「Dom」と一致するもの

ZEN RYDAZ - ele-king

 NITRO MICROPHONE UNDERGROUND の MACKA-CHIN と PART2STYLE の MaL、そして JUZU a.k.a. MOOCHY の3人から成るユニット、ZEN RYDAZ のセカンド・アルバムがリリースされている。
 ディジェリドゥや三味線、アラビック・ヴァイオリンなどが入り乱れ、ヒップホップやダンスホールやジャングルのリズムが揺らす大地の上を、多様なスタイルのラップや歌が駆け抜けていく。日本ラップのファンもベース・ミュージックのファンも要チェックです。

弛まぬ想像力によって昇華されたZEN RYDAZの2ndアルバムがリリース!

極東発HIP HOP x WORLD MUSIC!!!
新時代のベースミュージック・ユニット ZEN RYDAZ が豪華ゲストミュージシャン達と共に、廃墟の遊園地(宮城県・化女沼レジャーランド)にて満月の下繰り広げた1発撮りの奇跡のライブセッション! 朝陽へ向かう瞬間を捉えた貴重な映像作品とともにリリースされます。

https://www.youtube.com/watch?v=WnBh7LolsQw

映像制作は近年、絶景 x MUSICで話題を集めるTHAT IS GOOD。
ドローンによる風景美を得意とするチームとの連携により、独自の近未来感と映画的情緒を持つ唯一無二な作品が出来上がりました。

●ZEN RYDAZ
MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY)
●ゲストMC/シンガー
ACHARU, AZ3(RABIRABI), D.D.S, EVO, NAGAN SERVER, MIKRIS, RHYDA, 愛染eyezen, なかむらみなみ
●ゲストミュージシャン
GORO(ディジュリドゥ、ホーミー、口琴), KENJI IKEGAMI(尺八), KYOKO OIKAWA(アラビックバイオリン), 東京月桃三味線(三味線)

●発売開始日
2021年12月02日(木曜日)
CD: 2000円(税別)

各種サブスク、ストリーミング
https://ultravybe.lnk.to/zentrax2

CROSSPOINT bandcamp
https://crosspointproception.bandcamp.com/album/zen-trax2

NXS Shop
https://nxsshop.buyshop.jp/items/55581725

TRACK LIST
01. WISDOM 04:57
 Vocal: ACHARU / Digeridoo & Jews Harp: GORO
02. CLOUD9 03:19
 Voice: MIKRIS / Violin: KYOKO OIKAWA
03. CLOUDLESS MIND 04:22
 Voice: NAGAN SERVER / Shamisen: 東京月桃三味線 / Flute: GORO
04. KOKORO 04:33
 Voice: AZ3,EVO / Violin: KYOKO OIKAWA
05. QUEST 04:28
 Voice: RHYDA, ACHARU, NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI
06. SLOW BURNING 03:32
 Voice: D.D.S / Violin: KYOKO OIKAWA
07. CROSS-BORDER 04:01
 Voice: 愛染 eyezen / Turkish Flute & Jewish Harp: GORO
08. CANCANCAN 03:43
 Voice: なかむらみなみ
09. MIRRORS 04:21
 Voice: ACHARU / Violin : KYOKO OIKAWA
10. VEDA 05:36
 Voice: NAGAN SERVER & NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI

Total Time: 41:50

Arrangement: J.A.K.A.M.
Mix: J.A.K.A.M. (01,03,05,07,09) & MAL (02,04,06,08,10)
Mastering: Robert Thomas (Ten Eight Seven Mastering London / UK)
Logo, Illustration: USUGROW
Picture: NANDE
Photo: Nobuhiro Fukami
Design: sati.

PRODUCED BY ZEN RYDAZ (MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M.)

P&C 2021 CROSSPOINT KOKO-099
https://www.nxs.jp/

プロフィール
ZEN RYDAZ:

NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHIN、PART2STYLEのMaL、JUZU a.k.a. MOOCHYことJ.A.K.A.M.
2019年、それぞれのフィールドで20年以上活動してきた同年代の個性派3人が、満を持してジャンルを越え“ZEN RYDAZ”としてWORLD MUSICをテーマに、メンバーが旅して得た世界観、常にアップデートされていく其々の感性、追及から生まれるスキルを結集し、21世紀的ハイブリッドサウンドver3.0としてここTOKYOでクラクションを響き渡らす。
MADE IN JAPANの島リズムが生み出すZEN SOUNDはバウンシーでドープそして自由な発想と飽くなき音楽魂を“禅FLAVA”に乗せ、大空高くASIA発のニューライダーズサウンドとして言葉を越え世界にアップデートされたWORLD MUSICを送信中。
https://zenrydaz.tumblr.com/

BANDCAMP
https://crosspointproception.bandcamp.com/
SHOP
https://nxsshop.buyshop.jp
WEBSITE
https://www.nxs.jp/label

Alva Noto - ele-king

 グリッチとパルス。ノイズとリズム。グリッドとドローン。厳密な建築と設計。それらの組み合わせによるミニマルな電子音響音楽。そのむこうにある濃厚なノスタルジア。未来。カールステン・ニコライが20年以上にわたって生み出してきたミニマルなエレクトロニック・サウンドは、電子音響におけるパイアニアのひとつとして現在進行形で君臨している。
 しかしそのサウンドはけっして固定化していない。常に変化を遂げている。90年代のノト名義のノイズとパルスによるウルトラ・ミニマルなサウンドスケープ、00年代以降のアルヴァ・ノト名義で展開されたグリッチと電子音とリズムの交錯によるネクスト・テクノといった趣のトラック、そして透明なカーテンのような電子音響以降のドローン/アンビエント作品、坂本龍一とのコラボレーション作品で展開するピアニズムと電子音響が交錯し、高貴な響きすら発している楽曲、言葉が電子音響のなかで分解され、リズミックな音響ポエトリー・リーディングにまで昇華したフランスの詩人アン=ジェームス・シャトンとの共作アルバムまで、どの音楽も電子音楽・電子音響の領域を拡張するものである。

 そして本年リリースされた新作アルバム『HYbr:ID Vol.1』は、カールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトのアルバムの中でも一、二を争う傑作ではないかと思う。もちろん、カールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトのアルバムはどの作品もクオリティが高い。だが本作では彼がこれまでおこなってきた実験の数々が、極めて高密度で融合しているように感じられたのだ。ちなみにリリースはカールステン自身が主宰する〈noton〉からである。

 このアルバムの楽曲は、もともとは19年にベルリン国立歌劇場で上演されたリチャード・シーガルの振付/演出のベルリン国立バレエ団によるコンテンポラリー・バレエ作品「Oval」のためにカールステン・ニコライがアルヴァ・ノト名義で作曲した音源である。
 「コンテンポラリー・バレエのための音楽」という制約の多いなかで、彼は自身がこれまで培ってきた技法のすべてを投入しているような音響空間を生成していく。00年代以降に展開された「uni」シリーズのリズム/ビート、「Xerrox」シリーズのアンビエント/ドローンが、まさにハイブリッドな音楽技法によって見事に統合されているのだ。まさに00年代~10年代のカールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトの総括にしてネクストを指し示すようなアルバムなのである。

 透明な電子音、パルスのようなリズム、微かなノイズが空間的に配置され、重力と無重量を超えるようなサウンドスケープを展開している。加えて本作ではコンテンポラリー・バレエのための電子音響という面もあるからか、反復の感覚(コンポション)がこれまでのカールステン・ニコライのトラックとはやや異なり、反復と非反復を往復するような構成になっているのだ(どこか故ミカ・ヴァイニオの音響を思わせるトラックに仕上がっているのも興味深い)。いままで聴いたカールステンのサウンドを超えるような音にも思えた。ミニマルと反ミニマル。反復と非反復。人間と機械などの相反するもの、まさに「ハイブリッド」なサウンドスケープが展開されていたのである。

 レーベルのインフォメーションによると、「映画のような映像技術とハドロン、ブラックホール、コライダーなど、トラックタイトルにもなっている科学的事象が描かれた静止画像にインスパイアされたという作品で、天体の物理現象やフィクションをダンスの動きを結びつける形を模索しながら制作が行われた」という(https://noton.info/product/n-056/)。
 いわば自然現象とテクノロジカルな技術と20世紀以降のアートフォームを援用しつつサウンドを生成し、それを人間の肉体の運動に落とし込むというようなことがおこなわれているのだろうか。それは先にあげた反復(機械)と非反復(人間)の交錯に結晶しているのかもしれない。

 アルバムには全9トラックが収録されている。いかにも10年代のアルヴァ・ノト的な2曲目 “HYbr:ID oval hadron II” もまるで魅力的だが、「Xerrox」シリーズ的なアンビエンス感覚に非反復的なサウンドが交錯し、透明でありながら不穏なムードを放つ3曲目 “HYbr:ID oval blackhole” が何より本アルバムのサウンドを象徴しているように思えた。いわば不安定、非反復の美学とでもいうべきか。
 この曲を経た4曲目 “HYbr:ID oval random” では自動生成するような細やかなリズムがクリスタルな電子音響とミックスされていく。5曲目 “HYbr:ID oval spin” では “HYbr:ID oval blackhole” のようなサウンドをより緻密にしたような音響空間を展開する。不定形に放たれる音の粒といささかダークなトーンの電子が交錯し、まるで映画のサウンドトラックのように聴こえてくる。
 以降、アルバムはまるで仮説と証明を繰り返すように、もしくは演算をおこなうかのように、リズムとアンビエントが交錯し、緻密に、そして大胆に音響世界を展開していくだろう。どこまでも澄み切ったクリアでクリスタルな音は、聴く側の知覚を明晰に磨き上げてくれるような感覚を発していた。聴いているととにかく「世界」が明晰に感じられるのだ。

 そしてアルバムはクールネスな温度を保ったまま、しかし次第にテンションを上げつつクライマックスといえる9曲目 “HYbr:ID oval p-dance” に至る。ここでカールステンは惜しげもなく近年のアルヴァ・ノト的な(つまり「uni」シリーズ的な)ミニマルにしてマシニックなリズム/ビートを展開している。もちろん、これまでアルバムを通して培ってきた不穏な電子音響ノイズも、しっかりとトラックに仕込まれている点も聴き逃せない。まさに20年以上に渡る彼の技量が圧縮したようなトラックといえよう。ラストの10曲目 “HYbr:ID oval noise” では、規則的に打たれる低音に、まるで人口の雨や風のような電子音響が重なり、透明な夜とでも形容したいほどの音響空間を構築する。圧倒的なサウンドスケープだ。

 “HYbr:ID oval noise” に限らず本作はどこか天候や宇宙などの超自然現象を電子音響でシミュレートしているような雰囲気がある。それがカールステンのミニマム/マシニックな音世界をよりいっそう深く、大きなものに変化させたたのではないか。未来の電子音響世界など誰にもわからないが、しかし、このアルバムの音に未知と既知が交錯しているのは違いない。音楽はまだまだ進化する。そんな「可能性」を感じさせてくれる稀有なアルバムといえよう。

 「ハイブリッド」シリーズのVol.1と名付けられていることからも想像できるように、このシリーズもまた続くのだろう。期待が高まる。

〈Advanced Public Listening〉 - ele-king

 長らくベルリンに在住していた Miho Mepo によって設立された新たなレーベル〈Advanced Public Listening〉。その第1弾作品となるコンピレイション盤『ON IN OUT』が12月2日にリリースされる。フォーマットはCD(2枚組)とLP(4枚組)の2形態(配信はなし)。ハンス・ヨアヒム・レデリウスを筆頭に、マシュー・ハーバートリカルド・ヴィラロボストーマス・フェルマンムーヴ・Dデイダラスなどなど、エレクトロニック・ミュージックの錚々たる面子がトラックを提供している(下記参照)。しかも、全曲エクスクルーシヴというから驚きだ。要チェックです。

新レーベルAdvanced Public Listeningの第一弾コンピレーション『ON IN OUT』、2021年12月2日にリリース!

宇宙138億年、地球46億年… この作品が世代も世紀をも超えて人々の魂を浄化する
普遍的な正典であることに疑う余地はない。宇川直宏(DOMMUNE)

1998年に単身ベルリンに渡り、28年に渡って数々のアンダーグラウンドで良質な海外アーティスト、DJを日本に紹介し続け、
錚々たるアーティストから全幅の信頼を置かれる日本人女性、Miho Mepoが設立した新レーベルAdvanced Public Listeningの
第一弾コンピレーションが完成!
本作のコンセプトに賛同した世界各国の錚々たる豪華ミュージシャン達が提供したエクスクルーシヴ・トラック、全22曲を収録!
CDの発売はここ日本でのみとなる限定スペシャル・エディション!

