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工藤キキのTHE EVE

工藤キキのTHE EVE

vol.3 : NYのジューク

文:工藤キキ Aug 09,2013 UP

 285 KENTはサウスウィリアムズバーグにある中箱のウェアハウスで、がらんとしたダンスフロアとステージとチープなバーがあるだけのシンプルな箱だ。その285 KENTで月1ペースで開催している「Lit City Rave」は、Jamie Imanian-Friedmanこと J-Cushが主宰するJuke / Footworkのレーベル〈Lit City Trax〉がオーガナイズするパーティ。たぶん私が出入りをしているようなダウンタウンまたはブルックリンのパーティのなかでも極めてクレイジーで、この夜ばかりはステージの上も、DJの仲間たちの溜まり場になるステージ裏も、一応屋内喫煙が禁止されているNYで朝の5時までもうもうもと紫の煙が立ちこめている。
 基本的には、Chicago House直系のベース・ミュージック──Ghetto Houseから、Grime、Dub Step、UK Garageなどのビート中心で、特にJuke/FootworkをNYで逸早く取り上げたパーティだと思うし、例の'Teklife'という言葉もここではCrewの名前として日常的に、時に冗談めかしで使われている。

 DJ RashadやDJ Manny 、DJ SpinnそしてTraxmanはこのパーティのレジデントと言っていいほど「Lit City Rave」のためだけにChicagoからNYにやって来て、彼らのNYでの人気もここ数年の〈Lit City Trax〉の動きが決定づけたと言ってもいいんじゃないかな? さらに興味深いのがTRAXを経由したChicagoのミュージック・ヒストリーをマッピングするように、DJ DeeonなどのOGのDJ/プロデューサーから、Chicagoローカルの新人ラッパーのTinkやSASHA GO HARDが登場したり、ARPEBUことJukeのオリジネイターRP BOOのNY初DJ(!)などを仕掛けるなど、そのラインナップはかなりマニアックだ。
 本場ChicagoのようにMCがフロアーを煽るものの、Footworkersが激しくダンスバトルをしている......というような現場は実はNYでは遭遇したことがないかも。人気のパーティなので毎回混んでいるし、誰しも踊り狂っているけど、パーティにRAVEと名はついているものの俗にいう"RAVE"の快楽を共有するようなハッピーなものではない。はっきり言って毎回ハード。アンダーグラウンドで生み出された新しい狂気に満ちたビートを体感し、自らファックドアップしに行くといったとこだろう。振り落とされないようにスピーカーの横にかじりつきながら、踊るというよりもビートの粒を前のめりで浴びにいくような新感覚かつドープでリアルなセッティングで、本場Chicagoのパーティには行ったことがないけど毎回「果たしてここはNYなのか?」と思ってしまう。

Pphoto by / Wills Glasspiegel

 J-Cushは実はとてもとても若い。LONDONとNYで育った彼は、Juke/FootworkがGhetto Houseの進化系としてジャンル分けされる以前からDJ DeeonなどのChicago Houseには絶えず注意を払っていた。2009年頃からChicago Houseの変化の兆候をいち早く読み取り、一体Chicagoでは何が起きているのか? とリサーチをはじめた。それらの新しいChicagoのサウンドは彼にとってはアフリカン・ポリリズムスまたはアラビック・マカームのようにエキゾチックであり、UKのグライムのようにフューチャリスティックなサウンドに聴こえたそうだ。それからはJuke/Footworkを意識して聴くことになり、〈Ghettotechnicians〉周辺や〈Dance Mania〉のカタログを総ざらいした。
 その後NYでDJ Rashadと出会うことになり彼が生み出すビート、圧倒的かつ精密なまでにチョッピング、ミックスし続ける素晴らしくクレイジーなプレイに未だかつてない程の衝撃を受け、それに合わせて踊るQue [Red Legends, Wolf Pac] や Lite Bulb [Red Legends, Terra Squad]というFootworkersにもやられた彼は、Chicagoのシーンにのめり込むことになり〈Lit City Trax〉というレーベルを立ち上げるに至る。

 NYのパーティは割とノリと気分、ファッション・ワールドの社交の場になっているものも多く、「Lit City Rave」のようにビートにフォーカスし、かつ毎回趣向を凝らしたラインナップで続けているパーティは案外少ない。東京とブリティッシュの友人たちに多いギーク度、新旧マニアックに掘る気質がやはりJ-Cushにもあるし、そして彼は単なるプロモーターでは無い。ジャンルを越境できるしなやかなパーソナリティを持っているし、ストリートからの信頼もあつく、気鋭のビートメイカーたち、Kode9、Oneman、Visionist、Brenmar、Dubbel Dutch、Durban、Fade to Mindのkingdom、Mike Q、Nguzunguzu、もちろんTotal FreedomやKelelaなども早い段階から「Lit City Rave」に招聘している。

Photo by Erez Avis

 J-Cush自身もDJであり、常日頃から新しいビートを吸収しているだけあってスタイルはどんどん進化しエクスペリメンタルなGarageスタイルがまた素晴らしい。そのプレイは先日『THE FADER』や『Dis Magazine』のwebにMixが上がっているので是非チェックしてみて。
 さらにJ-CushとNguzunguzuとFatima Al Qadiriで構成された'Future Brown'というCrewでトラックを作りはじめていたり、今後の「Lit City Rave」ではUSのGrimeや、さらに地下で起きているアヴァンギャルドなダンスシーンを紹介していきたいと語っていた。
 そんなわけで、先週の「Lit City Rave」ではドキュメンターリー映画『Paris Is Burning』で知られたBallのダンス・パーティの若手DJとしても知られている〈Fade To Mind〉のMike Qがメインで登場。こっちのダンスシーンもプログレッシヴに進化を遂げているんだなと、ヴォーギング・ダンサーズのトリッピーな動きに釘付けになったのでした。

https://soundcloud.com/litcity

Lit City Traxからのリリース
http://www.beatport.com/release/teklife-vol-1-welcome-to-the-chi/919453
http://www.beatport.com/release/teklife-vol-2-what-you-need/982622

Download a Mix from Lit City Trax
http://www.thefader.com/2013/08/02/download-a-mix-from-lit-city-trax/

J-Cush XTC MIX
http://dismagazine.com/disco/48740/j-cush-xtc-mix/

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