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最新版を聴いている……

Interview

intervew with Breakage

intervew with Breakage

俺たちはハードコア・ミュージックの
最新版を聴いている……

――活気づくロンドンのジャングル・シーンから、ブレイキッジが話してくれた

文:野田 努   通訳:Nick Stone   Mar 03,2010 UP

ブレイキッジというネーミングについて教えてください。

 EPを完成させた後だったんだけど、同じ〈Reinforced〉から出してるEspionageっていう友だちと〈Reinforced〉に行く途中に彼に名前の相談をしたんだ。いま当時のDJの名前は言わないけど(笑)、まあ、とにかく気に入ってなくて、そのEPを出すときの名前をどうしよう、って相談したんだ。アートワークとかクレジットとか決めてるときで、けっこう急ぎで名前を決めなきゃいけなかったんだ。そうしたら彼が「いまいちばん番好きな曲は何だ?」って訊いて来て、「Noise Factoryの"Breakage 4(I'll Bring You The Future)"だ」って答えたんだ。そうしたら彼が「それ使ったら良いじゃん、Breakage」と言って、もっと良い名前を考えるまで「ま、いいか」と思ってそれにしたんだ。10年経ってまだもっと良い名前が思いつかないけどね(笑)。もう遅いよね(笑)。2分で決まったよ。

2006年には〈プラネット・ミュー〉から12インチを出します。ダブステップと深く関わるようになるのはこの頃からですか?

 あの当時ダブステップの話を良く聞いてたのは覚えてるよ。まだちょっとしか聴いたことなかったけど。当時アメリカに住んでいたんだ。俺の顔を忘れられないように、数ヶ月に1回はロンドンに帰ってたんだけど、ロンドンに帰っているときに友だちに「ダブステップ聴いた?」って訊かれて、「いや、そこまでちゃんと聴いてないけど」って答えたけど彼女が「マーラがそのダブステップの重要人物のひとりなんだよ」って教えてくれたんだ「へぇー」って答えたら「へぇー、じゃなくてマーラって彼よ、マリブ、あなたたち学校一緒だったでしょ!」って言ってきたんだ。住んでた場所がクロイドンのすぐ近くだったから学校も一緒で、ハチャ(Hatcha)も近くのレコード屋で働いてる頃から知ってて。とにかく彼らがみんないまダブステップをやってるって聞いてちょっとリサーチをしたんだ。そうしたら速攻ハマったね。テンポだけじゃなくて、曲の構成のなかの空間、ダブからの影響......とかが好きで、ちょうど当時作ってたドラムンベースもそういうハーフタイムのモノもあったりしたんだ。俺が音楽的に向かってる方向と一緒だ、って思ったんだ。当時ダブステップを作る、じゃなくてこんな偶然もあるんだ、って思ったぐらいだったよ。
 クロイドンがすごく誇りに思えたのも覚えてるよ。面白かったのが、ダブステップをやってる奴らはほとんど昔から知ってる奴らだった、っていう部分もあったね。ローファーは同じ近所のパブに行ってたし、そのパブでも働いてたし、MCのポークス(Pokes)は近くでやってたドラムンベースのイヴェントでMCやってたし、ベンガとスクリームはレコード屋のビッグアップルにしょっちゅういて、俺も良く弟を連れてったりしてたし......そういう小さい頃の知り合いがたくさんいて、イヴェントに行くと「あれ? 知ってるよね?」みたいな人がほとんどなんだよ。そこからイヴェントに顔出すようになったり、LAでもダブステップのイヴェントがあったらチェックしに行って、新しい曲を買ったり、ネットでダブステップのフォーラム行ってチェックしたりしてて......そのうち「自分も作ろう」っていう気持ちになっていちばん最初に作った曲をマーラに渡したら、「これアナログ切らして」って言われたんだ。初めて作ってみた曲でそうなるとは思ってなかったからびっくりしたよ。結局残念ながら出なかったんだけど、それで俺のなかではダブステップの存在がスゴく大きくなって、そればっか作り出したんだ。すごく楽に作れたのもあったんだ。頭のなかのアイディアが楽にダブステップのテンポだと実現できたんだ。2006年に出したファースト・アルバムの曲も頭のなかはそういうアイディアがあるときに作ったから、いま聴くとダブステップからそんなかけ離れてないんだ。

実際『Foundation』には、ブリアル、スクリーム、キャスパといったダブステップのスターたちが参加していますが、彼らとはいま言ってたように昔からの友だちなんですね?

