「IO」と一致するもの

interview with Lucy Railton - ele-king

 今春、イギリスのレーベル〈SN Variations〉から、本稿でご紹介するチェリスト/作曲家のルーシー・レイルトン(Lucy Railton)と、ピアニスト・オルガニストのキット・ダウンズ(Kit Downes)による作品集成『Subaerial』が送られてきた。アルバム1曲目“Down to the Plains”の中程、どこからともなく聴こえてくる木魚のようなパルス、篝火のように揺らめくパイプオルガンの音、ノンビブラートのチェロが直線的に描き出す蜃気楼、そして録音が行われたアイスランドのスカールホルト大聖堂に漂う気配がこちらの日常に浸透してくる。その圧倒的な聴覚体験に大きな衝撃を受けた。

 ルーシー・レイルトンの〈Modern Love 〉からリリースされたファースト・アルバム『Paradise 94』(2018)は、当時のドローン、エクスペリメンタル・ミュージックを軽く越境していくような革新的な内容であると同時に、音楽的な価値や枠組みに留まらないダイナミックな日常生活の音のようでもあった(アッセンブリッジな音楽ともいえるだろうか?)。その独自の方向性を持ちつつ多義的なコンポジションは、その後の諸作でより鮮明化していくが、前述の新作『Subaerial』では盟友キット・ダウンズとともに未知の音空間に一気に突き進んだように思われる。絶えず変化し動き続ける音楽家、ルーシー・レイルトンに話を伺った。

私には素晴らしい先生がいました。その先生はとても反抗的で、クラシック音楽の威信をあまり気にしない人だったので、その先生に就きたいと思いました。というのも、私はすでにクラシック音楽に対して陳腐で嫌な印象を持っていて、何か別のことをしたかったので。

ロンドンの王立音楽院に入学する以前、どのようにして音楽やチェロと出会ったのでしょうか。

ルーシー・レイルトン(LR):私はとても音楽的な家系に生まれたので、子供のころから音楽に囲まれていました。胎内では母の歌声や、父のオーケストラや合唱団のリハーサルを聞いていたと思います。父は指揮者で教育者でもありました。母はソプラノ歌手でした。父は教会でオルガンを弾いていたのですが、その楽器には幼い頃から大変な衝撃を受けてきました。私は、7歳くらいになるとすぐにチェロを弾きはじめました。その道一筋ではありましたが、子供の頃はいろいろな音楽を聴いていて、地元で行われる即興演奏のライヴにも行っていました。即興演奏やジャズは、私がクラシック以外で最初に影響を受けた音楽だと思います。そこから現代音楽や電子音楽に引かれ、ロンドンで本格的に勉強を開始しました。

王立音楽院在籍時印象に残っている、あるいは影響を受けた授業、先生はいましたか?

LR:英国王立音楽院では、特別だれかに影響を受けたことはありませんでしたが、私には素晴らしい先生がいました。その先生はとても反抗的で、クラシック音楽の威信をあまり気にしない人だったので、その先生に就きたいと思いました。というのも、私はすでにクラシック音楽に対して陳腐で嫌な印象を持っていて、何か別のことをしたかったので。その先生は、私に即興演奏や作曲することを勧めてくれて、練習の場も設けてくれたので感謝しています。
 それから、ニューイングランド音楽院(米ボストン市)で1年間学んだときは、幸運にもアンソニー・コールマンと、ターニャ・カルマノビッチというふたりの素晴らしい音楽家に教わることができました。彼らは私のクラシックに対する愛情を打ち破り、表現の自由とはどのようなものかを教えてくれました。同院にはほかにも、ロスコー・ミッチェルのような刺激的なアーティストが来訪しました。彼はたった1日の指導とリハーサルだけで、ひとつの音楽の道を歩む必要はないことを気づかせてくれました。私はその時点でオーケストラの団員になるつもりはなく、オーディションのためにドヴォルザークのチェロ協奏曲を学ぶ必要もありませんでした。創造的であること、そしてチェリストであることは、オーケストラの団員になるよりも遥かに大きな意味があることを理解しました。これはその当時の重要な気づきでした。

私は、チェロに加えて新しい音の素材を探していたのですが、それらのとても混沌としたシンセは、私が作りたい音楽にとって必要十分で甚大なものだと感じました。自分の好みが固まったところで、すべてのものを織り交ぜる準備ができました。

ジャズや即興演奏に触れる稀有な機会のなかで、クラシック以外の音楽に開眼されていったとのことですが、電子音楽やエレクトロニクスをご自身の表現や作品制作に取り入れるようになった経緯も教えていただけますか。

LR:それは本当に流動的な移行でした。まず、ルイジ・ノーノの『Prometeo』(ルーシーは同作の演奏をロンドンシンフォニエッタとの共演で行っている)のような電子音響作品や、クセナキスのチェロ独奏曲のような作品に、演奏の解釈者として関わりましたが、その間、実に多くの音楽的な変遷を遂げていきました。それは、私がロンドンのシーンで行なっていたノイズやエレクトロニック・ミュージシャンとの即興演奏、キット・ダウンズとの演奏、そしてアクラム・カーンの作品(「Gnosis」)におけるミュージシャンとの即興演奏に近いものです。インドのクラシック音楽のアンサンブルである「Gnosis」のツアーに参加した際、即興演奏の別の側面を見せてもらいましたが、それは実験とは無縁で、すべてはつながりと献身に関連していました。
 また20代の頃は、自分でイベントや音楽祭を企画していたので、自然と実験的な音楽への興味を持つようになりました。そういった経過のなかで、何らかの形で私の音楽に影響を与えてくれた人びとと出会いました。とくに2013年から14年にかけては多くの電子音楽家に出会いました。ことピーター・ジノヴィフとラッセル・ハズウェルとのコラボレーションでは、即興と変容が仕事をする上で主要な部分を占めていて、そういった要素を自分で管理することがとても自然なことだと感じ、いくつかのモジュールを購入して、シンセを使った作業を開始しました。
 それから、Paul Smithsmithに誘われてサリー大学のMoog Labに行き、Moog 55を使ってみたり、EMSストックホルムに行ってそれらの楽器(Serge/Blucha)を使ってみたりしました。
 私は、チェロに加えて新しい音の素材を探していたのですが、それらのとても混沌としたシンセは、私が作りたい音楽にとって必要十分で甚大なものだと感じました。自分の好みが固まったところで、すべてのものを織り交ぜる準備ができました。私のアイデンティティのすべてを、何とかしてまとめ上げようとしたのが『Paradise 94』だったと思います。

テクノロジーや電子音と、ご自身の演奏や音楽とのあいだに親和性があると考えるようになったのはなぜでしょうか。あるいは、違和感を前提としているのでしょうか。

LR:これらの要素を融合させることには確かに苦労しますし、まだ適切なバランスを見つけたとは言えません。チェロのようなアコースティック楽器をアンプリファイして増幅することは少々乱暴です。しかし、スタジオでは編集したりミックスしたり、あらゆる種類のソフトウェアやシンセを使ってチェロをプッシュしたりすることができて、それはとても楽しいです。ライヴの際、チェロをエレクトロニック・セットのなかのひとつの音源として使いたいと思っていますが、それをほかのすべての音と調和させるのは難しいですね。
 なぜなら、私がチェロを弾いているのを観客が見ると、生楽器と電子音のパートを瞬時に分離してしまい、ソロ・ヴォイスだと思ってしまうことがあるのです。また(チェロが)背景のノイズや音の壁になってしまうこともあり、観客だけではなく私自身も混乱してしまうことがあるのです。スタジオレコーディングでは何でもできますが、ライヴでの体験はまだ難しいです。

そして2018年に、〈Modern Love〉から鮮烈なソロ・デビュー・アルバム『Paradise 94』をリリースされます。先ほど、ご自身のアイデンティティのすべてをまとめ上げようとしたのが本作であるとお伺いしましたが、本作の多義的なテクスチュアや音色は、生楽器と電子音によるコンポジションと、そのコンテクストに静かな革命をもたらしていると思います。本作における音楽的なコンセプト、アイディアは何だったのでしょうか?

