「CE」と一致するもの

LIQUIDROOM - ele-king

 新型コロナウイルスの影響により、現在すべての公演を中止している恵比寿のリキッドルームが、ふたたび訪れるだろういつかの日を願い、「We will meet again」なるプロジェクトを始動させている。その第1弾として企画されたのが、電気グルーヴおよび坂本慎太郎とのコラボを含むTシャツのリリース。幾多のすばらしい夜を演出してきた同会場でふたたび笑いあえる日を夢見て、このプロジェクトをサポートしよう。

◆リキッドのライヴ・レポ一覧
2018年6月13日 Autechre
2018年1月17日 坂本慎太郎
2017年12月9日 DYGL
2016年8月24日 The Birthday × THA BLUE HERB
2013年9月24日 Disclosure / AlunaGeorge
2013年5月1日 Andy Stott
2012年7月25日 電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん
2012年3月25日 トクマルシューゴ
2012年1月24日 Washed Out
2011年9月30日 Alva Noto & Blixa Bargeld
2011年9月22日 Mathew Herbert
2010年12月22日 神聖かまってちゃん
2010年1月9日 七尾旅人
2009年12月30日 ゆらゆら帝国、Hair Stylistics、巨人ゆえにデカイ


電気グルーヴ、坂本慎太郎と LIQUIDROOM によるこの2020年を刻む T-shirts を受注販売!

現在、LIQUIDROOM は世界中の音楽施設と同様に、新型コロナ・ウィルス感染拡大防止の協力のため、全公演の自粛をよぎなくされています。LIQUIDROOM ではこの惨禍が過ぎ去った後に、ふたたびこの場所で最高の音楽をともにする日を願ってプロジェクト〈We will meet again〉をスタートします。まずは LIQUIDROOM とも縁が深く、幾度もの伝説的な夜を作り上げてきたアーティストとメッセージ入りTシャツをリリースします。フジロックの出演も発表され、復活の機運高まる電気グルーヴとの「NO LIQUID, NO DENKI」Tシャツ。そしてリキッドで予定されていたワンマンが延期となってしまった坂本慎太郎との「Let’s Dance Raw」Tシャツ。さらに LIQUIDROOM の「We will meet again」。本日正午より受注販売をスタート、詳しくは公式ウェブサイトにて。

受注販売期間:2020年5月1日(金)12:00 ~ 2020年5月31日(日)22:00
※商品は6月末頃に順次発送を予定しております。

販売種類:

LIQUIDROOM We will meet again T-shirts ¥3,500
LIQUIDROOM We will meet again T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)1個 ¥4,000
LIQUIDROOM We will meet again T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)2個 ¥4,500


LIQUIDROOM × 電気グルーヴ NO LIQUID,NO DENKI T-shirts ¥3,800
LIQUIDROOM × 電気グルーヴ NO LIQUID,NO DENKI T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)1個 ¥4,300
LIQUIDROOM × 電気グルーヴ NO LIQUID,NO DENKI T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)2個 ¥4,800


LIQUIDROOM × 坂本慎太郎 Let’s Dance Raw T-shirts ¥3,800
LIQUIDROOM × 坂本慎太郎 Let’s Dance Raw T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)1個 ¥4,300
LIQUIDROOM × 坂本慎太郎 Let’s Dance Raw T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)2個 ¥4,800

※LRロゴ缶バッチはリキッド公演時にバーカウンターにてドリンクと交換できます。

販売サイト:https://liquidroom.shop-pro.jp

問い合わせ先:LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

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We will meet again
LIQUIDROOM 2020

音楽、そしてライブを愛するすべてのみなさまへ
-再会できる未来のために-

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界中の人々が、いまだかつてない経験を強いられていることと思います。

これまでアーティストたちの表現の場として活用していただいた LIQUIDROOM も深刻な問題に直面し、出口の見えない日々に不安を感じています。

LIQUIDROOM は様々なカルチャーがひしめき合う新宿歌舞伎町でスタートし、恵比寿に移転して以来25年間、たくさんのアーティストの方々、ファンのみなさまと、かけがえのない瞬間・空間・時間を共有させていただきました。これはアーティストやそれを支えるスタッフ、そしてなにより音楽ファンのみなさまと作り上げてきた、一言では語り尽くせないたくさんの思いが込められた場所です。

本来、こんな不安定な状況であれば、LIQUIDROOM は音楽で、みなさまの不安な気持ちを率先して解消させたいところですが現状それもかないません。
しかし、今後、どんな険しい道が待ち受けているのか計りかねませんが、後ろは振り向かないことにいたしました。

すでに温かいお言葉やご支援の声をいただいく機会もありましたが、この惨禍が過ぎ去った後に、ふたたびこの場で最高の音楽とともに分かち合える瞬間を願い、今、みなさまのご協力をお願いしたいです。

