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interview with Yoshinori Sunahara

interview with Yoshinori Sunahara

ミスター・マーヴェリックの帰還

――砂原良徳、インタヴュー

野田 努    Jul 21,2010 UP

「現実は現実で大変だけど、それはおいておいて、で、これ」みたいな。必要以上にアッパーだったり、必要以上にポジティヴだったり......ポジティヴになることはいいんだけど、だけど現実を前提に作られている音楽が少ないなと思って。


砂原良徳
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"サブリミナル"という言葉をシングルのタイトルにしているわけだけど、それはいまの話とどういう風に関係あるの?

砂原:すごく関係ある。で、それと直結するキーワードが次のアルバムのタイトルになる。

出るの?

砂原:出るよ。

ホントに?

砂原:もう出る。半年以内には絶対に出る。

ホントに出るんだ。

砂原:出る。今回「サブリミナル」というタイトルで4曲フィックスした時点で出すしかない。もうこの「サブリミナル」というシングルは更新できないんだから。アルバムを出すしかない。アルバムを出せば、この「サブリミナル」もより明確にわかると思うよ。

"サブリミナル"という言葉の意味も......。

砂原:それもアルバムが出るとわかるよ。

いまは喋らないほうがいい?

砂原:まあね。

このさい言っちゃおうよ(笑)。

砂原:それはアルバムが語ってくれると思うから。ひとつだけ言えば、いま庶民が本当に必要とされているものがなくて、必要とされていないものばかりを与えられていると思っているのね。そうした現実を的確に捉えていかなければならないっていうのがある。

なるほど。興味深いテーマであることは間違いないね。

砂原:あともうひとつ言うと、次の作品はプログレっぽいものになるかもしれないと思っているんだ。プログレっぽい、そんな深くプログレを聴いてきたわけじゃないから、漠然としたイメージなんだけど。

どういうプログレ?

砂原:俯瞰詩的なところとか。

物語?

砂原:違う。うまく説明できないんだけど。

まあ、社交辞令抜きで言うけど、楽しみにしているよ。ところで「サブリミナル」の冒頭は時計の音というか、クリック音というか、すごくシンプルな音だけではじまっているじゃない。

砂原:そう、あれは静けさのなかではじまりたかった。

あのはじまり方が良かった。引いて際だたせるというか、ドキッとするはじまりだったね。

砂原:まったくその通りだね。「引く」っていうのは僕のやり方なんだよね。たまに僕のなかには「ロックがない」って言われるんだけど、ないわけじゃないんだよ。

ディーヴォに育てられたから仕方がないね。

砂原:それは違うけど(笑)。

ディーヴォの新しいアルバム、聴いた?

砂原:聴いた?

どうだった? 

砂原:いや、ディーヴォってコンセプトがものすごいでしょ。だからもう、あの上に何を載っけようが良いとか悪いとかないよなっていう。あれはあれでいいんじゃないかな。変わっていない。もし変わったところがあるとしたら、世のなかが変わった分だけディーヴォも変わった。変わらなければならない部分と変わっちゃいけない部分と両方あって、ジャイアンツのユニフォームっていうのは、それをうまく表現している。

あっははは。野球好きなんだよなー。

砂原:だから、ディーヴォもジャイアンツのユニフォーム。

レコード店に行っていつも迷うんだけど、まだ買っていないんだよね。

砂原:買わなくてもいいかもよ。ジャケットだけ見れば、なんかわかるかもよ。

でもねー、えー、何年ぶりのアルバムだっけ?

砂原:20年振り。ほらー、20年のヤツがいるよ!

ハハハハ。ディーヴォはすごいリスペクトされているから、欧米では派手に取り上げられているけどね。

砂原:そうだよね。オレの9年ぶりなんて、ディーヴォに比べたら小さいものだね(笑)。

ハハハハ。ディーヴォも意味もなくただ曲を作るってタイプじゃないからね。そうそう、まりんの場合は、自分のなかで作品の最初の手がかりっていうのはどういうところにあるの? DJミュージックなんかで多いのは、ひとつのループができるとそこから膨らませられるっていうじゃない。

砂原:作品のテーマだよね。テーマが必要だから。ループだけができあがってもテーマがなければ作品にはならないんですよ。

テーマ作りに8年かかったんだ。

砂原:それだけやっていたわけじゃないけどね(笑)。

たしかに、まりんの場合はコンセプトありきだよね。『クロスオーヴァー』(1995年)以外はすべてコンセプト・アルバムだもんね。

砂原:基本はコンセプト・アルバム。活動のコンセプトを決めたのが『ラヴビート』だったね。

なるほど。話は変わるけど、「サブリミナル」の3曲目の"アンコンシャスネス・フラグメント"はずいぶんとサイケデリックな曲だね。

砂原:それはね、無意識をテーマにしたんだけど、意識的無意識になったというか、だから結局、無意識にはなれなかったね。それはそれで意味があったんだけど。

「サブリミナル」の4曲というのは、それぞれテイストが違うじゃない。"サブリミナル"はファンクで、最後の"キャパシティ"はもっとメランコリックだし。これはアルバムのショーケース的な意味合いもあるの?

砂原:多少はあるよ。このシングルを聴いて、アルバムを聴いてみたいと思ってもらえるようにしたつもりだから。

じゃあ、半年以内に発表されるアルバムを楽しみにしていますよ。出るんでしょ?

砂原:出ます。間違いなく出るから心配しないで。まあ、ele-kingも復活したことだし、みんなでもういっかいがんばってみましょう。

素晴らしい締めだね(笑)。

砂原:でもホントにそうだよ。気力っていうの、アイツががんばっているからオレもっていうのは......

(以下、次回に続く)。

文 : 野田 努(2010年7月21日)

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