参加アーティスト
ハンス・ヨアヒム・ローデリウス(クラスター/ハルモニア)
マシュー・ハーバート
リカルド・ヴィラロボス
ディンビマン(ジップ)
トーマス・フェルマン
ローマン・フリューゲル
アトム・TM
ムーブ・D
デイデラス
タケシ・ニシモト
など全21アーティスト作品

日本語解説:宇川直宏(DOMMUNE)

■アーティスト:Various Artists (V.A.)
■タイトル:ON IN OUT (オン・イン・アウト)
■発売日:2021年12月2日[CD]/12月12日[LP]
■品番:APLCD001[CD]
■定価:¥3,000+税[CD]
■その他:●日本語解説:宇川直宏(DOMMUNE)、●全収録曲、本作の為のエクスクルーシヴ・トラック。
■発売元:ADVANCED PUBLIC LISTENING

Tracklist
Disc 1
01. KARAPAPAK 「FM EMOTION」
02. Julie Marghilano 「Human」
03. Pierre Bastien 「Revolt Lover」
04. Takeshi Nishimoto & Roger Doering 「Dream」
05. Simon Pyke aka FreeFrom 「Mass Murmurations」
06. Thomas Brinkmann 「Ruti _ Sakichis dream」
07. Roman Flügel 「Psychoanalysis」
08. Move D 「Für Franz” (Live at Theater Heidelberg)」
09. Thomas Fehlmann 「phoenix」
10. Takeshi Nishimoto & Roger Doering 「Call」
11. Hans joachim roedelius 「Immer」

Disc 2
01. Seitaro mine featuring Elson Nascimento & KIDS 「dia e noite」
02. Tyree Cooper 「Classic Material」
03. ZAKINO(aka Seiichi Sakuma) 「What time do you think it is」
04. Low End Resorts (Phoenecia + Nick Forte) 「Drunkin’ Drillz」
05. Daedelus 「Denote」
06. Atom TM 「C4LP (F*ck Yeah)」
07. Pulsinger & Irl 「l Vicinity Dub」
08. Matthew Herbert 「PEAHEN」
09. Dimbiman (aka Zip) 「Väterchen Frust」
10. Ricardo Villalobos (ZEDA FUNK)
11. The Irresistible Force (aka Mixmaster Morris) 「MULTIBALL」

interview with Nightmares on Wax (George Evelyn) - ele-king

 ナイトメアズ・オン・ワックスを名乗るジョージ・エヴリンと言えば〈Warp〉の古参のなかの古参、在籍年数で言えばAFXやオウテカよりも長い。そんなエヴリンと対面で取材したのは、ぼくはたったの一回だけ。1997年、まだシェフィールドにあった〈Warp〉のオフィス内でのことだった。ここでおさらいしておくと、彼の名義にある「ナイトメア」の意味を「悪夢」などとネガティヴに訳してはいけない。これは「悪夢」という言葉が反転して「ワイルドな夢」という格好良さを意味している。マイケル・ジャクソンの「バッド」が「悪い」んじゃなく「超格好いい」ということを意味するのと同じだ。「ワックス」とはレコードのことで、つまり彼の名義は「レコードのうえのワイルドな夢たち」なのである。
 1997年に「レコードのうえのワイルドな夢たち」に会うということは、かの有名な『スモーカーズ・デライト』(*至福のチルアウト感覚によって、トリップホップを再定義したアルバム)をリリースしてまだ2年しか経っていないときに会うということだ。ぼくのなかにエヴリンに対する先入観がなかったと言えば嘘になる。ところがじっさい現地で会った本人は、アシッド・ハウスと出会ったリーズのBボーイというよりは、シックな服装をした、いたって真面目な普通の青年という印象だった。そのときの取材の最後に彼が真顔で言った言葉はいまも忘れられない。「ギリギリの生活だけど、飯が食えて、良い音楽と良いウィードがあれば俺は満足なんだ」
 ジョージ・エヴリンにとっての「良い音楽」とは、オーセンティックなソウルであり、80年代のヒップホップであり、70年代のダブやレゲエ、そして官能的なジャズ……なんかである。とりわけクインシー・ジョーンズの『ボディー・ハート』(1974)のような作品や70年代のカーティス・メイフィールドの滑らかなソウル/ファンクは、オールド・スクールのヒップホップとともにNOWの出発点において大きなインスピレーションとなっている。
 いずれにしてもNOWの作品は、エヴリン独特のレイドバックしたダウンテンポというパレットの上をさまざまな「良い音楽」がミックスされることで生まれている。彼は現在のところコンスタントに8枚のアルバムをリリースしているが、それらはすべてチルアウターたちの期待に応えるものであり、快適さを約束するものという点ではすべてが同じと言えるのだが、しかし作品ごとそれぞれしっかりと色を持っているという点ではすべてが違ってもいるのである。 
 先日リリースされたばかりの9枚目のアルバム『Shout Out! To Freedom...』もある意味いつもと変わらぬNOW音楽ではあるが、しかしいつもとは違った熱が込められている。その「違った熱」について、以下にエヴリンがイビサの自宅からじつに熱心に語ってくれている。アルバム制作中に受けた手術について、今回のテーマとなった自由について、音楽を作ることの意味、シャバカ・ハッチングスへの敬意、そしてブラック・ライヴズ・マターについてなど、彼のシリアスな思考がよく出ているし、こんなにたくさん話しているインタヴューは他にないと思うので、エディットは最小限にして、なるべくそのまま掲載することにした。リラックスしながら、部屋のスピーカーから新作を流しつつ読んでいただけたら幸いだ。忘れかけていた微笑みが戻ってくるかもしれない……。 

俺は、パンデミック以来、実に多くの物事から自分を解放したからね――つまりパンデミックを機に、リセットしてみたんだ。自らをリセットし、自分自身の内面と再びチューニングを合わせ、そうやって本当に、じっくり人生を見つめ直し、再評価してみた。自分の人生や人間関係等々をね。

本日はお時間いただき、どうもありがとうございます。

GE:どういたしまして。

■この取材はele-kingという、インディ・ミュージック/エレクトロニック・ミュージック系のウェブサイト向けのものになります。

GE:うん、雑誌は憶えてるよ!

(笑)はい、紙版もありますが、現在はウェブが主体になっています。

GE:なるほど、そうだよね。

パンデミック以降、あなたのイビサでの生活はどのように変わりましたか? 

GE:そうだな、俺の生活は……思うに、自分はスロー・ダウンし、対して時間のスピードは速まった、それだったんじゃないかな? (笑)いやだから、自分の日常はいま、非常にリラックスしたものになっているってこと。常にツアーで移動、ほぼ数日おきに次の地に飛ぶフライトをつかまえる……なんてこともないし、家に留まり、家族との時間をエンジョイし、そして音楽作りも楽しんでいる。そうだね、いま、とても、とてもハッピーで満足している。

スペイン本土はたいへんでしたがイビサは島ですから、それほど影響は受けなかったのでしょうか?  

GE:あー、うん……。いや、正直、COVIDそのもの以上に、パンデミック関連の規制の方が危険だったっていうか(苦笑)? たとえば、我々もロックダウンさせられたし、家からの外出も禁止、海で泳ぐことさえ禁じられて――それって、俺からすれば理屈に合っていなくてさ(苦笑)。だって、海で泳ぐのは身体の免疫機能に良い効果があるからね。

はい。

GE:政府側は人びとに自宅謹慎を求めたけど、日光を浴びるのは身体にとって良いことだし。それに、街路での喫煙も、飲酒も禁止。管楽器を演奏する場合を除いて、常時マスク着用が義務づけられていた。

かなりガチだったんですね。

GE:(苦笑)ああ、やや過剰だった。でもさ、ほら――俺たちはまだ元気にやっているし、いまやこうしてあの頃についてジョークを飛ばせるんだから、そこはラッキーだってことじゃないかな。だけど、COVIDというストーリーはまだ終わっちゃいないと思うし、うん、まだしばらくかかるだろうな。俺たちは果たしてこの冬を乗り切れるか、そこを見極めていこうよ、ね? 冬で状況がどうなるかを見守っていこう。

ですよね。さて、資料によると今作を作る前に、あなたの健康上で大きな問題があったそうです。長年の活動(ギグや移動など)によってずいぶん身体にダメージがあり、ご自身の健康を案じたということですが、具体的にはどのようなことがあったのかを話せる範囲でいいので教えてください。

GE:ああ。っていうか、それは今年の話。今年のはじめに起きた出来事だよ。

そうなんですね。

GE:というのも、んー、そうだな、アルバムを書きはじめたのは……2018年末にはソングライティングに取り組んでいたし、そのまま2019年も継続し、で、2020年3月にパンデミック状況が本格化し出した、と。あれは今年のはじめ、2021年1月だったけど、頭の後ろに痛みを感じていたから健康診断に行ったんだ。検診の結果健康上の問題が発覚し、手術を受けることになった。頭に腫瘍があって、それを摘出する手術をね。

なんと! それはたいへんでしたね……

GE:良性の腫瘍だったし、もう大丈夫なんだけどね。ただ、あの当時は(良性かどうか)わからなかったし、生検の結果が出るまでしばし待たなくてはならなかった。それでも、その間もアルバムには取り組んでいた。だから、あの体験のおかげで非常に……非常に興味深いリアリティがもたらされたっていう。言うまでもなく自分の寿命を、これでおしまいなのか? と自問していたし、果たしてこれが自分の最後のアルバムになってしまうのか、あの段階ではそれもわからなかった……。そういう、あれこれに直面したわけ。
 けれども、そうした思いのすべてから数多くの感謝の念が生まれ、生きていることのありがたみを感じる助けになった、というか――まあ、俺はいずれにせよ、感謝の思いはかなり強い人間なんだけど――この一件は自分にとってでかいストーリーだった、みたいな。で、それはある意味このアルバムが表現しようとしていること、そことも一致するんだよ、フリーダムの別の側面、というか。だから、いまおれは自由についていろいろと語っているけれども、これは自由のまた別の要素というか……果たして自分はこのストーリー(=健康問題等々)から逃れられる(free of)のか、それともこの作品が最後のストーリーになるのか? と。というわけで、うん、あれは非常に、非常にディープでエモーショナルな時期だったね。

腫瘍が良性だったのは本当に何よりですが、そこには長年の活動もあったと思いますか? 先ほどもおっしゃっていたようにあなたは多くのギグをこなしてきたわけで、不規則なツアー生活のなかで健康管理をちゃんとしていなかった、という面も若干影響した?

GE:いやいや、あれは……何もツアー生活ばかりが要因だった、とは自分は言わないなぁ。もちろんツアー中の生活様式は、エモーション面・精神面・肉体面でヘルシーなものとは言えない。そこは認めて、いったん脇に置こう。ただ、俺自身は不健康な生活を送っていなかったしね。食生活もかなりちゃんと考えてるし、エクササイズもやってるからさ。でも、そうは言いつつ、その3つの要素のバランスをとるためには、たまに、その一部をある程度犠牲にしなくちゃならない場面だってあるわけだよね?