アーティストの方々にもご協力をいただき、決して忘れられることができないであろう2020年をライブではなく言葉でTシャツに刻んでいただきました。

いつか笑って、あの時は……なんて話せる日を願って。

LIQUIDROOM

Have a Nice Day! presents Internet SCUM PARK - ele-king

 まさに今日にぴったりなタイトルのニュー・シングル「トンネルを抜けると」を5月6日にリリースする東京のバンド、Have a Nice Day! (通称ハバナイ!)が、その翌々日、5月8日にリリース・パーティを開催する。とはいえもちろんこの状況下だ、会場はオンラインである。まもなく新作の発売を控える COM.A曽我部恵一、KΣITO も出演。チケットは1000円ぽっきりとのことなので、ぜひ参加しよう。

Have a Nice Day! presents Internet SCUM PARK

2020年5月8日(金)
会場:インターネット
open 24:00
start 24:30
※オールナイト公演

チケット:¥1,000

チケット購入は Have a Nice Day! ホームページにてご確認ください
https://habanai.zaiko.io/_item/325864

出演者
Have a Nice Day!
COM.A
曽我部恵一
KΣITO

Clear Soul Forces - ele-king

 2012年リリースのアルバム『Detroit Revolution(s)』によってデビューし、これまで 2nd 『Gold PP7s』、3rd 『Fab Five』を経て、昨年(2019年)には4年ぶりのアルバム『Still』をリリースした、デトロイトを拠点とする4人組のヒップホップ・グループ、Clear Soul Forces。ゴールデンエイジとも呼ばれる90年代のヒップホップから強い影響を受けた、いわゆるブーンバップ・ヒップホップの流れにあり、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパにも根強いファンを持っている彼らであるが、今回リリースされたこのアルバム『ForcesWithYou』をもって、グループとしての活動に終止符を打つという。

 グループのメンバーでもあるメイン・プロデューサーである Ilajide に加えて、7曲目 “Watch Ya Mouth” にもクレジットされている Radio Galaxy が2曲プロデュースを手がける本作だが、Clear Soul Forces のトラックの肝となっているのは、やはりビート(=ドラム)の部分だ。以前、筆者が彼らのアルバム『Fab Five』のライナーノーツを書いた際に、Ilajide のサウンドに関して「A Tribe Called Quest の後期の作品などにも繋がるような、’90年代後半の空気を強く感じる」と表現したのだが、シンプルでありながらも非常に練られたドラムの音色とパターンに、シンセを多用したシンプルな上ネタ、そしてベースのコンビネーションによって極上のファンクネスが生み出されている。同じくデトロイト出身である故 J Dilla からの強い影響を受けているのは、彼らの過去のインタヴューなどからも明らかであるが、さらに4MCによる巧みなマイクリレーが乗ることで Clear Soul Forces にしか出しえないグルーヴが完成している。

 アルバムの幕開けを飾るバトル・チューン “Gimme the Mic” やオリエンタルな雰囲気漂うキャッチーな “Chinese Funk”、PVも公開されているリード曲の “Chip$” など、アルバムの軸となっている曲はいくつかあるが、全体的にはミディアム・テンポが貫かれ、一定のトーンで進んでいくのが実に心地良い。全体のテンションもアゲすぎたり、また極端にレイドバックしたりということもなく、個々のフロウの変化でコントラストをつけながら、彼らの好きなゲームやSF、アニメの世界観が見え隠れし、それと同時にヒップホップへの愛というものがストレートに感じ取れる。

 すでに個々にソロでの作品リリースや客演などを展開しており、今後はソロ活動がますます盛んになっていくであろう彼らであるが、いずれまたリユニオンを果たして、4人での新作を出してくれそうな気がしてならない。そんな思いの残る、まだまだ何かが続きそうな Clear Soul Forces のファイナル・アルバムである。

アナザー・プラネット──郊外の十代 - ele-king

「これからはもう恋人はオレンジ・ジュースだけ」

更年期を迎えたロックシンガー、
ありふれた住宅街で育った
パンクに恋した少女時代を述懐──
人生で大切なものの数々をたぐり寄せる

 何か私からのアドヴァイスはないのかって? うーん、特段見つからないのよ。でももし一つだけあるとしたらこんなとこかな。どうも昨今の若い人たちは、いえ、この点に関しては今の時代では多少お年を召した方々にもひょっとして当てはまるのかも知れないけれど、皆かなり、見た目がカッコよくなくちゃならないぞみたいに囚われ過ぎているのかも知れないわ。
 でもそんな必要余りないわよ。どうせ周りなんてそれほどあなたたちのこと気にかけたりなんてしていないから。 (本文より)

本国で大絶賛され、
一流のエッセイストであることを確立した
トレイシー・ソーンの自伝的エッセイ第二弾!

