Home > Interviews > interview with Evade - マカオで僕たちはゆっくりと殺されていく……
フェイ
僕たちのサウンドを統一したかったし、「世界の終わり」についての物語を僕たちの考えや文化で語りたかったからです。だから僕たちの母国語である広東語を用いる事がベストな方法でした。
Evade Destroy & Dream Kitchen |
■自分たちで音楽を始める前はどんな音楽をよく聞いていましたか?
ブランドン:アンビエント、UKベース、シューゲイズなどです。フェネス、スロウダイヴ、ウールリッヒ・シュナウス、ソロウ、ディスクロージャーみたいな(注*ソロウはおそらくネオ・フォークのバンド、ディスクロージャーはUKガラージ)
ソニア:コクトー・ツインズ、ニーサ、オータム・グレイ・ソレイス、ビヨーク、RF&リリ・デ・ラ・モラ、マーゴ・グリアン、レイト・ナイト・アラムナイ、ピアーナ、サマンサ・ジェイムズ、キンブラ、マジー・スター、ファニー・フィンク、キャロライン、ザ・ポストマークス、ケレン・アン、テレポムジークなど(注*ニーサはスペインのポップ・デュオ、オータム・グレイ・ソレイスはアメリカのシューゲイザー、RF&リリ・デ・ラ・モラはライアン・フランチェスコーニが一度だけ組んだジョイント・プロジェクト、マーゴ・グリアンはアメリカのSSW、レイト・ナイト・アラムナイはアメリカのハウス・ユニット、ピアーナはたぶん、盛岡のIDM、サマンサ・ジェイムズもハウス、キンブラはオーストレイリアのロック、キャロラインはたぶん、J‐ポップ、ポストマークスはUSインディ・ロック、ケレン・アンはシャンソン、テレポムジークもフランスのダウンテンポ)。
フェイ:ブロンド・レッドヘッド、デヴィッチ、エリージャン・フィールズ、アスピーディストラフライ、コールドカット、DJクラッシュ、マッシヴ・アタック、ザ・バグ、ゴス−トラッド、クリプティック・マインズ、ブレイケイジ、DJマッド、AM444、サウンドプルーフ、サブモーション・オーケストラ、エイジアン・ダブ・ファウンデイション、スミス&マイティ、ベリアルなど(注*デヴィッチはアメリカのポスト・ロック、エリージャン・フィールズはアメリカのポップ・バンド、アスピーディストラフライはシンガポールのフォークトロニカで、イーヴェイド『デストロイ&ドリーム』をリリースした〈キッチン〉の主宰者、クリプティック・マインズ以下はイギリスのダブステップ、AM444はオランダと上海を行き来するトリップ・ホップ、エミカもイギリスのダブステップ、サウンドプルーフはニュージーランドのハウスでユニトーン・ハイファイの別名義、サブモーション・オーケストラは広義のダブステップ)
■ギター・ロックとダブステップを等価に扱い、共存させようとするスタイルは意識的につくりあげたのですか? それとも自然にこうなった?
ブランドン:このスタイルは自然にできてきました。僕たちが新しいトラックを作るとき、最初は自由に演奏してみて、それからトラックのテーマに合うようにアレンジしています。特に僕たちにはルールがないのです。たぶん、あるトラックはアンビエント、ある曲はアコースティック、ある曲はピュアなダブステップのスタイル、またはドリーム・ポップという形になりますが、僕らはただトラックのテーマを決めているだけで、どんな音楽のスタイルも受け入れようと思います。
フェイ:僕もこのスタイルは自然にできてきたと思います。なぜなら、最初、僕たちはどんな種類の音楽を作りたいか良くわかっていなかったからです。だから個人的なテイストやコンセプトをただ合わせてみようとしました。僕たちの中の誰かはドリーム・ポップが好きで、また他のメンバーはシューゲイズが好きで、また他のメンバーはダンス・ミュージックが好きで...。だから僕たちはこの感覚で何か新しいものを作り出そうとしました。そしてそれが最終的にはあなたが聴いている僕たちの音楽になっているのです。
■ダブやレゲエの影響は否定できないと思いますけど、好きなダブ・アルバムを1枚だけあげるとしたら?