LR:私は、ミュージシャンとしてさまざまなことに関わってきた経験から多くのことを学んだと感じていました。『Paradise 94』を作りはじめるまでは、自分の音楽を作ったことがなかったので、いろいろな意味で自分の神経を試すようなものでした。私は初めて自分の声を発表しましたが、それは当然、自分が影響を受けてきたものや興味のあるものを取り入れたアルバムです。自分の表現欲求と興味を持っている音の世界に導かれるように、このふたつの要素を中心にすべてを進めていったと思います。素材や少ないリソースから何ができるかを試していましたが、このアルバムはその記録です。

‘Paradise 94’

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それぞれの楽曲は、別々の時期に制作されたものですか? また制作過程について教えてください。

LR:はい。完成までに約3年かかりました。終着点のない、ゆっくりとした登山のようなものでした。私は期限を決めずに作業をしていました。時間をかけて、気分的にも適切な時にだけ作業していましたし、その時期は、ロンドンとベルリンを頻繁に行き来していました。ロンドンではフリーランスのミュージシャンとして活動していましたが、ベルリンでは自分の仕事に専念するようになりました。その為このアルバムは、さまざまな場所や状況と段階で制作されたので、多くの点で焦点が定まっていませんでした。だからこそ、ヴァラエティに富んだレコードになっているのかもしれません。私はこの点はとても気に入っています。

本アルバムには、巻上公一さんが、“Drainpipe(排水管?)”で参加されてますね。巻上さんとはどのようにして知り合ったのですか?(私事ですが、巻上さんがコンダクトしたジョン・ゾーンの『コブラ』に参加したことがあります)

LR:巻上さんとは、日本のツアー中に出会いました。彼の芸術性には刺激を受けましたし、とても楽しい時間を過ごすことができました。実際にはアルバムのなかでは、あまり実質的なパートではなかったのですが、巻上さんとロンドンで一緒にパフォーマンスをしたとき、彼は’drainpipe’を演奏したのですが、それはとても特別なものでした。彼のエネルギーが、その時の私に語りかけてきました。当時の私は、レコーディングのためにいろいろな音を集めて準備していたのですが、巻上さんが親切に彼の音を提供してくれました。それは今も、素材の網目のなかに埋め込まれ、彼のインスピレーション記憶として存在しています。彼のパフォーマンスは、私のライブにも影響を与えてくれました。彼は素晴らしいアーティストです。

あらゆる点で。私は音楽業界に近づくことよりも、創造性に焦点を当て、自分と同じ価値観を共有できる人々と時間を過ごすことが重要だと感じています。私が音楽をやる理由はそこ(業界)にはありません。

2020年には多くの作品をリリースしています。はじめに、ピーター・ジノヴィエフとのコラボレーション作品『RFG - Inventions for Cello and Computer』についてお伺いします。あなたとピーターはLCMFで出会って、コラボレーションのアイディアについて話し合いました。それから、あなたの即興演奏を録音したり、ピーターがエレクトロニクスを組み立てたりしながら、一緒に作品を作り上げていきました。このプロセスから生まれた作品をライブパフォーマンスでおこなう際、そこに即興の余地はあるのでしょうか?

LR:『RFG - Inventions for Cello and Computer』における演奏は、固定された素材と自由なパーツの混在から成る奇妙なものです。そのため、ライヴで演奏するのは難しく、チャレンジングな部分があります。ピーターのエレクトロニクスは固定されているので、私は彼と正確に(演奏を)調整しなければならないので(その指標として)時計を使います。もちろん時計は融通が効かないので、更にストレスがたまります。このように苦労はしますが、これもパフォーマンスの一部であり、意図的なものです。私は作曲時に固定した素材を使って即興で演奏していますが、時には素材から完全に逃れて「扇動者」、「反逆者」、「表現力豊かなリリシスト」のように振る舞います。また、電子音のパートと正確に調整する際には、通常の楽譜を使用することもありますし、例えば、ピーターのパートとデュエットすることもあれば、微分音で調律された音のシステムを演奏することもあります。本作の演奏方法は、既知のものとかけ離れていることが多いので、ガイドが必要になります。それはなければ即興演奏をすることになりますが、(作品には)即興ができる場所と禁止されている場所がありました。

一般的にピーター・ジノヴィエフは、EMS Synthiなどのシンセサイザーを開発した先駆者と言われていますが、このコラボレーションにおいてピーターは、実機のシンセサイザーではなく、主にコンピュータを使用したのでしょうか?

LR:はい。実はピーターはアナログシンセで音楽を作っていたわけではないのです。もちろん、彼がアナログシンセを開発した功績は称えられています。しかし作曲家としては、伝統的なアナログ・シンセはあまり使っておらず、所有もしていませんでした。『RFG - Inventions for Cello and Computer』では、彼の2010年以降の他の作品と同様、コンピュータの技術やソフトウェアを利用しています。彼は常に私の録音を素材としていたので、作品のなかで聞こえるものはすべてチェロから来ています。彼がおこなった主な作業は、Kontaktやさまざまなプラグインを使って音を変換し、電子音のスコアをつくることでした。彼はソフトウェアの発展に魅了され、コンピュータ技術の進歩に驚嘆し魅了されていました。それと同時に彼は、人間と楽器(私やチェロ)がコミュニケーションをとるための新しい方法を常に模索していました。ですから、私たちの実験の多くは、コンピュータによる認識、特にピッチ、リズム、ジェスチャーに関するものでした。

同年、オリヴィエ・メシアンの『Louange à l'Éternité de Jésus』がリリースされましたが、このレコードの販売収益を、国連難民局のCovid-19 AppealとThe Grenfell Foundationに均等に分配されています。10年前に録音された音が、この激動の時代に明確な目的を持ってリリースされたことに感銘を受けました。

LR:LR:これは、私が24歳の時の演奏で、家族の友人が偶然コンサートを録音してくれたのですが、そのときの観客の様子や経験から、ずっと大切にしてきたものです。それが録音自体にどう反映されているかはわかりませんが、その演奏の記憶はとても強く残っています。そのことについては、ここで少し書きました
 当時の私は、自分が癒される音楽を人と共有したいと思っていましたが、この曲はまさにそれでした。最初は友人や家族と共有していましたが、その後、リリースすることに意味があると気づきました。その収益を、Covid-19救済を支援していた団体に寄付しました。そのようにしてくれた〈Modern Love〉(マンチェスターのレコードショップ’Pelicanneck’=後の’Boomkat’のスタッフによって設立された英レーべル)にはとても感謝しています。

INA GRMとの関係とアルバム「Forma」の制作経緯について教えてください。

LR:彼らは若い世代の作曲家と仕事をすることに興味を持っており、2019年にINA GRMとReimagine Europereimagine europeから(作品制作の)依頼を受けました。私はすでにミュージック・コンクレートや電子音楽に興味と経験を持っていたので、GRMのアクースモニウム(フランスの電子音楽家、フランソワ・ベイルによって作られた音響システム)のために作曲するには良い機会でした。この作品を初演した日には54台のスピーカーがあったと思います。私は主にチェロの録音、SergeのシンセサイザーとGRMのプラグインを使って作業しました。ただ、マルチチャンネルの作品を作ったのはこれが初めてでしたし、非常に多くのことを学びました。この作品が(音の)空間化の旅の始まりになりました。GRMのチームは、信じられないほど協力的で寛大です。作曲からプレゼンテーションまで、チームが一緒になって新しい作品制作を行います。私はこれまでとても孤独な経験を通してレコードを作ってきましたが、それらと(本作は)全く違いました。「Forma」(GRM Portraitsより、2020年リリース)では、とてもエキサイティングでチャレンジングな時間を過ごし、この作品を通して自分の音楽に新しい形をもたらしたと感じました。

'Forma'

Editions Mego · Lucy Railton 'Forma' (excerpt) (SPGRM 002)

今年の初めに、Boomkat Documenting Soundシリーズの『5 S-Bahn』がレコードでリリースされました。Boomkatのレヴューによると、ロックダウン下にご自宅の近所で録音されたそうですね。このアルバムに収められたサウンドスケープを聴いていると、あなたの作品は音楽的な価値や枠組みから逃れて、よりダイナミックな日常生活の音に近づいているように思えます。パンデミック以降、日常生活はもちろんですが、音楽制作に変化はありましたか?

LR:そうですね。あらゆる点で。私は音楽業界に近づくことよりも、創造性に焦点を当て、自分と同じ価値観を共有できる人びとと時間を過ごすことが重要だと感じています。私が音楽をやる理由はそこ(業界)にはありません。私は、業界の人びとがいかに自分の成功を求めて、互いに競い合っているかに気づきました。これまで音楽制作においても社会生活においても、彼らの期待や要求に気を取られ過ぎていました。いまでは、自分の価値観や芸術的な方向性をより強く感じていますし、それは1年以上にわたって家やスタジオで充実した時間を過ごしたからです。自分の方向性が明確になり、それを認めてくれる人やプロジェクトに惹かれるようになりました。ですから、今の私の音楽作りは、よりパーソナルなものに自然となってきています。来年には変わるかもしれませんが、それは誰にもわかりません。

新作『Subaerial』についてお伺いします。キット・ダウンズと一緒に演奏するようになったきっかけを教えてください。

LR:キットと私は、2008年にロンドンに留学して以来の知り合いで、長い付き合いになります。主に彼のグループで演奏していましたが、他の人とも一緒に演奏していました。『Subaerial』は、チェロとオルガンを使ったデュオとしては初めてのプロジェクトです。この作品は私たちにとても合っています。私は、ジャズクラブでチェロを弾くのはあまり好きではありませんでした。というのも音が悪いのが普通で、特にチェロの場合、私は音質に敏感です。オルガンのある教会やコンサートホールで演奏するようになってから、突然快適になり、アンプリファイの問題も解消され、表現力を発揮できるようになりました。
 教会では、音に空気感も温かみもあり、空間や時間の使い方もまったく違うものになります。このアイディアに辿り着くまで13年かかってしまいましたが、待った甲斐がありました。このアルバムは、私たちにとって素晴らしい着地点だと思います。私たちはお互いに多くの経験をしてきたので、自分たちの音楽のなかに身を置き、一緒に形成している色や形に耳を傾ける時間を持つことができます。チェロがリードしているように思えるかもしれませんが、実際にはそんなことはなく、私は部屋のなかの音に反応しているだけなのです。
 キットは最高の音楽家ですから、彼がやっていることからインスピレーションを得ることも多くありますが、私たちはすべてにおいてとても平等な役割を担っています。お互いが、非常に敬意を持って深く耳を傾けることができるコラボレーションに感謝しています。

Lucy Railton & Kit Downes Down ‘Subaerial’

このアルバムは、アイスランドのスカールホルト大聖堂で録音されたものです。あなたとキットは、なぜこの大聖堂をレコーディングに選んだのでしょうか? また、レコーディングの期間はどのくらいだったのでしょうか?