★この本に登場するアーティスト、バンド、作家、映画など

デイヴィッド・ボウイ スージー&ザ・バンシーズ セックス・ピストルズ スティーヴィー・ワンダー ジェームズ・ブラウン 10cc モンキーズ ビーチ・ボーイズ イーグルス カン マーヴィン・ゲイ アーチー・ベル&ザ・ドレルズ スリー・ディグリーズ スーパートランプ ストラングラーズ ザ・ジャム イアン・デューリー パティ・スミス ブルース・スプリングスティーン ジ・アンダートーンズ バズコックス ルー・リード ヒューマン・リーグ ポリー・スタイリン スウェル・マップス レインコーツ ザ・スリッツ クリッシー・ハインド スリーター・キニー ビキニ・キル サブウェイ・セクト エルヴィス・コステロ ザ・スペシャルズ シャム69 ディーヴォ XTC ジョイ・ディヴィジョン ニュー・オーダー ザ・キュアー マキシマム・ジョイ ピッグバッグ TVパーソナリティーズ バースデイ・パーティー ビョーク マリアンヌ・フェイスフル リッキー・リー・ジョーンズ ビリー・ホリデー J・G・バラード ジョン・アップダイク アルベール・カミュ ジャン・ポール・サルトル ジャック・ケルアック ジャーメイン・グリア 『郊外のブッダ』 『キャッチ22』 『ウィズネイルと僕』 モンティ・パイソン──などなど

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧

amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
honto

全国実店舗の在庫状況

紀伊國屋書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア

VirtuaRAW - ele-king

 これはすごい試みだ。沖縄のクルー「赤土」の呼びかけによる企画、50組以上の出演するオンライン・フェスティヴァルが5月3日から5月6日にかけて開催される。その名も「VirtuaRAW」。北海道から沖縄まで、全国15のクラブやライヴハウスが協働した取り組みで、合計40時間にもおよぶ配信を決行する。一度チケットを購入すれば、開催中いつでも閲覧可能とのこと。出演者などの詳細は下記を(すごいメンツです)。危機に瀕しているクラブやライヴハウス、アーティストたちによるすばらしい連帯、果敢なチャレンジを応援しよう。

VirtuaRAW (バーチャロー)
~ 40時間配信!音楽フェスティバル ~

日時:
2020/5/3 (日) 13:00 〜 5/6 (水) 5:00

視聴(チケット)料金:
[前売] ¥567- [当日] ¥1,000-

★チケット購入・イベント詳細はこちらから★
https://akazuchi.zaiko.io/_item/325705

北は北海道から南は沖縄まで、全国15会場のクラブやライブハウスが連動し、50組以上の豪華出演者を迎えて40時間に及ぶライブ配信を行います。

現在日本全国のクラブやライブハウスが自粛により存続の危機に直面している状況の中、それに直結するアーティストやクリエーターも窮地に追い込まれています。

また、音楽に関わらずさまざまな業種や人々が危機に直面している中でも創造的なモノを共有し、皆んなで協力してバトンを繋ぎ、家に居る時間はみんなで楽しんでほしい、という思いから「VirtuaRAW」と題して、オンライン音楽フェスティバルを3日間に渡って初開催いたします。

各地に居るアーティストが配信という形で集結する事が可能となり、視聴者もチケットを一度購入すれば開催中はいつでも閲覧可能となっています。

離れていても、きっと音楽やカルチャーを共感できる事を信じ、未知なる未来へのチャレンジへと一歩足を踏み出すため、今回の初開催にとどまらず、今後も開催していく予定です。

[会場一覧]

北海道旭川 / Club Brooklyn
東京 / Dommune
東京中野 / heavysick ZERO
東京町田 / FLAVA
神奈川江の島 / OPPA-LA
山梨 / 一宮町特殊対策本部
名古屋 / TRANSIT
京都 / OCTAVE KYOTO
大阪 / TRIANGLE
岡山 / 三宅商店
山口 / のむの
福岡 / Kieth Flack
沖縄 / output
沖縄 / 熱血社交場
石垣 / GRAND SLAM

[出演者 (A to Z)] ※追加出演者発表あり

■LIVE
赤土・伊東篤宏・孫GONG・鶴岡龍 a.k.a. LUVRAW・三宅洋平・B.I.G.JOE・BUPPON・Campanella・CHOUJI・cro-magnon・DAIA・DLiP RECORDS・electro charge・FUJIYAMA SOUND・HIDADDY・HIDENKA a.k.a. TENGOKUPLANWORLD・HI-JET・HI-KING TAKASE・I-VAN・ifax!・J-REXXX・K-BOMB・KOJOE・KOYANMUSIC & THE MICKEYROCK GALAXY・KURANAKA a.k.a.1945 feat. Daichi Yamamoto. Ume・LibeRty Doggs・MADJAG・MAHINA APPLE & MANTIS・MONO SAFARI・m-al・NORMANDIE GANG BAND・OBRIGARRD・OLIVE OIL & POPY OIL・OMSB & Hi`Spec・OZworld a.k.a. R`kuma・RICCHO・RITTO・RHIME手裏剣・SHINGO★西成・SMOKIN`IN THE BOYS ROOM・stillichimiya・Tha Jointz・U-DOU & PLATY・Zoologicalpeak

■DJ
光・BIG-K・Daichi・HI-C・K.DA.B・SINKICHI・SYUNSUKE・POWBOYZ・YASS fr POWER PLAYERZ・UCHIDA ・VELVET PASS ・4号棟

[INFOMATION]
Instagram @virtuaraw
Twitter @RealVirtua
Facebook https://www.facebook.com/events/2871947506225903/

