「CE」と一致するもの

Aphex Twin - ele-king

 最近父を亡くしたというエイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスが、どうやら昨今の状況に危機感を覚えたようで、めずらしく警告を発している。RA の報じるところによれば、当初 SoundCloud の user18081971 のプロフィール欄にメッセージがポストされ、一度削除された後、現在は Reddit に再掲載されている。とても良いことを言っているので、以下に試訳を掲げておきます。

現在悲しみに暮れている方々には心からお悔やみ申し上げます。ぼくは最近父を亡くしました。本当につらかったけど、COVID-19 とは無関係でした。

もし COVID-19 の統計を目にすることがあったら、その数値が COVID-19 “が原因で” 亡くなった人たちを反映しているのかどうか、ちゃんと確認しなきゃいけないよ。どうか忘れないでほしい。

もし警察が、きちんとした法もないような状態で政府の要望を遂行しているなら、ぼくたちは警察国家に生きていることになる。もはや民主主義なんてない。
あるいは、もしぼくたちが罪など犯していないにもかかわらず、自宅監禁状態に置かれているなら、やっぱりぼくらは警察国家に生きているんだ。民主主義なんてないんだよ。
こんなことが起こるなんて思わなかったよね。次にぼくらはどんな権利を失うか、わかってる? 想像できる?

注意してね。

Huge heartfelt condolences to anyone grieving right now, I lost my father recently and it’s been really tough, it was not related to C19.

When you are presented with C19 statistics, you must demand whether the figures reflect people who have died WITH C19 or FROM C19
Please do not forget this.

When police carry out wishes from government, without any law being in place, you are living in a police state and it is no longer a democracy.
When you are held under house arrest, when no crime has been committed, you are living in a police state and it is no longer a democracy.
You didn’t think this could happen did you? Do you know what rights you could lose next, can you guess?

You have been warned.

COM.A - ele-king

 絶妙なタイミングというべきか、あるいはこれこそが素晴らしき未来への道筋なのかもしれない。1999年にジョセフ・ナッシングとの ROM=PARI の1人として登場、00年代を通じて〈Fat Cat〉や〈ROMZ〉などから精力的にソロ名義でのリリースを重ね、キッド606 の〈Tigerbeat6〉ともリンク、エイフェックス・ツイン不在の時代に強烈なブレイクビーツで世界を震撼させたIDMの異端児、パンクの精神でこよなくメタルを愛する COM.A が、じつに13年ぶりの新作を発表する。
 夢なんかくそくらえ、希望を殺せ──もちろん2001年の『Dream and Hope』を踏まえているわけだが、昨今の世の状況を考えるとなんともタイムリーな(??)タイトルだ。あの痙攣したビートがさらなる進化を遂げているだろうことは想像にかたくない。とあるシュルレアリストによれば、美とは痙攣である。すなわち COM.A こそ美である。発売は6月3日。打ち震えよ。

パンク・ミーツ・IDM! 日本におけるオウテカやエイフェックス・ツインへの反応として一世を風靡した “COM.A (コーマ)” 13年振りの最新作リリース決定!

2000年、UKの名門〈FAT CAT〉からデビューしてブレイクコア・ブームを先導、その後のデ・デ・マウスらの登場をうながした奇才、“COM.A (コーマ)”。前作『Coming of Age』から13年、1st アルバム『Dream and Hope』から早20年、長らく昏睡状態に陥っていたコーマが導き出したのが、アンビエントやジャジーなセンスも注入しながらも、しかし、あの痙攣したビートと遊び心はさらに進化、そして混迷する現代への痛烈なメッセージも含んだ怪作『Fuck Dream and Kill Hope』だ!

気がつけば、自分の脳内も把握できず、コントロールすることすら怪しいこの時代、相も変わらず出口の見えない状態が続いている。コーマも多分に漏れず、自分を制御できずに混乱と迷走を繰り返している、そうした日々の集大成が今回のアルバムとなった。あなたはこの楽曲をどう受け取るか、判断するか。2020年、新しいディケイドのはじまりに、夢と希望を壊された頭で、是非ご確認いただきたい。

COM.A『Fuck Dream and Kill Hope』Teaser
https://youtu.be/UXCLqG1Iv28

COM.Aが復活した!
なんとも言い難い復活タイミングですね。
普段は人がゴミのような街でもゴミないと寂しいもんだから、
イヤホンでこれ爆音で歩くとかつて見た未来のようで楽しくなる。
夢の国も休業中。だったら頭に中に夢の国作っちゃおう。

あの頃からお互い変わらない部分と進化した部分、歳食った部分あるよね。
と50年後も同じこと言ってロボットスーツでハグし合い酒を酌み交わし、
酔っ払ってステージから飛び、また骨折りたいね。
まあ、お互い生き残ってたらね。 ──world’s end girlfriend (Virgin Babylon Records)

新型コロナウィルスに東京オリンピック延期、日々更新され加速してゆくディストピアな状況。COM.A くんからもらったニューアルバムを聴きながら夜の首都高を走る。街はいつも通り動いている。2000年代に『dream and hope』を初めて聴いた時に感じたチープな終末感とそれを笑い飛ばすジョークのようなクライマックスな気分。そしてこんな混沌とした2020年にこのアルバムが聴けるなんてね、めちゃくちゃ最高。 ──Have a Nice Day! 浅見北斗

沈んだ日本。暗い世界。先のない地球。こんな時に COM.A が昏睡状態から覚めるとは。玉手箱を開けると次から次へとパワフルな音楽が。ぜんぜん空気、読めてません草。 ──三田格

みごとなパラドックス。夢と希望の電子音楽のオンパレード。 ──野田努(ele-king)

十年どころか三年前がひと昔前のさっこん、干支がひとまわりしておつりがくる十三年ぶりの新作とは、開いた口も耳もふさがらないが、そこに流れこむ音響はかつての異形の美から美の異形へ、軽やかに翻っている。タイトルからは想像もつかない楽想のポップさと印象深いメロディ、それらが重なる縦の線の動かし方がとても秀逸。二〇二〇年のサウンドトラックとでももうしましょうか。 ──松村正人(『前衛音楽入門』の著者)

[アルバム情報]
タイトル: Fuck Dream and Kill Hope / ファック・ドリーム・アンド・キル・ホープ
アーティスト: COM.A / コーマ
レーベル: P-VINE
品番: PCD-24941
定価: ¥2,400+税
発売日: 2020年6月3日(水)

[収録曲]
01. Unintelligent Life Forms
02. Another D
03. Signs
04. Fortuitous Blood
05. Rife
06. Liar’s hand
07. Let us be thankful and be happy
08. You know who you are
09. False Repentance
10. Vanished Sprout
11. Centillionaire

COM.A (コーマ)
イギリス生まれ、香港、アメリカ、日本育ち。メタル、テクノ、エレクトロニカ、ブレイクコア等の要素をタイトで強烈なダンス・トラックに仕立て上げるスキルとセンスは、国内外問わず大きな評価を獲得し、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、ベルギー、中国などからアルバム、シングル、リミックスをリリース。00年に〈fatcat〉からのスプリットシリーズを皮切りに、Shiro The Goodman とともに主催の〈ROMZ〉から4枚のアルバムをリリース。同アルバムは kid606 主催の〈tigerbeat6〉、ブレイクコアレーベルの〈zod〉、中国の〈Shanshui〉からライセンスされた。00~10年まで国内外のライブ、フェスに参加後、10年間ライブ活動を休止し、CM音楽や映画、アニメ音楽等、作家業をメインに活動。2020年、新しいディケイドの始まりに 5th album 『Fuck Dream and Kill Hope』をリリース。

