「Juke」と一致するもの

Moodymann - ele-king

 4月29日、東京晴海で開催される「Rainbow Disco Club」に出演するために来日するムーディーマンですが、東海、関西、北陸方面のツアーも決定しています。
 最近では、新しい12インチ「Sloppy Cosmic」(Pファンク・ネタの曲+新曲)が予約の段階ですでにショート。相変わらずの人気を見せつけているムーディーマン、折しも、ハウス・ミュージックが加速的に逆襲している今日ですから、ここは注目したいところです!

■MOODYMANN JAPAN TOUR 2014

4.25(金)名古屋 @Club Mago
4.26(土)金沢 @MANIER
4.27(日)大阪 @Studio Partita(名村造船所跡地)
4.28(月)岡山 @YEBISU YA PRO
4.29(火/祝)東京 Harumi Port Terminal @Rainbow Disco Club


■MOODYMANN JAPAN TOUR 2014

4.25(金)名古屋 @Club Mago
- AUDI. -

Guest DJ: Moodymann
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

Open 23:00
Advanced 3000yen
Door 4000yen

Info: Club Mago https://club-mago.co.jp
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F
TEL 052-243-1818


4.26(土)金沢 @MANIER
MUSIC BUNNY - MOODYMANN JAPAN TOUR 2014 -

Guest: Moodymann
DJ: DJ YOSHIMITSU(S.E.L/MusicBunny), BONZRUM(S.E.L/MusicBunny), Diy(everyday records/MusicBunny/HI-LIFE), U-1(HI-LIFE)
Lighting: etenob!

Open: 22:00
Advanced: 3500yen
Door: 4000yen

Info: Club Manier https://www.manier.co.jp
金沢市片町1-6-10 ブラザービル4F
TEL 076-263-3913


4.27(日)大阪 @Studio Partita(名村造船所跡地)
- CIRCUS & AHB PRODUCTION presents
MOODYMANN JAPAN TOUR OSAKA SUNDAY AFTERNOON SPECIAL -

Moodymann
MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)
MARTER(JAZZY SPORT)
AHB Trio+TeN(A Hundred Birds)
DJ AGEISHI(AHB pro.)
DNT(FLOWER OF LIFE/POWWOW)
DJ BANZAWA(Soul Tribe/Radical Soul)
DJ QUESTA(COCOLO BLAND/HOOFIT/PROPS)
MASH(Root Down Records/HOOFIT)
YASUHISA(TetralogisticS)
KAITO(MOLDIVE)
FUMI(LMIRL)

Lighting: SOLA
PA: KABAMIX

Open:15:00 - Close: 23:00
Advanced: 3500yen
Door: 4000yen

Info: CCO クリエイティブセンター大阪 https://www.namura.cc
大阪市住之江区北加賀屋 4-1-55 名村造船所跡地
TEL 06-4702-7085

circus https://circus-osaka.com
大阪市中央区西心斎橋1-8-16
TEL 06-6241-3822


4.28(月)岡山 @YEBISU YA PRO
Guest DJ: Moodymann
DJ’s: hysa, TETSUO, flying jukebox, fxtcmatty, York, YOSHIDA, Nakamura, SOW

Open: 22:00
Advanced: 3000yen
Lawson Ticket: L-code 61913
Door: 4000yen

Info: YEBISU YA PRO https://yebisuyapro.jp
岡山市北区幸町7-6 ビブレA館 B1F
TEL 086-222-1015


4.29(火/祝)東京 Harumi Port Terminal @Rainbow Disco Club

Info: Rainbow Disco Club https://www.rainbowdiscoclub.com
東京都中央区晴海5-7-1(晴美客船ターミナル)

Total Tour Info: AHB Production www.ahbproduction.com


■Moodymann (KDJ, Mahogani Music / From Detroit)

 ミシガン州デトロイトを拠点に活動するアーティスト、MoodymannことKenny Dixon Jrは、レーベル〈KDJ〉と〈Mahogani Music〉を主宰し、現代そして今後のインディペンデント・シーンやブラック・ミュージックを語る上で決して無視出来ない存在である。
 1997年、デトロイト・テクノ名門レーベル〈Planet E〉からファーストアルバム『Silent Introduction』をリリースし、その後UKの名門〈Peace Frog〉よりアルバム『Mahogany Brown』,『Forevernevermore』,『Silence In The Secret Garden』,『Black Mahogani』をリリース。
 『Black Mahogani』の続編『Black Mahogani Ⅱ ~ the Pitch Black City Collection ~』では、もはやStrataやTribe、Strata Eastといったブラックジャズ〜スピリチュアルジャズをも想わす作品を発表し、その限りない才能を発揮し続けている。  また、J Dillaの未発表作をYANCEY MEDIA GROUPとMahogani Musicとで共同リリースし、J Dilla Foundationに貢献した。 2014年1月にはKenny Dixon Jr.名義でのアルバム『MOODYMANN』をリリース。5月23-25日の3日間渡り、デトロイトにてSoul Skate 2014を開催する。

www.mahoganimusic.com
www.facebook.com/moodymann313
www.facebook.com/blackmahogani313


 

Road 2 Battle Train Tokyo - ele-king

 恵比寿のリキッドルームで、日本初のフットワーク・バトル・トーナメントが開催されます。3月29日(土曜日)に、激しいダンス・バトルが見れます。興味のある方、ぜひ、足を運んで……いや、足を高速に動かす人たちを見物しましょう!

 昨年10月にリキッドルーム2階奥のKATA + Time Out Cafe & Dinerにて開幕した日本初のフットワーク・バトル・トーナメント=Battle Train Tokyo(略してBTT)。今年6月28日(土曜日)に開催されるBTTに向け、その前哨戦となる"Road 2 Battle Train Tokyo(略してR2BTT)が3月29日(土曜日)に決定! まずはR2BTTを勝ち抜きBTTのシード権をその手につかもう! 競いしフットワーカー/ダンサーの勇姿をみなで刮目しましょう!

 シカゴ・ハウスを源泉にまさにそのシカゴのローカル・シーンにて独自の進化を続け高速化した音楽スタイル「ジューク」が、足技に重きを置いたダンススタイルと密接に関連し、低音と三連譜などトリッキーなリズムが強調され「フットワーク」という音楽/ダンス・カルチャーとして広がり進化/発展。この国でもさまざまなイヴェント/パーティー/ワークショップなどが開催されるなか、BTTはBPM160のジューク/フットワーク・トラックの上でさまざまなダンサーたちがスタイルやルーツ、世代を超えて競い合えるオープンなバトル・トーナメントの場として、この国のジューク/フットワーク・シーンを支えるDJやトラックメーカー、ダンサーたちと一緒にさらなるこのシーンの燃焼と循環を目指します。毎月第三水曜日にはフットワークDOJO=Battle Train Tokyo Express(略してBTTE)も同会場にて開催中。

※3月19日(水曜日)19:00(ジューク日、ジューク時)より、同会場にて第三水曜日に定期開催されているフットワークDOJO=Battle Train Tokyo Express(略してBTTE)が開催! 概要は下記リンク先をご参照ください。
https://www.kata-gallery.net/events/BattleTrainTokyoExpress_3/

《概要》
Road 2 Battle Train Tokyo

@KATA
Judge:HARUKO(RudeGirl3),
KENT ALEXANDER(PPP/PAISLEY PARKS), Takuya(HaVoC) and You
Host:ヒューヒューBOY(GROSS DRESSER/MAGNETIC LUV)
Exhibition:HARUKO(RudeGirl3) x Takuya(HaVoC)
Guest DJ:SEX山口
Chicago Legacy Set:D.J.April(Booty Tune)
Sound by:Booty Tune, DjKaoru Nakano, DJ SEKIS & DJ DIKE, SHINKARON

@Time Out Cafe & Diner
BTT Lounge presents
JINTANA&EMERALDS "DESTINY" pre-release party supported by PPP
special oldies B2B and live session:JINTANA&STRINGSBURN
DJ:LUVRAW, iga-c, Kent Alexander

《バトルへのエントリー/ルールについて》
・バトルは個人戦のみです。2ターン(1バトル5分ほど)になります。
・ダンス・スタイルは自由ですが、バトル中に流れる楽曲はジューク/フットワーク・トラック(BPM160)のみとなります。
・バトル時の選曲は主催者側でご用意させていただきます。
・オーディエンスの声援と審査員によるジャッジ・システムを採用致します。
・バトル・トーナメントへのエントリー・フィーは2,000円となります。
・優勝者には6月28日(土曜日)に開催されるBattle Train Tokyoのシード権、優勝賞金10,000円を進呈させていただきます。
・前回のBTT優勝者、準優勝者のエントリーは今回はありません。
・バトル・トーナメントへのエントリーは件名を「3.29 R2BTT」として<entry@liquidroom.net>までメールにてお願い致します。ネーム表記と連絡先(氏名/電話番号)も合わせてお送りください。なお、お送りいただきました個人情報は今回の「R2BTT」に関わる目的にのみ使用し、他の目的には使用致しません。

2014.3.29 saturday evening
KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
open/start 17:00/18:00-22:00
battle tournament entry fee 2,000yen / admission fee 1,500yen

info
Battle Train Tokyo twitter | Facebook
KATA https://www.kata-gallery.net
Time Out Cafe & Diner 03-5774-0440 https://www.timeoutcafe.jp/
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

《出演者紹介》
▼HARUKO(RudeGirl3)
コンテスト受賞歴:BIGBANGダンスコンテスト特別賞/femal trouble 3位/tokyo dance delight特別賞/BTT準優勝
13歳の頃ブラックミュージックと出会い、ヒップホップダンスを踊り始める。その後レゲエミュージックと出会い、ヒップホップ、レゲエを共に、独自に踊り始める。2003年ニューヨークで本場のストリートダンスのレッスンをうける。その後クラブでのショータイムに出演しつつ、インストラクターとして活動、2009年にはジャマイカに渡り現地のdancehallqueenコンテストにも出場。セカンドラウンドまで勝ち残る。そしてヒップホップ、レゲエなどをミックスした独自のダンススタイルを確立する。そして、2013年BTTにて準優勝。footworkの活動を開始する。現在は都内のクラブでのショーやバトルで活躍中。

▼Takuya(HaVoC)
東京都在住。本場シカゴでも有数のフットワーク・クルーHaVoCに唯一の外国人として名を連ねるフットワーカー。高校時代よりダンスを始め、ブレイキン、ソウルダンス、ハウスなど様々なジャンルをどん欲に学ぶ。2011年、ダンスバトルの世界大会Juste Deboutで活躍するFootworKINGzに衝撃を受け、フットワーカーとしてのキャリアをスタート。ほどなくして開設したYouTubeチャンネルにアップした動画をきっかけにH.a.V.o.Cにスカウトされる。その多彩なステップはフットワーク専門サイトFORTUNE&BANGに取り上げられるなど、本場シカゴでも高く評価されている。2012年10月に開催されたTRAXMANの来日公演にダンサーとして帯同。そのフットワークで各地に熱狂をもたらした。2013年はPaisley Parks、MOP of HEADのミュージックビデオに出演するなど、活躍の場を広げている。
https://twitter.com/TAKUYAxHaVoC