 いや、昔はみんなと仲良い友だちっていうわけではなかったけどお互い同じエリアで活動しててお互いの顔を知ってる程度だった。いまとなればみんな仲良いよ、長いあいだ知ってる仲だしね。

とくにブリアルみたいな人が参加しているのに驚きました。

 ブリアルに関しては一緒に曲を作った後まで会わなかったけどね。会ったら実は住んでるのが結構近くて、ウチのすぐ近くにレコード屋があって実は彼は昔そこで働いてたんだ。「だからお互い顔がわかるんだ」って感じだったよ。同じエリア出身だから世間は狭いよ。不思議な感じでもあるよ(笑)。

ルーツ・マヌーヴァがラップするグライミーな"Run Em Out"も素晴らしい1曲で、これは昨年〈Digital Soundboy Recording〉からリリースされた曲ですが、UKを代表するラッパーとのコラボレーションについて話してください!

 怖かったよ(笑)。曲のアイディアを作った時に、狂ったトラックになったな、って思って、誰を乗せたら面白いかな、って考え出したんだ。そこで「ルーツ・マヌーヴァの曲っぽいな」って思って、ルーツに乗せてもらうことは可能なのかな、って思ったんだ。とりあえずフィーチャリングで参加して欲しいアーティスト達のリストに載せよう、と思ったんだ。そして最初の段階のループをシャイに持って行って、「ルーツのMCが聞こえてこないかな?」って訊いたら「そうだね、このループのアイディアをもっと広げて完成させないと駄目だけどバイブズはぴったりだね」って答えたんだ。だからルーツのMCが乗ることを想像して曲を作り込んだんだ。グルーブとかノリを変えたわけじゃなく、プロデューサー的な視点からのトラックの作り方を意識したんだ。そして彼に送ったんだけど、数回送らなきゃいけなくて、メールで送ってもリンクの期限切れたり、CD何枚か送ったりしたんだけど、やっと返事くれて、「デモ送るよ」って言ってきたんだ。ルーツが俺にデモを送ってくれるのも嬉しかったけど、ルーツ・マヌーヴァなんだからデモなんか送る必要ないじゃん、とも思ったね(笑)。デモが届いたら予想通り完璧だったよ。


UKが生んだ最高のラッパー、ルーツ・マヌーヴァと一緒に。

  理想ではルーツがサウンドシステム文化に関して何か歌ってくれたら良いと思ってたけど、ルーツだったら何歌ってくれてもありがたいとも思ってたんだ。そしてデモが届いて1バース目、2バース目を聴いたらサウンドシステムのテーマだったから完全に求めてたものそのまんまだったんだ。そこでレコーディングに進めよう、って話になったときにすごくエキサイトして「ルーツ・マヌーヴァとできるんだ!」って言う気分でいたのが当日になったら「本当にやるんだ」っていう緊張感みたいなものを感じて、実際スタジオで一緒に作業してて「いま書いてる歌詞を書き終わったら彼はヴォーカルブースに立って、俺はルーツ・マヌーヴァに指示しなきゃいけないんだ」っていう緊張感を感じたよ(笑)。それ以前にスタジオでちゃんとヴォーカルを録ったことなかったけど運良くシャイもいて、勉強しつつ初めてのレコーディングだったから余計緊張したんだよね。やり出したら慣れていったけど、何より彼が俺のトラックで歌ってくれたことが嬉しかったよ。

何故こうもUKではダンス・カルチャーが途絶えることなく、エキサイティングな状態を保ち続けているのでしょう?

 若い子にも浸透してるのもひとつの要素だと思うよ。例えば先週の月曜日に初めて18歳以下のパーティでプレイしたんだけどすごかったよ。〈Ministry of Sound〉が16~18歳で満員だったんだ。そういうイヴェントや動きもこの文化が生き続けるためにはすごく大事だと思うよ。その逆で、多少歳取ってても毎週土日遊んで、水曜日のイヴェントにも遊びに行ったりしてる人も大勢いるからね。ジャンルも関係ないと思う。ハウス、トランス、ダブステップ、ドラムンベース、いろいろあるけど、例えばヨーロッパではまだそこまで浸透してないけど、UKファンキーはすごく盛り上がってるからね! ここからはつねに新しいものが生まれてるんだよ。新しいジャンルだったり、新しい解釈だったり、そういう姿勢がクラブ・カルチャーの健康を維持してると思う。あとは単純にイギリス人は遊びにいくのが好き、っていうことだと思うよ(笑)。みんな出かけて遊ぶのが好きなんだよ。平日働いて、土日が来たらみんな出掛けて遊ぶんだよ、土日通して。

ジンクがやっているクラック・ハウスについてはどんな印象ですか?