LR:車を借りて、海岸沿いの小さなチャペルからレイキャビックのカトリック教会まで、いくつかの教会をまわりました。実際にはすべての教会で録音してみましたが、スカールホルトでは最も時間をかけて録音しました、というのも場所、音響、空間の色が適切だったからです(太陽の光でステイングラスの赤と青の色が内部の壁に投影されることがよくありました)。だから、私たちは快適で自由な気分で、一週間を過ごしました。しかし、アルバムに収録されている音楽は、ある朝、数時間かけて録音したものを42分に編集したものです。

このアルバムは、基本的に即興演奏だと聞いています。レコーディングを始める前に、あなたとキットは何かコンセプトやアイデア、方向性を考えていましたか?

LR:いえ、私たちはただ何かをつかまえたかったのです。新曲を作るつもりではありましたが、しばらく一緒に演奏していなかったので、その演奏のなかで再開を楽しみました。また、ピアノではなくオルガンを使った作業は、私たちデュオにとってまったく新しい経験だったので、「音を知る」ことが多く、その探究心がこのアルバムに強く反映されていると思います。なので、ある意味では、新しい音を求めるということ自体がコンセプトでしたが、音楽を作ることは常に、未来への探求、そして発見だと思います。

今後の予定を教えてください。

LR:実はまだ手探りの状態で、先が見えない不安もあります。しかし、パンデミックが教えてくれたのは、このような状況でも問題ないということ、そして期待値を下げることです。「大きな」プロジェクトも控えていますが、最近は最終的なゴールのことをあまり考えないようにしています。その代わり、もっと時間をかけて物事をより有機的に感じ取るようにしています。なぜなら、そのポイントに向かう旅路が最も重要だからです。たとえすべての予定がキャンセルになったり、何かがうまくいかなかったとしても、創造の過程にはすでに多くの価値があり、それはすべて集められ、失われることはありません。

Lucy Railton & Kit Downes
タイトル:Subaerial
レーベル:SN Variations (SN9)
リリース:2021年8月13日
フォーマット:Vinyl, CD, FLAC, WAV, MP3

ルーシー・レイルトン/Lucy Railton
ベルリンとロンドンを拠点に活動するチェリスト、作曲家、サウンドアーティスト。イギリスとアメリカでクラシック音楽を学んだ後、即興演奏や現代音楽、電子音楽に重点を置き、Kali Malone、Peter Zinovieff、Beatrice Dillonほか多岐に渡るコラボレーションを行っている。また、Alvin Lucier、Pauline Oliverosなどの作品を紹介するプロジェクトにも参加している。2018年以降、Modern Love、Editions Mego/GRM Portraits、PAN、Takuroku等から自身名義のアルバムをリリースし、約50のリリース(ECM、Shelter Press、Ftarri、Sacred Realism、WeJazz、Plaist)に客演している。https://lucyrailton.com/

Lucrecia Dalt & Aaron Dilloway - ele-king

ノイズを無視するとかえって邪魔になる。耳を澄ますと、その魅力がわかる。 
 ——ジョン・ケージ『サイレンス』(柿沼敏江 訳)


 アーロン・ディロウェイなるアーティストは、今日日のノイズ好きにとってはほとんどカリスマのひとりなのだが、ふだんはノイズを聴かないリスナーのなかにもファンは多くいる。昔から過剰に多作なノイズ界において、ディロウェイのアルバムはたびたび広く注目され、海外のメディアでも積極的に紹介されている。『モダンな道化師(Modern Jester)』(2012)や『ダジャレ名簿(The Gag File)』(2017)といった代表作の題名からも匂うように、そこには「狂気」とともに「笑い」が含まれていることがその理由のひとつであろうと、ぼくはにらんでいる。『ダジャレ名簿』のアルバム・スリーヴは腹話術で使う人形のバストショットだったが、見方によってはある種気味の悪さがあり、別の見方によっては滑稽でもあり、さらにまた別の見方では可愛くもある。こうしたアンビヴァレンスは、ディロウェイ作品の魅力であり、彼のノイズの本質を代弁していると言えるだろう。

 ミシガン州デトロイト郊外の町ブライトンで生まれ育ったディロウェイにとってのもっとも初期の影響は、少年時代に出会ったバットホール・サーファーズだ。子供だったこともありバンド名からしてゲラゲラ笑ったそうだが(but holeにはケツの穴、いやな奴などといった意味がある)、これがパンクってもんだと教えられた彼にとって、あとから聴いたセックス・ピストルズは、ただただ凡庸なロックにしか聴こえなかった。
 ディロウェイの影響でもうひとつ大きかったのは、キャバレー・ヴォルテールの『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』だ。テープ・コラージュ(高尚に言えばミュジーク・コンクレート)という、彼の創作におけるもっとも主軸となる手法を彼はこのアルバムによって知った。で、それをもって、1998年にミシガン州デトロイト郊外の町アナーバー(デストロイ・オール・モンスターズの故郷)にて、インダストリアル・ノイズ・バンド、ウルフ・アイズを結成、ディロウェイ自身のレーベル〈Hanson〉からデビューする。とは言うものの、ディロウェイは、ウルフ・アイズがゼロ年代半ばに大手インディの〈サブ・ポップ〉からアルバムを出すくらいにまでになってしまうと、プロモーションなどが面倒でバンドを去る。以来彼は、コラボ作こそ多くあれど、基本的にはソロ・アーティストとして活動を続けている。
 ディロウェイはかつて、イギリスのFACTマグの依頼でDJミックスを作成したことがある。選曲はすべてビートルズやらストーンズやらボウイやらといった超有名どころの、ただしコピー・バンドの演奏を集め、エディットし、そこに不快で奇妙なノイズをミックスしたものだった。安倍晋三ではないが自分たちサークルの正統性を振りかざし、その外部を批判ばかりしている人たちを舐めきっているかのようなノイズ、いかにもディロウェイらしいキッチュなものへの愛情、いかがわしさへの関心は、有名ロック・バンドのライヴ映像の海賊版VHSへの偏愛にも言える。いささかアイロニカルとはいえ、ディロウェイの創作にはメタな視点があり、彼の諧謔性はキャプテン・ビーフハートやザ・レジデンツにも通じている。奇怪なその音響、サウンドプロダクションに関して言えば、AFXの牧歌的ではない側面が(も)好きなリスナーにも推薦したい。
 
 コミカルで、よく見ると不気味なスリーヴアートをあしらったディロウェイの新作は、〈Rvng Intl.〉からの作品で知られる、現在はベルリン在住の電子音楽家、ルクレシア・ダルトとの共作『ルーシー&アーロン』、これがじつに良かった。考えてみれば、男女のデュオという点では前回レヴューしたマリサ&ウィリアムと同じで、ふたりの個性が合流することでマジックが生まれているという点もまた同じ、音楽性は著しく違っているけれどね。なにしろこちらはディロウェイのバカバカしいテープ・ループ、不快なミニマリズム、ダルトの妖しい声と幻想的なシンセサイザーによるシュールで魅惑的なガラクタというか呪文というか。しかもユーモアと恐怖が交錯する『ルーシー&アーロン』には、曲によってはグルーヴもあり、所々ぼくにはファンキーに聴こえたりもする。ひとつの感情に凝り固まらない、安易にディストピアでもない、こうした毒の入った笑える音楽は、自分の正気を保つためにもいま必要なのだ。
 現在はオハイオ州オバーリンで暮らしているディロウェイは、ダルトとは数年前のツアー中に知り合っている。お互いを賞賛し合っているふたりはアルバムを作ることを決め、その多くはNYで録音されている。残りの作業はそれぞれの自宅、ベルリンとオバーリンで終えたそうだ。なお、ディロウェイはこの10月末、ジョン・ケージの作品を蒐集し、整理し、広める非営利団体「ジョン・ケージ・トラスト」からの招待を受けてケージの12台のレコーダーを使用したテープ音楽作品「Rozart mix」をディロウェイなりの解釈で演奏することになっている。また、キム・ゴードンとビル・ネイスによるプロジェクト、Body/Headにディロウェイが参加した作品『Body/ Dilloway/Head』も直にリリースされる。
 
 

