の。それこそアニコレ的というか、ちょっとあの頃のブルックリンの偽物みたいな感じじゃないですか!

篠崎:(ぼそっと)フェイクですね。

ほうのき:ははは! これちょっと、見てください。影もおかしいんですよ。

ああ、気づきませんでした!  だから(笑)、いまこれをやるとしたら超遅れてきたブルックリン主義者か、なんかわざと偽物をやっている人たちじゃないと理解できないというか。

(一同笑)

ほうのき:説明になっているかどうかわからないんですけど、『アラビアのロレンス』をやりたかったんですよ、まず。

ああー! そうか。

ほうのき:それで、まず砂漠を探そうと思って。そしたら千葉にあるっていうから、千葉なんですよ、これ。どこだっけ……

尾苗:館山。

ほうのき:ああ、そうだそうだ。ミケランジェロ・アントニオーニの『砂丘』って映画で、砂丘で何組ものカップルがスワッピングをしてるんですけど、それをやりたかったっていう。このコラージュは、写真を撮ってくれた江森(丈晃)さんがやってくれたんですけど。

ああ、そうなんですね。いろんな偶然も重なりつつ、でも基本は『アラビアのロレンス』だったと。ほんとにアラビアとは思いませんけどね。

ほうのき:そうですよね(笑)。

いえ、否定じゃなくてですね。今回、曲にいろんな世界の地名が出てくるじゃないですか。でも、どれもちょっとふざけた感じというか、生のその土地じゃなくて、やっぱりちょっとフェイクというか。電脳空間にしかないような、情報の断片みたいな感じで国とか土地名が使われてませんか?

ほうのき:あ、合ってます、合ってます。

ちょっと怪しげですよね。“勝手にマハラジャ”とかだって、シタールとか入れてもっとベタにインドっぽくしたってよかったわけじゃないですか。だけど、エレクトロ・マハラジャって感じの、言っといてそれほどインドでもないというアレンジで。そういうあたりのコンセプトについて訊きたくて。地名に何か狙いはあるんですか?

ほうのき:ああ、それはバックパッカー感を出したかったんです。バックパッカーに憧れていて。いや、憧れるってほどでもないんですけど。

ぜんぜん駄目じゃないですか。丘サーファーならぬ……

篠崎:丘パッカー。

丘パッカー(笑)。基本丘ですけどね。なんていうか、脳内パッカー?

ほうのき:ああ、そうだ。じぇじぇ。

出た(笑)。

ほうのき:まあ、詞も僕が書いてるんで、このときはバックパッカー感を出したかったんですね。

篠崎:“ワールズエンド”とかも出てきますよ。

ああ、そうか! 国の名前を列挙してますよね。

『世界の車窓から』。僕はテレビ局に電話かけてました。曲名を見落としちゃって。あれ、ちゃんと教えてくれたんですよ。

ほうのき:兼高かおるさんの世界旅行のとか好きで。ああいうのをやりたいというのもありました。バンドっていう括りであんまり考えていなくって、とにかくおもしろいことがしたかっただけで。その手段としての音楽なんですよ。で、ラッキーなことに富山出身者が4人集まっていて。

そこ、すごいとこですよね!

ほうのき:そうなんですよ……この話、関係ないか。

(一同笑)

ほうのき:バックパッカー感を出したいというのは、音の部分だけじゃないんですよ。基本的には、やっていること全部のなかにあって、それが音にも出たという感じです。

なるほど。でも、それなら『世界の車窓から』みたいな、イイ感じの音楽、もっとその土地のそれらしい雰囲気を出していくという選択肢もあったわけじゃないですか。

ほうのき:ああ、『世界の車窓から』も好きです! ハードディスクにためていた音源のなかには、あの番組で紹介されていた曲もたくさん入ってます。あれはけっこうマイナーな音楽が流れるんですよ。探せないのもけっこうありましたね。

あ、そうなんですね。篠崎さんも?

篠崎:メモったりする程度ですけどね。

ほうのき:僕はテレビ局に電話かけてました。見落としちゃって。ちゃんと教えてくれたんですよ。いまはネットで紹介されてますけど、昔は何時何分に流れたやつ何ですか? って電話で訊いたら、教えてくれたんです。

あはは、すごいですね! いや、でも、そういうもっともらしさとか本格へ向かわないじゃないですか、禁断の多数決は。そこがいいなと思って。いろんな知識があって、音の趣味も幅広いのに、モノホンなセッションをやりたい、本格的に民俗音楽をやりたい、みたいにはならないでしょう?