▼KENT ALEXANDER(PPP/PAISLEY PARKS)
ヨコハマ【PAN PACIFIC PLAYA / Бh○§†】所属。BAYなJUKE/FOOTWORKチーム【PAISLEY PARKS】構成員。まるでRAVECOREなDJチームTERROR Pとしても爆笑中。ゲットーレイブ育ちのDJ。インターナショナルスクール時代からアングラパーティー活動のしすぎでアメリカへ落ちる。2012年末、横浜帰還。シカゴのラジオ局のDJMIX SHOWに出演して、PAISLEY PARKSオンリーミックスを披露したり、日本で初めてのFOOTWORK大会【BATTLE TRAIN TOKYO@KATA】を主催するなど、JUKE/FOOTWORK周辺に集まる最もクレイジーな連中の1人。これまでにSWEET SOULのMIX ”Sweet Temptation”と、PAISLEY PARKS音源をアシッドEDITした”THE MIX”を発表。和訳、英訳のお仕事承ります。陽気な大きい弟系の通訳/アテンドもお気軽に◎
https://twitter.com/kent045
https://www.panpacificplaya.jp/blog/
https://ghost045.bandcamp.com/

▼ヒューヒューBOY(GROSS DRESSER/MAGNETIC LUV)
ヨコスカン&ミウラーノ光る海岸系DJユニット『GROSS DRESSER』で活動中。チルってなんぼなメロウトリッピンMIXCDをALTZMUSICAより発表。ハッピーな目つき「MAGNETC LUV」所属。LUVRAW&BTBのライブで、にぎやかしい司会を担当。好評と酷評の間で居眠り一千万。江ノ島OPPA-LAの便所や各種野外パーティーでUP&DOWN、毎年好評の秘密ビーチパーティーも欠かさず解放中。彼の作るホットサンドを食べた内、3人くらいが人生を成功させたようだ。司会、ホットサンド、DJのご用命はお気軽に☆

▼SEX山口
1976年生まれの牡羊座。神奈川県出身の脱力系アイドル。マイケル・ジャクソンと井手らっきょを同じ目線で愛し、FUNKとお笑いを同じ目線で体現したパフォーマンスを得意とする。ダンサー・エロ本編集者・DTPデザイナーを経て、最近はやたらしゃべるディスクジョッキーとして各所でメイクサムノイズ中。インターネットラジオ、block.fmにて生放送でお届けする「SEX山口のGWIG GWIG RADIO」(毎月第2月曜日20時~)ではメインMCとしてZEN-LA-ROCKと共にグイグイっとおしゃべり中。自身のアパレルブランド「S.E.X.Y. by NAOKI YAMAGUCHI」のアイテムや各種おMIX CDも随時デリバリーしてまっす♪
https://secscreativeworks.tumblr.com/
https://twitter.com/sexyamaguchi
https://sexybyny.theshop.jp/
https://block.fm/program/gwig_gwig_radio.html

▼D.J.April(Booty Tune)
Hardfloorでシカゴハウスに目覚め、そんなサウンドをらりくらりと追いかけつつ、Jukeレーベル「Booty Tune」のPR&ARをしております。
https://twitter.com/deejayapril
https://bootytune.com/

▼Booty Tune DJs[D.J. Kuroki Kouichi, Yuki aka 3D, D.J.April]
https://bootytune.com/
https://bootytune.bandcamp.com/
▽D.J.Kuroki Kouichi
1999年 DJ開始。同時期に1人焼肉デビュー。
2001年 DJデビュー。地元の焼肉屋を卒業。都内各地の焼肉屋にて武者修行開始。
2004年 100%ゲットーパーティー「CHICAGO BEEF」を、焼肉屋の上にあるクラブで主催。DJと肉が融合。
2007年 肉好き集団を率い肉を食べまくる肉パーティー「肉GROOVE」を主催。
2008年 下北沢「肉人」に出会う。ホルモン革命が起きる。
2009年 赤身からホルモンまで、あらゆる肉の部位を完璧に焼けるようになり、「肉マスター」就任。
2010年 焼肉対決で「焼肉大王」に勝ち、2タイトル制覇。日本一の焼肉屋「スタミナ苑」の常連入り。
2011年 Juke/Ghettotech専門レーベル「Booty Tune」に加入。
2012年 Booty TuneのCOO(スィーオウオウ)就任。狩猟免許取得。
2013年 シカゴハウスの伝説的レーベル「Dance Mania」の全カタログをコンプリート。
あまり意味が無くてカッコいいダンスミュージックをプレイするよう心がけています。
▽Yuki aka 3D
Booty Tune所属22歳のJuke/Footwork DJ。通称てっどまん。
▽D.J.April
Hardfloorでシカゴハウスに目覚め、そんなサウンドをらりくらりと追いかけつつ、Jukeレーベル「Booty Tune」のPR&ARをしております。

▼DjKaoru Nakano
大阪府出身。14才頃からblack music, rockのレコードを集めだし、18才頃DJを始める。garage, houseなどを経て2009年頃からminimal dub, technoなどでDJ活動をリスタート。2010年頃からjukeに傾倒。2013年11月にNODEレーベルよりmix CD「footwork & smooth」をリリース。Track makerとして日本初のjukeコンピレーション"Japanese Juke & Footwork Compilation"に参加。
https://soundcloud.com/kaorunakano

▼DJ SEKIS & DJ DIKE
JUKE/FOOTWORKのPRODUCER。ホームグラウンドである吉祥寺・西荻窪にて主に活動中。
▽DJ SEKIS
https://twitter.com/djsekis
https://soundcloud.com/dj-sekis
▽DJ DIKE
https://twitter.com/DJ_DIKE
https://soundcloud.com/dj-dike

▼SHINKARON
FRUITY、BoogieMann、Weezy、吉村元年、芝田創、VaEncから成るクルー。 2009年3月よりノンジャンルパーティとしてスタートし、現在はjuke/footworkのレーベルとしても活動中。所属メンバーの他DJ Roc、Paisley Parksなど、国内外問わず様々なアーティストのリリースを手掛ける。
https://shinkaron.info/


Optrum - ele-king

 先日、マイナーホラー映画についてのトークや、アイドルや女性打ち込みシンガーソングライターのライヴ等々盛りだくさんな内容のイベントに行ったところ、開演前の場内ではビキビキの電子音と速いリズムの超かっこいい音楽がかかっており、「Jukeでもなさそうだし何だろこれ」と思ったのだが、会場の人に聞いたら実はそれがオプトラムのセカンド・アルバム『Recorded 2』なのだった。「客入れでかけると、なんかアガるんですよね」と言っていた。

 オプトラムは蛍光灯にコンタクトマイクを付けてアンプリファイする「オプトロン」の演奏者・伊東篤宏と、即興シーンで活動しているドラマーの進揚一郎のデュオである。目にも耳にもノイジーな蛍光灯とソリッドなリズムの組み合わせはインパクト満点であり、誰でもひと目で素朴に「かっこいい!」と思うんじゃなかろうか。
 一方で、見た目のインパクトが凄すぎるだけにCDで聞くとその魅力が伝わるのだろうか(「音だけ聞いて意味あるの?」っていう)という素朴な疑問があるかもしれない。だが、このアルバムは逆に音だけだからこそ、ライヴでは伝わりにくい(ことのある)、オプトラムの純粋にサウンド的な魅力を発見させてくれるものになっている。

 発想としてはシンプルで、「オプトロン+ドラム=オプトラム」というバンド名にも現れているように一種「出オチ」みたいなコンセプトのバンドではある。出オチといえば前にブラストロのレヴューでも使った言葉だけれど、そういえばブラストロを初めて観たときには「オプトラム以来の衝撃!」と思ったもんである。
 でも、普通なら出オチで終わるものを終わらせず、それを引っ張り続けて洗練させていくことで生まれる面白さ、みたいなものにある種の価値があるなあと最近は思ってまして、結成10年にして、前作から7年のブランクを経て制作された今作にはそういう面白さがある。

 そもそも伊東はかねてより自分はミュージシャンではないし、オプトロンは楽器ではない(「音具」と呼んでいた)と発言していたのだが、いまやしっかりミュージシャンだし楽器になっている。とくに近年の〈ブラック・スモーカー〉周辺との活動の成果でもあるのかリズム面での進化が前作との大きな違いで、ビート・アルバムみたいなものとしても聴けるんじゃないかと思う。ノイズ/インダストリアルの大御所たちがベース・ミュージックなどに出会ってクラブ・シーンに接近しているような例(ホワイトハウスのウィリアム・ベネットによるカットハンズとか。初音階段……はちょっと違うか)に通じるものもあるような。

 筆者が参加しているバンドの曲に「10年経っても何にもできないよ」という歌詞があって、以前から伊東はこのフレーズを大変気に入ってくれているのだけれど、出オチで終わらせずに10年続けた成果というのはけっこう馬鹿にならないものがある。2013年の12月30日に新大久保アースダムでの年末恒例のライヴで彼らの演奏を観ていろいろ感じるものがあったこともあり、発売からちょっと間が空いちゃったけど10年経ったわけでもないので落穂ひろい的に紹介させていただきました。

RP BOO JAPAN TOUR 2013 - ele-king

 今週末、東京大阪、やばいっす。ジューク人気が急上昇するなか、シカゴからそのシーンの重鎮、RP ブー(今年、 名作『Legacy』を出している)が来日するの知ってる? 楽しいから、絶対に行ったほうが良いよ。

RP Boo - Legacy JP (Planet Mu)


 来日のサポートにはシーンを牽引してきた〈Booty Tune〉、CRZKNY (Dubliminal Bounce)、Satanicpornocultshop (Negi)、〈SHINKARON〉、Keita Kawakami (Dress Down)をはじめ、ジュークと共鳴するゴルジェ、テクノ、ベース、ヒップホップ / ラップなどの周辺ジャンルと華麗にクロスオーバー、そしてフットワークのバトル・トーナメントで優勝したTa9yaや準優勝の女性ダンサーHarukoなど多くのダンサーもジャンルを超えて結集した、若手を中心にベテランや中堅も織り交ぜ、もはやこれがジュークであるとは言えないほど多様化するハイブリットな国内シーンとそのカルチャーを堪能出来るキレキレのラインナップをお見逃しなく!

≈ RP BOO JAPAN TOUR 2013 ≈

〈東京公演〉

11.23 (SAT) @ Shinjuku LOFT Tokyo
OPEN/START 23:30 ADV 3,000 yen | Door 3,500 yen

shinjuku LOFT Presents
SHIN-JUKE vol.5

RP Boo (Planet Mu from Chicago)
D.J.Fulltono (Booty Tune)
Satanicpornocultshop (negi)
hanali (Gorge In, Terminal Explosion!!)
HABANERO POSSE
ALchinBond
Booty Tune crew
SHINKARON crew

More Info:
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft/18988


〈大阪公演〉

11.22 (FRI) @ Club Circus Osaka
OPEN/START 21:00 ADV 2,500 yen | Door 3,000 yen

Booty Tune & Dress Down Presents
SOMETHINN3

RP Boo (Planet Mu from Chicago)
D.J.Fulltono (Booty Tune)
Keita Kawakami (Dress Down)
DJ TUTTLE (Marginal Records)
Quarta330 (Hyperdub)
terror fingers (okadada + Keita Kawakami)
CRZKNY (Dubliminal Bounce)
DjKaoru Nakano
Paperkraft (Alt)
AZUpubschool (doopiio)