Abstract Mindstate - ele-king

 今夏に Kanye West が立ち上げたレーベル、〈YZY SND〉(=Yeezy Sound)の第一弾アーティストとして登場した、Olskool Ice-Gre と E.P. da Hellcat という男女デュオによるヒップホップ・グループ、Abstract Mindstate。実は2001年に 1st アルバム『We Paid Let Us In!』でデビューしており、さらに何枚かのシングルやミックステープを発表するものの、2000年代半ばにはすでにグループとしての活動を停止していた。知る人ぞ知るというよりも、実際はシカゴ以外ではほぼ無名の存在の彼らだが、『We Paid Let Us In!』にもプロデューサーとして参加していた Kanye West の提案により、約15年ぶりに本作『Dreams Still Inspire』にて復活することとなった。

 プロデュースも Kanye West が全曲手がけているのだが、ほぼ同じタイミングでリリースされた Kanye West の最新作『Donda』とのサウンド面での違いにまずは驚かされる。サンプリングを軸としたノスタルジックなプロダクションは2000年代半ばにリリースされた Kanye West の最初の2作『The College Dropout』、『Late Registration』を彷彿させるものだが、過去に作られた楽曲を引っ張り出してきたわけではなく、全て Kanye West が新たに制作したビートが使用されているという。アルバム・タイトルからも伝わってくるように、Olskool Ice-Gre と E.P. da Hellcat のスタイルはストレートなコンシャス・ラップで、イントロ的な一曲目 “Salutations” から長いブランクを経て復活した自らの状況をポジティヴに捉えたリリックが展開されている。例えるならば Kanye West もプロデューサーとして参加していた『Be』の頃の Common とも非常に近い匂いというか、40代以上のヒップホップ・リスナーであればあの時代のシカゴ・ヒップホップの空気感を思い出す人も少なくないだろう。

 ある意味、いまのヒップホップのトレンドとは全く逆行している作品でもあるわけで、アメリカでの評価は高くないというか、一部ではむしろ酷評すらされており、Spotify での再生回数も『Donda』の1000分の1以下だ。筆者自身も古臭さを感じないわけではないが、このアルバムにはどうしても惹かれてしまっている部分があるのは否めない。“I Feel Good” のようにシンプルに鳴り響くドラム・サウンドと2MCの安定感あるラップの組み合わせは純粋に格好良いし、先行シングルともなった “A Wise Tale” の多少説教臭いような内容のリリックも、声ネタを巧みに用いた Kanye West ならではのセンスの効いたトラックによって、良い意味でポップに仕上がっている。

 Abstract Mindstate を新レーベルの第一弾アーティストとして選んだのは、単なる Kanye West の気まぐれなのかもしれないが、いまなお革新的なヒップホップ・サウンドに取り組み続けている彼のルーツを改めて再確認するという意味でも、非常に興味深い作品だ。

interview with Jeff Mills + Rafael Leafar - ele-king

override:乗り越える、覆す、制御不能

「ぼくがやろうとしていることは、人に理解させることではない、人の注意を喚起させることだ」とジェフ・ミルズは言った。いまから26年前の取材でのことだ。「まったく違う観点からまったく違う思考をすること」
 これはUKの批評家コジュオ・エシュンが言うところの「ソニック・フィクション」の概念と重なっている。旧来の思考から解放され、音楽をもって世界をとらえ直すこと。で、これこそ、アフロ・フューチャリズムの思考法と言っていいだろう。ジェフ・ミルズの新作『オーヴァーライド・スウィッチ』は、彼がこの30年に渡って追求してきた未来的思考の最新型の成果だ(ジェフは2009年のWIREの取材のなかでこう言っている。「ずっと前から、黒人として、黒人の子供として、僕ははるか先を見なければならないんだってことは理解していた」と)。
 1967年のデトロイトの大暴動では、それを鎮圧するために派遣された軍に市民がさらに応戦するという、その夏の暴動においてもっとも熾烈なものとして記録されているが、まさにその真っ只中、市街から安全な場所へと避難するため彼の両親が子供たちを連れて行ったところがモントリオールの万博だった。彼の地に展示された未来主義とユートピア、そして宇宙旅行は、幼少期のジェフ・ミルズの記憶に深く刻まれたという。
 なるほど。暴動と未来主義、これはたしかに初期ジェフ・ミルズや初期URを語る上では有効かもしれない。執拗にハードで、そして当時としてはダンスの範疇を超えた速さと日常を超えた空間。スウィングよりもスリル。地球人よりも宇宙人。プログラムされた思考を超越すること。が、あくまで30年前の話だ。最新作の『オーヴァーライド・スウィッチ』にもジェフの未来主義は貫かれている。それはいまも実験的ではあるけれど、より優雅で円熟した音楽として録音されている。
 『オーヴァーライド・スウィッチ』は、ジェフ・ミルズがデトロイトのマルチ楽器奏者、おもにジャズ・シーンで活躍するラファエル・リーファーと一緒に制作した。昨年ブラック・ライヴズ・マターの高まりのなか発売された、詩人ジェシカ・ケア・ムーア擁するザ・ベネフィシアリーズのソウルフルな1枚、トニー・アレンのバンドでピアノを担当していたJean-Phi Daryとのザ・パラドックス名義による官能的なフュージョン作品——新作は、ジャズ・シリーズとでも呼べそうなこれら2枚と連続しているようだが、趣は異なっている。パーカッションと管楽器の数々をフィーチャーした本作はおおよそフリー・ジャズめいているし、異空間を描こうとするアンビエントめいたフィーリングもあり、もちろんテクノも残されている。この30年間追い求めているユートピアへの夢もある。まあ、ひとことで言うなら、ジェフ・ミルズ宇宙探索機に導かれたアフロ・フューチャリズムのアルバムということだろうか。
 ちなみにアルバムの担当楽器は以下の通り。

Jeff Mills : Keyboards, electronic drums and percussion
Rafael Leafar : Bass Flute, Bass Clarinet, Soprano & Tenor Sax, Soprano Sax, Double Soprano-Sopranino Saxes, Fender Rhodes, Wurlitzer, Moog Synth, Moog Sub 37, Yamaha CS, Oboe, Contra-Alto Clarinet

 パンデミック以降、ほとんどすべてのDJのギグが中止になってしまったなか、与えられた時間のほぼすべてを創作に費やしているひとりがジェフ・ミルズだ。彼はこの間、無料で読めるオンラインマガジン『The Escape Velocity』を創刊させ、未来主義にこだわったその誌面はすでに3号までが公開されている。彼の〈Axis〉レーベルからの作品数にいたっては、この2年ですでに50作以上を数えている。そのなかで、ジェフ・ミルズ自身のソロと彼が関わっている作品は10作以上(※)。さらにまた、今年は30周年を迎えたベルリンの名門中の名門〈トレゾア〉からは初期の名作の1枚『Waveform Transmission Vol.3』(常軌を逸した時代のミニマル・テクノの金字塔)がリイシューもされている。
 ほとんどワーカーホリックと言えるこのベテランのDJ/プロデューサーは、パンデミック以降ようやく動きはじめたヨーロッパのダンス・シーンのツアーから帰ってきたばかりだった。じつは昨年もジェフ・ミルズには別冊エレキングの「ブラック・パワー」号のためにzoomで取材させてもらっているので、今回は二年連続の取材となる。ジェフはいつものように温厚に、自らのうちに秘めている思考について話し、デトロイトからはラファエル・リーファーーが彼のジャズへの熱い思いを語ってくれた。

いまの世のなかは間違ったことがあまりにも多くて、解決の糸口を探す合理的なアプローチが必要だ。何事にもそれを超越できる、あるいは避けて通る方法があるという希望を提案したかった。

ヨーロッパでのDJはどうでしたか?  

ジェフ: みんなまたパーティに来ることができてハッピーな雰囲気だった。とはいえ、やっぱりいままでとはちょっと違う。他人と近づいて息がかかったりすることが自然と気になったりしてしまう。いままでは気にも留めていなかったことに注意を払うようになってしまった。でもお客さんはみんなマスクなしで、飲んで騒いでって感じだったけれどね。

とくにすごかったのはどこですか?

ジェフ:クラブではロンドンのファブリックかな。もっとも最近ではアムステルダムだったかな。屋内で1000人くらいの規模のイベントがあったんだけど、年齢層が低くて、みんなマスクしてなかったんだよね。

マイアミはどうなんですか?

ジェフ:マイアミではクラブはかなり前からオープンしているよ。だからパーティに行くことができるし、DJもプレイできる。僕は数ヶ月前にジョー・クラウゼルを観に行ったくらいしか出かけていないけれど、そのときもいろいろなところを触らないようにしようとか、人とあまり近づかないようにしようとか、感染しないように気をつけていたけど。

アメリカのコロナの状況はいま(10月9日)はどうなっているのでしょうか?