篠崎:まったくないんじゃない? そんな話、出たことがない。

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音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

ガブリエル世代のポップの裏表

僕は爆笑問題の太田光が好きなんですけど、彼はアートでも何でも、世間一般に広がらなければ意味がないっていうようなことを言うんです。

あ、ジョー・ミークが好きな篠崎さん。……前作は存在自体が問題提起、みたいなところがあったようにも思うんですが、今回はもうちょっとポップスとしてのアルバムの厚みみたいなものも目指されている、もうちょっとリスナーに寄せた作品なのかなと思いました。

ほうのき:あ、そこはひとつ話があるんですよ。もともとこれは2枚組のものだったんですね。

え、そうなんですか? めちゃくちゃ曲数があったということはうかがっていますが。

ほうのき:今回出せなかったもう1枚の方は、メンバー内では通称「ピッチフォーク盤」と呼ばれているもので。

ええっ。そんなはっきりとした性格のあるものだったんですね。

ほうのき:ピッチフォーク盤じゃないほうがこれ(『アラビアの禁断の多数決』)なんです。通称ピッチフォーク盤は、コアなやつばかり集めていて。ジェイムス・ブレイク風からダーティ・プロジェクターズ風、アダルト・コンテンポラリー、ファンカデリックっぽいものまで、いろいろ入っています。かなり分けて作りましたね。

なるほど、ではこのアルバムはある意味では上澄み液というか、難解めなものを落としたかたちだと。

ほうのき:そうですね、振り分けたんです。ポップなのを集めちゃったんですね。

なるほどなあ。Tofubeatsさんとか、若いアーティストの方にわりと感じるんですけど、「ポップスっていうものをちゃんと考えよう」っていうところがありませんか?  そんな問いは放っておいて、天然で好きなものを作っていいはずなんですが、なにか「いかに僕らはポップを作るか」というようなことを詰めようとする。ほとんど倫理として内面化されているようにも思えます。そういう感覚への共感はありますか?

ほうのき:僕は爆笑問題の太田光が好きなんですけど、彼はアートでも何でも、世間一般に広がらなければ意味がないっていうようなことを言うんです。チャップリンが好きだそうなんですね。その意味では岡本太郎ですらまだ弱いって。だからポップっていうことをもっともっと超えたかった、それが今回のアルバムで、「ピッチフォーク盤」のほうはその反対をやりました。だから本当はふたつともいっぺんに出したかったんです。そうしたらスケジュールの関係で最初に作りはじめたポップな方だけ出た……。

なるほどなあ。もっと若い人たちには、ポップスというか、ポップス産業への懐疑みたいなものがわれわれ以上に強いんだろうなって感じるんです。それに比べれば、ほうのきさんの感覚はもうちょっと柔らかいのかなとは思います。逆襲を仕掛けてやるっていうようなモチヴェーションはないですよね?  そこまで意識的でなくポップスが好きだったりするのかなと。わたしは“くるくるスピン大会”とか好きですよ。“トゥナイト・トゥナイト”とか。そのへんアルバムの顔ではないのかもしれないですけど、素直にポップス好きが出ている部分なんじゃないですか?

ほうのき:そうですね。“くるくるスピン大会”は、20歳くらいのときに作ったものなんですよ。はました(まさし)が作ったオケに唄を乗せたものです。適当に多重録音していた頃の作品で、久々に聴いたら「けっこういいんじゃない?」って感じになって。バグルスっぽいかな。“トゥナイト・トゥナイト”もはましたから来た曲です。僕はマニアックなものが好きなんですけど、はましたはわりかし普通の音楽が好きで、だけど彼がある意味いちばん変かもしれないですね。

ははは!

ほうのき:僕ら保育園からいっしょなので。彼はフェニックスとか、ちょっと洒落たAORとかが好きなんです。それで、彼が送ってきた音に僕がいろいろ加えてやりとりしているとすごい変なものができる。バランスがちょっとおかしいんですよね。

へえー、はましたさん。

ほうのき:僕はあの頃、(ザ・)シャッグスみたいな音ばっかり録ってましたね。

ははは。“くるくるスピン大会”がシャッグスに直には結びつかないですけどね!

ほうのき:僕ひとりでやると全部シャッグスになります(笑)。

“踊れや踊れ”とかは、アラン・パーソンズとか10ccとか、ちょっとリッチに味付けされているような印象ですが、祭りのお囃子ってこんなところと相性がいいのかって、ちょっと新鮮でした。……ピーター・ガブリエルがお好きなんでしたっけ?  そこにつながっていくのかあ、って。

ほうのき:そうなんですよ。そこへの自負はありますね。ピーター・ガブ――あ、ピーター・バラカンさんが怒るので、ピーター・ゲイブリエルって言いますね。

あ、わたしもまよいます。じゃ、ゲイブリエルに統一しましょう(笑)。

ほうのき:はい(笑)。ピーター・ゲイブリエル、デヴィッド・バーンが好きなので、そのへんを目指したいというのはあるんです。でも、最近けっこう名前を聞くんですよね。セロの人がトーキングヘッズのオマージュみたいな曲を演ってたり、The 1975とかもピーター・ゲイブリエルがいちばん好きって言ってたように思うんですが、「あれ?  僕だけじゃないのか?」って(笑)。案外そういう若い人がけっこういるんですね。

バンド全体としても重要な部分なのでしょうか? 篠崎さんとかも?

篠崎:重要ですね。それを音にして、偶然性みたいなものも詰め込んでできたのが今回のアルバムです。

ほうのき:最終的に(尾苗)愛さん、ローラーガール、ブラジルの声が入って雰囲気が一気に変わるので、アルバムはおもしろいですね。化学反応というか。そこで一気に禁断の多数決になるんだなっていうところがあります。

いや、それはよくわかります。実際に替えがきかないというか、他の方だと禁断の多数決にならないですよね。でも、すごく平面的に「萌えヴォイス」ってタグづけされてしまうことはありませんか? 今作はもうすでにそんな段階を超えてますかね?