たしかに。

GE:だから、あの出来事が自分のミュージシャンとしてのライフスタイルのせいだった、とは言わないよ。でも、ある意味感じたな……正直、肩と首とに、苦痛・不快感は長いこと、何年も感じてきたんだ。ただ、その要因が腫瘍だったなんてちっとも知らなかった。実際、こんな風に(と、DJが肩をあげてヘッドフォンの一方を耳に押しつけ、首を傾げてモニターするポーズをとる)プレイしながら何時間も立ちっぱなしだったり――

(笑)ええ。

GE:(笑)フライトを目指して移動続きで、睡眠も食事も行き当たりばったりになったり。だから自分の背中の痛みだのなんだのは、そんなツアー生活のつけが回ってきたのかな? くらいに思っていた。ところが、これ(腫瘍)が見つかったわけで……あれは頭部/首の後ろ、しかも筋肉のなかにできていてね。そのせいで、自分の立ち方から何から、すべてに影響が出たんだ。

全身に関わりますよね、それは。

GE:そう。で、さっきも話したように、6ヶ月くらい前まで……いや、もっと前かな? それまで、要因がそれだったとは知らなかったわけで。ともかく、クレイジーな話だった。で、おれとしては……長年の活動のせいにするつもりはないし、とにかくこの体験も自分のストーリーの一部として見ている、そんな感じなんだ。それに、あれで、自分は古いエネルギーを、何かしら古くて重たいエネルギーを取り去っているんだ、そんな風にも捉えていた。というのも俺は、パンデミック以来、実に多くの物事から自分を解放したからね――つまりパンデミックを機に、リセットしてみたんだ。自らをリセットし、自分自身の内面と再びチューニングを合わせ、そうやって本当に、じっくり人生を見つめ直し、再評価してみた。自分の人生や人間関係等々をね。で、それをやることは、ロックダウン期の時間を過ごすのに実に役に立った。ほんと、あの頃は、費やせるのは時間だけだったから。でも、あの経験のおかげでとても多くの結果を、そして感謝の念を手に入れたよ。

俺は自分のレコードや音楽を「変化しつつあるコンシャスネス」と関連づけている、それは間違いない。肌の色は関係なしに、すべての人びとを集め一緒にするものとしてね。

なるほど。すでに作品作りには着手していて、その途中で腫瘍が発覚した、と。ある意味ショッキングな、人生の転換期を迎えたなかでの録音になった今作は、どのような過程で生まれたのでしょうか?

GE:うん、制作中にあの一件は起きたけど、それでも俺は音楽作りをストップしなかったんだ(笑)! うん、とにかく、中断はしなかった。だから、それがこの一連の出来事の、本当に、本当にシュールな側面だったっていうのかなぁ……要するに、健康上の深刻な問題があるからって、じっと安静して心配ばかりしているつもりはないぞ、みたいな。わかる? それは自分じゃないし、仮に事態が最悪なものになったとしても、だったら自分はいま残された時間をできるだけ活用したい、と。そこで、よりディープな地点に連れて行かれたっていうのかな、要するに「もしもこれが自分の作る最後のアルバムになるとしたら、どんな作品にしたいんだ?」と自問したわけ。

なるほど。

GE:だろ? 実際、その思いのおかげで、より深く掘り下げていくことにもなった。何も考えていないときですら、色んな思いがランダムに頭に浮かんだしね。家族のみんなは大丈夫かなとか、ありとあらゆる考えが勝手にわき上がってきて、我ながら「ワオ、一体どこから出て来たんだ?!」みたいな。音楽に関してもそれは同様だったし、非常に……とは言いつつ、俺はまだこのアルバムのストーリーを見つけようとしていたし、もちろん常に音楽を作っているとはいえ、アルバムが1枚にまとまっていく過程というのは、音楽群が形を成し、徐々に一貫性を持ちはじめ、そこで俺にも「アルバム」が聞こるようになってくる、と。そうなったところで「このアルバムは何についての作品なんだろう?」と自問しはじめるし、そうやって音楽そのものが正体を現しはじめるんだ。
 というわけで、パンデミックのはじめ頃、アルバムの30〜40パーセントができていた。で、そこから数人のアーティストの声をかけていき、「君たちサイドの内部で何が起きているか、それについて書いてくれないか」と頼んだんだ。と言っても、(パンデミック被害状況等の)統計上の数字の話ではないよ、もちろん! そうして彼らから俺に返されてきたものは、実に深遠で、本当に興味深いものだった。で、2020年も終わりに向かいつつあった頃、俺も感じはじめていたんだ、「フム、これらの歌はどれも、色んな形の『自由』を求める叫び、様々に異なる呼び声のように聞こえるな」って。それで俺自身、自分に問いかけはじめたんだ、「自由とは何か?」と。ほかのアーティストとの話し合い、あるいは自分の抱いた疑問からですら、誰もがひとりひとり異なる「自由」の定義を持っている、という点に気づいたからね。誰にとっても、各人の自由の定義は違うんだ、と。そこで俺も、おお、これはすごく面白いなと思った。
 そうして、続いて――俺自身の、「マイ・ストーリー」が起こったわけだよ、そう思った後に(苦笑)。で、俺もなんてこった! って感じだったし、じゃあ、自分は何から自由になりたいだろう? と考えた。要するに、この(自由に関する)アルバムを作っているところで、自分個人のストーリーも生じた。自由についてのアルバムを作っている最中に、自分も実際に何かから解放されたい/逃れたいと思って生きていた、みたいな。しかもその間、外の世界も同じような状況だったわけだよね? 人びとは外出したがっていたし、他者との結びつきを求めていて、でも家族親類にすらなかなか会えない状況だった。政府の動き方もかなり妙な具合だったし、うん、思ったんだよ、「みんな自由を求めてる、じゃあ、フリーダムってなんなんだ?」と。その思いはホント、このアルバムを作っていた間じゅう、ずっとこだましていたっていうのかな。遂に気がついた、「そうか、誰にだって、そこから自由になりたい何かがあるんだ」とわかったっていうか。たとえ、人びとは「自由になりたい」と口に出して言うことはなくてもね。だから、もしかしたらこれはそれについて話し合い、他の人間にも「そう思っているのは君だけじゃない」と知らせる機会なんじゃないか、と思った。誰しも何かしら、そこから逃れたいと思っているものがあるんだ。誰だって、絶対にある。それは子供時代のトラウマかもしれないし、仕事かもしれない。人間関係から解放されたいとか、なんらかの恐怖症から自由になりたい等々、いくらでもあるだろう。誰もがそれぞれの思いを抱いているし、君ひとりじゃない、俺たちみんなの抱えているスピリットについてなんだ、と。だろう? というわけで俺は……このアルバムの収録曲を通じてだけではなく、本作に関する取材やその周辺で起きる対話を通じて、この疑問から我々はなんらかの癒しを生み出すことができるんじゃないか? そう思ってる――誰に対してもね。いやほんと、このアルバムはあらゆる人に捧げたものなんだよ。

様々な要素のある作品ですが、たとえば“Imagineering”をはじめとして全体にとても温かなヒューマンさ、受け入れてくれる感じのするアルバムなのは、だからなんですね。

GE:うん、“もたらす”ってことなんだ……もうひとつ俺が大事だと思うのは――様々な問題についての歌を書くのはかなり楽なことなんだ。ただ、俺はそれはやりたくない、っていうのかな? いや、それらの問題に光を当てることはちゃんとやるけれども、それだけではなく、同時に希望ももたらせるだろうか、みたいな? というのも、肝心なのは問題それ自体じゃないから。大事なのはそれらの問題の解決、それなんだ。わかるよね?

なるほどね、はい。

GE:で、解決は、俺たちはみんな互いに繫がり合っている、そう感じたときにやってくるものであって。というわけで、俺からすれば人びとに「ああしろこうしろ」と命じるのではなく、みんなと何かシェアする形でその点をどうやって表現すればいいだろう? ということだったんだ。その問いかけは、少なくとも人びとがその点を意識する、そういう思考を彼らのなかにインスパイアするかもしれないし。

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自由についてのアルバムを作っている最中に、自分も実際に何かから解放されたい/逃れたいと思って生きていた、みたいな。しかもその間、外の世界も同じような状況だったわけだよね? 人びとは外出したがっていたし、他者との結びつきを求めていて、でも家族親類にすらなかなか会えない状況だった。政府の動き方もかなり妙な具合だったし、うん、思ったんだよ、「みんな自由を求めてる、じゃあ、フリーダムってなんなんだ?」と

これだけ長い間活動し、アルバムを出し続けるというのは決して簡単なことではないと思います。かれこれ30年近くですよね?

GE:ああ、32年じゃないかな?

アイデアの面でもそうですが、パッションの面でも若いときの気持ちを持続するのは困難です。今作『Shout Out! To Freedom…』はどのようなパッションをもって制作されたのでしょう? どんな風にパッションを維持しているのですか?

GE:そうだな……思うに、俺は常にかなり、好奇心の強い知りたがりな人間だからだと思う。だからいつだって疑問を発しているし、しかもそれらの疑問は大抵、自分自身を中心にしたものだっていう。要するに「この、俺が音楽と結んでいる関係ってなんだんだ?」みたいなことだとか、とにかく「これはなんなんだ?」としょっちゅう疑問が浮かぶし、そうなったらその答えを見つけようとする。あるいは、過去を振り返って「フム、昔の自分はいったいどうやって音楽を作ったんだ?」と思うことすらある。っていうのも、いまの自分はああいう音楽の作り方をやらないし、考え方も変わったから、ああいう音楽の作り方はもうやれっこないな、と。だから、自分の作品を聴き返してテクニカル面での細かい内訳は思い出せないし、それこそもう、自分の音楽を自分で暗号解読するのに近い。ただ、たとえそうであっても、その曲にある魔法の瞬間は認識できる。そのマジックの瞬間を、俺のなかに存在する子供は聴き取ることができる。で、その部分なんだよ、俺がなんとか近づこうとして取り組んできたところっていうのは。
 というのも、自分のなかにあるその部分は、とにかくプレイ(遊ぶ)しようとし、楽しみたがっている。でも、子供ではなく年齢を重ねた部分は、物事を見極めようとして、本当に観察型で分析派なものになるんだ。で、自分のその面があまりにシリアスになることもあるのに気がついたし、そうなると音楽作りから楽しさが奪われてしまうんだよ。で、過去にそうやってシリアスになり過ぎて音楽からFUNが失われた、そういう状況に自分が陥ったことは間違いなくあった。だからだろうね、これ(キャリア)に関しては、旅路を行くようなものだ、と捉えられるのは。たまにそうなることもあるさ、と。
 でも、俺がその旅路のなかで学んできたことは「自分が邪魔になることなしに、自然に音楽に発生させることはできるだろうか?」であって。その点は、いまの自分にはとても、とても大切だ。音楽が自然に生じる状況の妨げにならないようにすることで、俺は自分のやっていることと自分との関係についてもっと意識するようになりはじめたし、そこにエキサイトさせられる。そんなわけで、いまの自分は――もちろん、「こうだろう」という概念はあるんだよ。ただ、自分が何かを探し求め、音楽を作っているとき、俺はそこでいまだに質問を発しているんだ、「君(音楽)は俺に何を語りかけようとしているんだい?」みたいに。(語気を強め命令口調で)「これは絶対にこうあるべきだ!」、「サウンドはこうじゃないとダメだ!」云々なノリではなくてね。
 いや、俺だって確実に、そういう人間ではあったんだよ。ただし、いまの自分はそうではない。いまの自分はゲームに興じているという感じだし、そこにあるアドヴェンチャー、そして可能性は無限大、みたいに思う。で、完璧である必要はないんだよね。俺はこれまで、物事を完璧にしようとして長い時間を費やしてきた。けれども、完璧過ぎるものにしようとするあまり、逆に音楽作りの楽しさが奪われてもしまう。だから、とにかく作ってみて、できたそのままに任せよう、また後になってそれに立ち返ってみればいいさ、と。きっと「ああ、こういうことだったのか」と自分にも理解できるだろう――自分の長い旅路のなかの、どこかの時点で納得がいくはずだ、と。
 そんなわけで、10年前に作った音楽で、自分でもどういうことかいまだにわからない、というものはあるんだよ。ただ、いまの俺はそのプロセスを信じている――歌というのはおのずとある地点に達するものであって、そこでそれらの歌は一群の集まりになり、アルバムという大きな絵の一部を成していくようになる、そういうプロセスを信頼している。だからいまの俺は、音楽を作る際のプレッシャーをまったく感じないんだ。かつ、いわゆる「シーン」だとか(苦笑)、そういうものにまったく興味がない。ああいうもろもろは、若い頃の自分が関わっていたことだったからね! 
 いまの俺はとにかく、自分をもっと知るために、そして自分と音楽との関係を理解するために音楽に取り組んでいるし、それが俺を駆り立て続けている。俺にもわかったんだ、自分は、この「チャンネル」なんだ、って――なんであれ、そのときどきの自分が「これは!」と思ったもの、魅力を感じたサウンド、それを発信するためのチャンネル。で、俺はどこかからそれを受信している、と。俺にとってのそうであることの美しさというのは、いまだに「ワオ!」と驚かされるところにあるし、だからこそもっと音楽を作りたくもなるっていう(笑)。
 それに俺は、とくにインスピレーションを探すってことがないんだ。スーパーマーケットを歩いていてもインスパイアされるし(笑)、そこらを歩いていて何か閃くとか、音楽と一切関係のないことをやっていてもインスピレーションが浮かぶ。つまり、ゴリゴリに「音楽、音楽、音楽!」と、そればかり考えなくてもいいってこと。俺は「自分の実人生があり、そして自分の音楽家としての人生がある」という風に分けて捉えてはいない。ノー、ノー、そうじゃないんだ、それらすべてが俺の人生なんだ!みたいな(笑)。そのおかげで、自分はより解放され、かつもっとインスパイアされるようになったと思う。

『Shout Out! To Freedom…』というタイトルにした理由についてお話ください。この言葉はどういう風に出てきたのでしょう? 先ほども話に出てきたように、いろいろな人びとの「フリーダム観」を提示したい、ということですか?