-Official Website-
https://geeky2200.wixsite.com/com-a

Tokyo Black Star - ele-king

 90年代から00年代前半にかけて、東京のハウス/テクノのシーンで活躍し、その後NY~ベルリンと移住しているDJ/プロデューサーのAlex from Tokyoとサウンドエンジニア熊野功によるTokyo Black Starの久しぶりの音源リリースです。タイトルは「Blade Dancer EP」。
 今回は、2015年よりメンバーに加わったアナログ機器オタクの高木健一との3人体制による新作で、彼らのヒット曲“Blade Dancer”の未発表のオリジナル。ヴァージョンと新ヴァージョンを収録。また〈Innervisions〉の2008年のアンビエント・コンピレーション『Muting The Noise 01』に収録された“Kagura”も再録。どれもアナログの音響が気持ちいいdeepなハウス&アンビエントです。
 アートワークはいつものようにNY在住の画家、松山智和の絵画をフィーチャーしながら、ベルリンのTa-Trungがデザイン。リリースはAlexの自主レーベル〈world famous〉から。日本の流通はDisk Unionなので、ハウスを扱っているレコ店のオンラインでチェックしてね。

吉田アミ - ele-king

 長らく廃盤となっていたヴォイス・パフォーマーの吉田アミによる代表作のひとつ『虎鶫(とらつぐみ)』が、2003年のリリースから17年の時を経て、このたび FTARRI のソロ専門レーベル〈Hitorri〉からリイシュー盤として再発されることとなった。自身の名義による作品であるものの実質的にはベーシストの tamaru とのデュオ作であった『Spiritual Voice』(1997)を除くと、本盤は吉田の最初のソロ・アルバムであり、また、ヴォイスを用いたフリー・ミュージックの歴史に革新をもたらした画期的作品でもある。

 あらためて振り返るなら、吉田アミによるハウリング・ヴォイスと呼ばれるそのサウンドは、ほとんど即物的に響く物音と化すことによって、声から意味や記号、人間的な内面性などを徹底的に剥ぎ取ることを成し遂げた。肉声という言葉に見られるように、人間によるあらゆる発音行為のなかでも声はもっとも深く身体に根差した表現である。ある声が発されるとき、その声はまずもって「誰かの声」という属人性とともに認識される。こうした属人性は声から身体を手繰り寄せ、音響以外のさまざまな意味/記号を聴き手に想起させることとなる。そしてこのことは、通常の音楽における歌声に限らず、声を器楽的に使用するパフォーマンスの歴史においても逃れ難く纏わりついてきた。たとえばキャシー・バーベリアンやファティマ・ミランダ、シェリー・ハーシュ、デヴィッド・モス、巻上公一らに見られるように、声による表現手法を開発/拡張し、それらの素材を自在に使いこなすことによって、いわゆる超絶技巧的なスペクタクルを聴かせるヴォイスからは、圧倒的な個性とともに声の持ち主の具体的な姿を思い浮かべることができる。しかし吉田の声はこうした意味性から離れ、あたかも電子音響のように、あるいは環境から聴こえるノイズのように即物的に響く。そこにはもはや「誰かの声」という属人的な個性はなく、ただ耳に聴こえるものとしての音響があるのみである──ただし、むろんこうしたハウリング・ヴォイスを使用するという点では、他の誰とも異なる吉田アミという作家性が刻印されているものの。

 『虎鶫』はそうした吉田のヴォイス・パターンを99トラックに収めた、本人の言を借りるならば「いま自分が出せる音を素材別に整理した図鑑のようなもの」とでも言うべき作品となっている。喉を振り絞り、あるいは口腔と口唇を駆使することによって生み出されるサウンドは、一聴しただけではとても人間の声とは思えないような驚きに満ち溢れている。多くの楽曲は10秒前後または1分以内に終わる短い作品であり、音楽的な構成よりも音色パターンの提示に主眼が置かれていると言えるものの、なかには録音後に編集を施すことで同一の声が左右のステレオ・スピーカーからパンニングする楽曲や、短いフレーズを何度も繰り返し反復することでサウンドの即物性をより増していくもの、あるいはハーシュなノイズののちにほとんど何も聴こえない時間が非周期的に反復されるものなどもあり、楽曲ごとにユニークな趣向が凝らされている。さらにこれまでの説明に反するかもしれないものの、明らかに人間の声だとわかるサウンドや、不意に声帯がそのまま震えてしまったことで聴こえる身体的/官能的なサウンドも収録されている。いずれにしても本盤の「図鑑」的性格は、単にヴォイス・パターンだけではなく、その音響を録音作品として提示する際のプロダクションとしての側面も含まれていると言ってよいだろう。そのことを裏付けるように最終トラックとなる99曲めでは、あたかもフィールド・レコーディングのように、秒針が淡々と時を刻む響きと学校のチャイムのような鐘の音、そして子供の遊び声のようなざわめきが聞こえてくる。ここに至ってわたしたちは、声がもたらす記号的な意味にありありと遭遇することとなるのである。

 本盤のリイシューは、作品にあらためてアクセスできるようになったということに加えて、音響系/音響的即興がすでに復刻の対象となる歴史に組み入れられているという事実を示してもいる。20年近い時間が経過するなかで、吉田アミ自身も、朗読をテーマに据えた「吉田アミ、か、大谷能生」や、立川貴一とともに舞台空間の演出を手がけるユニット「ミニスキュル・シングス」など、時を追うごとにあらたな試みへと踏み出してきた。それは単に活動が変遷したということではなく、音響系/音響的即興の成果をどのように継承し、あるいは発展させることができるのかということの実験の軌跡でもあるように思う──たとえば現在の彼女はハウリング・ヴォイスを即物的な音響の提示ではなく、舞台上のパフォーマンスにおけるひとつの手段として使用している側面がある。それは意味/記号を剥ぎ取った声になおもつきまとう作家性を、特定の舞台空間との関係性からあらためて更新しようとする試みであるようにも見える。いずれにしてもこのことは彼女のみならず、音響系/音響的即興以降の地平に立つあらゆる作り手と受け手に関わる問題であり、その意味でも本盤は、これからも繰り返し参照されるべきヴォイスの特異点としてアクチュアルな価値を帯びていると言えるだろう。

ISSUGI - ele-king

 暗いニュースばかりの毎日ですが、ひとつ朗報です。新型コロナウイルスの影響により中止・延期となっていた ISSUGI のリリース・ライヴの振替公演が決定しました。8月9日です。新作『GEMZ』は大胆にバンド・スタイルに挑戦したアルバムだっただけに、とにかくライヴが楽しみです。
 また、今回の発表に合わせて DJ Scratch Nice のプロデュースによる新曲 “Now or Never” の配信がスタート、当初会場にて限定販売予定だったCD「UNRELEASE 4 JOINTS」の配信も開始しています。あわせてチェック!

「ISSUGI GEMZ RELEASE LIVE IN TOKYO」の振替公演とチケット払い戻しの詳細が確定。また DJ Scratch Nice のプロデュースによる新曲 “Now or Never” の配信がスタート。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止・延期いたしました「ISSUGI GEMZ RELEASE LIVE」の東京公演の振替公演日程が決定しました。合わせてチケットの払い戻しについても詳細が確定しましたので下記をご参照ください。
 また「GEMZ RELEASE LIVE TOUR 3DAYS」で販売予定だった ISSUGI の新曲4曲を収録している完全限定プレスのCD『UNRELEASE 4 JOINTS』を、ISSUGI のショップサイトにて販売しております。同作から DJ Scratch Nice のプロデュースによる “Now or Never” が各配信サイトにて配信開始されておりますので、そちらも是非チェックしてみてください。

《振替公演》
ISSUGI- GEMZ RELEASE LIVE IN TOKYO
日程:2020年8月9日(SUN)
会場:渋谷 WWW X

《チケット払い戻し》
●振替公演にお越しのお客様
お手持ちの3月27日(金)渋谷 WWW X のチケットを振替公演当日にご持参ください。
●振替公演にお越しになれないお客様
振替公演にお越しになれないお客様には、チケットの払戻しをさせていただきます。
ご購入先によって払い戻し方法等異なりますので、詳しくはお買い求めのプレイガイドのホームページにてご確認の上、お手続き頂けますようお願い致します。
【払戻し期間】 4月10日(金)10:00 ~ 4月26日(日) 23:59

各SHOP: ご購入いただいた店舗で払い戻しをお願い致します。払い戻しにはご購入いただいたチケットが必要となります。紛失されないようご注意ください。
TREES SHOP: ご購入いただいたお客様に返金方法のメールをお送りさせていただきます。

この度は公演を楽しみにお待ちいただいていた皆さまにご迷惑をお掛けしましたこと、改めてお詫び申し上げます。ぜひ振替公演に遊びに来てください、よろしくお願いします!