ほうのき:去年まで多かったのは、相対性理論との比較ですかね。

なるほど、それはありましたね。禁断は、要は洋楽じゃないですか。それがちゃんと日本の土壌のなかに、日本固有の表現でもって着地しているところが素晴らしいなと思います。いろんなポイントがありますけど、尾苗さんたちのヴォーカルが果たしているものも、その重要なひとつじゃないかって感じますね。

ほうのき:「よくわかんないけどいい」って言われるのはうれしいです。

篠崎:はっきり「いい」「悪い」っていう反応がないよね。そのへんは曖昧とした感じです。

ほうのき:批判があんまりないのが、ちょっと不安ですね。自分はどちらかというと、否定とかがなきゃだめなのかなって思う方なんですけど、いまのところすごく悪く言われることがあんまりない気がして。

言葉で簡単に言いにくいバンドかもしれません。

ほうのき:そうなのかもしれませんけど、大丈夫かなあって心配になったりはします。

そういう部分で、バンドの方向とかについての話し合いとかをしたりするんですか?

篠崎:いやー、全然ないですね。何かひとつのコンセプトがあって、そこを目指そうというようなこともないですし。

禁断の組織論!

メンバー募集をしていまして。チェ・ホンマンみたいな大きい人、それからダニー・デヴィートみたいな小さいおじさんと、サルバドール・ダリみたいなヒゲで長身の伯爵みたいなゲイのおじさん。そういう集団に近づきたい感じがありますね。

さて、話は変わりまして、禁断の組織論といいますか、みなさんというのがどういう集まりなのかということをお訊きしたいんですけれども。「ノマド」という言葉をわりと使っておられますよね。

ほうのき:はい(笑)。

組織と呼ぶにはもしかすると柔軟すぎるつながりなのかもしれませんが、どうなんでしょう、コアにあるのは富山という地元の縁?

ほうのき:そうですね……。自然に、ですかね。

東京で音楽活動やろう、ってみんなで一念発起して出てきたんですか?

ほうのき:いや、そういうことではなくて、こっちで出会ったりしています。はましたは保育園からですね。篠崎は大人になってからです。ほんとに自然に集まっていて。愛さんは●●の店員さんですね。

尾苗:ああ、はい。そうなんです。

ええっ!

ほうのき:普通に店員さんで、僕が客だったんです。

尾苗:でも、わたしも富山の出身ですよ。

えっ、それは富山のお店で出会ったってことですか?

尾苗:東京です。

めちゃくちゃ偶然、富山だったんですね。

尾苗:たまたまその日だけ、「自分を売り出せ」っていうことで、名札に出身地を書いていたんですよ。そしたら「富山県なんですか?」って声をかけられて。

ほうのき:そうなんです。かわいいなあーと思って。それで、ググって(笑)。

ははは!

ほうのき:ストーカーですよね。でも、そしたら偶然にも共通の友だちがいたんです。

尾苗:わたしはわたしでバンドにいたりもしたので、その声を聴いてもらって……っていう感じですね。

すごいですね。篠崎さんも偶然東京で出会った組ですか?

ほうのき:篠崎は、メンバーの弟とバンドをやっていたりしたつながりですね。

それもまた富山だったと。どちらですか?

篠崎:高岡です。

へえー。そういう、地名が結ぶ縁というものがあるのかもしれないですけど、この10年って、バンドっていうものの説得力がなくなってきた10年でもあったと思うんですね。これ、いろんなバンドの人に訊いている質問なんですけど。

ほうのき:ああー、なるほど。それはわかります。

インディ・ロック系のアーティストが、どんどんソロとかデュオ、もしくは……

ほうのき:アニマル・コレクティヴとかですよね。メンバーも必ずしも揃ってなくていい。

そうそう、そんな世界で、なんでわざわざ5人とか6人とかで関係を結んでいるのか。ひとりやふたりのほうがいろんな部分で面倒くさくないですよね。デュオやソロに存在感が生まれたのもそういうムードの高まりだったのかなと思うんですが、みなさんはどんな感じなんです?

ほうのき:『あまちゃん』にちょっと似てますかね。

出た。

ほうのき:『あまちゃん』は好きで、あと僕は『ツイン・ピークス』も好きなんです。登場人物が全員好きですね。出ている人たちも全員擬似家族っぽい感じがしませんか。あのふたつの作品のいいところは、登場人物全員を愛せるところというか。ひとりもいやなキャラがいなくって。ツイン・ピークスみたいな集団を作りたいっていう感じが昔からあります。

ああ、『ツイン・ピークス』なんですか。誰か死にますね。

ほうのき:死んでも生き返ってくるんですよ、篠崎さんは。

(一同笑)

あはは!

ほうのき:だから、「バンドやりたい」からはじまってないんですよ。劇団というか……。必ずしも劇団が好きなわけではないんですけどね。

なるほど。

ほうのき:いま、メンバー募集をしていまして。チェ・ホンマンみたいな大きい人、それからダニー・デヴィートみたいな小さいおじさんと、サルバドール・ダリみたいなヒゲで長身の伯爵みたいなゲイのおじさん。そういう集団に近づきたい感じがありますね。サーカス団というか。

なるほど、なるほど。映画に出てくる、ちょっと古めかしい旅の興行団みたいな。おふたりもいっしょですか? バンドという意識ではない?