GE:ああ、だからこの作品は、各種の「あなたたちにとっての自由」に捧げたもの、みたいなアルバムであって。そうはいっても、この1枚で自由に関するあらゆるテーマを取り上げてはいないかもしれないけど――

それはやっぱり、不可能でしょう。

GE:(笑)ああ、無理だよね。それでも、今回の作品は自由にも色んなものがあるって点を認識する機会であり、自由について対話を交わすきっかけ、でもあるんだ。というのも、我々は得てして……だから、俺ですらこのレコードを作ったことで、自由に対するアウェネスが以前よりもさらに大きくなったし。で、誰であれ、今作を聴く人にも、それと同じことが起きてくれたらいいなと思ってる。自分たちの自由を意識すること、そこは大事だと思う。どうしてかと言えば、我々の一部には満喫できている自由も、ほかの人びとには許されない、ってことはあるからね。でも、あらゆる人びと、誰もが同等の自由を享受するに値する。ただ、その状態に達するには、そこに対する人間の集団的なアウェアネスが存在しなくちゃ無理だろう、と俺は思っている。俺たちはついつい、自分たちひとりひとりのちっぽけな世界に縛られてしまうわけで――

たしかに。

GE:それよりも、俺たちがみんな、自分たちは集合的なファミリーなんだって意識に目覚めること、そこなんだ。国旗だの、国境だの、国家だの、そういう点にこだわるのはやめにして、自分たちをひとつの惑星の上で一緒に生きている存在、そういうものとして見ようじゃないか、と。俺たちには物事を変えていくチャンスがあるし、物事は物の見方、捉え方次第で変化するものだしね。だからなんだ、この「自由」っていう題材はものすごく大きなテーマだな、と思うのは。そこには実に多くの可能性が含まれている。

アルバムのタイトルもですが、“Creator SOS”や“3D Warrior”、“Up To Us”といった曲名にも何か強い気持ちや熱い思いを感じます。平たく言えば、メッセージの籠もった作品ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

GE:うん。だからまあ、さっきから話しているように、俺はこれらの曲で、様々な自由という主題にハイライトをつけているわけ。色んな人びと、ハイレ・シュプリームとの共作曲等々で彼らの意見に光を当てているし、そうやって俺たちは質問を発しているんだ。そこなんだよね、あれらの点に対するアウェアネスを持ち込むこと、そうしたアウェアネスをより広い対話の場に持ち来たらそう、と。たとえば“3D Warrior”のタイトル、あれは、「我々は3Dリアリティのなかで生きている」、そこからきたものなんだ。で、そのリアリティのなかで生きるのは実はかなりタフでもある。3Dな現実のなかで生きている人間は、誰もがみんな戦士(Warrior)なんだ。

私も戦士でしょうか?

GE:もちろん、君も。みんながそうなんだ。だからあの曲はいわば、すべての3Dの戦士たちに捧げる頌歌、みたいな。俺たちはみんな、3Dリアリティの窮屈な縛りのなかで生きているから――現時点では。少なくとも、現時点ではそう。永遠にそうではなくて、いずれ変わるだろうけどね、フフフッ!

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この作品のために作った音楽は、パンデミック中ですら作業していたから、かなりの量になってね。それらの音源をすべて携帯に入れ、ビーチまで出かけてジョイントに火をつけ、聴いてみたんだ。で、思ったよ、「……これは2枚のアルバムだなって」って。

今作にはシャバカ・ハッチングスという強烈な個性を持ったジャズ・アーティストも参加しています。アルバムのなかに何を求めてシャバカ・ハッチングスを起用したのですか? あなたは彼のどんなところに惹かれたのでしょう?

GE:俺がシャバカの音楽と初めて出会ったのは、たぶん2017年だったんじゃないかな? で、あのときの俺は(目を丸くして)「……こりゃなんだ? いったいなんなんだ?!」みたいな反応で(笑)。文字通り彼の音楽、彼のやっているプロジェクトのすべて――とにかくそれらを全部知りたい! と思った。ほら、たまにいるだろ、「この人のことは何もかも知りたい!」とどうしようもなく思わされる、そういうミュージシャンが。俺はとにかく、彼についてもっと知りたいと思ったし、彼の音楽を聴けば聴くほどさらに知りたくなっていったわけ! 
 これは誓っていい、本当に心からそう信じているんだけど、俺たちは今まさに、「生ける伝説」を体験しているところだ、そう思う。ああいうミュージシャンが世のなかに登場することはまずめったにないし、しかも彼はまだ生きていて、しかも作品を発表し続けている最中なわけで、だからまあ、シャバカはすごいと思っているし、あるとき友人のスティーヴから「お前と彼がコラボレーションした図を想像してごらんよ、最高じゃないか?」と言われて、俺もそりゃアメイジングな思いつきだと思った。
 で、“3D Warrior”ってトラックの興味深い点は……あのトラックを、俺はまずウォルフガング・ハフナー、ドイツ人ジャズ・ドラマーである彼と一緒にはじめてね。これまで何度もコラボしてきた、仲のいい友人だ。で、俺はまずこの、ループのアイディアを彼に送り……いや、そうじゃなくて、まず俺たちはレコーディング・セッションをやったんだ。そのセッションの最後のあたりで、俺にあのループのアイディアが浮かんで、そこに付け足した。そしたらウォルフガングが「あ、そのループに合わせて演奏させてくれ、何かやらせてくれ」と言い出して、そうだなあ、それこそ10分くらい? あのループに合わせてひたすらプレイしていったっていう。俺も「うわっ、こりゃすごい!」と思ったけど、俺の手元にあったのはそれだけだったんだ。ところが、それから4ヶ月くらい経って、あれは……たしか2018年だったはずだな。うん、4ヶ月後に、俺は自分の地元のリーズで、長年の付き合いのキーボード・プレイヤー、そして若いベース奏者のアレックス・ビーンズとスタジオ入りして、そこで彼がベース・ラインとメロディを思いついた。ちょっとしたループ、ドラム、ベース・ラインができたわけ。
 それで俺は2019年10月にハイレ・シュプリームとフックアップして数日セッションをおこなって、その終わりあたりに彼が「そういえば、こんなビートがあるんだけど」と一種のトライバルなビート調な要素を持ち込んできて。彼はルーツがエチオピア系の人だし、そこで俺のイマジネーションもいろいろと広がって、ふたりで3Dリアリティについて話しているうちにあの、戦士についての歌詞を思いついた。そうやってヴォーカルができた、と。
 だから曲としての構造はなくて、いくつかの要素だけがそろっていたわけ。そしてシャバカとやったらどうか?という話が出てきて、「彼にやってもらいたいチューンはこれだ」と思った。となるとある程度の構造をクリエイトする必要があったし、自分でそれをやってね、あの作業はDJツアー先の、ホテルの一室でのことだったと思う(笑)。そうやってこしらえた音源をシャバカに送り、彼も「うん、すごく気に入った! たぶん何かやれると思う」と言ってくれて。そして11月にハイレ・シュプリームが俺のスタジオに再びやって来て、今度はそこで一緒に“Wonder”を書いた。シャバカにはどっちにせよ1月にスタジオに入ってもらう予定になっていたし、彼にその音源を送り「この歌、どう思う? 何かやれる?」と訊いてみた。彼の方も「これはいいね、自分にも何かやれると思う」という返事で、そこで俺は彼に「オーケイ。2曲ともやりたい?」と訊ねて、彼も「よし、試しにやってみよう」と返してくれて。で、あれは2020年1月15日、俺の50歳の誕生日のことだったけど、あの日俺はモルディヴにいてね。で、インボックスにあの2曲、シャバカが管楽器を演奏してくれた“Wonder”と“3D Warrior”の音源が届いて――あれはもう、これまで自分がもらったもののなかでも最高の誕生日プレゼントのひとつだった、みたいな(満面の笑顔)。

(笑)。

GE:で、さっき話した“3D Warrior”の原型であるループ&ドラムの10分半のヴァージョン、あれはいずれ、ヴァイナル盤として発表すると思う。あれについて思い出すのは、ここ(イビサの)スタジオであの音源に取り組んで……いやだから、10分半っていうのは、ひとつの楽曲をノンストップで演奏するにはかなり長い尺なわけだよね。俺たちもすっかり音楽に没入して我を忘れたし、午前4時くらいまでセッションを続けて、終わった頃には「あれ、自分はどこにいるんだ?」みたいな。ただ、あのトラック全体について驚異的な点のひとつは、あれが4つの異なる筋書きを経てレコーディングされたものだ、というところでね。だから、まずウォルフガング・ハフナー、そして地元リーズのミュージシャン、続いてハイレとのセッション、最後にシャバカがリモートでひとりで演奏を添えてくれた。それらをすべて組み合わせたわけだし、俺自身「こんなことが、どうやったら可能だったんだろう?」とすら思うよ、ほんと(笑)。ってのも、(バラバラに作っていったにも関わらず)参加した全員が同じ空間に一緒にいるフィーリングのある曲だからね。すごいな、と自分でも思うし、仮に、俺があらかじめこうなるように計画立ててやっていたとしたら――もっとも、それはやらずに流れに任せていったんだけど――きっと、自分にこの結果を生むことはできなかったんじゃないかな。
 これこそさっき話した「音楽が発生するのに任せて邪魔しない」の完璧な例だろうね、とにかくやってみよう、自然に任せよう、と。シャバカがこのアルバムに持ち込んでくれたものはとにかく……彼に参加してもらえて心から光栄だ――もちろん、今回参加してくれたミュージシャン全員に対しても本当にそう思っているけれども――彼は途方もないミュージシャンだし、まだコメット・イズ・カミングやサンズ・オブ・ケメット、シャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ等を聴いたことのない人は、どうか、ぜひあれらのアルバムの世界に飛び込んでみて欲しい。素晴らしい音楽が鳴っているから。 

シャバカは政治的な演奏家でもありますよね? 今作にBLM(ブラック・ライヴズ・マター)からの影響はありますか?

GE:んー、いいや。というのも、俺はあのムーヴメント以前から、あれらの問題を考え、BLMと信じてきたから。あの物語でひとつ言えるのは、ああして様々な運動が起こり、少し経ったところで、俺も「もしかしたらこれは、歴史のなかの、何かが変わる瞬間なのかもしれない」と思うようになった。もしかしたらこれこそ、クソのような状況が終わりを告げて良い方向に向かっていく、その転換点かもしれない、たぶんその瞬間なんだろう、と。ただし、俺はまだ「たぶん」だと思うけどね。うん、俺はまだ「たぶんそうなんじゃないかな」と言うね。どうしてかと言えば、そこに至る道のりはまだ、本当に長いから。でも、俺は自分のレコードや音楽を「変化しつつあるコンシャスネス」と関連づけている、それは間違いない。肌の色は関係なしに、すべての人びとを集め一緒にするものとしてね。我々には人間の肌の色、見た目といった側面を乗り越えていく必要がある。それらを越えたところまで行って、本当に、お互いをブラザー&シスターとして眺めていかなくちゃ。誰だってみんな同じ空気を吸っているんだし、(苦笑)ほかの人よりも臭うクソをする奴もいるとはいえ、俺たちもみんな、クソはするんだからさ。アッハッハッハッハッ!

(笑)いきなり下卑た話になりましたね。

GE:ハッハッハッ。せっかくポエティックに答えはじめたってのに、回答の最後がヒドかったなぁ、アッハッハッハッ!

