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ele-king book 新刊

ele-king book 新刊

3.11以後の、溢れる熱い言葉──『街のものがたり 新世代ラッパーたちの証言』

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Jun 28,2013 UP

  本を読み進むにつれて、彼らのはっきりした物言いにどんどん引き込まれる。日本のラッパーたちは自分の意見を言える。これは意外と、お茶を濁すのが好きな日本文化では珍しい。そして......ページをめくり、OMSBの話を読むながら、この本のポテンシャルに震えた。

 ele-king booksから新刊のお知らせです。これは宣伝文、売らんがための文章だ。ゆえに控えめに言おう。僕は本書のゲラを読みながら、自分の内側から熱いモノが湧きあがって仕方がなかった。
 OMSB、THE OTOGIBANASHI'S、PUNPEE、AKLO、MARIA、田我流、ERAといったテン年代のラッパーたちの言葉(リリック)に焦点を絞りつつ、大先輩である宇多丸とMummy-Dが日本語ラップの現在について語る──それが本書の主旨だった......が、ラッパーたちの言葉が、本書をそれ以上のものにした。
 著者である巻紗葉は黒子に徹して、彼らの言葉を引き出すことに集中している。そして、彼らは「生き方」についての自分たちの考えをはっきりと話すのだ。はっきりモノを言わないのが日本人だったじゃないのか......しかし、アメリカの影響下で生まれ、日本で育ったこのジャンルは、ずけずけと物言う文化へと成長している。

 勇気づけられる話ばかりだ。とくにOMSB、MARIA、田我流の3つは最高だ。彼らの音楽を知らない人、いや、知らない人こそ読むべきだ。たとえば、OMSBとMARIAを読めば、ヘイトがいかにいじめに直結しているのかがわかる。自分たちが経験した差別を正直に語り、それでもひたむきさと寛容さを忘れず、人生に前向きさを見いだしている彼らの言葉を心強く思う。反原発への複雑な思いを正直に話す田我流の思慮深さ、その一方でバカみたいに選挙に行こうと呼びかける態度(残念だが、そのメッセージは広く届いていない)にも僕は好感が持てるし、PUNPEEの「何も背負いたくない」という発言にも「うんうん」とうなずける。彼らには自分たちの足下を見ながら話している感覚があって、そこがすごく良いと思う。
 「ポップ・フィールド」にいるふたりのベテランの志の高さ、その揺るぎのなさも気持ちがよい。お茶の間にも行けるような人たちが『ダーティーサイエンス』のようなアルバムを出せることは、明らかにこのシーンの強さの証明だ。
 わずか9人のラッパーの証言だが、計らずとも日本のラップが、──本書の主旨にはそもそもなかったことなのに──、結果、3.11以後のリアリティを直視している話となった。僕はラップ専門の人間ではないが、本書を読んで彼らのことが好きになった。MARIAの話に涙した。田我流の最後のエピソードは、今日の日本の、とっておきの美しい生き方の一篇である。(野田 努)


■街のものがたり
著者:巻紗葉
判型:四六判/256ページ
価格:税抜き1900円
発売日:2013年6月28日
ISBN:978-4-907276-01-0

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