篠崎:そうですね。

仲良しグループでもない?

篠崎:仲良しではないと思いますね(笑)。

ほうのき:ほんとよくわからないんですよ。

特殊ですね。でもそんなかたちでけっこう楽しく、長くいっしょにいられるんだったらおもしろいことですよね。

ほうのき:音楽好きなのは共通していると思うんですけど、6人が集まって音楽の話をすることはほとんどないですよね。

映画観たりする感じですか?

篠崎:いや、そんな仲良くないです(笑)。

ほうのき:昔はよく篠崎とふたりで飲んだりしましたけど、政治の話とかですね。

オブ・モントリオールとかは色が違いますけど、あれもちょっとしたサーカス集団みたいな感じがありますよね。

ほうのき:トーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』っていう映画がありますけど、あれを観ていると、黒人のコーラスの女性サポートが居たり、黒人のギタリストとかキーボードもサポートだったりしますよね。僕のコアにはそういう、さまざまな人といっしょにやりたいという感じがあるんです。だから、必ずしも6人だけでライヴをしたいとかっていうこともないんです。

ひとりひとりが主役になるスピン・オフもありつつ、集まると禁断の多数決になる。

ほうのき:そうですね。

でも、ひとりやふたりだと「多数決」っていう名前ともちょっと違ってきますよね。多数決って、暴力的なものでもあるわけじゃないですか。それが嫌という人が1人いれば、1人には犠牲を強いるわけですから。民主的なんですけど、民主的ってこと自体が必ずしもひとりひとりに優しくないというか。禁断の多数決っていう名前には、そういうことへの問題提起があるなーというか、時代性があるなというか。わたしは初めて聞いたときビリビリっとしました。そういう意味でつけたんじゃないとしても。

ほうのき:僕にはその感覚はけっこうあります。

篠崎:僕はとても多数決に弱いんです。

ははっ! マイノリティなんですね。

篠崎:いつも負けるので、「本当に俺は間違っているのか?」っていうことをずーっと幼少の頃から感じてきたんですよね。そういう気持ちや会話の流れから(禁断の多数決というバンド名が)生まれた部分はあるのかもしれないですね。鍋のときとかに(笑)。

あはは!

ほうのき:しょっちゅう飲んでたんです。政治を語る友だちでした(笑)。あの頃なんであんなに政治の話が好きだったんだろう?

篠崎:転換期というか、ちょうど自民党が崩れていく時期だったりしたからね。

民主党政権が成立してからむしろ興味が引いていったみたいな。

ほうのき:そうかもしれないですね。

篠崎:こんなもんかという。

そして、フェイクな国の旅をはじめた(笑)?

ほうのき:ははは、そうかも! まとまった!

まとめるのも暴力ですけどね!  でも、とっ散らかっているようで芯があるバンドだというのはとてもよくわかりますよ。

ほうのき:醸し出しているつもりはないんですけどね。

しかし、多数決で必ず少数派になっちゃう人っていうのはおもしろいですね。禁断の場合、それが恨み節になってないじゃないですか。

篠崎:恨み節ですか。

そう、マイノリティが逆襲してやるぞって感じにはならないですよね。

篠崎:それはないですね。いじけるだけみたいな(笑)。

ほうのき:ルサンチマンがない。

篠崎:溜め込んだりしないですね。

それで必要以上に皮肉屋になったりとか。それも立派な表現のモチヴェーションなんですけどね。

ほうのき:わかります、わかります。

篠崎:僕らは決してマイノリティのほうが正しいっていうふうに思っているわけではないんですよね。

ほうのき:一見バンド名とは違っちゃうんですけど。

よくわかります。そこが禁断のねじれたところというか、素直なところというか。

日本脱出

ワールドカップとか、日本を応援しますね。めっちゃ応援して、負けると悔しいんですけど、これがナショナリズムかっていうとそういうものだとは思えない。

ほうのき:ある有名な音楽家の発言なんですけど、日本はもう脱出するしかないって。うまく説明できないけど、逃げるってポジティヴなことかもしれないとも思ったりもするんです。

へえー、そうなんですね! いま「逃げる発言」には勇気がいりますけどね。

ほうのき:逃げてるだけといえば、そうなんですけど、逃げてるわけでもないというか……。

わかります。日本に内在すること――tofubeatsさんのインタヴューがとてもよかったんですけど、彼には日本とかJポップ市場の内側からルールや仕組みを変えていってやろうというモチヴェーションを感じるんです。それに対して禁断はどこか外側にいるかもしれませんね。外在的というか。

ほうのき:ワールドカップとか、日本を応援しますね。めっちゃ応援して、負けると悔しいんですけど、これがナショナリズムかっていうとそういうものだとは思えない。もちろん土地とかに感謝の気持ちはあるんですけど。だからその音楽家の日本脱出っていうのは、何かとても重たい言葉だと感じるんです。うまく言えないですけど。

篠崎:曲に国の名前がよく出てくるっていうこととつながりがあると思いますけどね。日本というものにこだわっているわけではないということは、歌詞を見てもわかるはずだと思うので……。バックパッカーになりたいわけだしね。

曲には「おわら」からチンドン屋までフィーチャーしてますよね。それをひとつのトライバリズムだととらえれば、一時期のブルックリンにも似ているというか。日本の中だけど、日本の中の異次元、別の場所に向かう感じ。

ほうのき:ああー。あと、ベイルート好きなんです。ベイルートを日本でやるとしたらチンドン屋かなと思って。日本の文化を大切にしたいっていうのは常に念頭にあります。

郷土や歴史や神々みたいなものへの愛はあるわけですよね。じゃあ、今度は禁断の多数決のオカルト思想について訊いてみましょうか!