《ISSUGI GEMZ RELEASE LIVE 東京公演に関するお問い合わせ》
info@issugi.tokyo

* ISSUGI 『UNRELEASE 4 JOINTS』
1. Now or Never prod DJ Scratch Nice
2. Soul on Ice prod JJJ & DJ Scratch Nice
3. Run and Learn prod Budamunk (Scratch by DJ K-Flash)
4. Ying Yang prod 16FLIP (sampled from motif alumni)
https://7tree.shop/items/5e736fa2e20b04343256656d

* ISSUGI / Now or Never (prod. DJ Scratch Nice)
配信サイト:https://linkco.re/RdNYFuNT

Яejoicer - ele-king

 近年はオーストラリアや南アフリカなど、アメリカやヨーロッパではない国や地域から面白い音楽が発信されるケースが増えている。イスラエルもそうした国のひとつで、以前紹介したセフィ・ジスリング(https://www.ele-king.net/review/album/007371/)などのジャズから、J・ラモッタ・スズメのようなネオ・ソウル~R&B系などが生まれている。そうしたイスラエルの新しい音楽シーンのキー・パーソンがリジョイサーことユヴァル・ハヴキンである。
 キーボード奏者及びマルチ・ミュージシャン/プロデューサー/ビートメイカーである彼の名前が最初に知られるようになったのは、ベーシストのベノ・ヘンドラー、サックス奏者/ヴォーカリストのケレン・ダンと組んだバターリング・トリオというバンドでの活動だろう。ジャズと民族音楽、ソウルとビート・ミュージック、フォークとエレクトロニカを融合した音楽性を持ったこのグループは、例えるならハイエイタス・カイヨーテ、ムーンチャイルド、フライング・ロータスが一緒にやったかのような不思議な個性を放っていて、2017年にリリースした3枚目のアルバム『スリーサム』は高い評価を得て、その後に日本ツアーも行っている。

 ユヴァル・ハヴキンはロンドン生まれのテル・アヴィヴ育ちで、テルマ・イェリン芸術学校を出ているが、ここで後に一緒に活動するいろいろなミュージシャンと出会い、そうした仲間を世に出すべく〈ロウ・テープス〉というレーベルを立ち上げた。バターリング・トリオも〈ロウ・テープス〉から出たバンドで、先述のセフィ・ジスリングや彼も参加するリキッド・サルーン、ピアニストのニタイ・ハーシュコヴィッツ、ドラマーのソル・モンクことアヴィ・コーエンのアルバムなどもリリースしている。ユヴァル自身はバターリング・トリオのほかにも、ニタイ・ハーシュコヴィッツ、ソル・モンクらと組んだタイム・グローヴというグループや、〈ロウ・テープス〉周辺のジャズ・ミュージシャンやヒップホップ・プロデューサーらが集まったL.B.Tなどでもアルバムをリリースするなど、多面的な活動を行なってきた。
 そうしたなかでリジョイサーは彼の個人的なプロジェクトと言えるもので、2010年頃からビート・アルバムやミックス・テープなどを作りはじめ、2018年にUSの〈ストーンズ・スロー〉から『エナジー・ドリームズ』というアルバムを発表している。このアルバムにはニタイ・ハーシュコヴィッツ、ソル・モンク、セフィ・ジスリング、ノアム・ハヴキン、アミール・ブレスラーらイスラエル勢に加え、ロサンゼルスのMndsgn(マインド・デザイン)も参加するなどワールドワイドな活動も視野に入れたものとなっていた。その後もイスラエルとロサンゼスルを結んだ活動を続け、2019年のEP『ヘヴィー・スモーク』を挟んでニュー・アルバムの『スピリチュアル・スリーズ』が完成した。

 『スピリチュアル・スリーズ』はこれまでのユヴァルが関わった作品同様に、ニタイ・ハーシュコヴィッツ、ノモック、ケレン・ダン、ヨナタン・アルバラック、ジェニー・ペンキン、イオギ(ヨゲヴ・グラスマン)など彼の周辺のイスラエルのミュージシャンから、ロサンゼルス勢ではルイス・コールらと仕事をするサム・ウィルカーズなどまで参加している。ユヴァルが全てのサウンド・プロデュースを行う一方、ニタイがほとんどの楽曲でシンセなどを演奏し、本作における彼の働きも大きい。
 全体的にユヴァルの作るビートやキーボードなどを軸に、ニタイのシンセなどで味付けをフォローし、そこにケレン・ダンやジェニー・ペンキンらのヴォーカルがフィーチャーされるという構成になっている。また“ムーン・ハイク”や“ハート・ウェイ(シャポー)”のように、ヴァイオリンを用いてクラシカルなムードを演出している曲がある。ヴァイオリンを演奏するのはイオギのほか、BBC・スコティッシュ・シンフォニー、ボストン・シンフォニー、ニューヨーク・フィル、アイスランド・シンフォニーなどの指揮者も務めたイラン・ヴォルコフで、ユヴァルのコネクションの幅広さが伺える。

 “イーグル・イン・ザ・ロッジ”に見られるように、ニタイのシンセはハープシコードのようなレトロなムードを醸し出し、“ゼア・イズ・タイム”のシンセもメロトロンのようなどこかレトロな響きである。こうした鍵盤使いがアルバム全体に幻想的でアンビエントな雰囲気をもたらしており、ジャズにしろ、ヒップホップにしろ、R&Bにしろ、他の音楽とは異なる独特の空気感を生み出している。方向性としてはジェイムスズーあたりの作品に近いテイストだが、小鳥のさえずりのような音像を交えた“プレ・メモリー・サークル”、ウーリッツァー・ピアノの暖かみのある音色を交えた“ノー・ベルズ・ラング・ザット・デイ”などに見られるように、全体的にオーガニックなテイストの強いアルバムと言えるだろう。ヴォーカル曲にもミステリアスな雰囲気が溢れており、ケレン・ダンをフィーチャーした“ソング・フォー・スピリット・フライト”や“マイ・ビーンズ”は、どちらも浮世離れしたフェアリーな歌声が魅力である。ジェニー・ペンキンが歌う“レモンズ”や“アース・トーク”、イオギの歌とベース、ヴァイオリンをフィーチャーした“アップ・イン・フレームズ”も、ネオ・ソウルやR&Bをベースとした楽曲ながら、スペイシーでサイケデリックな独特のムードを醸し出している。まさにコズミック・ジャズ、コズミック・ソウルという言葉がふさわしい楽曲だ。

KANDYTOWN - ele-king

 昨秋セカンド『ADVISORY』を発表し、クルーとして大きな成長を遂げたキャンディタウンが、2020年初となる新曲 “PROGRESS” をリリースしている。ナイキの AIR MAX 2090 から着想を得た楽曲とのことで、Gottz、MUD、KEIJU、Dony Joint の4MC が参加。ティザー映像は各方面でひっぱりだこの山田健人が手がけている。彼らの次なる一歩を見逃すな!