More Info:
https://circus-osaka.com/events/booty-tunedress-down-presents-something3


interview with DJ Rashad - ele-king

E王
DJ Rashad
Double Cup

Hyperdub/ビート

Tower iTunes

 ジュークは面白いわ。いまこの音楽を聴かなくて何を聴く。このエネルギー、この速度、このサンプリング、この思い切りの良さ、この音の断片、このダイナミズム、鬼気迫るものがもあって、同時に音楽的。この最新のアーバン・ミュージックの好戦的な動きは、社会的なコンテクストにおいても興味深い。密集し、混線した情報の合間をしたたかにすり抜けていくように、連中はコンクリートの上で激しく、素速く、軽快にカラダを動かす。細かく切り刻まれ、ひどく加工され、そしてルーピングされ醸成されるジュークは、激しい足の動き=フットワークをうながす。それは現代のアーバン・リアリティの急進的ないち形態として、コンクリート上とインターネット上とを行き来する、さながら新しい生物ように増殖し、動きまわっている。
 今年は、DJラシャドの12インチ2枚組の「ローリンEP」と「I don't Give A Fuck」をはじめ、RP・ブー『Legacy』、K. Locke『The Abstract View』、日本でも〈BOOTY TUNE〉をはじめ、ペイズリー・パークスやフードマン(最高のネーミング)などが頭角をあらわしている。この音楽はもはやシカゴだけのものではない。
 それでも敢えて言いましょう。2013年はDJラシャドの年だった。今年は、ヨーロッパで、アメリカ国内の子供たちのあいだでも、日本でも、ジュークがブレイクした。そして、その歴史が何たるかを書き起こすときが来たかのように、ベテラン・フットワークDJのRP・ブーのアルバムが発表されたわけだが、いよいよラシャドは、いま、ジューク・フィーヴァーの中心に躍り出ている……と言えよう。え? 「I don't Give A Fuck(知ったこっちゃねぇよ)」だって?
 それまでデータのみで4枚のアルバムを発表しているラシャドだが、彼にとって最初のフィジカル・リリースとなる『ダブル・カップ』がつい先日〈ハイパーダブ〉からリリースされた。アジソン・グルーヴも参加し、ヒップホップからの影響も活かしたその作品は、フットワーク/ジュークに音楽的な幅を持たせながら、それがどこから来ている音楽なのかを再度定義しているようだ。



シカゴはハウス・ミュージック発祥の地だ。俺はそう聞かされている。そして、俺たちの耳に入ってくるアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックというのはシカゴ・ハウスしかない。だから、そういうシーンが根強くあるんだと思う。

最近は、シカゴよりもヨーロッパでのプレイのほうが多いんですか?

DJラシャド:そのとおり。

最近DJをやったのはどこですか?

DJラシャド:最近ショーをしたのはニューヨーク。本当はロンドンでツアーをする予定だったんだけど、事故のせいでUSにとどまることになった。車で事故にあったんだ。だから、再び120%でやれるまで、しばらくのあいだチルモードでいる。

さて、あなたの音楽の主成分には、ハウスとヒップホップがありますよね。ヒップホップとの出会い、シカゴ・ハウスとの出会いについてそれぞれお話いただけますか?

DJラシャド:ヒップホップもハウスも、ラジオでかかっていて、子どもの頃から聴いていた音楽だ。子どもの頃から常に俺の周りにあった。

ちなみにヒップホップ/R&Bにおけるあなたのヒーローは?

DJラシャド:ヒーローか……誰かな。おそらくNas、Tribe Called Quest、Twisted、Mobb Deep、Three Six Mafia、Too Short、Jay-Z、Kanye West……マジでたくさんいるよ。

どんな子供時代を過ごしましたか?

DJラシャド:子供時代? 普通の子供時代だったよ(笑)。そう、普通の子供時代だった。(うしろのメンバー爆笑)

通訳:―後ろで笑い声がしますが……

DJラシャド:ああ、いまスタジオにいるんだ。SpinnとEarlがいる。他の人と変わらない子供時代だったよ。子供のころから音楽が好きだった。6年生から中2くらいまでドラムをやっていたし。その後はDJをするようになった。

音楽以外で好きになったことって何ですか?

DJラシャド:食べ物だね(笑)!

通訳:良いですね、どんな食べ物が特にお好きですか?

DJラシャド:特に好きなものはないな。上手く調理されていればそれでいい。

通訳:ではお寿司はいかがでしょう?

DJラシャド:寿司は食べたことはあるよ。嫌いじゃなかったけど、大好きな食べ物のトップには入ってないな、少なくとも今のところ。

初めてクラブに行ったのはいつですか? それは誰のパーティでしたか?

DJラシャド:初めて行ったクラブは〈Jubilation(ジュビレーション)〉という名前のティーン向けのクラブ。クラブの隣が、レーザータッグ(真っ暗の部屋で遊ぶシューティング・ゲーム)の施設だったから、レーザータッグの客として入って、クラブの方にも忍び込んでクラブに行っていた。それが初めてのクラブだ。

DJをはじめたきっかけについて教えてください。

DJラシャド:最初はドラムをやっていたけど、それに飽きて、ドラムでやるべきことはやったと感じていた。当時、ラジオで聴いていた音楽に憧れていて、自分もそういうのができるんじゃないかと思った。ラジオでかかっているように自分もできるかと最初は思ったんだけど、DJをはじめてみると実際は全然違うんだと後でわかった。DJは本当にゼロからはじめた。レコードを買って、自分の部屋でいろいろやって練習した。友だちの前でDJしたりして……そんな感じさ。そこから、さらに上達したいと思って、より真剣に取り組むようになった。

曲作りはどのように学んだのでしょう?

DJラシャド:どうやって学んだかって? えーと、わかんないけど、とにかく俺とSpinnで金を貯めてドラムマシンを買い、当時、他の人たちが作っていたような音楽を真似して作ってみた。自己流だよ。いろいろ、自分たちで試してみて、それが上手くいったりいかなかったり。俺が子供のころ培ったドラムの才能以外(←これはジョークらしいです)は、一からはじめたんだよ。

通訳:ではドラムの背景があったのは良かったですね。

DJラシャド:たいした背景じゃなかったけどな(笑)。

通訳:よい基礎にはなったんじゃないですか?

DJラシャド:ドラムを続けていたときはそれなりに楽しかったよ。

DJスピンは子供の頃からの友だち?

DJラシャド:そう。奴は俺にとって弟みたいなもんだ。子供のころから一緒に育って、いまでも友だちだ。いまでも友だちなんてすごいと思うけど、本当にそうなんだ。

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デトロイトは俺にとって第二の故郷みたいなもんだ。デトロイトの踊りは、シカゴのとは少し違うけど、動きはほとんど一緒なんだ。だからデトロイトでのシーンとシカゴのシーンはとても似ているのがわかった。クールだったよ。バトルのパーティも良い感じだったらしい。

E王
DJ Rashad
Double Cup

Hyperdub/ビート

Tower iTunes

シカゴで、こうしたアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックが途絶えることなく継続され、発展しているのは何故でしょう?

DJラシャド:俺がシカゴのミュージック・シーンを見てきて思うことは、シカゴはハウス・ミュージック発祥の地だ。俺はそう聞かされている。そして、俺たちの耳に入ってくるアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックというのはシカゴ・ハウスしかない。だから、そういうシーンが根強くあるんだと思う。アンダーグラウンド・ダンス・ミュージックの基礎にシカゴ・ハウスがあるから、自然とその文化が発展しているのだと思う。

どのような経緯で〈Juke Trax〉からリリースすることになったのでしょう?

DJラシャド:2003年か2004年に、DJ ClentがDJ Godfatherに呼ばれてパーティを一緒にやった。その際、Godfatherは俺たちの活動に興味を持ってくれた。ちょうどその時、〈Dance Mania〉が下火になってきていたからジュークにとって新たなアウトレットが必要な状況だった。だからGodfatherは、Juke専用のレーベルを立ち上げた。Godfatherは当時、もう一つデトロイトのレーベルで〈Databass〉というのを持っていたんだけど、そのレーベルは主にゲットー・テックを扱っていた。ゲットー・テックとは別ものとして、ジュークをリリースできるようにレーベルを立ち上げた。それが始まりだ。

すでに多くの作品を出していますが、どんな感じで曲を作っているのでしょう? 自宅にスタジオがあって、集中して、がーっと作る感じですか? それとも、ぱっとひらめいて、ぱっと作る感じでしょうか?

DJラシャド:自宅にスタジオがあってそこでも作るし、Earlみたいな友達のところで作るときもある。インスピレーションを受けるのは、ツアーしている時と、仲間とスタジオにいる時の両方。俺にとってのモチベーションは今のところそのふたつと、新しい音楽を聴いているときだけだ。ツアーしている最中、新しいアーティストの音楽を聴く。それから仲間といる時もアイデアが湧く。

通訳:すごいですね。あなたは、ものすごくたくさんのトラックを短期間でリリースすることで知られていますが。

DJラシャド:ああ、昔はそのことで知られていたけど、最近はツアーなどで忙しくなったから、少しペースダウンしたよ。時間が余るほどあった時は、音楽をたくさん作っていたけど、最近はペースを少し落として、修正を加えることをしはじめたりして、いままで作ってきたものよりも、さらに質の良いものを作るようにしている。いままで学んできたものを活かしてよりプロフェッショナルなものを作るようにしている。

ジューク/フットワークの歴史について教えてください。あなたから見て、それはどのようにはじまったものなのでしょか? ダンスを競い合うバトルの音楽なわけですよね?

DJラシャド:もちろんダンスバトルの音楽なんだけど、ジュークはパーティ・ミュージックでもあった。ゲットー・ハウス・ミュージックがジュークという言葉に変わったのはおそらく1999年だと思う。DJ Gant ManとDJ Ponchoが「Juke It」というトラックをリリースした。それがフットワーク/ゲットー・ハウスがジュークという名前になったはじまり。フットワークは当時トラックスと呼ばれていた。ジュークが進展していたと同時にフットワークも存在していたが、その時はフットワークと呼ばれていなかった。フットワークという呼び名は2009年に〈Planet Mu〉が「Bangs & Works」をリリースしたときからだと思う。

通訳:フットワークというのも音楽の種類なのでしょうか?それとも、ダンスのことなんでしょうか?

いまではフットワークは音楽の種類であり、ダンスでもある。昔はジュークとフットワークは少し違う種類の音楽を指していて──どちらもBPM160には変わりないんだが──ジュークのほうがコマーシャル、つまりラジオ・フレンドリー、DJフレンドリーで、トラックス(フットワーク)はヘヴィーでクレイジーなベースが入っている曲のことを言った。

基本、アフリカ系のコミュニティで盛んなんですよね?

DJラシャド:まさにその通りだ。

デトロイトのキッズたちともダンスと音で競い合っていたという話も聞いたことがあります。どうなんですか?

DJラシャド:ああ、数年前、シカゴ対デトロイトのパーティが何度かあったと聞いた。デトロイトは結局、シカゴに来なかったが、シカゴからはバスを出してデトロイトのキッズとバトルしに行ったんだ。デトロイトでも、シカゴに似たダンスがあってジット(Jit)と呼ばれていた。だからジュークVSジットという感じでパーティが行われていた。俺は一度も行ったことがなかったけど、俺の仲間たちは行っていて、クールだったと教えてくれた。
 俺はデトロイトにDJしに行ったことがあるけど、デトロイトは俺にとって第二の故郷みたいなもんだ。デトロイトの踊りは、シカゴのとは少し違うけど、動きはほとんど一緒なんだ。だからデトロイトでのシーンとシカゴのシーンはとても似ているのがわかった。クールだったよ。バトルのパーティも良い感じだったらしい。どっちが勝ったのかは知らない。シカゴが勝ったのかわからない。勝っていたらいいんだけど。

あなたがシーンに関わるようになった経緯も教えてください。

DJラシャド:〈Dance Mania〉のキャリアが閉ざされたときに、シーンに関わりはじめたのだと思う。俺とSpinnは〈Dance Mania〉からスプリットシングルを出した。Spinnのは「Motherfucker」という曲で、俺のは「Child Abuse」という曲だった(笑)。だが、その後〈Dance Mania〉は営業を停止してしまった。だから俺たちはTraxman、JAMMAN GERALD、DJ Funkといった人たちの周りで活動していた。当時ジュークをやっていて残ったのは俺とSpinn、RP、DJ Clent、Deeonくらいだった。

あなた自身も踊ってましたか?