ほうのき:オカルト(笑)。ええ!?

篠崎:……宇宙とかなら(笑)。

ほうのき:でも、呪術とか、あるといえばあります。僕、ロッジを持ちたいんですよ。で、ホワイト・ロッジとかブルー・ロッジとかブラック・ロッジとか名前をつけて、そこで呪術をやりたいですね。

尾苗:ははは。

ほうのき:ロッジで、何か焚いて……

篠崎:何かキタ! みたいな(笑)。

ほうのき:「よしよし、曲にしよう」(笑)。

篠崎:「これこそが曲だ」(笑)。

まさに『キャンプファイア・ソング』じゃないですか。それがクラブとかじゃなくて、パーソナルな感じで営まれているというのもおもしろいですよ。さて、最近はどんなふうに音楽を聴いていますか?

篠崎:iTunesとかが便利なので、シャッフルして流しちゃってたりはするんですが、ちょっと久々にレコード聴こうと思ってかけていると音が全然ちがいますね。太いです。MP3の音に慣れすぎてて、忘れていました。なので最近はレコードをまた探すようになりました。

ほうのき:変なのばっかり買ってるね。レジェンダリー・スターダスト・カウボーイだっけ?とか。

どのへんで買ってるんですか?

篠崎:大きいところは(ディスク・)ユニオンとかしかないじゃないですか。あとはリサイクル・ショップにダンボールで置いてあるようなやつとか。そこでソノシートとかを買ってみたり、『(がんばれ!!)ロボコン』のお話レコードとか。ロボコンの考えているときの音がすごくいいというか……「ロボコン、いまから考えるねー」みたいなときにポコポコポコーって鳴っている音がかっこよかったりするんですよね。

ほうのき:あ、篠崎さんはアニコレでいうジオロジスト担当なんですよ。変な音は基本的に篠崎さん。

なるほど!  ネットでも変なものはいっぱい集められそうですが、何かフィジカルを探すこととのあいだに差があったりしますか?

篠崎:ありますね、やっぱり。過程があるかどうか、ということですかね。ゴミの山のなかから一枚見つけるときの喜び。

ネットも、まあ、ゴミの山から探す作業ではあるわけですが。

篠崎:思い入れは違ってくるかな、と思います。わざわざ電車に乗って、何もないかもしれないけど行く。そうすると聴き方も違ってくるような気がしますし。……ちょっとかっこつけて言ってしまったかもしれないですけど。

ほうのき:僕も、たとえばヴェイパーウェイヴとミューザックの違いについて考えてみたいですね。そこにいまの質問の答えになるものがあるような気もします。

Phoenix - ele-king

 グラミーのオルタネイティヴ・ロック部門のベスト・アルバム賞を獲り、完全にアメリカのマーケットに認められたフェニックス。すごいことです。日本のアーティストはいつこういうことができるのでしょう。頑張ってほしいと思います。

 ビートルズ以前のフランスの音楽は世界的な音楽だったんですよね。ビートルズ以降もミッシェル・ポルナレフという世界的に成功したポップ・アーティストもいました。フェニックスのスイートな感じはミッシェル・ポルナレフを思い出します。ミッシェル・ポルナレフは日本でも大人気でした。パンク時代もプラスチック・ベルトランが突然大成功したりしてましたね。
 ワールド・ミュージックもフランスのマルタン・メソニエがプロデュースして、世界でヒットする音楽にしたわけで、前作と今作のプロデューサーであるカシアスのフイリップ・ズダールも、マルタン・メソニエがよく使っていたスタジオの息子で、子どもの頃からマルタンを尊敬して、世界に通用する音楽を作りたい――「マルタンを尊敬し、自分もそうなることを夢見ていた」と言ってました。
 フェニックスを聴いていると、ぼくはそういうフランスの歴史を感じます。
 だから日本人がこれをやるというのはなかなか大変なことなんだろうなと思います。YMOはそういうことを考えて作られたバンドでしたが、グラミーまではとれなかったですもんね。
 フェニックスやザ・ハイヴスなどの成功を見ていると、母国語じゃなくっても、英語で歌っていくべきなんだろうなと思います。昔、内田裕也さんとはっぴいえんどが、ロックを日本語で歌うべきかどうなのかで大激論になったことがあるのですが、僕はずっとはっぴいえんど派で、日本語で日本のロックを歌っていくべきだろうと思っていました。『ミュージックマガジン』での両者の対談を読んでいると、ロックは英語の音楽なんだから英語で歌えという裕也さんの意見は押しつけがましいと思っていたのですが、いまはフェニックスの成功を見ていると、たとえ海外でなかなか認められなくっても英語で歌っていくべきだったのじゃないかと思っています。
 当時は裕也さんの意見に反発していた細野さんが後に世界マーケットを視野に入れたYMOを作ったのは、裕也さんの意見に最終的には賛同したのかなという気もします。
 フェニックスの新作について話そうと思ったら、とんでもない方向に言ってしまいました。新作は大成功した前作をもっと進歩させたアルバムです。日本人の人がフェニックスを大好きなのは、彼らの「ロックなのにやさしい」という部分だと思うのですが、その部分は今作はちょっとなくなってしまっているのかもしれません。それはアメリカのマーケットを意識したのか、どうなのか僕にはわかりませんが、ぼくはその強くなった部分に新鮮さを感じますし、好きです。
 でも、やっぱりフェニックスを聴いて思うのは、英語をしゃべらない国の人も頑張ればアメリカのマーケットで認められるんだ。すごいな、日本人も頑張れということです。