 大好きだよ。俺はけっこう長いあいだハウスが好きだし、彼がやってるハウスもすごく興味深いと思う。ほとんどジャンルの名前とか違いとかはわからないけどね。ハウス内のスタイルの違いとかもそんなにわからないけどね。ジンクのDJは実は数ヶ月前に初めて聴いたんだけど、最高だったよ。Big up Zinc!  彼は伝説だよ。自分のセットでも彼のそのハウスの曲かけてるよ。好きだったらかけないのもおかしいしね。

いまあなたがもっとも共感しているDJは? 

 やっぱりシャイ・エフェックスだね。一緒にDJすることも多いし、音的にもお互い共感できる要素がたくさんあるんだ。例えばダブステップもかけるし、ドラムンベースもかけるし、ハウスもかけるし。気分によってはレゲエもかけるし、彼も同じスタイルなんだ。彼と一緒にプレイすることによってイヴェントとかその日のテーマとは関係なく幅広くプレイできることが分かったのもあるし。俺もシャイも、どういうスタイルをかけるか関係なく、自分たちが良い音楽だと思ってる物をかけるし、それ自体が俺たちのプレイ・スタイルだっていうのをわかってDJしてるんだ。その延長でプロダクション面もジャンルやスタイルは関係なくて、自分が良いと思ってる音を詰め込んだのがアルバムなんだ。

〈Naked Lunch〉から出したシングルでは、より実験的なアプローチをしていましたが、ああいうことは今後もやっていくんですか? あるいは、もっとよりダブステップよりのアルバムを作る予定はありますか?

 あれはとくに深く考えずに作った曲だよ。夜遅く作った曲だったから単純に"Late Night"っていうタイトルにしたんだ。一晩のセッションでできた曲なんだ。夜通してワイン一本飲んで出来た曲なんだ(笑)。次のアルバムに関しては現段階では全然わからないよ。前もって計画し過ぎるのも良くないと思うしね。「2012年に次のアルバムが出ます。その内容はダブステップ×カントリー×ハッピー・ハードコアになります」って言ってもおかしいからね(笑)。そういうアルバムを作れる保証もできないしね。でもいまこう言って笑ってるけど、2年後に実際やってる可能性もあるからね! 全然予想はできないよ。いつになるかもわからないよ。1枚目のアルバムは1年かかって、今回の2枚目は2年かかったから、次は4年かかるかもね(笑)! 自分の感性が思うままに進むだけだと思ってるよ。

 昨年末スクリームが発表した「Burning Up」を聴くと、あるいはゾンビーの『Where Were U In '92?』を聴くと、ロンドンのダブステッパーたちにとっての帰る家はジャングルなんだとあらためて認識する。ゾンビーにいたっては自らをジャングリストと名乗り、ダブステッパーと呼ばれることを否定する始末だ。実際の話、その境界線もいまでは曖昧なものになりつつもある。日本の〈ドラムンベース・セッション〉がまったくそうであるように、ジャングルとダブステップは活発に交流を続けているからだ(それこそ大物ではチェイス&ステイタス、あるいはネロなんかもそうだ)。

 いずれにしても、街を突き抜けるような激しいビートを身体に注入したい――そんな衝動に駆られたときは、ロンドンのハードコアにチューニングすればいい。そう、ハードコア、イギリス人に通じるように言うなら「ハーコー」......ジャングルという呼称で知られるダンス・ミュージックのことを、彼らはそう呼んでいる。20年も前からずっと、変わっちゃいない。

   なお、ブレイキッジはマッシヴ・アタック『ヘリゴランド』のリミックス・アルバムに参加したとのこと。きっと『ヘリゴランド』に生気を与えたのは、ここ数年のUKのジャングル/ダブステップのシーンなのだろう。

文:野田 努(2010年3月03日)

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