KANDYTOWN
NIKE AIRMAX2090 にインスパイアされた新曲 “PROGRESS” をリリース。

昨年2ndアルバム『ADVISORY』をリリースし東阪での Zepp TOUR を成功させるなど、様々な話題を振りまいた国内屈指の HIP HOP CREW:KANDYTOWN が2020年第一弾となる新曲 “PROGRESS” を3月26日にリリースすることが発表された。

この楽曲は同日に発売となる AIR MAX 2090 の制作コンセプトにインスパイアされた楽曲で、Neetz が手掛けたトラックに Gottz, MUD, KEIJU, Dony Joint の4MCが参加している。また、リリース情報とともに同作品のアートワークと MUSIC VIDEO のティザー映像が公開となっている。

ティザー映像では AIR MAX 2090 DUCK CAMO をはじめとする様々なモデルを着用したメンバーの姿が映し出されており、こちらの映像作品は山田健人がディレクションを担当している。

なお、早くも2020年第一弾となるリリースを迎えた KANDYTOWN は5月24日(日)に横浜赤レンガ倉庫野外特設会場にて行われる「GREENROOM FESTIVAL’20」への出演も決まっているのでそちらもお見逃しなく。

【KANDYTOWN「PROGRESS」】
Rap:Gottz, MUD, KEIJU, Dony Joint
Music:Neetz
DL/ST URL: https://kandytown.lnk.to/prog
Teaser URL: https://youtu.be/uVTAaGO2Njs
MUSIC VIDEO Director: 山田健人

【KANDYTOWN PROFILE】
東京出身の総勢16名のヒップホップ・クルー。
2014年 free mixtape 『KOLD TAPE』
2015年 street album 『BLAKK MOTEL』『Kruise』
2016年 major 1st full album 『KANDYTOWN』
2017年 digital single 『Few Colors』
2018年 digital single 『1TIME4EVER』
2019年 e.p. 『LOCAL SERVICE』, major 2nd full album『ADVISORY』

【開催概要】
名称:GREENROOM FESTIVAL’20
場所:横浜赤レンガ倉庫野外特設会場
出演日:2020年5月24日(日)
オフィシャルサイト: https://greenroom.jp

【事務局一般先行チケット】
事務局一般先行チケット販売中!
[1日券] 価格 ¥12,000
[2日通し券] 価格 ¥19,000
https://greenroom.jp/tickets/

【NIKE AIR MAX 2090 “進化を恐れない姿勢” SHORT MOVIE MUD(KANDYTOWN) Direction by atmos】
https://www.atmos-tokyo.com/lp/air-max-day-2020-duck-camo

Battles - ele-king

 結成17年を経ていまだなお意欲的な姿勢を崩さないバトルスが、なんとオンライン・リミックス・コンテストを開催する。指定のサイトにアクセスして最新作『Juice B Crypts』の素材をダウンロード、めいめいがそれを自由に料理し、バトルスがそれにフィードバックを返す、という流れ。詳しくは下記をご参照いただきたいが、しっかり賞品も用意されているので、われこそはという方はぜひチャレンジしてみよう。〆切は5月24日。

最新アルバム『Juice B Crypts』のリミックス・プロジェクトを開始!
優勝者には豪華賞品も!

バンド・サウンドの常識をことごとく脱構築し、音楽ファン達に強烈な衝撃を与えてきた現代エクスペリメンタル・ロック・バンドの最高峰、バトルスが、最新アルバム『Juice B Crypts』のオンライン・リミックス・プロジェクトをスタート!

Battles Remix Project
https://rmx.bttls.com

ウェブサイト上ではアルバム中に使用されているシンセ、ドラム、ギター、その他様々なサウンドが分解され、インタラクティブな地下鉄マップに配置されている。それぞれのサウンドは自由にダウンロードできるようになっており、サンプリングしたり、ストレッチしたり、歪ませたり、リミックスしたりすることが可能だ。

バトルスは様々な人からのアイデアを聴きたいとの想いからこのプロジェクトをスタートさせたという。ファンにとっては自分でリミックスした音源を直接バンドに聴いてもらうことのできる絶好のチャンスだ。最終的に数名の優秀作品が選ばれ、Native Instruments、〈Warp〉、そして Battles から賞品が贈られる。音源提出の締め切りは2020年5月24日。

賞品一覧

最優秀賞
Native Instruments Komplete Kontrol S49
Native Instruments Komplete 12 Ultimate
好きな Native Instruments の拡張音源 (Expansion)
Native Instruments Store の200ドル分のクーポン
バトルスとのスカイプでのスタジオセッション
バトルスのサイン入りグッズ
『La Di Da Di』のハンドスタンプが押されたテストプレスを含む〈Warp Records〉からの賞品
シングル、EP、アルバムに使える Spinnup の無料クーポン
Melodicsの12ヶ月分のサブスクリプション

第2位
Native Instruments Komplete 12
好きな Native Instruments の拡張音源 (Expansion)

第3位
好きな Native Instruments の拡張音源 (Expansion)

JUICE B CRYPTS
バトルスの最新アルバム『Juice B Crypts』は現在好評発売中!国内盤にはボーナストラック “Yurt” を追加収録し、歌詞対訳と解説書が封入される。

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: BATTLES
title: Juice B Crypts
release date: NOW ON SALE

国内盤CD
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入
BRC-613 ¥2,200+税

国内盤CD+Tシャツ
BRC-613T ¥5,500+税

Playlists During This Crisis - ele-king

家聴き用のプレイリストです。いろんな方々にお願いしました。来た順番にアップしていきます。楽しんで下さい。

Ian F. Martin/イアン・F・マーティン

This is a multi-purpose playlist for people stuck at home during a crisis. The first 5 songs should be heard lying down, absorbed in the music’s pure, transcendent beauty. The last 5 songs should be heard dancing around your room in a really stupid way.

Brian Eno / By This River
Nick Drake / Road
Life Without Buildings / The Leanover
Young Marble Giants / Brand - New - Life
Broadcast / Poem Of Dead Song
Holger Czukay / Cool In The Pool
Yazoo / Bad Connection
Lio / Fallait Pas Commencer
Der Plan / Gummitwist
Electric Light Orchestra / Shine A Little Love

野田努

週末だ。ビールだ。癒しと皮肉と願い(冗談、怒り、恐怖も少々)を込めて選曲。少しでも楽しんでもらえたら。問題はこれから先の2〜3週間、たぶんいろんなことが起きると思う。できる限り落ち着いて、とにかく感染に気をつけて。お金がある人は音楽を買おう(たとえば bandcamp は収益をアーティストに還元している)。そして本を読んで賢くなろう。いまのお薦めはナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』。

Ultravox / Just For A Moment
フィッシュマンズ / Weather Report
Talking Heads / Air
Funkadelic / You Can’t Miss What You Can't Measure
New Age Steppers / Fade Away
RCサクセション / うわの空
Horace Andy / Rain From the Sky
Sun Ra / We Travel the Spaceways
Rhythim is Rhythim / Beyond the Dance
Kraftwerk / Tour De France

小林拓音

考えることはいっぱいあるけど、暗くなってしまいそうなのでちょっとだけ。被害は万人に平等には訪れない。割を食うのはいつだって……。問題の根幹は昔からなにも変わってないんだと思う。そこだけ把握しといて、あとは明るく過ごそうじゃないか。

Skip James / Hard Time Killing Floor Blues
The Beatles / Money
Public Enemy / Gotta Give the Peeps What They Need
Drexciya / Living on the Edge
Milanese vs Virus Syndicate / Dead Man Walking V.I.P.
Mark Pritchard / Circle of Fear
Erik Truffaz & Murcof / Chaos
Ata Ebtekar and the Iranian Orchestra for New Music / Broken Silence Cmpd
Psyche / Crackdown
Autechre / Flutter