DJラシャド:DJになってから踊りはやめたよ。周りの奴らは、ダンサー兼DJというのを真面目に取ってくれなかった。ただ、パーティにタダで入って踊って遊びたいんだろうと思われた。だからダンスのほうはあきらめたよ。俺はDJできないと思われていた。だからダンスバトルやフットワークでやれるべきことをやって、ある程度目標を達成できたと感じた時点で、音楽により集中しようと決めた。

通訳:では初めはダンサーだったんですね。

DJラシャド:ダンサーだったけど、DJもしていたよ。

BPMが160~170であることは、あなたにとってやはり重要なのでしょうか?

DJラシャド:いまはそうでもない。昔は、ダンサーとしては、たしかに重要だった。そういう人たちの為に音楽をチョイスするDJとしては重要だった。ジュークは160~170であるべきだと思う。170までいくとドラムンベースになるけどBPMが160~170であることはジュークの基礎だからとても重要だと思う。

通訳:でも最近、あなた個人においてはBPMの幅は広がってきているということでしょうか?

DJラシャド:ああ、個人的にはもちろんそう。俺たちはTeklifeとして、自分達の可能性に挑んで、新しいことをやって、他にどんなことができるか、色々な挑戦をしている。それは俺たちがいつもやってきたことだ。そして何よりも楽しむこと。同じことを毎回やるより、少し違ったことをやってみる。

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ジューク/フットワークに対するそれぞれの国の解釈があって、国独自のアレンジを加えている。俺たちのコピーじゃなくて、何かオリジナルなものを作っているのには尊敬する。外国の人がジューク/フットワークを受け入れているのを見たり聞いたりするのは嬉しい。

E王
DJ Rashad
Double Cup

Hyperdub/ビート

Tower iTunes

ジューク/フットワークやあなたの音楽には、いろんな要素がありますが、殺気だった感覚もあるように感じます。それはダンスバトルの音楽だからなのか、それともあなたの環境を反映しているものなのでしょうか?

DJラシャド:両方だと思う。ダンサーが踊っているときの表現やエネルギーを見てもそういう感じが伝わってくると思うし、その感じは音楽の一部でもある。だから音楽の一部でもあるし、ダンスの動きが反映されている部分もある。

欧州や日本でも、ジューク/フットワークは広がっています。いろんな国でそれぞれの解釈のジューク/フットワークが生まれている現状をどのように思いますか?

DJラシャド:最高だと思うよ。俺たちがやっていることと同じことや真似ごとをしているのではなく、ジューク/フットワークに対するそれぞれの国の解釈があって、国独自のアレンジを加えている。俺たちのコピーじゃなくて、何かオリジナルなものを作っているのには尊敬する。外国の人がジューク/フットワークを受け入れているのを見たり聞いたりするのは嬉しい。ジューク/フットワークがそこまで広がって誇りに思うし、自分がそのシーンの人間のひとりだということを幸福に思う。

アディゾン・グルーヴと一緒にやっていますが、UKでのジューク人気はあなたにとって何をもたらしたのでしょう?

DJラシャド:UKに初めて行ったときから、UKの人たちは俺たちに好意を示してくれた。ジュークは、スピードやベースのサウンドがジャングルと似ているからUKの人たちにとってジュークは親しみやすかったようだ。ジャングルを聴くと、フットワークと似ていることがよくわかる。UKに行ったことで俺たちはジャングルについて学ぶことができた。ジャングルが発展したのも90年代初期から90年代後期で、ゲットー・ハウスがUSで発展したのと同じ時期に、UKで発展していた。俺たちは当時、ジャングルなんて聴いたこともなかった。だから驚いた。UKに行ったとき、当時UKではジャングルという音楽が流行っていたのを知って、俺たちの音楽とコラボするのは自然なことだと思った。

ジャングルからの影響はありますか?

DJラシャド:いまはジャングルの影響はある。何年か前にジャングルを聴いたときはピンとこなかった。トランスみたいなもんだと思っていた。昔、レイヴとかに行っていたときにジャングルがかかっていたエリアもあったけど、あんまり気に留めていなかった。だけど、UKに行ってジャングルについてちゃんと教わってから、俺たちの作っている音楽とどれほど共通しているかということがわかったから、今後はジャングルの要素も取り入れていこうと思った。俺たちもジャングルに対しては好意を持っている。同じ方向を行っているアンダーグランドな音楽だからね。

昨年アルバムを出した〈Lit City Trax〉はあなたのレーベルですか?

DJラシャド:いや、あれはJ Kushのレーベルで彼が経営している。俺とSpinnは当時〈Lit City Trax〉に所属していた。

作品を発表するのにダウンロードばかりだったのは、どんな理由からですか?

DJラシャド:最近はCDやレコードを刷るのも大変だから。ダウンロードのほうが簡単だし、ダウンロードする側にとっても早く音楽が手に入る。メインの曲は、最近のEPや今回のアルバムみたいにしてリリースしたいと思うけど、とにかくダウンロードのほうが簡単だし便利だと思う。時代は変わり、人びとはレコードを買うより音楽データをダウンロードしている。時代を先取りしてその動きに合わせているだけさ。

あのブリリアントな「Rollin'」に収録された曲を『Double Cup』に入れなかったのは何故でしょう?

DJラシャド:去年のアルバム『Teklife Vol. 1』や、〈Hyperdub〉からいままでリリースしたEPとは違ったものをリリースしたいと思ったから。Teklifeのみんな、そして俺やSpinnがやっている音楽のまったく違う一面を見せたかった。フットワークだけではなくて、他の音楽も作れるし、他の音楽ジャンルに対して好意を示し、それらを自分たちの音楽に要素として取り入れたかった。もちろんフットワーク以外の音楽も好きだからね。コード9は、アルバムを作るにあたって、俺の好きなようにしていいと自由にさせてくれた。

『Double Cup』というタイトルの意味は?

DJラシャド:『Double Cup』はコデインをスプライトで割ったドリンクの名前で、発砲スチロールのコップに入っている。なぜ『Double Cup』というタイトルにしたのかというと、前回のアルバムがハイテンションでスピーディーな感じだったのに対し、今回のアルバムはスムースでスロー、そしてソウルフルだから。TeklifeのChopped & Screw版という感じ。それがテーマだ。

ヒップホップ色が際立っているように感じましたが、意識したんでしょうか?

DJラシャド:ああ。いままでアルバムでヒップホップ色を入れたことがあまりなかった。だから今回はジャングルもそうだけど、ヒップホップを使って新しいことをやってみようと思った。他にもアシッド・ハウスといった自分が好きなジャンルにも触れてみようと思った。今回のアルバムでは、自分たちが好きなジャンルはいろいろ触れてみようと思った。

選曲や曲順はあなたが決めたんでしょうか?

DJラシャド:今回、曲順を決めたのはコード9だ。選曲はコード9と俺たちで決めた。

この先、自分の音楽をどのようにしていきたいとか、展望はありますか?

DJラシャド:いまやっていること以外はラップ関連の音楽を作っていきたい。それからジャングル。もちろんこの先もフットワークは作っていくけど、自分たちが生み出せる音楽なら何でもいいと思っている。今はとにかく楽しんで音楽を作っているよ。この体験すべてを満喫している。

DJをやっていなかったら、いまごろ何をしていたと思いますか?

DJラシャド:正直言って俺自身でさえわからない(笑)。音楽がなかったらいまごろどこで何してるかまったくわからない。安全でクールな場所にいてくれたらいいと思うけど。

来年はいよいよ初来日がありますね。日本に関してはどんなイメージを持っていますか?

DJラシャド:日本に行くのが本当に待ち遠しいよ! 日本のヴィデオをたくさん見たし、TraxmanとダンサーのA.G.が日本に行ったことがあって、彼らからいろいろ日本のことを聞いた。俺は元々2年前に日本に行く予定だったんだけど、キャンセルになってしまった。だから、日本に行って日本を体験するのが本当に待ち遠しいんだ。日本のジューク・シーンはマジで最高だから、はやく日本に行ってそのシーンを実際に体験して、シーンのみんなに会ってみたい。すごく楽しみだよ!

★来年1月、DJラシャド、初来日決定!!

 来年1月末開催の[ハイパーダブ10周年スペシャル・パーティ]にて、DJラシャドの来日が決定しました。他の出演者は、最高のアルバムを出したばかりのローレル・ヘイロー、UKからはアイコニカ、レーベルの総帥コード9。これは楽しみ!

[ハイパーダブ10周年スペシャル・パーティ]
featuring:
Kode9 言わずと知れたハイパーダブ主催者、UKベースミュージック界の中心人物!
DJ Rashad 実力・人気ともにJuke界No.1! Jukeシーンの境界を大幅に拡大させるであろう待望の傑作アルバムは10月19日に投下!
Laurel Halo 近年盛り上がりを見せるエレクトリック女子アーティストの中でももっとも注目を集める逸材! 昨年リリースされ、会田誠のアートワークでも話題となった前作から1年あまり、衝撃の新作が明日発売!
Ikonika 初期シカゴ・ハウスへの偏愛そして新しいディスコ・ハウス世代との共振するアルバムを8月にリリースしたばかりの型破りな天才女性プロデューサー!

2014/1/31(FRI) 代官山UNIT
INFO: BEATINK 03-5768-1277[ https://wwww.beatink.com ]
2014/2/1(SAT) 名古屋CLUB MAGO
INFO: CLUB MAGO 052-243-1818[ https://club-mago.co.jp ]
2014/2/2 (SUN) 金沢MANIER
INFO: MANIER 076-263-3913[ https://www.manier.co.jp ]
2014/2/3 (MON) 大阪CONPASS
INFO: CONPASS 06-6243-1666[ https://conpass.jp ]


2014/1/31 代官山UNIT公演詳細
OPEN/START 23:00
TICKET INFO : 前売 3,800YEN / 当日 4,500YEN
※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。必ず写真付き身分証をご持参ください。You must be 20 and over with photo ID.

◇ 早割チケット限定販売!(30枚限定) : 3,300YEN ◇
11/2(土)より BEATINK OFFICIAL SHOP“beatkart”(shop.beatink.com)にて※売切しだい販売終了。

一般販売 : 11/02(土)より
BEATINK (shop.beatink.com) / ローソンチケット - https://l-tike.com
イープラス e+ (先着先行: 4/22Mon~4/24Wed) - https://eplus.jp
tixee (スマートフォン用eチケット) - https://tixee.tv/event/

主催:シブヤテレビジョン / INFO:BEATINK 03-5768-1277 (www.beatink.com

Sound Patrol - ele-king

Paisley Parks - Cold Act Ill EP
Shinkaron


Bandcamp

 ペイズリー・パークスとはプリンスのレーベルではない。日本で生まれたジャパニーズ・ジュークのプロジェクトで、TMTも大絶賛、海外ではすでに人気に火がついている。ところで、つい先日、筆者はKESが〈ダブソニック〉やWOODMANのレーベルから作品を出していたことを知って衝撃を受けた。その初期作品(カセットテープ・リリース)を聴くと、たしかにジュークの青写真とも言えるゲットー・サウンドなのだ。つまり、10年前からやってきたことが、いま、たまたまシカゴと共振したということか。
 ドミューンでのライヴも格好良かった。「F」ワードが乱発される音楽が特別好きなわけではないけれど、この3人組からあふれ出るパンキッシュなエネルギーに降伏したので、早速CD-Rを買った。ブレイクコアのときと似ているのかもしれない。ペイズリー・パークスにしろフードマンにしろ、ジュークは日本との親和性が高いことを証明している。

Juke Footwork

Tiny Hearts - Stay EP
Dirty Tech Records


Amazon iTunes

 〈ダーティ・テック〉は、デトロイト・ヒップホップのキーパーソン、ワジード(スラム・ヴィレッジのオリジナル・メンバーおよびPPPで知られる)が昨年立ち上げたレーベルで、〈サブマージ〉もどこまで関わっているのか定かではないけれど、それなりにサポートしているんじゃないかと思わせるレーベルだ。それほどのポテンシャルはある。昨年1枚、今年1枚出ている2枚のepは、彼のエレクトリック・ストリート・オーケストラ名義の作品だったが、マイク・バンクス、セオ・パリッシュ、アンドレスなどテクノ/ハウスの大物も参加している。
 その2枚も、まあ悪くはなかったのだが、この〈ダーティ・テック〉の第3弾には痺れた。ワジードのR&Bプロジェクトのデビュー作で、初期のスラム・ヴィレッジを彷彿させるメロウなヴォーカルとタイトなビート、そして分厚いシンセのリフが素晴らしい。実験的だがポップで、まさにフューチャーR&Bと言いたくなるような……。これは注目しよう。

R&B Pop

Hilaru Yamada And The Librarians - The Rough Guide To Samplin' Pop
CD-R


https://ekytropics.blogspot.jp/

 カットアップ/サンプリング・ミュージックで、インナーにはネタが表記されているわけだが、そのネタの選び方が面白い(そのセンスはコーネリアス的だ)。洒落が効いていて、カラフルで、チャーミングなドリーム・ポップとして成立している。大昔、ちょうどこれと同じ方法論で、砂原良徳がブートを作ったことがある。推薦です!

