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Home >  News > ビル・ドラモンド『45』刊行! - 我々はどこから来て、そしてどこへ。

ビル・ドラモンド『45』刊行!

ビル・ドラモンド『45』刊行!

我々はどこから来て、そしてどこへ。

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Aug 23,2013 UP

 僕が子供の頃は「ロックとは生き方だ」というクリシェがあった。それはセックスしまくって、ドラッグきめて、暴れて、アウトサイダーを気取ることを意味しない。髪型や服装でもない。重要なのはスタイルではなくコンセプトなのだ。「ロックとは生き方だ」とは、「カウンター・カルチャーとしてのロックとは"創造的な"生き方だ」という意味だと、子供の僕は片岡義男の本なんかを読んで解釈した。人生はどんな風にでも生きられるだろう。屋根に登って落書きすることも、金を燃やすことだってできる。失敗もあろう。笑いものにもなろう。口座から金もなくなろう。腹も減ろう。女にも出ていかれよう。音楽をいっさい聴かない自由だってある。が、基本的にそれはわくわくする冒険である。エルヴィス・プレスリーとビート・ジェネレーションとビートルズを結びつけたのはこれだ。
 とはいえ、「ロックとは生き方だ」は、いまとなっては空しい言葉だ。あの犬のように、飼い慣らされたほうが楽なのだ。よって、地球のてっぺんである北極にエルヴィスの銅像を建てなければいけない。地球をよりよくするためには。こうした妄想と、そしてノエル・ギャラガーが『ビー・ヒア・ナウ』発売日前に「地球上のすべてのバンドをなぎ倒す」とラジオで豪語する話からビル・ドラモンドの『45』ははじまる。「地球上のすべてのバンドをなぎ倒す」──なんと珍妙な野心だろう。それが「ロックとは生き方だ」なのだろうか。そして、そのいっぽうでは再結成にいそしむロックのリジェンドたちがいる。ホワット・ザ・ファック・イズ・ゴーイン・オン? ビル・ドラモンドはウッドストックに銃を持っていかなければならないと空想する。そして、バスで図書館に通って、「トリックスター」の意味を調べる。「トリックスターという概念は双子の英雄と関係し、片方、または両方がそれを体現している。変幻自在な存在、トリックスターは創造者だが、同時にずる賢く、時には悪意ある行動を起こし、狡猾すぎるとされることもある。(略)トリックスターの役割は策士であることが多いが、彼は創造神である時もジョーカーである」
 エコー・アンド・ザ・バニーメンとはトリックスターになるはずだった。バンド名はドラムマシンの名前とウサギ男たちという意味ではなく、トリックスターと関わるものであるはずだった。メンバーは意味を間違えている。それでもロンドンの音楽メディアはエコー・アンド・ザ・バニーメンとティアドロップ・エクスプローズを絶賛した。ビル・ドラモンドは自分が思い描いていた「ロック」の不在を、自分の夢想でもって穴埋めする。「惑星間レイラインのせいだよ。宇宙から伸びてきてるこのラインは、地球ではまずアイスランドにぶつかって、そこからウナギみたいにねじ上がり、リヴァプールのマシュー通りに降りてくる。キャバーン・クラブ──後のエリックス──があるところにね。そしてまた戻って、地上をよじれ、曲がりながら進むと、今度はニューギニアの未開の高地に辿り着く。そこからまた宇宙へと帰るんだ。宇宙の果てへ。レイラインのことは知ってるよね? ヒッピーが夢中になってた古代英国を横切る想像上のパワーラインで......(略)」


ビル・ドラモンド・著
『45 ─ザ・KLF伝』

萩原麻理・訳
(8月30日発売予定)

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 本書『45 ザ・KLF伝』は、1953年生まれのビル・ドラモンドが45歳になったその日から1年にわたって自分の半生を綴った本である。言うなれば一時代を築いた元ポップスターの回想録。ビートルズとパンク・ロック(そしてヒップホップとアシッド・ハウス)をリアルタイムで経験している世代に属するこのスコットランド人は、学校をドロップアウトして、牛乳配達から大工などさまざまな職業を転々としながら、70年代末にエコー・アンド・ザ・バニーメンのマネージャーとして、86年からはザ・JAMS、ザ・KLFのメンバーとして活動を通して経済的な成功を収めている。ブリットアワーズという音楽業界からの大きな賞に選ばれると潔く引退&全作品を廃盤にして、稼いだ大金を燃やしたことでも知られている。金を燃やすことは、新自由主義の脅威が差し迫っている今日において大いなる反対声明にも思える。
 ビル・ドラモンドは、「ロックとは生き方だ」の実践者だと言えよう。トニー・ブレア政権誕生に音楽業界までもが興奮状態となったとき、権力にすり寄る文化人を嫌悪したのもドラモンドだった。金を燃やしたことの自分への祝いものとして自分が好きだった有名な作家のアート作品を買い、そして買った金額でその作品を売りに出すことも、彼が知っているロックンロールに関わる行為だと思える。何を馬鹿な、もういい加減にしろ、という自分の内なるもうひとつの声を聞きながら、ドラモンドは夢見ることを止めない。

 編集者には、自分がどうしても出したい本というものがある。『45』は僕にとってそうしたものの一冊だ。ロックンロールの散文詩のようなこの自叙伝は、「我々がどこから来たのか」について考える契機を与えるだろう。どうか読んで欲しい。45歳になった人も、これから45歳になる人も。ブレイディみかこさんはマルコム・マクラレンを希代のロマンティストと形容しているが、マクラレンが惜しみない賞賛を寄せたのが、ビル・ドラモンドである。(野田努)

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FBI_FBI_FBI_KLFのメンバーの自伝がのっけから面白い。今更ながら!http://t.co/dfinnD1ttP@FBI_FBI_FBI_ 01.9 17:06

watchbonzodogビル・ドラモンドは20年以上昔に、KLFで炎上マーケティングの戦略を立てていたのは流石でしたね。ビル・ドラモンド『45』刊行! - 我々はどこから来て、そしてどこへ。 | ele-king https://t.co/cMmpLE0Dl4 @___ele_king___さんから@watchbonzodog 08.21 01:53

anony__mous#utamaru #tbsradio ほいっとに〜といえば忘れ茶ならない!著作権解放戦線! https://t.co/bWcWtDihUh ざじゃむず… https://t.co/YDCgbQu4t7 もうストックエイトキンやシルクハーレーよりも下手糞!だが其所が( ・∀・)イイ@anony__mous 10.8 22:16

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