河村祐介

怒るべきことにはちゃんと怒りましょう。僕らの生活と文化を守るために。そして、リラックスと快楽の自由も。

The Specials / Ghost Twon
Bob Marley / So Much Trouble In the World
Tommy McCook / Midnight Dub
Nightmares on Wax / Mores
7FO / Waver Vapour
石野卓球 / TRIP-O-MATIC
Nehoki / Morgentrack
Kodama And The Dubstation Band / かすかな きぼう
思い出野郎Aチーム / 灯りを分けあおう
Janelle Monáe / Smile

Neil Ollivierra/ニール・オリヴィエラ(The Detroit Escalator Co.)(LA在住)

Absorbing Songs for Armchair Traveling

Robin Guthrie, Harold Budd / How Close Your Soul
Thore Pfeiffer / Alles Wird Gut
Cortex / Troupeau bleu
Milton Nascimento / Tudo O Que Você Podia Ser
The Heliocentrics / A World of Masks
Kodo / Shake - Isuka Mata
Miles Davis / Indigo
Gordon Beck / Going Up
Funkadelic / Maggot Brain
Simply Red / I’m Gonna Lose You

Matthew Chozick/マシュー・チョジック

自己隔離生活にぴったりの癒し曲を集めてみました。コロナ野郎のせいで新しいレコード発表は激減、そんなときこそ古いアルバムを聴き直してみよう。家でパジャマパーティでも開きながら、僕のプレイリストをエンジョイしてくれたら嬉しいな。目に見えないもの同士、ウィルスとの戦いには心を癒す良薬で対抗だ!

Björk / Virus
The Knife / Afraid of You
The Velvet Underground / After Hours
John Lennon / Isolation
Harold Melvin & The Blue Notes / I Miss You
Grouper / Living Room
Beat Happening / Indian Summer
ゆらゆら帝国 / おはようまだやろう
Nico / Afraid
高橋幸宏 / コネクション

細田成嗣

つねにすでにオリジナルなものとしてある声は、しかしながら変幻自在のヴォーカリゼーションや声そのものの音響的革新、あるいは声をもとにしたエクストリームな表現の追求によって、より一層独自の性格を獲得する。見えない脅威に襲われる未曾有の事態に直面しているからこそ、わたしたちは「ひとつの声」を求めるのではなく、さまざまな声を聴き分け、受け入れる耳を養う必要に迫られているのではないだろうか。

Luciano Berio, Cathy Berberian / Sequenza III for voice
Demetrio Stratos / Investigazioni (Diplofonie e triplofonie)
David Moss / Ghosts
Meredith Monk, Katie Geissinger / Volcano Songs: Duets: Lost Wind
Sainkho Namchylak, Jarrod Cagwin / Dance of an Old Spirit
Fredy Studer, Ami Yoshida / Kaiten
Alice Hui Sheng Chang / There She Is, Standing And Walking On Her Own
Senyawa / Pada Siang Hari
Amirtha Kidambi, Elder Ones / Decolonize the Mind
Hiroshi Hasegawa, Kazehito Seki / Tamaki -環- part I

沢井陽子(NY在住)

非常事態が発生し、仕事もない、やることもない、家から出られないときには元気が出る曲を聴きたいけれど、いつもと変わらないヴァイヴをキープしたいものです。

Deerhunter / Nothing Ever Happened
Unknown Mortal Orchestra / Necessary Evil
Thin Lizzy / Showdown
Janko Nilovic / Roses and Revolvers
Courtney Barnett / Can’t Do Much
Big Thief / Masterpiece
Brittany Howard / Stay High
Kaytranada, Badbadnotgood / Weight Off
St Vincent / Cruel
Gal Costa / Lost in the Paradise

デンシノオト

少しでもアートという人の営みに触れることで希望を忘れないために、2018年から2020年までにリリースされた現代音楽、モダンなドローン、アンビエント、電子音響などをまとめた最新型のエクスペリメンタル・ミュージック・プレイリストにしてみました。

James Tenney, Alison Bjorkedal, Ellie Choate, Elizabeth Huston, Catherine Litaker, Amy Shulman, Ruriko Terada, Nicholas Deyoe / 64 Studies for 6 Harps: Study #1
Golem Mecanique / Face A
Werner Dafeldecker / Parallel Darks Part One
Yann Novak / Scalar Field (yellow, blue, yellow, 1.1)
3RENSA (Nyatora, Merzbow, Duenn) / Deep Mix
Beatriz Ferreyra / Echos
Anastassis Philippakopoulos, Melaine Dalibert / piano piece (2018a)
Jasmine Guffond / Degradation Loops #1
Dino Spiluttini / Drugs in Heaven
Ernest Hood / At The Store

Paolo Parisi/パオロ・パリージ(ローマ在住)

Bauhaus / Dark Entries
Sonic Youth / The End of the End of the Ugly
Mission of Burma / That’s How I Escaped My Certain Fate
Wipers / Return of the Rat
Pylon / Feast on my Heart
Gun Club / Sex Beat
The Jim Carroll Band / It’s Too Late
Television / Friction
Patti Smith / Kimberly
The Modern Lovers / Hospital

末次亘(C.E)

CS + Kreme / Saint
Kashif, Meli’sa Morgan / Love Changes (with Meli’sa Morgan)
Tenor Saw / Run From Progress
Phil Pratt All Stars / Evilest Thing Version
坂本龍一 / PARADISE LOST
Beatrice Dillon / Workaround Three
Joy Orbison, Mansur Brown / YI She’s Away
Burnt Friedman, Jaki Liebezeit / Mikrokasper
Aleksi Perälä / UK74R1721478
Steve Reich, Pat Metheny / Electric Counterpoint: II. Slow

木津毅

If I could see all my friends tonight (Live Recordings)

ライヴハウスがスケープゴートにされて、保障の確約もないまま「自粛」を求められるいま、オーディエンスの喜びに満ちたライヴが恋しいです。というわけで、ライヴ音源からセレクトしました。来日公演は軒並みキャンセルになりましたが、また、素晴らしい音楽が分かち合われるライヴに集まれることを願って。

Bon Iver / Woods - Live from Pitchfork Paris Presented by La Blogothèque, Nov 3 2018
James Blake / Wilhelm Scream - Live At Pitchfork, France / 2012
Sufjan Stevens / Fourth of July - Live
Iron & Wine / Sodom, South Georgia
Wilco / Jesus, Etc.
The National / Slow Show (Live in Brussels)
Jaga Jazzist / Oslo Skyline - Live
The Streets / Weak Become Heroes - One Live in Nottingham, 31-10-02
LCD Soundsystem / All My Friends - live at madison square garden
Bruce Springsteen / We Shall Overcome - Live at the Point Theatre, Dublin, Ireland - November 2006

髙橋勇人(ロンドン在住)

3月25日、Spotify は「COVID-19 MUSIC RELIEF」という、ストリーミング・サービスのユーザーに特定の音楽団体への募金を募るキャンペーンを始めている。

スポティファイ・テクノロジー社から直接ドネーションするわけじゃないんかーい、という感じもするのが正直なところだし、その募金が渡る団体が欧米のものにいまのとこは限定されているのも、日本側にはイマイチに映るだろう。現在、同社はアーティストがファンから直接ドネーションを募れるシステムなどを構築しているらしいので、大手ストリーミング・サービスの一挙手一投足に注目、というか、ちゃんとインディペンデントでも活動しているアーティストにも支援がいくように我々は監視しなければいけない。

最近、Bandcamp では、いくつかのレーベルが売り上げを直接アーティストに送ることを発表している。そういう動きもあるので、この企画の話をいただいたとき(24日)、スポティファイが具体的な動きを見せていないので、やっぱり Bandcamp ともリンクさせなければと思った。ここに載せたアーティストは、比較的インディペンデントな活動を行なっている者たちである。このプレイリストを入り口に、気に入ったものは実際にデータで買ってみたり、その活動をチェックしてみてほしい。