Musique Concrete Cut Up Mash Up Dream Pop

Duppy Gun - What Would You Say About Me?
Stones Throw


STONES THROW

 サン・アロウとロブドア、そしてマシューデイヴィッド、LAの3人のジャマイカ旅行、第3弾。迫力ゼロのビートにふにゃふにゃのエフェクト。ジャマイカのディージェイ、Fyah FlamesとI Jahbarが勇ましい声を上げている。ディプロのへなちょこヴァージョンとでも言えばいいのか。格好いいポスターが付いているので、見つけたら買うことをオススメする。

Dancehall Experimental Dub

Jay Daniel - Scorpio Rising EP
Sound Signature


Detroit Report

 待っていた人も多かったでしょう。沈没していく街とは裏腹に、デトロイトらしい上昇する感覚を兼ね備えたジェイ・ダニエルのデビュー・シングル。デリック・メイ的とも言えるタフなリズムとシンセリフの“No Love Lost”も良いが、母であるナオミ・ダニエルの歌う“スターズ”のインロ(大本はラリー・ハードの“スターズ”だが)を微かに使った“I Have No Name”が最高。ついに未来のクラシックが登場したね。

Deep House

Audio Tech - Dark Side
Metroplex


iTunes

 これも聴くのをずっと楽しみにしていたんですよね。ホアン・アトキンスとマーク・エルネストゥスというふたりの先達のコラボ作。モーリッツ・フォン・オズワルドとの共作のミニマリズムとは打って変わって、こちらはエレクトロ。ホアン・アトキンスは歌っている。B面ではマックス・ローダーバウアとリカルド・ヴィラロボスのコンビが12分にもおよぶ幻覚性の高いリミックスをしているが、オリジナルとの関連性は見られない。

Electro Techno

Archie Pelago - Hall Of Human Origins
Styles Upon Styles


Amazon iTunes

 太陽のスタンプでお馴染みの、NYのアンソニー・ネイプスと〈Mister Saturday Night Records〉は今日の90年代ハウス・ブームの主役のひとりだが、昨年末に同レーベルからリリースされたアーチー・ペラゴ(ブルックリンの3人組)のシングル「The Archie Pelago EP」は、ジャズ・ハウスとしては実に幅広い層にアピールしたヒット作となった。その後の「Subway Gothic / Ladymarkers」では、実験的なアプローチも見せて、最近出た「Hall Of Human Origins」でも、IDMの領域にも手を出しているし、下手したらジュークさえも自分たちの養分にしようとしているのかもしれない。ラテンのリズムも冴えを見せ、サン・ラーの雄大なブラスをも引用しているのでは……。いつアルバムが出るのでしょう。

Electronica Jazz Broken Beat

Synth-pop, Rock & Roll, Electronica, Juke, etc. - ele-king

Inga Copeland - Don't Look Back, That's Not Where You're Going
World Music


Amazon iTunes

「Don't Look Back, You're Not Going That Way.(振り返らないで、あなたはそっちではない)」、いかにもアメリカが好みそうな自己啓発的な言葉で、沢井陽子さんによれば、この言葉がポスターになったり、ブログのキャッチになったり、本になったりと、いろんなところに出てくるそうだ。インガ・コープランドは、そのパロディを彼女のセカンド・シングルの題名にしている......といっても、この12インチには例によってアーティスト名も曲目もレーベル名も記されていない。表面のレーベル面には、ナイキを着てニコっと笑った彼女の写真が印刷されていて、裏側は真っ白。ちなみにナイキは、彼女のトレードマークでもある。
 Discogsを調べると今回の3曲のうち2曲はDVA、1曲はMartynがプロデュースしているらしい。ディーン・ブラントではない。ベース系からのふたりが参加している。レーベルの〈World Music〉は、ブラントとコープランドのふたりによる。1曲目の"So Far So Clean"はアウトキャストの"So Fresh, So Clean"のもじりで、「いまのところとってもクリーン」なる題名は悪ふざけだろう。シニシズムは相変わらずで、しかし音的にはスタイリッシュになっている。

Synth-pop

Jamie Isaac - I Will Be Cold Soon
House Anxiety Records


Amazon iTunes

 デビュー・アルバムのリリースが待たれるキング・クルーの初期作品を出していたレーベルから、冷たい心を持った新人が登場。簡単に言えば、ザ・XX、ジェイムズ・ブレイクの次はこれだろう、そう思わせるものがある。まだ聴いてない人は、"Softly Draining Seas"をチェックしてみて。

E王

Electronic Blues

Americo - Americo graffiti PEDAL


 アメリコは、50年代のロックンロール(ないしはフィル・スペクター)×70年代の少女漫画(ないしは乙女のロマンス)×70年代歌謡曲×ポストパンクという、なかば超越的なバンドだ。坂本慎太郎作品やオウガ・ユー・アスホール作品で知られる中村宗一郎をエンジニアに迎えての12インチで、全6曲。アートワークも楽曲も(そして録音も)アメリコの美学が貫かれている。ヴォーカルの大谷由美子さんは、80年代はクララ・サーカス(日本でザ・レインコーツにもっとも近かったバンド)なるガールズ・ポップ・バンドをやっていた人。

Rock & RollDream Pop

DJ まほうつかい - All those moments will be lost in time EP HEADZ


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 クラスターのレデリウスを彷彿させる素朴なピアノ演奏ではじまる、。DJまほうつかいこと西島大介の4曲入り......というか4ヴァージョン入り。本人の生演奏によるピアノをまずはdetuneがリミックス、自分でもリミックス、そして京都メトロでのライヴ演奏が入っている。エレクトロニカ調のもの、クラウトロック調のもの、少しお茶目で、それぞれに味がある。西島大介といえば可愛らしい画風で知られる漫画家だが、これは漫画家が余興でやったものではない。僕は最初の2と3のヴァージョンが良いと思ったが、もっともシリアスなライヴ演奏が最高かもしれない。

Modern ClassicalAmbient

DJ Rashad - I Don't Give A Fuck Hyperdub


Amazon iTunes

 これだけファック、ファック言ってる曲はラジオではかけられないが、海賊ラジオやネットでは大丈夫なのか。DJラシャドの「ローリン」は今年前半の最高のシングルだった。"アイ・ドント・ギヴ・ア・ファック"は前作のソウルフルなな路線とは打って変わって、残忍で、好戦的で、不吉で、緊張が走る。声ネタを使ったDJスピンとの"Brighter Dayz"ではジャングル、フレッシュムーンとの"Everybody"でも声ネタを使った、そして頭がいかれたジャングル、DJメニーとの"Way I Feel"はパラノイアックで不穏なR&Bを披露する。楽しんでいるのだろが、しかし......やはり恐るべき音楽だ。

Juke, Footwork

工藤キキのTHE EVE - ele-king

 285 KENTはサウスウィリアムズバーグにある中箱のウェアハウスで、がらんとしたダンスフロアとステージとチープなバーがあるだけのシンプルな箱だ。その285 KENTで月1ペースで開催している「Lit City Rave」は、Jamie Imanian-Friedmanこと J-Cushが主宰するJuke / Footworkのレーベル〈Lit City Trax〉がオーガナイズするパーティ。たぶん私が出入りをしているようなダウンタウンまたはブルックリンのパーティのなかでも極めてクレイジーで、この夜ばかりはステージの上も、DJの仲間たちの溜まり場になるステージ裏も、一応屋内喫煙が禁止されているNYで朝の5時までもうもうもと紫の煙が立ちこめている。
 基本的には、Chicago House直系のベース・ミュージック──Ghetto Houseから、Grime、Dub Step、UK Garageなどのビート中心で、特にJuke/FootworkをNYで逸早く取り上げたパーティだと思うし、例の'Teklife'という言葉もここではCrewの名前として日常的に、時に冗談めかしで使われている。

 DJ RashadやDJ Manny 、DJ SpinnそしてTraxmanはこのパーティのレジデントと言っていいほど「Lit City Rave」のためだけにChicagoからNYにやって来て、彼らのNYでの人気もここ数年の〈Lit City Trax〉の動きが決定づけたと言ってもいいんじゃないかな? さらに興味深いのがTRAXを経由したChicagoのミュージック・ヒストリーをマッピングするように、DJ DeeonなどのOGのDJ/プロデューサーから、Chicagoローカルの新人ラッパーのTinkやSASHA GO HARDが登場したり、ARPEBUことJukeのオリジネイターRP BOOのNY初DJ(!)などを仕掛けるなど、そのラインナップはかなりマニアックだ。
 本場ChicagoのようにMCがフロアーを煽るものの、Footworkersが激しくダンスバトルをしている......というような現場は実はNYでは遭遇したことがないかも。人気のパーティなので毎回混んでいるし、誰しも踊り狂っているけど、パーティにRAVEと名はついているものの俗にいう"RAVE"の快楽を共有するようなハッピーなものではない。はっきり言って毎回ハード。アンダーグラウンドで生み出された新しい狂気に満ちたビートを体感し、自らファックドアップしに行くといったとこだろう。振り落とされないようにスピーカーの横にかじりつきながら、踊るというよりもビートの粒を前のめりで浴びにいくような新感覚かつドープでリアルなセッティングで、本場Chicagoのパーティには行ったことがないけど毎回「果たしてここはNYなのか?」と思ってしまう。

Pphoto by / Wills Glasspiegel

 J-Cushは実はとてもとても若い。LONDONとNYで育った彼は、Juke/FootworkがGhetto Houseの進化系としてジャンル分けされる以前からDJ DeeonなどのChicago Houseには絶えず注意を払っていた。2009年頃からChicago Houseの変化の兆候をいち早く読み取り、一体Chicagoでは何が起きているのか? とリサーチをはじめた。それらの新しいChicagoのサウンドは彼にとってはアフリカン・ポリリズムスまたはアラビック・マカームのようにエキゾチックであり、UKのグライムのようにフューチャリスティックなサウンドに聴こえたそうだ。それからはJuke/Footworkを意識して聴くことになり、〈Ghettotechnicians〉周辺や〈Dance Mania〉のカタログを総ざらいした。
 その後NYでDJ Rashadと出会うことになり彼が生み出すビート、圧倒的かつ精密なまでにチョッピング、ミックスし続ける素晴らしくクレイジーなプレイに未だかつてない程の衝撃を受け、それに合わせて踊るQue [Red Legends, Wolf Pac] や Lite Bulb [Red Legends, Terra Squad]というFootworkersにもやられた彼は、Chicagoのシーンにのめり込むことになり〈Lit City Trax〉というレーベルを立ち上げるに至る。