ハッシュタグ
#VirtuaRAW #バーチャロウ #オンラインフェス #生配信

主催:AKAZUCHI

R.I.P. Mike Huckaby - ele-king

 COVID-19によってまたひとりの音楽家がこの世を去った。同じくデトロイトのエレクトロニック・ミュージックのコミュニティのひとり、デラーノ・スミスが治療費を募ったというが、彼のエージェントの発表によればマイク・ハッカビーは4月24日に永眠してしまった。25日は世界中のディープ・ハウス・ファンの多くがこの悲報に涙したことだろう。
 マイク・ハッカビーはデトロイトのダンス・シーンに1988年から関わっていたDJであり、プロデューサーであり、ディープ・ハウスのリジェンドである。近年はワールドワイドに活躍し、日本でもプレイしている。
 マイク・ハッカビーの名前が日本で知られるきっかけとなったのは、ごくごく初期のムーディーマンとセオ・パリッシュだった。96年〜97年ぐらいのことで、現在DJチーム“悪魔の沼”のメンバーであるドクター西村がこのあたりのあやしげな音源、つまりデトロイトのハウス・シーンの作品を片っ端から輸入していたのである。リック・ウェイドが主宰する〈Harmonie Park〉の12インチはそうしたなかに紛れていたわけだが、少数しか入ってこないので、たまたま手に入れることができた1枚は当時としてはとても貴重だった。いったいどんな連中なのか素性もわからずに、ぼくはマイク・ハッカビーの「Deep Transportation Vol. 2」を買った。90年代後半、〈Harmonie Park〉や〈M3〉といったレーベルは、アンダーグラウンドのなかのアンダーグラウンドであり、ミステリアスそのものだった。それは別の世界への扉のように思えたものだった。
 そしてたしかに別の世界があった。「Deep Transportation Vol. 2」にはハッカビーの初期の代表曲である“Love Filter”が収録されているが、野太いキックが特徴のこの曲は80年代初頭のディスコ/ファンクからのサンプリングで成り立っている。あるいは、デビュー・シングル「Vol. 1」におけるディープな反復による“Luv Time”においてもそうだ。ストイックでダークなループのうえに切り刻まれたディスコ・サンプルが一見脈絡なくミックスされる。ディスコの突然変異というか、派手さはないが気がつくとハマっているような、そうしたグルーヴ感がハッカビーのトレードマークだった。それは未来志向のデトロイト・テクノにはなかった感性であり、手法だった。前衛ジャズのファンでもあったというから、ほとんど即興的に作っていたのかもしれない。
 のちにぼくはハッカビーがデトロイトの郊外にあるレコード店〈レコード・タイム〉のダンス・コーナーを10年以上担当していたことを知って、その豊富な音楽の知識がどこかから来たのかを少し理解した気になった。〈レコード・タイム〉にはいちど行ったことがある(それも無謀なことにバスで)。渋谷のタワーレコードの2フロアほどある全ジャンルを扱う大型のレコード店で、地元の好みに根付いた品揃えだった。ケニー・ディクソン・ジュニアは子どもの頃から常連だったと店のスタッフが話してくれたように、そこはデトロイトにおけるディスコ/ファンクをネタにしたディープ・ハウスの重要拠点だった。ハッカビーがRoland Kingなる変名でリリースした〈M3〉は、〈レコード・タイム〉が主宰したレーベルである。
 ハッカビーは2002年からは自身のレーベル〈Deep Transportation〉(および〈S Y N T H〉)から作品を出しているが、他方ではデトロイト・ハウス好きで知られるパリの〈Funky Chocolate〉からカルト的人気曲“The Jazz Republic”が再発され、UKの〈Third Ear〉やベルリンの〈Tresor〉といったデトロイト好きのレーベルからもシングルをリリースしている。また、〈Tresor〉からはハッカビーにしては異色と言えるテクノなミックスCD(サージョン、ジェフ・ミルズ、ドレクシア、ロブ・フッド、バム・バム等々)を発表している。リミキサーとしてはモデル500やノーム・タリー、PoleやVladislav Delay、ジャザノヴァやDeepChordなど一流どころを手がけている。アルバムに関しては、12インチ2枚組のベスト盤があるのみで、最後まで12インチ・シングル主義を貫いた人だった。ちなみにハッカービーはカイル・ホールの先生役でもあった。
 ぼくはいちどだけデトロイトで会ったことがあるが、クラブでもレコード店でもなく、おそらくケヴィン・サンダーソン率いる野球チームの試合においてだった。ほんの一瞬の挨拶だったので、どんな人柄だったかまではまったく知るよしもないのだが、その試合ではベンチスタートだったマイク・バンクスをはじめ、こんなところでもみんな繋がっているんだなと思ったことを憶えている。趣味や方向性こそ多少違えど、みんなリスペクトし合っている仲間なのだ。デリック・メイはハッカビーの死について長いコメントを寄せている。子どもの頃ハッカビーからミキサーを借りていっしょに演奏したときのことを述懐しつつ、「彼は想像しうるかぎりの最高に素敵な人だった。とても寂しい」と。〈レコード・タイム〉の経営者によれば、「彼はとにかく音楽が大好きで、それを誰かと共有することも大好きな人だった」というが、ほかにも彼の死に、たとえばヴァンクーバーの〈ゴーストリー・インターナショナル〉は「先生であり、師であり、マスターであり、DJであり、プロデューサーであり、デトロイト・ミュージックの崇高なる部分の一部だった」と敬意を表し、UKのディスクロージャーはツイッターでこう述べている。「どうか安からに。あなたの音楽はいつまでもぼくたちのインスピレーションであり続けます」
 マイク・ハッカビー、デトロイト・ディープ・ハウスのリジェンド──ご冥福を祈ります。
 