(笑)。また、Saultのアルバムからのインスピレーションもあるのではないでしょうか? 彼らが昨年出したアルバム『Untitled』と、どこかとても似たヴァイブレーションを感じたのですが。

GE:ああ、もちろん、Saultのことは知ってるよ。でも……んー、どうだろう? 俺たちのバックグラウンドがとても似たものであるのは知っているけどね。彼らはこの2年間でアルバムを3枚くらい出してるんじゃないっけ? いや、それとも最新作で4枚目なのかな? ともあれ、うーん(と笑顔まじりで考え込みつつ)、どうかなぁ〜、彼らの作品と俺の今作とに似たところはあるだろうか?……自分の口からはなんとも言えないね、とても答えにくい。その判断はリスナーのみんなにお任せするよ。というのも、俺は自分の音楽をそういう風に聴かないっていうか、これだけレコードとの間に距離がないと、客観的になれないんだ。でもまあ、Saultは大好きだし、それに俺はあらゆる音楽のファンであって。だからまあ、自分自身の音楽をほかの音楽と同じように聴くのはむずかしいんだ、自分に近過ぎるから。ただ、今回の作品はコラボレーションそしてそこにあるストーリーも含め、独自のユニークなものだと、俺はそう思ってる。

いまの俺は、こうして『Shout Out! To Freedom…』を作り終えて世に出して、本当に満足しているしハッピーなんだ。かつ、さて次は何をやろうか、とものすごくエキサイトしてもいる。で、これは自分のキャリアのなかで初のことなんだ(苦笑)、アルバムが出たばかりの段階で、すでに次のアルバムに取り組んでいるって状態は。

シャバカもそうですが、今回のアルバムにはジャズのフィーリングが注入されていますし、“3D Warrior”ではアフロなパーカッションがリズムを刻んでいます。ジャズやアフロという音楽は、主にヒップホップやソウル、ファンク、レゲエをミックスしてきたあなたにとって新たな挑戦だったのでしょうか?

GE:過去に出したレコードでも、ジャズ/アフロと軽く戯れたことはあったと思うけどね。たとえば『Smokers Delight』や『Feelin’ Good』といったアルバムを考えてもそうだし、それに前作『Shape the Future』ですら、間違いなくビッグ・バンド・ジャズのスタイルにトライしていたよね。けれども、今回のレコードはいままででもっともディープな作品だ、自分はそう感じている。うん、より深く入っていったね。さっきも話したように、大事なのは音楽を探究していく点にあるし、より深い領域に思い切って挑むことにある。たとえそのタイプの音楽をよく聴いて知ってはいても、実際にそれを作るのはまったく別の話であって。だから、俺は自分の限界を押し広げていけたらいいなと思っているし、プロダクション等々の面でもっと拡張したい。で、今回彼らのようなミュージシャン、そして素晴らしいアーティストたちと一緒に仕事できたことは、確実にその助けになってくれたと思う。

“GTP Call”における声、あれはグリーンティー・ペンだと思いますが、彼女は何を言っているのでしょう?

GE:(笑)あれは……俺たちが連絡を取り合ったのはパンデミック中のことでね、だからお互いにファン同士ではあるものの、実際に会ったことがなかった。というわけで電話をかけたけど取り損ねる、というすれちがいが何度かあって。携帯メールを送ったり、留守電メッセージを残したり……要するに、ちゃんと通話したことがなかったんだよ(笑)! もちろん、いまはもう彼女と話したことはあるけど、あの当時はお互いにミスりっぱなしで、実際に話したことがなかったっていう。で、たしかアリア(※GTPの本名)にヴォーカル・パートの一部をやり直ししてもらう必要があって、彼女はそれをやってくれた。その後で彼女がヴォイス・メッセージを送ってきてね、「その後どうなった? レコードの進展具合は? あのレコード、私もすごく気に入ってるんだけど」云々、問い合わせてきた。で、残されたそのメッセージを聞いて、俺は「これ、いただき。使わせてもらおう!」と思ったんだ(笑)。

(笑)なるほど。

GE:ハッハッハッハッハッ! あれは本当に、(インタールードとして「書かれた」ものではない)本物のメッセージ、とにかくとても正直な言葉だし、それだけではなく……聴き手をこのレコードにより近づけるものじゃないか、そう思ったんだ。要するに、リスナーもこのレコードの生まれたプロセスの一部になるような、そんな感覚を抱かせるんじゃないか、と。だってあれは、彼女があの曲の進行状況を確認しているって内容だからね(笑)。っていうか、あのメッセージをアルバムに入れたことすら、実は彼女はまだ知らないんだよなぁ、クハッハッハッハッ……

(笑)。そのグリーンティー・ペンやオシュン、ハイレ・シュプリームら客演は素晴らしいですが、あなたは彼らをどのようにして知るんですか? 世界のあちこちにちらばっている人びとですが、たとえばフェスでばったり行き会って知り合った、とか?

GE:いろいろだね。たとえばハイレ・シュプリームは、俺の友人の妻が、彼の歌のSpotify リンクを送ってきてくれて。あれは2019年8月のことだった。“Danjahrous”って曲を聴いたんだけど、途端に「こいつのことは探らなくちゃ」と思わされた(笑)。アメイジングなアーティストだと思ったんだよ、シャーデーやマーヴィン・ゲイのトーン、それにカーティス(・メイフィールド)も少し聴いて取れたからさ。自分が何を好きかは俺にはちゃんとわかっているし、「なんてこった、彼の声からそれらの要素を自分が引き出せたらどんなに素晴らしいだろう!」と思った。というわけで連絡先を突き止め、電話で話すことになって、そうしたら向こうも俺のファンだってことが判明してね。彼はブルックリン在住だと教えてくれて、こっちは「あ、っていうか俺、あと2週間後にブルックリンに行くんだけど」みたいな(笑)。そうしてブルックリンで彼と会い、一晩一緒につるんで、ご機嫌な一夜だった。で、俺は次の月、2019年10月に彼をイビサに呼んで5日間滞在してもらい、そこで8曲くらい共作したんだ。
 グリーンティー・ペンの場合は、彼女の“Ghost Town”っていう、イアーバッズ(Earbuds)がプロデュースしたあのトラックを聴いて、俺と友人との間で「彼女はすごい、一緒に何かやれたらクールだろうな」みたいなやり取りをしていたんだ。そうこうするうちにロックダウンが起きた、と。やっと彼女の連絡先を入手したわけだけど、さっきも話した電話のすれちがいが起きて、彼女から「うん、とにかくビート他の入ったフォルダか何かを送ってみて」って言われて、それで素材の入ったフォルダを送った。で、最初のラフなアイディアが戻ってきたんだけど、俺は「いや、君にはもっとマジにディープな歌を書いて欲しいんだ」と頼んでね。そもそも君と共演したかったのは、素晴らしい声の持ち主であるのはもちろんだけど、俺は君の歌詞の書き方が好きだしそこに惹かれているからだし、あの調子でやって欲しい、君はかなり深いテーマについて書いてるよね? と。というわけで彼女もやがて、あの“Wikid Satellites”を書いてこちらに返してくれたんだ。彼女も俺のファンでね、そこはコラボを進めるのに役立った(笑)。オシュンについて言えば、彼女たちとコラボしたいとずっと思ってきたんだ。かれこれ4年くらい追いかけていたよ。

そうなんですね!

GE:うん、なんとかフックアップしようとがんばっていたけど、なかなか軌道/タイミングが合わなくてね。やっとのことで彼女たちと話ができたのは2020年5月のことで、あの頃ちょうどジョージ・フロイド事件後の一連のデモ等が起きていて、それについて彼女たちと電話で話し合い、「(ロックダウン中のアメリカの)内側で起こっていることについて書いてくれないか」と言ったんだ。彼女たちはあの実に素晴らしい歌(“Breathe In”)を書いてくれたし、それからピップ・ミレット(“Isolated”)の場合は、彼女のマネージャーをちょっと知っていてね。マネージャーと「このプロジェクト向けにプロデューサーを探しているんだ」云々の話をしていて、そのうちに「彼女にうってつけの曲がある」と提案して、彼女に電話していろいろと話し合って。で、彼女はあの、ほかから切り離され、ひとりぼっちでいることについての非常に深い歌を作ってくれた。マーラTK(“Trillion”)、彼のことは知っていたし、俺はあのとき実際、ニュージーランドにいたんだ。あれはたしか2018年の終わり頃で、彼と一緒にウェリントンで共作&レコーディングをやった。だから知り合い方もいろいろなわけだけど……とくにいまのような時期は、色んなアーティストとコラボするのは興味深いと思う。というのも、俺はずっと信じてきたんだ――誰かとコネクトして何か一緒にやりたいと思い、それが(パチン、パチンと指をスナップさせながら)とんとん拍子で楽に進めば、それはきっと起きるべくして起きたコラボだったんだろう、と。
 過去数年で気づいたのは、コラボレーションが本当に美しい成果を生んでいるってことでね。我々は一種の「ゾーン」のなかにいる感じがするっていうか、俺たちはコネクトし、曲を書き、人びとと恊働することについて一種グローバルな考え方をしている。もう、自分の生きるコミュニティや近隣エリアの人びと、知り合いだけに限らないっていう。だって、俺は世界中の音楽を聴いているんだしね。うん、そこもあるんだろうな。先に出た「長きにわたり音楽作りへの関心をどう維持するのか?」という質問だけど、その答えには新たなアーティストを見つけ出すこと、彼らとコネクトし音楽的な冒険に一緒に乗り出すこと、そこもあると思う。

今回は、アルバムの曲数が15曲と多く、これは『Smokers Delight』以来の多さなのですが、しかしあのアルバムはほとんどがインストで、今作はほとんどが歌(ないしはラップ)があります。そう考えると、『Shout Out! To Freedom…』はここ20年のなかではもっとも特別な力が注がれているのかもしれませんね。あなた自身はどう思われますか? クリエイティヴ面での一種のターニング・ポイント的な作品でしょうか?

GE:ああ、確実にそうだと思う。というのも、今回の旅路で得たのは――この作品のために作った音楽は、パンデミック中ですら作業していたから、かなりの量になってね。それらの音源をすべて携帯に入れ、ビーチまで出かけてジョイントに火をつけ、聴いてみたんだ。で、思ったよ、「……これは2枚のアルバムだなって」って。

(笑)。

GE:(笑)俺としても驚いたし、オーライ、さて、どうしよう……と考えた。どの音源を2枚のどっちに入れるか、曲の居場所を見極めなくてはならなかったし、それ自体がひとつのちょっとした謎解きのようなものだった。でも、いまやこうして1枚まとまったわけだし、いままさにもう1枚に取り組んでいるところなんだ。それが『Shout Out! To Freedom…』パート2的なものになるのか、その正体は自分にもまだわからないけれども、とにかく取り組み続けているし、だからなんだ、俺がこの「バブル」というか、「フロー」と呼んでくてれもいいけど、そこから出ずにいるのは。とにかくこのクリエイティヴな状態にノって動き続けているところなんだ、何かが起こっているからね。それは流れ続けている。だから、間違いなく俺は以前以上にインスパイアされているけれども、いまは――アルバムを作るときというのは、最終段階に入ると、俺には手放すのが実にむずかしかったりするんだよ。いったん世に送り出してしまったらそれまで、だからね。ところがいまの俺は、こうして『Shout Out! To Freedom…』を作り終えて世に出して、本当に満足しているしハッピーなんだ。かつ、さて次は何をやろうか、とものすごくエキサイトしてもいる。で、これは自分のキャリアのなかで初のことなんだ(苦笑)、アルバムが出たばかりの段階で、すでに次のアルバムに取り組んでいるって状態は。こんなことは、いままで一度もなかった。で、俺としても「ワオ、こりゃすごいぞ、グレイト!」って感じだし(笑)、うん、いま、たしかにインスパイアされているところだね。

次作を楽しみにしています! 質問は以上です。素晴らしいアルバムですし、ファンも気に入るのは間違いないと思います。本日はお時間を割いていただき、本当にありがとうございました。

GE:応援、ありがとう。本当に、君たちには感謝しているよ。すごく、すごくありがたく思ってる。

了解です。どうぞ、お体にはお気をつけて。

GE:ああ、気をつけるよ。近いうちに、いつかまた日本に行ける日が来たらいいなと俺も思っているからさ!(と合掌する)

もちろんです、日本のファンも楽しみにしています。ありがとうございました!