フェイ:ハイ・トーンかな? 『アンダーグラウンド・ウォッブル』。
■ファーストEPが2009年のリリースですから、ジェームズ・ブレイクの影響はないと思いますけど、彼の音楽性に共感はありますか?
フェイ:はい、僕はジェームス・ブレイクのミニマルなスタイルが好きです。彼らのライヴ・パフォーマンスはシンプルだけど、とてもカッコよくて、僕たちのライブパフォーマンスをシンプルにするための良いお手本になっています。
ブランドン:ジェームス・ブレイクの音楽はスゴいですね。彼は、ポスト・ダブステップ、ソウル、エクルペリメンタルなどたくさんのクールなジャンルをミックスして、彼自身のユニークなサウンドを作り出しています。昨年のデビュー・アルバムのほかにも、2010年にリリースされた"CMYK"というトラックは素晴らしかったです。とくに僕たちはUKエレクトロニック・ダンス・ミュージックとエクスペリメンタル・ミュージックの要素に感化されています
■広東語で歌ったり、英語で歌ったりするのは、なぜそうしようと?
フェイ:僕たちは最初のEPでは広東語と英語の両方を使っていました。最初は特に明確な方向性を持っていなくて、あれは僕たちのサウンドとテクニックのテストのようなものだったのです。しかし、『デストロイ&ドリーム』ではソニアは広東語だけで歌っています。僕たちのサウンドを統一したかったし、「世界の終わり」についての物語を僕たちの考えや文化で語りたかったからです。だから僕たちの母国語である広東語を用いる事がベストな方法でした。
■『デストロイ&ドリーム』がシンガポールの〈キッチン〉から出ることになった経緯を教えてください。
ブランドン:すべては2009年に始まりました。その年の3月にアスピーディストラフライとフリカのアジア・ツアーがあって、僕たちはマカオでサポートをやりました。その縁で、アスピーディストラフライのリックス・アングにファーストEPのマスタリングを頼みました。2010年には〈キッチン〉が僕たちの新作に興味を持ってくれて、それからまたいろいろあって、ようやく今年に入ってリリースされたんです。〈キッチン〉のリックスとエイプリルにはとても感謝しています。
■『Destroy & Dream』はいわゆる前作よりもスキル・アップした状態で、完成度の高さを感じます。方向性には初めから迷いがなかったんですね?
フェイ:ありがとうございます! このアルバムでは最初からとてもクリアな方向性を持っていました。昔やったことのあることではなく、なにか新しくてユニークなものを作りたかったのです。前のEPみたいに「テスト」ではもうなく、僕たちの心の中にあるコンセプトがゴールだということに気がつきました。僕たちは心の中に、世界がどのようなものなのかとか、どのように終わるのかを想像した絵コンテがありました。あなたや僕の目の前で世界が崩壊し、破壊されるとき、どんな気持ちになるかということをサウンドを使って描写しようとしたのです。何もできなかったり、何も変えられないときの落胆の気持ちや、ただ死を待つか自殺するしかないときの気持ちなど。このアルバムを作り始める前は、マイクを使って映画や録音からサンプリングをして、自分たちのサウンド・ライブラリーを構築しました。これがこのアルバムの「トーン」を作り出す鍵になっていると思います。
ソニア:歌詞の点から言うと、『デストロイ&ドリーム』は解体と再生について書きました。最初から私たちはみんなこの方向性で固まっていました。このアルバムを聴くオーディエンスたちに人生、世界、宇宙との関係について考えてもらえたらいいなと思っています。
■ジョン・ケージを思わせる具体音を頻繁にミックスするなど、主旋律が表現していることとは正反対のイメージを1曲のなかで表現しようとするのはなぜですか? 情報量の多い音楽にしたいということ? それともその方がメロディが引き立つと考えている? フロイトの考え方を表すには適しているように思えましたが。
ソニア:最初に私たちはメロディと歌詞を合わせます。なぜならば、私はいつも曲と歌詞を最初に書くからです。それからフェイとブランドンに曲のコンセプトを話して、フェイがミックスとアレンジをします。
文:三田 格(2012年11月16日)