Mike Huckaby Best 5

1. Mike Huckaby ‎– Deep Transportation Vol. 1 〈Harmonie Park〉(1995)
2. Roland King ‎– The Versatility E.P. 〈M3〉(1997)
3. DeepChord ‎– Electromagnetic Dowsing (Remixed By Mike Huckaby) 〈S Y N T H〉(2006)
4. Sun Ra ‎– The Mike Huckaby Reel-To-Reel Edits Vol. 1 〈Kindred Spirits〉(2011)
5. Mike Huckaby ‎– The Tresor EP 〈Tresor〉(2012)

Selected By M87 a.k.a everywhereman
(私が最後にマイク・ハッカビーのDJプレイを聴いたのは、2016年5月メモリアルデイの早朝、デトロイトmarble barでの野外パーティにて、DJ Harveyで盛り上がった後でした。ハッカビーからバトンタッチしたAnthony Shakirのプレイ中にブラックガールから「Dance with me?」と声を掛けられて一緒に踊ったことは人生最高の思い出です)

#SaveOurLife - ele-king

 日々新型コロナウイルスの影響が甚大になっていくなか、ライヴハウスやクラブへの支援をもとめる #SaveOurSpace が、新たな呼びかけをはじめている。「#SaveOurLife」と題されたそれは、音楽や文化関連業種に限定せず、すべての分野の(新型コロナウイルスの感染拡⼤防⽌に尽⼒する)事業者、施設、従業員、フリーランスに対する助成を求めるもので、4月27日に国会に提出される補正予算案に向け、100万人の署名を集めている。詳しくは下記を。

#SaveOurLife
私たちの命と仕事を守ろう

感染症拡大防止のなかで職を守り、継続的な助成を国に求める署名活動

100万人署名と呼びかけのお願い

新型コロナウイルスの影響で
私たちの身の回りのお店、会社、そこで働く多くのひとが大変な苦境に立たされています。
この国を支える中小企業・フリーランス(個人事業主)は、
2月から続く営業自粛要請や外出自粛要請で経営が悪化し、廃業や解雇が相次いでいます。
終息の見込みが立たない中、この状況が続けばとてつもない数のひとたちが
廃業や解雇に追い込まれるのは目に見えています。
私たちは、営業自粛・外出自粛要請の影響を受けているすべての中小企業、
フリーランス(個人事業主)に対する国や地方公共団体からの
継続的な支援を求めます。

4月27日、国会に補正予算案が提出されます。
それまでに100万筆、国を動かすだけの声を集めましょう。

#SaveOurSpace

Twitter: @Save_Our_Space_
Instagram: @Save_Our_Space_

Website: https://save-our-space.org/
E-mail: saveourlife.info@gmail.com

ele-king books 電子書籍、始動。 - ele-king

ele-king books 電子書籍、始動。

これまでわたしたち ele-king books は、時流を見すえながらも、独自のアティテュードにもとづいてさまざまな本を刊行してきました。そのオルタナティヴな視点を、より多くの方々にお届けすべく、ついに ele-king books も電子書籍に乗り出します。

電子書籍化第3弾! 新たに3タイトルの配信をスタート。

昨年12月に刊行された新刊2タイトルおよび関連書を合わせて合計3タイトルを電子化。1月29日より配信開始!

配信タイトルは今後も随時追加予定です。

女性のためのサウナ・ハンドブック サウナ女子の世界

女性のためのサウナ・ハンドブック サウナ女子の世界

著者:サウナ女子
電子版ISBN:978-4-909483-90-4
本体価格:1,500円

女性ユーザー目線で厳選した国内施設紹介を中心に、カップルや家族で楽しめる混浴、入浴後のおたのしみである「サウナ飯」、海外施設などの情報をはじめ、コスメや自宅サウナなどのコラムまで、サウナに興味のある女性の求める情報を凝縮

断言 読むべき本・ダメな本 新教養主義書評集成・経済社会編

断言 読むべき本・ダメな本 新教養主義書評集成・経済社会編

著者:山形浩生
電子版ISBN:978-4-909483-89-8
本体価格:2,176円

本当に読者の役に立つ書評──いい本をしっかり褒め、ダメな本は徹底的に批判する。人気の書評家・翻訳家が30年にわたって様々な媒体に寄稿した膨大な書評から経済・社会分野に関するものを集成