GE:サンキュー&ビッグ・ラヴ! バーイ!

interview with Jon Hopkins - ele-king

 60年代のカウンター・カルチャーの夢のいくつかは、今日では先進国においてそこそこ普通になっている。たとえば大麻の合法化(日本は除く)、同性婚(日本は除く)、そして瞑想(日本も含む)——で、この話はジョン・ホプキンスに繋がる。その昔ブライアン・イーノとともにコールドプレイをプロデュースしたこともあるホプキンスは、最初は「クラシック・ピアニスト上がりのポップ・エレクトロニカ/ポップ・アンビエントの騎手」として注目され、〈ドミノ〉レーベルを拠点としつつ、インディとテクノとアンビエントが合流する領域において幅広いリスナーに支持された。ことに母国のイギリスでは、ホプキンスは(アンダーグラウンドではなく)ポップ・フィールドで活躍するビッグネームのひとりである。
 ホプキンスの特徴はクラシック音楽を経由したロマン主義的な作風にある。彼の作品は総じて叙情的で、いたって情熱的で、物語性を有している。まあ、手短にいえば劇的なのだ(つまりヴァーティカル=垂直的ではない)。それはエレクトロニカ/アンビエント/ダウンテンポに焦点を当てた2008年の出世作『Insides』にも、ダンサブルな展開を見せた2014 年の人気作『Immunity』にも言えることで、高い評価を得た2018年の『Singularity』もまた起伏に富んだホプキンスらしい作風ではあったが、彼はこの内省的なアルバムにおいて毎日欠かさずやっている瞑想からのインスピレーションを具現化した。超自我的なトランシーなヘッド・ミュージックがその作品では意識的に追求されているわけで、今回の新しいアルバムはそれをさらに突っ込んだもの、それは精神の治癒としての音楽で、「サイケデリック・セラピー」という直裁的な言葉を表題としている。
 サイケデリックという文化も60年代の産物で、LSDなるドラッグを触媒にしたカウンター・カルチャーの一部だった。それこそジョン・レノンが「いま見えている世界は誤解」と歌ったように、違った世界を見ることは世界観を相対化することにつながる。そこでホプキンスだが、彼はどうやら今回はドラッグの力を借りずに違った世界を体験し、そしてそれをリスナーとシェアしたいと思っている。とはいえ、ホプキンスの「サイケデリック」はカウンター(抵抗文化)ではない。多くの現代人とりわけ企業人に求められているもののひとつだったりする、しかもわりと切実に。(ポポル・ヴーがカフェ・ミュージックになる日も近いだろう)
 アルバム『ミュージック・フォー・サイケデリック・セラピー』の制作プロセスはじつに興味深い。それは彼が2018年にエクアドルのアマゾン流域の地下60メートルに広がる巨大な洞窟で数日間過ごしたという体験に端を発している。以下、インタヴューのなかでホプキンスはその体験とコンセプトについて詳説している。

ぼくは幸運にもサイケデリックの世界へ導かれ、それを体験することによって音楽にも良い影響がでたんだ。だからサイケデリックな体験を通してセラピー的なサウンドトラックを作りたいと思ったしね。

今日はお時間を作っていただきありがとうございます。とても美しく、そして体験的でリスナーに違う世界を見せようとしている音楽だと思いました。

JH:そんな風に言ってもらえて光栄だよ。そういう意図でこのアルバムを作ったから。

あなたの新作を聴きながらまず思ったのは、21世紀の今日において、サイケデリック・カルチャーはどのように有効なのかということです。というのは、60年代にせよ90年代にせよ、ドラッグ体験は人生を見つめ直す契機、かなりインパクトのある契機として広がりました。自分の生き方は間違えていた、人生はこんなものじゃない、みたいな。しかしながら、資本主義に人生が規定されまくっている現代では、生き方の選択がかつてのように多くはありません。こんな時代において、それでもサイケデリックにこだわるあなたに興味を覚えて、今回は取材のお願いをさせてもらいました。

JH:わかった。

そもそもクラシックを学んでいて、初期の頃は綺麗めなエレクトロニカやダウンテンポなどを作っていたあなたが、どこでどうしてサイケデリック・カルチャーに惹かれていったのか興味があります。前作『Singularity』においては瞑想が重要だったと話してくれましたが、何がきっかけで、そしてどのようにしてカルロス・カスタネダやテレンス・マッケナ(※90年代初頭に注目されたDMTなどの幻覚作用の研究者。新作のコンセプトにおけるキーパーソン)の世界へと進入していったのでしょうか? 

JH:ぼくは幸運にもサイケデリックの世界へ導かれ、それを体験することによって音楽にも良い影響がでたんだ。だからサイケデリックな体験を通してセラピー的なサウンドトラックを作りたいと思ったしね。君が述べたように、いまのサイケデリック文化は60〜90年代とは違っていて、現代では科学主導でサイケデリック体験をセラピー、そして薬として健康へアプローチする動きが出てきている。その体験は人びとを開放するけど予測もしがたく、これらの体験による治療の最適な方法はまだ定かではなくて、もしネガティヴな方向へ行ったら危険だからね。
 君が言うように、資本主義のなかで人びとは仕事によってメンタルヘルスが侵されている。人びとの単調な毎日によるメンタルヘルス問題は深刻で、メンタルヘルスはまだ開拓が進んでいない分野だと思う。ただ毎日薬を与えれば良くなるものでもないしもっと複雑なものだよ。化学物質による脳への作用だけでなく、いまサイケデリック体験による純真さ、喜びなど人びとが自分の心と再び繋がれるアプローチが必要とされている。こういった流れのなかでぼくは音楽を作る役割があると思うし、ぼくの音楽を聴いて他のアーティストが影響を受けてさまざまな音楽を作ってくれたらいいと思うよ。脆弱な立場の人びとにはさまざまなタイプの音楽が必要だからね。

そしてあなたはアマゾンの巨大な洞窟群にたどり着いた。そのときの模様は今作のブックレットに記されていますが、とても興味深かったです。あなたは洞窟のなかで、細いロープを頼りに60メートル下の地下世界に降りていった。本当に危険な冒険だったと思うのですが、そこであなたはいままで経験したことのない静かな世界に出て、日光の届かないその場所で、風変わりで美しい動物たちに囲まれながら4日間過ごしたそうですね。そこで得られた音世界がこのアルバムの出発点になったということですが、まずはその4日間についてもう少し詳しく教えてください。そこはいったいどんなところで、どんな動物たちがいたのでしょうか?

JH:2018年に洞窟へ誘われて数日間滞在した。そう、この経験がアルバムの出発点となったんだ。誘われた際に、「面白そうだな」と思ってすぐに行くことを決めた。最初はどんなところか深くは考えなかった。いろいろと体験するのが好きなので、どんな場所か行ってみて実際に驚いてリフレッシュできるような体験がしてみたかった。細いロープをつたって60メートル下の暗闇に向かって降りていくのはとても恐怖を感じたし、そこは行く前に想像していなくてよかったよ(笑)。下に降りると、まず細い道を進まなければならず、その後メインエリアとしてキャンプできる広くてとても美しいところに到達した。そこは人類に荒らされた形跡もなくてとても静かな場所だった。土は柔らかくテントも立てられて非常に快適にキャンプができたんだ。本当に魅惑的で素晴らしい場所だったのでたくさんの音楽へのインスピレーションを得ることができたね。

あなた以外にも神経科学者をはじめ数人いたようですが、衣食住など、どのように生活していたのでしょうか?

JH:ぼくらは合計12人のチームだった。まず安全な旅へと導いてくれる洞窟を知り尽くした頼りになるガイドたちがいた。誰も経験したことのない旅だったので彼らの存在はとても心強かった。それから写真家、神経学者、アーティストが2名、他のミュージシャン、そしてぼくとさまざまなバックグラウンドでチームは編成されていた。
 実際そこで3泊4日過ごしたんだけど、キャンプサイトから15分ほど歩くと、1カ所だけ、地上の森に穴が空いているところがあって、昼になるとそこから日光が差し込むんだ。それ以外は完全な暗闇のなかだったんで、キャンドルや懐中電灯の灯りで過ごした。一筋の光が差し込むその場所はとても神秘的で美しくかったな。毎日のようにそこに通った。そんな非日常の世界を積極的に受け入れて探索したんだ。
 毎日ハイキングやクライミングもしたけど、キャンプでただ座って瞑想したり、ゆっくり過ごしたりもした。写真家は写真を撮らなければいけないので動きまわっていたけれど、ぼくは洞窟の音を録音する作業以外にはとくにやらなければならないこともなかったし、それも1時間くらいで終わる作業だったので、他の時間はアクティヴに出かけるのとリラックスすることが半々くらいだったね。ぼくはスピーカーを持ち込んで洞窟の自然形状に音を反響させたものを録音したんだ。
 食事はガイドの人たちがドライフード、缶詰、インスタントラーメン、パスタなどを持参して提供してくれた。洞窟暮らしは楽しかったし、洞窟の奥へはハイキングやクライミングをしに行ったりして、キャンプに戻って食べた食事はとても美味しかったし、なんとか快適に過ごしたよ。

そこでは何か幻覚を促すようなことはされたのですか

JH:いや、まったく。ぼくは普段もそういった行為はとくにしないしね。現地の先住民族は洞窟で儀式としてアヤワスカを使う習慣があるんだけど、ぼくたちはトライしなかった、というか、したいという欲望もなかったよ。ぼくは完全にシラフな状態で洞窟での出来事を感じたかったし、じっさいにとても貴重な体験になった。

それは、あなたのこれまでの人生もっとも強烈なエクスペリエンスだったと言っていいのでしょうか?

JH:うん、その通りだね。過去に冬山に登るなど冒険したことはあるけど、地下へ行くのは初めてだったから。 

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細いロープをつたって60メートル下の暗闇に向かって降りていくのはとても恐怖を感じたし、そこは行く前に想像していなくてよかったよ(笑)。下に降りると、まず細い道を進まなければならず、キャンプできる広くてとても美しいところに到達した。そこは人類に荒らされた形跡もなくてとても静かな場所だった。

アルバムのなかには水の音が入っていますが、これは水が流れている音なのですか? ほかにもどんな音が録音されたのでしょう? 鳥の声のような音もありますよね?

JH:アルバム前半を構成する洞窟のトラックで聞こえる自然音は、あそこで録音されたものなんだけど、これはぼくが録音したものではない。同行したメンダル・ケイレンという神経学者、彼は野外録音のプロでもあるので、彼の専門機材を使用して録音したものなんだ。彼は毎朝早起きしていろいろな音を撮りに出掛けていた。。
ぼくは持ち込んだPCでクリスタルボウルのようなサウンドをいち音だけ出し、50メートルほど離れた洞窟のむこうの端で反響した音をメンダルの機材によって録音した。アルバムのCaves(洞窟)というトラックを聴くと最初に大量の水が流れる音が聴こえて、これは洞窟を削った川の音。その水が洞窟に注がれ、鳥の声へと続き、新たにひとつの音が聴こえてくると思うけど、これが構成部分の始まりなんだ。

アルバムは あなたのこの体験——洞窟を降りていって、もうひとつの世界に到着しての経験——を音楽によって表現しているということでしょうか?  つまり、このアルバムを通して我々はあなたが見てきた世界を疑似体験 できるかもしれないと?

JH:そうだね。ぼくの感情、エネルギーだけでなく、洞窟で見て、聞いて体感した奇妙さというかそこでの神秘的なものを表現しているんだ。ぼくはサウンドや音楽が専門なので、言葉としては洞窟での体験を完全には表すことができなくて、もちろん何を見た、どう感じたかは言えるけど。音楽は、洞窟内にある人類が手を加えてない完全なる生態系の存在、それに対するぼくの感情などを人びとにうまく伝えられるひとつの手段だし、なのでぼくは音楽を創造するよ。

セラピーという言葉が浮かんだ理由を教えてください。“幻覚セラピー”のセラピーとは、この音楽がたんなる快楽のためにあるのではないということ、そしてこの音楽の有益性をほのめかしてもいます。

JH:サイケデリック・セラピーは現在世界中でやっと合法的なセラピーの形として成り立ってきた。しかしまだサイケデリック・セラピーのなかで音楽の健康における有益性は語られていない。そういうなかでぼくが小さな波をおこし議論を広げていけたらと願うね。サイケデリック分野にむけた音楽制作として、ぼくが思うに今回のアルバムはふたつの役割があって、ひとつは過去制作してきたのと同様にアルバムそのものとしての役割。もうひとつはセラピー体験ができるサウンドトラックとして。音楽にはセラピーのパワーがあると信じているし、それは薬を併用するかしないかは関係なく、音楽そのものが心を開放するパワフルなセラピーとして、つまりサイケデリックそのものだよ。

強烈な幻覚体験をした人が作った音楽は、その強烈さの共有を望むあまり、過剰なトランスになってしまいがちだと思います。ぼくがあなたのこの作品で好きなところは、リスナーに対しての強制するところがないところです。無視することもできるという意味では、サティやイーノのアンビエント・コンセプトに近いものだとも言えると思いますか?