ちなみに、「こんなときに聴きたい」という点もちゃんと意識している。僕はロックダウンにあるロンドンの部屋でこれを書いている。これらの楽曲は人生に色彩があることを思い出させてくれる楽曲たちだ。さっきこれを聴きながら走ってきたけど(友達に誘われたらNOだが、最低限の運動のための外出はOKだと総理大臣閣下も言っていたしな)、最高に気持ちよかった。

object blue / FUCK THE STASIS
Prettybwoy / Second Highball
Dan-Ce / Heyvalva Heyvalva Hey
Yamaneko / Fall Control
Tasho Ishii / Satoshi Nakamoto
Dayzero / Saruin Stage
Chino Amobi / The Floating World Pt.1
Brother May / Can Do It
Elvin Brandhi / Reap Solace
Loraine James / Sensual

松村正人

MirageRadioMix

音楽がつくりだした別天地が現実の世界に浸食されるも、楽曲が抵抗するというようなヴィジョンです。Spotify 限定で10曲というのはたいへんでしたが、マジメに選びました。いいたいことはいっぱいありますがひとまず。

忌野清志郎 / ウィルス
Björk / Virus
Oneohtrix Point Never / Warning
憂歌団 / 胸が痛い
The Residents / The Ultimate Disaster
The Doors / People Are Strange
キリンジ / 善人の反省
坂本慎太郎 / 死にませんが?
Can / Future Days - Edit
相対性理論 / わたしは人類(Live)

三田格

こんなときは Alva Noto + Ryuichi Sakamoto 『Virus Series Collectors Box』(全36曲!)を聴くのがいいんじゃないでしょうか。ローレル・ヘイローのデビュー・アルバム『Quarantine(=伝染病予防のための隔離施設)』(12)とかね。つーか、普段からあんまり人に会わないし、外食もしないし、外から帰ったら洗顔やうがいをしないと気持ち悪い性格なので、とくに変わりないというか、なんというかコロナ素通りです。だから、いつも通り新曲を聴いているだけなので、最近、気に入ってるものから上位10曲を(A-Reece の “Selfish Exp 2” がめっちゃ気に入ってるんだけど Spotify にはないみたいなので→https://soundcloud.com/user-868526411/a-reece-selfish-exp-2-mp3-1)。

Girl Ray / Takes Time (feat. PSwuave)
Natz Efx Msaki / Urban Child (Enoo Nepa Remix)
DJ Tears PLK / West Africa
Afrourbanplugg / General Ra (feat. Prettyboy)
SassyBlack / I Can’t Wait (feat. Casey Benjamin)
Najwa / Más Arriba
Owami Umsindo / eMandulo
Cristian Vogel & Elektro Guzzi / Plenkei
Oval / Pushhh
D.Smoke / Season Pass

AbuQadim Haqq/アブカディム・ハック(デトロイト在住)

These are some of my favorite songs of all time! Reflections of life of an artist from Detroit.
Thanks for letting me share my favorite music with you! Stay safe and healthy in these troubling times!

Rhythim is Rhythim / Icon
Underground Resistance / Analog Assassin
Public Enemy / Night of the Living Baseheads
Orlando Voorn / Treshold
Drexciya / Hydrocubes
Oddisee / Strength & Weakness
Iron Maiden / Run To The Hills
The Martian / Skypainter
Gustav Holst / Mars: Bringer of War
Rick Wade / First Darkness

Sk8thing aka DJ Spitfi_(C.E)

10_Spotify's_for_Social _Distancies_!!!!List by Sk8thing aka DJ DJ Spitfi

Francis Seyrig / The Dansant
Brian Eno / Slow Water
The Sorrow / Darkness
Owen Pallett / The Great Elsewhere
DRAB MAJESTY / 39 By Design
Our Girl / In My Head
Subway / Thick Pigeon
Einstürzende Neubauten / Youme & Meyou
Fat White Family / I Believe In Something Better
New Order / ICB

矢野利裕

人と会えず、話もできず、みんなで食事をすることもできず……という日々はつらく寂しいものです。落ち着きのない僕はなにをしたらいいでしょうか。うんざりするような毎日を前向きに乗り越えていくために、少なくとも僕には音楽が大事かもしれません。現実からの逃避でもなく現実の反映でもない、次なる現実を呼び寄せるものとしての音楽。そのいちばん先鋭的な部分は、笑いのともなう新奇な音楽(ノヴェルティソング)によって担われてきました。志村けんのシャウトが次なる現実を呼び寄せる。元気でやってるのかい!?

ザ・ドリフターズ / ドリフのバイのバイのバイ
雪村いずみ / チャチャチャはいかが
ザ・クールス / ラストダンスはCha・Chaで
セニョール・ココナッツ・アンド・ヒズ・オーケストラ / YELLOW MAGIC (Tong-Poo)
Negicco / カリプソ娘に花束を
スチャダラパー / レッツロックオン
4×4=16 / TOKISOBA Breakbeats
イルリメ / 元気でやってるのかい?
マキタスポーツ / Oh, ジーザス
水中、それは苦しい / マジで恋する五億年前

Sinta(Double Clapperz)

大変な時ですが、少しでも肩の力抜けたらいいなと思い選曲しました。

徳利 / きらめく
gummyboy / HONE [Mony Horse remix]
Burna Boy / Odogwu
Stormzy / Own It [Toddla T Remix feat. Burna Boy & Stylo G]
J Hus / Repeat (feat. Koffee)
LV / Walk It / Face of God
Free Nationals, Chronixx / Eternal Light
Pa Salieu / Frontline
Frenetik / La matrice
Fory Five / PE$O

Midori Aoyama

タイトルに色々かけようと思ったんですがなんかしっくりこなかったので、下記10曲選びました。よく僕のDJを聴いてくれている人はわかるかも? Party の最後でよくかける「蛍の光」的なセレクション。1曲目以外は特にメッセージはないです。単純にいい曲だと思うので、テレワークのお供に。
ちなみに最近仕事しながら聴いているのは、吉直堂の「雨の音」。宇宙飛行士は閉鎖されたスペースシャトルの中で自然の音を聴くらしい。地球に住めないのであればやっぱり宇宙に行くしかないのだろうか。

Marvin Gaye / What’s Going On
The Elder Statesman / Montreux Sunrise
12 Senses / Movement
Culross Close / Requiem + Reflections
Children Of Zeus / Hard Work
Neue Grafik Ensemble feat. Allysha Joy / Hotel Laplace
Aldorande / Sous La Lune
Michael Wycoff / Looking Up To You
Stevie Wonder / Ribbon In The Sky
Djavan / Samurai

高島鈴

コロナ禍のもとで生じている問題はひとつではないから、「こういう音楽を聞くといい」と一律に提言するのはすごく難しい。危機を真面目に受け止めながらどうにか生存をやっていくこと、危機を拡大させている政治家の振る舞いにきちんと怒ること、今私が意識できるのはこれぐらいである。みなさん、どうぞご無事で。

Kamui / Aida
Moment Joon / TENO HIRA
Garoad / Every Day Is Night
Awich / 洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS
Jvcki Wai / Anarchy
田島ハルコ / holy♡computer
Rinbjö / 戒厳令 feat. 菊地一谷
田我流 / Broiler
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 夜を越えて
NORIKIYO / 神様ダイヤル

Mars89

一曲目はゾンビ映画サンプリングの僕の曲で “Run to Mall” って曲だけど、今は Don’t Run to Mall です。
それ以外は僕がお気に入りでずっと聞いてる曲たちです。部屋で悶々と行き場のない感情を抱えながら精神世界と自室の間を綱渡りで行き来するような感じの曲を選んでみました。

Mars89 / Run to Mall
Tim Hecker / Step away from Konoyo
Burial / Nightmarket
Raime / Passed over Trail
KWC 92 / Night Drive
Phew / Antenna
The Space Lady / Domae, Libra Nos / Showdown
Tropic of Cancer / Be Brave
Throbbing Gristle / Spirits Flying
Paysage D’Hiver / Welt Australia Eis