断言2 自分を変える本・世界を変える本 新教養主義書評集成・サイエンス・テクノロジー編

断言2 自分を変える本・世界を変える本 新教養主義書評集成・サイエンス・テクノロジー編

著者:山形浩生
電子版ISBN:978-4-909483-91-1
本体価格:2,176円

好評第2弾。科学する心の尊さ、テクノロジーに託す夢、そしてトンデモ科学に惑わされない知性──サイエンス、テクノロジー、環境、エネルギーなどの分野に関する書評集

HIP HOP definitive 1974 - 2017

HIP HOP definitive 1974 - 2017

著者:小渕晃
電子版ISBN:978-4-909483-80-5
本体価格:2,080円

1974年から2014年の40年におよぶヒップホップの全貌を概観する画期的なディスクガイド。

椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門

椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門

著者:スズキナオ、パリッコ
電子版ISBN:978-4-909483-81-2
本体価格:1,248円

コロナ禍で新たに注目を浴びる野外アクティビティ「チェアリング」創始者たちによる世界で唯一の徹底ガイド。

ギャングスタ・ラップ ディスクガイド

ギャングスタ・ラップ ディスクガイド

著者:小渕晃
電子版ISBN:978-4-909483-82-9
本体価格:2,000円

現在世界でもっとも聴かれ、影響力を持つ音楽であるギャングスタ・ラップの定番アルバム、ヒット曲を網羅。

晩酌わくわく! アイデアレシピ

晩酌わくわく! アイデアレシピ

著者:パリッコ
電子版ISBN:978-4-909483-83-6
本体価格:1,350円

ウェブや雑誌、テレビまであらゆるメディアでひっぱりだこの酒場ライターが長年にわたり追求してきた実験レシピ・おもしろレシピ・アイデアレシピをまとめて紹介。

女の子は本当にピンクが好きなのか

女の子は本当にピンクが好きなのか

著者:堀越英美
電子版ISBN:978-4-909483-59-1
本体価格:1,920円

現代女児カルチャーに鋭く切り込み、「男の子らしさ」「女の子らしさ」についての新たな視点を提示。

人生が「楽」になる達人サウナ術

人生が「楽」になる達人サウナ術

著者:大久保徹(編著)
電子版ISBN:978-4-909483-60-7
本体価格:1,350円

いまやビジネスパーソンにも注目されるサウナ、その「入り方」について各界のサウナ通・粋人たちに話を聞く。

ゲーム音楽ディスクガイド──Diggin' In The Discs

ゲーム音楽ディスクガイド──Diggin' In The Discs

著者:田中 “hally” 治久(監修)、DJフクタケ(著)、糸田 屯(著)、井上尚昭(著)
電子版ISBN:978-4-909483-61-4
本体価格:2,064円

40年にわたるゲーム・ミュージックの歴史を網羅し、「音楽的な価値」という視点で編み上げた画期的ガイド。

美容は自尊心の筋トレ

美容は自尊心の筋トレ

著者:長田杏奈
電子版ISBN:978-4-909483-62-1
本体価格:1,480円

「自分を慈しむための美容」という新たな価値観で熱狂的な支持を獲得!

Bim One Production - ele-king

 Bim One Productionが久しぶりの新作を出す(https://project.bim-one.net/)。ブリストルのグライム/ヒップホップMC、RIder Shafiqueをフィーチャーした10インチのアナログ盤、プレオーダーは本日(23日)から開始、デジタル/ストリーミングでも聴くことができる。スコーンと抜けたリズムにストイックな空間および瞑想的な言葉が格好いい曲で、映像(by 鷹野大/Tabbycat)があるのでまずはどうぞ。

 RIder Shafiqueは過去、BSOのために何度か来日しており、Bim One Productionとはかねてより親交あり。このコラボは2作目になり、映像には下北沢Disc Shop Zeroの店内がばりばりに写っている。曲の最後のほうには亡き飯島直樹さんも登場、じつはこの映像は飯島さんがまだ生きていたときに本人も確認しているという話で、Bim One ProductionとしてはZEROの27周年にあたる4月27日のリリースを前もって考えていた。
 新型コロナの影響で現在店舗は開けられず、無念のリリースとなったが、彼らのソウルが籠もったこのシングルは、たくさんの人に飯島さんのDIY精神をうながすことだろう。チェックよろしくです。
 

Bim One Production - Guidance feat. Rider Shafique
カタログ番号:BIMP003
デジタル配信:Bandcamp / Spotify / Apple Music / Amazon / ReggaeRecord Downloads 他 *4/24配信開始
レコードフォーマット:10inch Vinyl / スタンピング、ナンバリング付き 
限定100枚 *4/24プレオーダー開始 4/27発売
配信サイトまとめ: https://kud.li/bimp0003 (4/24公開)