JH:いや、それはちょっと違うな。もし小さい音量でリラックスしながら寝転がって聞いていたらそういう(無視できるような)風にも捉えられるんだろうけど、ぼくはいいスピーカーで大きな音量で聴いてもらえるよう意図して制作したし、ぼくにとってこれはアンビエントではなく、感情的で情熱的な経験を伝えるものなんだ。もちろん作品を仕上げてリリースした後はどう聴いて捉えるかはリスナー次第だし、それはコントロールできないけど。もしぼくの意図を知りたいのなら、いいヘッドフォンで大音量で聴くことを薦めるよ。意図して盛り込んだビートもあるし、リラックスして聴く音楽ではないんだ。なのでもちろんバックグラウンド・ミュージックとして楽しむこともできるけど、アンビエントではない。イーノを例にあげたように無視することもできる興味深い音楽ではないね。ぼくの意図はアンビエントという方向ではなく、もっと激しいものなんだ。静かな部分もあるけれど後半はまったくそうではないし。なのでリスナーには大音量で聴いて欲しいな。

サイケデリック・セラピーは現在世界中でやっと合法的なセラピーの形として成り立ってきた。しかしまだサイケデリック・セラピーのなかで音楽の健康における有益性は語られていない。そういうなかでぼくが小さな波をおこし議論を広げていけたらと願うね。

今作を制作するうえでのイクイップメントで、なにか特別なことをされましたか?

JH:とくに何も変えてはいないよ。ぼくはエイブルトンというとてもクリエイティヴなプログラムを使っているけど、強いて言えば、3月のアルバム制作中にスタジオを引っ越したことかな。ちょうど曲を書いている途中、もう終盤だったけど。前のスタジオは小さな部屋で自宅から離れていたのでコロナ禍でも毎日通っていたけれど、3月に自宅に併設した新しいスタジオが完成した。素晴らしいスタジオでそこでアルバム制作を終えることができたのはとても嬉しかったよ。
機材に関してはMoogOneというシンセをよく使ってたし、事前録音されたバイオリンなどの処理されたアコースティック音源もTayos Cavesの隠し味として使った。弦や管楽器のオーケストラ演出みたいにね。隠し味なのであまりわからないだろうけど。また再サンプリングや処理された音(processed sounds)もたくさん使ったかな。アルバム後半でベル音が聴こえると思うけど、これはベルではなくてぼくがガラスを弾いて出た音を録音したものでね。自分のまありにある世界に心を開いて、まわりの音に興味を持って色々試したんだ。

最後の曲に入っている朗読は、テレンス・マッケンナの本からの言葉でしょうか? 

JH:これはラム・ダスの言葉だよ。これを入れた目的はアルバムの締めくくりとしてで、取り入れたのはラム・ダスの1975年の昔の言葉なんだけど、彼が語りかけているのは、本当の自分とは何なのか、自分の両極性、思考のさらに向こうに存在するものを見つけ、精神を落ち着かせて心を開き、精神のざわつきに惑わされず身体の、そして心の奥底にあるものに集中するよう、身体にとらわれずに本来の魂でいるように、と説いていると思う。意識のある思考ではなく心で生きるように、とね。

いまでも1日2回、20分の瞑想を欠かさずされていますか? 

JH:その通り、ぼくは毎日瞑想をしていて、ぼくがやってるのはトランセンデンタル・メディテーション(超越瞑想)なので、集中する必要はないし簡単にできるんだ。現代では常にいろいろなモノの誘惑があり、惑わされるけど、トランセンデンタル・メディテーションではマントラを心で唱なえがらも、いろんな思考が沸き上がってくるのはOKなんだ。そのほうが自然だし楽だよね。ただ座って集中しなきゃってのは何だかストレスがかかるしね。朝起きて20分、夜夕食前とかにもするから1日2回合計40分やっているんだけど、椅子にリラックスして座って、ただ自分の心のなかでマントラを繰り返すんだ。

いつからこの瞑想をしているのですか?

JH:トランセンデンタル・メディテーションをはじめたのは2015年から。その前は2001年から呼吸法を主にした禅スタイルにも近いヨガの瞑想法を学んで20年ほど実践していたけど。トランセンデンタル・メディテーションに出会ってからより楽に毎日瞑想できるようになった。瞑想をはじめたきっかけは、20代前半に慢性的疲労症候群にかかったことで、アドレナリンが出過ぎてしまう病気で、筋肉も疲れてたんだけど、21歳のときかな、なんとかしなくてはと必要に迫られ、内側から自分を癒す必要があると思って瞑想をはじめた。そこからぼくの人生に欠かせない一部となった。瞑想に出会ってなければいまのぼくはいなかったかも。

最後にリスナーへのメッセージをお願いします。

JH:そうだね、リスナーがこのアルバムを楽しんで聴いてもらって、この厳しい時代に新しい視点を持ってくれてそれが彼らの助けになれば嬉しいな。願わくば大音量で良い音質で聴いてもらいたいよ。楽しんでもらえればそれがいちばんだけど。

Local World x Foodman - ele-king

 夏に新作『Yasuragi Land』を〈Hyperdub〉からリリースした食品まつり。当初は8月・9月に予定されていたものの延期となってしまっていたリリース・パーティが、あらためて開催されることがアナウンスされた。
 11月13日、同日営業再開となる下北沢 SPREAD と HANARE にて開催。計12時間にもおよぶ特大のパーティとなる。前売特典はオリジナルのサウナ・タオル。100枚限定のようなのでお早めに。

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021

世界で最もピースな電子音楽家Foodmanの〈Hyperdub〉からの最新アルバム『Yasuragi Land』を祝し、Local Worldとのデイとナイトを合わせた計12時間に及ぶ特大コラボ・パーティへ変更&開催。
リリース記念品として前売特典にオリジナル・サウナ・タオルが付いてきます!

土着、素朴、憂い(潤い)をテーマに南は長崎、北は北海道、これまでFoodmanにまつわるアーティスト含む全国各地からフレッシュな全20組が集まる、デイのコンサートとサウナと水風呂の2会場のフロアに別れたクラブ・ナイトの2部構成、計12時間に及ぶロングラン・リリース・パーティ。

The world's most peaceful electronic musician Foodman's release party featuring his latest album "Yasuragi Land" from UK's finest label Hyperdub will be held at SPREAD Tokyo as a collaboration with Local World, a club and mode adventure party. With the themes of Indigenous, honesty and melancholy, the event, a total 12 hours long-running release party will consist of two parts: a daytime concert and club night divided into two venue floors, a sauna and a water bath with a total of 20 fresh artists and DJs from all over Japan from Nagasaki in the south to Hokkaido in the north including artists related to Foodman. A limited original sauna towel will be given as a special gift for ADV ticket purchasers.

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021
SAT 13 NOV 18:00 - 06:00 12H at SPREAD + HANARE
ADV ¥2,850+1D@RA w/ special gift: Yasuragi Land sauna towel *LTD100
DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

[前売リンク] https://jp.ra.co/events/1474555

DAY CONCERT@SPREAD 18:00 -

LIVE:
7FO
cotto center
Foodman
NTsKi
Taigen Kawabe - Acoustic set -

DJ:
noripi - Yasuragi Set -

18:00 (60) noripi - Yasuragi set -
19:00 (20) cotto center LIVE
19:20 (20) Taigen Kawabe LIVE
19:40 (15) set change noripi - Yasuragi set -
19:55 (30) NTsKi LIVE
20:25 (30) 7FO LIVE
20:55 (15) set change noripi - Yasuragi set -
21:10 (30) Foodman LIVE
21:40 END

CLUB NIGHT - SAUNA FLOOR@SPREAD 23:00 -

LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA

DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)
バイレファンキかけ子

23:00 (60) バイレファンキかけ子
24:00 (60) Midori (the hatch)
01:00 (60) JUMADIBA & ykah LIVE & DJ
02:00 (20) Power DNA LIVE
02:20 (20) NEXTMAN LIVE
02:40 (30) Foodman LIVE
03:10 (50) Baby Loci
04:00 (50) HARETSU
04:50 (70) D.J.Fulltono
06:00 END

CLUB NIGHT - COLD BATH FLOOR@HANARE* 22:00 -

LIVE:
hakobune [tobira records]
Yamaan
徳利

DJ:
Akie
Takao
荒井優作

22:00 (50) Yamaan LIVE
22:50 (30) 徳利 LIVE
23:20 (80) 荒井優作
24:40 (80) Akie
02:00 (50) hakobune LIVE
02:50 (70) Takao
04:00 END

artwork: ssaliva

- 前売特典*100枚限定: やすらぎランド・サウナ・タオル *会場にて受け渡し / ADV special gift *Limited to 100: Yasuragi Land sauna towel *pick up at the venue
- 再入場可 *再入場毎にドリンク代頂きます / A drink ticket fee charged at every re-entry
- HANARE *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo

食品まつり a.k.a foodman

名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine、Tiny Mix Tapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出された。その後Unsound、Boiler Room、Low End Theoryに出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo NingenのTaigen Kawabeとのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。

《最新作リリース情報》食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi land [Hyperdub / Beatink]
https://open.spotify.com/album/1160ly60lfUV9CpGOKLVhI?si=K2HictdARNuA9tfsvs5hxw&dl_branch=1

Local World

2016年より渋谷WWWをホームに世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャやクラブにおける最新のモードにフォーカスし、これまでに25回を開催。

Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 -外伝- w/ Machine Girl
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor
Local XX0 World - Reload -
Local XXMAS World - UK Club Cheers -
Local World x ether

https://localworld.tokyo

SUPER DOMMUNE Presents「DJ IN THE MIRROR WORLD 3」 - ele-king

 もうすぐ投票日だ。同10月31日はハロウィーンでもある。今年も渋谷区は「バーチャル渋谷」への参加を呼びかけている。「バーチャル渋谷」って何? それは、「cluster」というプラットフォームで体験することができる “ミラーワールド”。簡単に言ってしまえば、現実の渋谷をスキャンすることによって生み出された仮想世界だ。
 ということで、昨年のハロウィーンから「DJ IN THE MIRROR WORLD」という刺激的な試みを実践してきた “メタヴァースの使徒” SUPER DOMMUNE が今年もスペシャルな企画を用意してくれた。
 第1回ではエレン・エイリアン、サージョン、ケン・イシイ、ダーシャ・ラッシュが、第2回ではニーナ・クラヴィッツ、Rebekah、Licaxxx が出演している同企画だが、今回の「3」では、なんと、満を持して石野卓球が登場! 石野卓球がアヴァターとなり仮想のスクランブル交差点でDJ、これはかつてないイヴェントになるだろう。
 ちなみに10月29日発売の『ele-king臨時増刊号 仮想空間への招待──メタヴァース入門』では、SUPER DOMMUNE を主宰する宇川直宏氏のインタヴューを掲載しています。めちゃくちゃおもしろい内容のインタヴューですので、ぜひそちらもチェックしていただけると嬉しいです。
 10月31日、投票を済ませたら「バーチャル渋谷」へGO(参加方法などは下記を)。

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DJ IN THE MIRROR WORLD 3
実 施 概 要

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名 称:SUPER DOMMUNE Presents「DJ IN THE MIRROR WORLD 3」
日 時:2021年10月31日(日)22:30-24:00
DJ:石野卓球(電気グルーヴ)
VJ:DEVICEGIRLS
VRDJ:DJ SHARPNEL
VR STREAMING:UKAWA NAOHIRO(DOMMUNE)

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バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス 2021
実 施 概 要

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名 称:バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス 2021
日 程:2021年10月16日(土)~10月31日(日)
場 所:渋谷区公認配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」
主 催:KDDI株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン、一般財団法人渋谷区観光協会
後 援:渋谷区
協力パートナー:東急株式会社、東急不動産株式会社、東京メトロポリタンテレビジョン株式会社、株式会社SHIBUYA109エンタテイメント、株式会社 ローソンエンタテインメント、ChargeSPOT、アドビ株式会社