大前至

桜が満開な中、大雪が降りしきる、何とも不思議な天気の日曜日に、改めて自分が好きな音楽というものに向き合いながら選曲。今自分がいる東京もギリギリの状態ですが、昔住んでいたLAはすでにかなり深刻な状態で、そんな現状を憂いながら、LA関連のアーティスト限定でリラックス&少しでも気分が上がるような曲でプレイリストを組んでみました。

Illa J / Timeless
Sa-Ra Creative Partners / Rosebuds
NxWorries / Get Bigger / Do U Luv
Blu & Exile / Simply Amazin’ (steel blazin’)
Oh No / I Can’t Help Myself (feat. Stacy Epps)
Visionaries / If You Can’t Say Love
Dudley Perkins / Flowers
Jurassic 5 / Hey
Quasimoto / Jazz Cats Pt. 1
Dâm-Funk / 4 My Homies (feat. Steve Arrington)

天野龍太郎

「ウイルスは生物でもなく、非生物とも言い切れない。両方の性質を持っている特殊なものだ。人間はウイルスに対して、とても弱い。あと、『悪性新生物』とも呼ばれる癌は、生物に寄生して、防ぎようがない方法で増殖や転移をしていく。今は人間がこの地球の支配者かもしれないけれど、数百年後の未来では、ウイルスと癌細胞が支配しているかもね」。
氷が解けていく音が聞こえていた2019年。まったく異なる危機が一瞬でこの世界を覆った2020年。危機によってあきらかになるのは、システム、社会、政治における綻びや破綻、そこにぽっかりと大きく口を開いた穴だ。為政者の間抜けさも、本当によくわかる。危機はテストケースであり、愚かさとあやまちへの劇的な特効薬でもありうる。
ソーシャル・ディスタンシング・レイヴ。クラブ・クウォランティン。逃避的な音楽と共に、ステイ・ホーム、ステイ・セイフ・アンド・ステイ・ウォーク。

Kelly Lee Owens / Melt!
Beatrice Dillon / Clouds Strum
Four Tet / Baby
Caribou / Never Come Back
Octo Octa / Can You See Me?
tofubeats / SOMEBODY TORE MY P
Against All Logic / Deeeeeeefers
JPEGMAFIA / COVERED IN MONEY!
MIYACHI / MASK ON
Mura Masa & Clairo / I Don’t Think I Can Do This Again

James Hadfield/ジェイムズ・ハッドフィールド

Splendid Isolation

皆どんどん独りぼっちになりつつある事態で、ただ独りで創作された曲、孤立して生まれた曲を選曲してみました。

Alvin Lucier / I Am Sitting in a Room
Phew / Just a Familiar Face
Massimo Toniutti / Canti a forbice
Ruedi Häusermann / Vier Brüder Auf Der Bank
Wacław Zimpel / Lines
Kevin Drumm / Shut In - Part One
Mark Hollis / Inside Looking Out
Magical Power Mako / Look Up The Sky
Arthur Russell / Answers Me
Mike Oldfield / Hergest Ridge Part Two

小川充

都市封鎖や医療崩壊へと繋がりかねない今の危機的な状況下で、果たして音楽がどれほどの力を持つのか。正常な生活や仕事はもちろん、命や健康が損なわれる人もいる中で、今までのように音楽を聴いたり楽しむ余裕があるのか、などいろいろ考えます。かつての3・11のときもそうでしたが、まず音楽ができることを過信することなくストレートに考え、微力ながらも明日を生きる希望を繋ぐことに貢献できればと思い選曲しました。

McCoy Tyner / For Tomorrow
Pharoah Sanders / Love Is Everywhere
The Diddys feat. Paige Douglas / Intergalactic Love Song
The Isley Brothers / Work To Do
Kamasi Washington / Testify
Philip Bailey feat. Bilal / We’re Winner
Brief Encounter / Human
Boz Scaggs / Love Me Tomorrow
Al Green / Let’s Stay Together
Robert Wyatt / At Last I Am Free

野田努(2回目)

飲食店を営む家と歓楽街で生まれ育った人間として、いまの状況はいたたまれない。働いている人たちの胸中を察するには余りある。自分がただひとりの庶民でしかない、とあらためて思う。なんも特別な人間でもない、ただひとりの庶民でいたい。居酒屋が大好きだし、行きつけの飲食店に行って、がんばろうぜと意味も根拠もなく言ってあげたい。ここ数日は、『ポバティー・サファリ』に書かれていたことを思い返しています。

Blondie / Dreaming
タイマーズ / 偽善者
Sleaford Mods / Air Conditioning
The Specials / Do Nothing
The Clash / Should I Stay or Should I Go
Penetration / Life’s A Gamble
Joy Division / Transmission
Television / Elevation
Patti Simth / Free Money
Sham 69 / If the Kids Are United

Jazzと喫茶 はやし(下北沢)

コロナが生んだ問題が山積して心が病みそうになる。が、時間はある。
音楽と知恵と工夫で心を豊かに、この難局を乗り切りましょう!(4/6)

Ray Brayant / Gotta Travel On
Gil Scott Heron / Winter In America
Robert Hood / Minus
Choice / Acid Eiffel
Armando / Land Of Confusion
Jay Dee / Fuck The Police
Liquid Liquid / Rubbermiro
Count Ossie & The Mystic Revelation Of Rastafari / So Long
Bengt Berger, Don Cherry / Funerral Dance
民謡クルセイダーズ / 炭坑節

中村義響

No winter lasts forever; no spring skips it’s turn.

Ducktails / Olympic Air
Johnny Martian / Punchbowl
Later Nader / Mellow Mario
April March / Garden Of April
Vampire Weekend / Spring Snow
Brigt / Tenderly
W.A.L.A / Sacrum Test (feat. Salami Rose Joe Louis)
Standing On The Corner / Vomets
Babybird / Lemonade Baby
Blossom Dearie / They Say It’s Spring

野田努(3回目)

Jリーグのない週末になれつつある。夕暮れどきの、窓の外を眺めながら悦にいる感覚のシューゲイズ半分のプレイリスト。

Mazzy Star / Blue Light
The Jesus & Mary Chain / These Days
Animal Collective / The Softest Voice
Tiny Vipers / Eyes Like Ours
Beach House / Walk In The Park
Hope Sandoval & The Warm Inventions / On The Low
Devendra Banhart / Now That I Know
Scritti Politti / Skank Bloc Bologna
Yves Tumor / Limerence
Lou Reed / Coney Island Baby

ALEX FROM TOKYO(Tokyo Black Star, world famous)

この不安定な時代に、ラジオ番組のように Spotify で楽しめる、「今を生きる」気持ち良い、元気付けられる&考えさてくれるポジティヴでメッセージも響いてくる温かいオールジャンル選曲プレイリストになります。自分たちを見つめ直す時期です。海外から見た日本の状況がやはりとても心配になります。みなさんの健康と安全を願ってます。そしてこれからも一緒に好きな音楽と良い音を楽しみ続けましょう。Rest In Peace Manu Dibango & Bill Withers!(4/7)

Susumu Yokota / Saku
Manu Dibango / Tek Time
Final Frontier / The warning
Itadi / Watch your life
Rhythim Is Rhythim / Strings of Life
Howlin’ Wolf / Smokestack Lightin’
Massive Attack / Protection
Depeche Mode / Enjoy the Silence
Tokyo Black Star / Blade Dancer
Bill Withers / Lean on me (Live from Carnegie Hall)

Kevin Martin(The Bug)

(4/9)

The Necks / Sex
Rhythm & Sound / Roll Off
Miles Davis / In A Silent Way / It’s About That Time
William Basinski / DLP3
Thomas Koner / Daikan
Talk Talk / Myrrhman
Nick Cave + Bad Seeds / Avalanche
Jacob Miller / Ghetto on fire
Marvin Gaye / Inner City Blues
Erykah Badu / The Healer


増村和彦

最近は、「音楽やサウンドに呼吸をさせて、ゆがみや欠陥の余地を残して流していくんだ」というローレル・ヘイローの言葉が妙に響いて、その意味を考えるともなく考えながら音楽を聴いている。いまは、できるだけ雑食で、できるだけ聴いたことがなくて、直感で信頼できる音楽を欲しているのかもしれない。人に会わないことに慣れているはずのぼくのような人間でも、あんまり会わないと卑屈になってくるので、冷静にしてくれる音楽を聴きたくなります。(5/15)

Laurel Halo / Raw Silk Uncut Wood
Alex Albrecht pres.Melquiades / Lanterns Pt1 & Pt2
Minwhee Lee / Borrowed Tongue
Moritz von Oswald & Ordo Sakhna / Draught
Grouper / Cleaning
Moons / Dreaming Fully Awake
"Blue" Gene Tyranny / Next Time Might Be Your Time
Sun Ra / Nuclear War
Tony Allen With Africa 70’ / Jealousy
Tom Zé / Hein?