ジェフ:いま現在のことで言えば、感染者も死者も数は減ってきている。

日本と同じですね。

通訳:いやー、日本とはちょっと規模が違います。(10月9日発表ではフロリダ州の昨日の感染者は3141人。パンデミックがはじまってから300万人以上の感染者、56400人の死者を出していますから、日本とは比較にもならない。フロリダの人口は約2200万人。ちなみにアメリカのワクチン接種率は現在56%)

ラファエル・リーファーさんとは初めてなので、バイオ的なことを質問させてください。デトロイトでは多くのヒップホップとロックと、あと少しのテクノ‏/ハウスだと思いますが、ジャズというのはかなり少数派なのではないでしょうか? もちろんデトロイトには70年代のトライブ・レーベルがあったように、ジャズの伝統があることは知っていますが、あなたはどうしてジャズの道を選んだのか教えてください。

ラファエル:家族が音楽好きで、それがまずはいちばん大切なポイントだった。8人兄弟の家族で、つねに音楽に囲まれて育ったからね。ジャズ、ファンク、ロック、ソウル……両親は僕が本当に小さい頃からジャズを聴かせていてね、4〜5歳のときには父と一緒にトランペットを吹いたりしていたほどだ。そんな幼い頃からジャズに出会ったことは幸運だったと思っているよ。
デトロイトはいまでもジャズに関してもパワーハウスと呼べるけどね。外にいる人たちからは見えないかもしれないし、業界としての重要性はないかもしれないけれど、いつだってミュージシャンはデトロイトに存在していて、その影響力は変わっていない。ちなみに、1940年代はデトロイトに古くからあるスタジオのサウンドシステムを求めて多くのジャズ・ミュージシャンがレコード制作をしている。マイルス・ディヴィスやチャーリー・パーカーもそこでレコーディングしたことがある。経済的な理由からスタジオはニューヨークやカリフォルニアに移っていってしまったけれど、僕たちはまだここにいるんだ(笑)。ウェイン・ステイト大学、ミシガン州立大学、ミシガン大学など優秀なジャズ・プログラムのある学校も多いのもミュージシャンが集まってくる理由のひとつだね。

あなた個人はなぜジャズを選んだのですか?

ラファエル:僕は自分のことをジャズ・ミュージシャンと思っていない。それがデトロイトのユニークなところかもしれないね。ジャズはデトロイトのシーンのバックボーンとしてつねに存在しているけれど、音楽家として生き残っていくためにはジャズ以外のさまざまな音楽にも精通していなくてはならないんだ。ひとつのジャンルにこだわっているわけにはいかない。ニューヨークだったらジャズ一本でやっていけるかもしれないけど、デトロイトではそういうわけにはいかないんだ。

曲制作というのはストーリーテリングのようなものだ。アフロ・フューチャリズムが好きな人たちが、このアルバムに興味を持ってもらうにはどのようなしたらいいか、何か特別な方法があるかは考えた。

このプロジェクトは、もともとジェフの頭のなかにあったものなんですか? それとも、ラファエルさんと出会ったことで生まれたのでしょうか?

ジェフ:ラファエルと出会ってからだね。タイトルの『オーヴァーライド・スウィッチ』、何かを超越するというコンセプトは、レコーディングの最初のほうで、たぶん“Homage”を制作しているときに思いついた。制約できないもの、妥協できないもの、カテゴライズができないもの。すべてを超越して、リセットするようなものを共同制作したいと思ったんだ。普通に考えられる音楽、好きか嫌いかで判断される音楽はこのアルバムには当てはまらない。一緒に作業をはじめてますますこの考えに確信を得るようになった。ラファエルが僕のトラックに加えてくる音を聴いて、僕は次の作業に移る基礎を考えることができたし、彼と会話をすればするほど、どんどん組み上げられていった。そうしているうちに、このコラボレーションが単なる共同作業ではないとますます痛感していったね。ジャズとか、テクノ、エレクトロニック・ミュージックなどといった範疇を超えていったと思う。だから『オーヴァーライド・スウィッチ』というタイトルがコンセプトと合ってふさわしいと思った。

ラファエルさんはどのようにしてジェフと出会ったのですか?

ラファエル:URのマイク・バンクスを介してだね。サブマージのビルにあるスタジオを借りていた時期があって、そこでマイクと出会ったんだ。会話するようになって、僕がやっている音を聴いてもらったり、音楽全般の深い話をするなかで、あるときジェフの名前が出てきたことがあってね、ジェフの昔の曲を僕に聴かせてくれたんだ。で、ある日、マイクがジェフの最新作を持ってきて、「これに君の演奏を重ねてジェフに送ってみたらどうだろう?」と言った。それで僕は軽い気持ちでそれをやった。それをジェフが気に入ってくれたと。

ジェフは、The Beneficiaries、The Paradoxなど、ここのところコラボレーションが続いていますが、それは理由があるのですか?

ジェフ:とくにコラボレーションを探し求めているわけではないんだ。でも機会に恵まれたときは、二度とないチャンスかもしれないから積極的に取り組むようにしている。だいたいこういうことは、狙ってできるものじゃないからね。それに、他のミュージシャンと交わることは刺激的だし、同じヴィジョンや似たような考えを持ったアーティストと出会う幸運に巡り会えたら、何かを作ろうと思うのは当然のことだ。長いキャリアのなかでずっとひとりで制作し続けるほうが不自然だよ。

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音楽は人びとの心を自由にするものだということをつねに忘れてはいけない。そのプロセスにはさまざまなアプローチがある。『オーヴァーライド・スウィッチ』」はマインドをリセットして、何か目の前の障害に向かっていくというようなテーマだ。

いままでのジェフの作品とはリズムへのアプローチが違っていますよね。それはなぜですか? 今回のリズムのコンセプトについて教えてください。

ジェフ:ひとつは、トニー・アレンと共演して学んだことが今回のプロジェクトに反映されている。アコースティックのドラムスがエレクトリック・ドラムとマッチしたときに生まれる特別な感覚、アルバムにはそれがある。ストリングスやベース・ラインでも表現したいアイディアがあって、自分だけでスタジオで作業していたものもあった。とはいえ、ラファエルとは青写真があったわけではなかった。とくにディレクションもなしで、トラックをラファエルに送って、彼がどう感じるか、何をきっかけに次のレベルに進展させていくのかとても楽しみにしながら、制作は進行したんだよ。

お互いの音をなんども往復させたんですか?

ジェフ:だいたい2回往復だったかな。僕がトラックを送って、ラファエルがそれに音をかぶせて、それにさらに僕が音を足したりしてからミックスをして。エディットもだいぶした。音を省いたり、動かしたり。ポストプロダクションの作業はけっこうやったけど、ふたりのあいだのやり取りは2回だったと思う。

離れたところで音を加えながら、セッションしている空気感を出すのはなかなか難しいと思うのですが、その感じは出ていますよね。

ジェフ:そこはラッキーだった。ラファエルはスタジオを移動する最中で機材をいろいろと変えたりして、逆に音にヴァリエーションを持たせる結果になった。ラファエルはじつにたくさんのホーンのパーツを送ってきたから。多くの音源から選ぶことが可能だったし、送られてきた音を聞くだけで何時間もかかるような作業だった。そこから、どの音を残し、どの音を削るか、そしてどう楽曲を構築していくかを考えていった。パーカッションを加えたり、必要な要素を加えて、リズムやメロディをエディットした部分もあるけれど、大まかにはラファエルが演奏した段階で曲の構成は出来上がっていたと言っていい。空気感に関しては、最初からアルバムを制作する意図があったから、違和感のないように同じテクスチュアを持たせるように心がけた。もっとも、細かい計算をしたわけではなく、あくまでもフィーリングを大切にしたんだけどね。

ラファエルは出来上がった曲を聴いてどんな風に思いましたか?

ラファエル:すごく興奮したよ。ジェフがどういう風に自分の送ったホーンを料理するのかを楽しみにしていたから。じっさい、いまジェフが言ったように、ものすごい量のパーツを送ったからね。彫刻を作るような感じかな。ジェフが渡した素材を形づくって彫刻にしていくような。

出来上がった曲は想像していたようなものでしたか? それともまったく違った?

ラファエル:そうだな。想像と違ったというべきかな。最初に送られてきたのはドラムトラックのみだった。

2曲目の“Crashing”やそれに続く“Homage”、後半の“Soul Filters”にはサン・ラーやアフロ・フューチャリズムを感じたのですが、意識されました?

ジェフ:曲制作というのはストーリーテリングのようなものだ。その方法論はたくさんある。最初からはじめるものもあれば、話の途中からはじまるストーリーや終わりからはじまるものもある。そいう意味で自由に曲の構成を決めた。アフロ・フューチャリズムやフューチャリズムが好きな人たちが、このアルバムに興味を持ってもらうにはどのようにしたらいいか、何か特別な方法がないものかと思考したよ。圧倒的なホーンを中心に、その他のパーツの順序やアレンジを決めるのにかなり頭を使った。ラファエルはディープで重圧感のあるホーンをたくさん用意したから、それらを聴くというよりは体で感じるように集中して、たとえば重圧感が感じられるようなフリーケンシーを音のレアーの下の方に置いたりとか、ずいぶん工夫した。そうやることで、ストーリーがよりカラフルにヴィヴィッドになるからね。

サン・ラーの影響はありますか?