公式サイト:https://vcity.au5g.jp/shibuya/halloween2021
公式SNS:<Twitter>‎@shibuya5g
<Instagram>@shibuya5g
<YouTube>渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト

参加方法:
バーチャル渋谷は、VRデバイス、スマートフォン、PC/Macからご参加いただけます。
clusterの無料アカウント作成と、ご利用されるデバイス用のclusterアプリのインストールが必要です。
clusterアカウント作成:https://cluster.mu/
clusterアプリダウンロード:https://cluster.mu/downloads

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石野卓球(電気グルーヴ)
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1989年にピエール瀧らと"電気グルーヴ"を結成。1995年には初のソロアルバム『DOVE LOVES DUB』をリリース、この頃から本格的にDJとしての活動もスタートする。1997年からはヨーロッパを中心とした海外での活動も積極的に行い始め、1998年にはベルリンで行われる世界最大のテクノ・フェスティバル"Love Parade”のFinal Gatheringで150万人の前でプレイした。1999年から2013年までは1万人以上を集める日本最大の大型屋内レイヴ"WIRE"を主宰し、精力的に海外のDJ/アーティストを日本に紹介している。2012年7月には1999年より2011年までにWIRE COMPILATIONに提供した楽曲を集めたDisc1と未発表音源などをコンパイルしたDisc2との2枚組『WIRE TRAX 1999-2012』をリリース。2015年12月には、New Orderのニュー・アルバム『Music Complete』からのシングルカット曲『Tutti Frutti』のリミックスを日本人で唯一担当した。そして2016年8月、前作から6年振りとなるソロアルバム『LUNATIQUE』、12月にはリミックスアルバム『EUQITANUL』をリリース。2017年12月27日に1年4カ月ぶりの最新ソロアルバム『ACID TEKNO DISKO BEATz』をリリースし、2018年1月24日にはこれまでのソロワークを8枚組にまとめた『Takkyu Ishino Works 1983~2017』リリース。現在、DJ/プロデューサー、リミキサーとして多彩な活動をおこなっている。
https://takkyuishino.com

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DOMMUNE
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現代日本のアートシーンの中でも際立った存在感を放つ宇川直宏が、ソーソャルストリームの時代を見据えた新たな文化の発信拠点として、2010年に開局させた日本初のライブストリーミングスタジオ『DOMMUNE』!! SNSの夜明けと言われた時代に「ファイナルメディア」として忽然として現れ、百花繚乱のライブストリーミング番組の中でも、圧倒的な番組の質とビューワー数を誇り、開局以来、世界各国から様々なゲストが来日のたびに出演する唯一無二の文化プラットフォームとして存在し続けている。あのロンドンを拠点とするミュージックチャンネルBOILER ROOMにも影響を与え、BOILER ROOM TOKYOの日本支局もDOMMUNEが担当している。このように『DOMMUNE』は現在世界に溢れているサウンド&アートストリーミング、また、カルチャーストリーミングのほとんど全ての雛形を作ったと言っても過言ではない。現在まで9年間にわたって配信した番組は約4000番組 / 約7000時間 / 150テラ、トータル視聴者数一億を超え、従来の「放送」や「出版」そして「広告」という概念やそのフォーマットが破綻していく現代において、ライブにおける動画配信の実験を重ね、新たな視覚コミュニケーションの可能性を日夜革新的に炙り出し続けている。今もなおその影響力は衰えず、開局10周年を第二章とし、最前衛テクノロジーと共にUPDATEを図り、ファイナルメディア『DOMMUNE』の進化形態『SUPER DOMMUNE』へと展開した。2021年、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
https://www.dommune.com/

DEADKEBAB & PSYCHIC$ - ele-king

 新顔を紹介します。かつて一瞬世界を賑わせたバンド、トリプル・ニップルズのヴォーカリストだったDEADKEBABとトラックメイカーのPSYCHIC$、そしてDJのALEX(アレックス・フロム・トーキョーではない)の3人からなるラップ・グループ、デッドケバブ&サイキックス。いま巷話題です。
 で、彼らの7インチが11月3日、限定300枚でリリースされる。ジャケットのアートワークはヴィジュアル・アーティストとしても活動するDEADKEBAB。かなりポップでストレンジで、面白いです。わずか300枚なので、どうぞお早めに。
 
DEADKEBAB & PSYCHIC$ - HUSTLER

DEADKEBAB & PSYCHIC$ - Pussy Cat(screwed) teaser



DEADKEBAB & PSYCHIC$
Hustler / Pussy Cat

フォーマット:7インチシングル

レーベル:Paik’n Pô Productions

購入はこちらまて→ https://deadkebab.theshop.jp

新時代の扉がいま開かれる──
ビジネス、社会、ゲーム……私たちの生活はどう変わるのか?

最近ニュースなどでよく見かけるようになった “メタヴァース”。
オンライン上の3D仮想空間のことを指すそれは、“インターネットの後継” とまで呼ばれている。
はたしてそれは私たちにどのような影響を及ぼすのか?

セカンドライフ、VRChat、cluster、「バーチャル渋谷」、フェイスブック、Oculus Quest 2、ブロックチェーン、NFT、『フォートナイト』、『Roblox』、MMORPG、『竜とそばかすの姫』、『ソードアート・オンライン』……

いま多方面から注目を集める “メタヴァース” を初心者向けに解説、
様々な角度からその魅力に迫る!

インタヴュー:三淵啓自、宇川直宏(DOMMUNE)、國光宏尚&新清士(Thirdverse)、今井晋、TREKKIE TRAX、池上英子、藤嶋咲子
コラム:飯田一史、小谷真理、斉藤賢爾、白石嘉治、巽孝之、田中 “hally” 治久、藤田直哉、三田格、エフゲニー・モロゾフ


contents

◆interview
三淵啓自 メタヴァースが変える世界──先駆者セカンドライフの持続性から未来を探る
宇川直宏 無限の幻想を共有すること──ヒッピー・ムーヴメントが果たせなかった夢の続き
國光宏尚&新清士 来るべき「オアシス」への道筋──SNSとゲーム、VR、ブロックチェーンの交差がメタヴァースを実現する (取材:葛西祝)
今井晋 スラングと身振り手振りの重要性──『フォートナイト』が脚光を浴びた理由
TREKKIE TRAX クラブ・カルチャーをもう一回やり直している感覚──VRChatでワールド・ツアーを敢行、DJ集団が目撃した景色とは
池上英子 人間は古来よりずっとアヴァターを使ってきた──文明そのものを成り立たせるヴァーチャルの力
藤嶋咲子 「声」の熱量を、意志を表現する──ヴァーチャル・デモの可能性

◆how-to
メタヴァースを体験するには何が必要? 事前に用意しておきたいもの
実際にメタヴァースを体験してみよう① ヴァーチャルSNS/ソーシャルVR編
実際にメタヴァースを体験してみよう② オンライン・ゲーム/ゲーム型コンテンツ編

◆column
巽孝之 『スノウ・クラッシュ』使用前後──ニール・スティーヴンスンのSF的想像力
斉藤賢爾 ブロックチェーン、NFTと個別に構築されるメタヴァース
田中 “hally” 治久 プレヒストリック・メタヴァース──「ごっこ遊び」はいかにして「メタヴァース」へと至ったか
藤田直哉 『竜とそばかすの姫』と日本的メタヴァース
飯田一史 アインクラッドはなぜ特別なのか──『ソードアート・オンライン』におけるアヴァターの「顔」
白石嘉治 「分身」の夜のうた──VRの淵源、アルトーの「潜在的現実」によせて
小谷真理 現実における性差の歪さをいかに変えることができるか──漫画『ルサンチマン』が突破した壁
三田格 異世界へ転生すると何が起きる?──メタヴァースの先にあるもの
エフゲニー・モロゾフ もうひとつのデジタル世界は可能だ──プライヴァシーの向こう側 (訳:土田修)

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
Yahoo!ショッピング
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
honto
e-hon
Honya Club
mibon本の通販(未来屋書店)

P-VINE OFFICIAL SHOP
SPECIAL DELIVERY

全国実店舗の在庫状況
紀伊國屋書店
三省堂書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂
TSUTAYA
未来屋書店/アシーネ

Interstate - ele-king

 いまの、アンダーグラウンドなハウス・シーンの盛り上がりを語るうえで、〈Shall Not Fade〉に言及しないわけにはいかない。サウンドパトロールでも紹介したが、これほど継続的なリリースをこなしながら、一定のクオリティを保つレーベルはそうそう見当たらないだろう。バルトラや DJ ÆDIDIAS のように、インターネットから勃興したハウス勢にクリエイティヴィティを発揮する場を与え、あるいはフランケル&ハーパーやラグジュアリーのようなアップカミングな才能を紹介し、そしてシンシーやシャドウ・チャイルドのように既にキャリアを築いているDJたちの作品もリリースする。いやはや、これはもう隙が見当たらない。
 
 そんな粒ぞろいのレーベルのなかでひときわ才能を輝かせていると感じるのが、ドイツのDJ、プロデューサーのインターステートである。彼を紹介するテキストは日本語はおろか英語でも見つからなかったので、彼について知るべくインスタグラムを拝見したところ、そこには「プロのマインクラフト・プレイヤー」、そして蛇足かのごとく「インターステートとして音楽も作っているよ」とあった。ポストにはスケートボードかヴァイナルの話題しかない。この良い意味で適当かつ不真面目な感じ、というよりもカジュアルな雰囲気はなんだか共感してしまう。彼は新世代のハウス・プロデューサーなのだ。さっそく紹介しよう。

 もともとはDJスワッガー名義でモダンなUKガラージ・トラックをいくつかリリースしていたが、対して今回のインターステート名義による『Dominion Swing』は、ディープ・ハウス、あるいはローファイ・ハウスに仕上がっており、UKガラージめいたベースラインやファンキーなメロディ、そしてときおり挟まれるアンビエント・トラックなど折衷的な部分はありつつも、彼の作品においては、かつてないほどにストレートな4つ打ちのハウスを感じる作品になっている。
 
 アルバムのアートワークに注目してみてほしい、いわゆる「ニュートンのゆりかご」を模したものに見えるが、この玉どうしがカチカチと音をたて衝突を繰り返しながら躍動するさまは、そのまま今作のムードに通ずるように思える。オープナーの “Doublet Doureet” の小気味よいベースライン、あるいは “Two To Get Ready” のパーカッシヴなビートに耳をそばたてると、えんえんとぶつかり合い反復する玉どうしの光景をはっと想起させられるのは僕だけだろうか。まさに繰り返すのみの「ニュートンのゆりかご」を、意味なくぼうっと見つめてしまうかのように、僕はこのハウス・アルバムの音に気づいたら没入してしまう。そしてこれを反復的なビートという視点から見たとき、今作におけるベストは “Appliance” ではないだろうか。僕の鼓動と同期するかのような繰り返しのリズムには、踊らせる要素があり、同時にスピーカーをまえにして黙って聴き込みたくなるようなデリケートな側面もある、素晴らしいディープ・ハウスに仕上がっている。

 ちなみにヴァイナルでは2枚組で、各盤の最後には、A面に “Habitat”、B面に “Misty”、C面に “Bubblebath”、D面に “Yosemite” が配置されている。インターステートは、どんなに素晴らしいハウス・ミュージックとて、それがフルレングスだと集中力が維持し難いことをよく知っているようだ。それぞれ盤の最後にアンビエント、ダウンテンポ、あるいはインタールードがあることによって、僕らがときおり休憩をはさみながら、この細部までこだわられた上質なハウス・ミュージックを、思いゆくまで堪能できるよう配慮している。

 ハウスにおける反復という作法を踏襲しながら、ここまで飽きさせず最後まで聴かせるLPを作ったのは脱帽もの。それもこのLPはヴェテランによるものではなく、まだまだフレッシュな若い才能によって提供されているのだ。このサウンドを聴いていると、受け皿となっている〈Shall Not Fade〉の審美眼が間違いないことがよくわかり、同時に、このレーベルを基点とした若い世代におけるハウス、あるいはディープ・ハウスの活況も感じられる。僕はこのスケートボードとヴァイナルを愛する青年から放たれる、カチカチと衝突を繰り返すかのような反復的なハウス・ミュージックに、不思議な没入と共感を感じてしまうのだ。

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