DJ KRUSH - ele-king

 いまから15年以上前のことだが、渋谷のとあるクラブで、DJ KRUSH にこう言われたことがある。「そのままでいてくれ」と。彼のサングラス越しの目線に、実際のところどんな真意が秘められていたかは分からない。だがそれは、自身のグループでの活動を始めて数年間、デモテープや12インチを祈るように彼に手渡していた筆者にとっては、とてつもない褒め言葉に聞こえた。「このままでいいのか!」「信じる道を突き進めばいいのか!」というわけだ。
 だからいま、DJ KRUSH の新譜を前にして、自然と次の疑問が浮かんだ。果たして DJ KRUSH は、「そのままでいる」のだろうか。
 結論から言えば、1994年のファースト・アルバム『KRUSH』から、2020年の本作まで、DJ KRUSH は、「そのまま」だ。とはいえ、懐古趣味に引き摺られ、今作の中にいつまでも『Strictly Turntablized』(1995)や『Meiso』(1995)のような初期サウンドの面影を探そうというわけではない。なにしろ、26年の歳月がもたらしたテクノロジーの変化に伴い、機材や制作方法、そしてなによりもそのアウトプットとしてのサウンドは、とてつもなく変化してきたのだ。
 では何が変わらず、「そのままでいる」というのか。それは、DJ KRUSH がその興隆の一端を担った「アブストラクト」という方法論に対する「構え」のようなものだ。
 とはいえ、サウンド面の変化は大きい。前々作『軌跡 -Kiseki-』(2017)はラップ・アルバムだったし、前作『Cosmic Yard』(2018)は近藤等則らの楽器奏者とのコラボレーションを含んでいたが、今作は全12曲、ノーゲスト、DJ KRUSH ひとりだけで向き合った作品だ。
 初期作品から近作にかけての一番大きなサウンド面の変化は、AKAI のサンプラーを使ったレコードからのサンプリング・ミュージックから、Ableton Live 中心で制作されたDTMへの移行ということになるだろう。近作でもサンプリングCDや、あるいは楽器奏者や自分で演奏したフレーズからのサンプリングという手法は継続されている。だが、サンプリングという側面で考えれば、今作は、これまでにないほど、サンプリング感の少ないアルバムと言えるだろう。
 その分、複雑な音色のモダンなシンセやノイズの打ち込み色が濃厚な今作は、あえてジャンルの名を挙げれば、インダストリアルやダブステップ、そしてLAビートと共鳴し合う、ビート・ミュージックだ。その執拗なまでに重ねられたレイヤー状のサウンドの塊の密度は、これまでないほどに、高い。そして4小節ごとに訪れる展開の慌ただしい豊かさ、キメの数々もかつてなく丁寧に構築されている。つまり縦(トラック数)にも横(経過時間)にも増えたり減ったりを繰り返し、変化し続ける楽曲群。今作にはひとりで制作に対峙する DJ KRUSH の意気込みが、いたるところに見え隠れしている。
 どういうことか。今作の流れを追いながら、聞こえるものを言語化してみたい。