ジェフ: いや、サン・ラーよりはクラシック作曲家のグレゴリー(ジョルジュ)・リゲティの影響が大きい。彼の作品は次に何が起こるかわからない。突発的なものが次から次へと続いていく。ホーンを中心にそのような雰囲気で曲を作っていくのが面白いと今回は思った。“Sun King”がその良い例だ。長い楽曲で構成が定まらず流れに身をまかせるしかない。

ラファエル:ジェフが最初に言っていたことは同感だ。僕のリスペクトするアーティスト、ジョン・コルトレーンはかつて「私はときには曲の終わりから演奏をはじめる」と言ったことがある。コルトレーンの演奏は予想できないし、同じ曲でもまったく違って聞こえる。僕もそういったアプローチがつねに頭にある。
アフロ・フューチャリズムというのは、過去と未来に重点を置いて、過去の重圧、地球に根を張りつつも未来、宇宙との繋がりを考えるという思想だけれど、僕は未来を考えるには、いま現在も大切だと思っている。自分がソロ演奏するときにはいま、この瞬間を体現する必要がある。だから僕がアフロ・フューチャリズムを考える場合には過去からつながる現在を表現し、それが演奏中のインプロヴィゼーションになっていく。さまざまなホーンでいろいろな音を表現して。

アフロ・フューチャリズムとは、過去の思い出よりも未来の可能性にかける、というような意味合いもあると思います。このアルバムは、昨年盛り上がったBLMムーヴメント以降に制作されたアルバムなわけですが、そのようなサブジェクトが潜んでいるのでしょうか?

ジェフ:それは正しいと言える。つまり、いまの世のなかは間違ったことがあまりにも多いじゃないか。いま必要なのは、解決の糸口を探す合理的なアプローチなんだ。このアルバムで、いまあるものを超越できるということ、あるいは避けて通る方法はあるんだという希望を提案したかった。困難を乗り越えることができる精神状態を作れるよう自分に暗示をかけるみたいなもので、どんな苦しい状況にあっても進化への道筋は残されていると。誰が何をしようが、何を言おうが、振り回されない、前に進むための自信をつかむというか。それがこのアルバムの基本的な考えだ。こうした考えがフューチャリズムと同じとは言わないけれど、方法論として似たところもあると言えるんじゃないかな。違った考え方を啓蒙することで未来がより良くなるという、そういう思想。それは否定的な思想にもなりうるけれど、このアルバム『オーヴァーライド・スウィッチ』の場合はポジティヴな思考を主張している。僕らの音楽が少しでも人の役に立てればいいと思っているんだ。

ジョン・コルトレーンはかつて「私はときには曲の終わりから演奏をはじめる」と言ったことがある。コルトレーンの演奏は予想できないし、同じ曲でもまったく違って聞こえる。僕もそういったアプローチがつねに頭にある。

昨年世界中で盛り上がったBLM以降、何か状況の変化の兆しはありましたか? UKではDJネームを変えるような人たちもいたり(例:ジョーイ・ネグロ)、レーベル名を変えたりとか(例:ホワイティーズ)、変化がありますが。

ラファエル:BLMはあまりにも大きなテーマだな。そして黒人のなかにおいても、それをひとつのトライブと捉えていいのかという議論もある。世のなかにはさまざまの肌の色のさまざまな考えを持った美しい人たちがいて、僕がそれを代表して何かを言うことはできないと思っているし。でも、DJネームを変えるような些細なことはかえってムーヴメントの妨げになっていると思うよ。重要なのは、この400年のあいだ、黒人が何を成し遂げようとしてきたのかということで、まずはそのことを考えるべきなんだ。表層的な政治性は本当に必要な変革を達成するうえでは邪魔だと言える。

ジェフ:僕も同感だ。400年ものあいだ、黒人の生命はおもちゃのように扱われ、弾圧され続けて、ひどく破壊されてきた。BLMは400年に渡る制度的な拷問に対抗する闘いで、黒人家庭、黒人街、黒人教育などに対するすべての破壊と闘っている。これは、今後も継続していく戦いだ。BLMによって改善されたこともあるし、変化も起きた。一時的でないことを希望するよ。でもBLM以前より黒人の人生が良くなったと結論づけるのは難しいね。時間が教えてくれるだろうけれど、少なくともより多くの人の意識が高まったのは事実だ。そして結果を見る機会は再び訪れるだろうね。アメリカ国民がよりブラウン(非白人)になるにつれて、白人の恐怖感を見る機会は増えるかもしれない。白人はいままでよりいっそう内省的になるかもしれない。彼らはいままでには経験しなかった気持ち、かつてのように優遇されている状況ではないことをより意識するようになるかもしれない。それがBLMによる変化なのか、単なる偶然かはわからない。でも事実は変わらない。この国はかつてないスピードでブラウンが増え続けている。いまはこの変化に気づく最初の段階なのかもしれないね。アメリカはいつだって白人だけの国ではなかったし、黒人の人口比率は彼らが思っているほどに低くはない。もちろん黒人以外の非白人も増え続けているからね。

なるほど。それはそうと、ジェフはこのコロナ禍で『The Escape Velocity』というオンラインマガジンを創刊しました。今回の『オーヴァーライド・スウィッチ』もそうですが、何かから脱出したいというような気持ちがあるのでしょうか?

ジェフ:音楽は人びとの心を自由にするものだということをつねに忘れてはいけない。そのプロセスにはさまざまなアプローチがある。『オーヴァーライド・スウィッチ』はマインドをリセットして、何か目の前の障害に向かっていくというテーマだ。『The Escape Velocity』は瞬間、比率、A地点からB地点へ到達して自由になる過程をテーマにしている。ふたつのプロジェクトに類似性はあるけれど、どちらも結局は音楽が人を解放するという僕の基本概念に基づくものだ。無から何かをクリエイトすることはとてもパワフルなことだし、そこには自分の感情の延長が存在する。音楽を通して、言葉とは違う次元での会話が可能になる。

なるほど。最後にラファエルさん、最近のデトロイトの音楽コミュニテイはどんな感じしょうか?

ラファエル:若いミュージシャンがたくさんいるよ。デトロイトはいつだってミュージシャンの巣窟だ。素晴らしいジャズ、ゴスペル、ファンク、R&Bのミュージシャンなど多くの才能を輩出しているからね。デトロイトには、例えばロスアンジェルスとハリウッドのつながりのような、いわゆるプラットフォームがない。昔はモータウンがあったけれど。それに、ジェフもよく知っていると思うけれど、デトロイトの公立学校では音楽教育が廃止されてしまった。けれど、それでデトロイトの子供たちのクリエイティヴィティがなくなったわけではない。才能を止めることはできず、何かしら違う形で姿を現してくると思う。僕がデトロイトのシーンで素晴らしいと思うのは、すべてのジャンルがつながっていることだ。それがユニークなサウンドを生み出しているんだと思う。

ジェフ: 違うジャンルのミュージシャンの交流はあるの? ジャズとエレクトロニックとか、ヒップホップとか。

ラファエル:もちろん。とくに若い子たちのあいだでは。お互い何をしているかチェックしあっている。同時に才能ある者はデトロイトを出ていってしまい、他の都市のシーンを支えているという事実もある。ニューヨークに行けば、どんなジャンルでも必ずデトロイト出身のミュージシャンがいるよ。ロスにはたくさんのデトロイト出身のヒップホップ・プロデューサーがいる。例えばKarriem Riggins。ジャズとヒップホップをミックスした最初のプロデューサーのひとりだ。もちろんJ. Dillaも。ニューヨークにもデトロイト出身の偉大なジャズ・ミュージシャンが大勢いる。Gerald Cleaverとかね。

ジェフ:デトロイト・テクノとジャズのミュージシャンのあいだの交流は?

ラファエル:それはマイク・バンクスが長年やってることだよね。Shawn Jones、Jon Dixonといったアーティストはマイクが後押ししてきた。僕もそれに加担している。やらない理由がないだろう?

そうですよね。では、これからもデトロイトから面白い作品が出てくるのを期待しましょう。今日はありがとうございました。ところで、ジェフはDJのブッキングはこの先もけっこう入っているのですか?

ジェフ:じょじょに増えてきているよ。2022年はもうスケジュールがいっぱいになりつつある。いままではプロモーターも政府の要請がいろいろと変わって、なかなか前もってイベントを企画することができなかったけれど、状況が良くなってきて、ヴェニュー、アーティストなど事前にブッキングできるようになってきたので今後は元に戻っていくと思うよ。

(※)The Escape Velocityからのリリースが現在44作品(すべてジェフ以外のアーティスト)、Millsart名義のEvery Dogシリーズがvol.5~13 まで9作(すべてデジタルのみ2020年)、ソロ作品では『Clairvoyant』(アルバム)、「Think Again」 (Millsart名義)、Jeff Mills + Zanza21による「When The Time Is Right」。また、エレクトロニック・ジャズ系のリリースでは、ジェフ自身が関わったThe BeneficiariesとThe Paradoxをはじめ、Byron The Aquarius、Raffaele Attanasioといったアーティストの作品もリリースしている。

Lawrence English - ele-king

 ここのところローレンス・イングリッシュのリリースが活発になっている。自身が主宰するエクスペリメンタル・ミュージック・レーベルの老舗〈Room40〉から鈴木昭男、デヴィッド・トゥープとの共演盤『Breathing Spirit Forms』、イングリッシュのソロ作品『A Mirror Holds The Sky』をリリースしたのだ。両作ともフィールド・レコーディングを主体とした音響作品である。環境音に深く没入するようにリスニングすることでリスナーの聴覚の遠近法が刷新されるような見事な音響作品だ。