The Field - ele-king

 白よりも黒、光よりも陰、そしてイエスよりもノー……。ザ・フィールドの新作である。
 これまで白(正確にはクリーム色だが)を貫いてきたアルバム・ジャケットを真っ黒にする。ただそれだけのことで何か劇的な変化を期待させること自体が、彼、アクセル・ウィルナーのはじめのプレゼンテーションである。そうして乗せられたリスナーはしかし、多くのひとが僕と同じように、アルバム1曲めの“ゼイ・ウォント・シー・ミー”を聴いてこう思うだろう……「えっ同じやん」。ビートは4つを打ち、シンセのフレーズが繰り返され、そこにシューゲイジングな味つけがされ、じょじょに、じょじょに楽曲に熱が帯びていく。幕開けとしてはもちろん最高にスリリングだが、しかし、これは紛れもなくこれまでもわたしたちが馴染んできたザ・フィールドである。いったい「劇的な変化」はどこに? と怪訝なまま、2曲め“ブラック・シー(黒海)”へ。ここでもまたビートは4つを刻み、シンセのフレーズが繰り返され、そこにシューゲイジングな味つけがされ、じょじょに、じょじょに楽曲が熱を帯びていく……これも、ザ・フィールドである。が、トラックが7分に差し掛かるころである。ビートが微妙に乱れ、それまでと別の不穏なリフが底のほうから静かに立ち上がってくる。ハットは16を刻み、吐息のサンプルが左右から飛んでくる。気がつけば、曲が始まった瞬間とはまったく異なる、ダークなダンス・トラックがそこに出現している……ここでようやくこう思うのだ。「こんなザ・フィールドは聴いたことがない」。つまりこういうことだ……ザ・フィールドの新作『キューピッズ・ヘッズ』のスタイルは、これまでと何も変わらない。が、同時に、「これまでと全然違う」。ここで、1曲めのタイトルの巧みさに気がつくのである……「やつらは俺がわからない」。

 これはアクセル・ウィルナーによる、「変化」に対する繊細なコメンタリーのようであり、ある種の批評的態度であるように思える。たとえばこんなインタヴューを、あなたは読んだことがないだろうか。Q:新作は前作とかなり印象が異なりますが、これはどういう理由によるものなのでしょうか? A:前作と同じことはやりたくなかったんだ。僕はほら、飽きっぽい性格だから、同じことは繰り返したくないんだよね。毎回違うことをやることが僕の挑戦なんだよ…………とか何とか。そしてこうしたものを読むたびに、「それが「同じこと」なんだよ」とつっこみたくはならないだろうか。わたしたちはそんなありきたりの、お決まりの「変化」を、日常的にじつにたくさん消化している。ザ・フィールドはそんなクリシェを周到に避けるようにして、じっくりと作品に向き合った人間にだけ届くような変身をここで見せているのだ。
 前作『ルーピング・ステイト・オブ・マインド(ループする精神状態)』はタイトルにもあるように、自らの音楽スタイルに自己言及するようなアルバムであった。そういう意味で、彼は自分の様式というものにつねに自覚的で、それを対象化し続けている。このアルバム全体で行っている繊細な変化とはそもそも、これまでの楽曲のなかで彼がつねに取り組んできたことでもあるだろう。同じフレーズをひたすら繰り返しながら、しかし何か決定的な違いを混ぜ込んでいくこと……。セカンド・アルバムのタイトル、『イエスタデイ&トゥデイ(昨日と今日)』はまさしく、そんな「わずかな、しかし決定的な違い」に言及するものであったろう。新作に戻れば、タイトル・トラック“キューピッズ・ヘッド”にしても、“ア・ガイデッド・ツアー”にしても大筋は変わらないが、ファースト『フロム・ヒア・ウィ・ゴー・サブライム(ここからわたしたちは絶頂へ)』でザ・フィールドの徴であり人気を集めた要素であった、高揚によるカタルシスは徹底して避けている。そして、本作でもっともチャレンジングなトラックが続く“ノー、ノー...”である。「ノーノーノーノーノーノー」というヴォイス・サンプルが乱れ飛び、ビートも乱れ、しかしあくまで構造としてはループしている。トラック中盤、奇妙に拍を刻みながら気分がずぶずぶと沈んでいくような展開は、間違いなくこれまでのザ・フィールドにはなかったものであり、また他でもなかなかお目にかかれないものだ。クロージング・トラックの“20セカンズ・オブ・アフェクション”の頃には、エクスタシーを迎えないまま酩酊し続けるザ・フィールドの新たな快楽に耳と身体が馴染んでいることに気づく。〈タイニー・ミックス・テープス〉がスタイルを「good sex」とする妙なレヴューを書いてしまうのも頷ける。

