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Alva Noto & Blixa Bargeld

Alva Noto & Blixa Bargeld

@恵比寿リキッドルーム
Sep30, 2011

guest: ULTRA FUNCTOR (atsuhiro ito + microdiet)、NHKyx (Skam/Raster Noton)

文:野田 努   写真:小原泰広   Oct 03,2011 UP

 およそ1週間前にマシュー・ハーバートの"ワン・ピッグ"ライヴを観ている。その同じ会場で、もっとも先鋭的なドイツの電子音楽家(アルヴァ・ノト=カールステン・ニコライ、坂本龍一との共演者としても知られる)と......ポスト・パンクの時代にチェインソーを金属に斬りつけるノイズを音源として、くず鉄を打楽器としたバンド、つまり、いわゆる既存の楽器のすべてを放棄したバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの中心人物にしてヴォーカリスト、ブリクサ・バーゲルトとのプロジェクト、ANBBのライヴである。破壊に憑かれ、ダダイズムに深く共振し、そして実験音楽に人生のすべてを捧げていると自ら語るアーティストの久しぶりの来日だ。オーディエンスの数は......意外なほど少なかったが、しかしそのライヴは耳と心にこってりと焼き付くものだった。

 フロント・アクトのNHKyxは、大阪とベルリンを往復する国際派の電子音楽家で、〈スカム〉〈ラスター・ノートン〉、あるいはセンセーショナル(元ジャングル・ブラザースのぶっ飛んだラッパー)との共作を〈ワードサウンド〉から......とにかくいろんなレーベルからたくさんの作品を出しているプロデューサーである。インダストリアルなビートを操作しながら、ノイズをかき鳴らし、IDMとハードコアなダンス・ミュージックの溝を埋めるような、インパクトのあるステージを披露した。続いて登場した伊藤篤宏のウルトラ・ファンクターは、蛍光灯のノイズを音源としながら、NHKyxの冷たいグルーヴをバトンタッチするかのように、彼の白い熱を展開した。昔、あるオーガニック系の人物から、家では絶対に蛍光灯は使わないと言われたことがある。ウルトラ・ファンクターはそうしたハイソなエコ人間へのアンチテーゼでもあろう。
 そうした強力なフロントアクトを経て、ステージに登場したふたりのベルリナーは、それまでの騒音とは真逆で、曲のなかには多くの静寂があった。ライヴは......ノイバウテンのリスナーにとってはお馴染みのバーゲルトのヴォーカリゼーション、あの水蒸気のような声(口笛のような音)ではじまった。

 黒いスーツでめかし込んで、もみあげを尖らせ、髪の毛をしっかりと整えてマイクの前に立っているバーゲルトは、ある意味古風な"ヨーロッパ主義"を強く感じさせるものだった。それはいまとなってはレトロ趣味のひとつとも言えるし、1920年代のベルリンのナイトクラブと2011年のIDMとの交流会という点では新鮮にも思える。
 ライティングは、すべてバウハウス的なデザインだ。直角で、そして色彩は2色に制限される。黒と赤、黒と緑、青と黒、そうした組み合わせで構成される。それは、かつてグラム・ロック/パンク・ロック/ポスト・パンクが、アメリカ的な経済繁栄への強烈な反撃として持ち上げたドイツ的な美学(非人間性や灰色の頽廃美、終末や衰退への陶酔、人工美、表現主義などなど)を表しているように思えた。
 "ワンス・アゲイン"~"ワン"~"ミミクリー"~"エレクトリシティ・イズ"......アルバム『ミミクリー』ではオウテカ(もしくはメルツバウ)を彷彿させるような情け無用の冷酷なエレクトロニック・ミュージックに思えたような曲も、ニコライの間(沈黙)を効果的に用いたIDM、そしてバーゲルトの呼吸まで聴こえそうなライヴではむしろエロティックに聴こえる。ジャック・ブレル(まあ、彼はドイツ人ではないが)のラップトップ・ヴァージョン――そんな言葉が脳裏をよぎる。「昆虫としてのあなた(You as an insect)/あなた自身を擬態する(Mimic yourself)」......バーゲルトは"ミミクリー"における最初の英詩をゆっくりと喋ってからはじめる。アルバムのスリーヴアートには、目を奪うような、女が昆虫のように町を這っている写真が使われているが、これは1967年の映画『欲望』にも出演しているドイツ人のスーパー・モデル、ヴェルシューカの写真である。
 アンコールの"フォール"(アルバムの1曲目)にいたってはさすがというほかない。周波数を手品師のように操作するニコライは、最初鼓膜の近くでさざ波を起こし、それをいつの間にか気が狂いそうなほどのノイズとして突き刺す(アルバムでは耳をつんざくノイズに思えたそれは、より展開のある楽曲となっていた)。そして静寂とピアノ、バーゲルトの歌......。最後の"ホール・イン・ザ・グラウンド"は、僕にはファーストの頃のスーサイド風、まあ、要するにロカビリー+ノイズに聴こえた(オリジナルではそうは感じなかった)。
 先週同じ会場で観たハーバートの、英国人らしい社会風刺のライヴ・パフォーマンスとはまったく別の興奮を覚えた。それは実験音楽に人生を捧げたと自負する人間による、現代における新古典主義とも喩えられるような、しばらくのあいだ家に帰りたくなるほど感動的で美しい時間帯だった。

なお、raster-notonジャパンツアーは今週も続きます!

【R-N EXPRESS】(東京公演)
■日時:2011年10月9日(日)23:00開場 /開演
■会場:渋谷WOMB
■出演:Alva Noto / Byetone / Vladislav Delay / Luomo / Aoki Takamasa /Anne-James Chaton / AGF / NIBO / Atsuhiro Ito
■raster-notonジャパンツアー特設HP:<http://www.raster-noton.net/japantour>

また、東京馬喰町にある現代美術ギャラリー、Motus Fort(モータス・フォート)では、11月5日までブリクサ・バーゲルトの展覧会をしています。
http://www.motusfort.com/exhibition.html

文:野田 努