 今回取り上げるのは、もうひとつのソロ作品『Observation of Breath』である。このアルバムは〈Room40〉からのリリースではない。シアヴァシュ・アミニ、カリ・マローン、FUJI||||||||||TA、ノーマン・ウェストバーグ、ミキ・ユイ、マッツ・アーランドソンなどのアルバムをリリースしてきたスイスの実験音楽レーベル〈Hallow Ground〉からのリリースである。意外に感じるかもしれないが、イングリッシュは同レーベルにおいてマスタリングを手がけてきたので唐突なことではない。
 音楽性は環境音主体の〈Room40〉からの『Breathing Spirit Forms』『A Mirror Holds The Sky』とは異なり、ローレンス・イングリッシュがこれまでリリースしてきた多くのアルバム、特に近年の『Wilderness Of Mirrors』(2014)、『Cruel Optimism』(2017)、『Lassitude』(2020)などで追及されてきたダークなトーンのドローン作品である。ちなみにこれらの作品で用いられたオルガンはブリスベンのミュージアムに収蔵されていた1889年製のオルガンという。

 『Observation of Breath』は、イングリッシュが追求してきた「ドローンという音楽」の達成ともいえるアルバムである。クラシック・オルガンの機能・性能を追求し、人間の呼吸のリズムに深く作用するようなドローン作品に仕上げているのだ。音の持続と循環が呼吸のように持続していると言うべきか。呼吸のように音が生成し、そして変化し、人の感覚の中で音は拡張されていくのだ。
 本作は、シャルルマーニュ・パレスタインの提唱する「マキシマル・ミュージック」に挑戦したドローン作品という。現代的な音響に視点を向ければ、カリ・マローンや FUJI||||||||||TA などのモダンにしてクラシカルなオルガン・ドローン作品の現代的系譜に連なるアルバムともいえよう。ここにあるのはミニマリズムを超えてマキシマリズムに至るドローンである。

 アルバムには全4曲が収録されている。1曲目と4曲目がそれぞれ10分と20分の長尺で、2曲目と3曲目がそれぞれ6分と2分40秒ほどのトラックだ。アルバムの曲は、オルガンの音が中心である。そのアブストラクトなサウンドを聴きこんでいくと、オルガンの音がまるで顕微鏡で拡大されたかのように拡張されていく。
 特にアルバムの最終曲である4曲目 “Observation Of Breath” は、20分に及ぶ長尺の楽曲で、アルバムを象徴するような曲といえよう。オルガンの音色が、柔らかくも霞んだ理想的な音色を生成し、没入的なドローン・リスニングへと誘ってくれる。もちろん1曲目 “A Torso” もアルバム特有のサウンドスケープを鳴らしているし、2分42秒の小曲である3曲目 “And A Twist” では二音の往復によってドローンから旋律へと変化する音楽の原型のようなサウンドを聴かせてくれる。まさにドローン作品の逸品である。

 それにしてもわれわれはなぜアンビエント/ドローンを聴くのか。メロディもリズムも希薄な音響作品になぜ深く魅了されてしまうのか。いろいろな意見があるだろうが、音へのフェティシズムを得る快楽と、心に安らぎと静謐さを与えるためではないか。一定のトーンの持続音の連鎖に耳を澄まし、その微細な変化に耳を澄ますこと。不安定な知覚の揺れを、持続する音によって調整・調律すること。心の平穏を得ること。
 しかしだからこそ、この『Observation of Breath』において各曲が唐突に、途切れるように終わるのはなぜなのかと考えてしまうのだ。ロマン主義的なサウンドを断ち切るような終わり、中断。音という現象の終わり。もしかすると現在のローレンス・イングリッシュは、ドローンを過度に精神的な安定剤のようにするのをどこかで避けたがっているのではないか。音の物質性を追求するマテリアリストのように。

 ロマンティシズムとマテリアリズム。彼にはこの二種の顔がある。これは00年代のローレンス・イングリッシュの頃からみられた傾向だ。例えばマテリアリストなサウンド・アーティストとしての側面は『it's Up to Us to Live』(2009)、ロマンティックやアンビエント・コンポーザーとしての側面は『A Color for Autumn』(2009)というように。しかし10年代から20年代にかけて、この二つが融合しはじめているように感じられるのである。自分はその傾向を非常に興味深く思っている。

 10月にリリースされるローレンス・イングリッシュとジェイミー・スチュワートとのユニット、ヘキサの新作アルバム『Material Interstices』は、そのタイトルからしてマテリアストとしての側面が存分に発揮されているアルバムではないか。
 そう、ローレンス・イングリッシュは、音の探求者であり、音のロマン主義者であり、現代的なドローンの実践者であり、音のマテリアリストでもある。そしてレーベル主宰者とし、さまざまなアーティストを繋ぐ存在でもある。
 彼の音の追求は、さながら人生のように出会いと出会いを重ねながら続いていくのだろう。

Porter Ricks / Thomas Köner - ele-king

 この夏、名作『Biokinetics』が25周年記念盤として再発売されたポーター・リックスだが、喜ばしいことに、長らく入手困難だったセカンド『Porter Ricks』も〈Mille Plateaux〉からリイシューされている。

Porter Ricks
Porter Ricks

Mille Plateaux
2021/9/10

https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/album/porter-ricks

 また、トーマス・ケナーのソロ作品の方も相次いで復刻されており、95年にユトレヒトの〈Barooni〉から出ていたドローン作品『Aubrite』と、97年作『Nuuk』もリイシューされている。こちらも入手困難だっただけに非常にありがたい。ダークで凍てつくドローンを思う存分浴びましょう。

Thomas Köner
Aubrite

Mille Plateaux
2021/9/10

https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/album/aubrite

Thomas Köner
Nuuk

Mille Plateaux
2021/7/16

https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/album/nuuk

Tirzah - ele-king

 夏が来る前のこと、年内にティルザの新譜が出る予定だと知ったときには心躍るものがあった。ポップ・ミュージックこそ実験であり、冒険すべき未来がまだあるのだと、そんなヴィジョンを甘美なエレクトロニカR&Bとでも呼べそうな1枚として具現化した2018年の『Devotion』は、これだけ情報過多な今日でもたまに聴きたくなるアルバムだ。幼友だちのミカチュー(広くはオスカーにノミネートされたこともあるMica Leviとして知られる)と作り上げたデビュー・アルバムは、言うなれば90年代後半のビョークを更新する音楽で、レトロな意匠をもったゼロ年代UKのシンガーたちとは対照的に、スタイルよりもテクスチュアに、個人よりもサウンドに重きが置かれている。
 もっとも、歌モノのバックトラックをそうした現代風エレクトロニカにする向きは、ここ数年はとくに他にもたくさんいる。またそれかよ、などと思われた方もいるかもしれない。が、その一群において『Devotion』が頭ひとつ抜けていたのは、ミカチューによるサウンドプロダクトの妙技はさておき、なんと言ってもティルザに歌手としての魅力があるからに他ならない。彼女の声は、自分を思う存分に主張するような性質のものではない。滑らかな優しさを持っているそれは、抽象的でありながら親密で、夜の大気に溶けていく、喩えるならそんな感じだ。というわけで、彼女の新作は楽しみでしかなかった。

 それでまあ、数ヶ月前に先行リリースされた“Tectonic”を聴いたわけだが、これが正直なところぼくには最初ぴんと来なかった。『Devotion』とはずいぶんかけ離れているというか、ミニマル・ビートと語りに近い彼女のヴォーカルとのコンビネーションによる“Tectonic”は、前作がロマンティックな夜風ならこちらはマンホール下の艶めかしい廃棄物ように思われたのだ。身勝手な話だと思うが、それはぼくが彼女の音楽に望んでいたものではななかった。
 しかしながら、人生においてもっともきつかった夏が終わり、“Tectonic”から数ヶ月という時間を経たうえで、ようやく届いたアルバム全曲を最初から通して聴いてみたところ、自分の感性がティルザ&ミカチューの冒険心についていけなかっただけのことだったと、そう思い知った。これはすごいアルバムだ。前作から3年、33才になったティルザはこの間結婚し、二度出産を経験している。人生の幸せな時期にいると言えるだろう。そんなときに彼女が選んだのはサウンドを更新すること、赤ちゃんを寝かしつけた後、友と一緒にさらに夜を冒険をすることだった。
 1曲、彼のパートナーであり、シャバカ・ハッチングスとも共演しているジャズ・ミュージシャンのクウェイク・ベイスと、ロンドンでもっとも謎めいた芸術家のひとり、ディーン・ブランドとの共作がある。その曲“Recipe”は初期のトリッキーのダークサイドを迂回しながら、インダストリアルな響きを持ってアンビエントへと発展する。じっさい彼女はまだ無名だった2014年、トリッキーのアルバムで2曲歌っているわけだが、なるほど本作はブリストル・サウンドにおける暗い揺らめきと共鳴しているように感じる。“Tectonic”だって、そしてまた、前作に引き続いてのゲスト参加のCoby Seyと一緒に歌う“Hive Mind”という曲も、マッシヴ・アタックがやるべきサウンドを彼女たちが先にやってしまった感がある。