 前作のレヴューで僕は「反復が持つ可能性のより奥へと分け入ることに成功している」と書いたが、ウィルナーはなかば求道的にさらにその奥にここで進もうとしている。もはや、これは茶道とか華道とかで言う「道」に近い領域に突入しているようにすら思えるがしかし、これはあくまでダンスも含んだ快楽のあり方のひとつである。その、さらなる複雑な領域をフレーズの繰り返しとともにウィルナーは探り当てようとしている。ノーノーノーノーノーノーノーノーノー……

Liveミュージックのつくり方 - ele-king

 「Ableton Live」といえば、DTM用でありながらリアルタイムの操作性に優れた、ソフトウェアというより、触れれば音の鳴る弦楽器や打楽器のような、というか、エレクトロニック・ミュージックに携わる者にとってはまことに使い勝手のよい名機だが、Ableton Liveをテーマにデモンストレーションとパフォーマンスを行うイヴェント〈FADE TOKYO〉を今週および来週末開催するという。開催にあたり、米国から公認トレーナーであるジョシュ・ベスが来日。両日にわたり質疑応答とライヴ演奏をまじえながら、Ableton Liveでの楽曲制作方法、MIDIアウト使用したライティングの操作を教授する一方で、24日のスペシャル・ゲストに井上薫、29日はKOYASを招き、創作やライヴの場でソフトウェアをどのように用い、かつその相関関係でいかにして音楽ができていくかを体験する、またとない機会になるにちがいありません。

 ほかにも、今年、実験的でありながらやわらかなポップ・センスを感じさせるファースト・アルバム『In Between The Last Tone And Silence』をリリースしたEcho in Mayも両日ともに出演し、入門者にもやさしいレクチャーとパフォーマンスを披露してくれるとのこと。

 かくいう機械音痴なわたしでさえ、フィールド・レコーディングした音を加工したり打ち込んだり、Ableton Liveにはひとかたならぬお世話になっているくらいですから、これから音楽をつくろう、つくりたいと思っている読者はひとつ、PC持参で参加してみてはいかがでしょう。

■Ableton live Conference「FADE Tokyo」 ~supported by High Resolution~

会場: fai aoyama

■Day 1:2013年11月24日(日)
open 16:30
price ¥2000 / 1d

special guest speaker & performance
Kaoru Inoue

guest speaker & performance
Josh Bess
Echo in May(Fluxia)
coa(ROKURO/coma)

Live performance
Reatmo
inotsume takeshi
疋田 哲也+中山剛志
DJ At(BlackRussian)
and more…

■Day 2:2013年11月29日(金)
open:21:00
price:¥2000/1d

special guest speaker&performance
KOYAS

guest speaker&performance
Josh Bess

Live & DJ performance
Kazuaki Noguchi (Modewarp)
Echo in May (Fluxia)
MINIMA LIEBENZ (DJ SAIMURA×SHINYA MIYACHI)
GORO (Arabesque Greenling | Snows On Conifer)
DJ At (BlackRussian)
DJ Kohei Suzuki
SASAKI JUSWANNACHILL
DJ Oikawa
Yosuke Onuma
Uka
and more...