 NYのパーティは割とノリと気分、ファッション・ワールドの社交の場になっているものも多く、「Lit City Rave」のようにビートにフォーカスし、かつ毎回趣向を凝らしたラインナップで続けているパーティは案外少ない。東京とブリティッシュの友人たちに多いギーク度、新旧マニアックに掘る気質がやはりJ-Cushにもあるし、そして彼は単なるプロモーターでは無い。ジャンルを越境できるしなやかなパーソナリティを持っているし、ストリートからの信頼もあつく、気鋭のビートメイカーたち、Kode9、Oneman、Visionist、Brenmar、Dubbel Dutch、Durban、Fade to Mindのkingdom、Mike Q、Nguzunguzu、もちろんTotal FreedomやKelelaなども早い段階から「Lit City Rave」に招聘している。

Photo by Erez Avis

 J-Cush自身もDJであり、常日頃から新しいビートを吸収しているだけあってスタイルはどんどん進化しエクスペリメンタルなGarageスタイルがまた素晴らしい。そのプレイは先日『THE FADER』や『Dis Magazine』のwebにMixが上がっているので是非チェックしてみて。
 さらにJ-CushとNguzunguzuとFatima Al Qadiriで構成された'Future Brown'というCrewでトラックを作りはじめていたり、今後の「Lit City Rave」ではUSのGrimeや、さらに地下で起きているアヴァンギャルドなダンスシーンを紹介していきたいと語っていた。
 そんなわけで、先週の「Lit City Rave」ではドキュメンターリー映画『Paris Is Burning』で知られたBallのダンス・パーティの若手DJとしても知られている〈Fade To Mind〉のMike Qがメインで登場。こっちのダンスシーンもプログレッシヴに進化を遂げているんだなと、ヴォーギング・ダンサーズのトリッピーな動きに釘付けになったのでした。

https://soundcloud.com/litcity

Lit City Traxからのリリース
https://www.beatport.com/release/teklife-vol-1-welcome-to-the-chi/919453
https://www.beatport.com/release/teklife-vol-2-what-you-need/982622

Download a Mix from Lit City Trax
https://www.thefader.com/2013/08/02/download-a-mix-from-lit-city-trax/

J-Cush XTC MIX
https://dismagazine.com/disco/48740/j-cush-xtc-mix/

10年たってもなんにもできないよ - ele-king

 四谷にライヴハウスがあるというイメージをお持ちの方はあまり多くないかもしれない。が、じつはいま、都内のライヴハウス事情に詳しい人の間では知る人ぞ知る勢いのある場所がある。それが〈アウトブレイク!〉である。
 構えとしては一見すると普通のロックのライヴハウスである。しかし、このご時世、単なる普通のライヴハウスのままで生き残るのは尋常なことではない。そんななか、店長の佐藤“Boone”学を中心に次々と奇策や珍企画を打ち出して周囲を驚かせたり呆れさせたりしているのがこのお店。

 たとえばライヴハウス史上初の「松屋」とのコラボレーション。ライヴハウスの受付前にあるチケットを隣の松屋に持って行くと生卵or定食ご飯大盛りが無料に!
 酒が旨いのはライヴハウスにとっても重要、ということでキンミヤ焼酎とコラボしたTシャツを制作、見事に完売しそれを記念して〈キンミヤナイト〉も開催して大いに盛り上がったという。
 かと思えば複数ライヴハウスと共同で、お勧めのバンドを集めた試聴機をタワーレコードで展開。また高円寺のヴィレッジ・ヴァンガードでも〈アウトブレイク〉・コーナーを展開と、店の外への展開にも余念が無い。

 もちろんライヴ自体が面白くなければ話にならないが、これまた手を変え品を変え、面白い企画をどんどん打ち出している。遠藤ミチロウとストリッパーの共演。日曜朝5時から11時までという狂った時間帯にバンドやDJ、お笑いに演劇まで詰め込んだ早朝イヴェント。JUKEとGORGEのパーティも定期的に開催。BiS階段発祥の地であり、PV撮影のロケ地になったのも記憶に新しい。

 こうした新しい試みの数々を見ていると、刺激されることが大変多い。

 とまあ、なぜか頼まれてもいないのにお店を持ち上げるようなことを書いてきたが、そんな四谷〈アウトブレイク!〉で今週末行われるライヴをご紹介。10年前からつづく大甲子園というスカムパンク・バンドの10周年企画が、店とがっつり組むかたちで開催される。インセクトタブーと水中、それは苦しいも招かれており、深い夜が期待できる。とくにこの2バンドは、どちらかが好きなら両方気に入る可能性が大ではないだろうか。一見くだらないようで手の込んだ言葉遊びの奥に潜む詩心とポップ・センスというか。大甲子園のメンバー、junne氏のブログには、自身がファンであるとして詳しく紹介されているので、そちらも参照されたい。

 そして今回は前売予約特典として、3バンドの未発表音源を収録したCD-Rがプレゼントされるとのことだ。大甲子園はそのために10年間で初のレコーディングを敢行。その録音も〈アウトブレイク〉で行ったという。これもおもしろい試みで、月1回くらいのペースで平日を終日レコーディングの日とし、料金の代わりに「アウトブレイクで一本ライヴやってね」というアイディアとアーティストへの理解、そしてシーンを耕そうという気概にあふれるサーヴィスだ。店長自らエンジニアを務めてくれる。

 さすがに一流スタジオのような録音は無理なようだが、バンドのことをしっかり理解した上で作業を進めてくれ、メンバーいわく「少なくとも我々にとっては大変やりやすかった。おかげさまでメンバー自ら“くだらねえー”と失笑するような素晴らしい録音ができました」とのこと。

 ライヴハウスについては部分的にネガティヴな議論もされがちな昨今であるが、当たり前の話だけど、面白いことやってるところはちゃんとある。バンドをしっかりサポートし、自らも全力で楽しもうという姿勢には共感しかありません。ということで夏フェスもいいけどライヴハウスも楽しいよ!


大甲子園

insect taboo

水中、それは苦しい


■大甲子園結成10周年記念シリーズ企画
「10年たってもなんにもできないよ」

■日時
8/11(Sun)
19:00 Open / 19:30 Start

■場所
四ツ谷アウトブレイク

■入場料
adv: 2000yen / door: 2500yen(+1drink)

■出演
大甲子園
insect taboo
水中、それは苦しい

■予約方法
メールおよびFacebookで受け付けます。

・メールの場合、タイトルを「8/11予約」として、
氏名
人数
を明記の上、noiz666+juunen(at)gmail.comまで、(at)を@に変えてお送りください。

・Facebookの場合はイヴェントページ(https://www.facebook.com/events/102635429941845/
で「参加」としてください。予約は前日まで受け付けます。



DJ FULLTONO - ele-king

 ここ2~3年のダンス・ミュージックにおける最大の衝撃は、シカゴのフットワーク/ジュークだった。この強烈なリズムは、僕のようにクラブに行けなくなった年寄りから、IDカードで通れるギリギリの若い世代にまで届いている。エネルギッシュで、過剰で、創造的で、同時に庶民的でもあるからだろう。そして、あらためて顧みれば、それは新ジャンルというよりも、シカゴ・ハウスという大河の新しい支流だったことに気がつく。歴としたシカゴ・ハウスの子孫だ。昨年のトラックスマンの来日は、そのことを証明した晩だった。
 いまや世界的な広がりを見せているフットワーク/ジュークだが、日本には〈プラネット・ミュー〉がそれをセンセーショナルにパッケージしてリリースするよりずっと前から、シカゴ・ハウスにおけるゲットー・ミュージックの進化を追い続けていた複数のDJがいる。〈BOOTY TUNE〉はレーベルだが、その代表的なポッセのひとつだと言えよう。DJフルトノはレーベルの発起人。トラックスマンの来日のときにDJとして共演している。

 現在は大阪に住んでいるDJフルトノがOUTLOOKフェスでのDJのために上京した5月のある日、僕は彼に会うことができた。ビールを飲みながら話していると、シーンに名を馳せている〈BOOTY TUNE〉の強者たちが続々と現れ......飲みながらの熱いシカゴ・トークを繰り広げるなか、相手を見下すことなく、彼らの知識を惜しみなく分け与えてくれたのであるが、その姿勢の低さというか、居酒屋ノリというか、まっすぐな情熱というか、開かれているところもフットワーク/ジューク、いや、シカゴ・ハウスらしいと思った。

先日の飲み会は楽しかったですね。〈BOOTY TUNE〉のみなさんがあんな風に揃って来るとは思わなかったですが、あらためて、みなさんのシカゴに対するリスペクトを感じました。

DJ FULLTONO:こちらこそ、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。深い話になるにつれ、チーマーが電話で仲間呼ぶみたいに、どんどん人数が増えてしまい申し訳ございません......ついみんなを紹介したくなったもんで。

いえいえいえ(笑)。しかも、シカゴ・ハウスの話だけであそこまで長時間話せるっていうのもすごいですよね。で、あのときも話したように、トラックスマンの来日が僕にとってフットワークを考え直す良いきっかけになりました。僕は、わりとシカゴのキワモノ的なところ、エクストリームなところに反応していたのですが、この音楽が、シカゴ・ハウス(ヒップ・ハウスも含む)のアップデートされたものであることをあらためて感じることができました。あれ以来、トラックスマン系のDJラシャドとか好きになってしまい......。

DJ FULLTONO:そうですね。〈プラネット・ミュー〉がフットワークという文脈で紹介した最初のアーティストがDJネイトだったことはご存知だと思うのですが、正直ジューク・ファンからしたら、なんで? って感じでした。無名のネイトがいきなり1EPと4枚組みのアルバムですからねえ。この人はヒップホップもやってて、シーンにはそれほど肩入れしてないような若手です。その次のリリースがDJロック、これまた無名。でもこの人はけっこうベテランで、〈ダンスマニア〉クルーのDJスラゴのレーベルからリリースしてる人でした。このとき、もしかして〈プラネット・ミュー〉はあえて、ラシャドやトラックスマンなんかを外してるのかな? と感じました。ジューク/フットワークにハマるためのストーリーがマイク・パラディナスのなかででき上がってたんじゃないかと。実際のところわからないですけどね。

フルトノ君や〈BOOTY TUNE〉のみなさんは、そういう意味では、まだフットワーク/ジュークが出る前からずっとシカゴ・ハウスを追っていた人たちですよね。そもそも、シカゴとはどうして出会ったのでしょうか? 

DJ FULLTONO:僕は高校のときにテクノに出会ったんです。94年前後ですかね。その頃って、シカゴ・ハウス・リヴァイヴァルがはじまった頃で、テクノ=シカゴと言ってもいいと思うんですよ。僕はジャンルのことなんて全くわからなかったんですが、無意識に耳に入ってたと思います。でもホントにハマッたと言う意味では、やっぱりヴォイス・サンプリング連呼の曲かな。当時、田中フミヤさんが大阪のクラブ・ロケッツで「カオス・ウエスト」というパーティを主催していて、京都からひとりで行って、誰とも喋らず1回も休憩せずにドリンク1杯で朝までひたすら踊ってました。何が楽しいのかわからないんですが、いつかわかると思ってひたすら踊るんです。そしたらあるとき、いきなり人の声が連呼するトラックがフロアに鳴り響いた瞬間、うわー!! ってなって、あのときのフロアの興奮度は凄かったですよ。そのトラックはたぶんDJファンクの「Pump It」だったと思います。何の予備知識も無しであんなもん喰らったら一生抜けられないですよ(笑)。いま一緒に活動してる連中ほとんど似たような経験してるんだと思います。

あの音楽のどんなところに惹かれたのでしょうか?