Zebra Katz - ele-king

 マイケル・フランティとロノ・ツェによるザ・ビートニグスやジーザス&メリー・チェイン“Sidewalking”など、1988年はインダストリアル・ヒップホップが生まれた年だった。アフリカ・バンバータとジョン・ライドンのタイムゾーン“World Destruction”が最初だという人もいるけれど、あれはどう考えてもインダストリアル・エレクトロ。クロームやキャバレー・ヴォルテール、あるいはDAFやスロッビン・グリッスルによるストイックでファナティックなインダストリアル・エレクトロを陽気な世界に解き放ったという意味で“World Destruction”は大きな分岐点をなすけれど、ここでは割愛。ジーザス&メリー・チェイン“Sidewalking”はラヴ&ピースに湧くレイヴ・カルチャーにダンス・ノイズ・テラーというカウンター・パートを促し、エイドリアン・シャーウッド率いるタックヘッドがその中核的存在だった。アルバム1枚で解散してしまったザ・ビートニグスはいわゆる発展的解消を遂げてディスポーザブル・ヒーローズ・オブ・ヒポプリジーとして少し路線を変え、92年にニューヨークで観たライヴはちょっと物足りなかったことも覚えている。ザ・ビートニグスに対して膨れ上がった虚像はその後もミート・ビート・マニフェストー、レニゲイド・サウンドウェイヴ、アレク・エムパイア、ココ・ブライス、ヴェッセル、クリッピングアレキサンドル・フランシスコ・ディアフラと続き、いまだに僕はインダストリアル・ヒップホップから逃れられない。黒人と白人の価値観が極端な形でクラッシュしている状態に強く惹かれてしまうからだろうか。ナイン・インチ・ネイルズもファーストは好きだし。

 そして、まさかこの流れにジブラ・キャッツが加わるとは思わなかった。ジブラ・キャッツことオージェイ・モーガンは2012年にディプロの〈ジェフリーズ〉から“Ima Read”でデビューしたダンスホールMC。この曲は当時、ファッション・ショーなどにも使われ、彼自身もグレース・ジョーンズをリスペクトするなどとてもファッショナブルな存在なので、そのまま一気にメジャーな存在になるのかと思ったら、その後の活動がどうもヘンだった。ジャマイカ系アメリカ人の彼はアメリカで大きく出るよりはイギリスの音楽に心惹かれるものがあったようで、グライムやベース・ミュージックを好むようになり、リリースもどんどんアンダーグラウンド化していく。かなりナゾのレーベルだったフィンランドの〈シグナル・ライフ〉から(フランスではその手の草分けとなった)フレンチ・フライとのカップリング・シングルまでリリースし、暗く沈み込むような“Sex Sellz”(13)はあまりに異様な曲だったので“Ima Read”の路線に戻ってくれ~とさえ思ったほど。この曲はちなみにレーベル・オーナーのティース(Twwth)によるリミックスがなかなか良いです。2014年からはディプロの〈マッド・ディセント〉に戻ってエルヴェやレイラとジョイント・シングルをリリースし、それきり姿を見ないと思ったら彼はゴリラズのツアー・メンバーに加わっていたという。ぜんぜん知らなかった。


 “Ima Read”から8年後となったデビュー・アルバムが、そう、驚いたことにインダストリアル・ヒップホップに様変わりしていたのである。冒頭からズガガガとノイジーにインダストリアル・パーカッションが打ち鳴らされ、まるでスロッビン・グリッスルかザ・ビートニグスのようで、“Sex Sellz”でも最低限度は保たれていたオシャレのラインは軽く踏み越えられている。ラップというよりはぶつぶつと語りかけるようにつぶやくのが最初から彼のスタイルで、それが不穏なサウンドトラックを得ることでこれまでになかった迫力を帯びている。歌詞の内容はダンスやセックスに関することが多いらしく、「赤面(Blush)」とかクンニリングスを思わせる曲名(Lick It N Split)が並ぶので、もしかするととても官能的な効果を高めているのかもしれない。“Monitor”ではダークなシンセ~ポップ、“Zad Drumz”ではジャングルやなども取り混ぜつつ、“Necklace”ではいきなりアシッド・フォークが来て、シンプルなトライバル・ドラムだけでドライヴさせる”In In In”や“Sleepn”が個人的には好み。”Moor”はそれこそレニゲイド・サウンドウェイヴを思わせる。そう、アルバム・タイトルの『Less is Moor』とは何だろうか。「Less is More」ならミニマリズムが流行っている現在、より少ないことが豊かさにつながるという意味だし、それに引っ掛けていることは明白だけれど、「More」ではなく「Moor」である。ムーア人のことであれば、北アフリカのブラック・ムスリムを表し、レイラとのシングルも「Nu Renegade EP」というタイトルだったので「レニゲイド=(キリスト教から)イスラム教への改宗者」という意味もあるから、より少ないことで二グロになれる」とか、そんな感じなのかなと。

 ……と、思い悩んでいたら、坂本麻里子さんからインタヴュー・マガジン(Interview Magazine)でムーア・マザーがジブラ・キャッツのインタヴューをしているよという情報が。それでピンと来た。『Less is Moor』をリリースしているのはムーア・マザーのセカンド・アルバム『The Motionless Present』をリリースしていた〈ヴァイナル・ファクトリー〉である。彼女の名前と掛けていたのである。インタヴューというよりはかなり雑談に近い2人のやり取りを読んでいると、それはますます確信に変わった。ムーア・マザーもジブラ・キャッツの作風が変わってしまったことに触れ、「ファック・ユー」度が少し増したと指摘している。アルバム・タイトルの真相はゴリラズのツアーに参加したことで、ジブラ・キャッツを取り巻く環境がかなり変化し、彼は自分もスタッフを増やして大掛かりな組織を組まなければやっていけないと感じたことに由来し、それを前提に様々な仕事のオファーが来るようなになったものの、それでも自分は最小限の機材や人数でやっているんだということを示したものだという。オープニングは“Intro To Less”、そして、充実した音楽を楽しんだリスナーはエンディングで”Exit To Void”へ投げ出される、という構成。なかなかの自信ではないだろうか。ムーア・マザーも「2曲ほどリミックスしたい曲がある」と告げるなどアルバムへの共感を様々に示している。また、同じインタヴューでジブラ・キャッツの作品が大きく変貌を遂げた裏にはシーガ・ボディーガ(Sega Bodega)というプロデューサーの存在が大きいと彼が話していたので、ほぼ同時にリリースされた『Salvador』(Nuxxe)というアルバムも聴いてみたところ、これもまた奇妙な内容のものであった。“Lick It N Split”にフィーチャーされているシャイガールも去年から気になっていたファッション系のラッパーで、おー、こんなところでつながるのかーという感じ。

 インダストリアル・ヒップホップ・ネヴァー・ダイズ!ということで。

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