 『カラーグレード』は真夜中の音楽だ。ゼンマイ仕掛けのドラムンベースが綿のようなシンセ音とともに繰り返されるなか咳払いしながらその美しい歌唱を響かせる“Beating”、歪んだギターに機械の軋みを交えながら歌が流れる“Sleeping”、壊れた8ビート・ドラムと一緒に囁くように歌う“Send Me”、トム・ヴァーレインをトリップホップで再現したかのような“Skin In”……。曲は音数少なく静的で、ときに官能的で、ときにおおらかで夜風のように優しい。聴くたびにイメージが湧き上がり、脆弱な日々のなか、ティルザが音楽に夢中にさせてくれる。ここにはぼくが望んでいた以上のものがあった。

DJ TASAKA - ele-king

 自らのレーベル〈UpRight Rec.〉を立ち上げ、3作目となるアルバム。リリースはデジタルのみで、2020年の『Goodie Bag』から、1年と経たずにリリース。ここ数年の活動を振りかえると、どこか長いインターバルからの再始動……と思っていたが、実際は自身のレーベル第1作目となる2015年のアルバム『UpRight』以前は、2009年『Soul Clap』からのリリースでその間は6年。その前が2005年『Go DJ』ということを考えれば実はマイペースに定期的にリリースしていて、逆に言えば、その5年後の『Goodie Bag』からの本作というのが、異例のインターバルの短さでリリースされたということになる。ちなみに2017年には、長いキャリアでは初となる、実は中学時代からの友人だったという JUZU a.k.a. MOOCHY とのエスノ・サイケデリックな、テクノ・プロジェクト、Hightime Inc.のアルバムもリリースしている。

 と、この勢いを感じるタイミングでリリースされた本作『KICK ON』であるが、デジタルのみという潔いフットワークの軽さも含めて、おそらくだが作品制作の充実感がダイレクトに反映された作品ではないかと思う。個人的には、一連の近作3作品のなかで最も愛聴している作品という感じで、それはもちろんタイミングが全てではなく、自分が思う DJ TASAKA のサウンドのうまみがシンプルに出た作品だからではないかなという。そのうまみとは、具体的に言えば、ファンクやディスコ、ヒップホップが溶け込んだ野太くもしなやかなグルーヴのエレクトロ、ハウス、テクノだが、なんというか、ずっしりと重いファンクネスはあれど、インダストリアルでメカニカルなのに堅くないというのが結構重要で、それこそフロアを笑顔にするような温かなユーモアの感覚とともに、それはある種の「軽さ」となってグルーヴの方向性を決定づけているようにも思うのだ。軽やかな心持ちのヘヴィーなファンクネス。ここ数年でおこなってきた作品の魅力がシンプルに融合して、凝縮している。まぁ、月並みな表現だが、ともかく聴いていて楽しくなるファンキーなテクノやハウスの魅力がこれでもかと襲ってくる。なんとなくだが、ここ数年でリヴァイヴァルしてきている、1990年代初頭のファンキーなハウスやブレイクビーツ・テクノ的なレイヴ・トラックにも通じるようなグルーヴもあって、そのあたりもこの作品を聴きこんでいる理由かもしれない。

 アルバムはゆっくりとブレイクビーツ・ダウンテンポ、そしてセカンド・サマー・オブ・ラヴのパイレーツ・ラジオ集成に着想を得たとおぼしき、メランコリックなブレイクビーツ “'88 RADIO” (名曲)でスタートする。ちょっと意外な感触からスタートするが、まさに前述したようにバウンシーなドラムとベースラインがフロアを笑顔でロックする “Aaahh” で一気にヴォルテージをあげていく。個人的に本アルバムでよく聴いているのが中盤から後半でベースラインが気持ちいいディープ・ハウス “Oh Dear”、レイヴの雰囲気をまとったブレイクビーツ “Whoop”、性急なアシッド・トラック “Touch It” あたりの3曲だ。アップリフティングなディスコ・テクノ “Rulers of the Generation” ときて、アルバムを締めるエレポップ的な “Open the Gate” のエンディング・テーマのように終わっていく感じもいい。

 全体的に、いわゆる12インチ的なダンス・トラックのようなストリクトリーにミニマルな構成という感覚よりも、アルバム1枚として飽きさせずに「フロアの感覚」のリスニング体験が持ち込まれていて、そのあたりはなんというか、石野卓球のソロ・ワークにも通じるもので、テクノとしてのツボを充分に押さえつつも、いわゆるわかりやすい「歌」や「メロディ」にそこまで頼ることなく、そこはあくまでもテクノという表現に自覚的というか、それでいてポップにその作品を聴かすという明確な意志を感じる作品でもある(もちろんこれはいまにはじまったことではないが)。前述のような彼のサウンド・カラーのうまみを伝えるサウンドの感覚も良い。現在のスピーカーや他のリリースのなかにあっても、確実に自身のサウンドのそうしたうまみを「聴かす」処理がなされている感覚がしていて、自らのカラーとそうしたアップデート感が絶妙なる塩梅で迫ってくる。そのあたりの采配も本作をより魅力的なものにしている。作品を良作に至らしめる、ある種の余裕と、それまでの着実なキャリアが無意識ながら強固に結びついたサウンドの説得力、それが本作品にもびっちりと溢れていると言えるだろう。

新時代の扉がいま開かれる──
ビジネス、社会、ゲーム……私たちの生活はどう変わるのか?

最近ニュースなどでよく見かけるようになった “メタヴァース”。
オンライン上の3D仮想空間のことを指すそれは、“インターネットの後継” とまで呼ばれている。
はたしてそれは私たちにどのような影響を及ぼすのか?

セカンドライフ、VRChat、cluster、「バーチャル渋谷」、フェイスブック、Oculus Quest 2、ブロックチェーン、NFT、『フォートナイト』、『Roblox』、MMORPG、『竜とそばかすの姫』、『ソードアート・オンライン』……

いま多方面から注目を集める “メタヴァース” を初心者向けに解説、
様々な角度からその魅力に迫る!

インタヴュー:三淵啓自、宇川直宏(DOMMUNE)、國光宏尚&新清士(Thirdverse)、今井晋、TREKKIE TRAX、池上英子、藤嶋咲子
コラム:飯田一史、小谷真理、斉藤賢爾、白石嘉治、巽孝之、田中 “hally” 治久、藤田直哉、三田格、エフゲニー・モロゾフ


contents

◆interview
三淵啓自 メタヴァースが変える世界──先駆者セカンドライフの持続性から未来を探る
宇川直宏 無限の幻想を共有すること──ヒッピー・ムーヴメントが果たせなかった夢の続き
國光宏尚&新清士 来るべき「オアシス」への道筋──SNSとゲーム、VR、ブロックチェーンの交差がメタヴァースを実現する (取材:葛西祝)
今井晋 スラングと身振り手振りの重要性──『フォートナイト』が脚光を浴びた理由
TREKKIE TRAX クラブ・カルチャーをもう一回やり直している感覚──VRChatでワールド・ツアーを敢行、DJ集団が目撃した景色とは
池上英子 人間は古来よりずっとアヴァターを使ってきた──文明そのものを成り立たせるヴァーチャルの力
藤嶋咲子 「声」の熱量を、意志を表現する──ヴァーチャル・デモの可能性

◆how-to
メタヴァースを体験するには何が必要? 事前に用意しておきたいもの
実際にメタヴァースを体験してみよう① ヴァーチャルSNS/ソーシャルVR編
実際にメタヴァースを体験してみよう② オンライン・ゲーム/ゲーム型コンテンツ編

◆column
巽孝之 『スノウ・クラッシュ』使用前後──ニール・スティーヴンスンのSF的想像力
斉藤賢爾 ブロックチェーン、NFTと個別に構築されるメタヴァース
田中 “hally” 治久 プレヒストリック・メタヴァース──「ごっこ遊び」はいかにして「メタヴァース」へと至ったか
藤田直哉 『竜とそばかすの姫』と日本的メタヴァース
飯田一史 アインクラッドはなぜ特別なのか──『ソードアート・オンライン』におけるアヴァターの「顔」
白石嘉治 「分身」の夜のうた──VRの淵源、アルトーの「潜在的現実」によせて
小谷真理 現実における性差の歪さをいかに変えることができるか──漫画『ルサンチマン』が突破した壁
三田格 異世界へ転生すると何が起きる?──メタヴァースの先にあるもの
エフゲニー・モロゾフ もうひとつのデジタル世界は可能だ──プライヴァシーの向こう側 (訳:土田修)

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Koji Nakamura - ele-king

 先日《Hardcore Ambience CH.》の映像作品を公開したばかりのナカコーからまたも嬉しいお知らせです。なんと、ワンマン・ライヴが決定しました。11/24と11/25に下北沢440にて、11/27に茨城は取手Atelier ju-touにて開催。ドラムに沼澤尚、ベースに345を迎えたトリオ編成で、ナカコーはギターとヴォーカルに専念します。セットリストもすでに公開されています(下記参照)。これは楽しみ!

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