DJ FULLTONO:それがいくら考えてもわからないんです。シカゴの魅力は言葉で表わしても伝わらない気がして。でも、初めてシカゴ・ハウスの12インチ手に入れて針を落とした瞬間、「これこれ! この音」って思いましたね。なんでしっくり来たのかはわかりません。永遠のテーマですね。でもいまの若い人がジュークを聴いて、「よくわからないけどこれこれ!」って思ってくれたらなんか嬉しいです。

90年代のなかば、グリーン・ヴェルヴェットやDJラッシュなんかが出てきたとき、日本でもシカゴ・ハウスは人気がありましたが、デトロイトやヨーロッパの盤に比べると、手に入りづらかった時期もあったと思います。それでもシカゴ・ハウス/ゲットー・ハウスから離れなかったみなさんのその一途さはどこから来ているのでしょうか?

DJ FULLTONO:ちなみに僕はグリーン・ヴェルヴェットよりもポール・ジョンソン派でした!

ポール・ジョンソンは、シカゴに造詣が深い人はみんな好きですよね。

DJ FULLTONO:日本で手に入りにくかったでしたっけ? 

〈リリーフ〉みたいな人気レーベルはともかく、マイナーなレーベルになると東京ではバロン・レコードぐらいしか扱ってなかったですね。DJゴッドファーザーとか、ああいうのは、バロンでしたね。

DJ FULLTONO:じゃあ、わりと僕はまわりに恵まれてたほうです。90年代半ば、シカゴのゲットー・ハウスをたくさん仕入れてくれてたレコード店は多かったですから。バイヤーさんに感謝したいです。大阪のシスコやソレイユにはお世話になりました。リバーサイドにいたっては、レーベルのリリース番号紙に書いて、「全部オーダーして下さい」って頼んだりしてました。ほとんど入ってきて大変なことになりましたけど(笑)。後にそのリバーサイド京都店のDJイケダさんに誘っていただき、そこでバイトしてました。ゲットー・テックばっかりオーダーしてて、D.J.G.O.が良く買いに来てました。僕が彼の人生を狂わせてしまったんです。
 シカゴ一本でいままでやってきたわけではまったくなくて、逆にけっこう移り気激しい方だと思ってます。最初テクノDJやってたのに、ブレイクコア聴いたりエレクトロニカ聴いたり、ゲットー・テックやエレクトロのDJやったり、いまはジュークやってますからねえ。
 シカゴとかゲットーとかっていうテーマから離れなかった理由は、単純に好きだったのもあるんですけど、紹介してくれるメディアが少なかったからというのもあります。取り上げてくれないんだったら自分らが発信するしかないと思いました。シカゴ好きな人って、みんな何故か使命感みたいなのをどこかに持ってる。頼まれてもいないのに。バカなんですけどね(笑)。自分の場合、自ら情報を発信していこうという気持ちが芽生えたきっかけがあって、実は昔、ele-kingさんでシカゴ・ハウスの特集が組まれたことがあって、そこで、「〈ダンス・マニア〉100番以降は下ネタ連呼のカストラック」と評されたんです。自分が一番好きな部分がそう評されてしまったので、いつか自分がこの100番以降を紹介する立場になりたいという気持ちに火が付きました。野田さんが書いた記事ではないんですが、いま、野田さんがジュークに興味を持たれているということは僕にとって感慨深いものがあります。

しまった、恨みを買ってましたか(笑)。ただ、下ネタ連呼に関しては、英語がわかる人には本当に嫌がる人も少なくないんですよ。ところで、ロン・ハーディのなかにもすでにフットワーク/ジュークの種子があったんでしょうね。

DJ FULLTONO:恨みだなんてとんでもない(笑)。でもやっと言えた、何年越しだろう......。ロン・ハーディもミュージック・ボックスもリアルタイムで体験してないので、もちろん本当のところはわからないんですが、そうかもしれませんね。でもぶっちゃけると、僕あんまりオールド・スクール掘ってなかったんですよね。DJマエサカやDJエイプリルに教えてもらって発見することが多いです。ただ、シカゴ・ハウス・リヴァイヴァルの93年以降のシカゴ・ハウス/ゲットーハウスはアホほど聴きましたし、いまも集めてます。

では、フルトノ君の、フットワーク/ジュークとの出会いについて教えてください。

DJ FULLTONO:ゲットー・ハウスのBPMが年々上がってきて、97年頃からかな? それまで4つ打ちのハウス・ビートだったのが、ローエンドを強調したようなビートにシフトした頃、ジュークという言葉が使われ出しました。2000年代に入ってからシカゴのシーンはデトロイトのゲットー・テックと融合します。2004年にDJゴッドファーザーが〈ジューク・トラックス〉というレーベルをはじめた頃にジュークを意識しはじめました。
 変則的なビート、フットワークに出会ったのは、そのだいぶ後の2009年です。〈ジューク・トラックス〉からリリースされたDJラシャドのアルバム『ジューク・ワークス』を聴いたとき、新しい時代が来たと思いましたね。ハウスの原型をまったく無視した変則ビートだけど、音色や曲構成はあきらかにシカゴ・ハウス。あまりにも唐突な出来事だったんで意味がわかりませんでした。それと同時期かな。僕はその頃SNSのマイスペースでほとんどのゲットー・テック・ジュークのクリエイターと繋がっていたんですが、そのなかのひとり、トラックスマンが、まったく聴いたことのない変則ビートのトラックばかり使ったショート・ミックスを次々にアップしました。鳥肌ものでしたね。トラックスマンのマイスペース・アカウントは、その当時のままネット上に放置されてますんで、いまでもいくつかのミックスは聴くことができますよ。

ほほぉ。

DJ FULLTONO:でも衝撃的な反面、これがクラブで機能するのか? って悩まされましたね。その後シカゴから〈ゲットー・ファイルズ〉ってレーベルができて、DJラシャドをはじめ、聴いたことない名前のアーティストがどんどん出てくるんですが、それらのトラックはしばらくのあいだほとんどクラブでプレイすることはありませんでした。僕以外にもこの手の音を聴いていたDJはいるのかもしれないけど、おそらく現場ではプレイできなかったんじゃないでしょうか。〈プラネット・ミュー〉がそれらの曲をフックアップするまでは。

DJエイプリルなど、〈BOOTY TUNE〉のみなさんとはどうやって知り合って、そして、どうやってそれが〈BOOTY TUNE〉(https://bootytune.com/)へと発展したのでしょうか?

DJ FULLTONO:D.J.G.O.や黒木幸一は結構古くから一緒にいろいろやってたんですが、レーベルに関しては元々は僕ひとりで思い立って2008年に〈BOOTY TUNE〉をはじめました。ロゴ・マークをデザイナーの落合桃子さん(:::STROLL SPACE:::)に作ってもらった以外、運営は僕ひとりでした。その後、D.J.G.O.が僕に曲を20曲くらい送ってきたのをきっかけにトラックメイカーとして参加するようになりました。
 DJエイプリルとは2010年くらいかな。ツイッターを見ていたら、彼が〈ダンス・マニア〉レーベルの音源だけでUstreamをやってて、しかも1曲プレイするごとにその曲をツイートしてたので否が応でも目に付いて、ちょっと話しかけてみたんです。そしたら僕がUstreamで毎週日曜日午後3時からやってた「Booty Tune Ch.」という番組を聴いてくれるようになって、その後、東京で露骨キットさんが主催していた「galaxxxy mixer」という企画に出演した際、遊びに来てくれたのが初対面です。
 その数日後、大阪の地下一階という箱で回した際もわざわざ東京から来てくれました。そのとき、逆さ絵みたいなおっさんの顔がプリントされたTシャツ着てて、これ誰の顔ですか? って聞いたら、「お父さんを探してるんですよ」って言ってた。面白い人だなあと思って自分のいままでの音楽経歴をたくさん話しました。最初はみんな、レーベルを応援してくれる立場って感じだったんですが、気付いたらレーベルの人になってました。みんなでやった方が面白いことになりそうと思って。

シカゴ系をメインにしたDJパーティも大阪や東京で続けていたのですか?

DJ FULLTONO:2005年くらいからだったかな。その頃ってSNSのミクシーがブームで、マニアックな趣味を持つ人たちが繋がりやすくなった時代でした。そこでタカオカさんやDJファミリーと知り合いました。D.J.G.O.が、ゲットー・テックをメインにしたパーティをやろうと言い出したのをきっかけに、「スラムキング」というパーティを大阪でやったことがあります。あと、黒木幸一が東京で「シカゴ・ビーフ」というマニアックなパーティをやっていたみたいです。その頃って、ゲットー・テックがけっこう人気が出た時期でした。タカオカさんやDJファミリーがゲットー・テックのミックスCDをリリースしたり、タカオカさん監修のコンピレーション『ゲットー・ビート・プッシャーズ』も話題になってました。すごくいい刺激をもらいました。

実は功労者がたくさんいるわけですね。ところで、世界的に名の知れた〈プラネット・ミュー〉がフットワーク/ジュークを紹介したことで、いっきにこの音楽は広がりましたが、こうしたある種のブームは、〈BOOTY TUNE〉の活動にフィードバックされていますか?

DJ FULLTONO:もう、完全に恩恵を受けてます(笑)。『バングス&ワークス』の特典ミックスCD(国内オンリー)をやらせていただいたり、文章書かせていただいたり、めちゃくちゃ感謝しています。

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なんか欧米では、(ジュークというより)フットワークと呼ぶことのほうが多いように見受けられますが、どちらの呼称が一般的で、呼び方がふたつあるのは何故でしょうか?

DJ FULLTONO:呼び方はシカゴのアーティストあいだでも異なるくらい実は曖昧なんですが、足を速く動かすダンス「シカゴ・フットワーク」のバトルのために作られたトラックがフットワーク。パーティのために作られたトラックが「ジューク」という風に使い分けているようです。
 でも最近は、フットワークがクラブでプレイされることも多くなってきたので、UKではフットワークと呼ぶのが一般的みたいですね。僕個人としては、フットワークって呼んじゃうとそれまでのジュークと切り離された感じがするので、ジュークでいいんじゃないかなと思います。地方によって呼び方が異なるとか、一般に良くあることですしね。ただ、曲のレヴューとか書くときは使い分けますね。変則的なビートはフットワーク、反復的なビートはジューク。

なるほど、わかりやすい説明ですね。ところで、トラックスマンの来日時の良い話があったら教えてください。

DJ FULLTONO:それより先日のトラックスマンの事件はビックリしましたね。街で強盗に足を撃たれたということだけしかわからないので、本当に世界中のファンが心配してると思います。

そんなことがあったんですか。

DJ FULLTONO:「心配無い、元気だ」とエイプリルのほうには連絡があったみたいですが、心配です。しかし本人はその後も、いつものようにフェイスブックでオススメ音源を紹介し続けてるんです。すごいなあと。
 で、来日時、ホテルが一緒だったんですが、朝に一緒にマクドナルドに行ってハンバーガーふたつ買って、ひとつ店で食べて後はホテルで食べるってすぐに戻ったんです。「ハンバーガーとYoutubeがあればいいんだ」って言ってドアを閉めて、その後もひたすらフェイスブックでYoutubeをシェアし続けてました。シカゴの音楽を世界に紹介するという使命感がハンパないんです。
 パーティ中はパーティ中で学ぶことは多かったです。ほとんど控え室には行かずフロアにいました。東京公演の時はオープンからステージでマイク持ってましたからね(笑)。〈BOOTY TUNE〉のメンバーでゲットー・ハウスをプレイしてると、マイク持ってアーティストをシャウトアウトしてるんですよ。メインゲストが前座のMCもやるという前代未聞の光景でした。大阪では、自分の番が終わったらすぐにうちらの物販スペースに座ってくれて、その後の僕のDJのときもマイクで盛り上げてくれました。帰国後かな、「いますごく疲れてる。でも俺はバッド・ミュージックから世界を守らなければいけないから休んではいられない」ってコメントしてたそうです。熱すぎるでしょ(笑)。

とても良い人なんですね(笑)。僕はあの、クールさを売りしてない、一種のプロ根性にやられたのですが、ああいうリアルな感覚はフルトノ君も共感するところですか?