 オープニングの “Incarnation” は、アブストラクトな件の場所への、不穏な案内状だ。甲高いスネアがノックする、普段とは別の聴覚のドア。今作の一曲一曲は、毎月一曲ずつ配信リリースするという試みのもと、制作されてきた音源だ。だがアルバム用にミックスが施された同曲は、キックとスネアが一気に前景に踊り出て、何よりも「DJ KRUSH の音楽を聞いているのだ!」と知らされる。不穏でも幽玄でもあるSEとキックが、4小節ごとに小爆発を繰り返す。裏拍の太鼓のような打楽器やサイドチェーンの効いた風の音色が教えてくれるのは、DJ KRUSH が背負ってきた「和」の鳴らし方。全体を通して鳴っている死者たちの高らかな笑い声のような音色は、タイトル通り「受肉したビート」を指し示しているようだ。
 続く “Doomsayer” では、DJ KRUSH の音楽的な顔が覗く。3連ベースで刻むリズムが運ぶのは、和風でもありオリエンタルでもあるようなメインのホーンの旋律の力強さと、対照的なオルゴールのアルペジオの内省的な調べ。それが指し示す叙情は、どこか Boss The MC との名曲 “Candle Chant” のパッセージを想起させる。2小節毎の2種類の和音で聞かせてくれるループが、少ない音数で熱くなり過ぎないエモーションを捉える。ほぼ4小節ごとにいくつものサウンド群が入れ替わり立ち替わり現れて交響曲のように展開する本曲は、アルバム随一「物語」を感じさせる曲かもしれない。
 3曲目 “Onomatop” では、細かく刻まれるサブベースとハイピッチのスネアがドライヴするバンガー。注目すべきは、順番に重ねられる、ハットの代わりにリズムを刻む3種類の音色たちだ。中央で鳴る吐息を加工したようなハットのようなサウンドは、人が息を吐く際の音色が口の形で変わるように、ハイハットのオープンとクローズを代弁している。中央と左右にパンされ絡み合う粘着性のスタブ音も、どこか生物の立てる音を想起させる。さらにはアトモスフェリックのSE然としたうねるノイズが中央の後ろを飾るが、これもまた人や獣の唸り声を加工したようなサウンドだ。「オノマトペ」というタイトル通り、これらは人の声を入力の一部に使っているような音色たちなのだ。今作では、このようなオノマトペ・サウンドが積極的に用いられ、有機的なサウンド作りに一役買っている。
 4曲目 “Regeneration” で披露されるズバりフライング・ロータスを想起させるトライバルな打楽器とクラップから成るヨレたビートとコズミックなシンセのアルペジオは、DJ KRUSH・meets・LAビートと呼びたくなるようなサウンドだ。だが人間の歌声ベースのスピリチュアルな調べが、このビートが紛れもない DJ KRUSH 製であることを強調する。若き時分に DJ KRUSH を聞いてインストゥルメンタルのアルバム表現の可能性に気づいたフライング・ロータスとの、インスピレーションの往復運動。
 後半に突入し、8曲目 “Infinite Fragment” で耳に飛び込んでくるのは、徹底的にドライなキックとスネアだ。そしてそれとは真逆の地底の奥底から響くような残響音を伴ったSEの数々。それらが表象するのは、地底から吹き付ける風やマグマの唸りであり、自然が本来持つ不穏さであり、冷たい雨であり、人為を焼き尽くそうとする炎である。隙間を縫うように聞こえるのは、縦横無尽に飛び回る微生物のような跳躍音。だがこのようにいくら言葉を尽くそうとも、ここには本来言葉で形容できそうなサウンドは何もない。だから、DJ KRUSH の音楽は「アブストラクト」と呼ばれる。彼のDJプレイで、フロアの真ん中で突然、いまいる場所を忘れ、人間や生物の生と死、自然や何か大きなものと対峙するような感覚に陥ったことがあるなら、それは「アブストラクト」であることが呼び水になっているからに違いない。オノマトペといい、自然の環境音を想起させるシンセ音といい、マシナリーとオーガニックのあわいを音で表現することこそ、DJ KRUSH が「そのまま」で探求を続けている試みのひとつだろう。
 叩きつけるようなキックとスネアが駆動する “Cell Invasion” と “C-Rays” を経てたどり着く12曲目の “Signs of Recovery” は、BPMがスローダウンする一方で、32分ベースで刻まれるハットとシンセのスタブによって、逆にスピード感が強調される構造をしている。あえて言うなら、これは DJ KRUSH 流のトラップだ。後半にかけて徐々に盛り上がる展開がフロアの興奮を想像させるが、前半の残響の深い汽笛のような笛の音色がもたらす陶酔は、トラップの代名詞である酩酊感と符合する。
 ビートメイカーにとって、最初はDJであることが前提条件でなくなって久しいが、DJ KRUSH は何よりもまず「DJ」であり続けている。例えば YouTube にアップされている2019年にバルセロナで開催されたSonarフェスティヴァルの彼のDJセットを聞けば、現在進行形のバキバキのブロステップなどクラブバンガーを矢継ぎ早に繰り出し、クラウドを湧かせている。だからそのDJプレイの中に自身の曲を入れたときに、最新モードの楽曲群にもマウントを取りにいける音圧とリズムが必要だ。どんなにビートの種類が変わっても、DJ KRUSH の音楽が、聴衆に眩暈を起こさせるダンス・ミュージックであることは、決して変わらない。
 アルバムのラストを飾る “Bluezone” は、金属を打ち鳴らし、深さを競い合うようなインダストリアルなSEサウンドから始まる。今作で何度も存在感を誇示してきたサブベースとタッグを組むキック、そしてドライなスネアが、ゆっくりと感情を押し殺しながら醒めたビートを立ち上げる。するといくつものシンバルや打楽器の音色で狂ったように跳ね回る32分音符のリズムが、徐々に明滅し始める。シンセのリフが導く後半から、どこまでも音数を増やしながら重なりゆくリズムのシンフォニーは、やがて絶頂を迎え、弾けて消える。その残響音の余韻は、そのまま1曲目の “Incarnation” のイントロに輪廻するだろう。

 かつて DJ KRUSH が、どのレコードのどの楽器のサウンドやフレーズを引っ張ってきたのか特定できない「抽象的な」音をサンプリングしたり、スクラッチして組み立てたビートは、「アブストラクト」という名にふさわしい発明だった。だが今作にいたって「アブストラクト」を提示する方法は、極めて大きな変化を遂げた。彼が辿り着いた方法は、うねりながら咆哮する無数のシンセやSEサウンドをレイヤー状に織り上げることによって、複雑に変化し続け、かつ全体の輪郭すら把握できないほど巨大なゆえに「アブストラクト」である音塊を産み落とすことだった。
 しかし方法は変われど、DJ KRUSH が「アブストラクト」な音像を用いて接近しようとしている境地は変わらない。フロアの真ん中で身体を揺らす、あるいはヘッドフォンを装着して自室にこもる僕たちに、DJ KRUSH が見せてくれる景色=眩暈は、ずっと「そのまま」なのだ。

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