Anton Zap - ele-king

 「俺は絶対にダフト・パンクもディスクロージャーもかけない」と胸を張ったのはブラウザだった。彼も関わっているレーベル〈My Love Is Underground〉の名付け親は、DJディープだそうだ。90年代末のフレンチ・タッチ(90年代末にポップの表舞台に躍り出た、ダフト・パンクやエールなどのフランス勢の総称)とは意識的に距離を置いたベテランDJで、僕はパリで彼と会ったことがあるのだが、この男、自分が知っているDJのなかでも3本の指に入る反骨精神の持ち主だ。まさに信念の人といった感じで、誇り高きアンダーグラウンドの住人とでも言えばいいのか。
 そんな彼のやってきたことが新しい世代に受け継がれていることは歴史を知る者にとってかなり感動的な話なのだが、君にとっても喜ばしいことだと思う。“キャン・ユー・フィール・イット”でも「アトモスフィアEP」でも〈Prescription〉時代のロン・トレントでも、その手の音楽がかかっているとき、あり得ないほど優しい気持ちにはなれても、無理なナンパをしたり、暴力的な気持ちにはならないだろう。重要なのは音楽であり、人だ。
 アンダーグラウンド・パリスやブラウザをはじめ、ディープ・ハウスへの世間の注目を加速させたのは、ザ・XXやジョイ・オービソンらベース・ミュージック世代のハウスへのアプローチと90年代リヴァイヴァルであることは、ブラウザ本人もわかっている。5年前、ハウスはほぼ死んでいたと彼も言った。あの頃はベルリンのミニマルばかりが騒がれ、ディープ・ハウスなんざぁ誰も見向きもしなかったけどな……と愚痴りたくもなろう。しかし、好むと好まざるとに関わらず、ディープ・ハウスは90年代リヴァイヴァルという流行のなかで蘇った。ベルリンのテクノと拮抗するかのように、パリがまた重要な役割を果たしそうなところも興味深い。
 スターDJがいて、だーっと大量の客が入って、がーっと踊って、わーっと騒いで、だーっと家に帰ると。あれ、それって財布の中身と体力を消耗しただけで、なんか違うんじゃない? それはカタルシスなのか? はっきり言って空しい……などと思った方々が「バック・トゥ・ベーシック」をスローガンに、もう一回小さいところから仕切り直そうぜとおっぱじめたのが、90年代なかばのディープ・ハウスだった。俺らが求めていたのは、水商売でもないし、ナンパでもない。音楽だろう、ロン・トレントだろう、ノーザン・ソウルだろう、last night DJ saved my lifeだろう。これがいまふたたび起きている。いや、ずっと起きているのだが、急速に見えやすくなったディープ・ハウスなるシーンである。
 アントン・ザップはロシアのDJ/プロデューサーで、NYのディープ・ハウス・シーンのキーパーソンのひとり、Jus-Edの〈Underground Quality〉から多くの作品を出してる。本作は〈R&S〉傘下の〈アポロ〉からリリースされた2枚組の12インチである。
 〈アポロ〉らしく、ひと昔前ならアンビエント・ハウスなどと呼ばれていたであろう、ゆったり目のBPMに、ハウスのビート、アンビエントなループと音響が重なっている……って、あれ? これって何年の作品? 1991年のエイフェックス・ツインの変名じゃない? 淡い残響のなか、電子音の優しいさざ波が打ち寄せる1曲目の“Water”を聴いていると、『アンビエント・ワークス』の頃にエイフェックス・ツインにあまりにも似すぎていて……。要するに、ここにはIDMやテクノのセンスが注がれているのだ。個人的には無茶苦茶好みの音だけれど、やっぱりまだ大手を振って喜びきれないなぁ。しかし、期待はしたい。僕が知っているディープ・ハウスのシーンは、(主役となる音楽はUS産だが)いわばヨーロッパ型の、コミュニティありきのシーンだった。小さいシーンがいろんな場所にたくさんあるイメージで、そこは明らかに都市の避難所だった。
 アントン・ザップを、今日のディープ・ハウス・シーンのキーパーソンのひとりだったと言ったのはブラウザ、彼のインタヴュー記事は、次号の紙エレキングに掲載します。

DJ Hakka-K (Luv&Dub Paradise主宰) - ele-king

年末に向けて一度は覗いて欲しいお店ばかりを列挙しました!どこへ行っても良いDJや良い仲間と近い距離で知り合えるはずです!
順位に特別意味はありません。まだまだいいお店一杯あるのでpt2へと続く予定です!
風営法にもマケズ、近所の苦情にもマケズ、良質な音とハートを提供してくれるDJとお客さんの最前線なお店ばかりです。
都内じゃなかったりCLUB形態のお店は割愛しました。

以下で近況や良いPARTYをつぶやいたりつぶやかなかったり
Luv&Dub Paradise:https://www.luvdub.jp/
Luv&Dub TW:https://twitter.com/Info_Luv_Dub
DJ_Hakka_K:https://twitter.com/DJ_Hakka_K

求めればソウルメイトと必ず会える都内のDJ BAR&小箱10選 pt.1


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東高円寺GRASSROOTS
先日16周年を迎えたばかり。説明不要都内の小箱の代表!の割には狂った人が多数よく来る!
https://www.grassrootstribe.com/

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原宿bonobo
名物店主「SEIさんと愉快な仲間達」なお店。ハイエンドオーディオの研究にも熱心!アホばかり集まる割には内装はシャレオツ!
https://bonobo.jp/

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吉祥寺bar Cheeky
ジャニ顔のミュージックラバー「アビー」を中心にジャンルレスで吉祥寺界隈の強者共が集う店
https://twitter.com/barCheeky

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三茶bar Orbit
Chillな感じでゆったり音を楽しめるナイスな内装!靴を脱いで自宅感覚で音にハマれる!
https://bar-orbit.com/

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渋谷re:love
いかがわしいエリアのいかがわしい場所にあるいかがわしいお店。底抜けにアホな連中ばかりが時を忘れに集まる魔窟。
https://www.facebook.com/shibuya.relove?ref=ts&fref=ts

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青山BAR OATH
ありえない立地にあり得ない音量で勝負するとんでもない店。外タレを連れてくと「これが東京か?」とみんな感動する!
https://bar-oath.com/

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三茶天狗食堂
三茶の妖精ことDJ INAHOとドスコイ感満載のダーチーが運営する「THE 場末」。レジデントの関ヒデキヨのDJは必聴!
https://tengushokudo.com/

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下北沢MORE
内装は80年代カフェバーを想わせるアーバン感満載だがブッキングも内容も狂人ばかりが集ってる!!
https://smktmore.com/

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神泉メスカリート
いかがわしいエリアをちょっと抜けるとあるいかがわしいお店。re:loveと同じく底抜けにアホな連中ばかりが時を忘れに集まるやっぱり魔窟。
URL等情報ソースなし、、、

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渋谷DJ BAR KOARA
小箱には珍しく真っ暗闇でハマれるので要注意。バーテンの作る酒の上手さは常に上位クラス!
https://www.koara-tokyo.com/
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