DJ FULLTONO:僕なんて好きなようにやってるだけですよ(笑)。でもDJはじめたときから心がけてるのは、まだクラブの雰囲気に慣れてないようなアウェイな人たちに衝撃を与えられるようなプレイをしようとつねに心がけてます。

あのとき、お手本にダンスをやっていた日本人の方はどういう人なのでしょうか? あんな風に動けて、羨ましかったです。

DJ FULLTONO:タクヤとウィージーですね。ふたりともシカゴ・フットワークを独学でやってます。あのダンスを取り入れてる人はいままでもダンスの世界にいたと思うんですけど、クラブで本格的に踊ってるのは彼らだけじゃなかと思います。俺の方が上手いって人は現場でどんどん勝負すればいいと思います。あと、そうしないと彼らもしんどいみたいです。フットワークってめちゃくちゃ疲れるんですよ。ふたりともノリがいいもんだから要望あればどんどん踊っちゃって、最後ぐったりしてるという(笑)。

ハハハハ。酒飲んだら無理っすよね。ところで、フットワーク/ジュークは、わりと大ネタのサンプリングを使ってますが、サンプリングはやはりこのジャンルでは重要な要素ですか?

DJ FULLTONO:サンプリングのないトラックものも多いんですが、大ネタ多いですね。大阪のファンクDJのピンチさんが言っておられたんですが、ジュークのいいところは、誰でも知ってる大ネタを使うところ。つまり、マニアのためにやってる音楽じゃないってことだと。僕は音楽を広く聴いてないのでほとんど元ネタわかってないんですが、DJ終わってお客さんに、「○○ネタ最高でしたよ!」とか良く言われるんで、なるほど有名なネタなんだなと気付かされます。

黒人音楽の大ネタを使うのは、それがブラック・コミュニティで生まれたものだからでしょうかね?

DJ FULLTONO:その辺は逆に野田さんに手ほどきいただきたいですわ(笑)。

デトロイトのゲットー・パティで、DJがマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」を高速でミックスしているのを見たとき、この音楽は本当に大衆音楽なんだなと思いました。踊っていた人たちも、子供から中年まで、幅広い世代にまたがってましたね。庶民的な音楽ですよね。おばさんから若い子まで行くような、チリ紙売ってるような雑貨屋で売っているミックスCDがその手のものでしたから。〈BOOTY TUNE〉では、日本におけるこの音楽の広がりについてはどう考えていますか?

DJ FULLTONO:そうですね。最近ネットで、ジュークが盛り上がってると良く耳にするんですが、あれはツイッター上だけの話であって、まだまだ少数派だと思うんです。現に僕は毎日自転車でアメ村を通るんですけど、服屋からジュークが聴こえて来たこと一度も無いですよ。そのくらいまだ認知されてないんです。情報が先行しすぎちゃったのかな。これから面白くなるんですが......。卑屈な意味で言ってるんじゃないです。それくらいいろんな人に聴いて欲しいと思ってるんです。いかに普通に耳に入ってくるかがこれからの課題。そのためにはもっと現場でプレイし続けて広げていかないと。
 いまジュークが好きでDJやライヴやってる人は、まわりで自分だけしかやってないとか、この客層では無理とか、なるべくそういうコンプレックス捨てて、この音楽の力を信じて、自分が描く最高のプレイをして欲しいです。オファーが来なければ家で磨いて準備してればいい。もしくはパーティはじめちゃえばいいと思う。時間は掛かるけど自分はそれが大事だと思ってます。ファッションやポップ・ミュージックの源流を辿ればクラブから生まれてたってこと多いですよね。クラブであんまり聴けないのに上辺だけのシーン作ったって薄っぺらいのはすぐリスナーにバレます。そんなものすぐ終わっちゃう。クラブからいろんな場所に繋がっていくって流れが自然だと思う。いろんなやり方があるんだろうけど、僕にはそれしかできません。

いま、日本で起きている面白いことがあれば、ぜひ教えてください。

DJ FULLTONO:世界で起きていることになるのかもしれませんが、最近海外のメディアが日本のシーンを紹介してくれるケースが多くなってきました。UKのリンスFMでIGカルチャーが日本のジュークをメインに紹介する放送があったり、アメリカの音楽メディア『The FADER』が「Japanese Juke」ってタグ作って、日本のアーティストを立て続けに紹介してくれたり、海外のフォロアーも少しづつ増えてきました。逆輸入で日本に広まるということが起これば楽しそうですね。

〈BOOTY TUNE〉はレーベルですが、やはり、フットワーク/ジュークというジャンルにこだわってのリリースを考えていますか? それとも、もっと幅広く考えているんでしょうか?

DJ FULLTONO:基本〈BOOTY TUNE〉は、僕が使いたいと思うものしかリリースしません。なのでおのずとジューク/フットワーク、ゲットー・テックといった音になります。自分のレーベルでリリースしたものを僕がプロモーターとなって現場でプレイするという構図です。小さいレーベルってそれでいいと思うんです。でも、EPで出すなら1曲くらい遊んでもいいかなと思うので、エレクトロとかゲットー・ハウスとか、何やってくるかわからない感じでも面白いですね。

先ほどの話にも出ましたが、インターネットがあることで、現在は日本のシーンが海外と繋がりやすくなっています。〈BOOTY TUNE〉が受けているネットの恩恵について話して下さい。

DJ FULLTONO:マイスペースで海外のアーティストと繋がれたことは大きいです。いまはマイスペースはゴーストタウン化しちゃってますが、フェイスブックで毎日世界のクリエイターと情報交換してます。翻訳ソフトが手放せません。昔は〈ダンス・マニア〉の盤面の少ない情報でしか知り得なかった謎の人たちと普通にスラング用語ばっかでコミュニケーションが取れてるっていうことはホントにネット様々です。
 一方、距離が縮まり過ぎて厄介なこともあります。シカゴの面白エピソードをネットにうかつに書けなくなくなってしまったことです。翻訳ソフト使ってる人もいますからねえ。直訳されたら茶化してるようにしか見えませんので。でも、こう言うと汚く聞こえるかもしれないんですが、シカゴのアーティストが日本人に対してこれほどウェルカムなのは、日本人がちゃんと金を払うからだと思います。そうじゃない人もいるけど、基本ビジネス・パートナーなんです。そこが他の国の人たちとシカゴの違うところ。でもそうあるべきだと思います。paypalで金送って新曲と交換。今週末パーティがあるから、いいのあったらすぐに送ってくれ! とか、とくにヤバイ曲があればリリースしようかって取り引きが結構日常的になってきました。手法は違えど昔からそういう感じだったのかなあと思ったりします。ネットがそれほど普及していなかった時代、日本の〈サブ・ヴォイス〉とかテクノのレーベルがシカゴのアーティストと密接に繋がっていたことは相当な労力と愛情があってのことだったんだろうなあと。比べることもおこがましいですが、ホントに頭が下がる思いです。

お下品なところとお上品なところとの両方がシカゴ・ハウスにはありますが、フットワーク/ジュークにも同様なことを思いました。ある意味では、お下品なところはわりと取り入れやすいと思います。しかし、あのエレガントさはなかなか出せるものではないと思います。日本では、お下品なところは拡大再生産しやすいんじゃないかと思っているのですが、そうしたバランス感覚についてはどう思われますか? 僕は、トラックスマンのバランス感覚の良いところに惚れたのですが......。

DJ FULLTONO:いやー、お下品な部分ですらなかなか真似できないです(笑)。最近広島のCRZKNY(クレイジーケニー)が、「ジュークは誰でも作れる」と良く言ってるんですが、ホントにその通りなんです。誰でも作れる。けどシカゴのフィーリングを出すのは難しいんです。日本のイメージとして、シカゴの人はドラムマシン適当に叩いて作った。みたいなのが昔から定番となっていますが、それは手法だけの話であって、聴けば聴くほどめちゃくちゃ拘っていることに気付かされます。音の良さとかそういうことではなく、ダンスそのものへの拘りです。
 フットワークで言えば、スネアの場所、タイミング、展開が変わるときの変化の具合。ベースはひとつの種類じゃなくて2種類3種類使う。見過ごしがちな細かい変化が随所に施されてるんです。トラックスマン、ラシャドあたりは本当に完璧だなあと感心します。RPブウに関しては、本当に頭のいい人なんだなあと聴けば聴くほど思います。わざとベタな打ち込みをして、そのビートを騙す為にオトリを挿入してきますから。この表現、全然伝わらへん(笑)。まあアルバム買ってみてください。

わかりました。フルトノ君のソロ・アルバムの予定はまだないのでしょうか? 待っているファンも多いかと思いますが......。

DJ FULLTONO:次に自分がリリースするものがリスナーの想定範囲内の音ではダメだと思っているので、実はここ1年くらい、作っては捨てるの繰り返しでした。自分の頭のなかで鳴っているビートを表現することができなかったんです。それがここ最近、いろんな所でプレイさせてもらったおかげで少しづつ表現できるようになってきたんです。自分で現場でプレイしてみて、コレだというものが揃ったタイミングでリリースできればと思ってます。おそらくまったく色気の無いトラック集になると思います。お店がそれを扱ってくれるのかという問題がありますが。

大丈夫でしょう(笑)。最後にフルトノ君の今後の予定、〈BOOTY TUNE〉の活動の予定などを教えてください。

DJ FULLTONO:間もなくデジタル配信でリリースされる、京都のアーティスト、グニョンピックスのEPはなかなかの力作なので是非聴いて欲しいです。彼の作品はとくに海外からのリアクションがすごくいいんです。あと近況では、7月にシカゴの若手プロデューサー、K.ロックのアルバムをCDでリリースします。これも最高。その他にもリリース予定はたくさんありますのでご期待ください。
 レーベル主催パーティはまだ予定はありませんが、いずれ東京でやりたいと思ってます。まだ企画段階ですが、大阪で、ケイタ・カワカミ君とパーティをはじめるかもしれません(言ってしまったのでもうはじめないといけませんね)。あと、8月31日に〈BOOTY TUNE〉クルーが初めて仙台に遠征します。他、大阪、京都、神戸、東京などでやってますんで、bootytune.com のスケジュールをチェックしてください。

ありがとうございました。また飲みに行きましょう。最後にフルトノ君のオールタイム・ベスト10枚を教えてください。

01) ALL RELEASE (DANCE MANIA & RELIEF)
02) KRAFTWERK / ROBOTS(91'ver.)
03) JEFF MILLS / PURPOSE MAKER 1 (PURPOSE MAKER)
04) JOEY BELTRAM / START IT UP (TRAX)
05) RED PLANET 7 
06) DJ HYPERACTIVE / LOCOMOTIVE (CONTACT)
07) DJ FUNK / KNOCK KNOCK (COSMIC)
08) DJ ASSAULT / ASS-N-TITTIE (ELECTRO FUNK)
09) LEGOWELT/ FIZZCARALDO (BUNKER)
10) DJ RASHAD / BETTA MY SPACE (JUKE TRAX)

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